(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る培養装置1の外観の一例を示す図である。培養装置1は、一例として、ウォータジャケット式CO2インキュベータである。培養装置1は、培養作業室に複数台が備えられるように、通常のインキュベータに比べて小型である。
【0019】
培養装置1は、筐体2と、培養室3と、開口部4と、扉部5と、錠部6と、フィルタ7と、銅版8と、暗証情報取得部9と、温度設定部10と、二酸化炭素濃度設定部11と、湿度設定部12と、温度管理部13とを備える。
【0020】
筐体2は、断熱性を有し、培養室3を備える。
培養室3は、検体である細胞が培養されるための空間であり、筐体2内に備えられる。培養室3は、載置部30を備える。載置部30には、検体を収納した容器P1〜P3が載置される。容器P1〜P3は、同じ検体提供者から提供された検体が収納された容器である。
開口部4は、培養室3の前面に有され、培養室3から検体を取り出し可能に開口している。
【0021】
扉部5は、開口部4に対して開閉可能に備えられ、閉状態の場合に開口部4を塞ぐことにより培養室3内部からの検体の取り出しを制限する扉である。扉部5は、外扉50と内扉51の二重構造となっている。外扉50は、断熱性を有する。内扉51は、透明で耐熱性を有する強化樹脂あるいはガラスでできている。内扉51が透明であるため、外扉50が開状態であり内扉51が閉状態である場合であっても、使用者は培養室3の内部を観察できる。
【0022】
扉部5は、錠部6と、電子ロック17(不図示)とを備える。一例として、錠部6は内扉51に備えられ、電子ロック17は外扉50に備えられる。
錠部6は、内扉51を閉状態に保持し、鍵K(不図示)によって解錠される。したがって、錠部6は、施錠により扉部5を閉状態に保持し、鍵K(不図示)によって解錠される。
【0023】
電子ロック17は、施錠により外扉50を閉状態に保持し、暗証鍵SKによって解錠される。したがって、電子ロック17は、施錠により扉部5を閉状態に保持し、暗証鍵SKによって解錠される。暗証鍵SKは、暗証情報取得部9により取得される暗証情報SIによって示される。ここで暗証情報SIとは、一例として、暗証番号である。暗証情報SIの具体例については後述する。
【0024】
フィルタ7は、培養室3内の空気から雑菌などを除去することにより、培養室3内の空気を清浄する。フィルタ7の外周部は、高い抗菌作用を有する銅により囲まれている。フィルタ7は、一例として、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタである。
銅版8は、高い抗菌作用を有し、培養室3内の雑菌の増殖を抑制する。
【0025】
暗証情報取得部9は、使用者の入力操作に基づいて、暗証情報SIを取得する。ここで、暗証情報取得部9が取得する暗証情報SIには、培養室3内に格納されている検体に対応づけられている情報である場合と、培養室3内に格納されている検体に対応づけられている情報でない場合がある。ここで暗証情報SIが培養室3内に格納されている検体に対応づけられている情報でない場合とは、使用者が培養室3内に格納されている検体に対応づけられている情報以外の情報を誤って入力してしまう場合に対応する。
【0026】
暗証情報取得部9は、筐体2の側面に設けられた接続部14により、ケーブルを介して培養装置1に接続される。暗証情報取得部9とは、例えば、タッチパネルやテンキーなどである。接続部14とは、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポートである。
また、暗証情報取得部9は、使用者の入力操作に基づいて、培養装置1の初期動作時に登録される登録暗証情報160を取得する。
【0027】
なお、暗証情報取得部9は、培養装置1の筐体2の外側に備えられてもよい。また、暗証情報取得部9と培養装置1とは、ケーブルによる有線接続の代わりに、近距離無線を用いた無線接続により接続されてもよい。暗証情報取得部9と培養装置1とが近距離無線を用いた無線接続により接続される場合、培養装置1と、暗証情報取得部9とは、通信モジュールを備える。ここで暗証情報取得部9から培養装置1に送信される暗証情報SIは、暗号化されて送信される。
【0028】
温度設定部10は、操作ボタンを備え、培養室3内の温度を設定する操作を受け付ける。また、温度設定部10は、培養室3内の設定温度を表示する。
