特許第6785614号(P6785614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785614
(24)【登録日】2020年10月29日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】演算処理方法及び金型プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/24 20060101AFI20201109BHJP
【FI】
   B30B15/24 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-203731(P2016-203731)
(22)【出願日】2016年10月17日
(65)【公開番号】特開2018-65151(P2018-65151A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100066061
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(73)【特許権者】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】山本 一
(72)【発明者】
【氏名】五島 紘一
【審査官】 永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−071198(JP,A)
【文献】 特開平10−113800(JP,A)
【文献】 特開平08−052528(JP,A)
【文献】 特開2004−042125(JP,A)
【文献】 特開平02−207998(JP,A)
【文献】 特開2016−209887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工装置における加工に関する演算処理方法であって、
前記プレス加工装置は、
各々に金型が設置可能であって設置された金型ごとの加工を実現するために列状に配置された複数の加工ステージと、
前記複数の加工ステージでの加工を1ストロークで同時に実行可能なプレス部と、
加工対象を前記複数の加工ステージに順次搬送する搬送手段と、
前記加工対象に加工を行う際の前記金型と前記加工対象との間のプレス荷重を検出する検出手段と、を有しており、
前記演算処理方法は、nを正の整数としたときの、
前記複数の加工ステージのうちのn番目の加工ステージである第n加工ステージにおいて、第n加工ステージに設置された金型である第n金型と前記加工対象との間のプレス荷重である第nプレス荷重を算出する第1工程と、
所定の基準位置から前記第n加工ステージまでの距離である第n距離と前記第nプレス荷重との積である第nモーメント力を算出する第2工程と、
前記第nモーメント力に基づき、前記プレス部による前記複数の加工ステージでの加工の際の、前記所定の基準位置から加工重心位置までの距離である加工重心距離を算出する第3工程と、を有し、
前記第nプレス荷重をF(n)とし、
前記第n距離をL(n)とし、
前記加工重心距離をLPとしたときに、
前記第3工程において、前記加工重心距離LPを以下式(1)に基づき算出する演算処理方法。
【数1】
【請求項2】
nを2以上の正の整数としたときの前記第nプレス荷重をF(n)とし、
kを正の整数としたときに、前記複数の加工ステージのうちのk番目の加工ステージである第k加工ステージにおいて、第k加工ステージに設置された金型である第k金型と前記加工対象との間のプレス荷重である第kプレス荷重をF(k)としたときに、
前記第1工程において、前記第nプレス荷重を以下式()に基づき算出する、請求項1に記載の演算処理方法。
【数2】
【請求項3】
各々に金型が設置可能であって設置された金型ごとのプレス加工を実現する複数の加工ステージと、
前記複数の加工ステージでの加工を1ストロークで同時に実行可能なプレス部と、
加工対象を前記複数の加工ステージに順次搬送する搬送手段と、
前記加工対象にプレス加工を行う際の前記金型と前記加工対象との間のプレス荷重を検出する検出手段と、
演算処理手段と、を有しており、
前記演算処理手段は、nを正の整数としたときの、
