(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785792
(24)【登録日】2020年10月29日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】短時間作用性フェニルアルキルアミンカルシウムチャネル遮断薬の高水溶性塩及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/277 20060101AFI20201109BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20201109BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20201109BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20201109BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20201109BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20201109BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20201109BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20201109BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20201109BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20201109BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20201109BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20201109BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20201109BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
A61K31/277
A61K9/12
A61K9/08
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/12
A61P9/06
A61P9/10 103
A61P25/06
A61P43/00 111
【請求項の数】61
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-554520(P2017-554520)
(86)(22)【出願日】2016年4月13日
(65)【公表番号】特表2018-514527(P2018-514527A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】CA2016050425
(87)【国際公開番号】WO2016165014
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】62/147,427
(32)【優先日】2015年4月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517357871
【氏名又は名称】マイルストーン ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マグイレ,マルティン,ピー.
【審査官】
原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−530429(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0191245(US,A1)
【文献】
特表2004−532860(JP,A)
【文献】
特表2000−506856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/277
A61K 9/08
A61K 9/12
A61K 47/04
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/18
A61K 47/20
A61K 47/26
A61K 47/34
A61P 9/06
A61P 9/10
A61P 25/06
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物I
【化1】
の薬学的に許容される
酢酸又はメタンスルホン酸塩、又はそのラセミ体又はエナンチオマーを含む、経鼻投与のために製剤化された水性組成物であって、化合物I
の酢酸又はメタンスルホン酸塩又はそのラセミ体又はエナンチオマーが150mg/mLから600mg/mLの間の濃度で水性組成物中に溶解されている水性組成物。
【請求項2】
水性組成物が化合物IのS-エナンチオマーを含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
濃度が350mg/mL±25mg/mlである、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項4】
濃度が450mg/mL±25mg/mlである、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項5】
水性組成物が40%から85%(w/v)の水を含む、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項6】
水性組成物が4.5±1.5のpHを有する、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項7】
水性組成物が、化合物I又はそのラセミ体又はエナンチオマー並びに化合物に対して0.5モル当量から1.5モル当量の間の酢酸を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項8】
水性組成物が、化合物I又はそのラセミ体又はエナンチオマー並びに化合物に対して0.5モル当量から1.5モル当量の間のメタンスルホン酸を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項9】
水性組成物がキレート剤をさらに含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項10】
キレート剤がアミノポリカルボン酸である、請求項9に記載の水性組成物。
【請求項11】
水性組成物がEDTAをさらに含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項12】
水性組成物が、硫酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択されるpH調整剤をさらに含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項13】
pH調整剤が硫酸である、請求項12に記載の水性組成物。
【請求項14】
水性組成物が10mPa*sから70mPa*sの間の粘度を呈する、請求項1から13のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項15】
水性組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項16】
賦形剤がポリソルベート又はプロピレングリコールである、請求項15に記載の水性組成物。
【請求項17】
水性組成物が、室温で均質のままである、請求項1から16のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項18】
水性組成物が、10℃で4日間均質のままである、請求項1から16のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項19】
水性組成物が、2〜5℃で7日間均質のままである、請求項1から16のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項20】
4回以下の単回ポンプスプレー投与量を含む単位剤形で請求項1から19のいずれか1項の水性組成物を含む経鼻送達システム。
【請求項21】
2回以下の単回ポンプスプレー投与量を含む単位剤形で請求項1から19のいずれか1項の水性組成物を含む経鼻送達システム。
【請求項22】
単位剤形が患者の各鼻孔への200マイクロリットル以下の水性組成物の投与のために構成されている、請求項20又は21に記載の経鼻送達システム。
【請求項23】
単位剤形が患者の各鼻孔への150マイクロリットル以下の水性組成物の投与のために構成されている、請求項20又は21に記載の経鼻送達システム。
【請求項24】
患者における心不整脈、安定狭心症及び片頭痛からなる群から選択される疾患を処置するための、請求項1から19のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項25】
前記疾患が心不整脈である、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項26】
前記疾患が安定狭心症である、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項27】
前記疾患が片頭痛である、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項28】
前記心不整脈がPSVT、心房細動又は心室頻拍である、請求項25に記載の水性組成物。
【請求項29】
化合物Iが、患者への投与の3分から5分以内に患者の血漿中で治療的に有効な濃度に達する、請求項24から28のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項30】
150マイクロリットルから200マイクロリットルの間の量で患者へ投与される、請求項24から29のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項31】
患者がヒトである、請求項24から30のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項32】
