特許第6785775号(P6785775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6785775光電変換素子、それを備えた太陽電池モジュールおよび太陽光発電システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785775
(24)【登録日】2020年10月29日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】光電変換素子、それを備えた太陽電池モジュールおよび太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20201109BHJP
【FI】
   H01L31/06 455
【請求項の数】8
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-539818(P2017-539818)
(86)(22)【出願日】2016年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2016075310
(87)【国際公開番号】WO2017047375
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-180410(P2015-180410)
(32)【優先日】2015年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】國吉 督章
(72)【発明者】
【氏名】東 賢一
(72)【発明者】
【氏名】神川 剛
(72)【発明者】
【氏名】原田 真臣
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】辻埜 和也
(72)【発明者】
【氏名】鄒 柳民
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−080888(JP,A)
【文献】 特表2014−515556(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/149021(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/001885(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0144183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0747
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、リンをドーパントとして含むn型非晶質半導体層と、
前記半導体基板上の面内方向において前記n型非晶質半導体層に隣接して形成され、ボロンをドーパントとして含むp型非晶質半導体層と、を備え、
前記半導体基板上に成膜された一の薄膜において、膜厚が最大である第1の点を含みかつ膜厚が略一定である領域をフラット領域とし、当該一の薄膜の面内方向において当該薄膜の膜厚の減少率が第1の減少率から前記第1の減少率よりも大きい第2の減少率に変化する点を第2の点とし、当該一の薄膜の面内方向において前記フラット領域の端部から前記第2の点までの領域を膜厚減少領域と定義したとき、
前記n型非晶質半導体層は、前記p型非晶質半導体層と隣り合う面に前記膜厚減少領域を有し、前記p型非晶質半導体層は、前記n型非晶質半導体層と隣り合う面に前記膜厚減少領域を有し、
前記p型非晶質半導体層の前記膜厚減少領域の傾斜角度は、前記n型非晶質半導体層の前記膜厚減少領域の傾斜角度よりも急峻であり、
前記p型非晶質半導体層と前記n型非晶質半導体層との少なくとも一方における前記膜厚減少領域のドーパント濃度は、前記フラット領域におけるドーパント濃度よりも大きい、光電変換素子。
【請求項2】
隣接する前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層は、20μm以上、100μm未満の距離を隔てて配置されている、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記半導体基板の前記n型非晶質半導体層及び前記p型非晶質半導体層が形成されている面はテクスチャが形成されている、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層のそれぞれは、前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層とが隣接する方向に直交する方向に、一つながりに形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層の少なくとも一方は、前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層とが隣接する方向に直交する方向に、離間して配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層のそれぞれは、前記半導体基板において交差する2つの方向において、互いに隣接するように配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記半導体基板上に、前記半導体基板に接するように形成された真性非晶質半導体層をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記n型非晶質半導体層上に設けられた第1電極と、
前記p型非晶質半導体層上に設けられた第2電極と、をさらに備え、
前記第1電極は、前記n型非晶質半導体層における前記膜厚減少領域の少なくとも一部と接し、前記第2電極は、前記p型非晶質半導体層における前記膜厚減少領域の少なくとも一部と接する、請求項1から7のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、それを備えた太陽電池モジュールおよび太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、n型の結晶シリコン基板とp型の非晶質シリコン層との間に真性(i型)の非晶質シリコンを介在させて、界面での欠陥を低減し、ヘテロ接合界面での特性を改善させた光電変換装置が知られている。この光電変換装置は、ヘテロ接合型太陽電池と呼ばれている。
【0003】
国際公開第2013/133005号パンフレットには、受光面とは反対側の裏面にn型非晶質半導体層およびp型非晶質半導体層が形成され、n型非晶質半導体層およびp型非晶質半導体層上にn電極とp電極とがそれぞれ形成されたヘテロ接合型太陽電池(以下、裏面ヘテロ接合型太陽電池と称する)が開示されている。
【発明の開示】
【0004】
裏面ヘテロ接合型太陽電池の作製において、メタルマスクなどのシャドーマスクを用い、化学気相成長法により、真性非晶質半導体層上にn型非晶質半導体層及びp型非晶質半導体層を形成する場合がある。この場合において、p型非晶質半導体層を形成する際にドーパントとして用いられるボロンは、シャドーマスクの開口部以外の領域に回り込みやすい。そのため、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層との間のギャップ領域にボロンが拡散する。ギャップ領域にボロンが拡散することで、真性非晶質半導体層においてダングリングボンドを終端していた水素原子が引き寄せられ、パッシベーション性が低下し、光電変換効率が低下する。
【0005】
本発明は、ボロンの拡散を抑制し、変換効率を向上させうる光電変換素子及び光電変換モジュール、及び太陽光発電システムを提供する。
【0006】
本発明の一実施形態における光電変換素子は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、リンをドーパントとして含むn型非晶質半導体層と、前記半導体基板上の面内方向において前記n型非晶質半導体層に隣接して形成され、ボロンをドーパントとして含むp型非晶質半導体層と、を備え、前記半導体基板上に成膜された一の薄膜において、膜厚が最大である点を第1の点とし、当該一の薄膜の面内方向において当該薄膜の膜厚の減少率が第1の減少率から前記第1の減少率よりも大きい第2の減少率に変化する点、または当該一の薄膜の面内方向において当該一の薄膜の膜厚の変化率の符号が負から正に変化する点を第2の点とし、当該一の薄膜の面内方向において前記第1の点から前記第2の点までの領域を膜厚減少領域と定義したとき、前記n型非晶質半導体層は、前記p型非晶質半導体層と隣り合う面に前記膜厚減少領域を有し、前記p型非晶質半導体層は、前記n型非晶質半導体層と隣り合う面に前記膜厚減少領域を有し、前記p型非晶質半導体層の前記膜厚減少領域の傾斜角度は、前記n型非晶質半導体層の前記膜厚減少領域の傾斜角度よりも急峻である。
【0007】
本発明の実施の形態によれば、ボロンの拡散を抑制し、変換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、この発明の実施の形態1による光電変換素子の構成を示す断面図である。
図2図2の(a)は、図1に示すn型非晶質半導体層の詳細な構造を示す断面図である。図2の(b)は、図1に示すp型非晶質半導体層の詳細な構造を示す断面図である。
図3図3は、図1に示すn型非晶質半導体層の他の詳細な構造を示す断面図である。
図4図4の(a)は、図1に示すn型非晶質半導体層の上に形成される電極及び保護膜の拡大図である。図4の(b)は、図1に示すp型非晶質半導体層の上に形成される電極及び保護膜の拡大図である。
図5図5は、図1に示す光電変換素子の製造方法を示す第1の工程図である。
図6図6は、図1に示す光電変換素子の製造方法を示す第2の工程図である。
図7図7は、図1に示す光電変換素子の製造方法を示す第3の工程図である。
図8図8は、図1に示す光電変換素子の製造方法を示す第4の工程図である。
図9図9は、図1に示す光電変換素子の製造方法を示す第5の工程図である。
図10図10の(a)は、実施の形態1のn型非晶質半導体層を形成する際に用いるシャドーマスクの概略平面図であり、図10の(b)は、図10の(a)に示すシャドーマスクのI−I線断面図である。
図11図11の(a)は、実施の形態1のp型非晶質半導体層を形成する際に用いるシャドーマスクの概略平面図であり、図11の(b)は、図11の(a)に示すシャドーマスクのII−II線断面図である。
図12A図12Aは、膜厚減少領域の傾斜角度がn型非晶質半導体層と同様のp型非晶質半導体層と、そのボロン濃度を示す図である。
図12B図12Bは、実施の形態1のp型非晶質半導体層とそのボロン濃度を示す図である。
図13図13は、ギャップ領域の幅と光電変換素子の直列抵抗との関係を示す図である。
図14図14は、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とが重なる場合と、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とが重ならない場合の逆方向電流密度を示す図である。
図15図15は、図1に示す光電変換素子の裏面側から見た平面図である。
図16図16は、配線シートの平面図である。
図17図17は、実施の形態2による光電変換素子の構成を示す断面図である。
図18図18は、実施の形態2による半導体基板を作製する製造工程を説明する図である。
図19図19は、テクスチャが形成された半導体基板とシャドーマスクとの間の空隙領域を説明するための図である。
図20図20は、実施の形態3における光電変換素子を裏面側から見た概略平面図である。
図21A図21Aは、図20に示す光電変換素子のIII−III線における断面図である。
図21B図21Bは、図20に示す光電変換素子のIV−IV線における断面図である。
図22図22の(a)は、実施の形態3においてp型非晶質半導体層を形成する際に用いるシャドーマスクの概略平面図である。図22の(b)は、図22の(a)に示すシャドーマスクのV−V線における断面図である。図22の(c)は、図22の(a)に示すシャドーマスクのVI−VI線における断面図である。
図23図23は、実施の形態4における光電変換素子を裏面側から見た概略平面図である。
図24図24は、実施の形態4においてn型非晶質半導体層を形成する際に用いるシャドーマスクの概略平面図である。
図25図25は、実施の形態5における光電変換素子を裏面側から見た概略平面図である。
図26A図26Aは、図25に示すn型非晶質半導体層を形成する際に用いるシャドーマスクの概略平面図である。
図26B図26Bは、図25に示すp型非晶質半導体層を形成する際に用いるシャドーマスクの概略平面図である。
図27図27は、実施の形態6による光電変換素子を備える光電変換モジュールの構成を示す概略図である。
図28図28は、実施の形態7による光電変換素子を備える太陽光発電システムの構成を示す概略図である。
図29図29は、図28に示す光電変換モジュールアレイの構成を示す概略図である。
図30図30は、実施の形態7による光電変換素子を備える別の太陽光発電システムの構成を示す概略図である。
図31図31は、実施の形態8による光電変換素子を備える太陽光発電システムの構成を示す概略図である。
図32図32は、実施の形態8による光電変換素子を備える別の太陽光発電システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態における光電変換素子は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、リンをドーパントとして含むn型非晶質半導体層と、前記半導体基板上の面内方向において前記n型非晶質半導体層に隣接して形成され、ボロンをドーパントとして含むp型非晶質半導体層と、を備え、前記半導体基板上に成膜された一の薄膜において、膜厚が最大である点を第1の点とし、当該一の薄膜の面内方向において当該薄膜の膜厚の減少率が第1の減少率から前記第1の減少率よりも大きい第2の減少率に変化する点、または当該一の薄膜の面内方向において当該一の薄膜の膜厚の変化率の符号が負から正に変化する点を第2の点とし、当該一の薄膜の面内方向において前記第1の点から前記第2の点までの領域を膜厚減少領域と定義したとき、前記n型非晶質半導体層は、前記p型非晶質半導体層と隣り合う面に前記膜厚減少領域を有し、前記p型非晶質半導体層は、前記n型非晶質半導体層と隣り合う面に前記膜厚減少領域を有し、前記p型非晶質半導体層の前記膜厚減少領域の傾斜角度は、前記n型非晶質半導体層の前記膜厚減少領域の傾斜角度よりも急峻である(第1の構成)。
