(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1には、メインギア軸とハンドル組立体との間に緩衝部材が配置されている。この緩衝部材によって、メインギア軸とハンドル軸部との間で軸方向のがたつきを抑えることができる。
【0005】
一方、例えば、ハンドルアームを釣糸巻き取り方向に回転させたとき、メインギアとピニオンギア等のギアの噛み合いによる振動が発生する。従来のギア機構では、このギアの噛み合いによる振動がハンドルアームに伝わり、ハンドル回転時の回転フィーリングの悪化を招いている。したがって、ギアの噛み合いによる振動がハンドルアームに伝わるのを減衰できれば、回転フィーリングを向上させることができる。
【0006】
本発明の課題は、釣用リールのギア機構において、ハンドルアームに伝わるギアの噛み合いによる振動を減衰することにより、回転フィーリングの向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る釣用リールのギア機構は、ドライブギアと、ハンドル部と、減振部と、を備えている。ドライブギアは、所定のギア径を有するギア部と、ギア部とともに回転し所定のギア径より小さい径のドライブギア軸と、を有している。ハンドル部は、ドライブギア軸を回転させる。減振部は、ドライブギア軸とハンドル部との間に設けられ、ドライブギアの振動の伝達を減衰させる。
【0008】
この釣用リールのギア機構では、ドライブギア軸とハンドル部との間に設けられた減振部によって、ドライブギアの振動の伝達を減衰させることができる。これにより、回転フィーリングの向上を図ることができる。
【0009】
好ましくは、減振部は、弾性変形可能であり、筒状部材の係合部に係合し、筒状部材よりも剛性が低い弾性部材からなる。この場合は、筒状部材の係合部に減振部が係合してハンドルアームの回転がドライブギア軸に伝達される。このため、ギアの噛み合いによる振動は減振部を介してハンドルアームに伝達されることになり、振動は減振部によって減衰される。これにより、回転フィーリングの向上を図ることができる。
【0010】
好ましくは、筒状部材の係合部は、減振部が所定量まで弾性変形した後に、ドライブギ
ア軸と係合する、この場合は、回転負荷が高負荷の場合で弾性変形可能な減振部が所定量弾性変形した後は、筒状部材の係合部にハンドル軸が係合して回転が伝達されるため、釣糸巻き取り方向に高負荷がかかった場合でも、ハンドルアームの回転をドライブギア軸に確実に伝達することができる。
【0011】
好ましくは、ドライブギア軸は、大径部と、大径部の径よりも小径に形成された小径部と、を有している。大径部および小径部は、筒状部材の内周部に配置されている。減振部は、小径部の外周に配置されている。大径部は、弾性部材が所定量まで弾性変化した後に、筒状部材の係合部に係合する。この場合は、減振部及びドライブギア軸を介した回転の伝達を簡素な構成で実現することができる。
【0012】
好ましくは、筒状部材は金属からなる。
【0013】
好ましくは、ハンドル部は、ドライブギア軸と軸交差する方向に延びるハンドルアームと、ハンドルアームに回転不能に連結され、係合部を有する第1伝達部材と、を有している。また、ハンドル部の回転をドライブギア軸に伝達する第2伝達部材をさらに備えている。減振部は、弾性変形可能であり、第1伝達部材の係合部に係合し、第1伝達部材よりも剛性が低い弾性部材からなる。第2伝達部材は、減振部よりも剛性が高く、減振部が所定量まで弾性変化した後に、第1伝達部材の係合部に係合して、ハンドル部の回転をドライブギア軸に伝達する。
【0014】
この場合は、弾性変形可能な減振部が所定量弾性変形するまで、第1伝達部材の係合部に弾性部材が係合してハンドルアームの回転がドライブギア軸に伝達される。すなわち、回転負荷が低負荷の場合は、回転力は減振部を介して伝達される。このため、ギアの噛み合いによる振動は減振部を介してハンドルアームに伝達されることになり、振動は減振部によって減衰される。これにより、回転フィーリングの向上を図ることができる。
【0015】
一方で、回転負荷が高負荷の場合で減振部が所定量変形した後は、第1伝達部材の係合部に第2伝達部材が係合して回転が伝達されるため、釣糸巻き取り方向に高負荷がかかった場合でも、ハンドルアームの回転をドライブギア軸に確実に伝達することができる。
【0016】
好ましくは、第1伝達部材の係合部は、少なくとも1つの爪受部である。減振部は、爪受部に係合する弾性爪を有している。第2伝達部材は、減振部の弾性爪の周方向の幅よりも周方向の幅が狭い伝達爪を有している。伝達爪は、減振部の弾性爪が所定量まで弾性変化した後に、爪受部に係合する。