前記複数の加工ステージのうちのn番目の加工ステージである第n加工ステージにおいて、第n加工ステージに設置された金型である第n金型と前記加工対象との間のプレス荷重である第nプレス荷重を算出する第1工程と、
所定の基準位置から前記第n加工ステージまでの距離である第n距離と前記第nプレス荷重との積である第nモーメント力を算出する第2工程と、
前記第nモーメント力に基づき、前記プレス部による前記複数の加工ステージでの加工の際の、前記所定の基準位置から加工重心位置までの距離である加工重心距離を算出する第3工程と、を実行し、
前記第nプレス荷重をF(n)とし、
前記第n距離をL(n)とし、
前記加工重心距離をLPとしたときに、
前記第3工程において、前記加工重心距離LPを以下式(3)に基づき算出する金型プレス装置。
【数3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算処理方法及び金型プレス装置に係り、特に複数の加工ステージを有する金型プレス装置等のプレス加工装置において、プレス荷重のアンバランスを解消し、加工精度や金型寿命の向上を図るための演算処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属や樹脂等の加工対象(対象物)に対して金型プレス装置等のプレス加工装置を用いたプレス加工等の加工が行われている。例えば、特許文献1には、複数の加工ステージを有するプレス機械の構成が開示されている。このような構成によれば、複数の加工ステージにおける加工工程を1ストロークで行うことができるので、加工効率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−291099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の加工ステージを有するプレス加工装置の場合、加工ステージが列状(例えば、一列)に配置されることが多い。加工対象としてのワークが搬送装置等によって順次加工ステージに搬送されつつ加工ステージごとに異なる加工が行われる。列状に配置された複数の加工ステージで各々異なる加工が行われると、各加工ステージでのワークに対するプレス荷重が異なってしまう。そうすると、複数の加工ステージ全体でのプレス荷重のバランスが悪化してしまう場合がある。
【0005】
例えば、列状に配置された複数の加工ステージのセンターにコンロッドが配置されている場合、複数の加工ステージ全体でのプレス荷重の重心が略センターにあれば問題はない。しかし、複数の加工ステージの各々でのプレス荷重が異なり、全体としてのプレス荷重の重心がセンターからずれてしまうと、プレス荷重のバランスが悪くなってしまう。その結果として、金型のプレス方向に微妙なズレを生じてしまい、加工精度の悪化や金型寿命の低減を生じてしまう可能性がある。また、コンロッドを含む駆動部全体にアンバランスなプレス荷重が加わってしまい、駆動部の損傷を誘引してしまう可能性もある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたもので、複数の加工ステージを有するプレス加工装置において、プレス荷重のアンバランスを解消し、加工精度や金型寿命の向上、プレス加工装置の損傷防止を図ることのできる演算処理方法及び金型プレス装置を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の趣旨を有する。
【0008】
[趣旨1]
プレス加工装置における加工に関する演算処理方法であって、
前記プレス加工装置は、
各々に金型が設置可能であって設置された金型ごとの加工を実現するために列状に配置された複数の加工ステージと、
前記複数の加工ステージでの加工を1ストロークで同時に実行可能なプレス部と、
加工対象を前記複数の加工ステージに順次搬送する搬送手段と、
前記加工対象に加工を行う際の前記金型と前記加工対象との間のプレス荷重を検出する検出手段と、を有しており、
前記演算処理方法は、nを正の整数としたときの、
前記複数の加工ステージのうちのn番目の加工ステージである第n加工ステージにおいて、第n加工ステージに設置された金型である第n金型と前記加工対象との間のプレス荷重である第nプレス荷重を算出する第1工程と、