【0010】
第1の構成によれば、p型非晶質半導体層における膜厚減少領域の傾斜角度は、n型非晶質半導体層における膜厚減少領域の傾斜角度よりも急峻である。つまり、p型非晶質半導体層における膜厚減少領域の幅は、n型非晶質半導体層における膜厚減少領域の幅よりも小さい。膜厚減少領域の幅が大きいほど、ドーパントの拡散領域の幅が大きくなるが、本構成では、p型非晶質半導体層における膜厚減少領域の幅は、n型非晶質半導体層における膜厚減少領域の幅よりも小さい。そのため、p型非晶質半導体層のドーパントとして含まれるボロンが、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層との間の真性非晶質半導体層上の領域に拡散しにくく、変換効率の低下が抑制される。
【0011】
第1の構成において、隣接する前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層は、20μm以上、100μm未満の距離を隔てて配置されていることとしてもよい(第2の構成)。第2の構成によれば、光電変換素子における直列抵抗が低下するため、変換効率を向上させることができる。
【0012】
第1または第2の構成において、前記半導体基板の前記n型非晶質半導体層及び前記p型非晶質半導体層が形成されている面はテクスチャが形成されていることとしてもよい(第3の構成)。第3の構成によれば、光電変換素子に効率良く入射光を取り込むことができるとともに、表面積を増加させることができるので、変換効率をより向上させることができる。
【0013】
第1〜第3のいずれかの構成において、前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層のそれぞれは、前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層とが隣接する方向に直交する方向に、一つながりに形成されていることとしてもよい(第4の構成)。第4の構成によれば、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とが一つながりに形成されるため、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層との間の領域を狭めやすく、キャリアの収集効率を向上させることができる。
【0014】
第1〜第3のいずれかの構成において、前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層の少なくとも一方は、前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層とが隣接する方向に直交する方向に、離間して配置されていることとしてもよい(第5の構成)。第5の構成によれば、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層との間の領域を狭めても、第4の構成に比べ、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とをそれぞれ形成する際の半導体基板の撓み等が抑制され、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とを適切な位置に形成できる。
【0015】
第1〜第3のいずれかの構成において、前記n型非晶質半導体層と前記p型非晶質半導体層のそれぞれは、前記半導体基板において交差する2つの方向において、互いに隣接するように配置されていることとしてもよい(第6の構成)。第6の構成によれば、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層は、半導体基板上の2つの方向において互いに隣接して配置されている。そのため、当該2つの方向にキャリアが移動できるので、1つの方向においてn型非晶質半導体層とp型半導体層とが隣接して配置される場合と比べ、変換効率を向上させることができる。
【0016】
第1〜第6のいずれかの構成において、前記半導体基板上に、前記半導体基板に接するように形成された真性非晶質半導体層をさらに備えることとしてもよい(第7の構成)。第7の構成によれば、ボロンの拡散が抑制されるとともに、半導体基板のパッシベーション性を向上させることができる。
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0018】
この明細書においては、非晶質半導体層は、微結晶相を含んで良いものとする。微結晶相は、平均粒子径が1〜50nmである結晶を含む。
【0019】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による光電変換素子の構成を示す断面図である。図1を参照して、実施の形態1による光電変換素子10は、半導体基板1と、反射防止膜2と、パッシベーション膜3と、n型非晶質半導体層4と、p型非晶質半導体層5と、電極6,7と、保護膜8とを備える。
【0020】
半導体基板1は、例えば、n型単結晶シリコン基板からなる。半導体基板1は、例えば、100〜150μmの厚さを有する。そして、半導体基板1は、半導体基板1の一方の表面にテクスチャ構造が形成されている。
【0021】
反射防止膜2は、半導体基板1の一方の表面に接して配置される。半導体基板1の両面のうち、反射防止膜2が配置されている側の面から太陽光を入射させる。以下、反射防止膜2が配置されている側の面を受光面、反対側の面を裏面と呼ぶ。
【0022】
なお、反射防止膜2と、半導体基板1の受光面との間に、真性非晶質半導体層や、n型、p型の導電型の非晶質半導体層を設けても良い。このように構成することで、受光面のパッシベーション性を向上することができるので好ましい。
【0023】
パッシベーション膜3は、半導体基板1の裏面に接して配置される。
【0024】
n型非晶質半導体層4は、パッシベーション膜3に接して配置される。
【0025】
p型非晶質半導体層5は、半導体基板1の面内方向においてn型非晶質半導体層4に隣接して配置される。より詳しくは、p型非晶質半導体層5は、半導体基板1の面内方向においてn型非晶質半導体層4との間で所望の間隔を隔てて配置される。
【0026】
n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5は、半導体基板1の面内方向において交互に配置される。
【0027】
電極6は、n型非晶質半導体層4上に、n型非晶質半導体層4に接して配置される。
【0028】
電極7は、p型非晶質半導体層5上に、p型非晶質半導体層5に接して配置される。
【0029】
保護膜8は、パッシベーション膜3、n型非晶質半導体層4、p型非晶質半導体層5および電極6,7に接して配置される。より詳しくは、保護膜8は、隣接するn型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5の間において、n型非晶質半導体層4、p型非晶質半導体層5および電極6,7の一部に接して配置されるとともに、n型非晶質半導体層4とp型非晶質半導体層5との間に配置されたパッシベーション膜3の一部に接して配置される。そして、保護膜8は、電極6,7上に開口部8Aを有し、電極6,7の端から電極6,7の内側へ向かって5μm以上の領域に形成される。
【0030】
反射防止膜2は、例えば、窒化シリコン膜を含み、例えば、60nmの膜厚を有する。
【0031】
パッシベーション膜3は、実質的に真性で、水素を含有する非晶質半導体の膜である。パッシベーション膜3は、i型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンゲルマニウム、i型非晶質ゲルマニウム、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイド、i型非晶質シリコンカーボンオキサイド等のいずれかからなる。この例において、パッシベーション膜3の膜厚は約2nmである。なお、パッシベーション膜3は、上記に限らず、例えばシリコン酸化膜等からなるトンネル酸化膜であってもよい。
【0032】
n型非晶質半導体層4は、n型の導電型を有し、水素を含有する非晶質半導体層である。n型非晶質半導体層4は、例えば、n型非晶質シリコン、n型非晶質シリコンゲルマニウム、n型非晶質ゲルマニウム、n型非晶質シリコンカーバイド、n型非晶質シリコンナイトライド、n型非晶質シリコンオキサイド、n型非晶質シリコンオキシナイトライド、およびn型非晶質シリコンカーボンオキサイド等からなる。n型非晶質半導体層4は、例えば、n型ドーパントとしてリン(P)を含み、3〜50nmの膜厚を有する。
【0033】
p型非晶質半導体層5は、p型の導電型を有し、水素を含有する非晶質半導体層である。p型非晶質半導体層5は、例えば、p型非晶質シリコン、p型非晶質シリコンゲルマニウム、p型非晶質ゲルマニウム、p型非晶質シリコンカーバイド、p型非晶質シリコンナイトライド、p型非晶質シリコンオキサイド、p型非晶質シリコンオキシナイトライド、およびp型非晶質シリコンカーボンオキサイド等からなる。p型非晶質半導体層5は、例えば、p型ドーパントとしてボロン(B)を含み、5〜50nmの膜厚を有する。
【0034】
図2は、図1に示すn型非晶質半導体層4とp型非晶質半導体層5の詳細な構造を示す断面図である。図2の(a)は、n型非晶質半導体層4の断面図を示しており、図2の(b)は、p型非晶質半導体層5の断面図を示している。
【0035】
図2の(a)に示すように、n型非晶質半導体層4は、n型非晶質半導体層4の面内方向において、フラット領域FTと、膜厚減少領域TD(n)とを有する。フラット領域FTは、n型非晶質半導体層4のうち、最も厚い膜厚を有し、かつ、膜厚がほぼ一定である部分からなる。
【0036】
フラット領域FTの両端の点をA点とし、膜厚の減少率が第1の減少率から第1の減少率よりも大きい第2の減少率に変化する点をB点としたとき、膜厚減少領域TD(n)は、n型非晶質半導体層4の面内方向においてA点からB点までの領域である。そして、膜厚減少領域TD(n)は、n型非晶質半導体層4の面内方向においてフラット領域FTの両側に配置される。
【0037】
n型非晶質半導体層4が膜厚減少領域TD(n)を有するのは、後述するように、シャドーマスクを用い、プラズマCVD(Chemical Vapour Deposition)法によってn型非晶質半導体層4が形成されるからである。膜厚減少領域TD(n)は、フラット領域FTよりも薄い膜厚を有するので、膜厚減少領域TD(n)のドーパント濃度は、フラット領域FTのドーパント濃度よりも高くなる。
【0038】
図2の(b)に示すように、p型非晶質半導体層5も、n型非晶質半導体層4と同様、フラット領域FTと、膜厚減少領域TD(p)とを有する。膜厚減少領域TD(p)は、フラット領域FTよりも薄い膜厚を有するので、膜厚減少領域TD(p)のドーパント濃度は、フラット領域FTのドーパント濃度よりも高くなる。また、この例では、図2の(a)(b)に示すように、n型非晶質半導体層4における膜厚減少領域TD(n)の膜厚の減少率よりも、p型非晶質半導体層5における膜厚減少領域TD(p)の膜厚の減少率が大きい。すなわち、p型非晶質半導体層における膜厚減少領域TD(p)の傾斜角度は、n型非晶質半導体層4における膜厚減少領域TD(n)の傾斜角度よりも急峻である。この例において、n型非晶質半導体層4とp型非晶質半導体層5のそれぞれのフラット領域と膜厚減少領域とを合わせたX軸方向の幅は、n型非晶質半導体層4が700μmであり、p型非晶質半導体層5が1100μmである。図2の(a)(b)に示すように、n型非晶質半導体層4のフラット領域FTのX軸方向の幅は、P型非晶質半導体層5のフラット領域FTのX軸方向の幅よりも小さくなっており、p型非晶質半導体層5の膜厚減少領域TD(p)のX軸方向の幅は、n型非晶質半導体層4の膜厚減少領域TD(n)のX軸方向の幅よりも小さくなっている。
【0039】
図2の(a)に示すように、電極6は、n型非晶質半導体層4のフラット領域FTの全体と膜厚減少領域TDの一部とに接して配置される。また、図2の(b)に示すように、電極7は、p型非晶質半導体層5のフラット領域FTの全体と膜厚減少領域TD(p)の一部とに接して配置される。
【0040】
その結果、膜厚減少領域TD(n)のドーパント密度がフラット領域FTのドーパント密度よりも高いので、キャリア(電子)がn型非晶質半導体層4を介して電極6へ到達するときの抵抗は、パッシベーション膜3の面内方向において一定の膜厚を有するn型非晶質半導体層が形成される場合に比べ低抵抗になる。また、膜厚減少領域TD(p)のドーパント密度がフラット領域FTのドーパント密度よりも高いので、キャリア(正孔)がp型非晶質半導体層5を介して電極7へ到達するときの抵抗は、パッシベーション膜3の面内方向において一定の膜厚を有するp型非晶質半導体層が形成される場合に比べ低抵抗になる。従って、光電変換素子10の変換効率を向上できる。
【0041】
なお、電極6は、n型非晶質半導体層4の膜厚減少領域TD(n)の全体に接していてもよく、電極7は、p型非晶質半導体層5の膜厚減少領域TD(p)の全体に接していてもよい。
【0042】
以下、n型非晶質半導体層4における膜厚減少領域TD(n)と、p型非晶質半導体層5における膜厚減少領域TD(p)とを特に区別しないときは、単に膜厚減少領域TDと称する。
【0043】
図3は、図1に示すn型非晶質半導体層4の他の詳細な構造を示す断面図である。図3の(a)を参照して、光電変換素子10は、n型非晶質半導体層4に代えてn型非晶質半導体層41を備え、電極6に代えて電極61を備えていてもよい。
【0044】
n型非晶質半導体層41において、膜厚が最大である点をC点とし、膜厚の減少率が第1の減少率から第1の減少率よりも大きい第2の減少率に変化する点をD点とする。この場合、n型非晶質半導体層41の面内方向においてC点からD点までの領域が膜厚減少領域TDである。そして、n型非晶質半導体層41は、n型非晶質半導体層41の面内方向において2つの膜厚減少領域TDを有する。2つの膜厚減少領域TDは、n型非晶質半導体層41の面内方向において相互に接して配置される。
【0045】
また、光電変換素子10は、p型非晶質半導体層5に代えて、図3の(a)に示すn型非晶質半導体層41と同じ構造からなるp型非晶質半導体層を備えていてもよい。このように構成した場合においても、p型非晶質半導体層における膜厚減少領域の傾斜角度が、n型非晶質半導体層における膜厚減少領域の傾斜角度より急峻となるように、p型非晶質半導体層は形成される。
