特許第6785887号(P6785887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785887
(24)【登録日】2020年10月29日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】電気的機能化センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1486 20060101AFI20201109BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20201109BHJP
   A61B 5/1473 20060101ALI20201109BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   A61B5/1486ZDM
   G01N27/30 A
   A61B5/1473
   G01N27/327 353R
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-568687(P2018-568687)
(86)(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公表番号】特表2019-524205(P2019-524205A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2017065943
(87)【国際公開番号】WO2018002108
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年6月20日
(31)【優先権主張番号】16176989.8
(32)【優先日】2016年6月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーダー、ヘルベルト
【審査官】 近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0099954(US,A1)
【文献】 特開昭55−078241(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/116293(WO,A1)
【文献】 YU GUANGXIA,A FACILE AND PRACTICAL BIOSENSOR FOR CHOLINE BASED ON MANGANESE DIOXIDE NANOPARTICLES 以下備考,TALANTA,2015年 6月19日,VOL:146,PAGE(S):707 - 713,SYNTHESIZED IN-SITU AT THE SURFACE OF ELECTRODE BY ONE-STEP ELECTRODEPOSITION,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.talanta.2015.06.037
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1468 − 5/1486
G01N 27/30
G01N 27/327
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を判定するためのバイオセンサであって、前記バイオセンサが、
基板と、
メディエータ層と導電接触する導電性パッドを備える作用電極と、
前記メディエータ層に拡散可能接触する酵素層とを備え、
前記メディエータ層が、電析メディエータ層であり、
前記メディエータ層が、電解触媒剤を備え、
前記電解触媒剤が、MnO2を備え
前記検体が、グルコースである、
バイオセンサ。
【請求項2】
前記電解触媒剤が、電気化学反応を生じさせるのに必要な過電位を減少させることにより、および/または、電気化学反応が生じる速度を増加させることにより、少なくとも1つの電気化学反応に触媒作用を及ぼす剤である、請求項1記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記メディエータ層が、MnO2により構成される、請求項1記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記作用電極が、複数の導電性パッドを備え、前記複数の導電性パッドの少なくとも1つが、酵素層に拡散可能接触するメディエータ層に導電接触する、請求項1記載のバイオセンサ。
【請求項5】
前記バイオセンサが、対向電極をさらに備える、請求項1記載のバイオセンサ。
【請求項6】
前記バイオセンサが、参照電極をさらに備え、前記参照電極が、参照材料の層を備える、請求項5記載のバイオセンサ。
【請求項7】
前記参照材料が、銀を備える、請求項記載のバイオセンサ。
【請求項8】
前記酵素層が、検体の存在下で過酸化物を生成する酵素を備える、請求項1記載のバイオセンサ。
【請求項9】
前記バイオセンサが、埋め込み可能なバイオセンサである、請求項1記載のバイオセンサ。
【請求項10】
グルコースを判定するためのバイオセンサを製造するための方法であって、
a)少なくとも1つの導電性パッドを有する基板を提供するステップと、
b)前記導電性パッドの少なくとも一部の上にメディエータ層を電析させるステップであって、前記メディエータ層が、電解触媒剤を備え、前記電解触媒剤が、MnO2を備える、メディエータ層を電析させるステップと、
c)前記メディエータ層の少なくとも一部の上に酵素層を堆積させるステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記基板が、参照電極および対向電極のうち少なくとも1つをさらに備える、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、参照電極および対向電極をさらに備え、
前記方法が、前記参照電極の上に参照材料の層を電析させるステップをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記酵素層を堆積させるステップが、検体の存在下で過酸化物を生成する酵素を堆積させるステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
試料中のグルコースである検体を検出するための方法であって、
a)バイオセンサの酵素層に前記試料を接触させるステップであって、
前記バイオセンサが、
基板と、
電解触媒剤を備える電析メディエータ層と導電接触する導電性パッドを備える作用電極であって、前記電解触媒剤が、MnO2を備える、作用電極と、
前記メディエータ層に拡散可能接触する酵素層と、
少なくとも1つの対向電極とを備える、
前記試料を接触させるステップと、
b)前記作用電極、前記メディエータ層および前記対向電極を備える電気回路を閉じるステップと、
c)ステップb)の前記電気回路に電圧を印加し、生じた電流を測定するステップと、それによって、
d)前記試料中の前記検体を検出するステップとを含む方法。
【請求項15】
請求項1013のいずれか1項に記載の方法により製造される、または製造可能なバイオセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を判定するためのバイオセンサに関し、バイオセンサは、基板と、メディエータ層と導電接触する導電性パッドを備える作用電極と、メディエータ層と拡散可能接触する酵素層とを備え、メディエータ層は、電析メディエータ層であり、メディエータ層は、電解触媒剤を備え、一実施形態では電解触媒剤により構成される。本発明はさらに、バイオセンサを製造するための方法に関し、方法は、少なくとも1つの導電性パッドを有する基板を提供することと、導電性パッドの少なくとも一部の上にメディエータ層を電析させることであって、メディエータ層が、電解触媒剤を備え、一実施形態では電解触媒剤により構成される、メディエータ層を電析させることと、メディエータ層の少なくとも一部の上に酵素層を堆積させることとを含む。さらに、本発明は、本発明のバイオセンサに関する使用および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
間質液および/または血液などの1つまたは複数の体液におけるグルコースなどの1つまたは複数の検体の濃度の判定は、多くの疾患における治療および/または予防の本質的要素である。具体的には、血中グルコース濃度だけでなく対応する薬物の判定は、多くの糖尿病患者にとって日常的なルーチンの本質的部分である。利便性を高め、許容可能な程度以上に日常のルーチンを制限することを回避するために、家から離れた仕事、レジャーまたは他の活動中に血中グルコース濃度を測定するためなどの携帯デバイスが当該技術分野で知られている。具体的には、使用者の身体組織に完全にまたは部分的に埋め込み可能であり、検体濃度の連続的または不連続な測定を提供することができるセンサを使用する電気化学式測定技術が知られている。これらのタイプの埋め込み可能センサエレメントの例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に開示され、または特許文献5により開示されている。