二酸化炭素濃度設定部11は、操作ボタンを備え、培養室3内の二酸化炭素濃度を設定する操作を受け付ける。また、二酸化炭素濃度設定部11は、培養室3内の設定二酸化炭素濃度を表示する。
湿度設定部12は、操作ボタンを備え、培養室3内の湿度を設定する操作を受け付ける。湿度設定部12は、培養室3内の設定湿度を表示する。
【0029】
温度管理部13は、温度設定部10とは独立に備えられ、培養室3内の温度が、温度設定部10による設定温度を超えることを抑止する。温度管理部13は、サーモスタットを備え、培養室3内の温度が、温度設定部10による設定温度を超える場合、培養室3内の温度を制御する。温度管理部13は、操作ノブを備え、設定温度を何度超えると制御を開始するかを設定することができる。
【0030】
図2を参照し、培養装置1の機能構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る培養装置1の構成の一例を示す図である。培養装置1は、
図1において説明した構成に加え、制御部15と、記憶部16と、環境設定入力部18と、表示部19と、温度調整部20と、殺菌部21と、ファン22と、温度検知部23と、二酸化炭素濃度検知部24と、湿度検知部25と、調節弁26とをさらに備える。
【0031】
制御部15は、暗証情報取得部9が供給する暗証情報を取得する。制御部15は、取得した暗証情報SIと、記憶部16に記憶される登録暗証情報160とに基づいて、電子ロック17の解錠を制御する。
【0032】
制御部15は、環境設定入力部18から供給される環境設定情報161に基づいて、温度調整部20、ファン22、及び調節弁26を介して、培養室3内の培養環境を制御する。環境設定情報161とは、環境設定入力部18から設定された培養室3内の温度、培養室3内の二酸化炭素濃度、及び培養室3内の湿度などを含む情報である。
【0033】
制御部15は、培養室3内の環境を、培養目的にあった最適な環境に維持する。培養目的にあった最適な環境とは、例えば、温度が37℃、相対湿度が90%以上、二酸化炭素濃度が5%である環境である。
なお、環境設定入力部18への環境設定情報161を入力する操作は、扉部5(外扉50及び内扉51)が閉状態に保持されているときに行われる。
【0034】
制御部15は、温度検知部23と、二酸化炭素濃度検知部24と、湿度検知部25とから取得する培養室3の環境を示す情報を表示部19に表示させる。
環境設定入力部18及び表示部19は、
図1に示した温度設定部10、二酸化炭素濃度設定部11、及び湿度設定部12に対応する。
【0035】
温度検知部23は、培養室3内の温度を検知する。温度検知部23とは、例えば、サーミスタである。
培養室3は、2層構造のウォータジャケットを有する。このウォータジャケットでは、培養室3の内壁と外壁との間に温度調節媒体である水が循環している。温度調整部20は、循環ポンプやヒータを備え、ウォータジャケットに用いられる水を制御する。培養室3には水循環用の配管が接続されており、ウォータジャケットから戻った水は循環ポンプによりヒータに送られ、加熱されて再びウォータジャケットに送られる。
【0036】
二酸化炭素濃度検知部24は、培養室3内の二酸化炭素濃度を検知する。二酸化炭素濃度検知部24は、一例として、赤外線センサである。
培養室3内の二酸化炭素濃度は、レギュレータ(不図示)や、調節弁26などを介して培養室3内に二酸化炭素濃度が注入されることにより調整される。ここでレギュレータは、培養装置1の外部に設置されたガスボンベからガス圧力を調整する。調節弁26は、一例として、電磁弁である。
ファン22は、培養室3内の空気を攪拌する。ファン22は、レギュレータや調節弁26とともに、培養室3内の二酸化炭素濃度を設定された濃度に保つ。
【0037】
湿度検知部25は、培養室3内の湿度を検知する。
培養室3内の湿度は、培養室3の底面に設置された加湿用水盤(不図示)に汲み入れられた滅菌水の自然気化により高湿度に保たれる。
【0038】
培養室3内の培養環境の急激な変化や、培養装置1の初期動作時等の湿度が低い場合には、制御部15は、温度調整部20を介して、培養室3内を一時的に高温にする。制御部15は、培養室3内を一時的に高温にすることにより、滅菌水の気化を促進させて培養室3内を高湿度に保つ。ここで培養環境の急激な変化は、例えば、扉部5の開閉が頻繁に行われた場合などに起こる。
【0039】
殺菌部21は、培養室3内の載置部30に付着した雑菌類を殺菌する。殺菌部21は、一例として、紫外線殺菌灯である。制御部15は、所定の時期において、殺菌部21に載置部30に紫外線を照射させる。つまり、殺菌部21は、電磁波により培養室3内を殺菌する。
