(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785730
(24)【登録日】2020年10月29日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】成形装置および樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/76 20060101AFI20201109BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
B29C33/76
B29C45/26
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-149076(P2017-149076)
(22)【出願日】2017年8月1日
(65)【公開番号】特開2019-25830(P2019-25830A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】姫野 智則
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−075376(JP,A)
【文献】
特開2002−240049(JP,A)
【文献】
特開昭58−188617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の型と、
前記第1の型に対向する第2の型と、
前記第1の型の第1のコアピンと、
前記第2の型の第2のコアピンとを備え、
前記第1のコアピンの先端部と前記第2のコアピンの先端部とは向かい合っており、
前記第1の型と前記第2の型とを型締めするときに、前記第1のコアピンの前記先端部と前記第2のコアピンの前記先端部とが接触して、前記第1のコアピンの少なくとも前記先端部および前記第2のコアピンの少なくとも前記先端部の少なくとも一方が弾性変形または塑性変形する、成形装置。
【請求項2】
弾性変形する前記先端部は、弾性部材を材料とする、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記第1のコアピンの前記先端部または前記第2のコアピンの前記先端部は、前記第1のコアピンまたは前記第2のコアピンに対向する側に、前記第2のコアピンまたは前記第1のコアピンの先端面を収容する凹部を有する、請求項1に記載の成形装置。
【請求項4】
前記凹部を有する前記先端部は、アルミニウムを含む、請求項3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記第1の型は型締めの際の固定側かつ前記第2の型は型締めの際の可動側であって、前記第1の型は、弾性構造を備え、前記第1のコアピンを前記弾性構造が弾性支持する、請求項1〜4のいずれかに記載の成形装置。
【請求項6】
第1の型と第2の型とを型締めする工程と、
前記型締めする工程の際に、前記第1の型の第1のコアピンと前記第2の型の第2のコアピンとが接触することによって、前記第1のコアピンの先端部または前記第2のコアピンの先端部が弾性変形または塑性変形する工程とを含む、樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記先端部が弾性変形または塑性変形した状態で、樹脂を注入する工程を含む、請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記第1の型と前記第2の型とを型締めすることで、前記第1のコアピンと前記第2のコアピンとが接触することにより、前記第1のコアピンの前記先端部または前記第2のコアピンの前記先端部に凹部を形成する工程を含む、請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記凹部に、前記凹部に対向する前記第1のコアピンの先端面または前記第2のコアピンの先端面を収容した状態で、樹脂を注入する工程を含む、請求項8に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
第1の型と、前記第1の型に対向する第2の型と、型締めする際に第2のコアピンと接する面から見て拡がる方向に設けられたテーパ部分を有する前記第1の型に設けられた第1のコアピンと、型締めする際に前記第1のコアピンと接する面から見て拡がる方向に設けられたテーパ部分を有する前記第2の型に設けられた前記第2のコアピンとを備えた成形装置を準備する工程と、
第1の型の第1のコアピンと第2の型の第2のコアピンとを接触させて塑性変形させることで、前記第1のコアピンの先端部または前記第2のコアピンの先端部に形成される凹部とを準備する工程と、