【0003】
血液および/または間質液中の血中グルコース濃度を判定するためなどの、体液中の少なくとも1つの検体の濃度を電気化学的に検出するためのテストエレメントは、典型的には、少なくとも1つの作用電極および少なくとも1つの対向電極を備える。さらに、任意で、センサエレメントは、少なくとも1つの参照電極を備えていてもよい。しかし、代替的な実施形態では、参照電極を省略してもよく、および/または、対向電極と組み合わされてもよい。作用電極および対向電極の両方についての電位電極材料、ならびに、対応する電流測定構成を使用することによって検体濃度を判定するための電位電気化学式測定構成については、特許文献1を参照することができる。しかし、電極電位の比較から検体濃度を導出するために、他のタイプの測定構成も可能である。
【0004】
典型的な電気化学式センサ構成では、対向電極は、作用電極に対して電気回路を閉じるために設けられる。この目的のために、典型的には、酸化還元電流、および/または、より低い程度で、容量性充電電流が使用される。典型的には、作用電極は、検体との酸化反応または還元反応を行うように適合された少なくとも1つの検出物質を備える。多くの場合、検出物質は、グルコースオキシダーゼ(GOD)などの少なくとも1つの酵素を含む。検出反応が作用電極での酸化反応を含む場合、対向電極は、典型的には、電気回路を閉じるために還元反応を提供する。検体の効果的な酸化または還元は、望ましくない副反応を誘発する危険性を有する高い過電圧を必要とすることがある。したがって、原理的には生物学的触媒(酵素)または無機触媒であり得る触媒(メディエータ)は、典型的には、作用電極の構造に含まれる。たとえば、MnO2は、過酸化物、特に過酸化水素(H22)の酸化のための電解触媒として使用されている。さらに、信号強度を増加させるために、たとえば特許文献6により提案されているように、いくつかの金属層を電析させることにより、電極表面を増加させる試みがなされている。
【0005】
様々な電極構成が当該技術分野において知られている。特許文献7には、哺乳動物内に埋め込むための検体センサ装置が開示されている。検体センサ装置は、ベース層と、ベース層上に配置された導電層と、検体検知層と、検体検知層上に配置された検体変調層とを備える。導電層は、複数の導電性ナノチューブを備える作用電極を含む。検体検知層は、導電性ナノチューブ上に配置される酸化還元酵素を備える。酸化還元酵素は、感知される検体の存在下で過酸化水素を発生させる。検体変調層は、それを通して検体の拡散を変調する。
【0006】
上述したように、複数の電極の組み合わせが知られている。したがって、3つの電極構成では、作用電極および対向電極の他に、対向電極とは独立して少なくとも1つの参照電極が設けられる。この場合、対向電極の電位は、典型的には、参照電極の電位とは独立に調整されてもよい。特許文献1により詳細に説明されているように、一方では作用電極と参照電極との間に所望の電位差または電圧を提供し、他方では作用電極で起こる検出反応の電流が、対向電極での適切なカウンタープロセスと釣り合い、それによって電気回路が閉じられるように構成される定電位制御装置が設けられる。後者の目的のために、対向電極は、対向電極での適切な電極反応によって適切かつ必要な電流が生成される電位に調整されなければならない。
【0007】
したがって、対向電極で起こるプロセスは、定電流電位差測定器のプロセスと比較され得る。対向電極は、概して、酸化還元プロセスが必要な電流を生成する電位に達する。1つの酸化還元系のこの酸化還元プロセスが適切な電流を提供するには不十分である場合、作用電極の検出反応に釣り合う適切な対向電流を生成するのに、全ての部分電流の和が十分であるまで、反応相手は減少し、対向電極はその後の酸化還元反応の電位に進む。
【0008】
対向電極の電位および対向電極における電極反応は、典型的には、複数の因子に依存する。したがって、対向電極自体の表面は、表面積、電極の粗さおよび/または他の表面特性などの影響を有する。さらに、酸化還元種の存在および対向電極におけるそれぞれの過電圧は、対向電極の上述の特性、ならびに酸化還元種の濃度およびプロセスの酸化還元電位および過電圧に影響を与える。
【0009】
具体的には、生体内連続監視センサの場合、これらのセンサは、典型的には、血液および/または間質液によって取り囲まれる。上述のように、ほとんどの公知のバイオセンサは、グルコースなどの検体が酸化される作用電極での酸化検出反応を使用している。一例として、グルコースが酵素的に酸化され、H22などの、還元された副生成物が生成される。血液および間質液のほとんどの成分は還元形態で存在するので、典型的な生体内測定における還元可能な種の数は限られている。それらのそれぞれの酸化還元電位の順序において、以下の還元可能な種は、たとえば、酸素、H22、H2Oと命名されてもよい。酸素の量は、典型的には、具体的に生体内測定において、具体的に間質液中でむしろ限定されている。身体組織内に埋め込まれたセンサエレメントのカプセル化によって、作用電極への酸素の送達は、経時的にさらに減少し得る。H22は、電極反応によって、たとえばO2の還元および/または酵素反応によって生成され得る。H2Oは、典型的には、高濃度で広く入手可能である。しかし、還元可能な種として水を使用することは、典型的にはH2ガスの形成を含む。このガスの形成は、典型的には上述の効果を増大させる電極のディウェッティング(de-wetting)を引き起こし得る。また、ガスの形成は、典型的には作用電極を覆う膜のリフトオフにつながる可能性があり、膜および/または電極の完全な除去につながる可能性がある。
【0010】
典型的には、体内センサは、必要な電極を提供するための適切な電気リード線を含む支持体を提供すること、参照電極用の参照化学物質を含むペーストおよび作用電極用の反応化学物質を含むペーストを2つの別個のプロセスでスクリーン印刷すること、たとえばスクリーン印刷(たとえば特許文献7を参照)によって、製造される。この手順は、試薬およびそれらの混合物の労働集約的な品質管理を必要とする。さらに、スクリーン印刷プロセスは、いくつかの乾燥工程を必要とし、それによって、特に可撓性支持体が使用される場合には、不完全に印刷されたセンサ、または塗布された層の一部が欠損したセンサを製造することによってエラーを起こしやすい。さらに、スクリーン印刷プロセスは、乾燥後に微量が残っている可能性があり、測定の妨げになる可能性のある溶媒の存在を必要とする。特に、頻繁に使用される溶媒であるジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)は、完全に除去することが困難であり、製造中に過酸化されることがあり、これは通常、過酸化物を検出するセンサ、たとえばグルコースオキシダーゼ/H22化学物質を用いたグルコースセンサにおける干渉を引き起こす。また、反応化学物質をスクリーン印刷することにより、酵素(たとえばグルコースオキシダーゼ)およびメディエータ(たとえば、H22の酸化に触媒作用を及ぼすために使用されるMnO2)は、分散しているが、典型的には凝集体として反応化学物質中に存在し、それによってH22は、検出のためにMnO2凝集体に酵素凝集体から最初に拡散しなければならず、これは、捕捉効率を低下させることによって検出の速度および感度を低下させる。
【0011】
作用電極の代替的な構造として、最初に酵素を含む金属の層を電極金属上に電析させることと、電子移動のメディエータをさらなる層として電気めっきすることが提案されている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2007/071562号
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0021889号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0230285号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/078424号