【0017】
この場合は、係合部を爪受部にすることで回転の伝達が確実に行われる。また、伝達爪の幅を弾性爪の幅よりも狭く形成することで、弾性爪が所定量弾性変形するまでは、爪受部と弾性爪とが係合して、ギアの噛み合いによる振動を減衰することができる。
【0018】
好ましくは、第1伝達部材は、板状の金属であり、中央にドライブギア軸の少なくとも一部が挿通可能な貫通孔を有している。第1伝達部材の係合部は、貫通孔から径方向外方に凹んで形成されている。この場合は、両軸受リールにおいても減振部及び伝達部材を介した回転の伝達を簡素な構成で実現することができる。
【0019】
好ましくは、第1伝達部材は、筒状の金属であり、一端がハンドルアームに回転不能に連結されている。第1伝達部材の係合部は、第1伝達部材の他端の端面から軸方向に凹んで形成されている。
【0020】
好ましくは、ハンドルアームは雌ねじ部を有している。第1伝達部材は、貫通孔の径方
向外側に形成された係止孔に装着された係止用ねじ部材が雌ねじ部に螺合してハンドルアームに固定されている。この場合は、第1伝達部材とハンドルアームとを確実に固定することができる。
【0021】
好ましくは、ハンドル部は、ドライブギア軸と軸交差する方向に延びるハンドルアームと、ハンドルアームに回転不能に連結され、係合部を有する第1伝達部材と、第1伝達部材の係合部から回転力が伝達される被係合部を有する第2伝達部材と、を有している。減振部は、第1伝達部材の係合部と第2伝達部材の被係合部とに当接可能に配置され、第1伝達部材の回転を第2伝達部材に伝達するとともに第1および第2伝達部材より剛性が低く弾性変形可能である。
【0022】
この場合は、減振部を介してハンドルアームの回転がハンドル軸に伝達される。このため、ハンドルアームを釣糸巻き取り方向に回転させたときのギアの噛み合いによる振動を、減振部によって減衰することができる。これにより、回転フィーリングの向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ギアからハンドルアームに伝達されるギアの噛み合いによる振動を減衰することができるため、回転フィーリングの向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態を採用したスピニングリール100の側面図および断面図を示している。なお、以下の説明において、「前」とは釣糸を繰り出す方向を示し、具体的には
図1及び
図2の左が「前」である。
【0026】
スピニングリール100は、リール本体1と、ロータ2と、ピニオンギア3と、スプール軸4と、スプール5と、ドライブ軸17及びハンドル軸18を有するギア機構6と、を備えている。
【0027】
リール本体1は、
図3に示すように、ケース部8と、蓋体9と、を有している。蓋体9は、例えばボルト(図示しない)などを用いて、ケース部8に取り付けられている。リール本体1は、ケース部8と蓋体9とによって画定された内部空間を有している。内部空間には、ギア機構6の一部や釣糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構10が収容
されている。
【0028】
ケース部8は、
図1に示すように前後方向に延びる装着部8aと、
図3に示すように筒状の第1ボス部11と、を有している。装着部8aは、釣竿に装着される部分である。
【0029】
第1ボス部11は、リール本体1の第1側(
図3参照)に形成されている。第1ボス部11は、第1貫通孔11aを有している。第1貫通孔11aは、ハンドル軸18を通すための貫通孔である。第1貫通孔11aの内周面には、雌ねじが形成された第1雌ねじ部11bが形成されている。第1ボス部11の内周面には、ドライブ軸17の第1側を支持するための第1軸受部材12が取り付けられている。
【0030】
蓋体9は、筒状の第2ボス部13を有している。第2ボス部13は、リール本体1の第2側(
図3参照)に形成されている。第2ボス部13は、第2貫通孔13aを有している。第2貫通孔13aは、ハンドル軸18を通すための貫通孔である。第2貫通孔13aの内周面には、雌ねじが形成された第2雌ねじ部13bが形成されている。第2ボス部13の内周面には、ドライブ軸17の第2側を支持するための第2軸受部材14が取り付けられている。
【0031】
ロータ2は、スプール5に釣糸を巻きつけるための部材である。ロータ2は、
図2に示すように、ピニオンギア3の前部に固定されており、ピニオンギア3と一体的に回転する。
【0032】