所定の基準位置から前記第n加工ステージまでの距離である第n距離と前記第nプレス荷重との積である第nモーメント力を算出する第2工程と、
前記第nモーメント力に基づき、前記プレス部による前記複数の加工ステージでの加工の際の、前記所定の基準位置から加工重心位置までの距離である加工重心距離を算出する第3工程と、を有する演算処理方法。
【0009】
[趣旨2]
演算処理方法は、nを2以上の正の整数としたときの前記第nプレス荷重をF(n)とし、
kを正の整数としたときに、前記複数の加工ステージのうちのk番目の加工ステージである第k加工ステージにおいて、第k加工ステージに設置された金型である第k金型と前記加工対象との間のプレス荷重である第kプレス荷重をF(k)としたときに、
前記第1工程において、前記第nプレス荷重を以下式(1)に基づき算出してもよい。
【数1】
【0010】
[趣旨3]
演算処理方法は、前記第nプレス荷重をF(n)とし、前記第n距離をL(n)とし、前記加工重心距離をLPとしたときに、
前記第3工程において、前記加工重心距離LPを以下式(2)に基づき算出してもよい。
【数2】
【0011】
[趣旨4]
金型プレス装置は、各々に金型が設置可能であって設置された金型ごとのプレス加工を実現する複数の加工ステージと、
前記複数の加工ステージでの加工を1ストロークで同時に実行可能なプレス部と、
加工対象を前記複数の加工ステージに順次搬送する搬送手段と、
前記加工対象にプレス加工を行う際の前記金型と前記加工対象との間のプレス荷重を検出する検出手段と、
演算処理手段と、を有しており、
前記演算処理手段は、nを正の整数としたときの、
前記複数の加工ステージのうちのn番目の加工ステージである第n加工ステージにおいて、第n加工ステージに設置された金型である第n金型と前記加工対象との間のプレス荷重である第nプレス荷重を算出する第1工程と、
所定の基準位置から前記第n加工ステージまでの距離である第n距離と前記第nプレス荷重との積である第nモーメント力を算出する第2工程と、
前記第nモーメント力に基づき、前記プレス部による前記複数の加工ステージでの加工の際の、前記所定の基準位置から加工重心位置までの距離である加工重心距離を算出する第3工程と、を実行する。
【0012】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の加工ステージを有するプレス加工装置において、プレス荷重のアンバランスを解消し、加工精度や金型寿命の向上、プレス加工装置の損傷防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係るプレス装置の概略図である。
図2図1のプレス装置の金型近傍を拡大した概略図である。
図3】制御部の内部構造図である。
図4】算出工程を説明するための概念図である。
図5】実施形態2に係るプレス装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
<金型プレス装置の説明>
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、実施形態1に係るプレス加工装置としての金型プレス装置(以下、プレス装置と略称する。)Sの概略図である。プレス装置Sは、筐体2の内外に、駆動モータ4、伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10、スライド12を有して構成される。また、プレス装置Sは、制御部14、表示画面(表示手段)16、入力部(入力手段)18、センサ(検出手段)24を有している。本実施形態1のプレス装置Sは、順送式のプレス装置であり、複数の加工ステージ5と、搬送機構(搬送手段)28とを更に有している。
【0016】
駆動モータ4は、例えばサーボ制御されるサーボモータであり、回転量及び回転方向を制御しつつ伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10を介して後述する金型3を上下移動させるものである。伝達機構6は、例えばギアやベルト等の伝達部材を有して構成され、駆動モータ4のモータ軸の回転をクランク軸8へと伝達するものである。駆動モータ4への制御信号は制御部14から送られるようになっている。
【0017】