前記第1の型と前記第2の型とを型締めする工程と、
型締めする際に、前記第1のコアピンの前記先端部または前記第2のコアピンの前記先端部を前記凹部に収容する工程と、
前記第1の型と前記第2の型との内部に樹脂を注入する工程と、
注入された前記樹脂を固化する工程とを含む、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置および樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1(特開2000−141422号公報)には、中空の物品のための射出成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−141422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の射出成形装置においては、2つのコア部の先端が互いに接している射出成形位置で射出成形が行われると考えられる。しかしながら、特許文献1に開示されたような射出成形装置を用いて内部に中空を有する物品を形成する場合に、コア部の形状によっては、型締めしたときに2つのコア部の先端の接触面にズレが生じる現象(ピンズレ)や、樹脂を注入したときに2つのコア部の間に樹脂が入り込むことなどにより膜状に形成される樹脂(横バリ)が発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示された実施形態によれば、第1の型と、第1の型に対向する第2の型と、第1の型の第1のコアピンと、第2の型の第2のコアピンとを備え、第1のコアピンの先端部と第2のコアピンの先端部とは向かい合っており、第1の型と第2の型とを型締めするときに、第1のコアピンの先端部と第2のコアピンの先端部とが接触して、第1のコアピンの少なくとも先端部および第2のコアピンの少なくとも先端部の少なくとも一方が弾性変形または塑性変形する、成形装置を提供することができる。
【0006】
ここで開示された実施形態によれば、第1の型と第2の型とを型締めする工程と、型締めする工程の際に、第1の型の第1のコアピンと第2の型の第2のコアピンとが接触することによって、第1のコアピンの先端部または第2のコアピンの先端部が弾性変形または塑性変形する工程とを含む、樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【0007】
第1の型と、第1の型に対向する第2の型と、型締めする際に第2のコアピンと接する面から見て拡がる方向に設けられたテーパ部分を有する第1の型に設けられた第1のコアピンと、型締めする際に第1のコアピンと接する面から見て拡がる方向に設けられたテーパ部分を有する第2の型に設けられた第2のコアピンとを備えた成形装置を準備する工程と、第1の型の第1のコアピンと第2の型の第2のコアピンとを接触させて塑性変形させることで、第1のコアピンの先端部または第2のコアピンの先端部に形成される凹部とを準備する工程と、第1の型と第2の型とを型締めする工程と、型締めする際に、第1のコアピンの先端部または第2のコアピンの先端部を凹部に収容する工程と、第1の型と第2の型との内部に樹脂を注入する工程と、注入された樹脂を固化する工程とを含む、樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
ここで開示された実施形態によれば、ピンズレおよび横バリの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の成形装置の模式的な断面図である。
【
図2】実施形態1の第1の型および第2の型の模式的な断面図である。
【
図3】実施形態1の成形装置の射出ユニットと型締めユニットの駆動および型締めの一例を図解する模式的な断面図である。
【
図4】
図3に示される成形装置の型締めの一例を図解する模式的な拡大断面図である。
【
図5】
図4に示される成形装置の型への樹脂の注入の一例を図解する模式的な拡大断面図である。
【
図6】
図5に示される成形装置の型からの樹脂成形品の取り出しの一例を図解する模式的な拡大断面図である。
【
図7】
図6に示される樹脂成形品からの第2のコアピンの引き抜きの一例を図解した模式的な拡大断面図である。
【
図8】横バリの発生を図解する模式的な断面図である。
【
図9】実施形態2の成形装置の模式的な拡大断面図である。
【
図10】
図9に示される成形装置の第1の型および第2の型の模式的な拡大断面図である。
【
図11】