心不整脈、安定狭心症及び片頭痛からなる群から選択される疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1から19のいずれか1項に記載の水性組成物の使用。
【請求項33】
前記疾患が心不整脈である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記疾患が安定狭心症である、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
前記疾患が片頭痛である、請求項32に記載の使用。
【請求項36】
前記心不整脈がPSVT、心房細動又は心室頻拍である、請求項33に記載の使用。
【請求項37】
a.第1の溶解酸を含む溶液を、請求項1に記載の化合物の遊離塩基に添加し、混合物を形成するステップであって、第1の溶解酸は酢酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択されるステップ;
b.混合物に、エチレンジアミン四酢酸を含む溶液を添加するステップ;
c.得られた混合物を、化合物が混合物内で十分に分散されるまで加熱及び機械的に撹拌するステップ;
d.第2の溶解酸を含む溶液を混合物に添加することによって混合物のpHを3.5から5.5の間になるように調整するステップ;及び
e.溶液中の化合物の酢酸又はメタンスルホン酸塩の最終濃度が1ミリリットル当たり少なくとも300mgであるように混合物を希釈するステップ
を含む、患者への経鼻投与のために製剤化された溶液を作製する方法。
【請求項38】
第2の溶解酸が、酢酸、硫酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
溶液の最終pHが約4.0から約5.0の間である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
溶液の最終pHが約4.5である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
化合物の酢酸又はメタンスルホン酸塩を含む溶液が、10℃で4日間均質のままである、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
化合物の酢酸又はメタンスルホン酸塩を含む溶液が、2〜5℃で7日間均質のままである、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
薬学的に許容される塩が、化合物IのS-エナンチオマーの酢酸塩である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項44】
350mg/mL±25mg/mlの濃度で水性組成物中に溶解された化合物I
【化2】
のS-エナンチオマーの酢酸塩を含む、経鼻投与のために製剤化された水性組成物。
【請求項45】
化合物IのS-エナンチオマーの酢酸塩が、350mg/mLの濃度で水性組成物中に溶解されている、請求項44に記載の水性組成物。
【請求項46】
水性組成物が4.5±0.1のpHを有する、請求項44に記載の水性組成物。
【請求項47】
水性組成物が、化合物に対して0.5モル当量から1.5モル当量の間の酢酸をさらに含む、請求項44に記載の水性組成物。
【請求項48】
水性組成物が、硫酸をさらに含む、請求項44に記載の水性組成物。
【請求項49】
水性組成物がEDTAをさらに含む、請求項44に記載の水性組成物。
【請求項50】
水性組成物が化合物IのS-エナンチオマーを含む、請求項20又は21に記載の経鼻送達システム。
【請求項51】
2回以下の単回ポンプスプレー投与量のそれぞれが、35mgの化合物IのS-エナンチオマーの酢酸又はメタンスルホン酸塩を含む、請求項21に記載の経鼻送達システム。
【請求項52】
2回以下の単回ポンプスプレー投与量のそれぞれが、100マイクロリットルの水性組成物を含む、請求項21に記載の経鼻送達システム。
【請求項53】
前記心不整脈がPSVTである、請求項28に記載の水性組成物。
【請求項54】
PSVTを処置する
ための水性組成物であって、化合物I
【化3】
のS-エナンチオマーの酢酸塩を含
み、患者
への経鼻投与
のために製剤化されており、化合物
の酢酸塩が350mg/mL±25mg/mLの濃度で水性組成物中に溶解されている
水性組成物。
【請求項55】
70mgの化合物IのS-エナンチオマーの酢酸塩が患者に投与される、請求項54に記載の水性組成物。
【請求項56】
化合物IのS-エナンチオマーの酢酸塩が、350mg/mLの濃度で水性組成物中に溶解されている、請求項54に記載の水性組成物。
【請求項57】
溶液中の化合物の酢酸又はメタンスルホン酸塩の最終濃度が、350mg/mL±25mg/mLである、請求項37に記載の方法。
【請求項58】
第1の溶解酸が酢酸であり、第2の溶解酸が硫酸である、請求項37に記載の方法。
【請求項59】
ステップd)において、pHを4.5±0.1に調整する、請求項37に記載の方法。
【請求項60】
a.酢酸を含む溶液を、化合物I
【化4】
のS-エナンチオマーの遊離塩基に添加し、混合物を形成するステップ;
b.混合物に、エチレンジアミン四酢酸を含む溶液を添加するステップ;
c.得られた混合物を、化合物IのS-エナンチオマーが混合物内で十分に分散されるまで加熱及び機械的に撹拌するステップ;
d.硫酸を含む溶液を混合物に添加することによって混合物のpHを4.5±0.1になるように調整するステップ;及び
e.溶液中の化合物IのS-エナンチオマー
の酢酸塩の最終濃度が350mg/ml±25mg/mlであるように混合物を希釈するステップ
を含む、患者への経鼻投与のために製剤化された溶液を作製する方法。
【請求項61】
溶液中の化合物IのS-エナンチオマーの酢酸塩の最終濃度が350mg/mLである、請求項60に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液中で驚くほど高い可溶性を呈するフェニルアルキルアミン化合物を含めた塩に関する。本発明の塩は、L型カルシウムチャネルの検証された拮抗薬であり、心不整脈、例えば発作性上室性頻拍、安定狭心症、及び片頭痛の処置のための新たな治療プラットフォームを提供する。
【背景技術】
【0002】
心不整脈
心不整脈又は異常心律動は、心臓への異常な興奮及び伝導によって引き起こされる。正常心拍は、上大静脈の近位にある右心房内に埋め込まれている細胞の集合体である洞房(SA)結節によって調節される。健康な生理学的条件下で、SA結節は、規則的な間隔で活動電位を自発的に惹起し、これらの電気化学的シグナルを右心房から左心房へ伝播する。各々の協調的脈拍は、電位開口型カルシウムチャネルを介してSA結節の心筋細胞線維へのカルシウムイオン(Ca
2+)の流入を誘発し、これが最終的に、心筋組織が収縮するとともに心房から心室へ血液を排出するのを可能にする。このシグナルは、引き続いて、房室(AV)結節に伝播され、該結節は活動電位を右心室及び左心室へ伝播する。このシグナルは細胞外カルシウムの流入をトリガーし、これが次に、心室心筋細胞の収縮並びに心臓からの及び循環への血液の駆出を促進する。
【0003】
これらの事象の正確な協調は、規則的な心拍を維持するのに不可欠であり、この電気化学的伝導系の異常性活性は心不整脈を起こす。急な発症及び停止を伴う再発性不整脈は、発作性と呼ばれる。発作性上室性頻拍(PSVT)の症状には、突然の発症及び停止を伴う規則的及び発作性の動悸のエピソードが含まれる(Blomstrom-Lundqvistら、J. Am. Coll. Cardiol.、2003、42:1493〜531)。PSVTの根底にあるシグナリング機序には、協調された心房から心室への血流に干渉する異常な心筋細胞収縮を引き起こす副結節に沿った活動電位の惹起及び伝播が含まれる。PSVTの最も共通の形態は、AV結節の近位にある組織の伝導性の進展を特徴とする障害であるAV結節性リエントリー性頻拍(AVNRT)である。この組織は、活動電位が直線的な様式というよりむしろ心臓の全体にわたって円形状に伝播されるのを可能にするリエントリー回路として知られている閉ループを形成する。結果として、患者は、急速な動悸及び重度に上昇した心拍数を経験する。頻拍のエピソードは、しばしば、眩暈又は失神を誘発し得る血圧の降下を伴う。PSVTは合衆国において170万人超の処置可能な患者に影響すると概算されており、年間で89,000を超える新たな症例が報告されている。際だったことに、これらの患者の多くは、心血管疾患の他の兆候を呈していない。PSVTのエピソードは、物理的及び心理学的ストレス、感染、貧血、月経、並びに妊娠を含めて、様々な因子によって誘発され得る(Leeら、Curr. Probl. Cardiol.、2008、33:467〜546)。
【0004】
処置の現在モード
現在では、PSVT患者に利用可能な治療モダリティがいくつかある。しかしながら、これらのプラットフォームは一般に、いくつかの欠点に悩まされ、それらの中で主要なものは、侵襲性又は非効率である。患者は、エピソード中に緊急的な介入のために救急室に頻繁に搬入されることがあるが、この戦略は一時的な救済を提供するだけである。こうした患者は、彼らの寿命の全体にわたって頻拍のエピソードを経験し続けることがある。PSVTの慢性エピソードを患う患者は、不規則心筋細胞収縮の根底にある機序を恒久的に妨害するために切断された異例な活動電位を伝播する結節線維を有し得る。この手順は典型的に、電気の低電圧パルスが異常性シグナル伝達組織に送達される心臓にアクセスするために、カテーテルチューブが患者の咽頭に挿入されることを必要とする。このプロセスは高度に侵襲的であり、患者はしばしば、この処置形態を受けること恐れる。
【0005】
代替として、慢性PSVTを患う患者は、重症度を減弱する又は心不整脈エピソードの頻度を低減するのに役立つ経口薬物療法を受けることがある。カルシウムチャネル遮断薬は、頻拍の症状を寛解させるのに機能的によく適している化合物のクラスを代表し、その理由は、これらの化合物が最終的に筋収縮をもたらす心筋細胞への細胞外カルシウムの流入を低減できるからである。カルシウムチャネル拮抗薬の普及例としては、ベラパミル及びジルチアゼムが挙げられ、これらの両方は、カルシウム流入の強力な阻害剤であり、PSVTを処置するために広く使用される。しかしながら、これらの治療剤の広く行き渡った使用にもかかわらず、これらの薬物療法を受ける患者は、頻拍のエピソードを経験し続けることがある。
【0006】