クランク軸8及びコンロッド10は、伝達機構6により伝達されたモータ軸の回転移動を往復移動(本実施形態1では、上下移動。)に変換するためのものである。モータ軸の回転によりクランク軸8が回転し、クランク軸8に一端近傍が連結されたコンロッド10にその回転が伝達されてコンロッド10が上下移動(昇降移動)するようになっている。
【0018】
コンロッド10の他端近傍にはスライド12が連結されている。コンロッド10の上下移動に伴いスライド12がガイド(不図示)に沿って上下移動するようになっている。図2にその概略図を示すように、スライド12は、ボルスタ22と対面している。プレス装置Sにおいては、スライド12と対向するようにボルスタ22が配置されている。スライド12のボルスタ22と対向する側の面(本実施形態1では下面。)に金型3の一部としての上型3aが装着される。ボルスタ22のスライド12と対向する側の面(本実施形態1では上面。)に金型3の一部としての下型3bが装着される。
【0019】
上型3aと下型3bとの間に加工対象としてのワークWを配置し、上型3aと下型3bとで押圧することにより、プレス装置SによるワークWに対するプレス加工が行われる。詳しくは、制御部14により制御されて駆動モータ4が回転する。駆動モータ4の回転が伝達機構6、クランク軸8を介してコンロッド10へと伝達され、スライド12が上下移動する。スライド12の下方移動によって上型3aと下型3bとが押圧され、ワークWのプレス加工が行われる。すなわち、プレス装置Sにおいて、駆動モータ4、伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10、スライド12がプレス部を構成する。
【0020】
このプレス装置Sは、複数の加工ステージ5を有している。複数の加工ステージ5は、例えば、加工ステージ(第1加工ステージ)51、加工ステージ(第2加工ステージ)52、加工ステージ(第3加工ステージ)53を有している。プレス装置Sは、更に多くの加工ステージ(第4加工ステージ以降)を有していてもよい。
【0021】
複数の加工ステージ5には、各々加工ステージ5ごとの金型3が設置されている。例えば、加工ステージ51には、上型(第1上型)31aと下型(第1下型)31bとで構成される金型(第1金型)31が設置される。例えば、加工ステージ52には、上型(第2上型)32aと下型(第2下型)32bとで構成される金型(第2金型)32が設置される。例えば、加工ステージ53には、上型(第3上型)33aと下型(第3下型)33bとで構成される金型(第3金型)33が設置される。プレス装置Sが更に多くの加工ステージを有する場合は、それらの加工ステージごとに金型が設置される。上型31a〜33aは同じスライド12に装着され、下型31b〜33bは同じボルスタ22に装着されているので、プレス部の1ストロークのプレス動作(1回の上下移動)により、複数の加工ステージ51〜53における加工が並行して実行されるようになっている。
【0022】
複数の加工ステージ51〜53の各々に設置された金型31〜33は、ワークW(加工対象)に対し、各々異なる加工を実現する。例えば、金型31では絞り加工、金型32では曲げ加工、金型33では抜き加工が実現される。複数の加工ステージ51〜53は、プレス装置Sにおいて一連に配置される。例えば、図2に示すように、複数の加工ステージ51〜53は直線的に列状配置されてもよい。また、他の例として複数の加工ステージ51〜53が円弧状に一連配置されてもよい。
【0023】
搬送機構28は、ワークWを複数の加工ステージ51〜53に向けて順次搬送するためのものである。搬送機構28は、例えば、駆動モータ、駆動伝達機構等を有している。ワークWの原反としてのロール状又はシート状の金属材料WSが搬送機構28によりプレス装置Sへと引き込まれ、加工ステージ51へと送られる。加工ステージ51で一旦停止されたワークWは、金型31により加工され、搬送機構28により加工ステージ52へと送られる。加工ステージ52で一旦停止されたワークWは、金型32により加工され、搬送機構28により加工ステージ53へと送られる。加工ステージ53で一旦停止されたワークWは、金型33により加工され、搬送機構28によりそれ以降の加工ステージへと送られるか、又はプレス装置S外へと排出される。