ピニオンギア3は、リール本体1に設けられている。詳細には、ピニオンギア3は、筒状に形成されて、リール本体1から前方に延びている。ピニオンギア3の内部をスプール軸4が延びている。なお、ピニオンギア3は複数の軸受部材(図示しない)を介してリール本体1に支持されている。
【0033】
スプール軸4は、リール本体1に設けられている。詳細には、スプール軸4は、リール本体1内から前方に延びている。
【0034】
スプール5は、釣糸が巻きつけられる部材である。スプール5は、スプール軸4と一体的に前後方向に往復移動する。
【0035】
ギア機構6は、
図3に示すように、ドライブギア20と、ハンドル部7と、減振部25と、を備えている。ドライブギア20は、ドライブギア軸15と、所定のギア径を有するギア部16と、を有している。
【0036】
ドライブギア軸15は、ドライブ軸17と、ハンドル軸18と、を有している。
【0037】
ドライブ軸17は、筒状の軸である。ドライブ軸17の両端は、第1及び第2軸受部材12,14によって、リール本体1に回転可能に支持されている。また、ドライブ軸17の両端部には、内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部17aが形成されている。ドライブ軸17は、ギア部16のギア径よりも小さい径で形成されている。
【0038】
ハンドル軸18は、第2貫通孔13aを貫通して、一部がドライブ軸17の内周に配置されている。ハンドル軸18の径は、
図3に示すように、ギア部16のギア径よりも小径に形成されている。ハンドル軸18が貫通していない第1貫通孔11aには、第1雌ねじ部11bに螺合するキャップ部材19が装着されている。なお、キャップ部材19は、第2貫通孔13aの第2雌ねじ部13bにも螺合可能になっている。
図3とは逆にハンドル軸18が第1側に配置される場合は、キャップ部材19は第2貫通孔13aに装着される
。
【0039】
ハンドル軸18は、
図4及び
図5に示すように、内端側(リール本体1の内部に位置する側)から外端側(リール本体1の外部に位置する側)に向かって雄ねじ部18a、環状の軸鍔部18b、大径部18c、小径部18dが形成されている。
【0040】
雄ねじ部18aは、ハンドル軸18の内端部に形成され、外周に雄ねじが形成されている。この雄ねじ部18aとドライブ軸17の内周に形成された雌ねじ部17aとが螺合する。これにより、ハンドル軸18はドライブ軸17にねじ込み固定されて、ドライブ軸17と一体的に回転する。
【0041】
小径部18dは、大径部18cの径よりも小径に形成されている。大径部18c及び小径部18dの断面形状は、小判形である。また、ハンドル軸18は、ハンドル軸18の外端から小径部18dの内部を貫通するねじ孔18eを有している。
【0042】
ギア部16は、
図3に示すように、ドライブ軸17に連結されており、ドライブ軸17と一体的に回転する。ギア部16は、フェースギアであり、ピニオンギア3と噛み合っている。リール本体1に取り付けられたハンドル部7を回転させることによって、ハンドル軸18、ドライブ軸17およびギア部16が回転し、ピニオンギア3も回転する。このピニオンギア3の回転に伴い、オシレーティング機構10がスプール軸4を前後方向に往復移動させる。
【0043】
ハンドル部7は、
図3及び
図5に示すように、ハンドル軸18に装着されている。ハンドル部7は、ハンドルアーム21と、ハンドルアーム21の先端に装着されるハンドル把手22(
図1参照)と、筒状部材24と、を有している。
【0044】
ハンドルアーム21は、ドライブギア軸15と軸交差する方向に延びている。ハンドルアーム21は、ハンドル軸18(正確には後述する筒状部材24)に装着される側である基端側に、軸方向に貫通する貫通孔21aを有している。貫通孔21aは、内端の先端面の一部が小判型に形成されている。
【0045】
筒状部材24は、
図4、
図5及び
図6に示すように、外端側から順に、ボス部27と、鍔部28と、係合部29と、を有している。筒状部材24の内周側には、ハンドル軸18の大径部18c及び小径部18dが配置されている。筒状部材24は、例えば金属からなる部材である。
【0046】
ボス部27は、筒状部材24の外端部に形成され、先端内周面には雌ねじが形成された雌ねじ部27aを有している。また、雌ねじ部27aのさらに内部には、
図5に示すように大径穴部27bが形成されている。大径穴部27bは、雌ねじ部27aの内径とほぼ同じ径であり、かつ内部の係合部29の内径よりも大きく形成されている。
【0047】
鍔部28は、ボス部27の内端側にボス部27の外径よりも大径に形成されている。鍔部28は、