PSVTのエピソード中の症状を軽減するためにエピソード中に自己投与することができる市販の治療用生成物は現在ない。カルシウムチャネル遮断薬は、こうしたエピソードを停止させるための検証された戦略を提供する一方で、オフターゲット媒介性毒性(off target-mediated toxicity)を強化することなく症状を急速に軽減するのに必要な正確な薬物動態プロファイルに起因して、こうした生成物の開発は挑戦である。望ましい治療薬は、治療的に有効な量での患者の血流への急速な注入に対する耐久力を有し、したがって、PSVTのエピソードを迅速に停止しなければならない。該薬物は引き続いて、正常の安静時心拍数が確立されるために急速な様式で代謝及び不活性化されなければならない。現在のカルシウムチャネル遮断薬製剤は、経口投与のために設計されている。消化管中へのこれらの化合物の通過及び生じる後続の代謝は、血流へのこれらの薬物の急速な移行を妨げ、理想的な薬物動態プロファイルをアクセス不可能にする。代わりに、これらの薬物は、腸上皮を介する吸収を介して、よりゆっくりとした時間スケールで放出され、これが欠陥のある心筋組織へのそれらのアクセスを遅延させる。
【0007】
本明細書において開示されている発明は、PSVTなどの心不整脈を処置するための革新的戦略を提供する。本発明には、投与の数分以内にPSVT患者の血漿中で最大濃度に達するように血流への活性化合物の急速な送達をできるようにするカルシウムチャネル遮断薬の新規な製剤が含まれる。これは、PSVTエピソードの急速な停止を促進する。該製剤は、活性カルシウムチャネル遮断薬が引き続いて、最大血漿濃度に達した後に急速に代謝及び不活性化されることにおいて付加的な利益を提供する。この薬物動態プロファイルは、エピソード中に直ちにPSVTを処置することができる薬物にとって理想的である。本発明の製剤は、したがって、正確及び急速な様式で欠陥のある心臓シグナル伝達を標的にするための新たな治療パラダイムを提示する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、安定狭心症、片頭痛、及び心不整脈、例えばPSVTを処置する際における使用のためのカルシウムチャネル拮抗薬の塩の医薬有効量を含有する水溶液の使用に関する。本発明の塩は、PSVTを処置するために利用されたことが以前にない投与経路を代表する経鼻投与のために製剤化される。経鼻投与に伴う課題の1つは、鼻腔によって課せられる体積制限である。経鼻スプレーの投与は、典型的に、およそ150μLから200μLに制限され、この点を超えると、溶液は咽頭に入り始める。これは次に、鼻腔の上皮裏層に送達することができる薬学的に活性な薬剤の量に制限を課する。本発明の塩は、水溶液中で驚くべきほど高い可溶性を呈し、このことが、活性薬剤の治療的に有効な量を鼻粘膜上皮に送達することができる濃縮液体溶液の開発を可能にする。活性薬剤の経鼻投与は、鼻粘膜を横断するとともに血流に急速に入るという治療的化合物の能力が薬物を筋組織において欠陥のあるシグナル伝達を迅速に標的にできるようにするので、理想的な薬物動態プロファイルを達成するのに有益である。本明細書に記載されている新規な製剤は、エピソード中に安定狭心症、片頭痛、及び心不整脈、例えばPSVTの症状を軽減するための新たな治療的レジメンを提示する。
【0011】
【化2】
によって表されるベラパミル(2-(3,4-ジメトキシフェニル)-5-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エチル-メチルアミノ]-2-プロパン-2-イルペンタンニトリル)、
式
【0012】
【化3】
によって表されるガロパミル(5-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エチル-メチルアミノ]-2-プロパン-2-イル-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ペンタンニトリル)、及び
式
【0013】
【化4】
によって表されるデバパミル(2-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-イソプロピル-5-((m-メトキシフェネチル)メチルアミノ)バレロニトリル)
からなる群から選択される化合物の薬学的に許容される塩又は遊離塩基、又はそのラセミ体又はエナンチオマーを含有する、経鼻投与のために製剤化された水性組成物が挙げられ、ここで化合物は、150mg/mLから600mg/mLの間の濃度で水性組成物中に溶解されている。
【0014】
ある特定の実施形態において、水性組成物中に溶解される化合物は化合物Iである。好ましい実施形態において、水性組成物中に溶解される化合物は、化合物IのS-エナンチオマーである。
【0016】
【化5】
からなる群から選択される化合物の薬学的に許容される塩又は遊離塩基、又はそのラセミ体又はエナンチオマーを含有する、経鼻投与のために製剤化された水性組成物が挙げられ、ここで化合物は、150mg/mLから600mg/mLの間の濃度で水性組成物中に溶解されている。
【0018】
【化6】
からなる群から選択される化合物の薬学的に許容される塩又は遊離塩基、又はそのラセミ体又はエナンチオマーを含有する、経鼻投与のために製剤化される水性組成物も挙げられ、ここで化合物は、150mg/mLから600mg/mLの間の濃度で水性組成物中に溶解されている。
【0019】
特別な実施形態において、水溶液中に溶解される化合物の濃度はおよそ350mg/mLである。代替実施形態において、水溶液中に溶解される化合物の濃度はおよそ450mg/mLである。ある特定の場合において、本発明の水性組成物には、40%から85%(w/v)の水が含まれる。本発明の追加の実施形態において、水性組成物は4.5±1.5のpHを有する。
【0020】
本発明の実施形態としては、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミル、及び化合物に対して0.5モル当量から1.5モル当量の間の酢酸を含有する、上記実施形態のいずれかの水性組成物が挙げられる。本発明の代替実施形態としては、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミル、及び化合物に対して0.5モル当量から1.5モル当量の間のメタンスルホン酸を含有する、上記実施形態のいずれかの水性組成物が挙げられる。
【0021】
ある特定の場合において、本発明には、キレート剤を含有する、上記実施形態のいずれかの組成物が含まれる。ある特定の実施形態において、キレート剤はアミノポリカルボン酸である。
【0022】
本発明の追加の実施形態としては、水性組成物がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する、上記実施形態のいずれかの組成物が挙げられる。
【0023】
本発明の他の実施形態において、上記実施形態のいずれかの組成物には、硫酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択されるpH調整剤が含まれる。好ましい実施形態において、pH調整剤は硫酸である。
【0024】
本発明の追加の実施形態としては、10mPa
*sから70mPa
*sの間の粘度を呈する、上記実施形態のいずれかの組成物が挙げられる。
【0025】
本発明の追加の態様としては、薬学的に許容される賦形剤が含まれる、上記実施形態のいずれか1種の組成物が挙げられる。本発明の特別な実施形態において、賦形剤は、ポリソルベート及びプロピレングリコールからなる群から選択される。
【0026】
本発明の実施形態としては、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルの塩を含有する水溶液が室温で均質のままである、上記実施形態のいずれかの組成物も挙げられる。ある特定の場合において、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルの塩を含有する水溶液は、10℃で4日間均質のままである。他の場合において、化合物Iの塩を含有する水溶液は、2〜5℃で7日間均質のままである。
【0027】
本発明には、4回以下の単回ポンプスプレー投与量を含有する単位剤形において上記実施形態のいずれか1つの組成物を含有する経鼻送達システムも含まれる。代替実施形態において、経鼻送達システムは、2回以下の単回ポンプスプレー投与量を含有する単位剤形において上記実施形態のいずれかの組成物を含有する。
【0028】
本発明の他の実施形態において、経鼻送達システムの単位剤形は、患者の各鼻孔への組成物200マイクロリットル以下の投与用に構成される。本発明の代替形態において、経鼻送達システムの単位剤形は、患者の各鼻孔への組成物150マイクロリットル以下の投与用に構成される。
【0029】
本発明の実施形態としては、追加として、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルのアセテート塩を含有する組成物が挙げられる。代替実施形態において、本発明には、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルのメタンスルホネート塩を含有する組成物が含まれる。
【0030】
本発明の代替実施形態としては、経鼻スプレー溶液として製剤化された本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルのアセテート塩又はメタンスルホネート塩を含有する水溶液の、鼻粘膜上皮を介する透過性を増強するための方法が挙げられ、ここで、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルの塩の濃度は、150mg/mLから600mg/mLの間であり、溶液のpHは4.5±1.5であり、該方法には、経鼻スプレー溶液中約5mMのEDTAが含まれる。
【0031】
本発明の追加の実施形態としては、心不整脈、安定狭心症及び片頭痛からなる群から選択される疾患を処置する方法が挙げられ、該方法には、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルの薬学的に許容される塩を含有する水性組成物を、それを必要とする患者に経鼻投与することが含まれ、ここで化合物は、150mg/mLから600mg/mLの間の濃度で水性組成物中に溶解されている。ある特定の実施形態において、疾患は心不整脈である。他の実施形態において、疾患は安定狭心症である。代替実施形態において、疾患は片頭痛である。特別な実施形態において、心不整脈はPSVT、心房細動又は心室頻拍である。
【0032】
本発明の実施形態としては、化合物が、患者への投与の3分から5分以内に患者の血漿中で治療的に有効な濃度に達する、上記実施形態のいずれかの方法が挙げられる。