【0024】
表示画面16は、プレス装置Sの動作状況や設定パラメータ等の表示を行うものである。表示画面16は、後述するように制御部14によって算出された加工重心の位置(加工重心位置)を表示したり、その加工重心位置とコンロッド10によるプレス荷重の位置(プレス荷重位置、以下、加工中心位置ともいう。)とのズレ量を表示したりすることができる。表示画面16は、例えば、液晶モニタ、LED表示装置、CRT等により構成される。
【0025】
入力部18は、プレス装置Sの動作指令(例えば、オン、オフ等。)や設定パラメータの入力等を行うためのものである。入力部18は、例えば、キーボード、ボタン、スイッチ、タッチパネル等により構成される。表示画面16及び入力部18は、いずれも制御部14に接続されている。入力部18から入力された情報は制御部14へと送られ、制御部14から送られた表示情報に基づき表示画面16が情報表示を行う。表示画面16には、複数の加工ステージ51〜53ごとの金型31〜33とワークWとの間で生じるプレス荷重の情報も表示することが可能である。
【0026】
センサ24は、プレス装置SがワークWにプレス加工を行う際の金型3とワークWとの間で生じるプレス荷重を検出するためのものである。センサ24は、加工ステージ51〜53ごとの圧縮力を検出するのでなく、プレス装置Sによる1回(1ストローク)のプレス加工における複数の加工ステージ全体でのプレス荷重を検出する。つまり、複数の加工ステージ51〜53の各々に複数のワークWが配置されている状態で、プレス装置Sがプレス加工を行った際のプレス荷重の合計を検出する。センサ24は、例えば、筐体2に設置された歪ゲージであってもよい。センサ24は、コンロッド10のいずれかの位置(例えば、中央近傍位置)に設置されていてもよい。
【0027】
制御部14は、図3に示すように、内部に演算処理手段としてのCPU14a、記憶手段としてのメモリ14bを有している。CPU14aは、駆動モータ4、表示画面16、入力部18と接続されている。制御部14は、センサ24による検出結果に基づき、各加工ステージ51〜53ごとのプレス荷重を算出する機能を有する。この詳細について後述する。
【0028】
<検出工程>
プレス装置Sでは、ワークWの原反としてのロール状又はシート状の金属材料WSが搬送機構28によって加工ステージ51へと送られる。このとき、加工ステージ51において上型3aと下型3bとは開放状態であり、それらの間にワークWが搬送されて載置される。この加工開始時の先頭のワークWをワークW1と呼ぶこととする。ワークW1が加工ステージ51の所定位置に停止したら、プレス部が動作し、上型3aと下型3bとが閉鎖され、ワークW1に対する加工ステージ51での加工が実行される。
【0029】
ワークW1に対する加工は、プレス部による高圧でのプレス加工により実現される。そのプレス加工時のワークW1に対するプレス荷重は、筐体2に設置されたセンサ24によって検出される。センサ24が歪ゲージである場合は、センサ24がプレス加工時の筐体2の歪み(伸び)を検出する(検出工程)。そして検出結果が制御部14へと送られ、CPU14aによりその検出結果に基づく金型3とワークW1との間のプレス荷重が算出される。ワークW1が加工ステージ51にのみ存在する場合は、このプレス荷重は加工ステージ51における金型31とワークW1との間での圧縮力である。
【0030】
加工ステージ51でのワークW1に対する加工が完了したら、プレス部が金型3を開放する。搬送機構28がワークW1を加工ステージ52へと搬送すると共に、次のワークW2を加工ステージ51へと搬送する。ワークW1が加工ステージ52の上下金型32間に載置され、ワークW2が加工ステージ51の上下金型31間に載置されて搬送が停止すると、プレス部が動作し、上型3aと下型3bとが閉鎖される。それにより、ワークW1に対する加工ステージ52でのプレス加工とワークW2に対する加工ステージ51でのプレス加工とが実行される。
【0031】
ワークW1、W2に対する加工は、プレス部による高圧でのプレス加工により実現される。そのプレス加工時のワークW1、W2に対するプレス荷重は、上記説明と同様に、筐体2に設置されたセンサ24により検出される。ワークW1が加工ステージ52に存在し、ワークW2が加工ステージ51に存在する場合は、このプレス荷重は加工ステージ52における金型32とワークW1との間のプレス荷重と加工ステージ51における金型31とワークW2との間のプレス荷重との合計である。