図6に示すように、鍔部28のボス部27側の一部が小判形に形成されており、係止面28aを有している。この係止面28a及びボス部27の外周に、ハンドルアーム21の貫通孔21aが嵌合している。そして、ハンドルアーム21の貫通孔21aの外側から挿通されたねじ部材32がボス部27の雌ねじ部27aと螺合している。これにより、筒状部材24は、ハンドルアーム21に回転不能に連結されている。なお、筒状部材24とハンドルアーム21とを連結するとき、がたつきを抑えるための例えば樹脂シート(図示しない)を筒状部材24とハンドルアーム21との間に挟んで連結してもよい。
【0048】
係合部29は、内周部に小判型の係合孔29aを有している。係合孔29aの形状は、ハンドル軸18の大径部18cとほぼ同様である。詳細には、係合孔29aはハンドル軸と回転方向に所定の隙間を有して形成されている。これにより、係合孔29aにハンドル軸18の大径部18cが係合可能となっている。
【0049】
筒状部材24には、
図5に示すように、筒状部材24の長手方向の中央部から外端部にかけてボルト30が収容されている。ボルト30は、筒状部材24の内周部に挿入されたハンドル軸18のねじ孔18eに螺合するとともに、その頭部が大径穴部27bに収容されている。ボルト30をハンドル軸18のねじ孔18eに螺合することにより、筒状部材24の内端側の端面がハンドル軸18の軸鍔部18bに当接し、筒状部材24がハンドル軸18に固定されている。なお、ボルト30の頭部端面と大径穴部27bの底面との間、及びハンドル軸18の大径部18cの外周面と筒状部材24の先端内周面との間には、シール部材31が配置されている。シール部材31は、筒状部材24の内部へ侵入する海水等を防止するとともに、ハンドル部7の軸方向のがたつきを抑える機能を果たしている。
【0050】
減振部25は、
図4及び
図5に示すように、環状に形成され、ハンドル軸18の小径部18dの外周に装着されている。減振部25は、例えば樹脂製であり、筒状部材24よりも剛性が低い弾性変形可能な弾性部材である。
【0051】
<回転伝達経路>
第1実施形態では、減振部25が所定量弾性変形するまでは、減振部25と筒状部材24とが係合して、ハンドルアーム21の回転がハンドル軸18に伝達される。詳細には、減振部25と筒状部材24の内周に形成された係合孔29aとが係合する。
【0052】
すなわち、ハンドルアーム21による釣糸巻取り力(回転力)が小さい場合は、ハンドルアーム21→筒状部材24(係合部29の係合孔29a)→減振部25→ハンドル軸18→ドライブ軸17→ギア部16→ピニオンギア3の伝達経路で回転力が伝達され、ロータ2が回転される。ここでは、ハンドルアーム21の回転力が減振部25を介してドライブギア軸15に伝達されるため、ギアの噛み合いによる振動が減衰されてハンドルアーム21に伝達される。これにより、釣人がハンドル部7を釣糸巻き取り方向に回転させたときの回転フィーリングを向上させることができる。
【0053】
なお、
図3に示すように、減振部25は、ギアの噛み合いによる振動が発生するギアの径D1(ここでは、ギア部16のギア径)より小径の伝達経路の径D2(ここでは、ドライブ軸17及びハンドル軸18の径)に設けることが好ましい。また、減振部25が設けられた小径の伝達経路の径D2(ここでは、ドライブ軸17及びハンドル軸18の径)が、ギアの噛み合いによる振動が発生するギアの径D1(ここでは、ギア部16のギア径)より小さければ、より大きな効果が期待できる。
【0054】
減振部25が所定量まで弾性変形した後は、ハンドル軸18と筒状部材24とが係合してハンドルアーム21の回転がハンドル軸18に伝達される。詳細には、減振部25が所定量(筒状部材24の係合孔29aとハンドル軸18の大径部18cとの間の隙間がなくなる程度)まで弾性変形すると、大径部18cと係合孔29aとが接触して、筒状部材24からハンドル軸18に回転が直接伝達される。
【0055】
すなわち、ハンドルアーム21による釣糸巻取り力が大きい高負荷の場合は、前述のように、減振部25が弾性変形し、ハンドルアーム21→筒状部材24(係合孔29a)→ハンドル軸18(大径部18c)→ドライブ軸17→ギア部16→ピニオンギア3の伝達経路で回転力が伝達され、ロータ2が回転される。ここでは、ハンドルアーム21の回転力が減振部25を介在せずにドライブギア軸15に直接伝達されるため、回転力を素早く
確実に伝達することができる。
【0056】