【0040】
図3は、本実施形態に係る制御部15の構成の一例を示す図である。制御部15は、暗証情報認証部150と、電子ロック制御部151と、暗証情報登録部152と、環境制御部153と、表示制御部154とを備える。
【0041】
暗証情報認証部150は、暗証情報取得部9が取得する暗証情報SIの認証を行う。ここで暗証情報認証部150は、暗証情報取得部9が供給する暗証情報SIが示す暗証鍵SKと、記憶部16に記憶される登録暗証情報160が示す暗証鍵とを比較する。
【0042】
暗証情報認証部150は、比較の結果、暗証鍵SKと、登録暗証情報160が示す暗証鍵とが一致すると判定する場合、暗証情報取得部9が取得する暗証情報SIを認証する。暗証情報認証部150は、暗証情報SIを認証した場合、電子ロック制御部151に暗証情報SIの認証が完了したことを示す認証完了信号を供給する。なお、暗証情報認証部150は、暗証情報取得部9がタッチパネルである場合、このタッチパネルに暗証情報SIの認証が完了したことを表示させてもよい。
【0043】
一方、暗証情報認証部150は、比較の結果、暗証鍵SKと、登録暗証情報160が示す暗証鍵とが一致しないと判定する場合、暗証情報取得部9が取得する暗証情報SIを認証しない。なお、暗証情報認証部150は、暗証情報取得部9がタッチパネルである場合、このタッチパネルに暗証情報SIの認証が失敗したことを表示させてもよい。
【0044】
電子ロック制御部151は、電子ロック17の施錠及び解錠を制御する。電子ロック制御部151は、外扉50が閉状態になると、電子ロック17を、外扉50を施錠する状態に制御する。
一方、電子ロック制御部151は、暗証情報認証部150が供給する認証完了信号を取得すると、電子ロック17を解錠する。
【0045】
暗証情報登録部152は、培養装置1の動作開始時に、登録暗証情報160を登録する。暗証情報登録部152は、培養装置1の動作開始時に、暗証情報取得部9が供給する登録暗証情報160を取得する。暗証情報登録部152は、取得した登録暗証情報160を記憶部16に記憶させる。ここで培養装置1の動作開始時とは、例えば、培養装置1の初期動作時や、培養装置1の電源が切られた後に再度動作を開始する時などである。
【0046】
環境制御部153は、環境設定入力部18から供給される環境設定情報161に基づいて、温度調整部20、ファン22、及び調節弁26を介して、培養室3内の培養環境を制御する。
【0047】
環境制御部153は、記憶部16に記憶される環境設定情報161が示す設定温度と、温度検知部23が検知する培養室3内の温度とに基づいて、培養室3内の温度を制御する。ここで環境制御部153は、培養室3内の温度と、環境設定情報161が示す設定温度とが同じになるように、温度調整部20を制御する。
【0048】
環境制御部153は、記憶部16に記憶される環境設定情報161が示す設定二酸化炭素濃度と、二酸化炭素濃度検知部24が検知する培養室3内の二酸化炭素濃度とに基づいて、培養室3内の二酸化炭素濃度を制御する。ここで環境制御部153は、培養室3内の二酸化炭素濃度と、環境設定情報161が示す設定二酸化炭素濃度とが同じになるように、レギュレータ(不図示)、調節弁26、及びファン22を制御する。
【0049】
環境制御部153は、記憶部16に記憶される環境設定情報161が示す設定湿度と、湿度検知部25が検知する培養室3内の湿度とに基づいて、培養室3内の湿度を制御する。ここで環境制御部153は、培養室3内の湿度と、環境設定情報161が示す設定湿度とが同じになるように、温度調整部20を制御する。
【0050】
また、環境制御部153は、環境設定入力部18から供給される設定温度を示す情報と、設定二酸化炭素濃度を示す情報と、設定湿度を示す情報とを組にして、環境設定情報161として記憶部16に記憶させる。
【0051】
表示制御部154は、表示部19に、設定温度、設定二酸化炭素濃度、及び設定湿度を表示させる。
【0052】
培養装置1は、培養作業室に複数台備えられて使用される。
図4は、本実施形態に係る培養システムS1の一例を示す図である。培養システムS1は、培養装置1を複数備える培養システムである。
図4に示す例では、培養システムS1は、12人の検体提供者の検体を、培養作業室に設置される12台の培養装置1がそれぞれ培養する。
【0053】