【特許文献5】国際特許出願PCT/EP2011/072732号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/227907号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/007461号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0368209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、上述したような既知のセンサエレメントの短所を完全にまたは部分的に回避する、身体組織に少なくとも部分的に埋め込むことができるバイオセンサを提供することである。特に、センサエレメントは、反応化学物質および/または参照化学物質のスクリーン印刷に関連する問題に関する改善を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、独立請求項の特徴を有するバイオセンサおよび関連する方法によって解決される。バイオセンサおよびバイオセンサを製造する方法の好ましい実施形態は、本明細書および従属請求項に開示される。
【0015】
したがって、本発明は、検体を判定するためのバイオセンサに関し、バイオセンサは、基板と、メディエータ層と導電接触する導電性パッドを備える作用電極と、メディエータ層と拡散可能接触する酵素層とを備え、メディエータ層は、電析メディエータ層であり、メディエータ層は、電解触媒剤を備える。
【0016】
以下で使用される場合、「有する」、「備える」もしくは「含む」という用語、またはそれらの任意の文法的変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入された特徴の他に、この文脈で説明される存在物にはさらなる特徴が存在しない状況、および1つまたは複数のさらなる特徴が存在する状況を指してもよい。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、Bの他に、Aの中に他の要素が存在しない状況(すなわち、単独かつ排他的にBにより構成される状況)と、Bの他に、要素C、要素CおよびD、またはさらなる要素などの、要素Aの中に1つまたは複数のさらなる要素が存在する状況を指してもよい。
【0017】
また、以下で使用される場合、「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特別に」、「より特別には」、「具体的には」、「より具体的には」という用語または類似の用語は、代替的な可能性を限定するものではなく、任意の特徴とともに使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意の特徴であり、いかなる形でも特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替的な特徴を使用することによって実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態」または類似の表現によって導入される特徴は、本発明の代替的な実施形態に関するいかなる限定もなく、本発明の範囲に関するいかなる限定もなく、そのようにして導入される特徴を本発明の他の任意のまたは非任意の特徴と組み合わせることの可能性に関するいかなる限定もなく、任意の特徴であることを意図するものである。さらに、別に示されない限り、「約」という用語は、関連する分野において一般的に受け入れられている技術的精度を有する表示値に関し、一実施形態では表示値±20%に関する。
【0018】
本明細書で使用される「バイオセンサ」という用語は、本明細書に示される手段を備える装置に関する。一実施形態では、バイオセンサは、それぞれ本明細書の他の箇所に記載されているように、基板と、メディエータ層と導電接触する作用電極と、メディエータ層と拡散可能接触する酵素層とを備える。
【0019】
一実施形態では、バイオセンサは、埋め込み可能バイオセンサである。したがって、一実施形態では、バイオセンサは、拡散膜および/または生体適合性層をさらに備える。本明細書で使用される用語「拡散膜」は、検体の拡散を許容するポリマーに関し、具体的には1μm〜100μmの厚さ、一実施形態では2.5μm〜50μmの厚さを有する。一実施形態において、拡散膜は、生体適合性ポリマー、特にブチルメタクリレート(BUMA)および/または2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)モノマーを重合することによって製造されるポリマーを備えるか、またはそのポリマーにより構成される。さらなる実施形態では、拡散膜は、検体の拡散を許容するが、分析流体、たとえば体液中に含まれる高分子成分の分析流体の拡散を許容しない。したがって、一実施形態では、拡散膜は、具体的には、10kDa未満、一実施形態では5kDa未満、さらなる実施形態では1kDa未満の分子量を有する分子の拡散を許容する。したがって、一実施形態では、拡散膜は、半透膜、特に透析膜、一実施形態では生体適合性透析膜である。本明細書で使用される「生体適合性層」という用語は、生体適合性材料を含む、または生体適合性材料により構成される、バイオセンサの最外層に関する。一実施形態では、生体適合性材料は、生体応答を誘導しない材料、たとえば、不活性材料である。一実施形態では、バイオセンサは、拡散膜によって覆われた開口部を除いて、生体適合性層によって完全に覆われる。さらなる実施形態では、バイオセンサは、生体適合性層によって完全に覆われる。一実施形態において、開口部は、作用電極の近傍に位置し、拡散膜は、作用電極、メディエータ層および酵素層を分析流体から分離する。さらに、特に、バイオセンサが埋め込み可能バイオセンサである場合、バイオセンサは、典型的には、電池のようなエネルギー源、および/または外部機器と情報を交換するための、たとえば、検体の測定値を報告するための通信ユニットを含むさらなる電気的および電子的手段を備えてもよい。エネルギー源および通信ユニットを提供するための適切な手段は、当該技術分野において周知である。
【0020】
バイオセンサは、当業者によって適切であると見られるさらなる手段を備えていてもよいことが理解されるであろう。一実施形態では、バイオセンサは、電気化学的バイオセンサである。したがって、バイオセンサは、さらなる電気リード線および電気コンタクトを備えていてもよい。一実施形態では、バイオセンサは、さらなる電極を備えていてもよく、それらの電極は、記載の特徴を有する電極であってもよいし、構造的におよび/または機能的に異なる電極であってもよい。さらなる電極は、たとえば、充填制御、温度センサなどとしての使用に適合され得る。一実施形態では、バイオセンサは、対向電極をさらに備え、さらなる実施形態では、参照電極および対向電極をさらに備える。バイオセンサは、3つの電極を備えてもよく、そのうちのそれぞれが、作用電極、対向電極および参照電極(「3電極構成」)であり、または、バイオセンサは、2つの電極を備えていてもよく、第1が作用電極であり、第2が対向電極および参照電極である(「2電極構成」)ことが当該技術分野で知られている。上述のように、バイオセンサはまた、さらなる電極を備えていてもよい。
【0021】
本明細書で使用される「検体」という用語は、液体、特に体液中に存在する化学化合物に関する。一実施形態では、液体は、本明細書の他の場所で特定される試験試料である。一実施形態では、検体は、有機分子であり、さらなる実施形態では、本発明による酵素の存在下で酸化還元反応を受けることができる有機分子である。一実施形態では、検体は、被検体(subject)の代謝の分子、すなわち、被検体の少なくとも1つの組織において生じる少なくとも1つの化学反応によって生成されおよび/または消費される分子である。また、一実施形態では、検体は、低分子量化合物であり、さらなる実施形態では、分子量が5000u(5000Da;1u=1.66×10-27kg)未満の化学化合物であり、さらなる実施形態では、分子量が1000u未満の化学化合物であり、さらなる実施形態では、分子量が500u未満の化学化合物である。すなわち、一実施形態では、検体は生物学的高分子ではない。さらなる実施形態では、検体は、リンゴ酸、エタノール、アスコルビン酸、コレステロール、グリセロール、尿素、3−ヒドロキシ酪酸、乳酸、ピルビン酸、ケトン、クレアチニンなどからなるリストから選択され、さらなる実施形態では、検体はグルコースである。
【0022】