【0033】
本発明の実施形態としては、水性組成物150マイクロリットルから200マイクロリットルの間を患者に投与することがさらに含まれる、上記実施形態のいずれかの方法も挙げられる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態としては、患者がヒトである、上記実施形態のいずれかの方法が挙げられる。
【0035】
本発明の追加の実施形態としては、心不整脈、安定狭心症及び片頭痛からなる群から選択される疾患の処置のための医薬の製造における、上記実施形態のいずれか1種の組成物の使用が挙げられる。ある特定の実施形態において、疾患は心不整脈である。他の実施形態において、疾患は安定狭心症である。代替実施形態において、疾患は片頭痛である。特別な実施形態において、心不整脈はPSVT、心房細動又は心室頻拍である。
【0036】
本発明には、患者への経鼻投与のために製剤化された溶液を作製する方法も含まれ、ここで方法には、
a.第1の溶解酸を含有する溶液を、上記実施形態のいずれかの化合物の遊離塩基に添加し、混合物を形成するステップ;
b.混合物に、エチレンジアミン四酢酸を含有する溶液を添加するステップ;
c.結果として得られた混合物を、化合物が混合物内に十分に分散するまで加熱及び機械的に撹拌するステップ;
d.第2の溶解酸を含有する溶液を混合物に添加することによって、混合物のpHを調整するステップ;及び
e.溶液中の化合物の最終濃度が1ミリリットル当たり少なくとも300mgであるように混合物を希釈するステップ
が含まれる。
【0037】
本発明のある特定の実施形態において、第1の溶解酸は、酢酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択される。
【0038】
特別な実施形態において、第2の溶解酸は、酢酸、硫酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択される。
【0039】
追加の実施形態において、溶液の最終pHは約4.0から約5.0の間である。好ましい実施形態において、溶液の最終pHは約4.5である。
【0040】
本発明の実施形態としては、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルの塩を含有する溶液が10℃で4日間均質のままである、上に記載されている方法も挙げられる。代替実施形態において、本明細書に記載されている化合物、例えば化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルの塩を含有する溶液は、2〜5℃で7日間均質のままである。
【0041】
定義
「頻拍」という用語は、本明細書で使用される場合、正常の状態に対して上昇する安静時心拍数を指す。
【0042】
「心不整脈」は、本明細書で使用される場合、不規則、速過ぎ、遅過ぎである異常心律動、又は心臓を介する異常電気経路を介して行われる異常心律動を特徴とする状態を指す。心不整脈には、心房を非常に急速に収縮させ、それによって心室中への血液の効果的なポンピングを損なう、異常に速い放電パターンを特徴とする心房細動が含まれる。心不整脈には、心室より上の心臓組織に起因する規則的及び速い心拍数を特徴とするPSVTも含まれる。心不整脈には、心臓の心室に由来する急速な心拍を特徴とする心室頻拍も含まれる。
【0043】
「狭心症」という用語は、本明細書で使用される場合、虚血性心疾患のために経験する胸部不快感を指す。「安定狭心症」は、主に動脈硬化症によって引き起こされる狭心症である。
【0044】
「片頭痛」という用語は、本明細書で使用される場合、典型的に頭部の片側に影響する再発性頭痛を特徴とする疾患であり、しばしば、吐き気、嘔吐、又は光に対する感受性を伴う。
【0045】
「賦形剤」という用語は、本明細書に記載されている活性化合物(例えば、式Iを有するもの)以外の任意の成分を記載するために本明細書において使用される。賦形剤としては、例えば:抗付着剤、抗酸化剤、バインダー、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、染料(色)、軟化薬、乳化剤、充填剤(希釈剤)、皮膜形成剤若しくはコーティング、香味、芳香、流動促進剤(流れ増強剤)、滑沢剤、保存料、印刷インク、収着剤、懸濁剤若しくは分散剤、甘味料、又は水和水が挙げられ得る。例証的な賦形剤としては、以下に限定されないが:ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性の)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、セラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(コーン)、ステアリン酸、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC及びキシリトールが挙げられる。追加の賦形剤としては、限定せずに、ポリソルベート、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、クエン酸トリエチル、塩化ベンザルコニウム及びN-ドデシル-β-D-マルトシドが挙げられ得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「キレート剤」は、錯体を形成するために金属カチオンと少なくとも2つの化学結合を形成できる分子である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「アミノポリカルボン酸」は、少なくとも1つのアミン及び少なくとも2つのカルボン酸官能基が含まれる分子である。アミノポリカルボン酸のカルボン酸は脱プロトン化され、カルボキシレート基としてアニオン形態で存在し得る。アミノポリカルボン酸の例としては、限定せずに、イミノジ酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ペンテト酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、(1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸)(BAPTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、及びN-(N-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)-3-アミノ-3-カルボキシプロピル)アゼチジン-2-カルボン酸(ニコチアナミン)がとりわけ挙げられる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「経鼻投与」という用語は、化合物又は製剤を鼻粘膜上皮と接触させることによる化合物又は化合物の薬学的に許容される製剤の吸収を意味する。これは、化合物又は製剤を鼻腔中にスプレーすることによって達成することができる。望ましくは、化合物は化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルである。
【0049】
本明細書で使用される場合、塩基性の薬学的に活性な化合物の「薬学的に許容される塩」又は「薬学的に許容される酸付加塩」は、有機酸又は無機酸を用いる化合物の処理から誘導される。例証的な薬学的に許容される酸付加塩としては、酢酸又はメタンスルホン酸を有する化合物の処理から誘導されるものが挙げられる。
【0050】
「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、活性化合物を懸濁又は溶解することできるとともに患者において非毒性及び非炎症性であるという特性を有することができるビヒクルを指す。さらに、薬学的に許容される担体としては、薬物製剤の分野において知られている又は使用され、活性薬剤の生物学的活性の治療的有効性に著しく干渉することがなく、患者に対して非毒性である薬学的に許容される添加剤、例えば保存料、抗酸化剤、芳香、乳化剤、染料又は賦形剤が挙げられ得る。
【0051】
「薬学的に許容される製剤」という用語は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される担体及び活性化合物、例えば式Iの化合物を含めた組成物を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、患者に投与された場合に心不整脈(PSVTなど)、安定狭心症又は片頭痛の1つ以上の症状を低減、除去又は予防する活性化合物の量を指す。望ましくは、治療有効量の医薬製剤は、約150mg/mLから約600mg/mLの濃度範囲で本発明の化合物(例えば、式Iを有する化合物)を含有する水溶液である。
【0053】
これらの定義並びにThe Merck Manual 第16版 1992(25章. 461〜498ページ;25章、498〜507ページ;及び24章、413〜429ページ)及びGoodman及びGilmanの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第11版2006(34章、899〜908ページ;31章、823〜824ページ及び830〜832ページ;及び32章、845〜846ページ)に明記されている他のものは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
本発明の他の特色及び利点は、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0055】
詳細な説明
本発明は、前に特徴付けされたカルシウムチャネル遮断薬が酢酸又はメタンスルホン酸から誘導される酸付加塩として製剤化されることで、水溶液中で非常に高い可溶性を呈することができるという驚くべき発見から誘導された。本発明の化合物としては、下記で式Iに示されるメチル3-(2-((4-シアノ-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-5-メチルヘキシル)(メチル)アミノ)エチル)ベンゾエートが挙げられる。
【0057】
本発明の追加の化合物としては、他のカルシウムチャネル遮断薬、例えばベラパミル、ガロパミル、デバパミル、及び本明細書に記載されている特別な化合物が挙げられる。
【0058】
