(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785721
(24)【登録日】2020年10月29日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】DCDCコンバータ一体インバータ装置。
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20201109BHJP
【FI】
H02M7/48 ZZHV
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-107327(P2017-107327)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-207578(P2018-207578A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昭弘
(72)【発明者】
【氏名】山下 芳春
(72)【発明者】
【氏名】田所 啓一
(72)【発明者】
【氏名】古垣内 丈人
【審査官】
東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−44920(JP,A)
【文献】
特開2015−23664(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/158259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用モータに交流電流を供給するインバータ回路部と、
前記インバータ回路部に供給される電圧を変換するDCDCコンバータ回路部と、を備えるDCDCコンバータ一体インバータ装置であって、
前記インバータ回路部は、直流電流を交流電流に変換するパワーモジュールと、前記直流電流を平滑化するコンデンサと、前記コンデンサの収納空間を形成する壁と、前記壁と接触する放熱部材と、を有し、
前記壁は、前記インバータ回路部と前記DCDCコンバータ回路部との配列方向を横切る方向に沿って形成され、
前記DCDCコンバータ回路部は、前記壁を挟んで前記コンデンサと前記配列方向に対向する第1発熱回路部品と、前記壁を挟んで前記コンデンサと前記配列方向に対向する第2発熱回路部品と、を有し、
前記第1発熱回路部品は、前記第2発熱回路部品よりも前記放熱部材に近い位置に配置され、
前記壁は、前記第1発熱回路部品と前記コンデンサに挟まれる領域には、空気層を設けるための空間が形成されず、前記第2発熱回路部品と前記コンデンサに挟まれる領域に空気層を設けるための空間を形成するDCDCコンバータ一体インバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のDCDCコンバータ一体インバータ装置であって、
前記第1発熱回路部品は、前記電圧を変換するスイッチング素子であり、
前記第2発熱回路部品は、前記DCDCコンバータ回路部に流れる電流を検出する電流センサであるDCDCコンバータ一体インバータ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のDCDCコンバータ一体インバータ装置であって、
前記コンデンサは、前記壁に沿って配置される複数のコンデンサ素子を有し、
前記壁の前記空間は、前記複数のコンデンサ素子のそれぞれと対向するように形成されるDCDCコンバータ一体インバータ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載のいずれかのDCDCコンバータ一体インバータ装置であって、
前記第1発熱回路部品と前記第2発熱回路部品を支持するとともに電気配線を有する基板を備え、
前記インバータ回路部と前記DCDCコンバータ回路部の配列方向を第1列と定義した場合、
前記壁は、前記第1列を横切る方向に形成される第1面を有し、
前記基板は、前記電気配線を配置される面が前記第1面と対向するように配置されるDCDCコンバータ一体インバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCDCコンバータ回路部とインバータ回路部とを一体化したDCDCコンバータ一体インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車には、直流電圧を変換するDCDCコンバータ装置と、直流電力と交流電力を変換するインバータ装置とを備えられる。ハイブリッド自動車や電気自動車の小型化が求められ、DCDCコンバータ装置とインバータ装置を一つのケースに収納することにより、更なる小型化を図っている。
【0003】
例えば特許文献1では、コンデンサと第1発熱回路部品との間に冷却水路を設け放熱部材を介し冷却水路壁に放熱していた。またコンデンサに対向する第2発熱回路部品も上記と同様に放熱部材を介し冷却水路壁に放熱していた。
【0004】