このように、例えば、釣糸を巻き取る回転方向への負荷が小さいときは、減振部25を介することで、ハンドルアーム21に伝達されるギアの振動を減衰させながら回転をドライブギア軸15に伝達できる。また、高い負荷がかかったときは、筒状部材24からドライブギア軸15に回転を直接伝達することで、ハンドルアーム21の回転をドライブギア軸15に確実に伝達することができる。なお、減振部25が弾性変形可能な量については、係合部29と大径部18cとの間の隙間に相当する量以上に設定されている。
【0057】
[第2実施形態]
図7及び
図8は、本発明の第2実施形態を採用したギア機構106の一部の分解斜視図および断面斜視図である。第2実施形態におけるスピニングリールの全体構成は、第1実施形態のスピニングリール100と同様であるため、ここでは説明を省略する。第2実施形態では、ハンドル軸118の一部、ハンドル部107の一部、及び減振部125の構成のみが第1実施形態の構成と異なっている。このため、以下からは第1実施形態と異なる構成について主に説明する。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付している。
【0058】
第2実施形態のハンドル軸118は、第1実施形態と同様の雄ねじ部18a及び軸鍔部18bに加えて、軸部118aを有している。軸部118aは、軸鍔部18bからハンドル軸118の外端側の先端まで延びている。軸部118aの外径は均一に形成されている。軸部118aの中心部には、軸部118aの先端面から軸方向に延びるねじ孔118eが形成されている。軸部118aの断面形状は、第1実施形態と同様に非円形であり、小判型に形成されている。
【0059】
ハンドル部107は、ハンドル軸118の外端側に配置されている。ハンドル部107は、ハンドルアーム121と、ハンドルアーム121の先端に装着されるハンドル把手22(
図1参照)と、第1金属部材35(第1伝達部材の一例)と、第2金属部材36(第2伝達部材の一例)と、を有している。
【0060】
ハンドルアーム121は、アーム部121aと、アーム部121aと一体回転するボス部121bと、を有している。アーム部121aは、ボス部121bからハンドル軸118と交差する方向に延びている。ボス部121bの内周には、
図8に示すように、内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部121cが形成されている。ボス部121bには、ハンドル軸118の外端部が収容されている。
【0061】
第1金属部材35は、筒状であり、外端部がハンドルアーム121のボス部121bに回転不能に連結されている。詳細には、第1金属部材35の外端部には、外周面に雄ねじが形成された雄ねじ部35aが形成されており、この雄ねじ部35aがハンドルアーム121のボス部121bの内周に形成された雌ねじ部121cに螺合している。
【0062】
第1金属部材35は、貫通孔35bと、複数の爪受部35cと、を有している。貫通孔35bにはハンドル軸118の軸部118aが挿通されている。
【0063】
複数の爪受部35cはそれぞれ、第1金属部材35のハンドル軸118が挿通される側(内端側)の端面から軸方向に凹んで形成されている。これにより、爪受部35cには、1対の側壁35dが形成されている。
【0064】
ここで、ハンドル軸118の軸部118aのねじ孔118eには、ボルト30が螺合している(
図8参照)。そして、ボルト30の端面が緩衝部材37およびワッシャ38を介
して軸部118aの外端面に当接している。このように、ボルト30をハンドル軸118のねじ孔118eに螺合し、ボルト30の頭部を軸部118aの端面に緩衝部材37等を介して当接させることによって、第1金属部材35の内端側の端面がワッシャ39、減振部125および第2金属部材36を介してハンドル軸118の軸鍔部18bに当接する。これにより、第1金属部材35がハンドル軸118に固定されている。なお、緩衝部材37は、軸方向の振動を減衰するとともに、ボルト30の緩み止めとしても機能している。
【0065】
第2金属部材36は、板状に形成され、貫通孔36aと、複数の金属爪(伝達爪の一例)36bと、を有している。貫通孔36aは、ハンドル軸118の軸部118aに係合する非円形の孔である。これにより、第2金属部材36は、ハンドル軸118に回転不能に装着されている。第2金属部材36は、減振部125よりも剛性が高くなるように構成されている。なお、第2金属部材36は、第1金属部材35の爪受部35cとハンドル軸118の軸鍔部18bとに挟持されて軸方向の移動が規制されている。
【0066】