カルシウムチャネル遮断薬の以前から知られている製剤、例えばベラパミル及びジルチアゼムは、心不整脈、安定狭心症又は片頭痛からの即時救済を提供しない。これは、一部において、製剤化された場合のこれらの薬物の薬物動態プロファイルによる。経口治療剤として、これらの化合物は、消化管を介して身体に入り、ここで、それらは酸媒介又は酵素触媒の分解及び不活性化を被る。これらの化合物は、腸上皮による吸収を介して血流にゆっくり入る。現在まで、この投与経路は、PSVTなどの心不整脈の根底にある逸脱した心臓シグナル伝達の部位で電位開口型カルシウムチャネルと急速に拮抗するというこれらの薬物の能力を妨げてきた。このように、これらの薬物は共通して、慢性予防処置レジメンとして受け取られ、これらの疾患のエピソードの症状の即時軽減のためには使用されない。さらに、カルシウムシグナル伝達はその上正常な心筋収縮をモジュレートするので、PSVTなどの心不整脈のエピソードの処置のための理想的な薬物は、迅速に吸収され、引き続いて、代謝及び急速に非活性化されることで、オフターゲットカルシウムチャネル阻害を緩和する。実際に、ベラパミル及びジルチアゼムの経口製剤の共通の副作用としては、心筋細胞収縮力の減弱及びAV結節伝導の抑制が挙げられる。
【0059】
水溶性水性塩
化合物I及び他のカルシウムチャネル遮断薬、例えばベラパミル、ガロパミル及びデバパミル、並びにこれらの化合物のエナンチオマー及びラセミ体は、水溶液中に溶解し、経鼻投与のために製剤化することができる。経鼻投与は、薬学的に活性な薬剤が鼻粘膜上皮を急速に横断するとともに血流に直ちに入るという点において、経口投与を超える利点を提供する。このやり方において、一旦、治療有効量の活性化合物が血流中にあると、化合物は、異例な心筋線維における異常性心臓シグナル伝達を妨害することができ、一旦それが開始すると、心不整脈、安定狭心症又は片頭痛のエピソードからの救済を患者に提供することができる。適切な心筋細胞活性を回復するのに充分な時間の間血液中で存続した後、化合物は急速な様式で代謝及び非活性化されることで、長時間の心臓曝露及び有害な副作用を予防する。
【0060】
化合物I、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルの作用の検証された機序にもかかわらず、経鼻投与は、鼻腔によって課せられた体積制限のために高濃度の活性化合物を必要とする。経鼻スプレーの投与は典型的におよそ150μLから200μLに制限され、この点を超えると溶液が咽頭に入り始める。これは次に、鼻腔の上皮裏層に送達することができる薬学的に活性な薬剤の量に制限を課す。
【0061】
イオン又は水素結合供与官能性の欠如と相まって芳香族及び飽和脂肪族部分の分布率に照らせば、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルが水溶液中で易溶性であろうとは予想されなかった。さらに、これらの化合物の1種の溶液が、鼻腔によって課せられた体積制限内で薬物の治療的に有効な量の送達を可能するために高度に濃縮されなければならないことを前提とすると、本発明の前に、これが達成され得るかどうかは不明であった。
【0062】
驚くべきことに、化合物Iの濃縮水溶液は、酸付加塩を生成するために特別な有機酸でこの化合物を処置することによって作製することができた。メタンスルホン酸及び酢酸は、経鼻投与に充分な濃度を有する化合物Iを用いて塩溶液を形成できた。経鼻投与のため、化合物Iの望ましい水溶液は、およそ150mg/mLから600mg/mL(例えば、150±25mg/mL、175±25mg/mL、200±25mg/mL、225±25mg/mL、250±25mg/mL、275±25mg/mL、300±25mg/mL、325±25mg/mL、350±25mg/mL、375±25mg/mL、400±25mg/mL、425±25mg/mL、450±25mg/mL、475±25mg/mL、500±25mg/mL、525±25mg/mL、550±25mg/mL、575±25mg/mL、又は600±25mg/mL)の間の可溶度を呈する。これらの濃度は、40%から85%(w/v)の間の水の百分率に対応する。驚くべきことに、酢酸及びメタンスルホン酸は実際に、水溶液中で高い可溶性を有する化合物Iの塩を個々に生成できることが発見された。化合物Iのアセテート塩及びメシレート塩の高い可溶性により、これらの塩形態に達成可能な化合物Iの高濃度が、鼻腔の体積制限内で化合物の治療有効量の送達を可能にするので、これらの塩を経鼻投与に独自に適している状態にする。化合物I並びにベラパミル、ガロパミル及びデバパミル、並びにそのエナンチオマー及びラセミ体の間の化学構造における相似点を前提とすると、これらの化合物は、本明細書に記載されている条件下で同様に可溶性であると予想される。
【0063】
PSVTなどの心不整脈のエピソードを停止させることにおける治療剤の有効性を測定する共通の方法は、こうしたエピソードを経験する患者から記録された心電図(ECG)の分析による。ECGのパターンは、心臓組織内の電気シグナル伝達の大きさ及びタイミングを記載し、PSVTのエピソードを患う患者は典型的に、心臓における異常性シグナル伝達と一致する逸脱したECGプロファイルを呈する。健康な心臓シグナル伝達の鍵となる特色の1つは、心房活動電位と心室活動電位の惹起の間の時間遅延である。心房と心室におけるシグナル伝達の間の遅延は、血液の効果的なポンピングに必要である。心房におけるシグナル伝達は、心室が収縮する前に心房室の全血液が心室中に排出されるように、最初に進行しなければならない。この遅延は、P波の開始(心房脱分極の発生に対応する)とQRSコンプレックス(心室脱分極の発生に対応する)との間の間隔であるPRセグメントとしてECG上でグラフとして獲得される。PSVTのエピソードを患う患者は、典型的に、心筋細胞組織を不規則に収縮させる異常性心臓シグナル伝達のために遅延の低減を経験する(Bastaら、Cardiol. Clinics、1997、587〜598)。このように、これらの患者は、ECG分析によってモニタリングされる場合、PRセグメントの低減を呈する。
【0064】
心不整脈を患う患者から記録されたECGのPRセグメントにおける少なくとも10%の増加は、PSVTエピソードの停止によく相関することが示されている。例えば、PSVTのエピソードを患う患者に静脈内投与されるベラパミルの治療的用量は、PSVTエピソードを停止させるために85〜90%の効力と相関付けられた少なくとも10%のPR延長を誘発することが示されている(Reiterら、Clin. Pharmacol. Ther.、1982、711〜720)。テカデノソンの静脈内投与は、およそ86%の効力でPSVT停止を誘発できる(処置された患者37人のうちの32人が、PSVTのエピソードからの救済を経験した)ことも示されている。この結果は、8.5%の平均PR延長と相関付けられた。まとめると、これらのデータは、少なくとも約10%のPR延長を誘発できる治療剤が患者におけるPSVTのエピソードを停止させることに有効であると予想されることを示す。化合物Iの溶解アセテート塩を含有する本発明の溶液が、PSVTのエピソードを患う患者に経鼻投与された実験が行われている。患者に投与された溶液は、化合物Iのアセテート塩の様々な濃度を含有していた。研究中、化合物Iのアセテート塩の特別な濃度を含有する溶液は、PSVTのエピソードを経験する患者に投与され、患者は、実験の持続期間の全体にわたって心電図検査によってモニタリングされた。化合物Iを60mg以上含有する化合物Iのアセテート塩の溶液の投与は、PSVTエピソードを経験する患者において10%超のPR中央値延長を誘発できた。これらの実験の結果は、化合物Iを60mg含有する投与量が、PSVTのエピソードを停止させることに治療的に有効である化合物Iの量を含有することを実証している。化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物の他の好ましい用量としては、活性化合物15mgから140mg(例えば、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mgなど)を範囲とする用量が挙げられる。
【0065】
化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物のアセテート塩又はメタンスルホネート塩を含有する水溶液は、特別な粘度範囲を呈する。ある特定の実施形態において、こうした溶液の粘度は、10mPa
*sから70mPa
*s(例えば、10mPa
*s、15mPa
*s、20mPa
*s、25mPa
*s、30mPa
*s、35mPa
*s、40mPa
*s、45mPa
*s、50mPa
*s、55mPa
*s、60mPa
*s、65mPa
*s又は70mPa
*s)を範囲とし得る。例えば、315mg/mLの濃度で化合物Iの塩を含有する溶液は、約16.515mPa
*sから約37.505mPa
*sの間の粘度を呈した。別の例において、360mg/mLの濃度で化合物Iの塩を含有する溶液は、約25.645mPa
*sから約63.105mPa
*sの間の粘度を呈した。
【0066】
浸透増強剤
理想的な薬物動態プロファイルを呈するために、薬学的に活性な化合物又はその薬学的に許容される塩は、活性薬剤の透過性を増強できる材料とともに製剤化することができる。本発明の製剤において、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物は、理想的に、血流に急速に入る(例えば、患者への投与の3分から5分以内)。
【0067】
本発明の好ましい実施形態において、即時製剤の浸透増強剤は、キレート剤である。より好ましくは、キレート剤は、二価カルシウムイオン(Ca
2+)を配位できる。粘膜の上皮細胞は、堅い接合部の形成によって密接な接触で保持されていることが示されている。上皮を介する薬学的に活性な化合物の傍細胞輸送は、化合物がこれらの細胞間接合部を貫通することを必要とする。傍細胞輸送の代替である経細胞輸送は、化合物が頂端膜及び側底膜を横断することによって上皮を貫通するという、多くの分子がそれらの大きい分子体積のためあまりよく適していないプロセスを必要とする。キレート剤は、傍細胞輸送を可能にするが、しかしながら、細胞内カルシウムを結合及び捕捉することによる(Cassidyら、J. Cell Biol.、1967、32:685〜698)。カルシウムは上皮細胞間の堅い接合部の新生に必須であり、細胞内カルシウムの低減は、これらの接合部の統合性を損ない、ある特定の分子が隣接細胞間の細胞間体積を貫通するのを可能にする。
【0068】