【0032】
加工ステージ52、51でのワークW1、W2に対する加工が完了したら、プレス部が金型3を開放する。搬送機構28がワークW1、W2を各々加工ステージ53、52へと搬送すると共に、次のワークW3を加工ステージ51へと搬送する。ワークW1が加工ステージ53の上下金型33間に載置され、ワークW2が加工ステージ52の上下金型32間に載置され、ワークW3が加工ステージ51の上下金型31間に載置されて搬送が停止すると、プレス部が動作し、上型3aと下型3bとが閉鎖される。それにより、ワークW1に対する加工ステージ53でのプレス加工とワークW2に対する加工ステージ52でのプレス加工とワークW3に対する加工ステージ51でのプレス加工とが実行される。
【0033】
ワークW1〜W3に対する加工は、プレス部による高圧でのプレス加工により実現される。そのプレス加工時のワークW1〜W3に対するプレス荷重は、上記説明と同様に、筐体2に設置されたセンサ24により検出される。ワークW1が加工ステージ53に存在し、ワークW2が加工ステージ52に存在し、ワークW3が加工ステージ51に存在する場合は、このプレス荷重は加工ステージ53における金型33とワークW1との間のプレス荷重と52における金型32とワークW2との間のプレス荷重と加工ステージ51における金型31とワークW3との間のプレス荷重との合計である。
【0034】
以下、搬送機構28によって金属材料WSが次々と下流側の加工ステージ5に搬送されるごとに、センサ24によって金型3とワークWとの間のプレス荷重が検出される。センサ24により検出される金型3とワークWとの間のプレス荷重は、複数の加工ステージ5に複数のワークWが存在する場合も、それらの合計値として検出される。なお、上記で説明したように、「センサ24により複数の加工ステージ5におけるプレス荷重の合計値を検出すること」、及び、「センサ24が直接的にプレス荷重を検出せず、センサ24による検出値に基いてCPU14aにより複数の加工ステージ5におけるプレス荷重の合計値を算出すること」のいずれも「センサ24によるプレス荷重の検出」と概念し、このプレス荷重の検出を実行する工程を検出工程と概念することとする。
【0035】
センサ24により検出されるプレス荷重Fは、加工ステージ51でのプレス荷重をF(1)、加工ステージ52でのプレス荷重をF(2)、加工ステージ53でのプレス荷重をF(3)としたときに、
・加工ステージ51にワークW1のみが存在する場合:F=F(1)
・加工ステージ52にワークW1が存在し、加工ステージ51にワークW2が存在する場合:F=F(1)+F(2)
・加工ステージ53にワークW1が存在し、加工ステージ52にワークW2が存在し、加工ステージ51にワークW3が存在する場合:F=F(1)+F(2)+F(3)
となる。
【0036】
書き換えると、
・n番目の加工ステージ5までワークWが存在する場合:
F=F(1)+F(2)+F(3)+・・・+F(n−1)+F(n)
つまり、
【数3】
である。ここで、F(n)は、n番目の加工ステージでのプレス荷重である。
【0037】
なお、各加工ステージ5には、型開きの際に金型3からワークWを離型させるためのコイルスプリング(不図示)が配置される場合がある。この場合、センサ24では、各加工ステージ5でのコイルスプリングによる圧縮力(離型力)も含めたプレス加重が検出される。
【0038】
<算出工程>
センサ24からのプレス荷重が制御部14へと送られると、CPU14aは、演算処理方法としての算出工程を実行する。算出工程は、後述するように、第1工程、第2工程、第3工程を有している。第1工程は、n番目の加工ステージである第n加工ステージにおいて、第n加工ステージに設置された金型である第n金型とワークWとの間のプレス荷重である第nプレス荷重を算出する工程である。第2工程は、所定の基準位置から第n加工ステージまでの距離である第n距離と第nプレス荷重との積である第nモーメント力を算出する工程である。第3工程は、第nモーメント力に基づき、プレス部による複数の加工ステージ5での加工の際の、所定の基準位置から加工重心位置までの距離(加工重心距離)を算出する工程である。