【0046】
電極61は、2つの膜厚減少領域TDのうち、一方の膜厚減少領域TDの一部と他方の膜厚減少領域TDの一部とに接して配置される。なお、この場合においても、電極は、n型非晶質半導体層41と、n型非晶質半導体層41と同じ構造を有するp型非晶質半導体層とにおいて、2つの膜厚減少領域TDの全体に接して配置されていてもよい。
【0047】
その結果、膜厚減少領域TD(n)のドーパント密度がフラット領域FTのドーパント密度よりも高いので、キャリア(電子)がn型非晶質半導体層41を介して電極61へ到達するときの抵抗は、パッシベーション膜3の面内方向において一定の膜厚を有するn型非晶質半導体層が形成される場合に比べて低抵抗になる。また、膜厚減少領域TD(p)のドーパント密度がフラット領域FTのドーパント密度よりも高いので、キャリア(正孔)がn型非晶質半導体層41と同じ構造を有するp型非晶質半導体層を介して電極へ到達するときの抵抗は、パッシベーション膜3の面内方向において一定の膜厚を有するp型非晶質半導体層が形成される場合に比べて低抵抗になる。その結果、光電変換素子10の変換効率を向上させることができる。
【0048】
次に、図3の(b)を参照して、光電変換素子10は、n型非晶質半導体層4に代えてn型非晶質半導体層42を備え、電極6に代えて電極62を備えていてもよい。
【0049】
n型非晶質半導体層42において、膜厚が最大である点をE点とし、膜厚の減少率が第1の減少率から第1の減少率よりも大きい第2の減少率に変化する点をF点とし、膜厚の変化率の符号が負から正に変化する点をG点とする。この場合、n型非晶質半導体層42の面内方向においてE点からF点までの領域と、n型非晶質半導体層42の面内方向においてE点からG点までの領域が膜厚減少領域となる。以下、n型非晶質半導体層42の面内方向においてE点からF点までの膜厚減少領域を膜厚減少領域TD1、n型非晶質半導体層42の面内方向においてE点からG点までの膜厚減少領域を膜厚減少領域TD2とする。
【0050】
従って、n型非晶質半導体層42は、n型非晶質半導体層42の面内方向において2つの膜厚減少領域TD1と2つの膜厚減少領域TD2とを有する。この例において、2つの膜厚減少領域TD2は、n型非晶質半導体層42の面内方向における膜厚分布がG点を通る線に対して対称になるように配置される。2つの膜厚減少領域TD1は、n型非晶質半導体層42の面内方向において2つの膜厚減少領域TD2の両側に配置される。
【0051】
また、光電変換素子10は、p型非晶質半導体層5に代えて、図3の(b)に示すn型非晶質半導体層42と同じ構造からなるp型非晶質半導体層を備えていてもよい。このように構成する場合、p型非晶質半導体層における膜厚減少領域TD1の傾斜角度が、n型非晶質半導体層における膜厚減少領域TD1の傾斜角度より急峻になるように、p型非晶質半導体層は形成される。つまり、少なくともp型非晶質半導体層とn型非晶質半導体層とが隣接する方向において、p型非晶質半導体層の膜厚減少領域の傾斜角度が、n型非晶質半導体層の膜厚減少領域の傾斜角度よりも急峻となるように、p型非晶質半導体層は形成されている。
【0052】
電極62は、2つの膜厚減少領域TD2の全体と、一方の膜厚減少領域TD1の一部と、他方の膜厚減少領域TD1の一部とに接して配置される。なお、電極は、n型非晶質半導体層42と、n型非晶質半導体層42と同じ構造を有するp型非晶質半導体層とにおいて、2つの膜厚減少領域TD1の全体と、2つの膜厚減少領域TD2の全体とに接して配置されていてもよい。
【0053】
その結果、膜厚減少領域TD(n)のドーパント密度がフラット領域FTのドーパント密度よりも高いので、キャリア(電子)がn型非晶質半導体層42を介して電極62へ到達するときの抵抗は、パッシベーション膜3の面内方向において一定の膜厚を有するn型非晶質半導体層が形成される場合に比べ低抵抗になる。また、膜厚減少領域TD(p)のドーパント密度がフラット領域FTのドーパント密度よりも高いので、キャリア(正孔)がn型非晶質半導体層42と同じ構造を有するp型非晶質半導体層を介して電極へ到達するときの抵抗は、パッシベーション膜3の面内方向において一定の膜厚を有するp型非晶質半導体層が形成される場合に比べ低抵抗になる。その結果、光電変換素子10の変換効率を向上させることができる。
【0054】
このように、光電変換素子10は、少なくとも、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とが隣接する面に膜厚減少領域(TD又はTD1又はTD2)を有するn型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5を備える。この膜厚減少領域は、以下のように定義される。n型非晶質半導体層及びp型非晶質半導体層の膜厚が最大である点を第1の点とし、n型非晶質半導体層及びp型非晶質半導体層の面内方向において、膜厚の減少率が第1の減少率から第1の減少率よりも大きい第2の減少率に変化する点、または膜厚の変化率の符号が負から正に変化する点を第2の点としたとき、膜厚減少領域は、n型非晶質半導体層及びp型非晶質半導体層の面内方向において、第1の点から第2の点までの領域である。そして、p型非晶質半導体層5の膜厚減少領域の傾斜角度は、n型非晶質半導体層の膜厚減少領域の傾斜角度よりも急峻となっている。
【0055】
次に、図4の(a)を参照して、電極6について説明する。電極6は、導電層6a、6bからなる。導電層6aは、n型非晶質半導体層4に接して配置される。導電層6bは、導電層6aに接して配置される。保護膜8の開口部8Aの幅をLとし、電極6、7の端から開口部8Aまでの距離をHとした場合、導電層6a、6bは、n型非晶質半導体層4の面内方向において、n型非晶質半導体層4の中心から両側にH+L/2の範囲に形成される。幅Lは、例えば、20μm以上であり、好ましくは、100μm以上である。幅Lがこのような値に設定されることによって、外部配線と電極6、7との密着性を確保できるとともに、コンタクト抵抗を低下できる。また、距離Hは、電極6、7と保護膜8との密着性を考慮すると、例えば、5μm以上である。
【0056】
図4の(b)を参照して、電極7は、導電層7a,7bからなる。導電層7aは、p型非晶質半導体層5に接して配置される。導電層7bは、導電層7aに接して配置される。導電層7a、7bは、p型非晶質半導体層5の面内方向において、p型非晶質半導体層5の中心から両側にH+L/2の範囲に形成される。
【0057】
その結果、電極6、7の各々は、n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5の面内方向において、2H+Lの長さを有する。
【0058】
保護膜8は、例えば、保護層8a、8bの2層構造からなる。保護膜8がn型非晶質半導体層4上に形成される場合、保護層8aは、パッシベーション膜3、n型非晶質半導体層4および電極6に接して配置される。保護層8bは、保護層8aに接して配置される。保護膜8がp型非晶質半導体層5上に形成される場合、保護層8aは、パッシベーション膜3、p型非晶質半導体層5および電極7に接して配置される。保護層8bは、保護層8aに接して配置される。
【0059】
n型非晶質半導体層4の面内方向において、電極6の端よりもn型非晶質半導体層4の外側の領域をギャップ領域G1と言い、p型非晶質半導体層5の面内方向において、電極7の端よりもp型非晶質半導体層5の外側の領域をギャップ領域G2と言う。従って、n型非晶質半導体層4の面内方向において、n型非晶質半導体層4の両側にギャップ領域G1が存在する。また、p型非晶質半導体層5の面内方向において、p型非晶質半導体層5の両側にギャップ領域G2が存在する。
【0060】
保護膜8が、パッシベーション膜3、n型非晶質半導体層4および電極6に接して配置されるとともに、パッシベーション膜3、p型非晶質半導体層5および電極7に接して配置される結果、半導体基板1の面内方向において隣接するn型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5の間には、ギャップ領域G(=G1+G2)が存在する。
【0061】
ギャップ領域Gは、パッシベーション膜3、n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5がむき出しになった領域であり、20μm以上、100μm以下の幅を有する。図1に示すように、ギャップ領域Gにおいて、n型非晶質半導体層4とp型非晶質半導体層5は重ならず、保護膜8は、電極6、7の一部およびギャップ領域G上に形成される。
【0062】
また、図4において、導電層6a、7aの各々は、透明導電膜からなる。透明導電膜は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnOおよびIWO(Indium Tungsten Oxide)からなる。
【0063】
導電層6b、7bの各々は、金属からなる。金属は、例えば、Ag、Al、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、錫(Sn)、白金(Pt)、金(Au)、クロム(Cr)、タングステン(W)、コバルト(Co)およびチタン(Ti)のいずれか、またはこれらの合金、またはこれら金属の2層以上の積層膜からなる。
【0064】
導電層6a、7aとしては、それぞれ、n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5と密着性が良い透明導電膜を用いることが好ましく、導電層6b、7bとしては、導電率が高い金属を用いることが好ましい。
【0065】
導電層6a、7aの各々の膜厚は、例えば、3〜100nmである。導電層6b、7bの各々の膜厚は、50nm以上であることが好ましく、実施の形態1においては、例えば、0.8μmである。
【0066】
なお、実施の形態1においては、電極6は、導電層6bのみからなり、電極7は、導電層7bのみからなっていてもよい。この場合には、導電層6a、7aがないため、導電層6b、7bがそれぞれn型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5に接する。
【0067】
導電層6a、7aが無い場合において、導電層6b、7bは、金属膜で構成される。この場合、導電層6b、7bはそれぞれ、下地であるn型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5と密着性が高い金属であることが好ましい。例えば、導電層6b、7bは、Ti、Ni、Al、Cr等からなり、かつ、1〜10nm程度の膜厚を有する密着層と、Al、Ag等を主成分とする光反射金属との積層構造からなる。
【0068】
また、導電層6b、7bは、保護膜8と接するため、保護膜8との密着性を考慮する必要がある。保護膜8として、シリコン、アルミニウム、チタンおよびジルコニア等の酸化物、シリコンおよびアルミニウムの窒化膜、シリコンおよびアルミニウムの酸窒化膜等を用いた場合、導電層6b、7bの保護膜8側の表面は、Al、インジウム(In)、Ti、Ni、Cu、Cr、W、Co、パラジウム(Pd)およびSn等の金属からなることが好ましい。
【0069】
更に、電極6、7の各々は、透明導電膜の単膜からなっていてもよい。この場合、透明導電膜は、上述したITO等からなる。
【0070】
保護層8a、8bの各々は、無機絶縁膜からなる。無機絶縁膜は、酸化膜、窒化膜および酸窒化膜等からなる。
【0071】
酸化膜は、シリコン、アルミニウム、チタン、ジルコニア、ハフニウム、亜鉛、タンタルおよびイットリウム等の酸化膜からなる。
【0072】
窒化膜は、シリコンおよびアルミニウム等の窒化膜からなる。
【0073】
酸窒化膜は、シリコンおよびアルミニウム等の酸窒化膜からなる。
【0074】
保護層8bは、保護層8aと異なる無機絶縁膜からなる。即ち、上述した無機絶縁膜の中から2種類の膜を選択して保護層8a、8bを形成する。
【0075】
また、保護層8aが半導体層からなり、保護層8bが上述した無機絶縁膜からなっていてもよい。
【0076】
この場合、半導体層は、非晶質半導体層からなる。そして、非晶質半導体層は、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、非晶質シリコンカーバイド、非晶質シリコンナイトライド、非晶質シリコンオキサイド、非晶質シリコンオキシナイトライドおよび非晶質シリコンカーボンオキサイド等からなる。絶縁性が高い方が電極6,7間のリークを抑制できるため、保護層8aは、真性の非晶質半導体層からなることが好ましい。例えば、保護層8aは、真性の非晶質シリコンからなり、保護層8bは、シリコンの窒化膜からなる。
【0077】
但し、保護層8bが絶縁膜からなる場合、保護層8aは、n型非晶質半導体層またはp型非晶質半導体層からなっていてもよい。
【0078】
保護層8bは、正の固定電荷を持つ誘電体膜からなることが好ましい。正の固定電荷を持つ誘電体膜は、例えば、シリコンの窒化膜およびシリコンの酸窒化膜である。
【0079】
半導体基板1は、n型単結晶シリコンからなるので、保護層8bが正の固定電荷を持つ誘電体膜からなる場合、保護層8bは、少数キャリアである正孔に対して電界を及ぼし、ギャップ領域Gにおける少数キャリア(正孔)のライフタイムを長く維持することができる。
【0080】
保護膜8は、2層構造に限らず、単層、または2層構造以上の多層構造からなっていてもよい。保護膜8が単層からなる場合、保護膜8は、上述した無機絶縁膜の中から選択された1種類の膜からなる。保護膜8が多層構造からなる場合、保護膜8は、上述した保護層8a、8bを多層構造の中に含む。
【0081】
上述したように、保護膜8が2層構造からなる場合、保護層8aを非晶質半導体層で形成し、保護層8bを絶縁膜で形成することによって、n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5に対するパッシベーション性と、電極6,7間の絶縁性とを両立できる。更に、上述した無機絶縁膜が保護膜8の多層構造の中に含まれる場合、非晶質半導体層(n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5)に拡散してくる水分等を防ぐ防湿効果を得ることができる。上述した無機絶縁膜の中でも、シリコンの窒化膜、シリコンの酸窒化膜は、他の無機絶縁膜に比べて防湿性が特に高いため、特に好ましい。