複数の金属爪36bはそれぞれ、貫通孔36aから径方向外方に延びて形成されている。金属爪36bは、ハンドルアーム121を釣糸巻取り方向に回転したとき、爪受部35cの1対の側壁35dの少なくとも一方に係合可能に配置されている。詳細には、
図9に示すように、金属爪36bは、弾性爪125bよりも周方向の幅が狭く形成されている。このため、ハンドルアーム121が回転していない状態において、金属爪36bは1対の側壁35dに当接しないように配置されている。
【0067】
減振部125は、
図7及び
図9に示すように、板状に形成され、貫通孔125aと、複数の弾性爪125bと、を有している。減振部125は、例えば樹脂製であり、第1金属部材35よりも剛性が低い弾性変形可能な弾性部材である。貫通孔125aは、ハンドル軸118の軸部118aに係合する非円形の孔である。これにより、減振部125は、ハンドル軸118に回転不能である。
【0068】
複数の弾性爪125bはそれぞれ、貫通孔125aから径方向外方に延びて形成されている。弾性爪125bは、第1金属部材35の爪受部35cと係合する。詳細には、減振部125の弾性爪125bが爪受部35cの1対の側壁35dに当接して配置されている。なお、減振部125は、
図8に示すように、爪受部35cとハンドル軸118の軸鍔部18bとに挟持されて軸方向の移動が規制されている。
【0069】
<回転伝達経路>
第2実施形態では、減振部125が所定量弾性変形するまでは、減振部125と第1金属部材35の爪受部35cとが係合して、ハンドルアーム121の回転がハンドル軸118に伝達される。詳細には、減振部125の弾性爪125bと、第1金属部材35の爪受部35cの側壁35dとが係合して、ハンドルアーム121の回転がハンドル軸118に伝達される。
【0070】
すなわち、ハンドルアーム121による釣糸巻取り力(回転力)が小さい場合は、ハンドルアーム121→第1金属部材35(爪受部35c)→減振部125(弾性爪125b)→ハンドル軸118→ドライブ軸17→ギア部16→ピニオンギア3の伝達経路で回転力が伝達され、ロータ2が回転される。ここでは、ハンドルアーム121の回転力が減振部125を介してドライブギア軸15に伝達されるため、ギアの噛み合いによる振動が減衰されてハンドルアーム121に伝達される。これにより、釣人がハンドル部107を釣糸巻き取り方向に回転させたときの回転フィーリングを向上させることができる。
【0071】
そして、減振部125が所定量まで弾性変形した後は、第2金属部材36と第1金属部材35とが係合して、ハンドルアーム121の回転がハンドル軸118に伝達される。詳
細には、減振部125の弾性爪125bが所定量まで弾性変形すると、弾性爪125bよりも周方向の幅が狭い金属爪36bが第1金属部材35の爪受部35cに係合する。
【0072】
すなわち、ハンドルアーム21による釣糸巻取り力が大きい高負荷の場合は、前述のように、減振部125が弾性変形し、ハンドルアーム121→第1金属部材35(爪受部35c)→第2金属部材36(金属爪36b)→ハンドル軸118→ドライブ軸17→ギア部16→ピニオンギア3の伝達経路で回転力が伝達され、ロータ2が回転される。ここでは、ハンドルアーム121の回転力が減振部125を介在せずにドライブギア軸15に直接伝達されるため、回転力を素早く確実に伝達することができる。
【0073】
以上のように、第2実施形態においても、例えば、釣糸を巻き取る回転方向への負荷が小さいときは減振部125を介してハンドルアーム121の回転がドライブギア軸15に伝達され、高い負荷が作用したときは第2金属部材36を介して回転が伝達されるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1実施形態と同様に、減振部125は、ギアの噛み合いによる振動が発生するギアの径(ここでは、ギア部16のギア径)より小径の伝達経路(ここでは、第1金属部材35(爪受部35c)、第2金属部材36(金属爪36b)及びハンドル軸118の径)に設けられているので、効果的に、振動を減衰することができる。
【0074】
[第2実施形態の変形例]
第2実施形態の変形例は、第2実施形態の減振部125の構成のみを変えたものである。ここでは、
図10に示すように、減振部125cは、第2金属部材36の金属爪36bの両側面に固定されている。すなわち、減振部125cは第1金属部材35の爪受部35cと第2金属部材36の金属爪36bとの間の隙間を埋めるように配置されている。これにより、釣糸を巻き取る回転方向への負荷がかかって、減振部125cが弾性変形した場合でも、金属爪36bがあることで、ハンドルアーム121の回転をハンドル軸118に伝達することができる。
【0075】