培養システムS1では、複数の培養装置1を、それぞれ培養装置D11、培養装置D12、培養装置D13、培養装置D14、培養装置D15、培養装置D16、培養装置D21、培養装置D22、培養装置D23、培養装置D24、培養装置D25、及び培養装置D26という。また、これら複数の培養装置1をまとめて培養装置Dともいう。また、複数の培養装置1のうちの1台を代表させて培養装置Dともいう。
【0054】
培養システムS1では、一例として、培養装置Dは、鉛直方向に2段に積層され、かつ水平方向に6列に列設される。培養装置Dは、ラックに載置されることが好ましい。
【0055】
培養システムS1では、培養装置Dごとに錠部6を解錠するための鍵Kがそれぞれ設けられている。したがって、培養システムS1では、異なる12種類の鍵Kが設けられている。
培養システムS1では、複数の検体提供者の検体の取り違えミスのリスクを低減するため、培養装置Dのそれぞれの培養室3内に格納されている検体に対応づけられている暗証情報SIが登録暗証情報160として、それぞれ登録されている。
【0056】
ここで
図5を参照し暗証情報SIの具体例について説明する。
図5は、本実施形態に係る検体提供者に対応づけられた暗証情報SIのリストの一例を示す図である。
図5に示す例では、検体提供者の名前がイニシャルを用いて表されている。暗証情報SIのリストは、培養システムS1の使用者または管理者によって予め作成され、暗証情報SIは、培養装置Dの初期動作時に登録暗証情報160としてそれぞれ登録される。
【0057】
暗証情報SIは、一例として、識別部分と、数字部分とから構成される。識別部分は、一例として、検体提供者の名前のイニシャルを示すアルファベット1文字からなる。数字部分は、一例として、5桁の数字からなる。数字部分は、暗証情報SIを登録暗証情報160として登録する際に、ランダムに設定されてよい。
図5に示す例では、リストの2行目において、「Sさん」の検体に対応づけられた暗証情報SIの識別部分としてアルファベット「S」が設定され、数字部分として5桁の数字「17456」が設定されている。
【0058】
培養システムS1の使用者または管理者は、数字部分を、暗証情報SI間において重複がないように設定することが好ましい。暗証情報SI間において重複がない方が、複数の検体提供者の検体の取り違えミスのリスクをより低減できる。
【0059】
なお、識別部分は、検体提供者の名前のイニシャル以外の情報と紐づけられる他の情報であってもよく、2文字以上の文字が用いられてもよい。他の情報は、例えば、検体提供者の血液型と紐づけられてもよいし、誕生月と紐づけられた文字や数字であってもよい。別の例では、他の情報は、培養される検体である細胞の種類と紐づけられる文字であってもよい。また、識別部分は、これらを組み合わせた文字や数字から構成されてもよい。
識別部分は設けられなくてもよい。つまり、暗証情報SIは、数字部分のみから構成されてもよい。
【0060】
なお、培養システムS1では、一例として、培養装置Dごとに錠部6を解錠するための異なる12種類の鍵Kが設けられる場合について説明したが、これに限らない。培養装置Dごとに錠部6を解錠するための共通の鍵Kが設けられてもよい。つまり、複数の培養装置Dのそれぞれが備える錠部6は、共通の鍵Kによって解錠され、複数の培養装置Dのそれぞれが備える電子ロック17は、それぞれの培養室3内に格納されている検体に対応づけられている暗証情報SIがそれぞれ示す、互いに異なる個別の電子ロック17によって解錠されてもよい。
【0061】
培養システムS1では、培養装置Dごとに錠部6を解錠するための異なる12種類の鍵Kが設けられているため、複数の検体提供者の検体の取り違えミスのリスクを低減することができるが、培養装置Dごとに、異なる複数種類の鍵Kと、電子ロック17を解錠するための暗証情報SIとを管理するため、鍵Kが培養装置Dの台数だけ必要であるため、管理が煩雑である。複数の培養装置Dのそれぞれが備える錠部6は、共通の錠部6によって解錠されれば、鍵Kの管理の煩雑さを低減することができる。
【0062】
ここで、培養システムS1では、システムを構成する培養装置1がそれぞれ独立しているため、設置スペースの広さや高さや形状に応じて設置してもよい。
図6を参照し、培養作業室に設置される複数の培養装置1の設置の仕方の別の例について説明する。
【0063】
(変形例)
図6は、本実施形態の変形例に係る培養システムS2の一例を示す図である。培養システムS2は、培養装置1を複数備える培養システムである。