【0082】
例えば、保護膜8が2層構造以上の多層膜、例えば、3層構造からなる場合、1つの保護層(n型非晶質半導体層4またはp型非晶質半導体層5に接する保護層)が非晶質半導体層からなり、残りの2つの保護層が無機絶縁膜の中から選択された2種類の膜からなる。更に、保護膜8が単層または多層からなる場合、保護膜8は、上述した無機絶縁膜上に有機物の絶縁膜等が形成された構造からなっていてもよい。有機物は、例えば、イミド系樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート、および液晶ポリマー等からなる。イミド系樹脂は、例えば、ポリイミドである。フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。また、有機物は、スクリーン印刷で形成されたレジストであってもよい。
【0083】
(製造方法)
図5から図9は、それぞれ、図1に示す光電変換素子10の製造方法を示す第1から第5の工程図である。
【0084】
図5を参照して、光電変換素子10の製造が開始されると、バルクのシリコンからワイヤーソーによって100μm〜300μmの厚さを有するウェハーを切り出す。そして、ウェハーの表面のダメージ層を除去するためのエッチングと、厚さを調整するためのエッチングとを行い、半導体基板1’を準備する(図5の工程(a)参照)。
【0085】
一般的に、テクスチャ構造を有する半導体基板は、シリコンインゴットをワイヤーソー等によりスライスして得られる半導体基板をエッチングすることにより製造される。テクスチャ構造を形成する半導体基板は、遊離砥粒方式によるスライス基板が主流であるが、コスト削減やスライス技術の向上もあり、固定砥粒方式によるスライス基板においても同様のテクスチャ構造が形成可能である。
【0086】
半導体基板1’のエッチングは、アルカリ性のエッチング液を用いた湿式エッチングにより行うことができる。このエッチングは、水酸化ナトリウム溶液中の場合、以下の反応式(1)、(2)、(3)等の反応によって進行する。
Si+2NaOH+HO → NaSiO+2H …(1)
2Si+2NaOH+3HO → NaSi+4H …(2)
3Si+4NaOH+4HO → NaSi+6H …(3)
【0087】
半導体基板1’の一方の表面に、テクスチャ構造を形成するために、例えばエッチング速度を制御したエッチング液を使用することにより異方性エッチングを行う。半導体基板1’の一方の表面へのテクスチャ構造の形成は以下のメカニズムに基づく。半導体基板1’のアルカリ水溶液によるエッチング速度は、シリコンの(100)面が最も早く、(111)面が最も遅い。そのため、アルカリ水溶液にエッチング速度を低下させることができる特定の添加剤(以下、「エッチング抑制剤」とも言う。)を添加することによってエッチングの速度を抑制すると、シリコンの(100)面等のエッチングされやすい結晶面が優先的にエッチングされ、エッチング速度の遅い(111)面が表面に残存する。この(111)面は、(100)面に対して約54度の傾斜を持つために、プロセスの最終段階では、(111)面とその等価な面で構成されるピラミッド状の凹凸構造が形成される。
【0088】
しかし、エッチング条件によっては、約40〜54度程度の傾斜を持ったテクスチャが形成されることもあり、必ずしもテクスチャの傾斜面が(111)面で形成される訳ではない。すなわち、テクスチャの傾斜面が(111)面である必要はなく、例えばテクスチャの傾斜が緩やかな構成であってもよい。
【0089】
テクスチャ形成用エッチング液としては、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に、エッチング抑制剤としてイソプロピルアルコールを添加したエッチング液を使用することができる。このエッチング液を60〜80℃程度に加温し、(100)面の半導体基板を10〜30分間浸漬させることによって、エッチングを行う。
【0090】
また、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムと、リグニン等の特定の添加剤と、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムを含むエッチング液を使用することにより、微小なピラミッド構造のテクスチャ構造(凹凸の凹部の底から凸部の頂点までの高さが1μm以下)を形成することができる。このように、エッチング液の温度、処理時間、エッチング抑制剤の種類、エッチング速度、基板の種類など種々の条件を変えることで、テクスチャのサイズを制御することができる。
【0091】
図5の工程(a)の後、半導体基板1’の裏面にSiN又はSiO等の膜をスパッタリング法又はCVD法等の方法により形成する。このときの膜厚は、例えば50nm〜500nmである。それから、半導体基板1’をNaOHおよびKOH等のアルカリ溶液(例えば、KOH:1〜5wt%、イソプロピルアルコール:1〜10wt%の水溶液)を用いてエッチングする。裏面に形成されているSiN又はSiO等の膜は、このエッチングに対する保護膜として働く。エッチング終了後、保護膜はフッ化水素酸を用いて溶解させ除去する。これによって、半導体基板1’の受光面が異方性エッチングされ、ピラミッド形状のテクスチャ構造が受光面に形成された半導体基板1が得られる(図5の工程(b)参照)。
【0092】
引き続いて、半導体基板1の受光面に非晶質半導体層11を形成するとともに、半導体基板1の裏面にパッシベーション膜3を形成する(図5の工程(c)参照)。非晶質半導体層11としては、真性非晶質半導体層やn型又はp型の導電型の非晶質半導体層ならびにそれらの積層膜でもよく、例えばプラズマCVD法によって形成する。パッシベーション膜3は、実質的に真性で、水素を含有する非晶質半導体の膜で、例えば、i型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンゲルマニウム、i型非晶質ゲルマニウム、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイド、i型非晶質シリコンカーボンオキサイド等のいずれかからなる。パッシベーション膜3の膜厚は約2nmである。
【0093】
あるいは、パッシベーション膜3として、シリコン酸化膜によるトンネル酸化膜を用いる場合、半導体基板1を酸化処理する。半導体基板1の酸化は、ウェット処理および熱酸化のいずれでもよい。ウェット酸化の場合は、例えば、半導体基板1を過酸化水素、硝酸およびオゾン水等に浸漬し、その後、ドライ雰囲気中で800〜1000℃で半導体基板1を加熱する。また、熱酸化の場合、例えば、酸素または水蒸気の雰囲気中で半導体基板1を900〜1000℃に加熱する。
【0094】
図5の工程(c)の後、スパッタリング法、EB(Electron Beam)蒸着およびCVD法等を用いて非晶質半導体層11に接して窒化シリコン膜12を形成する。これによって、反射防止膜2が半導体基板1の受光面に形成される(図6の工程(d)参照)。
【0095】
図6の工程(d)の後、半導体基板1をプラズマ装置の反応室に入れ、シャドーマスク30を半導体基板1のパッシベーション膜3上に配置する(図6の工程(e)参照)。
【0096】
図10の(a)は、シャドーマスク30を上から見た平面図であり、図10の(b)は、図10の(a)に示すシャドーマスク30のI−I線における断面図である。図10の(a)に示すように、シャドーマスク30は、X軸方向に一定の間隔を隔てて配列された複数の開口部30aを有する。複数の開口部30aのそれぞれは、略同じ長さ及び幅の矩形形状を有する。また、図10の(b)に示すように、開口部30aの断面は、シャドーマスク30の上面側の開口幅と下面側の開口幅とが略同等の長さW2を有する矩形形状である。
【0097】
シャドーマスク30は、例えば、ステンレス鋼等のメタルマスクからなる。シャドーマスク30は、例えば、その厚さが200μmであり、上面側及び下面側の各開口幅W2が850μm、マスクされている幅W1が1050μmであり、周期は1900μm(=W1+W2)となる。
【0098】
そして、半導体基板1の温度を130〜180℃に設定し、0〜100sccmの水素(H)ガス、40sccmのSiHガス、および40sccmのホスフィン(PH)ガスを反応室に流し、反応室の圧力を40〜120Paに設定する。その後、RFパワー密度が5〜30mW/cmである高周波電力(13.56MHz)を平行平板電極に印加する。なお、PHガスは、水素によって希釈されており、PHガスの濃度は、例えば、1%である。
【0099】
これによって、シャドーマスク30によって覆われていないパッシベーション膜3の領域にn型非晶質シリコンが堆積され、n型非晶質半導体層4がパッシベーション膜3上に形成される(図6の工程(f)参照)。これにより、膜厚減少領域TD(n)を有するn型非晶質半導体層4がパッシベーション膜3上に形成される。また、シャドーマスク30上にも、n型非晶質シリコン31が堆積する。
【0100】
シャドーマスク30とパッシベーション膜3との間には隙間が存在する。プラズマによって分解されたSiHおよびSiH等の活性種は、シャドーマスク30とパッシベーション膜3との間の隙間に回り込み、シャドーマスク30によって覆われた一部の領域にもn型非晶質半導体層4が形成される。これにより、膜厚減少領域TD(n)を有するn型非晶質半導体層4がパッシベーション膜3の上に形成される。
【0101】
なお、n型非晶質半導体層4における膜厚減少領域TD(n)の幅、及び膜厚の減少率、すなわち、膜厚減少領域TD(n)の傾斜角度は、n型非晶質半導体層4を成膜するときの成膜圧力、シャドーマスク30の厚さおよびシャドーマスク30の開口幅を変えることによって制御することができる。
【0102】
図6の工程(f)の後、シャドーマスク30に代えてシャドーマスク40をパッシベーション膜3およびn型非晶質半導体層4上に配置する(図7の工程(g)参照)。シャドーマスク40の材質、厚さ、及び開口幅は、シャドーマスク30と同じであるが、開口部の断面構造がシャドーマスク30と異なる。
【0103】
図11の(a)は、シャドーマスク40を上から見た平面図であり、図11の(b)は、図11の(a)に示すシャドーマスク40のII−II線における断面図である。図11の(a)に示すように、シャドーマスク40は、X軸方向に一定の間隔を隔てて配列された複数の開口部40aを有する。複数の開口部40aのそれぞれは、略同じ長さ及び幅の矩形形状を有する。また、図11の(b)に示すように、開口部40aの断面は、シャドーマスク40の上面側の開口幅W21よりも下面側の開口幅W22が狭い台形形状を有する。
【0104】
なお、図7の工程(g)においては、シャドーマスク40は、パッシベーション膜3から離れているように図示されているが、n型非晶質半導体層4の膜厚は、上述したように3〜50nmと非常に薄いので、実際には、シャドーマスク40は、パッシベーション膜3に近接して配置されている。
【0105】
そして、半導体基板1の温度を130〜180℃に設定し、0〜100sccmのHガス、40sccmのSiHガス、および40sccmのジボラン(B)ガスを反応室に流し、反応室の圧力を40〜200Paに設定する。より好ましくは、反応室の圧力を、n型非晶質半導体層4の成膜時よりも低く(例えば、60Pa)設定する。その後、RFパワー密度が5〜30mW/cmである高周波電力(13.56MHz)を平行平板電極に印加する。なお、Bガスは、水素によって希釈されており、Bガスの濃度は、例えば、2%である。また、上記以外のp型非晶質シリコンを成膜時の条件として、例えば、RFパワー密度を20mW/cmに設定し、SiHガスに対するBガスの割合を0.5%、SiHガスに対するHガスの割合を50%としても本実施の形態におけるp型非晶質半導体層5を形成することができる。
【0106】
これによって、シャドーマスク40によって覆われていないパッシベーション膜3の領域にp型非晶質シリコンが堆積され、p型非晶質半導体層5がパッシベーション膜3上に形成される。また、シャドーマスク40上にも、p型非晶質シリコン32が堆積する。(図7の工程(h)参照)。
【0107】
また、シャドーマスク40とパッシベーション膜3との間には、隙間が存在する。そのため、プラズマによって分解されたSiHおよびSiH等の活性種は、シャドーマスク40とパッシベーション膜3との間の隙間に回り込み、シャドーマスク40によって覆われた一部の領域にもp型非晶質半導体層5が形成される。これにより、膜厚減少領域TD(p)を有するp型非晶質半導体層5がパッシベーション膜3上に形成される。また、活性化されなかったボロン(B)がシャドーマスク40によって覆われた一部の領域に回り込み、ボロン(B)が堆積する。
【0108】
ここで、図12Aに、n型非晶質半導体層4と同様のシャドーマスクを用い、n型非晶質半導体層4と同様の成膜条件で成膜したp型非晶質半導体層とそのボロン濃度とを示す。図12Aに示すように、p型非晶質半導体層5’における膜厚減少領域TD’(p)のボロン濃度は、フラット領域FTにおけるボロン濃度よりも高くなる。また、図12Aに示すように、膜厚減少領域TD’(p)のボロン濃度をピークとして、p型非晶質半導体層5’において、膜厚減少領域TD’(p)より外側の領域はボロン濃度が下がっているが、フラット領域FTよりも高いボロン濃度となる領域が存在し、p型非晶質半導体層5’が形成されていないギャップ領域までボロン(B)が拡散している。
【0109】
p型ドーパントであるボロン(B)は、n型ドーパントであるリン(P)よりも軽いため、シャドーマスク40の開口部以外の領域に回り込みやすく、ギャップ領域Gにボロン(B)が拡散する。パッシベーション膜3上のボロン(B)の拡散は、パッシベーション性に悪影響を与える。これに対し、リン(P)はギャップ領域Gに拡散しても、ボロン(B)のようにパッシベーション性への悪影響は非常に小さい。そのため、n型非晶質半導体層4を成膜した後、ギャップ領域Gにおいて、n型非晶質半導体層4と重なるようにp型非晶質半導体層5を成膜することで、ボロン(B)の拡散による影響を抑制することが考えられる。しかしながら、この場合、n型非晶質半導体層4とp型非晶質半導体層5とが重なる領域においてキャリアがリークする可能性があるため、このような構成は好ましくない。そのため、ギャップ領域Gにおいて、n型非晶質半導体層4とp型非晶質半導体層5とが重なることなく、ボロン(B)の拡散を抑制する必要がある。
【0110】