本明細書で使用される「試料」および「試験試料」という用語は、体液の試料、分離された細胞の試料、または組織もしくは器官由来の試料、または外側体表面もしくは内側体表面から得られた洗浄/すすぎ流体の試料を指す。一実施形態では、試料は、体液由来の試料である。本明細書中で使用される場合、「体液」という用語は、血液、血漿、間質液、涙液、尿、リンパ液、脳脊髄液、胆汁、便、汗、および唾液を含む、本発明の検体を含むかまたは含むと考えられる被検体のすべての体液に関する。一実施形態では、体液は血液、血清または血漿である。体液のサンプルは、たとえば、静脈または動脈穿刺、表皮穿刺などを含む周知の技術によって得ることができる。一実施形態では、体液は、判定を行うために被検体の体から引き出され、したがって、一実施形態では、本発明のバイオセンサは、体外(in vitro)法で使用される。さらなる実施形態では、バイオセンサが埋め込み可能バイオセンサである場合、体液は被検体内に含まれ、そのような場合、体液は、一実施形態では、血液または間質液であり、したがって、さらなる実施形態では、本発明のバイオセンサは、体内(in vivo)法で使用される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「基板」という用語は、基本的にストリップ形状のような任意の形状を有し得るキャリアエレメント(支持体)を指す。有用な材料および幾何学的形状は当該技術分野において公知である。一実施形態では、基板は、可撓性基板である。一実施形態では、基板は、一実施形態では、1つ、2つまたは3つ以上の層を有する層構成を備え、一実施形態では、可撓性層構成を備える。基板は、概して、プラスチック材料および/またはラミネート材料および/または紙材料および/またはセラミック材料など、任意の基板材料から作製されてもよい。金属または薄膜構成など、その他の材料が、代替的または追加的に使用されてもよい。一実施形態では、基板は、絶縁層であり、したがって、基板が金属である場合、金属は、一実施形態では、絶縁層によって覆われる。一実施形態では、基板は、可撓性PCBもしくはポリイミドを備えるか、または可撓性PCBもしくはポリイミドにより構成される。
【0024】
「電極」という用語は、原理的には、電気回路の非金属部分と接触するために使用される電気導体に関するものとして当該技術分野において知られている。それらの完全な開示内容に関して参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2007/071562号、米国特許出願公開第2009/0178923号明細書、米国特許出願公開第2011/0196216号明細書および米国特許出願公開第2015/0099954号明細書から、バイオセンサにおける電極として使用可能な様々な材料および幾何学的形状が当業者に認識されている。一実施形態では、本発明の電極は、少なくとも1つの導電性パッドと、少なくとも1つの導電性経路とを備える。本明細書で使用される「導電性パッド」という用語は、検出反応(パッドが作用電極のパッドである場合)、対向反応(パッドが対向電極のパッドである場合)、または参照反応(パッドが参照電極のパッドである場合)が生じる電極の一部を形成する小さい塊(small mass)の金属に関する。本明細書で使用される場合、「反応は、電極の導電性パッド上で生じる」という用語は、導電性パッドと導電接触している層、一実施形態では直接接触している層、たとえばメディエータ層またはAg/AgCl層中で生じる反応に関する。一実施形態では、少なくとも1つの導電性パッドおよび/または導電性経路は、高い導電率を有する非腐食性材料、特に金、銀、白金およびパラジウム、またはそれらの合金を含む貴金属、またはグラファイトにより構成される。一実施形態では、少なくとも1つの導電性パッドおよび/または導電性経路は、少なくとも1つの金層を備え、一実施形態では金により構成される。当業者に理解されるように、少なくとも1つの導電性パッドおよび/または導電性経路は、複数の層、たとえば2つまたは3つ以上の層を備える。したがって、一実施形態では、電極の少なくとも1つの導電性パッドおよび/または導電性経路は、銅の層および金の層を備えていてもよい。一実施形態では、電極は、銅電極構造上に金の層を電気的に堆積させることによって製造される電極であり、一実施形態では、銅電極構造は、基板上に導電性経路をリソグラフィで構造化することによって生成される。さらなる実施形態では、導電性経路(電気リード線)は、導電性パッドを、たとえば測定装置に備えられるコネクタに導電的に接続する。導電性パッドおよび導電性経路は、原則として、適切であると考えられる任意の幾何学的形状を有してもよい。
【0025】
一実施形態では、電極、特に作用電極は、直接、または少なくとも1つの半透膜を介して、試料、特に身体組織内の試料内の体液と接触するように適合される。したがって、一実施形態では、電極は、体液に含まれる少なくとも1つの電解質および/または水などの溶媒と接触するように配置される。電極は、完全にまたは部分的に体液と接触し得る、または体液と接触するようになり得る1つもしくは複数の導電性パッド(電極領域)であってもよいし、または1つもしくは複数の導電性パッド(電極領域)を備えていてもよい。したがって、各電極領域は、たとえば、体液を含む身体組織と直接接触するか、または、体液に対して完全にもしくは部分的に透過性であり得る少なくとも1つの膜、またはその1つもしくは複数の構成要素を介して、体液と接触するかのいずれかで、体液との少なくとも1つの界面を提供することができる。電極領域の1つまたは複数は、導電性経路とも呼ばれる1つまたは複数の適切な接触リード線を介して接触され得る。したがって、1つの接触リード線または導電性経路は、1つの電極または複数の2つもしくは3つ以上の電極に正確に電気的に接触することができる。一実施形態では、少なくとも1つの電極は、身体組織内部の体液と接触するように適合され得る、厳密に1つの連続表面領域を有していてもよい。同じタイプの1つまたは複数の電極をバイオセンサに設けてもよい。各電極は、少なくとも1つの接触リード線によって電気的に接触されてもよい。同じタイプの複数の電極が提供される場合、電極は、1つまたは複数の接触リード線によって接触されてもよい。したがって、同じタイプの2つまたは3つ以上の電極は、1つの同じ接触リード線によって電気的に接触されてもよい。代替的に、電極ごとに少なくとも1つの別個の接触リード線のように、電極に接触するための別個の接触リード線が設けられてもよい。
【0026】
各電極は、電気化学反応が電極で起こるように具現化されてもよく、体液、または電解質および/もしくは検体などの、体液の一部に、この電気化学反応が生じてもよい。したがって、電極は、電極において酸化反応または還元反応が起こるように具現化されてもよい。
【0027】
バイオセンサは、正確に1つの作用電極を備えるか、または複数の作用電極を備えていてもよい。2つ以上の作用電極が設けられている場合、作用電極の少なくとも1つは、メディエータ層と導電接触する導電性パッドを備え、メディエータ層は、電析メディエータ層であり、メディエータ層は、電解触媒剤を含む。また、バイオセンサは、厳密に1つの対向電極を備えていてもよいし、複数の対向電極を備えていてもよい。1つまたは複数の追加の参照電極が設けられている場合、正確に1つの参照電極が設けられてもよいし、複数の参照電極が設けられてもよい。
【0028】
一実施形態では、バイオセンサは、特に試料中の検体を判定するためのバイオセンサである。さらなる実施形態では、試料は、被検体の試料である。本明細書で使用される「判定する」という用語は、検体の量を検出または測定することに関し、一実施形態では半定量的に、またはさらなる実施形態では定量的に検体の量を検出または測定することに関する。一実施形態では、判定することは、検体を含むと疑われる流体に、本発明によるバイオセンサを接触させたときに、作用電極で放出または消費される電子の量を評価することを含む。作用電極で放出または消費される電子の量を評価する方法は、従来技術から知られている。一実施形態では、放出または消費される電子の量は、定電位測定によって評価される。
【0029】
「作用電極」という用語は、概して、関心のある反応が生じる電気化学的セル内の電極に関するものとして理解される。本発明によれば、作用電極の少なくとも1つの導電性パッドは、本明細書の他の場所で特定されているようにメディエータ層と導電接触している。一実施形態では、作用電極は、電極領域とも呼ばれる複数の導電性パッドを備える。さらなる実施形態では、多数の導電性パッドは、上記で引用した米国特許出願公開第2011/196216号明細書に記載されているような多数の領域である。作用電極の導電性パッド(電極領域)の、一実施形態では少なくとも1つ、一実施形態では少なくとも2つ、さらなる実施形態では半分、さらなる実施形態ではすべてが、1つまたは複数のメディエータ層と導電接触している。一実施形態では、作用電極の導電性パッドは、たとえば、すべての導電性パッドを覆う連続したメディエータ層と、それを接続するリード線と接触することによって、同じメディエータ層と導電接触する。さらなる実施形態では、1つまたは複数の作用電極の導電性パッドは、少なくとも2つの別個または異なるメディエータ層と導電接触しており、「別個のメディエータ層」という用語は、組成が同一である空間的に分離したメディエータ層に関連し、「異なるメディエータ層」という用語は、組成が異なるメディエータ層に関する。一実施形態では、作用電極は、過酸化物、特に過酸化水素の酸化が起こるバイオセンサの電極である。したがって、一実施形態では、作用電極はアノードである。