図10に示される成形装置の第1のコアピンの先端部に凹部が形成された状態の一例の模式的な断面図である。
【
図12】実施形態3の成形装置の模式的な拡大断面図である。
【
図13】実施形態4の成形装置の模式的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0011】
<実施形態1>
図1に、本発明の成形装置の一例である実施形態1の成形装置の模式的な断面図を示す。実施形態1の成形装置は、射出ユニット1と、型締めユニット2とを備える。射出ユニット1は、ホッパー3と、射出ユニット1から型締めユニット2の方向に延在する(延びる)加熱筒ユニット4と、加熱筒ユニット4の先端から型締めユニット2の方向に延在するノズル5とを備える。
【0012】
型締めユニット2は、型締めユニット2の射出ユニット1側の側面上に備えられる可動盤6と、可動盤6の射出ユニット1側に可動盤6と間隔を空けて向かい合う固定盤7と、可動盤6と固定盤7との間で可動盤6と固定盤7とを連結して水平方向に延在する複数のタイバー8と、固定盤7側に設置される第1の型9と、可動盤6側に設置され第1の型9と向かい合う第2の型10とを備える。固定盤7には、ノズル5を挿入できるように構成された開口部7aが設けられている。
【0013】
第1の型9は第2の型10の方向に向かって延在する第1のコアピン11を備え、第2の型10は第1の型9の方向に向かって延在する第2のコアピン12を備える。実施形態1の成形装置においては、型締めの際、第1の型9は固定されており、第2の型10のみが第1の型9に向かって動くが、この構成には限定されない。なお、第1のコアピン11のテーパ部分11bは、型締めする際に第2のコアピン12と接する面から見て拡がる方向に設けられ、第2のコアピン12のテーパ部分12bは、型締めする際に第1のコアピン11と接する面から見て拡がる方向に設けられる。少なくとも第1のコアピン11と第2のコアピン12との一方にテーパ部分を設けた場合の効果としては、樹脂成形品の取り出しが容易になる(離型性の向上)とともに、第1のコアピン11のテーパ部分11bおよび第2のコアピン12のテーパ部分12bの形状に対応する樹脂成形品の中空部分に後述する極細部材を出入りさせることが容易になる等の効果がある。
【0014】
なお、実施形態1の成形装置は、横型および縦型のいずれであってもよい。また、射出ユニット1および型締めユニット2の駆動源は、たとえば、空圧、水圧、油圧、または伝導サーボモータなどを用いることができる。
【0015】
図2に、実施形態1の第1の型9および第2の型10の模式的な断面図を示す。第1の型9は、
図1に示す固定盤7の第2の型10側の側面上に設けられた固定側取り付け板13と、固定側取り付け板13の第2の型10側に位置して固定側取り付け板13と間隔を空けて向かい合う固定側型板14と、固定側取り付け板13内に少なくとも1つ設けられた貫通孔であるスプル15と、固定側型板14内に設けられて固定側取り付け板1
3の面内に平行に延在するランナ16と、固定側型板14内に位置してランナ16の両端から第2の型10側に延在する複数のゲート17と、固定側取り付け板13の両端から固定側型板14内へ固定側取り付け板13に垂直方向に延在する複数のストップボルト18と、固定側取り付け板13の固定側型板14側に設けられた弾性部材19と、固定側型板14から第2の型10に向かって延在する第1のコアピン11とを備える。第1のコアピン11の先端部11aは、弾性変形する。第1のコアピン11の先端部11aに用いられる部材は、たとえば、弾性部材を材料とすることができる。弾性部材としては、たとえば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカンエーテル共重合体)や、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂またはフッ素ゴム等が用いられる。なお、固定側型板14に、第1のコアピン11を弾性支持し、第1のコアピン11の先端部と第2のコアピン12の先端部とが接触したときのクッションとなる弾性構造20を設置してもよい。この場合には、第1のコアピン11および第2のコアピン12のうちの少なくとも一方に局所的な大きな力がかかることで第1のコアピン11および第2のコアピン12のうちの少なくとも一方が破損したり変形したりすることをさらに抑制することができる。
【0016】
第2の型10は、