図12Bは、本実施の形態におけるp型非晶質半導体層5とそのボロン濃度とを示す図である。図12Bに示すように、p型非晶質半導体層5における膜厚減少領域TD(p)のボロン濃度は、フラット領域FTにおけるボロン濃度よりも高くなる。しかしながら、膜厚減少領域TD(p)より外側の領域におけるボロン濃度が減少する割合は、図12Aに示すp型非晶質半導体層5’よりも大きく、ボロン(B)が拡散する範囲は、p型非晶質半導体層5’よりも小さい。つまり、n型非晶質半導体層4よりも膜厚減少領域の傾斜角度が急峻になるようにp型非晶質半導体層5を形成することで、ボロン(B)の拡散領域を小さくすることができ、ボロン(B)の拡散を抑制できる。
【0111】
また、ギャップ領域Gの幅は、変換効率に影響する。図13は、光電変換素子の直列抵抗Rsとギャップ領域の幅との関係を表すグラフである。図13に示すように、ギャップ領域Gの幅が広くなるほど直列抵抗Rsが大きくなり、変換効率が低下することが分かる。なお、図示を省略するが、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層の各幅の比率を変えても、図13と同様、ギャップ領域Gの幅が広くなるほど直列抵抗Rsは大きくなる。
【0112】
また、図13に示すように、ギャップ領域Gの幅が100μm〜200μmにおける直列抵抗Rsの傾きに対し、100μm〜50μmにおける直列抵抗Rsの傾きは大きくなっており、100μm未満では直列抵抗Rsがより低下する。つまり、100μmは、直列抵抗Rsの減少率が変化する変曲点であり、ギャップ領域Gの幅は100μm未満であることが好ましい。
【0113】
上記したように、ギャップ領域Gの幅を100μm未満にすることで光電変換素子の直列抵抗を低下させることができるが、ギャップ領域Gが狭いほど、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とを精度良くアライメントすることが難しくなり、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とが重なりやすくなる。n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とが重なると、pn接合における電気特性が低下する。
【0114】
図14は、光電変換素子において、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層との重なりが0μm、100μm、200μm、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とのギャップ領域が100μm、200μmのそれぞれの場合の室温における逆方向電流密度の測定結果を示す図である。図14に示すように、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とが重なっている場合には、ギャップ領域を設ける場合と比べて逆方向電流密度が高くなり、電気特性が低下する。
【0115】
従って、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とが重ならないように、できるだけ狭いギャップ領域Gを設ける必要があるが、シャドーマスクを用いてn型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層とをそれぞれ形成する際、アライメントのずれを完全になくすことは困難である。そのため、アライメントのずれ(例えば、±5μm程度)を考慮すると、ギャップ領域Gの幅は、20μm以上、100μm未満が好ましい。
【0116】
図7の工程(h)において、p型非晶質半導体層5を堆積した後、シャドーマスク40を除去すると、半導体基板1の面内方向に交互に配置されたn型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5がパッシベーション膜3上に形成された状態になる(図7の工程(i)参照)。
【0117】
図7の工程(i)の後、開口部がn型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5上に位置するようにシャドーマスク50を配置する(図8の工程(j)参照)。シャドーマスク50は、材質および厚さがシャドーマスク30と同じである。また、開口幅は、n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5のフラット領域FTの幅と2つの膜厚減少領域TDの幅との和に設定される。開口幅は、前記の幅に対して多少前後しても構わない。
【0118】
図8の工程(j)の後、シャドーマスク50を介して導電層6a、7aおよび導電層6b、7bを順次堆積する。これによって、電極6、7がそれぞれn型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5上に堆積される(図8の工程(k)参照)。
【0119】
導電層6a,7aおよび導電層6b,7bは、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapour Deposition)法、ゾルゲル法、液状にした原料を噴霧加熱する方法、およびインクジェット法等を用いて形成される。
【0120】
導電層6a,7aは、例えば、ITO,IWO,ZnOのいずれかであり、導電層6b,7bは、Ti(3nm)/Al(500nm)の2層構造からなる。
【0121】
ITOは、例えば、SnOを0.5〜4wt%ドープしたITOターゲットを、アルゴンガスまたはアルゴンガスと酸素ガスとの混合ガスを流し、25〜250℃の基板温度、0.1〜1.5Paの圧力、0.01〜2kWの電力でスパッタ処理を行うことによって形成される。
【0122】
ZnOは、ITOターゲットに代えて、Alを0.5〜4wt%ドープしたZnOターゲットを用いて同様の条件でスパッタ処理を行うことにより形成される。
【0123】
Ti/Alの2層構造は、EB蒸着によって形成される。
【0124】
また、電極6,7は、それぞれ、導電層6a,7aをシード電極としてメッキ成膜法によって導電層6b,7bを形成することによって形成されてもよい。この場合、導電層6b,7bは、例えば、Ni,W,Co,Ti,Cr、これらの合金、およびこれらの合金とP,Bとの合金のいずれかからなる。また、導電層6b,7b上にメッキ法でCu,Al,Sn等を形成することもできる。
【0125】
図8の工程(k)の後、シャドーマスク60を電極6,7上に配置する(図8の工程(l)参照)。シャドーマスク60は、材質および厚さがシャドーマスク30と同じである。
【0126】
そして、保護膜8をパッシベーション膜3、n型非晶質半導体層4、p型非晶質半導体層5および電極6,7上に形成する。
【0127】
より具体的には、プラズマCVD法を用いて真性非晶質半導体膜およびシリコンの窒化膜をパッシベーション膜3、n型非晶質半導体層4、p型非晶質半導体層5および電極6,7上に順次堆積する。この場合、例えば、SiHガスを材料ガスとして真性非晶質半導体膜を形成し、真性非晶質半導体膜の膜厚は、例えば、10nmである。また、例えば、SiHガスおよびNHガスを材料ガスとしてシリコンの窒化膜を形成し、シリコンの窒化膜の膜厚は、例えば、120nmである。これによって、光電変換素子10が完成する(図9の工程(m)参照)。
【0128】
上述した説明において、シャドーマスク30、40、50、60の材料の一例としてステンレス鋼を挙げたが、ステンレス鋼に限定されることはなく、例えば、銅、ニッケル、ニッケル合金(42アロイ、インバー材等)またはモリブデン等であってもよい。
【0129】
また、シャドーマスク30、40、50、60は、メタルマスクである必要はなく、ガラスマスク、セラミックマスクまたは有機フィルムマスク等であってもよい。
【0130】
また、半導体基板1と同じ材質の半導体基板をエッチングにより加工して、シャドーマスクとしてもよい。この場合、半導体基板1とシャドーマスクは共に同じ材質で構成されているため、熱膨張係数は同一であり、熱膨張係数の相違による位置ずれは生じない。
【0131】
半導体基板1の熱膨張係数との関係および原料コストを考慮すると、シャドーマスク30、40、50、60の材料は、42アロイが好ましい。半導体基板1の熱膨張係数との関係に着目すると、シャドーマスク30、40、50、60の材料として、ニッケルの組成が36%程度、鉄の組成が64%程度の場合に、半導体基板1の熱膨張係数に最も近くなり、熱膨張係数差によるアライメント誤差を最も小さくできる。
【0132】
また、シャドーマスク30,40,50,60の厚さに関しては、生産のランニングコストを抑制する観点から、再生して多数回使用できることが好ましい。この場合、シャドーマスク30,40,50,60に付着した成膜物は、フッ酸またはNaOHを用いて除去することができる。これらの再生回数を考慮すると、シャドーマスク30,40,50,60の厚さは、100μm〜200μmが好ましく、より好ましくは、150μmである。
【0133】
また、上述した製造方法においては、保護膜8を構成する真性非晶質半導体膜/シリコンの窒化膜を1つの反応室で連続して形成すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、真性非晶質半導体層を形成した後、シリコンの窒化膜をスパッタリング装置、または別のCVD装置で形成するように、1回、試料を大気に暴露してもよい。
【0134】
保護膜8を構成する真性非晶質半導体膜/シリコンの窒化膜を、大気暴露せずに形成した場合、大気中における有機物または水分のコンタミネーションを抑制することができるため、好ましい。
【0135】
更に、保護膜8は、EB蒸着、スパッタリング法、レーザアブレーション法、CVD法およびイオンプレーティング法を用いて形成されてもよい。
【0136】
更に、この発明の実施の形態においては、パッシベーション膜3を形成した後、窒素(N)ガスを用いたプラズマCVD法によりパッシベーション膜3を窒化し、SiONからなるパッシベーション膜を形成してもよい。その結果、パッシベーション膜3上に形成したp型非晶質半導体層5中のボロン(B)が半導体基板1へ拡散するのを抑制できる。そして、トンネル電流を流すことができる膜厚を有するパッシベーション膜3を形成した場合であっても、有効にボロン(B)の拡散を抑制できるため、好ましい。
【0137】
次に、光電変換素子10を用いて太陽電池モジュールを作製する方法について説明する。図15は、図1に示す光電変換素子10を裏面側から見た平面図である。図15の(a)を参照して、n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5は、半導体基板1の面内方向に交互に所望の間隔で配置される。そして、電極6,7は、それぞれ、n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5上に配置される。その結果、隣接する電極6,7間には、ギャップ領域Gが形成される。
【0138】
図15の(b)を参照して、保護膜8は、ギャップ領域Gおよび半導体基板1の周辺領域上に配置される。そして、電極6,7上には、幅Lを有する開口部8Aが形成される。電極6,7は、開口部8Aを介して後述の配線シートに接続される。
【0139】
なお、図15の(b)においては、半導体基板1の周辺部には、保護膜8で覆われていない領域が存在するが、光電変換素子10においては、半導体基板1の裏面の全面を保護膜で覆い、電極6,7の一部が露出している状態が最も好ましい。
【0140】
図16は、配線シートの平面図である。図16を参照して、配線シート70は、絶縁基材710と、配線材71〜87とを含む。
【0141】
絶縁基材710は、電気絶縁性の材質であればよく、特に限定なく用いることができる。絶縁基材710は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリビニルフルオライド(PVF)およびポリイミド等からなる。
【0142】
また、絶縁基材710の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、25μm以上150μm以下である。そして、絶縁基材710は、1層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。
【0143】
配線材71は、バスバー部711と、フィンガー部712とを有する。フィンガー部712は、その一方端がバスバー部711に接続される。
【0144】
配線材72は、バスバー部721と、フィンガー部722,723とを有する。フィンガー部722は、その一方端がバスバー部721に接続される。フィンガー部723は、バスバー部721に対してバスバー部721とフィンガー部722との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部721に接続される。
【0145】
配線材73は、バスバー部731と、フィンガー部732,733とを有する。フィンガー部732は、その一方端がバスバー部731に接続される。フィンガー部733は、バスバー部731に対してバスバー部731とフィンガー部732との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部731に接続される。
【0146】
配線材74は、バスバー部741と、フィンガー部742,743とを有する。フィンガー部742は、その一方端がバスバー部741に接続される。フィンガー部743は、バスバー部741に対してバスバー部741とフィンガー部742との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部741に接続される。
【0147】
配線材75は、バスバー部751と、フィンガー部752,753とを有する。フィンガー部752,753は、バスバー部751の長さ方向において隣接して配置され、その一方端がバスバー部751の同じ側においてバスバー部751に接続される。
【0148】
配線材76は、バスバー部761と、フィンガー部762,763とを有する。フィンガー部762は、その一方端がバスバー部761に接続される。フィンガー部763は、バスバー部761に対してバスバー部761とフィンガー部762との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部761に接続される。
【0149】