しかしながら、小型化のために、コンデンサ等の耐熱温度が周囲の部品よりも低い部品も一つのケースに集積することになり、冷却水路設置により部品コストが増大したり、冷却水路の設置により装置の大型化が促進したりしてしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016‐159259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、コスト増大を抑制して、コンデンサの熱的な保護の両立させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るDCDCコンバータ一体インバータ装置は、車両駆動用モータに交流電流を供給するインバータ回路部と、前記インバータ回路部に供給される電圧を変換するDCDCコンバータ回路部と、を備えるDCDCコンバータ一体インバータ装置であって、前記インバータ回路部は、直流電流を交流電流に変換するパワーモジュールと、前記直流電流を平滑化するコンデンサと、前記コンデンサの収納空間を形成する壁と、前記壁と接触する放熱部材と、を有し、前記DCDCコンバータ回路部は、前記壁を挟んで前記コンデンサと対向する第1発熱回路部品と、前記壁を挟んで前記コンデンサと対向する第2発熱回路部品と、を有し、前記第1発熱回路部品は、前記第2発熱回路部品よりも前記放熱部材に近い位置に配置され、前記壁は、前記第2発熱回路部品と前記コンデンサに挟まれる領域に空気層を設けるための空間を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、コスト増大を抑制して、コンデンサの熱的な保護の両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】DCDCコンバータ一体インバータ装置1の外観斜視図である。
【
図2】DCDCコンバーター一体インバータ装置1の分解斜視図である。
【
図3】
図1の平面AAの矢印方向から見たDCDCコンバーター一体インバータ装置1の第1発熱回路部品210を含む断面図である。
【
図4】DCDCコンバータ側の基板200の外観斜視図である。
【
図5】
図1の平面BBの矢印方向から見たDCDCコンバーター一体インバータ装置1の第2発熱回路部品220を含む断面図である
【
図6】DCDCコンバータ一体インバータ装置1の内部のうちDCDCコンバータとコンデンサ40近傍の上面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0011】
図1は、DCDCコンバータ一体インバータ装置1の外観斜視図である。
図2は、DCDCコンバーター一体インバータ装置1の分解斜視図である。
図3は、
図1の平面AAの矢印方向から見たDCDCコンバーター一体インバータ装置1の第1発熱回路部品210を含む断面図である(ただしトップカバー10を除く)。
図4は、DCDCコンバータ側の基板200の外観斜視図である。
図5は、
図1の平面BBの矢印方向から見たDCDCコンバーター一体インバータ装置1の第2発熱回路部品220を含む断面図である(ただしトップカバー10を除く)。
図6は、DCDCコンバータ一体インバータ装置1の内部のうちDCDCコンバータとコンデンサ40近傍の上面拡大図である。
【0012】
図1及び
図2に示されるようび、DCDCコンバータ一体インバータ装置1は、車両駆動用モータに交流電流を供給するインバータ回路部60と、インバータ回路部に供給される電圧を変換するDCDCコンバータ回路部70と、を備える。
【0013】
ケース90はインバータ回路とDCDCコンバータ回路を収納するハウジングとして機能する。トップカバー10は、外観部品でありハウジングの一部であり、ケース90の開口を塞ぐ。水路カバー100は、ケース90に設けた冷却水路の開口部を塞ぐカバーである。冷却水路は、水路カバー100とケース90の間に設けられたガスケットをつぶすことで水路気密性能が保持されている。
【0014】
制御回路基板20は、インバータ回路及びDCDCコンバータ回路を制御する為の回路部を有する基板である。基板保持部材30は、制御回路基板20を固定する為の金属部品である。
【0015】
パワーモジュール50は、直流電力と交流電力を相互に変換するための半導体が収められているモジュールである。コンデンサ40は、パワーモジュール50に供給される直流電力を平滑化する。インバータ回路部60は、パワーモジュール50及びコンデンサ40により主に構成され、車両駆動用モータに交流電流を供給する。
【0016】
DCDCコンバーター回路部70は、インバータ回路部60に供給される電圧を変換するものである。DCDCコンバータ側基板200は、DCDCコンバータ回路部70の高電圧回路を制御する回路基板である。
【0017】
図3に示される第1発熱回路部品210は、DCDCコンバーター回路部70側に設けられ、電圧を変換するスイッチングを行ない動作時に発熱する部品である。
【0018】
第2流路600は、ケース90と水路カバー100との間に設けられ空間であり、この空間に冷却媒体を通し、ケース90を介して部品を冷却する流路である。
【0019】
インバータ回路ケース46は、パワーモジュール50やコンデンサ40を収容するハウジングであり、ケース90の中に収容されている。
【0020】
放熱部材230は、インバータ回路ケース46とケース90の間の熱伝導する為の部材であり、インバータ回路ケース46とケース90の間に挟まれる。
【0021】
収容空間48は、インバータ回路ケース46に形成され、コンデンサ40を収容する為の空間である。壁47は、収容空間48を形成するための部材の一部であり、第1発熱回路部品210とコンデンサ40の間に形成される。
【0022】
図4に示されるDCDCコンバータ側基板200に搭載される第1発熱回路部品210は、電圧を変換するスイッチングを行ない動作時に発熱する。第2発熱回路部品220は、DCDCコンバータ側基板200に流れる電流を検出し、電流に異常がある場合は電流を遮断するなど過電流保護をしてあり、発熱部品である。
【0023】
図5に示される空気層235は、インバータ回路ケース46の壁47に設けられた凹みであり、第2発熱回路部品220から発生した熱をコンデンサ40側へ伝熱しないようにする遮熱空間である。
【0024】
図3及び
図5に示されるように、インバータ回路部60は、パワーモジュール50と、コンデンサ40と、壁47と、壁47と接触する放熱部材235と、を有する。DCDCコンバータ回路部70は、壁47を挟んでコンデンサ40と対向する第1発熱回路部品210と、壁47を挟んでコンデンサ40と対向する第2発熱回路部品220と、を有する。