【0039】
<第1工程>
本実施形態1のプレス装置Sは、第1金型31が設置された第1加工ステージ51、第2金型32が設置された第2加工ステージ52、第3金型33が設置された第3加工ステージ53を有する。第1加工ステージ51におけるプレス荷重が第1プレス荷重F(1)であり、第2加工ステージ52におけるプレス荷重が第2プレス荷重F(2)であり、第3加工ステージ53におけるプレス荷重が第3プレス荷重F(3)である。
【0040】
第1工程では、CPU14aが、第n加工ステージの第nプレス荷重F(n)を、センサ24により検出されたプレス荷重Fの現在値と直前値との差分により求める。具体的には、ワークWが存在する加工ステージ5の圧縮力の合計値に基づいて、以下式(1)により各加工ステージ5での個別のプレス荷重、すなわち第nプレス荷重F(n)を算出する。
【0041】
F(n)=F−{F(1)+F(2)+F(3)+・・・+F(n−1)}
つまり、
【数4】
となる。
【0042】
<第2工程>
第2工程では、CPU14aが、所定の基準位置と第n加工ステージとの距離である第n距離と第nプレス荷重との積である第nモーメント力を算出する。所定の基準位置は、例えば図4に示すように、予め定められた位置Pである。位置Pは、プレス装置S内又はプレス装置S外の任意の位置に設定可能であるが、好ましくは、複数の加工ステージ5の配列方向(すなわち、複数の金型3の配列方向でもあり、搬送機構28の搬送方向でもある。)に沿って設定された任意の位置であり、より好ましくは、第1加工ステージ51の上流側の位置である。
【0043】
第n加工ステージの代表位置を第n金型の型中心位置とすると第n距離L(n)は、位置Pと第n金型の型中心位置との間の距離である。例えば図4に示すように、第1距離L(1)は、位置Pから第1金型31の型中心位置P31までの距離である。第2距離L(2)は、位置Pから第2金型32の型中心位置P32までの距離である。第1距離L(3)は、位置Pから第3金型33の型中心位置P33までの距離である。
【0044】
第2工程において、CPU14aは、第n距離L(n)と第nプレス荷重F(n)との積である第nモーメント力M(n)を算出する。すなわち、
M(n)=F(n)×L(n)
である。第1加工ステージ51における第1モーメント力M(1)=F(1)×L(1)であり、第2加工ステージ52における第2モーメント力M(2)=F(2)×L(2)であり、第3加工ステージ53における第3モーメント力M(3)=F(3)×L(3)である。
【0045】
<第3工程>
第3工程では、CPU14aが、第nモーメント力M(n)に基づき、複数の加工ステージ5での加工の際の加工重心距離LPを算出する。具体的には、加工重心距離LPは、位置Pから加工重心位置PBまでの距離で与えられ、以下式(2)により算出される。
【0046】
LP={M(1)+M(2)+M(3)+・・+M(n)}
/{(F(1)+F(2)+F(3)+・・+F(n)}
【数5】
【数6】
【0047】
複数の加工ステージ5で荷重されるプレス荷重の合計値が、加工重心位置PBの1箇所に荷重されることと、複数の加工ステージ5の各々でプレス荷重が荷重されることとは同義である。したがって、プレス部によって加工重心位置PBに荷重されること(すなわち、コンロッド10のセンターである加工中心位置PCが加工重心位置PBを通ること)は、プレス加工の荷重バランスの向上に寄与する。その結果、加工精度向上、金型3の寿命向上、プレス装置Sの破損防止を実現することができる。
【0048】
なお、第3工程において、CPU14aが、加工中心位置PCと加工重心位置PBとの差分であるズレ量ΔLを算出してもよい。ズレ量ΔLは、「位置Pから加工中心位置PCまでの距離である加工中心距離LQ」と「位置Pから加工重心位置PBまでの距離である加工重心距離LP」との差分と等しい。ズレ量ΔLの情報に基づき、例えばプレス装置Sの利用者が、ボルスタ22や金型3の設置位置をずらしてズレ量ΔLを0に近づけるようにすれば、プレス加工の荷重バランスを向上させることができる。もちろん、プレス加工装置Sが、ボルスタ22の設置位置の調整が可能な位置調整機構(不図示)を有しており、CPU14aによるズレ量ΔLの算出結果に基づいて、自動的にボルスタ22の設置位置を調整するようになっていてもよい。