配線材77は、バスバー部771と、フィンガー部772,773とを有する。フィンガー部772は、その一方端がバスバー部771に接続される。フィンガー部773は、バスバー部771に対してバスバー部771とフィンガー部772との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部771に接続される。
【0150】
配線材78は、バスバー部781と、フィンガー部782,783とを有する。フィンガー部782は、その一方端がバスバー部781に接続される。フィンガー部783は、バスバー部781に対してバスバー部781とフィンガー部782との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部781に接続される。
【0151】
配線材79は、バスバー部791と、フィンガー部792,793とを有する。フィンガー部792,793は、バスバー部791の長さ方向において隣接して配置され、その一方端がバスバー部791の同じ側においてバスバー部791に接続される。
【0152】
配線材80は、バスバー部801と、フィンガー部802,803とを有する。フィンガー部802は、その一方端がバスバー部801に接続される。フィンガー部803は、バスバー部801に対してバスバー部801とフィンガー部802との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部801に接続される。
【0153】
配線材81は、バスバー部811と、フィンガー部812,813とを有する。フィンガー部812は、その一方端がバスバー部811に接続される。フィンガー部813は、バスバー部811に対してバスバー部811とフィンガー部812との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部811に接続される。
【0154】
配線材82は、バスバー部821と、フィンガー部822,823とを有する。フィンガー部822は、その一方端がバスバー部821に接続される。フィンガー部823は、バスバー部821に対してバスバー部821とフィンガー部822との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部821に接続される。
【0155】
配線材83は、バスバー部831と、フィンガー部832,833とを有する。フィンガー部832,833は、バスバー部831の長さ方向において隣接して配置され、その一方端がバスバー部831の同じ側においてバスバー部831に接続される。
【0156】
配線材84は、バスバー部841と、フィンガー部842,843とを有する。フィンガー部842は、その一方端がバスバー部841に接続される。フィンガー部843は、バスバー部841に対してバスバー部841とフィンガー部842との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部841に接続される。
【0157】
配線材85は、バスバー部851と、フィンガー部852,853とを有する。フィンガー部852は、その一方端がバスバー部851に接続される。フィンガー部853は、バスバー部851に対してバスバー部851とフィンガー部852との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部851に接続される。
【0158】
配線材86は、バスバー部861と、フィンガー部862,863とを有する。フィンガー部862は、その一方端がバスバー部861に接続される。フィンガー部863は、バスバー部861に対してバスバー部861とフィンガー部862との接続部の反対側において、その一方端がバスバー部861に接続される。
【0159】
配線材87は、バスバー部871と、フィンガー部872とを有する。フィンガー部872は、その一方端がバスバー部871に接続される。
【0160】
配線材71は、フィンガー部712が配線材72のフィンガー部722と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0161】
配線材72は、フィンガー部722が配線材71のフィンガー部712と噛み合い、フィンガー部723が配線材73のフィンガー部732と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0162】
配線材73は、フィンガー部732が配線材72のフィンガー部723と噛み合い、フィンガー部733が配線材74のフィンガー部742と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0163】
配線材74は、フィンガー部742が配線材73のフィンガー部733と噛み合い、フィンガー部743が配線材75のフィンガー部752と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0164】
配線材75は、フィンガー部752が配線材74のフィンガー部743と噛み合い、フィンガー部753が配線材76のフィンガー部762と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0165】
配線材76は、フィンガー部762が配線材75のフィンガー部753と噛み合い、フィンガー部763が配線材77のフィンガー部772と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0166】
配線材77は、フィンガー部772が配線材76のフィンガー部763と噛み合い、フィンガー部773が配線材78のフィンガー部782と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0167】
配線材78は、フィンガー部782が配線材77のフィンガー部773と噛み合い、フィンガー部783が配線材79のフィンガー部792と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0168】
配線材79は、フィンガー部792が配線材78のフィンガー部783と噛み合い、フィンガー部793が配線材80のフィンガー部802と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0169】
配線材80は、フィンガー部802が配線材79のフィンガー部793と噛み合い、フィンガー部803が配線材81のフィンガー部812と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0170】
配線材81は、フィンガー部812が配線材80のフィンガー部803と噛み合い、フィンガー部813が配線材82のフィンガー部822と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0171】
配線材82は、フィンガー部822が配線材81のフィンガー部813と噛み合い、フィンガー部823が配線材83のフィンガー部832と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0172】
配線材83は、フィンガー部832が配線材82のフィンガー部823と噛み合い、フィンガー部833が配線材84のフィンガー部842と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0173】
配線材84は、フィンガー部842が配線材83のフィンガー部833と噛み合い、フィンガー部843が配線材85のフィンガー部852と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0174】
配線材85は、フィンガー部852が配線材84のフィンガー部843と噛み合い、フィンガー部853が配線材86のフィンガー部862と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0175】
配線材86は、フィンガー部862が配線材85のフィンガー部853と噛み合い、フィンガー部863が配線材87のフィンガー部872と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0176】
配線材87は、フィンガー部872が配線材86のフィンガー部863と噛み合うように絶縁基材710上に配置される。
【0177】
配線材71〜87の各々は、電気導電性のものであればよく、特に限定されない。配線材71〜87の各々は、例えば、Cu,Al,Agおよびこれらを主成分とする合金からなる。
【0178】
また、配線材71〜87の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上80μm以下が好適である。10μm未満では、配線抵抗が高くなり、80μmを超えると、光電変換素子10と貼り合わせるときに印加される熱によって配線材とシリコン基板との熱膨張係数の違いに起因してシリコン基板に反りが発生する。
【0179】
絶縁基材710の形状は、図16に示す形状に限定されず、適宜、変更可能である。また、配線材71〜87の表面の一部に、Ni,Au,Pt,Pd,Sn,InおよびITO等の導電性材料を形成してもよい。このように、配線材71〜87の表面の一部に、Ni等の導電性材料を形成するのは、配線材71〜87と光電変換素子10の電極6,7との電気的接続を良好なものとし、配線材71〜87の耐候性を向上させるためである。更に、配線材71〜87は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。
【0180】
電極6が配線材71のフィンガー部712に接続され、電極7が配線材72のフィンガー部722に接続されるように光電変換素子10を領域REG1上に配置し、電極6が配線材72のフィンガー部723に接続され、電極7が配線材73のフィンガー部732に接続されるように光電変換素子10を領域REG2上に配置される。以下、同様にして光電変換素子10を配線材73〜87上に配置する。これによって、16個の光電変換素子10が直列に接続される。
【0181】
光電変換素子10の電極6,7は、接着剤によって配線材71〜87に接続される。接着剤は、例えば、半田樹脂、半田、導電性接着剤、熱硬化型Agペースト、低温硬化型銅ペースト、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)および絶縁性接着剤(NCP:Non Conductive Paste)からなる群から選択された1種類以上の接着材からなる。なお、半田樹脂としては、例えば、タムラ科研(株)製のTCAP−5401−27等を用いることができる。また、絶縁性接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂等を用いることができ、熱硬化型および光硬化型の樹脂を用いることができる。また、導電性接着剤としては、例えば、錫およびビスマスの少なくとも一方を含む半田粒子等を用いることができる。より好ましくは、導電性接着剤は、錫と、ビスマス、インジウムおよび銀等との合金である。これにより、半田融点を抑えることができ、低温による接着プロセスが可能になる。
【0182】
n型非晶質半導体層4、p型非晶質半導体層5および電極6,7上に保護膜8を形成した光電変換素子10を用いる場合には、電極6,7上の無機絶縁膜と、n型非晶質半導体層4およびp型非晶質半導体層5上の無機絶縁膜とが存在し、これら2つの無機絶縁膜は、下地が異なる。そして、光電変換素子10においては、下地が異なる無機絶縁膜が連続して形成されている。このような状況では、熱履歴が、下地が異なる無機絶縁膜に印加されると、下地の熱膨張係数の違いから無機絶縁膜の剥がれ等が発生する場合がある。従って、低温、特に、200℃以下の熱プロセスが好ましく、その結果、低温で硬化し、電気的に接合できる熱硬化型Agペースト、低温硬化型銅ペースト、異方性導電フィルムおよび異方性導電ペーストが特に好ましい。
【0183】
配線シート70上に配置した光電変換素子10は、ガラス基板上に配置されたエチレンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)と、PETフィルム上に配置されたEVA樹脂との間に配置される。そして、ラミネータ装置を用いて真空圧着によりガラス基板側のEVA樹脂を光電変換素子10に圧着させるとともに、PETフィルム側のEVA樹脂を光電変換素子10に圧着させた状態で125℃に加熱し、硬化させる。これにより、ガラス基板とPETフィルムとの間で硬化したEVA樹脂中に、配線シート70が付いた光電変換素子10が封止されることによって太陽電池モジュールが作製される。
【0184】
[実施の形態2]
図17は、本実施の形態における光電変換素子の断面図である。図17に示すように、本実施の形態における光電変換素子10Aは、半導体基板1の受光面だけでなく、半導体基板1の裏面にもテクスチャ構造が形成されている点で実施の形態1と異なっている。以下、光電変換素子10Aについて、主に実施の形態1と異なる点を説明する。
【0185】
光電変換素子10Aは、以下のようにして作製される。まず、実施の形態1における図5の工程(a)と同様の工程を行う。それから、半導体基板1’の両面に、実施の形態1と同様のエッチング液を用いて異方性エッチングを行う。これにより、半導体基板1’の両面にピラミッド形状のテクスチャ構造が形成された半導体基板1Aが作製される(図18の(a)参照)
【0186】
半導体基板1Aを作製後、実施の形態1における図5の工程(c)及び図6の工程(d)と同様の各工程を順次行い、半導体基板1Aの受光面に非晶質半導体層11及び窒化シリコン膜12からなる反射防止膜2を形成するとともに、半導体基板1Aの裏面にパッシベーション膜3を形成する(図18の(b)参照)。
【0187】
反射防止膜2及びパッシベーション膜3を形成後は、実施の形態1における図6の工程(e)〜図9の工程(m)と同様の各工程を順次行うことにより、図17に示す光電変換素子10Aが作製される。
【0188】
本実施の形態では、半導体基板1Aの裏面にテクスチャ構造が形成されるため、パッシベーション膜3の表面も凹凸が形成されている。このようなパッシベーション膜3の上にシャドーマスク40を配置した場合、図19に示すように、実施の形態1よりもシャドーマスク40とパッシベーション膜3との間の隙間が大きく、シャドーマスク40とパッシベーション膜3との間の隙間にドーパントガスが回り込みやすい。従って、工程(g)において用いるシャドーマスクは、p型非晶質半導体層の膜厚減少領域の傾斜角度がn型非晶質半導体層よりも急峻となるように、テクスチャの形状やサイズに応じて調整された開口部が形成されたシャドーマスクを用いてもよい。