【0025】
そして、第1発熱回路部品210は、第2発熱回路部品220よりも放熱部材230に近い位置に配置される、また壁47は、第2発熱回路部品220とコンデンサ40に挟まれる領域に空気層235を設けるための空間を形成する。
【0026】
コンデンサ40は、耐熱温度が低い為、周囲高温部材から熱的に保護する必要がある。そのためコンデンサ40は、インバータ回路ケース46の収納空間48に配置され、収納空間48を形成する壁47を有する。
【0027】
壁47を挟んでコンデンサ40と対向する第1発熱回路部品210と、壁47を挟んでコンデンサ40と対向する第2発熱回路部品220は、基板200と電気的に接続している。
【0028】
第1発熱回路部品210及び第2発熱回路部品220は共に発熱する部品である。第1発熱回路部品210は、第2発熱回路部品220よりも放熱部材230に近い位置に配置されている。
【0029】
第1発熱回路部品210が発生した熱は、壁47、放熱部材230、ケース90を経由し、第2流路600へ放熱されることによりコンデンサ40への伝熱を抑えることができる。
【0030】
このとき第1発熱回路部品210とコンデンサ40の間の壁47に、液体冷媒を流すための第1流路を削除して、第2流路600への放熱経路とすることにより、部品点数の削減及びコスト低減を図っている。
【0031】
第1流路の削除により第2発熱回路部品220から発生した熱をコンデンサ40への伝熱させない為、第2発熱回路部品220から発生した熱は第2発熱回路部品220とコンデンサ40の間の壁47に空気層240を設けた。これによりコンデンサ40への伝熱を抑えることができる。
【0032】
第1発熱回路部品210と第2発熱回路部品220が発生した熱はそれぞれ異なった放熱方法にすることによりコンデンサ40を熱的に保護している。
【0033】
第1発熱回路部品210と第2発熱回路部品220が発生した熱はそれぞれ異なった放熱方法により、壁47部に第1流路がない状況でもコンデンサ40を熱的に保護することができる。
【0034】
本実施形態の第1発熱回路部品210は、例えば電圧を変換するスイッチング素子である。本実施形態の第2発熱回路部品220は、例えばDCDCコンバータ回路部70に流れる電流を検出する電流センサである。
【0035】
第1発熱回路部品210及び第2発熱回路部品220は、共に発熱する部品である。第1発熱回路部品210の一般的な電力は30W程度、第2発熱回路部品220の電力は3W程度である。第1発熱回路部品210は、第2発熱回路部品220よりも発熱量が大きくなる。第1発熱回路部品210は、電力変換の為のスイッチング動作をしている為、発熱量が大きい部品である。よって第1発熱回路部品210は、第2発熱回路部品220よりも発熱量が大きく、より放熱が必要な部品である。
【0036】
第1発熱回路部品210は、第2発熱回路部品220よりも放熱部材230に近い位置に配置されている。第1発熱回路部品210が発生した熱は壁47、放熱部材230、ケース90を経由し、第2流路600へ放熱している。第1発熱回路部品210は、第2発熱回路部品220よりも発熱量が大きい為、伝熱による放熱構造としており、これによりコンデンサ40への伝熱を抑えることができる。
【0037】
また第1発熱回路部品210よりも発熱量が小さい第2発熱回路部品220から発生した熱は第2発熱回路部品220とコンデンサ40の間の壁47に空気層240が設けられている。熱を遮断することによりコンデンサ40への伝熱を抑えることができる。
【0038】
第1発熱回路部品210と第2発熱回路部品220が発生した熱はそれぞれ異なった放熱方法にすることによりコンデンサ40を熱的に保護している。
【0039】
また
図6に示されるコンデンサ素子40aないし40fは、耐熱温度が他の回路部品に比較して低いため、周囲の高温部材から熱的に保護する必要がある。そこでコンデンサ40は、壁47に沿って配置される複数のコンデンサ素子40aないし40fを有する。そして壁47の空気層235を形成する空間は、複数のコンデンサ素子40aないし40fのそれぞれと対向するように形成される。
【0040】
これにより、壁47の設けた空気層235は複数のコンデンサ40に対向するように形成されたことにより、第2発熱回路部品220の熱による位置の制約がなくなり、コンデンサ40を熱的に保護することが可能となった。
【0041】
また
図5に示されるようにインバータ回路部と前記DCDCコンバータ回路部の配列方向を第1列と定義した場合、壁47は第1列を横切る方向に形成される第1面250を有する。DCDCコンバータ側基板200は、第1発熱回路部品210と第2発熱回路部品220を支持するとともに電気配線を有する。そしてDCDCコンバータ側基板200は、この電気配線を配置される面が第1面250と対向するように配置される。
【0042】
これにより、DCDCコンバータ側基板200の電気配線を壁47によってノイズから守ることができる。また
図6に示されるようにDCDCコンバータ一体インバータ装置1の上面からの投影面積が小さくなり、製品の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1…DCDCコンバータ一体インバータ装置、10…トップカバー、20…制御回路基板、30…基板保持部材、40…コンデンサ、40aないし40f…コンデンサ素子、46…インバータ回路ケース、47…壁、48…収容空間、50…パワーモジュール、60…インバータ回路部、70…DCDCコンバーター回路部、90…ケース、100…水路カバー、200…DCDCコンバータ側基板、210…第1発熱回路部品、220…第2発熱回路部品、230…放熱部材、235…空気層、250…第1面、600…第2流路