【0030】
「対向電極」という用語は、概して、関心のある反応に対する電気化学的な対向反応(counter reaction)が起こる電気化学セルの電極に関するものとして理解される。したがって、好ましくは、対向電極は、測定中に作用電極と電気回路を閉じるために使用される電極である。対向電極を製造するための手段および方法は、たとえば、上で引用した文献から、当該技術分野において周知である。一実施形態では、本発明による対向電極は、特に上で引用した米国特許出願公開第2015/099954号明細書に記載されているように、作用電極に対して基板の反対側に配置されている。一実施形態では、対向電極は、そのような場合にはさらに機能化されていても、機能化されていなくてもよい金を含むか、またはその金により構成される導電性パッドを備える。
【0031】
対向電極材料は、少なくとも1つの酸化還元反応を実施するように適合された少なくとも1つの対向電極酸化還元材料をさらに備えていてもよく、および/または、1つもしくは複数の金属のような1つもしくは複数の導電性材料を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、酸化還元反応という用語は、酸化還元反応の一方のパートナーが還元され、酸化還元反応の他方のパートナーが酸化されるという事実を指す。したがって、酸化還元材料という用語は、少なくとも1つの還元可能な成分と、少なくとも1つの酸化可能な成分とを含む材料を指す。一例として、対向電極酸化還元材料は、以下の酸化還元系:Ag/AgCl、Hg/HgCl2、およびMn(II)/Mn(IV)の1つまたは複数を含んでいてもよい。少なくとも1つの導電性材料は、一実施形態では電気的に分極可能な表面であり、体液に含まれる1つまたは複数の成分との1つまたは複数の酸化還元反応が起こるように適合され得る少なくとも1つの導電性表面を提供し得る。
【0032】
「参照電極」という用語は、特に既知かつ一定の電極電位を有する酸化還元系を提供することによって、既知の広く一定の電極電位を参照電位として提供するように適合された電極に関するものであることが当業者に知られている。原理的には、たとえば上で引用した当該技術から、参照電極を設ける方法は当業者に知られている。一実施形態では、参照電極は、参照材料の層、特に、既知かつ広く一定の電極電位を有する参照材料の層と導電接触している。一実施形態では、参照材料は、銀(Ag)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ビスマス(Bi)、レニウム(Re)およびテルル(Te)の金属のうちの少なくとも1つを備え、一実施形態では、それらの金属の1つを備える。一実施形態では、参照材料は、イオン形態、元素形態、またはイオンおよび元素形態の上述した金属の1つもしくは複数またはそれらの合金を備える。さらなる実施形態では、参照材料は、イオンおよび元素形態の上述した金属の1つもしくは複数またはそれらの合金を含む。一実施形態では、参照材料は、元素形態の上述した金属の1つもしくは複数またはそれらの合金を含み、イオンおよび元素形態の上述した金属の1つもしくは複数またはそれらの合金を含む参照物質は、元素形態を部分的に電気化学的に酸化することによって、その場で生成される。したがって、一実施形態では、参照材料は、イオン形態の上述した金属の少なくとも1つを酸化物または塩化物として含み、さらなる実施形態では、上述した金属の少なくとも1つを元素およびイオン形態で含み、さらなる実施形態では、(i)元素形態の、および(ii)酸化物または塩化物としての、上述した金属の少なくとも1つを含む。一実施形態では、参照電極は、標準的な方法に従って製造されたAg/AgCl電極であり、さらなる実施形態では、参照電極は、塩化物イオンの存在下で銀を電気化学的に酸化することによってその場で生成されるAg/AgCl電極である。
【0033】
一実施形態では、バイオセンサは、参照電極を備えておらず、特にこのような実施形態では、バイオセンサは、上で特定した参照材料として同時に機能する対向電極酸化還元材料を含む対向電極を備える。
【0034】
一実施形態では、参照材料、特に本明細書で上述した参照材料は、参照電極上に、すなわち特にガルバニ電池の半反応によって電析される。一実施形態では、参照材料、特に銀は、元素の形態で参照電極上に電析され、次いで、イオン形態および元素形態の上述した金属の1つもしくは複数またはそれらの合金を含む参照材料を得るために部分的に酸化される。原則的に、金電極上に銀を電析させる方法は、当該技術分野において公知であり、以下の実施例にさらに記載されている。一実施形態では、銀は、硝酸銀溶液から、特に1μMから室温(25℃)で飽和するまでの濃度を有する硝酸銀溶液から、一実施形態では100μMから室温で飽和するまでの濃度を有する硝酸銀溶液から電析される。一実施形態では、堆積は、定電位で、すなわち定電圧を印加することによって行われる。定電位電析のための適切な電圧を決定する方法は、当業者に知られている。一実施形態では、−60mV〜−150mVの電圧、さらなる実施形態では−65mV〜−120mVの電圧が印加される。さらなる実施形態では、堆積は、定電流で、すなわち一実施形態では堆積時間にわたって一定である適切な堆積速度が達成されるように電流を調整することによって行われる。一実施形態では、定電流堆積は、堆積プロセスのために確立された電流/電位曲線から最適な電流範囲を導出することによって最適化される。当業者には理解されるように、電析材料の量は、一実施形態では膜厚は、堆積電流および/または堆積時間を調整することによって制御することができる。
【0035】
「導電接触」という用語は、当業者には理解される。一実施形態では、導電接触は、第1の接触パートナーから第2の接触パートナーへ電荷を導電することを許容する接触であり、介在する導電性化合物、たとえば電解質、または特に電子伝導体、たとえば金属によって媒介され得る。概して、本明細書で使用する場合、「導電性」という用語は、典型的にはS/mまたは1/Ωmで少なくとも1×100S/m、好ましくは少なくとも1×103S/m、より好ましくは少なくとも1×105S/mで与えられる導電率σのことを指す。本明細書でさらに使用されるように、「電気絶縁性」という用語は、1×10-1S/m以下、好ましくは1×10-2S/m以下、最も好ましくは1×10-5S/m以下の導電率を指す。さらなる実施形態では、導電接触は直接接触である。したがって、一実施形態では、本発明の作用電極とメディエータ層との間の導電接触は、直接接触である。すなわち、一実施形態では、作用電極の導電性パッドは、少なくとも部分的にメディエータ層によって覆われており、特にメディエータ層と直接接触している。これに対応して、さらなる実施形態では、一実施形態では、本発明の参照電極と参照材料との間の導電接触は、直接接触である。すなわち、一実施形態では、参照電極の導電性パッドは、参照材料によって少なくとも部分的に覆われており、特に参照材料と直接接触している。
【0036】
同様に、本明細書で使用される「拡散可能接触」という用語は、化合物の拡散、特に本明細書の他の場所で検体について特定される分子量を有する化合物の第1の接触パートナーから第2の接触パートナーへの拡散を許容する接触に関する。したがって、一実施形態では、拡散可能接触は、第1の接触パートナーから第2の接触パートナーへの化合物の拡散を許容する介在組成物によって媒介される接触である。さらなる実施形態では、拡散可能接触は、直接接触であり、したがって、一実施形態では、メディエータ層と酵素層との間の拡散可能な接触は、直接接触である。すなわち、一実施形態では、作用電極の導電性パッドと導電接触するメディエータ層は、少なくとも部分的に参照材料で覆われており、特に参照材料と直接接触している。
【0037】
本明細書で使用される場合、「メディエータ層」という用語は、電解触媒剤を含む層に関する。本明細書で使用される「電解触媒剤」という用語は、電気化学反応、特に電極での還元反応または酸化反応に触媒作用を及ぼす無機化合物に関する。一実施形態では、触媒作用は、無触媒反応と比較して電気化学反応が起こるのに必要な過電圧を減少させること、および/または、無触媒反応と比較して電気化学反応が起こる速度を増加させることである。特に、「電気化学反応が生じる速度を増加させる」とは、電極の面積当たりの反応速度、特に作用電極の面積当たりの反応速度に関係し、したがって、一実施形態では、電解触媒作用は、電極の面積、特に作用電極の面積を増加させない。一実施形態では、電解触媒剤は、選択的であり、すなわち、電解触媒剤は、特定の化合物またはあるクラスの化合物、たとえば過酸化物の電気化学反応に、特異的にまたは半特異的に触媒作用を及ぼす。一実施形態では、電解触媒剤は、マンガン、さらなる実施形態ではマンガンイオン、特にマンガン(IV)イオンを含む。一実施形態では、電解触媒剤は、マンガン(IV)酸化物(MnO2)を含む。