【0189】
このように、本実施の形態では、半導体基板1の受光面だけでなく、裏面にもテクスチャ構造が形成されることにより、半導体基板1へ入射光を効率良く取り込むことができる。また、裏面にテクスチャ構造を形成することにより、表面積が増加し、コンタクト抵抗を下げることができる。また、受光面だけにテクスチャ構造を形成するためには、異方性エッチングの際にテクスチャ構造を形成しない面を保護する必要があるが、両面にテクスチャ構造を形成する場合には、半導体基板1の両面を保護する必要がないので、プロセス工数を低減できる。
【0190】
[実施の形態3]
上述した実施の形態1における光電変換素子10の半導体基板1は、n型結晶シリコンからなるため、p型非晶質半導体層5の幅を実施の形態1よりも大きくして面積を広げることにより、変換効率をより向上させることができる。しかしながら、p型非晶質半導体層5の幅を大きくするために、p型非晶質半導体層5を形成する際に用いるシャドーマスク40の開口部40aの間隔を狭くすると、シャドーマスク40がよれたり、撓んだりしやすくなり、p型非晶質半導体層を適切な位置に形成することができない場合が生じうる。本実施の形態では、実施の形態1の光電変換素子10よりもシャドーマスク40の開口部40aの幅を広げても、n型非晶質半導体層4と一定の間隔を隔てた適切な位置にp型非晶質半導体層が形成され、変換効率を向上させることができる構成について説明する。
【0191】
図20は、本実施の形態における光電変換素子を裏面側から見た概略平面図である。また、図21Aは、図20に示す光電変換素子10BのIII−III線における概略断面図であり、図21Bは、図20に示す光電変換素子10BのIV−IV線における概略断面図である。なお、図20及び図21A,21Bにおいて、電極6,7及び保護膜8の図示は省略されている。
【0192】
図20に示すように、本実施の形態における光電変換素子10Bは、Y軸方向に一つながりに形成されたn型非晶質半導体層4と、Y軸方向に互いに離間して配置された複数のp型非晶質半導体層5Aとを備えている。光電変換素子10Bは、Y軸方向に複数のp型非晶質半導体層5Aが離間して配置されている点で実施の形態1の光電変換素子10と異なっている。
【0193】
図21Aに示すように、n型非晶質半導体層4とp型非晶質半導体層5Aとが隣接する方向(X軸方向)において、p型非晶質半導体層5Aは、n型非晶質半導体層4よりも膜厚減少領域の傾斜角度が急峻な膜厚減少領域を有する。さらに、p型非晶質半導体層5Aは、図21Bに示すように、p型非晶質半導体層5Aが隣接する方向(Y軸方向)においても、図21Aと同様の傾斜角度の膜厚減少領域を有する。つまり、この例では、p型非晶質半導体層5Aは、X軸方向及びY軸方向において、n型非晶質半導体層4よりも膜厚減少領域の傾斜角度が急峻な膜厚減少領域を有する。
【0194】
光電変換素子10Bは、以下のようにして作製される。まず、実施の形態1における図5の工程(a)から図6の工程(f)の各工程を順次行うことにより、実施の形態1と同様、パッシベーション膜3上にn型非晶質半導体層4を形成する。
【0195】
そして、n型非晶質半導体層4を形成後、図7の工程(g)において、シャドーマスク40に替えて、図22の(a)に示すシャドーマスク401をパッシベーション膜3及びn型非晶質半導体層4の上に配置する。
【0196】
図22の(b)は、図22の(a)に示すシャドーマスク401のV−V線の断面図であり、図22の(c)は、図22の(a)に示すシャドーマスク401のVI−VI線の断面図である。図22の(b)に示すように、シャドーマスク401の開口部401aのX軸方向の断面は、シャドーマスク401の上面側のX軸方向の開口幅W31よりも下面側のX軸方向の開口幅W32が狭い台形形状を有する。また、図22の(c)に示すように、シャドーマスク401の開口部401aのY軸方向の断面は、シャドーマスク401の上面側のY軸方向の開口幅W41よりも下面側のY軸方向の開口幅W42が狭い台形形状を有する。
【0197】
シャドーマスク401を配置後、図7の工程(h)と同様の工程を行う。これにより、シャドーマスク401によって覆われていないパッシベーション膜3の領域にp型非晶質シリコンが堆積される。その結果、パッシベーション膜3上のX軸方向及びY軸方向に、膜厚減少領域を有するp型非晶質半導体層5Aが形成される。シャドーマスク401を用いて形成されたp型非晶質半導体層5Aにおける膜厚減少領域は、n型非晶質半導体層4における膜厚減少領域よりも傾斜角度が急峻である。
【0198】
p型非晶質半導体層5Aを形成後は、実施の形態1の図7の工程(i)〜図9の工程(m)を行うことにより、n型非晶質半導体層4及びp型非晶質半導体層5Aのそれぞれの上に電極6,7が形成され、電極6,7の一部とギャップ領域Gとを覆う保護膜8が形成される。
【0199】
シャドーマスク401における開口部401aは、Y軸方向に一定の距離Gpを隔てて配置されている。そのため、実施の形態1よりp型非晶質半導体層のX軸方向の幅を広くしても、Y軸方向の開口部401aの間の領域によってシャドーマスク401の強度を高めることができる。従って、シャドーマスク401をパッシベーション膜3及びn型非晶質半導体層4の上に配置した際に、シャドーマスク401がよれたり、撓んだりしにくく、p型非晶質半導体層5Aを適切な位置に形成することができる。
【0200】
また、シャドーマスク401は、X軸方向だけでなく、Y軸方向に開口部401aと開口部401aとの間の領域が存在するため、開口部401aのY軸方向の断面を矩形形状に構成した場合、開口部401aの外側のY軸方向にボロン(B)が回り込み、パッシベーション膜3上に拡散する。本実施の形態では、シャドーマスク401における開口部401aは、X軸方向だけでなくY軸方向の断面も台形形状となるように構成されているため、X軸方向及びY軸方向において、n型非晶質半導体層4における膜厚減少領域よりも傾斜角度が急峻な膜厚減少領域を有するp型非晶質半導体層5Aが形成される。そのため、Y軸方向における開口部401aと開口部401aとの間の領域にボロン(B)の拡散が抑制され、変換効率を向上させることができる。
【0201】
[実施の形態4]
図23は、本実施の形態における光電変換素子を裏面側から見た概略平面図である。なお、図23において、電極6,7及び保護膜8の図示は省略されている。
【0202】
図23に示すように、本実施の形態における光電変換素子10Cは、Y軸方向に互いに離間して配置された複数のn型非晶質半導体層4Aが配置されている点で実施の形態3の光電変換素子10Bと異なっている。n型非晶質半導体層4Aは、X軸方向及びY軸方向において、実施の形態1におけるn型非晶質半導体層4と同様の膜厚減少領域を有する。
【0203】
光電変換素子10Cは、以下のようにして作製される。まず、図5の工程(a)から図6の工程(d)の各工程を順次行い、その後、図6の工程(e)において、シャドーマスク30に替えて、図24に示すシャドーマスク301をパッシベーション膜3の上に配置する。
【0204】
図24に示すように、シャドーマスク301は、X軸方向及びY軸方向に複数の開口部301aが配置されており、Y軸方向に配置された開口部301は、互いに一定の間隔Gnを隔てて配置されている。シャドーマスク301の開口部301aのX軸方向及びY軸方向の断面は、実施の形態1と同様、矩形形状を有する。
【0205】
シャドーマスク301を配置した後、実施の形態1における図6の工程(f)を行うことにより、パッシベーション膜3の上にn型非晶質半導体層4Aを形成する。そして、図7の工程(g)において、実施の形態3と同様のシャドーマスク401を配置し、図7の工程(h)及び(i)を順次行うことにより、パッシベーション膜3の上に、p型非晶質半導体層5Aを形成する。
【0206】
その後、図8の工程(j)〜図9の工程(m)を行うことにより、n型非晶質半導体層4A及びp型非晶質半導体層5Aのそれぞれの上に電極6,7が形成され、電極6,7の一部とギャップ領域Gとを覆う保護膜8が形成され、光電変換素子10Cが形成される。
【0207】
このように、本実施の形態におけるシャドーマスク301は、Y軸方向において、開口部301aが離間して配置されているため、シャドーマスク30と比べ、Y軸方向の開口部301aと開口部301aの間の領域によってシャドーマスク301の強度が高められる。また、上述したように、シャドーマスク401も、Y軸方向の開口部401aと開口部401aとの間の領域によってシャドーマスク401の強度が高められる。そのため、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層との間のギャップ領域を狭めることができ、光電変換素子10Cの変換効率をさらに向上させることができる。
【0208】
[実施の形態5]
図25は、本実施の形態における光電変換素子を裏面側から見た概略平面図である。なお、図25において、電極6,7及び保護膜8の図示は省略されている。
【0209】
図25に示すように、本実施の形態における光電変換素子10Dは、X軸方向及びY軸方向において、n型非晶質半導体層4Aとp型非晶質半導体層5Aとが交互に並ぶように配置されている点で実施の形態4の光電変換素子10Cと異なっている。
【0210】
n型非晶質半導体層4Aは、X軸方向及びY軸方向において、実施の形態1におけるn型非晶質半導体層4と同様の膜厚減少領域を有する。また、p型非晶質半導体層5Aは、X軸方向及びY軸方向において、実施の形態1におけるp型非晶質半導体層5と同様の膜厚減少領域を有する。つまり、p型非晶質半導体層5Aは、X軸方向及びY軸方向において、n型非晶質半導体層4よりも傾斜角度が急峻な膜厚減少領域を有する。
【0211】
光電変換素子10Dは、以下のようにして作製される。まず、図5の工程(a)から図6の工程(d)を順次行い、その後、図6の工程(e)において、シャドーマスク30に替えて、図26Aに示すシャドーマスク302をパッシベーション膜3の上に配置する。図26Aに示すように、シャドーマスク302は、X軸方向及びY軸方向において、開口部302aが隣接しないように、千鳥格子状に複数の開口部302aが形成されている。開口部302aのX軸方向及びY軸方向の断面は、矩形形状を有する。
【0212】
シャドーマスク302を配置した後、図6の工程(f)を行うことにより、パッシベーション膜3の上にn型非晶質半導体層4Aを形成する。そして、図7の工程(g)において、シャドーマスク40に替えて、図26Bに示すシャドーマスク402をパッシベーション膜3の上に配置する。図26Bに示すように、シャドーマスク402は、X軸方向及びY軸方向において、複数の開口部402aが千鳥格子状に形成されている。開口部402aのX軸方向及びY軸方向の断面は、台形形状を有する。
【0213】
そして、シャドーマスク402を配置した後、図7の工程(h)及び(i)を順次行うことにより、パッシベーション膜3の上に、p型非晶質半導体層5Aを形成する。
【0214】
p型非晶質半導体層5Aを形成後、図8の工程(j)〜図9の工程(m)を行うことにより、n型非晶質半導体層4A及びp型非晶質半導体層5Aのそれぞれの上に電極6,7が形成され、電極6,7の一部とギャップ領域Gとを覆う保護膜8が形成され、光電変換素子10Dが形成される。
【0215】
このように、本実施の形態におけるシャドーマスク302は、複数の開口部302aが千鳥格子状に配置されている。また、シャドーマスク402についても、シャドーマスク302と同様、複数の開口部402aが千鳥格子状に配置されている。つまり、本実施の形態では、実施の形態4におけるシャドーマスク301、401のように開口部が直線状に並ばないため、シャドーマスク301、401にかかる負荷が実施の形態4よりも分散され、シャドーマスク302,402の強度が高められる。そのため、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層との間のギャップ領域を実施の形態3よりも狭めることができ、光電変換素子10Dの変換効率をさらに向上させることができる。また、光電変換素子10Dは、n型非晶質半導体層4Aとp型非晶質半導体層5Aとが千鳥格子状に配置されているため、X軸方向及びY軸方向にキャリアが移動することができ、実施の形態3よりもさらに変換効率を向上させることができる。
【0216】
[実施の形態6]
図27は、本実施の形態による光電変換素子を備える光電変換モジュールの構成を示す概略図である。図27を参照して、光電変換モジュール1000は、複数の光電変換素子1001と、カバー1002と、出力端子1003,1004とを備える。
【0217】
複数の光電変換素子1001は、アレイ状に配置され、直列に接続される。なお、複数の光電変換素子1001は、直列に接続される代わりに、並列接続されてもよく、直列と並列を組み合わせて接続されてもよい。
【0218】
そして、複数の光電変換素子1001の各々は、光電変換素子10,10A、10B、10C、10Dのいずれかからなる。
【0219】
カバー1002は、耐候性のカバーからなり、複数の光電変換素子1001を覆う。カバー1002は、例えば、光電変換素子1001の受光面側に設けられた透明基材(例えば、ガラス等)と、光電変換素子1001の受光面側と反対の裏面側に設けられた裏面基材(たとえば、ガラス、樹脂シート等)と、透明基材と裏面基材との間の隙間を埋める封止材(例えば、EVA等)とを含む。
【0220】
出力端子1003は、直列に接続された複数の光電変換素子1001の一方端に配置される光電変換素子1001に接続される。
【0221】
出力端子1004は、直列に接続された複数の光電変換素子1001の他方端に配置される光電変換素子1001に接続される。
【0222】
上述したように、光電変換素子10,10A、10B、10C、10Dは、ボロン(B)の拡散が抑制され、パッシベーション性及び変換効率に優れる。
【0223】
従って、光電変換モジュール1000は、パッシベーション性及び変換効率を向上させることができる。
【0224】
なお、光電変換モジュール1000に含まれる光電変換素子1001の数は、2以上の任意の整数である。
【0225】
また、実施の形態6による光電変換モジュールは、図27に示す構成に限らず、光電変換素子10,10A、10B、10C、10Dのいずれかを用いる限り、どのような構成であってもよい。