カルシウムイオンを配位できる例証的なキレート剤としては、アミノポリカルボン酸類が挙げられる。これらとしては、限定せずに、イミノジ酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ペンテト酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、(1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸)(BAPTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、及びN-(N-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)-3-アミノ-3-カルボキシプロピル)アゼチジン-2-カルボン酸(ニコチアナミン)がとりわけ挙げられる。好ましい実施形態において、キレート剤はEDTAである。
【0069】
上皮組織を介して薬物の浸透能力を増加させるためのEDTAなどのキレート剤の使用にもかかわらず、即時製剤におけるEDTAの使用が、鼻粘膜上皮を介する化合物Iの浸透を増加させることは、それでも驚くべきことであった。鼻腔の表面積のおよそ3〜4%を占める鼻前庭は、堅い接合部を全く欠如しており、したがってカルシウムキレート剤によって影響されない。EDTAは堅い接合部形成をモジュレートすると示されているが、接合部が損なわれている場合でさえ、鼻粘膜上皮における細胞間細孔は特に小さい。このように、鼻粘膜上皮はEDTAによる透過性モジュレーションに感受性でないことが想定されている(Aungstら、Pharma. Res.、1998、5:305〜308)。追加として、鼻粘膜上皮を介する化合物の浸透を増加させるというEDTAの能力は、化合物の分子量が増加すると減弱される(Nakanishiら、Chem. Pharm. Bull.、1984、32:1628〜1632)。
【0070】
pH調整剤
本発明のある特定の実施形態において、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩を含めた水溶液のpHを調整することが望ましい。製剤のpHは、これらの化合物の1種の塩を含めた水溶液を、酸性試薬又は塩基性試薬を含めた溶液で処理することによって調整することができる。好ましい実施形態において、製剤のpHは、酸を含めた溶液を用いる水溶液の滴定によって調整される。製剤のpHは、望ましくは3.5から5.5の間(例えば、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、又は5.5)であり、最も望ましくは4.5である。製剤のpHは、酸を含有する水溶液を製剤に添加することによって調整されることで、pHを理想的な値に下げることができる。化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物の塩を含有する水溶液を滴定するために使用することができる例証的な酸としては、限定せずに、酢酸、硫酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。好ましい実施形態において、製剤のpHを調整するために使用される酸は、硫酸又はメタンスルホン酸である。
【0071】
追加の賦形剤
本発明の製剤には、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物の浸透、可溶性、安定性又は効力を増加できる他の薬剤が含まれ得る。薬学的に許容される賦形剤としては、抗付着剤、抗酸化剤、バインダー、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、染料(色)、軟化薬、乳化剤、充填剤(希釈剤)、皮膜形成剤又はコーティング、香味、芳香、流動促進剤(流れ増強剤)、滑沢剤、保存料、印刷インク、収着剤、懸濁剤若しくは分散剤、甘味料、又は水和水が挙げられ得る。例証的な賦形剤としては、以下に限定されないが:ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性の)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、セラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(コーン)、ステアリン酸、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC及びキシリトールが挙げられる。追加の賦形剤としては、限定せずに、ポリソルベート、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、クエン酸トリエチル、塩化ベンザルコニウム及びN-ドデシル-β-D-マルトシドが挙げられ得る。
【0072】
本発明の製剤には、任意選択により、薬学的に許容される担体が含まれ得る。薬学的に許容される担体の例としては、限定せずに、薬物製剤の分野において知られている又は使用され、活性薬剤の生物学的活性の治療的有効性に著しく干渉することがなく、患者に対して非毒性である、保存料、抗酸化剤、芳香、乳化剤、染料又は賦形剤が挙げられる。
【0073】
経鼻送達システム
本発明は、追加として、心不整脈、安定狭心症又は片頭痛を患う患者の鼻腔への、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物の塩の水溶液の投与のための経鼻送達システムを提供する。本発明の経鼻送達システムには、単位剤形における、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物のアセテート塩又はメタンスルホネート塩の水溶液が含まれる。この溶液は、追加として、限定せずに、浸透増強剤、薬学的に許容される賦形剤、及び/又はpH調整剤を含めて、他の材料を含有することができる。経鼻送達システムには、ポンプスプレー投与量としての単位剤形が含まれる。このやり方において、経鼻送達システムは、心不整脈、安定狭心症又は片頭痛のエピソード中に患者の鼻腔中に、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物のアセテート塩又はメタンスルホネート塩を含有する水溶液を投与するために使用することができる。エピソードの発症時に、患者は、経鼻送達システムのアプリケーターを鼻腔に挿入すること及び該システムのポンプに圧縮圧力を加えることによって、これらの活性化合物の1種を含有するこの製剤を簡単に自己投与することができる。これは、鼻腔中及び鼻粘膜上皮上への、活性化合物の塩の水溶液を含めたスプレーの放出をトリガーする。
【0074】
該経鼻送達システムは、GlaxoSmithKline(Brentford、UK)によって販売されているImitrex(登録商標)(スマトリプタン)及びImpax Pharmaceuticals(Hayward、CA、USA)によって販売されているZomig(登録商標)(ゾルミトリプタン)などの薬物を送達するために使用されるものなど、市販されている経鼻送達システムに類似している。これらのシステムには、バイアル、ピストン、渦巻チャンバー及びアクチュエータが含まれる。アクチュエータへの加圧で、液体は渦巻チャンバーに強制的に通され、スプレーとして放出される。これらの経鼻送達システムには、しばしば、スプレーの一貫した体積の放出を達成するために再現可能な圧力が該システムに加えられるのを確実にするための圧力ポイント機序が含まれる(Rapoportら、Headache、2006、46:S192〜S201)。本発明の経鼻送達システムには、4回以下(例えば、1回、2回、3回又は4回)の単回ポンプスプレー投与量を含有する単位剤形が含まれる。代替実施形態において、単位剤形には、2回以下(例えば、1回又は2回)の単回ポンプスプレー投与量が含まれる。単位剤形は、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物の塩を含めた水溶液200μL以下(例えば、200μL、190μL、180μL、170μL、160μL、150μL、140μL、130μL、120μL、110μL又は100μL)の送達用に構成することができる。代替実施形態において、単位剤形は、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物のアセテート塩又はメタンスルホネート塩を含めた水溶液150μL以下(例えば、150μL、140μL、130μL、120μL、110μL又は100μL)の送達用に構成される。
【0075】
製剤化の方法
本発明は、追加として、化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物の塩を含めた水溶液を作製する方法を提供する。本発明のある特定の実施形態において、これらの化合物の1種の遊離塩基は、第1の溶解酸を含めた溶液で処理される。結果として得られた混合物は、化合物のプロトン化アミニウム形態及び第1の溶解酸の共役塩基を含めた酸付加塩を含有する。活性化合物の塩の形成に適当である第1の溶解酸の例としては、酢酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。EDTAは、この溶液に添加することができる。第1の溶解酸は、化合物に添加されることで、化合物及び0.5モル当量から1.5モル当量の間の酸を含有する塩を形成することができる。例えば、化合物は、酢酸で処理されることで、化合物及び化合物に対して0.5モル当量から1.5モル当量の間の酢酸を含有する塩を形成することができる。代替として、化合物は、メタンスルホン酸で処理されることで、化合物及び化合物に対して0.5当量から1.5当量の間のメタンスルホン酸を含有する塩を形成することができる。特別な実施形態において、塩を含有する混合物は、化合物が混合物内に十分に分散するまで加熱及び機械的に撹拌される。追加の実施形態において、混合物のpHは、次いで、第2の溶解酸を含めた溶液をこの混合物に添加することによって調整される。該製剤のpHを調整するのに有用な第2の溶解酸の例としては、酢酸、硫酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。好ましい実施形態において、第2の溶解酸は硫酸である。特別な実施形態において、溶液は引き続いて、混合物中の化合物の最終濃度が1ミリリットル当たり少なくとも300mg(例えば、300mg/mL、310mg/mL、320mg/mL、330mg/mL、340mg/mL、350mg/mL、360mg/mL、370mg/mL、380mg/mL、390mg/mL、400mg/mL、410mg/mL、420mg/mL、430mg/mL、440mg/mL、450mg/mL、460mg/mL、470mg/mL、480mg/mL、490mg/mL、500mg/mL、510mg/mL、520mg/mL、530mg/mL、540mg/mL、550mg/mL、560mg/mL、570mg/mL、580mg/mL、590mg/mL、600mg/mLなど)であるように希釈される。