【0038】
一実施形態では、本発明のメディエータ層は、さらなる成分、たとえば、接着促進化合物、導電材料としての1つまたは複数の金属または合金などを備える。さらなる実施形態では、本発明のメディエータ層は、電解触媒剤以外の成分を備えず、特に有機エーテル過酸化物を含まず、一実施形態では、有機エーテルを含まず、さらなる実施形態では、有機溶媒を含まない。一実施形態では、メディエータ層は、電解触媒剤により構成され、したがって、さらなる実施形態では、メディエータ層は、マンガンおよび/またはMnO2により構成され、さらなる実施形態では、MnO2により構成される。
【0039】
一実施形態では、メディエータ層、特に本明細書で上に記載した電解触媒剤は、1つまたは複数の作用電極上に、すなわち特にガルバニ電池の半反応によって電析される。本明細書で言及されるような電解触媒剤を電析させるための方法は、原則として当該技術分野において公知である。本明細書の他の箇所で特定されているように、一実施形態では、電解触媒剤は、マンガンであり、特にMnO2である。そのような場合、電解触媒剤、すなわちMnO2は、たとえば硫酸マンガンの水溶液から電析させることができる。金属またはその特定の塩の電析のための好適なpHおよび電圧は、たとえば、Pourbaixグラフから導き出すことができる。一実施形態では、堆積は、定電位で、すなわち定電圧を印加することによって行われる。実施例に示されるように、電析のための適切な条件、特に定電位堆積のための電圧をどのように決定するかは、当業者に知られている。たとえば、一実施形態では、MnO2は、Ag/AgCl電極に対して1V〜4Vの電位、特に3.0V〜3.5Vの電位で、3〜8のpH、特に5〜7のpHを有するMnSO4の溶液から電析し得る。さらなる実施形態では、堆積は、定電流で、すなわち、適切な堆積速度が達成されるように電流を調整することによって行われ、堆積速度は、一実施形態では、堆積時間にわたって一定である。一実施形態では、定電流堆積は、堆積プロセスのために確立された電流/電位曲線から最適な電流範囲を導出することによって最適化される。当業者には理解されるように、一実施形態では、電析材料の量は、一実施形態では、層の膜厚は、堆積電流および/または堆積時間を調整することによって制御することができる。一実施形態では、実施例に示されるように、MnO2は、Mn(II)イオンの溶液、特にMnSO4またはMnCl2の溶液から1μA〜15μAの一定電流、一実施形態では4〜12.5μAの一定電流で堆積させることができる。さらなる実施形態では、実施例に示すように、Agは、Ag(I)イオンの溶液、特にAgNO3の溶液から、10μA〜300μAの一定電流、一実施形態では25μA〜275μAの一定電流で堆積させることができる。当業者には理解されるように、特定の電極への電析に適した電流は、電極の面積、電極の幾何学的形状、印加される電場の形状、特に対向電極の相対的な配置などを含む、さまざまなさらなるパラメータに依存する。
【0040】
本明細書で使用される「酵素」という用語は、化合物を生成または消費する化学反応に触媒作用を及ぼす生物学的高分子、特にポリペプチドに関し、生物学的高分子の電気化学的変換が、検体の存在下で、本明細書の他の箇所で特定された電解触媒剤によって触媒作用が及ぼされる。一実施形態では、酵素はオキシダーゼであり、さらなる実施形態では、酵素は、検体の存在下で過酸化物を生成し、特に過酸化水素を生成し、したがって、一実施形態では、酵素は、オキシダーゼ、たとえば、グルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4)、ヘキソースオキシダーゼ(EC1.1.3.5)、コレステロールオキシダーゼ(EC1.1.3.6)、ガラクトースオキシダーゼ(EC1.1.3.9)、アルコールオキシダーゼ(EC1.1.3.13)、L−グロノラクトンオキシダーゼ(EC1.1.3.8)、NAD(P)Hオキシダーゼ(H22形成、EC1.6.3.1)、NADHオキシダーゼ(H22形成、EC1.6.3.3)、またはカタラーゼ(EC1.11.1.6)を生成する過酸化水素である。一実施形態では、酵素は、グルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4)である。
【0041】
本明細書で使用される「酵素層」という用語は、本明細書において上で特定された酵素を備える層に関する。一実施形態では、酵素層は、さらなる成分、特にさらなるポリペプチド、たとえば、酵素と実質的に固定された比率で適用され得る担体タンパク質を含む。本明細書で使用される「担体タンパク質」という用語は、本発明のバイオセンサによって判定可能な化合物を生成する触媒活性を少なくとも欠くタンパク質またはタンパク質の混合物に関する。特に、担体タンパク質は、既知の酵素活性を有さず、および/または熱不活性化タンパク質である。一実施形態では、酵素および担体タンパク質は、酵素層全体にわたって略均一な様式で分布される。典型的には、酵素層は、薄く、1μmから10μmの厚さを有し、一実施形態では2μmから5μmの厚さを有する。この厚さの酵素層は、たとえば、電析またはスクリーン印刷によって製造することができる。理解されるように、特に酵素層をスクリーン印刷するために、酵素は、当該技術分野で周知の充填剤、溶媒、接着メディエータなどを含むさらなる添加剤を含む組成物中に分散させることができる。典型的な実施形態では、酵素層は、非常に薄く、たとえば、約1μm、約0.5μm、約0.25μmまたは約0.1μmの厚さを有する。このような厚さの酵素層は、酵素および、潜在的に、適切な溶媒、たとえば水または水性緩衝液に溶解される添加剤を分注または噴霧することによって得ることができる。
【0042】
バイオセンサは、少なくとも1つの電気絶縁性材料をさらに含んでもよい。電気絶縁性材料は、少なくとも1つの電気絶縁性材料の1つまたは複数の層で基板をコーティングすることなどによって、基板に適用されてもよい。一例として、電気絶縁性材料は、1つまたは複数の電気絶縁性樹脂を備えていてもよい。したがって、基板は、電気絶縁性樹脂の1つまたは複数の層で完全にまたは部分的に被覆されてもよい。追加的または代替的に、基板を完全にまたは部分的に被覆する他のタイプの絶縁性材料が使用されてもよい。少なくとも1つの電気絶縁性材料は、コーティング技術などによって、基板に直接的または間接的に塗布されてもよい。この場合も、追加的または代替的に、電気絶縁性材料は、基板自体の一部であってもよい。したがって、基板自体は、少なくとも1つの電気絶縁性材料で完全にまたは部分的に形成されてもよい。一例として、基板は、絶縁性ポリエステルなどの絶縁性プラスチック材料で完全にまたは部分的に作製されてもよく、ならびに/または、紙および/もしくは絶縁性セラミック材料などの絶縁性材料で完全にまたは部分的に作製されてもよい。
【0043】
有利には、本発明の根底にある作業の間に、MnO2のようなメディエータ層が、バイオセンサの作用電極上に電析され、そのような電析が、大きな表面を有する、均質でしっかりと接着する層をもたらすことが見出された。また、その層をスクリーン印刷するための技術的努力を節約することができる。さらに、新しい方法は、DEGMBEを含むスクリーン印刷ペーストの使用を必要としないので、メディエータ層中に過酸化エーテルが存在せず、したがって、新しいセンサのゼロ電流が非常に低い。同じ理由から、新しいバイオセンサもまた、事前運転(prerun)を必要としない。さらに、本発明の方法を用いると、スクリーン印刷によって生じる変動が避けられるので、作用電極のサイズをより正確に画定することができる。さらに、堆積メディエータの量は、ガルバニ析出中に、より正確に画定することができる。したがって、たとえば検体検査ストリップのロット間変動を減らすことができます。
【0044】
上記の定義は、以下に準用する。以下でさらになされる追加の定義および説明は、本明細書に記載されたすべての実施形態について適用される。
【0045】
本発明はまた、バイオセンサを製造する方法に関し、その方法は、
a)少なくとも1つの導電性パッドを有する基板を提供することと、
b)導電性パッドの少なくとも一部の上にメディエータ層を電析させるステップであって、メディエータ層が、電解触媒剤を備え、一実施形態では、電解触媒剤により構成される、メディエータ層を電析させるステップと、
c)メディエータ層の少なくとも一部に酵素層を堆積させるステップと
を含む。
【0046】