【0226】
[実施の形態7]
図28は、この実施の形態による光電変換素子を備える太陽光発電システムの構成を示す概略図である。
【0227】
図28を参照して、太陽光発電システム1100は、光電変換モジュールアレイ1101と、接続箱1102と、パワーコンディショナー1103と、分電盤1104と、電力メーター1105とを備える。
【0228】
接続箱1102は、光電変換モジュールアレイ1101に接続される。パワーコンディショナー1103は、接続箱1102に接続される。分電盤1104は、パワーコンディショナー1103および電気機器1110に接続される。電力メーター1105は、分電盤1104および系統連系に接続される。
【0229】
光電変換モジュールアレイ1101は、太陽光を電気に変換して直流電力を発電し、その発電した直流電力を接続箱1102に供給する。
【0230】
接続箱1102は、光電変換モジュールアレイ1101が発電した直流電力を受け、その受けた直流電力をパワーコンディショナー1103へ供給する。
【0231】
パワーコンディショナー1103は、接続箱1102から受けた直流電力を交流電力に変換し、その変換した交流電力を分電盤1104に供給する。
【0232】
分電盤1104は、パワーコンディショナー1103から受けた交流電力および/または電力メーター1105を介して受けた商用電力を電気機器1110へ供給する。また、分電盤1104は、パワーコンディショナー1103から受けた交流電力が電気機器1110の消費電力よりも多いとき、余った交流電力を電力メーター1105を介して系統連系へ供給する。
【0233】
電力メーター1105は、系統連系から分電盤1104へ向かう方向の電力を計測するとともに、分電盤1104から系統連系へ向かう方向の電力を計測する。
【0234】
図29は、図28に示す光電変換モジュールアレイ1101の構成を示す概略図である。
【0235】
図29を参照して、光電変換モジュールアレイ1101は、複数の光電変換モジュール1120と、出力端子1121,1122とを含む。
【0236】
複数の光電変換モジュール1120は、アレイ状に配列され、直列に接続される。なお、複数の光電変換モジュール1120は、直列に接続される代わりに、並列接続されてもよく、直列と並列を組み合わせて接続されてもよい。そして、複数の光電変換モジュール1120の各々は、図27に示す光電変換モジュール1000からなる。
【0237】
出力端子1121は、直列に接続された複数の光電変換モジュール1120の一方端に位置する光電変換モジュール1120に接続される。
【0238】
出力端子1122は、直列に接続された複数の光電変換モジュール1120の他方端に位置する光電変換モジュール1120に接続される。
【0239】
なお、光電変換モジュールアレイ1101に含まれる光電変換モジュール1120数は、2以上の任意の整数である。
【0240】
太陽光発電システム1100における動作を説明する。光電変換モジュールアレイ1101は、太陽光を電気に変換して直流電力を発電し、その発電した直流電力を接続箱1102を介してパワーコンディショナー1103へ供給する。
【0241】
パワーコンディショナー1103は、光電変換モジュールアレイ1101から受けた直流電力を交流電力に変換し、その変換した交流電力を分電盤1104へ供給する。
【0242】
分電盤1104は、パワーコンディショナー1103から受けた交流電力が電気機器1110の消費電力以上であるとき、パワーコンディショナー1103から受けた交流電力を電気機器1110に供給する。そして、分電盤1104は、余った交流電力を、電力メーター1105を介して系統連系へ供給する。
【0243】
また、分電盤1104は、パワーコンディショナー1103から受けた交流電力が電気機器1110の消費電力よりも少ないとき、系統連系から受けた交流電力およびパワーコンディショナー1103から受けた交流電力を電気機器1110へ供給する。
【0244】
太陽光発電システム1100は、上述したように、パッシベーション性及び変換効率に優れた光電変換素子10,10A、10B、10C、10Dのいずれかを備えている。
【0245】
従って、太陽光発電システム1100のパッシベーション性及び変換効率を改善できる。
【0246】
図30は、この実施の形態による光電変換素子を備える別の太陽光発電システムの構成を示す概略図である。
【0247】
この実施の形態による光電変換素子を備える太陽光発電システムは、図30に示す太陽光発電システム1100Aであってもよい。
【0248】
図30を参照して、太陽光発電システム1100Aは、図28に示す太陽光発電システム1100に蓄電池1106を追加したものである、その他は、太陽光発電システム1100と同じである。
【0249】
蓄電池1106は、パワーコンディショナー1103に接続される。
【0250】
太陽光発電システム1100Aにおいては、パワーコンディショナー1103は、接続箱1102から受けた直流電力の一部または全部を適切に変換して蓄電池1106に蓄電する。
【0251】
パワーコンディショナー1103は、その他、太陽光発電システム1100における動作と同じ動作を行う。
【0252】
蓄電池1106は、パワーコンディショナー1103から受けた直流電力を蓄電する。また、蓄電池1106は、光電変換モジュールアレイ1101の発電量および/または電気機器1110の電力消費量の状況に応じて、蓄電した電力を、適宜、パワーコンディショナー1103へ供給する。
【0253】
このように、太陽光発電システム1100Aは、蓄電池1106を備えているので、日照量の変動による出力変動を抑制できるとともに、日照のない時間帯であっても、蓄電池1106に蓄電された電力を電気機器1110に供給することができる。
【0254】
なお、蓄電池1106は、パワーコンディショナー1103に内蔵されていてもよい。
【0255】
また、本実施の形態による太陽光発電システムは、図28,29に示す構成または図29,30に示す構成に限らず、光電変換素子10,10A、10B、10C、10Dのいずれかを用いる限り、どのような構成であってもよい。
【0256】
[実施の形態8]
図31は、この実施の形態による光電変換素子を備える太陽光発電システムの構成を示す概略図である。
【0257】
図31を参照して、太陽光発電システム1200は、サブシステム1201〜120n(nは2以上の整数)と、パワーコンディショナー1211〜121nと、変圧器1221とを備える。太陽光発電システム1200は、図28,30に示す太陽光発電システム1100,1100Aよりも規模が大きい太陽光発電システムである。
【0258】
パワーコンディショナー1211〜121nは、それぞれ、サブシステム1201〜120nに接続される。
【0259】
変圧器1221は、パワーコンディショナー1211〜121nおよび系統連系に接続される。
【0260】
サブシステム1201〜120nの各々は、モジュールシステム1231〜123j(jは2以上の整数)からなる。
【0261】
モジュールシステム1231〜123jの各々は、光電変換モジュールアレイ1301〜130i(iは2以上の整数)と、接続箱1311〜131iと、集電箱1321とを含む。
【0262】
光電変換モジュールアレイ1301〜130iの各々は、図25に示す光電変換モジュールアレイ1101と同じ構成からなる。
【0263】
接続箱1311〜131iは、それぞれ、光電変換モジュールアレイ1301〜130iに接続される。
【0264】
集電箱1321は、接続箱1311〜131iに接続される。また、サブシステム1201のj個の集電箱1321は、パワーコンディショナー1211に接続される。サブシステム1202のj個の集電箱1321は、パワーコンディショナー1212に接続される。以下、同様にして、サブシステム120nのj個の集電箱1321は、パワーコンディショナー121nに接続される。
【0265】
モジュールシステム1231のi個の光電変換モジュールアレイ1301〜130iは、太陽光を電気に変換して直流電力を発電し、その発電した直流電力をそれぞれ接続箱1311〜131iを介して集電箱1321へ供給する。モジュールシステム1232のi個の光電変換モジュールアレイ1301〜130iは、太陽光を電気に変換して直流電力を発電し、その発電した直流電力をそれぞれ接続箱1311〜131iを介して集電箱1321へ供給する。以下、同様にして、モジュールシステム123jのi個の光電変換モジュールアレイ1301〜130iは、太陽光を電気に変換して直流電力を発電し、その発電した直流電力をそれぞれ接続箱1311〜131iを介して集電箱1321へ供給する。
【0266】
そして、サブシステム1201のj個の集電箱1321は、直流電力をパワーコンディショナー1211へ供給する。
【0267】
サブシステム1202のj個の集電箱1321は、同様にして直流電力をパワーコンディショナー1212へ供給する。
【0268】
以下、同様にして、サブシステム120nのj個の集電箱1321は、直流電力をパワーコンディショナー121nへ供給する。
【0269】
パワーコンディショナー1211〜121nは、それぞれ、サブシステム1201〜120nから受けた直流電力を交流電力に変換し、その変換した交流電力を変圧器1221へ供給する。
【0270】
変圧器1221は、パワーコンディショナー1211〜121nから交流電力を受け、その受けた交流電力の電圧レベルを変換して系統連系へ供給する。
【0271】
太陽光発電システム1200は、上述したように、に優れた光電変換素子10,10A、10B、10C、10Dのいずれかを備えている。
【0272】
従って、太陽光発電システム1200のパッシベーション性及び変換効率を改善できる。
【0273】
図32は、この実施の形態による光電変換素子を備える別の太陽光発電システムの構成を示す概略図である。
【0274】
この実施の形態による光電変換素子を備える太陽光発電システムは、図32に示す太陽光発電システム1200Aであってもよい。
【0275】
図32を参照して、太陽光発電システム1200Aは、図31に示す太陽光発電システム1200に蓄電池1241〜124nを追加したものであり、その他は、太陽光発電システム1200と同じである。
【0276】
蓄電池1241〜124nは、それぞれ、パワーコンディショナー1211〜121nに接続される。
【0277】
太陽光発電システム1200Aにおいては、パワーコンディショナー1211〜121nは、それぞれ、サブシステム1201〜120nから受けた直流電力を交流電力に変換し、その変換した交流電力を変圧器1221へ供給する。また、パワーコンディショナー1211〜121nは、それぞれ、サブシステム1201〜120nから受けた直流電力を適切に変換し、その変換した直流電力をそれぞれ蓄電池1241〜124nへ蓄電する。
【0278】
蓄電池1241〜124nは、サブシステム1201〜120nからの直流電力量に応じて、蓄電した電力をそれぞれパワーコンディショナー1211〜121nへ供給する。
【0279】
このように、太陽光発電システム1200Aは、蓄電池1241〜124nを備えているので、日照量の変動による出力変動を抑制できるとともに、日照のない時間帯であっても、蓄電池1241〜124nに蓄電された電力を変圧器1221に供給することができる。
【0280】
なお、蓄電池1241〜124nは、それぞれ、パワーコンディショナー1211〜121nに内蔵されていてもよい。
【0281】
また、本実施の形態による太陽光発電システムは、図31,32に示す構成に限らず、光電変換素子10,10A、10B、10C、10Dのいずれかを用いる限り、どのような構成であってもよい。
【0282】
更に、本実施の形態においては、太陽光発電システム1200,1200Aに含まれる全ての光電変換素子が光電変換素子10,10A、10B、10C、10Dである必要はない。
【0283】
例えば、あるサブシステム(サブシステム1201〜120nのいずれか)に含まれる光電変換素子の全てが光電変換素子10,10A、10B、10C、10Dのいずれかであり、別のサブシステム(サブシステム1201〜120nのいずれか)に含まれる光電変換素子の一部または全部が光電変換素子10,10A、10B、10C、10D以外の光電変換素子である場合も有り得るものとする。
【0284】
[変形例]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0285】
(1)上述した各実施の形態では、保護膜8を設けた構成について説明したが、保護膜8を設けない構成としてもよい。
【0286】
(2)上述した各実施の形態では、n型非晶質半導体層4を形成後、p型非晶質半導体層5を形成する方法について説明したが、p型非晶質半導体層5を形成後に、n型非晶質半導体層4を形成するようにしてもよい。n型非晶質半導体層4とp型非晶質半導体層5とを形成する順序を逆にしても、p型非晶質半導体層5の膜厚減少領域の傾斜角度がn型非晶質半導体層4よりも急峻となるようにp型非晶質半導体層5が形成されるため、ギャップ領域へのボロン(B)の拡散が抑制され、変換効率の低下を抑制できる。
【0287】
(3)上述した各実施の形態では、n型非晶質半導体層よりもp型非晶質半導体層の膜厚減少領域の傾斜角度が急峻となるように、p型非晶質半導体層とn型非晶質半導体層をそれぞれ形成する際に開口部の断面形状が互いに異なるシャドーマスクを用い、さらに、n型非晶質半導体層とp型非晶質半導体層をそれぞれ成膜する際の成膜条件を変える例を説明したが、以下のように構成してもよい。例えば、p型非晶質半導体層とn型非晶質半導体層ともに開口部の断面形状が矩形形状であるシャドーマスクを用い、n型非晶質半導体層よりもp型非晶質半導体層の膜厚減少領域の傾斜角度が急峻となるように、成膜条件だけを変えて成膜してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0288】
この発明は、光電変換素子、それを備えた太陽電池モジュールおよび太陽光発電システムに適用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
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図21A
図21B
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図26A
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