【0076】
化合物I、ベラパミル、ガロパミル又はデバパミルなど本明細書に記載されている化合物のアセテート塩及びメタンスルホネート塩は、水溶液中で非常に高い可溶性を呈することができる。これらの塩の1種を含有する水溶液は、高濃度及び低温でさえ、長い時間期間の間均質のままであり得る。例えば、化合物I及び化合物に対して0.5モル当量から1.5モル当量の間の酢酸又はメタンスルホン酸を含有する高濃縮溶液は、室温で観察可能な沈殿がなく均質のままである。ある特定の実施形態において、これらの溶液は10℃で少なくとも4日間均質のままであり、代替実施形態において、これらの溶液は2〜5℃で少なくとも7日間均質のままである。例えば、メタンスルホン酸で4.5のpHに調整された、300mg/mLの化合物I、1モル当量のメタンスルホン酸、10mMの酢酸ナトリウム及び5mMの二ナトリウムEDTAを含有する水溶液は、室温で及び2〜5℃で任意の観察可能な沈殿なく均質のままである。さらに、この溶液は、0℃でさえ少なくとも7日間均質のままである。追加として、メタンスルホン酸で4.5のpHに調整された、400mg/mLの化合物I、化合物Iに対して1モル当量のメタンスルホン酸、10mMの酢酸ナトリウム及び5mMの二ナトリウムEDTAを含有する水溶液も、室温、2〜5℃で均質のままであり、0℃で少なくとも7日間均質のままである。別の例において、3.6Mの硫酸で4.5のpHに調整された、350mg/mLの化合物I及び化合物Iに対して1モル当量の酢酸を含有する溶液は、室温で均質のままであり、その上10℃で少なくとも3日間均質のままである。追加として、3.6Mの硫酸で4.5のpHに調整された、500mg/mLを超える化合物I及び化合物Iに対して1モル当量の酢酸を含有する溶液は、室温で均質のままである。
【0077】
この発明がより十分に理解されるために、以下の実施例を説明する。これらの実施例は、例示だけの目的であり、いかなるやり方であれ本発明の範囲を制限していると解釈されるべきでない。
【0078】
[実施例]
[実施例1]
合成メチル3-(2-((4-シアノ-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-5-メチルヘキシル)(メチル)アミノ)エチル)ベンゾエート
パートI: 5-ブロモ-2-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-イソプロピルペンタンニトリルの合成:
【0080】
方法A、ステップ1:テトラヒドロフラン(THF) 141mL中の(3,4-ジメトキシフェニル)アセトニトリル9.99g(56.4mmol)の溶液に、-30℃で、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS、THF中1.0M) 56.4mL(56.4mmol)をゆっくり添加した。混合物を-30℃で10分間撹拌し、2-ブロモプロパン10.6mL(113.0mmol)を添加した。混合物を2時間(h)の間加熱還流し、次いで、22℃で約16時間の間放置した。NH
4Clの飽和水溶液を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、最初にヘキサンで及び次いで15%酢酸エチル/ヘキサンに徐々に増加させて溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-メチルブタンニトリルが油として得られた。
【0081】
方法A、ステップ2:テトラヒドロフラン(THF) 126mL中の2-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-メチルブタンニトリル11.21g(51.1mmol)の溶液に、-30℃で、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS、THF中1.0M) 46.0mL(46.0mmol)をゆっくり添加した。混合物を-30℃で10分間撹拌し、1,3-ジブロモプロパン9.40mL(256mmol)を滴下により添加した。混合物を22℃に加温し、約16時間の間撹拌した。NH
4Clの飽和水溶液を次いで添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、蒸発させた。残渣を、最初にヘキサンで及び次いで15%酢酸エチル/ヘキサンに徐々に増加させて溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、5-ブロモ-2-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-イソプロピルペンタンニトリルが油として得られた。
【0082】
パートII:メチル3-(2-(メチルアミノ)エチル)ベンゾエートの合成:
【0083】
【化9】
メタノール36mL中のメチル3-ブロモメチルベンゾエート5.71g(24.9mmol)の溶液に、シアン化カリウム2.11g(32.4mmol)を添加した。混合物を約16時間の間還流させ、22℃に冷却し、濾過した。濾液を蒸発させ、残渣を、最初にヘキサンで及び次いで15%酢酸エチル/ヘキサンに徐々に増加させて溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、メチル3-(シアノメチル)ベンゾエートが得られた。
【0084】
-10℃で撹拌された、THF 31mL中のメチル3-(シアノメチル)ベンゾエート1.31g(7.48mmol)の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム710mg(18.7mmol)、続いてトリフルオロ酢酸1.44mL(18.7mmol)をゆっくり添加した。混合物を22℃に加温し、約16時間の間撹拌した。水約100mLを混合物に慎重に添加した(ガス放出)。混合物を酢酸エチル(5×50mL)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、蒸発させることで、メチル3-(2-アミノエチル)ベンゾエートが得られ、これを精製することなく次のステップで使用した。
【0085】
方法B: 71mLのテトラヒドロフラン(THF)中のメチル3-(2-アミノエチル)ベンゾエート5.12g(28.6mmol)に、BOC
2Oを7.48g(34.3mmol)添加した。混合物を約16時間の間22℃で撹拌し、水100mLを添加した。混合物を酢酸エチル(2×100mL)で抽出し、有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、蒸発させた。残渣を、最初にヘキサンで及び次いで20%酢酸エチル/ヘキサンに徐々に増加させて溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、メチル3-(2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エチル)ベンゾエートが得られ、これを方法C(下に記載されている)によってIIIにさらに変換した。
【0086】
方法C、ステップ1:乾燥THF中のメチル3-(2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エチル)ベンゾエートの溶液に、窒素雰囲気下で、NaHMDS(THF中1.0M)を滴下により0℃で添加した。10分間撹拌した後、硫酸ジメチルを添加し、反応物を22℃に加温し、約16時間の間撹拌した。飽和NaHCO
3を25mL添加することによって、反応物をクエンチし、混合物をDCM(2×25mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(Na
2SO
4)、蒸発させ、残渣を、最初にヘキサンで及び次いで10%酢酸エチル/ヘキサンに徐々に増加させて溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製することで、メチル3-(2-(tert-ブトキシカルボニル(メチル)アミノ)エチル)ベンゾエートが得られた。
【0087】
方法C、ステップ2: DCM中のメチル3-(2-(tert-ブトキシカルボニル(メチル)アミノ)エチル)ベンゾエートの溶液に、0℃で、トリフルオロ酢酸(TFA)を添加した。反応物を22℃に加温し、3時間撹拌し、溶媒を次いで蒸発させた。残渣を酢酸エチル100mLとNaClで飽和しておいた1NのNaOH 100mLとの間で分配した。水層を酢酸エチル(6×50mL)で逆抽出し、合わせた有機物を乾燥させ(Na
2SO
4)、蒸発させることで、2cが無色の油として得られた。
【0088】
パートIII:化合物IIと化合物IIIとの反応で化合物Iを生成した。質量分光分析法による生成物の分析は、化合物IのM+H分子イオンに対応する453の質量対電荷比(m/z)を有するピークを明らかにした。
【0089】
[実施例2]
化合物Iのアセテート塩の濃縮溶液
化合物Iのアセテート塩の濃縮水溶液を以下のプロトコールに従って形成する:
【0090】
濃硫酸を水中に希釈すること、及び密閉瓶中にて、瓶キャップを外すことによって圧力を周期的に抜きながら手動で混合することによって、7.5M硫酸の水溶液を最初に作製する。別に、175±1.0gの化合物Iを、予備加熱した容器からガラス瓶中に分注し、水浴中にて50±2℃の温度で維持する。次に、96.7±0.2mLの4.0M酢酸溶液を化合物Iに添加し、その後、EDTAの31.8mM溶液83.3mL±0.2mLが続く。化合物Iの(-)エナンチオマー(S-エナンチオマー)を含有する混合物を50±2℃で維持し、両添加中に磁気撹拌子を使用して撹拌する。化合物が混合物の全体にわたって十分に分散されていると思われるまで、加熱及び撹拌を続ける。
【0091】
化合物Iが完全に分散したら、7.5M硫酸の溶液を、5.0±0.1のpHに達するまで滴下により化合物I混合物に添加する。この時点で、加熱を中断し、混合物は撹拌し続ける。混合物を次いで周囲温度の2℃以内に冷却させておく。0.9M硫酸の溶液を次いで、4.5±0.1のpHに達するまで滴下により混合物に添加する。化合物Iを含有する混合物を次いで、混合物への水の添加によって最終の標的体積の90%に希釈し、この希釈後にpHをモニタリングする。必要ならば、pHを0.9M硫酸の滴下添加によって4.5±0.1に下げ戻す。混合物を次いで、水の添加によって最終の標的体積に希釈する。