一実施形態では、本発明の製造方法は、明確に上述したものに加えたステップを含んでもよい。たとえば、さらなるステップは、たとえば、ステップa)のために基板上に導電性パッドをめっきすること、またはステップb)の間、前または後にさらなる層を塗布することに関連し得る。さらに、上述のステップの1つまたは複数は、自動化された装置によって実行されてもよい。さらに、製造方法は、コーティング技術、たとえば印刷技術、分注技術の1つまたは複数の技術を適用することをさらに含んでもよい。印刷技術は、スクリーン印刷、インジェット印刷、ステンシル印刷、オフセット印刷、タンポン印刷もしくは任意の他の印刷技術またはそれらの任意の組み合わせなどの任意の印刷技術を含んでもよい。追加的または代替的に、他のコーティング技術を使用してもよい。
【0047】
さらに、製造方法は、基板上に少なくとも1つの導電性パッドおよび/または少なくとも1つの対向電極導電路を設けること、コーティングを適用することの少なくとも1つのさらなるステップなどのさらなるステップを含んでもよく、導電性パッドに追加の層が塗布され、および/または、少なくとも1つの印刷技術および/または少なくとも1つの分注技術などの少なくとも1つのコーティング技術によって、対向電極材料が対向電極導電性パッドに塗布される。印刷技術が使用される場合、少なくとも1つの印刷技術は、1つまたは複数の異なるタイプの印刷技術を含んでもよい。一実施形態では、印刷技術は、少なくとも1つのスクリーン印刷技術を含む。上で概略が記載された参照材料および/または対向電極材料は、ペーストとして塗布されてもよい。参照材料および/または対向電極材料は、印刷技術および分注技術のうちの少なくとも1つなどによって、たとえばスクリーン印刷によって、電気絶縁性材料の1つまたは複数の開口内にさらにコーティングされてもよい。追加的にまたは代替的に、導電性センサ材料および/または導電性対向電極材料のそれぞれのコーティング後、たとえば印刷後および/または分注後に、絶縁性材料が塗布されてもよい。
【0048】
また、本発明は、本発明の製造方法に従って製造され、または製造可能なバイオセンサに関する。
【0049】
さらに、本発明は、試料中の検体を判定するための本発明によるバイオセンサの使用に関する。
【0050】
さらに、本発明は、試料中の検体を検出するための方法であって、その方法は、
a)バイオセンサの酵素層に試料を接触させるステップであって、
バイオセンサが、
基板と、
電解触媒剤を備え、一実施形態では電解触媒剤により構成される電析メディエータ層と導電接触する導電性パッドを備える作用電極と、
メディエータ層に拡散可能接触する酵素層と、
少なくとも1つの対向電極とを備える、
試料を接触させるステップと、
b)作用電極、メディエータ層および対向電極を備える電気回路を閉じるステップと、
c)ステップb)の電気回路に電圧を印加し、生じた電流を測定するステップと、それによって、
d)試料中の検体を検出するステップとを含む。
【0051】
本発明の検出方法は、被検体からのサンプルに対して実施される体外法であってもよく、バイオセンサが被検体の体内に埋め込まれている場合の体内法であってもよい。さらに、検出するための方法は、明確に上述されたものに加えたステップを含んでもよい。たとえば、さらなるステップは、たとえば、ステップa)のために、試料を得ること、もしくはバイオセンサを埋め込むこと、または、ステップc)で得られた値に対して較正および/または計算を行うことに関連し得る。さらに、上述したステップの1つまたは複数は、自動化された装置によって実行されてもよい。
【0052】
本明細書で使用される「被検体(subject)」という用語は、脊椎動物に関する。一実施形態では、被検体は、哺乳動物であり、さらなる実施形態では、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ハムスター、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシまたはウマである。さらなる実施形態では、被検体は霊長類である。さらなる実施形態では、被検体はヒトである。一実施形態では、被検体は、少なくとも1つの検体の正常からの測定可能な偏差に関連する疾患または状態に罹患しているか、または罹患している疑いがある。さらなる実施形態では、被検体は、糖尿病、特にII型糖尿病に罹患しているか、または罹患している疑いのある被検体である。
【0053】
本発明の検出方法はさらに、たとえば、検体を含む試料がバイオセンサと接触して、検体、酵素および電解触媒剤が反応に関与して、検体が還元され(少なくとも1つの電子を受け取り)、または、検体が酸化される(少なくとも1つの電子を供与する)ときの、電流測定に関する。典型的には、検体は酸化される。この反応が完了した後、作用電極と対向電極との間に電位差が印加され得る。したがって、一実施形態では、反応の開始後、電源(たとえば電池)が使用されて電極間に電位差が印加され、たとえば定常状態分析電流が、電流測定計によって測定される。測定された電流は、検体の濃度と相関し得る。たとえば電流の大きさ、特に準定常状態条件で測定された電流の大きさは、存在する反応生成物の量と相関し、結果としてサンプル中の検体の量と相関し得る。印加される電位差は、少なくとも1つの反応生成物の電解酸化が作用電極の表面で起こるように選択される。本発明による作用電極は、バイオセンサのメディエータ層と密接に接触し、一実施形態では直接接触している。したがって、反応生成物は、作用電極で迅速に酸化または還元され得る。概して、検体、酵素、およびそれらの反応生成物は、本明細書で特定したものである。一実施形態では、バイオセンサは、本発明によるバイオセンサである。
【0054】
本明細書に引用された全ての文献は、それらの開示内容全体および本明細書中で具体的に言及された開示内容に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
上述した観点から、以下の実施形態が好ましい。
【0056】
実施形態1:検体を判定するためのバイオセンサであって、バイオセンサが、基板と、メディエータ層と導電接触する導電性パッドを備える作用電極と、メディエータ層に拡散可能接触する酵素層とを備え、メディエータ層が、電析メディエータ層であり、メディエータ層が、電解触媒剤を備え、一実施形態では電解触媒剤により構成される、バイオセンサ。
【0057】
実施形態2:電解触媒剤が、一実施形態では選択的に、電気化学反応を生じさせるのに必要な過電位を減少させることにより、および/または、電気化学反応が生じる速度を増加させることにより、少なくとも1つの電気化学反応に触媒作用を及ぼす剤である、実施形態1のバイオセンサ。
【0058】
実施形態3:電解触媒剤が、マンガンを備え、一実施形態ではイオン形態でマンガンを備える、実施形態1または2のバイオセンサ。
【0059】
実施形態4:電解触媒剤が、マンガン(IV)酸化物(MnO2)を備える、実施形態1〜3のいずれか1つのバイオセンサ。
【0060】
実施形態5:メディエータ層が、マンガンおよび/またはMnO2により構成され、一実施形態ではMnO2により構成される、実施形態1〜4のいずれか1つのバイオセンサ。
【0061】
実施形態6:メディエータ層が、有機エーテル過酸化物を含まず、一実施形態では有機エーテルを含まず、さらなる実施形態では有機溶媒を含まない、実施形態1〜5のいずれか1つのバイオセンサ。
【0062】
実施形態7:作用電極が、複数の導電性パッドを備え、前記複数の導電性パッドの少なくとも1つが、一実施形態では複数の導電性パッドの少なくとも2つが、さらなる実施形態では複数の導電性パッドの半分が、さらなる実施形態では複数の導電性パッドのすべてが、酵素層に拡散可能接触するメディエータ層に導電接触する、実施形態1〜6のいずれか1つのバイオセンサ。
【0063】
実施形態8:バイオセンサが、対向電極をさらに備え、一実施形態では参照電極および対向電極をさらに備える、実施形態1〜7のいずれか1つのバイオセンサ。
【0064】
実施態様9:対向電極は、作用電極に対して基板の反対側に位置付けられる、実施形態8のバイオセンサ。
【0065】
実施形態10:参照電極が、参照材料の層を備える、実施形態8または9のバイオセンサ。
【0066】
実施形態11:参照材料が、電析される、実施形態10のバイオセンサ。
【0067】
実施形態12:参照材料が、銀(Ag)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ビスマス(Bi)、レニウム(Re)およびテルル(Te)の金属の少なくとも1つを備え、一実施形態では前記金属の1つを備える、実施形態10または11のバイオセンサ。
【0068】
実施形態13:参照材料が、イオンおよび/または元素形態で、前記少なくとも1つの金属を備える、実施形態10〜12のいずれか1つのバイオセンサ。
【0069】