図1に示す可動盤6の第1の型9側の側面上に設置される可動側型板21と、可動側型板21の端部から第1の型9方向に延在するサイドコア22と、可動側型板21の表面から第1の型9に向かって延在する第2のコアピン12とを備える。第2のコアピン12の先端部12aは、たとえば第1のコアピン11の先端部11aと比べて弾性変形しにくいように構成することができる。なお、サイドコア22には、樹脂成形品の形状に応じて、凹部(アンダーカット部)23を設けてもよい。さらに、樹脂成形品を取り出す際に第2のコアピン12を樹脂成形品から引き抜くため、第2のコアピン12を可動側型板21内に収納する、または可動側型板21内を貫通させるような駆動機構であるコアピン先抜きエジェクター(図示せず)を、可動盤6または型締めユニット2に備えてもよい。
【0017】
以下、
図3〜
図7の模式的断面図を参照して、本発明の樹脂成形品の製造方法の一例である実施形態1の樹脂成形品の製造方法について説明する。
【0018】
まず、
図3に示すように、射出ユニット1と型締めユニット2とを、互いに近付くように駆動させる。これにより、射出ユニット1のノズル5が、型締めユニット2の固定盤7に設けられた開口部7a内に挿入される。また、第1の型9と第2の型10との型締めも行われる。
【0019】
図4に、
図3に示される型締めを図解する模式的な拡大断面図を示す。第1の型9と第2の型10との型締めは、固定側取付板13を固定した状態で、可動側型板21を第1のコアピン11方向に駆動させ、第1のコアピンの先端部11aに第2のコアピン12の先端部12aを接触させることで行われる。これにより、第1のコアピン11の先端部11aが弾性変形して、先端部11aに第2のコアピン12の先端部12aの形状に対応する凹部が形成される。また、サイドコア22を第1のコアピン11および第2のコアピン12に近付くように内側に駆動させた後に固定する。
【0020】
次に、
図5に示すように、型締めした後の型に樹脂を注入する。用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のどちらであってもよい。型への樹脂の注入は、たとえば、以下のように行うことができる。まず、
図5に示すように、第1のコアピン11の先端部11aが弾性変形して形成された凹部に第2のコアピン12の先端部12aを収容した状態で、融解状態の樹脂31を射出ユニット1のノズル5からスプル15に注入する。その後、ランナ16およびゲート17を通して、型締めされた第1の型9と第2の型10との間に樹脂31を注入する。
【0021】
その後、
図6および
図7に示すように、型から樹脂成形品41を取り出す。型からの樹脂成形品41の取り出しは、たとえば、以下のように行うことができる。まず、
図6に示すように、型締めされた第1の型9と第2の型10との間に注入された樹脂31を固化(硬化)させた後に、可動側型板21を第1のコアピン11から離れる方向に駆動させるとともに、サイドコア22を外側に駆動させる。
【0022】
その後、
図7に示すように、樹脂成形品41から第2のコアピン12を引き抜く。第2のコアピン12は、たとえば、第1のコアピン11から離れる方向に駆動され、可動側型板21内に収納される、または可動側型板21よりも可動盤6側に移動させることにより、第2のコアピン12を樹脂成形品41から引き抜くことができる。以上により、実施形態1の成形装置および樹脂成形品の製造方法によって、樹脂成形品41を製造することができる。
【0023】
実施形態1の成形装置および樹脂成形品の製造方法は、ピンズレの発生を抑制することができる。第1のコアピン11の先端部11aに第2のコアピン12の先端部12aが接触して先端部11aが弾性変形することにより、第1のコアピン11の先端部11aに第2のコアピン12の先端部12aの形状に追従した凹部を形成することができる。この先端部11aの凹部は第2のコアピン12の先端部12aの先端面を収容するためピンズレの発生を抑制することができる。
【0024】
また、実施形態1の成形装置および樹脂成形品の製造方法は、第1のコアピン11と第2のコアピン12の延在方向と交差する方向に延在するように膜状に形成される樹脂(横バリ)の発生も抑制することができる。
図8に、横バリの発生を図解する模式的な断面図を示す。たとえば、型締め後の型への樹脂31の注入時に、第1のコアピン11のテーパ部分11bに樹脂31の圧力が加わることがある。このとき、第1のコアピン11の先端部11aが弾性変形しない場合には、樹脂の圧力によって、第1のコアピン11が第2のコアピン12から離れて、第1のコアピン11の先端部11aと第2のコアピン12の先端部12aとの間に隙間が生じることがある。この隙間に樹脂が入り込んで硬化することにより、横バリが発生する。これに対し、実施形態1の成形装置および樹脂成形品の製造方法では、