なお、第2実施形態の変形例では、爪受部35cと金属爪36bとが係合する部分の間に減振部125cが配置されているため、減振部125cが弾性変形しても爪受部35cと金属爪36bとが当接して係合することはない。このため、ここでは第2実施形態と異なり、減振部125cが所定量弾性変形した場合でも、常に減振部125cを介して第1金属部材35の回転が第2金属部材36に伝達される。
【0076】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を採用した両軸受リール200は、
図11及び
図12に示すように、リール本体41と、スプール42と、ギア機構106と、を備えている。
【0077】
リール本体41は、フレーム45と、フレーム45の両側を覆うように装着された第1側カバー46及び第2側カバー47と、フレーム45の前方に装着された前カバー(図示しない)と、を有している。
【0078】
フレーム45は、
図12に示すように所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された第1側板45a及び第2側板45bと、第1側板45aと第2側板45bとを連結する複数の連結部45cと、釣竿に装着される装着部45dと、を有している。
【0079】
スプール42は、
図12に示すように、第1側板45aと第2側板45bとの間に配置されている。スプール42の外周面には釣糸が巻き付けられる。スプール42は、スプール42の中央を貫通するスプール軸48に固定されて、スプール軸48と一体的に回転する。スプール軸48の両端は、軸受部材50a,50bにより、リール本体41に対して
回転自在に支持されている。
【0080】
ギア機構206は、
図12に示すように、ドライブギア220と、ピニオンギア52と、ドラグ機構53と、ハンドル部207と、減振部225と、を備えている。
【0081】
ドライブギア220は、ドライブギア軸215と、所定のギア径を有するギア部216と、を有している。
【0082】
ドライブギア軸215は、
図13に示すように、第1軸部215aと、第2軸部215bと、ねじ孔215cと、を有している。ドライブギア軸215は、ギア部216のギア径よりも小さい径で形成されている。なお、ドライブギア軸215は、ドライブギア軸215の外周に配置されるワンウェイクラッチ55(
図12参照)によって、釣糸繰り出し方向への回転が禁止されている。
【0083】
第1軸部215aは、ドライブギア軸215の外端部に形成されている。第2軸部215bは、第1軸部215aから内端側に延びて、第1軸部215aの径よりも大径に形成されている。第1軸部215a及び第2軸部215bの断面形状は、非円形であり、ここでは小判形である。ねじ孔215cは、第1軸部215aの端面から第1軸部215aの内部を貫通して形成されている。
【0084】
ギア部216は、ドライブギア軸215に装着されている。ギア部216は、ドライブギア軸215とともに回転する。ピニオンギア52は、ギア部216に噛み合う。ドラグ機構53は、スプール42の糸繰り出し方向の回転を制動する。ここではドラグ機構53の詳細な説明は省略する。
【0085】
ハンドル部207は、ドライブギア軸215の第1軸部215aに装着されている。ハンドル部207は、ハンドルアーム221と、ハンドルアーム221の両端に装着されるハンドル把手222と、第1金属部材235(第1伝達部材の一例)と、第2金属部材236(第2伝達部材の一例)と、を有している。
【0086】
ハンドルアーム221は、ドライブギア軸215と軸交差する方向に延びている。ハンドルアーム221は、
図13に示すように、中央に軸方向に貫通する貫通孔221aを有している。貫通孔221aの周辺には、軸方向に貫通する複数の雌ねじ部221bが形成されている。雌ねじ部221bの内周面には雌ねじが形成されている。
【0087】
第1金属部材235は、
図13及に示すように、板状であり、貫通孔235bと、複数の爪受部235cと、複数の係止孔235eと、を有している。
【0088】
貫通孔235bには、ドライブギア軸215の第1軸部215aが貫通している。ここで、第1軸部215aのねじ孔215cには、ボルト56がハンドルアーム221の外端側からハンドルアーム221の貫通孔221aを貫通して螺合している(