図6に示す例では、培養システムS2は、6人の検体提供者の検体を、培養作業室に設置される6台の培養装置1がそれぞれ培養する。
【0064】
培養システムS2では、一例として、複数の培養装置E(培養装置E11、培養装置E12、培養装置E21、培養装置E22、培養装置E31、及び培養装置E32という。また、これら複数の培養装置1をまとめて培養装置E)は、鉛直方向に3段に積層され、かつ水平方向に2列に列設される。
【0065】
以上に説明したように、本実施形態に係る培養装置1は、培養室3と、開口部4と、扉部5と、第1錠部(錠部6)と、第2錠部(電子ロック17)とを備える。
培養室3では、検体である細胞が培養される。開口部4は、培養室3から検体を取り出し可能に開口している。扉部5は、開口部4に対して開閉可能に備えられ、閉状態の場合に開口部4を塞ぐことにより培養室3内部からの検体の取り出しを制限する。
錠部6は、施錠により扉部5を閉状態に保持し、第1鍵(鍵K)によって解錠される。
第2錠部(電子ロック17)は、施錠により扉部5を閉状態に保持し、第1鍵(鍵K)とは異なる第2鍵(暗証鍵SK)によって解錠される。
この構成により、本実施形態に係る培養装置1では、扉部5を開状態とするためには、第1鍵(鍵K)による錠部6の解錠と、第1鍵(鍵K)とは異なる第2鍵(暗証鍵SK)による第2錠部(電子ロック17)の解錠とを必要とすることができるため、検体の取り違えのリスクを低減できる。
【0066】
また、本実施形態に係る培養装置1は、暗証情報取得部9をさらに備える。
暗証情報取得部9は、培養室3内に格納されている検体に対応づけられている暗証情報SIを取得する。
この構成により、本実施形態に係る培養装置1では、扉部5を開状態とするためには、培養室3内に格納されている検体に対応づけられている暗証情報SIの入力を必要とすることができるため、暗証情報SIの入力を必要としない場合に比べて検体の取り違えのリスクを低減できる。
【0067】
また、本実施形態に係る培養装置1は、環境制御部153を備える。環境制御部153は、培養室3内の培養環境を制御する。
この構成により、本実施形態に係る培養装置1では、培養室3内の培養環境を、培養室3内に格納される検体や培養目的に応じた環境に制御できる。
【0068】
ここで培養システムS1を構成する培養装置1は、それぞれ独立した構成(培養室3、制御部15、環境設定入力部18、温度調整部20、殺菌部21、ファン22、温度検知部23、二酸化炭素濃度検知部24、湿度検知部25、調節弁26、フィルタ7、銅版8など)を備えている。そのため、培養装置1は、1台の培養装置に複数の培養室が備えられて共通の制御部や温度調整部などによって制御が行われる培養装置に比べて、培養装置としての性能が高い。ここで培養装置としての性能とは、設定された培養環境に近い培養環境を維持しながら培養を行うことができることである。
【0069】
また、本実施形態に係る培養装置1は、殺菌部21を備える。殺菌部21は、電磁波により培養室3内を殺菌する。
この構成により、本実施形態に係る培養装置1では、培養室3内の温度を設定温度に維持したまま培養室3内の殺菌をすることができる。ここで、培養室内の殺菌に熱を用いる種類の培養装置では、殺菌処理のために培養室内の温度が影響を受けてしまい、培養室内の温度と設定温度とが異なってしまう場合がある。
【0070】
また、本実施形態の培養システムS1や変形例の培養システムS2のように複数の培養装置1が積層及び列設される場合には、培養室3内の殺菌に熱を用いると、培養室3内の温度が影響を受けてしまうことが考えられる。
【0071】
また、本実施形態に係る培養システムS1は、培養装置1を複数備える。
この構成により、本実施形態に係る培養システムS1では、複数の検体提供者の検体を、同じ培養作業室において培養する場合に、扉部5を開状態とするためには、培養室3内に格納されている検体に対応づけられている暗証情報SIの入力を必要とすることができるため、複数の検体提供者の検体を、同じ培養作業室において培養する場合に、検体の取り違えのリスクを低減できる。
【0072】
また、本実施形態に係る培養システムS1は、複数の培養装置1のそれぞれが備える前第1錠部(錠部6)は、共通の第1鍵(鍵K)によって解錠され、複数の培養装置1のそれぞれが備える第2錠部(電子ロック17)は、それぞれの培養室3内に格納されている検体に対応づけられている暗証情報SIがそれぞれ示す、互いに異なる個別の第2鍵(暗証鍵SK)によって解錠される。
【0073】