図4等に示されるように、第1のコアピン11の先端部11aは弾性変形をすることにより、仮に第1のコアピン11のテーパ部分11bに樹脂31の圧力が加わって先端部11aと先端部12aと接触しなくなるような力が加わったとしても、先端部11aは先端部12aの形状に追従するように弾性変形可能であるため、横バリの発生を抑制することができる。
【0025】
また、実施形態1の成形装置および樹脂成形品の製造方法は、固定側コアピンの先端部の凹部の側壁に沿った膜状に形成される樹脂(縦バリ)の発生も抑制することもできる。従来より用いられる樹脂成形品の製造方法では、型ずれを防止するために、固定側コアピンの先端部と可動側コアピンの先端部のそれぞれに予め凹部または凸部が設けられたコアピンを用いる。このようなコアピンの構造では、固定側コアピンの先端部の凹部の側壁が成形回数の増加に応じて可動側コアピンの先端部との摩擦によって擦り減って薄くなる。このため、固定側コアピンの先端部の凹部の側壁が薄くなることによって、固定側コアピンの先端部と可動側のコアピンの先端部とを接触させたときに、第1のコアピン11と第2のコアピン12との間に隙間が生じる。この隙間に樹脂が入り込むことによって縦バリが生じることがある。また、コアピンの加工が複雑になり、設備コストが増大するおそれがある。これに対し、実施形態1の成形装置および樹脂成形品の製造方法では、第1のコアピン11の先端部11aは、型締めごとに弾性変形して第2のコアピン12の先端部12aの形状に追従した形状で接触することになるため、縦バリの発生を抑制できる。また、実施形態1の成形装置および樹脂成形品の製造方法では、複雑なコアピンの加工を必要としないため、設備コストも抑制することができる。
【0026】
実施形態1の成形装置および樹脂成形品の製造方法で製造できる樹脂成形品は、たとえば、極細部材を保持する保持具を用途として用いられる極小穴を有するプラスチック成形品がある。極細部材には、たとえば、医療用注射針がある。樹脂成形品が保持する医療用注射針の細穴径は、たとえば0.10mm〜2.70mmとすることができる。極細部材には医療用注射針以外にも、たとえば、針灸師が用いる鍼、金属製の極細線材および樹脂製の医療用カテーテルチューブがある。その他の成形品の用途として、たとえば、シリンジの先端につけるプラスチックニードルおよびマイクロピペットに用いられるピペットチップが挙げられる。
【0027】
なお、上記においては第1のコアピン11の先端部11aが弾性変形する場合について説明したが、これには限定されず、たとえば第2のコアピン12の先端部12aのみが弾性変形してもよく、先端部11aおよび先端部12aの両方が弾性変形してもよい。
【0028】
また、実施形態1の成形装置は、射出成形以外に、たとえばトランスファー成形や圧縮成形にも適用することができる。
【0029】
<実施形態2>
図9に、実施形態2の成形装置の模式的な拡大断面図を示す。実施形態2の成形装置は、第1のコアピン11の先端部11aが塑性変形することを特徴とする。第1のコアピン11の先端部11aには、たとえば、アルミニウムを含む塑性部材を材料とすることができる。
【0030】
実施形態2の成形装置および樹脂成形品の製造方法においては、
図10に示すように、第1の型9と、第1の型9に対向する第2の型10と、型締めする際に第2のコアピン12と接する面から見て拡がる方向に設けられたテーパ部分11bを有する第1の型9に設けられた第1のコアピン11と、型締めする際に第1のコアピン11と接する面から見て拡がる方向に設けられたテーパ部分12bを有する第2の型10に設けられた第2のコアピン12とを備えた成形装置を準備する。可動側型板21を第1のコアピン11に近付くように駆動させ、第1のコアピン11の先端部11aを第2のコアピン12の先端部12aに接触させることで、第1のコアピン11の先端部11aを塑性変形させる。その後、第1の型9と第2の型10の型締めを行う。その後、第1のコアピン11の先端部11aが塑性変形したときは
図5と同様にして形成された凹部に第2のコアピン12の先端部12aの先端面を収容し、その状態で第1の型9と第2の型10との間に樹脂31を注入する。その後、注入された樹脂31を固化させた後に、たとえば
図6および
図7と同様にして型から樹脂成形品41を取り出す。以上により、実施形態2の成形装置および樹脂成形品の製造方法によって樹脂成形品41を製造することができる。