【0092】
このプロトコールは容易に、化合物Iのメタンスルホネート塩の濃縮溶液を提供するために適応することができる。
【0093】
[実施例3]
化合物Iの経鼻投与
PSVTのエピソードを経験する患者は、化合物Iの治療有効量を経鼻的に自己投与し、このエピソードの症状を軽減するために、化合物Iのアセテート塩又はメタンスルホネート塩を含有する経鼻送達システムを使用することができる。PSVTのエピソードの発症時に、患者は、該システムのアプリケーターを鼻腔に挿入させるように、経鼻送達システムを鼻まで持ち上げることができる。経鼻送達システムは、典型的に、第2と第3の手指の間で保持され、患者の親指はアクチュエータ上に置かれる。このプロセスは、GlaxoSmithKline(Brentford、UK)によって販売されているImitrex(登録商標)(スマトリプタン)及びImpax Pharmaceuticals(Hayward、CA、USA)によって販売されているZomig(登録商標)(ゾルミトリプタン)などの薬物を送達するために使用されるものなど、市販されている経鼻送達システムの使用と同様である。患者は次いでアクチュエータに加圧することができ、これが、化合物Iの溶解させたアセテート塩又はメタンスルホネート塩を含有する溶液を渦巻チャンバーに強制的に通し、溶液をスプレーとしてアプリケーターの先端から放出させる。溶液は、鼻粘膜上皮へ60mg以上の化合物Iを送達するために、1回、2回、3回又は4回の単回ポンプスプレー投与量として投与することができる。
【0094】
記載されている通りに投与されるスプレーは、化合物Iのアセテート塩又はメタンスルホネート塩を含有する溶液を鼻粘膜上皮に送達して、化合物Iが上皮を貫通し、血流に急速に入ることを可能にする。このやり方で投与される化合物Iのアセテート塩又はメタンスルホネート塩は、患者への投与後3分から5分以内に血漿中で最大濃度に達し、血漿中の化合物の最小濃度は、投与の50分から60分以内に観察される。この方式で、患者は、投与直後PSVTのエピソードからの救済を経験し、化合物Iの理想的な薬物動態プロファイルのため、薬物は、有害副作用を誘発するほど十分長くは血流中に存続しない。
【0095】
他の実施形態
本発明は、その特定の実施形態と関連付けて記載されてきたが、それはさらなる修正が可能であること、並びにこの出願は、一般に本発明の原理に従い、本発明が関係する技術分野内の公知又は通例の実施内であるとともに先に記載されている必須の特色に適用され得るような本開示からの逸脱を含めた、本発明の任意の変形、使用又は適応を網羅すると意図されることが理解される。
【0096】
本明細書において引用されている全ての文献、特許、特許出願公報及び特許出願は、これらの文献、特許、特許出願公報及び特許出願の各々が参照により本明細書に別々に組み込まれているかのように、同じ程度に本明細書によって参照により組み込まれる。
(付記)
(付記1)
【化10】
、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルからなる群から選択される化合物の薬学的に許容される塩又は遊離塩基、又はそのラセミ体又はエナンチオマーを含む、経鼻投与のために製剤化された水性組成物であって、化合物が150mg/mLから600mg/mLの間の濃度で水性組成物中に溶解されている水性組成物。
(付記2)
化合物が化合物Iである、付記1に記載の水性組成物。
(付記3)
化合物が化合物IのS-エナンチオマーである、付記2に記載の水性組成物。
(付記4)
濃度がおよそ350mg/mLである、付記1から3のいずれか1つに記載の水性組成物。
(付記5)
濃度がおよそ450mg/mLである、付記1から3のいずれか1つに記載の水性組成物。
(付記6)
水性組成物が40%から85%(w/v)の水を含む、付記1から3のいずれか1つに記載の水性組成物。
(付記7)
水性組成物が4.5±1.5のpHを有する、付記1から3のいずれか1つに記載の水性組成物。
(付記8)
水性組成物が、化合物I、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルからなる群から選択される化合物並びに化合物に対して0.5モル当量から1.5モル当量の間の酢酸を含む、付記1から7のいずれか1つに記載の組成物。
(付記9)
水性組成物が、化合物I、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルからなる群から選択される化合物並びに化合物に対して0.5モル当量から1.5モル当量の間のメタンスルホン酸を含む、付記1から7のいずれか1つに記載の組成物。
(付記10)
組成物がキレート剤をさらに含む、付記1から9のいずれか1つに記載の水性組成物。
(付記11)
キレート剤がアミノポリカルボン酸である、付記10に記載の組成物。
(付記12)
水性組成物がEDTAをさらに含む、付記1から11のいずれか1つに記載の組成物。
(付記13)
組成物が、硫酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択されるpH調整剤をさらに含む、付記1から12のいずれか1つに記載の組成物。
(付記14)
pH調整剤が硫酸である、付記13に記載の組成物。
(付記15)
組成物が10mPa*sから70mPa*sの間の粘度を呈する、付記1から14のいずれか1つに記載の組成物。
(付記16)
組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、付記1から15のいずれか1つに記載の組成物。
(付記17)
賦形剤がポリソルベート又はプロピレングリコールである、付記16に記載の組成物。
(付記18)
化合物I、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルからなる群から選択される化合物の塩を含む水溶液が、室温で均質のままである、付記1から17のいずれか1つに記載の組成物。
(付記19)
化合物I、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルからなる群から選択される化合物の塩を含む水溶液が、10℃で4日間均質のままである、付記1から17のいずれか1つに記載の組成物。
(付記20)
化合物I、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルからなる群から選択される化合物の塩を含む水溶液が、2〜5℃で7日間均質のままである、付記1から17のいずれか1つに記載の組成物。
(付記21)
4回以下の単回ポンプスプレー投与量を含む単位剤形で付記1から20のいずれか1つの組成物を含む経鼻送達システム。
(付記22)
2回以下の単回ポンプスプレー投与量を含む単位剤形で付記1から20のいずれか1つの組成物を含む経鼻送達システム。
(付記23)
単位剤形が患者の各鼻孔への200マイクロリットル以下の組成物の投与のために構成されている、付記21又は22に記載の経鼻送達システム。
(付記24)
単位剤形が患者の各鼻孔への150マイクロリットル以下の組成物の投与のために構成されている、付記21又は22に記載の経鼻送達システム。
(付記25)
化合物I、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルからなる群から選択される化合物のアセテート塩を含む組成物。
(付記26)
化合物I、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルからなる群から選択される化合物のメタンスルホネート塩を含む組成物。
(付記27)
心不整脈、安定狭心症及び片頭痛からなる群から選択される疾患を処置する方法であって、化合物I、ベラパミル、ガロパミル及びデバパミルからなる群から選択される化合物の薬学的に許容される塩を含む水性組成物を、それを必要とする患者に経鼻投与することを含み、化合物が150mg/mLから600mg/mLの間の濃度で水性組成物中に溶解されている方法。
(付記28)
前記疾患が心不整脈である、付記27に記載の方法。
(付記29)
前記疾患が安定狭心症である、付記27に記載の方法。
(付記30)
前記疾患が片頭痛である、付記27に記載の方法。
(付記31)
前記心不整脈がPSVT、心房細動又は心室頻拍である、付記28に記載の方法。
(付記32)
化合物が、患者への投与の3分から5分以内に患者の血漿中で治療的に有効な濃度に達する、付記27から31のいずれか1つに記載の方法。
(付記33)
150マイクロリットルから200マイクロリットルの間の水性組成物を患者へ投与することを含む、付記27から32のいずれか1つに記載の方法。
(付記34)
患者がヒトである、付記27から33のいずれか1つに記載の方法。
(付記35)
心不整脈、安定狭心症及び片頭痛からなる群から選択される疾患の処置のための医薬の製造における、付記1から20のいずれか1つに記載の組成物の使用。
(付記36)
前記疾患が心不整脈である、付記35に記載の使用。
(付記37)
前記疾患が安定狭心症である、付記35に記載の使用。
(付記38)
前記疾患が片頭痛である、付記35に記載の使用。
(付記39)
前記心不整脈がPSVT、心房細動又は心室頻拍である、付記36に記載の使用。
(付記40)
a.第1の溶解酸を含む溶液を、付記1に記載の化合物の遊離塩基に添加し、混合物を形成するステップ;
b.混合物に、エチレンジアミン四酢酸を含む溶液を添加するステップ;
c.得られた混合物を、化合物が混合物内で十分に分散されるまで加熱及び機械的に撹拌するステップ;
d.第2の溶解酸を含む溶液を混合物に添加することによって混合物のpHを調整するステップ;及び
e.溶液中の化合物の最終濃度が1ミリリットル当たり少なくとも300mgであるように混合物を希釈するステップ
を含む、患者への経鼻投与のために製剤化された溶液を作製する方法。
(付記41)
第1の溶解酸が、酢酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択される、付記40に記載の方法。
(付記42)
第2の溶解酸が、酢酸、硫酸及びメタンスルホン酸からなる群から選択される、付記40に記載の方法。
(付記43)
溶液の最終pHが約4.0から約5.0の間である、付記40に記載の方法。
(付記44)
溶液の最終pHが約4.5である、付記43に記載の方法。
(付記45)
化合物の塩を含む溶液が、10℃で4日間均質のままである、付記40に記載の方法。
(付記46)
化合物の塩を含む溶液が、2〜5℃で7日間均質のままである、付記40に記載の方法。