【0049】
なお、上述した位置Pの情報、型中心位置P31〜P33の情報、加工中心位置PCの情報等の各種情報は、予めメモリ14b内に格納されていてもよい。また、これらの各種情報は、利用者によって入力部18から入力されてメモリ14b内に格納されるようになっていてもよい。型中心位置P31〜P33の情報がメモリ14b内に格納されることにより、CPU14aによる第n距離L(n)(位置Pからn番目の加工ステージである第n加工ステージまでの距離)の算出が可能となる。
【0050】
<表示工程>
算出工程における算出結果に基づき、プレス加工装置Sでは、表示画面16に、ズレ量ΔLが表示される。表示画面16にズレ量ΔLが表示されるので、利用者が容易にズレ量ΔLを把握することができ、ボルスタ22や金型3の位置調整が容易に実行可能となる。
【0051】
また、図4に示す情報、例えば、第nプレス荷重F(n)、第n距離L(n)、位置P、型中心位置P31〜P33、加工重心位置PB、加工中心位置PC、加工重心距離LP、加工中心距離LQ等の情報を、加工ステージ5や金型3を示す図と共に表示画面16に表示してもよい。各加工ステージ5の位置関係や、各加工ステージ5に荷重されるプレス荷重の強弱、加工重心位置PBと加工中心位置PCとのズレ量ΔL等を視覚的に把握し易くなり、利用者がボルスタ22や金型3の位置調整を行うに際して一層便利となる。
【0052】
[実施形態2]
以上、本発明の好ましい実施の形態1を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。例えば、図5に示すように、プレス装置SとコンピュータCとが接続され、コンピュータC内部のCPU14aによって算出工程が実行されてもよい。その場合において、算出工程における算出結果に基づき、ズレ量ΔLがコンピュータCの表示画面16に表示されてもよい。また、位置Pの情報、型中心位置P31〜P33の情報、加工中心位置PCの情報等の各種情報は、予めコンピュータCのメモリ14b内に格納されていてもよく、利用者によってコンピュータCの入力部18から入力されてメモリ14b内に格納されるようになっていてもよい。
【0053】
いずれにしても、算出工程の実行が実施形態1に説明したようにプレス装置S単体で行われてもよいし、実施形態2のようにプレス装置SとコンピュータCとが接続された構成では、コンピュータCによって行われてもコンピュータCとプレス装置Sとの協働で行われてもよい。なお、コンピュータCは、例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、携帯情報端末、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末等であり、CPU14aとメモリ14bとを有する制御部14、表示画面16、入力部18を含むハードウェアである。
【符号の説明】
【0054】
C:コンピュータ
F、F(1)〜F(3)、F(n):プレス荷重
L(1)〜L(3)、L(n):距離
LP:加工重心距離
LQ:加工中心距離
M(1)〜M(3)、M(n):モーメント力
P:位置(所定の基準位置)
PB:加工重心位置
PC:加工中心位置
P31〜P33:型中心位置
S:プレス装置(プレス加工装置としての金型プレス装置)
W:ワーク(加工対象)
WS:金属材料
ΔL:ズレ量
2:筐体
3:金型
3a:上型
3b:下型
4:駆動モータ
5:加工ステージ
6:伝達機構
8:クランク軸
10:コンロッド
12:スライド
14:制御部
14a:CPU(演算処理手段)
14b:メモリ(記憶手段)
16:表示画面(表示手段)
18:入力部(入力手段)
22:ボルスタ
24:センサ(検出手段)
28:搬送機構(搬送手段)
31:金型(第1金型)
31a:上型(第1上型)
31b:下型(第1下型)
32:金型(第2金型)
32a:上型(第2上型)
32b:下型(第2下型)
33:金型(第3金型)
33a:上型(第3上型)
33b:下型(第3下型)
51:加工ステージ(第1加工ステージ)
52:加工ステージ(第2加工ステージ)
53:加工ステージ(第3加工ステージ)
図1
図2
図3
図4
図5