図11に示すように、第1のコアピン11の先端部11aは塑性変形しているため、実施形態1の成形装置とは異なり、樹脂成形品41を取り出すために型開きを行なった後でも第1のコアピン11の先端部11aの凹部の形状は元には戻らない。なお、実施形態2においては、成形に先立って第2のコアピン12の先端部12aを第1のコアピン11の先端部11aに接触させて、第1のコアピン11の先端部11aに第2のコアピン12の先端部12aの形状に応じた凹部が予め塑性変形により形成された成形装置を用いて成形を行ってもよい。
【0031】
このように、実施形態2の成形装置および樹脂成形品の製造方法においても、第1のコアピン11の先端部11aが第2のコアピン12の先端部12aの形状に応じた凹部を形成するように塑性変形する。そのため、ピンズレの発生および横バリの発生を抑制することができる。また、実施形態2においては、従来の固定側コアピンの先端部と可動側コアピンの先端部のそれぞれに予め凹部または凸部を設ける場合と比べて、凹部を簡便に形成できる。
【0032】
なお、上記においては第1のコアピン11の先端部11aが塑性変形する場合について説明したが、これには限定されず、たとえば第2のコアピン12の先端部12aのみが塑性変形してもよく、先端部11aおよび先端部12aの両方が塑性変形してもよい。
【0033】
<実施形態3>
図12に、実施形態3の成形装置の模式的な断面図を示す。実施形態3の成形装置は、第1のコアピン11全体が弾性部材から構成されることを特徴としている。実施形態3の成形装置および樹脂成形品の製造方法は、実施形態1と同様に、第1のコアピン11の先端部11aが弾性変形し、ピンズレの発生を抑制すること、ならびに横バリおよび縦バリの発生を抑制することができる。
【0034】
なお、上記においては第1のコアピン11の全体が弾性部材から構成される場合について説明したが、これには限定されず、たとえば第2のコアピン12の全体が弾性部材から構成されてもよく、第1のコアピン11全体および第2のコアピン12全体の両方が弾性部材から構成されてもよい。
【0035】
また、上記においては第1のコアピン11の全体が弾性部材から構成される場合について説明したが、第1のコアピン11の先端部11aを含む一部が弾性部材から構成されてもよく、第2のコアピン12の先端部12aを含む一部が弾性部材から構成されてもよく、第1のコアピン11の先端部11aを含む一部および第2のコアピン12の先端部12aを含む一部の両方が弾性部材から構成されてもよい。
【0036】
<実施形態4>
図13に、実施形態4の成形装置の模式的な断面図を示す。実施形態4の成形装置は、第1のコアピン11全体が塑性部材から構成されることを特徴としている。実施形態4の成形装置および樹脂成形品の製造方法は、実施形態2と同様に、第1のコアピン11の先端部11aが塑性変形するため、ピンズレの発生および横バリの発生を抑制することができる。また、実施形態2と同様に、凹部を簡便に形成できる。
【0037】
なお、上記においては第1のコアピン11の全体が塑性部材から構成される場合について説明したが、これには限定されず、たとえば第2のコアピン12の全体が塑性部材から構成されてもよく、第1のコアピン11の全体および第2のコアピン12の全体の両方が塑性部材から構成されてもよい。
【0038】
また、上記においては第1のコアピン11全体が塑性部材から構成される場合について説明したが、第1のコアピン11の先端部11aを含む一部が塑性部材から構成されてもよく、第2のコアピン12の先端部12aを含む一部が塑性部材から構成されてもよく、第1のコアピン11の先端部11aを含む一部および第2のコアピン12の先端部12aを含む一部の両方が塑性材料から構成されてもよい。
【0039】
以上のように実施形態について説明を行なったが、上述の実施形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0040】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
ここで開示された実施形態は、成形装置および樹脂成形品の製造方法に利用することができ、極小径穴を有する樹脂成形品の成形に特に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 射出ユニット、2 型締めユニット、3 ホッパー、4 加熱筒ユニット、5 ノズル、6 可動盤、7 固定盤、7a 開口部、8 タイバー、9 第1の型、10 第2の型、11 第1のコアピン、11a 第1のコアピンの先端部、12 第2のコアピン、12a 第2のコアピンの先端部、13 固定側取り付け板、14 固定側型板、15 スプル、16 ランナ、17 ゲート、18 ストップボルト、19 弾性部材、20 弾性構造、21 可動側型板、22 サイドコア、23 凹部(アンダーカット部)、31 樹脂、41 樹脂成形品。