図12参照)。そして、ボルト56の端面は、緩衝部材237を介してハンドルアーム221の外端面に当接している。このように、ボルト56をドライブギア軸215のねじ孔215cに螺合し、ボルト56の頭部をハンドルアーム221の外端面に緩衝部材237を介して当接させることによって、ハンドルアーム221の内端側の端面が減振部225および第2金属部材236を介してドライブギア軸215の第2軸部215bの外端面に当接している。これにより、ドライブギア軸215にハンドルアーム221が装着されている。緩衝部材237は、軸方向の振動を減衰するとともに、ボルト56の緩み止めとしても機能している。
【0089】
複数の爪受部235cはそれぞれ、貫通孔235bから径方向外方に凹んで形成されている。これにより、爪受部235cには、
図14に示すように、1対の側壁235dが形成されている。
【0090】
複数の係止孔235eはそれぞれ、爪受部235cよりも径方向外方に形成されている。第1金属部材235のリール本体41側からねじ部材57が係止孔235eを挿通して、ハンドルアーム221の雌ねじ部221bに螺合する。これにより、第1金属部材235は、ハンドルアーム221に回転不能に連結されている。
【0091】
第2金属部材236は、板状であり、貫通孔236aと、複数の金属爪(伝達爪の一例)236bとを有している。貫通孔236aは、第1軸部218aに係合する非円形の孔である。これにより、第2金属部材236は、ドライブギア軸215に回転不能に装着されている。第2金属部材236は、減振部225よりも剛性が高くなるように構成されている。
【0092】
複数の金属爪236bはそれぞれ、貫通孔236aから径方向外方に延びて形成されている。金属爪236bは、ハンドルアーム221を釣糸巻取り方向に回転したとき、爪受部235cの1対の側壁235dの少なくとも一方に係合可能に配置されている。詳細には、
図14に示すように、金属爪236bは、後述する弾性爪225bよりも周方向の幅が狭く形成されている。このため、ハンドルアーム221が回転していない状態において、金属爪236bは1対の側壁236dに当接しないように配置されている。
【0093】
減振部225は、板状に形成され、貫通孔225aと、複数の弾性爪225bと、を有している。減振部225は、例えば樹脂製であり、第1金属部材235よりも剛性が低い弾性変形可能な弾性部材である。
【0094】
貫通孔225aは、第1軸部218aに係合する非円形の孔である。これにより、減振部225は、ハンドル軸218に対して回転不能である。
【0095】
複数の弾性爪225bはそれぞれ、貫通孔225aから径方向外方に延びて形成されている。弾性爪225bは、爪受部235cと係合する。詳細には、
図14に示すように、減振部225の弾性爪225bは、爪受部235cの1対の側壁235dに当接して配置されている。
【0096】
<回転伝達経路>
第3実施形態の回転伝達経路は、第2実施形態と同じ構成であり、第2実施形態と同様の回転伝達経路をたどる。したがって、ここでは詳細な説明を省略する。
【0097】
<他の実施形態>
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、種々の変形又は修正が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0098】
(a)第1実施形態では、ハンドル軸18に大径部18c及び小径部18dを形成して小径部18dの外周に減振部25を装着しているが、ハンドル軸18の外径を均一の径にして、ハンドル軸18の外周に設けた溝にゴム製や樹脂製の弾性部材を装着してもよい。
【0099】
(b)第1実施形態では、係合部29の係合孔29aを小判形状にして係合しているが、小判形状に限られるものではない。多角形やDカット、キーやスプラインにして係合してもよい。また、第2及び第3実施形態についても、複数の爪受部35c,235cによっ
て弾性爪125b,225b及び金属爪36b,236bを係合しているが、係合部は少なくとも一つ以上あればよい。
【0100】
(c)第2実施形態の変形例では、減振部125cを少なくとも第1金属部材35と第2金属部材36とが係合する部分に設けていればよい。また、減振部125cを第1又は第2金属部材35,36に被せて、第1又は第2金属部材35,36に一体的に設けてもよい。
【0101】
(d)第1実施形態における筒状部材、第2および第3実施形態における第1、第2金属部材は、減振部より剛性が高ければ、特に金属以外の材料で形成されていてもよい。
【0102】
(e)第2実施形態の変形例を、第3実施形態に適用させてもよい。
【0103】
(f)なお、いずれの実施例においても、減振部は、ギアの噛み合いによる振動が発生するギアの径より小径の伝達経路に設けられることが、好ましく、より効果的に、振動を減衰することができる。