この構成により、本実施形態に係る培養システムS1では、複数の培養装置1のそれぞれが備える前第1錠部(錠部6)は、共通の第1鍵(鍵K)によって解錠され第1鍵(鍵K)の管理の煩雑さを低減することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る培養システムS1では、複数の培養装置1は、鉛直方向に積層され、かつ鉛直方向以外の方向に列設される。
この構成により、本実施形態に係る培養システムS1では、培養システムS1を構成する培養装置1がそれぞれ独立しているため、1設置スペースの広さや高さや形状に応じて設置することができる。
【0075】
なお、上述の実施形態においては、第1錠部(錠部6)は、施錠により内扉51を閉状態に保持し、第1鍵(鍵K)によって解錠され、第2錠部(電子ロック17)は、施錠により外扉50を閉状態に保持し、暗証情報取得部9により取得される暗証情報SIが示す第2鍵(暗証鍵SK)によって解錠される場合について説明したが、これに限らない。
例えば、第1錠部は、施錠により内扉51を閉状態に保持し、暗証鍵SKによって解錠され、第2錠部は、施錠により外扉50を閉状態に保持し、鍵Kによって解錠されてもよい。
また、第1錠部と第2錠部とが施錠により内扉51を閉状態に保持し、第1錠部は、鍵Kによって解錠され、第2錠部は、暗証鍵SKによって解錠されてもよい。
また、第1錠部と第2錠部とが施錠により外扉50を閉状態に保持し、第1錠部は、鍵Kによって解錠され、第2錠部は、暗証鍵SKによって解錠されてもよい。
また、第1錠部と第2錠部とが施錠により外扉50を閉状態に保持し、第1錠部は、暗証鍵SKによって解錠され、第2錠部は、暗証鍵SKとは異なる暗証鍵SK0によって解錠されてもよい。つまり上述の実施形態において鍵Kが用いられずに、2種類の暗証鍵が用いられてもよい。
また、第1錠部と第2錠部とが施錠により外扉50を閉状態に保持し、第1錠部は、鍵Kによって解錠され、第2錠部は、鍵Kとは異なる鍵K0によって解錠されてもよい。つまり上述の実施形態において暗証鍵SKが用いられずに、2種類の鍵が用いられてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態においては、培養装置1が第1錠部(錠部6)と、第2錠部(電子ロック17)とを備える場合について説明したが、これに限らない。培養装置1は、第3錠部を備えてもよい。
第3錠部は、施錠により外扉50と、内扉51とのいずれかを閉状態に保持する。第3錠部は、例えば電子ロックであり、培養装置1あるいは培養システムS1の使用者と対応づけられている第2暗証情報が示す暗証鍵によって解錠されてもよい。ここで第2暗証情報は、暗証番号であってもよいし、使用者を識別する指紋や網膜などの身体情報であってもよい。培養装置1は、第2暗証情報を取得するための第2暗証情報取得部を備えてよい。
【0077】
また、上述の実施形態においては、培養システムS1を構成する複数の培養装置1は、それぞれ独立した制御部15を備える場合について説明したが、制御部15のうち暗証情報認証部150、電子ロック制御部151、及び暗証情報登録部152は、培養システムS1を構成する複数の培養装置1に対して共通の制御部として備えられてもよい。この制御部をシステム制御部と呼ぶ。
【0078】
システム制御部が培養システムS1に備えられる場合、複数の培養装置1は通信モジュールを備え、システム制御部と通信を行う。システム制御部は、例えば、ある培養装置D11の扉部5が開状態となる場合、別の培養装置D12の扉は、培養装置D12の培養室3内に格納されている検体に対応づけられている暗証情報を暗証情報取得部9が取得しても開かないように制御してもよい。
【0079】
なお、上述した実施形態における培養装置1の一部、例えば、制御部15をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、培養装置1に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
また、上述した実施形態における培養装置1の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。培養装置1の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0080】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。