実施形態14:参照材料が、銀を備え、一実施形態では銀および塩化銀を備える、実施形態10〜13のいずれか1つのバイオセンサ。
【0070】
実施形態15:酵素層が、検体の存在下で過酸化物を生成する酵素を備える、実施形態1〜14のいずれか1つのバイオセンサ。
【0071】
実施形態16:過酸化物が、過酸化水素である、実施形態1〜15のいずれか1つのバイオセンサ。
【0072】
実施形態17:検体が、グルコースである、実施形態1〜16のいずれか1つのバイオセンサ。
【0073】
実施形態18:酵素層が、グルコースオキシダーゼを備える、実施形態1〜17のいずれか1つのバイオセンサ。
【0074】
実施形態19:バイオセンサが、電気化学式バイオセンサである、実施形態1〜18のいずれか1つのバイオセンサ。
【0075】
実施形態20:バイオセンサが、埋め込み可能バイオセンサである、実施形態1〜19のいずれか1つのバイオセンサ。
【0076】
実施形態21:バイオセンサが、拡散膜をさらに備える、実施形態1〜20のいずれか1つのバイオセンサ。
【0077】
実施形態22:バイオセンサが、生体適合性層をさらに備える、実施形態1〜21のいずれか1つのバイオセンサ。
【0078】
実施形態23:導電性パッドが、少なくとも1つの金層を備え、一実施形態では金により構成され、さらなる実施形態では、電析金により構成される、実施形態1〜22のいずれか1つのバイオセンサ。
【0079】
実施態様24:導電接触および/または拡散可能接触が、直接接触である、実施態様1〜23のいずれか1つのバイオセンサ。
【0080】
実施形態25:バイオセンサを製造するための方法であって、
少なくとも1つの導電性パッドを有する基板を提供するステップと、
a)導電性パッドの少なくとも一部の上にメディエータ層を電析させるステップであって、メディエータ層が、電解触媒剤を備え、一実施形態では電解触媒剤により構成される、メディエータ層を電析させるステップと、
b)メディエータ層の少なくとも一部の上に酵素層を堆積させるステップと
を含む方法。
【0081】
実施形態26:メディエータ層が、マンガンを、一実施形態ではイオン形態でマンガン備える、実施形態25の方法。
【0082】
実施形態27:メディエータ層が、マンガン(IV)酸化物(MnO2)を備える、実施形態25または26の方法。
【0083】
実施形態28:メディエータ層が、マンガンまたはMnO2により構成され、一実施形態ではMnO2により構成される、実施形態25または26の方法。
【0084】
実施態様29:方法が、参照電極および対向電極のうち少なくとも1つをさらに備える基板、一実施形態では参照電極および対向電極をさらに備える基板を提供するステップをさらに含む、実施形態25〜27のいずれか1つの方法。
【0085】
実施形態30:バイオセンサが、酵素層を堆積させた後に拡散膜を堆積させるステップをさらに含む、実施形態25〜29のいずれか1つの方法。
【0086】
実施形態31:方法が、参照電極上に参照材料の層を堆積させるステップをさらに含む、実施形態29または30の方法。
【0087】
実施形態32:方法が、参照電極上に参照材料の層を電析させるステップをさらに含む、請求項29〜31のいずれか1つの方法。
【0088】
実施形態33:酵素層を堆積させるステップが、検体の存在下で過酸化物を生成する酵素を堆積させるステップを含む、実施形態25〜32のいずれか1つの方法。
【0089】
実施形態34:前記酵素層が、分注することにより、噴霧することにより、またはスクリーン印刷することにより堆積される、実施形態25〜33のいずれか1項の方法。
【0090】
実施形態35:実施形態25〜34のいずれか1つの方法により製造され、または製造可能なバイオセンサ。
【0091】
実施形態36:試料中の検体を判定するための実施形態1〜24のいずれか1つのバイオセンサの使用。
【0092】
実施形態37:試料中の検体を検出するための方法であって、
a)バイオセンサの酵素層に試料を接触させるステップであって、
バイオセンサが、
基板と、
電解触媒剤を備え、一実施形態では電解触媒剤により構成される電析メディエータ層と導電接触する導電性パッドを備える作用電極と、
メディエータ層に拡散可能接触する酵素層と、
少なくとも1つの対向電極とを備える、
試料を接触させるステップと、
b)作用電極、メディエータ層および対向電極を備える電気回路を閉じるステップと、
c)ステップb)の電気回路に電圧を印加し、生じた電流を測定するステップと、それによって、
d)試料中の検体を検出するステップとを含む方法。
【0093】
実施形態38:バイオセンサが、実施形態1〜24のいずれか1つのバイオセンサである、実施形態37の方法。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】実施例1の250μAでのAg堆積のガルバノスタティック・クロノアンペロメトリーであり、x軸が時間t(s)であり、y軸が電位ΔU(V)である。
図2】銀の電析とそれに続く塩化物含有溶液中での電解酸化により作製された電極の電位の安定性を示す図である。時間に対するMnO2電極に対する電位が示され、破線がAgのみ(酸化前)であり、実線がAgCl(酸化後)であり、x軸が時間t(s)であり、y軸が電位ΔU(V)である。
図3】MnSO4溶液からMnO2を堆積させるための堆積電圧を決定することを示す図である。Ag/AgCl/0.15M CI-に対して350mVである電位におけるMnSO4のガルバノスタティックサイクリックボルタモグラムであり、x軸が電流I(A)であり、y軸が電位ΔU(V)である。
図4】電気化学的H22酸化物の触媒における電析されたMnO2層の機能性を示す図である。100秒、280秒、430秒および550秒の時点で、H22が添加され、その後に散発混合(100秒)、中程度混合(280秒)、強力混合(430秒)、およびセンサセル全体を反転させることによる強力混合(550秒)が実施される。x軸が時間t(s)であり、y軸が電流I(A)である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
以下の実施例は、単に本発明を説明するに過ぎない。これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0096】
実施例1:基板上の銀堆積:参照電極
オートラボPGSTAT128Nポテンシオスタット/ガルバノスタットで、3−電極構成(作用電極、参照電極、対向電極;すべてAuパッドを有する)を用いた。定電流クロノポテンショメトリーを−250μAで使用すると(図1)、硝酸銀溶液からの金電極パッド上への銀の堆積が、(AgNO3溶液中のAu擬似参照に対して)約−120mVで開始し、特に高い堆積速度が得られた。堆積した光沢のある銀が顕微鏡内で見ることができた。堆積量は、電荷Q=180s×250μA=45mC、物質量n=Q/F=(45E−3C)/96484C/モル=460nmolとして判定された。銀は、参照電極パッド上に、選択的に定電流堆積させることができる。
【0097】
実施例2:部分酸化後の電位安定性
参照電極としての有用性を試験するために、実施例1のAg被覆参照電極を電位安定性について試験した。電極は、最初に、酸化されないで期待される参照電位(二酸化マンガンに対して約275〜325mV)を示したが、その電位は安定していなかった。塩化物イオン含有溶液中での1μAでの短い(10秒間)定電流酸化の後、MnO2に対する電位は略一定であった。Ag/AgClの比は、印加される電荷の量に対して調節された。図2では、45mCのAg堆積(実施例1)(破線)、および、電位ドリフトを劇的に減少させた、AgClへのわずか10μCの酸化(実線)を使用した。
【0098】
実施例3:基板上のMnO2堆積:作用電極
(Mn2+中での参照電極/対向電極に対して)0〜15μAの定電流CVを用いて、2電極構成(作用電極、参照電極/対向電極、使用されないセンサ参照電極)のセンサ電極の複数のパッド上にMnO2を堆積させ、センサ対向電極におけるディスク電位参照電極=対向電極を2Vとしたときの堆積電位は3.4Vであった(図3)。これらの条件下で、すべての作用電極パッド上にMnO2を堆積させた。MnO2を定電流堆積させることが可能である。
【0099】
実施例4:機能性試験(H22酸化)
22内での電析されたMnO2の機能性およびAg/AgCl参照電極の機能性を、H22を添加してセンサ参照に対して350mVにおいてクロノアンペロメトリーで試験した。図4に示されるように、センサは、350mVにおいてH22依存信号を示す。特に、ゼロ電流は非常に低い(約50pA)。さらに、定電流堆積された電極は、ペースト溶剤DEGMBEからの過酸化エーテルを含有しないので、ゼロ電流における慣らし運転(running-in)は観察されない。
図1
図2
図3
図4