特許第6785958号(P6785958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6785958航空画像または衛星画像と車両によって検出されたデータとからディジタル道路モデルを生成するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785958
(24)【登録日】2020年10月29日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】航空画像または衛星画像と車両によって検出されたデータとからディジタル道路モデルを生成するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20201109BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20201109BHJP
   G09B 29/00 20060101ALN20201109BHJP
【FI】
   G06T1/00 330A
   G08G1/00 A
   !G09B29/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-520704(P2019-520704)
(86)(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公表番号】特表2019-534513(P2019-534513A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2017076503
(87)【国際公開番号】WO2018073260
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年4月17日
(31)【優先権主張番号】102016220308.8
(32)【優先日】2016年10月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング ハーマー
(72)【発明者】
【氏名】ステーン クリステンセン
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−033931(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0239983(US,A1)
【文献】 特開2002−318533(JP,A)
【文献】 特開2005−098853(JP,A)
【文献】 特開2012−103292(JP,A)
【文献】 特開2009−162740(JP,A)
【文献】 特開2002−081950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G08G 1/00 − 1/16
G09B 29/00 −29/14
G06T 7/00 − 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの道路区間に関するディジタル道路モデルを作成するための方法であって、
車両外部のデータバンクにおいて、前記少なくとも1つの道路区間に関する車両の少なくとも1つの軌跡を受信するステップと、
高所の位置から実質的に垂直に下方を向いて撮影された画像に相当する眺望を有し、かつ前記少なくとも1つの道路区間の少なくとも一部を示す、少なくとも1つの画像を受信するステップと、
前記少なくとも1つの軌跡が、前記少なくとも1つの画像内の道路の経過と一致するように、前記少なくとも1つの軌跡を、前記少なくとも1つの画像に重畳させるステップと、
前記軌跡に沿って延在し、かつ前記軌跡を包囲するコリドー内の前記少なくとも1つの画像を解析し、前記コリドー内の前記道路区間の走行または位置決めに関連する特徴を識別するステップと、
前記少なくとも1つの軌跡に基づいて位置合わせされた前記少なくとも1つの画像内、および前記軌跡を包囲する前記コリドー内で識別された、前記走行または位置決めに関連する特徴から前記ディジタル道路モデルを生成するステップと、
を含み、
前記方法は、前記車両によって検出された、前記道路区間の走行または位置決めに関連する特徴についての情報を受信するステップをさらに含み、
前記特徴は、各検出場所または検出位置についての情報を含む、
方法。
【請求項2】
前記道路区間の特徴についての前記情報を、オブジェクト記述式のベクトルフォーマットで受信する、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記オブジェクト記述式のベクトルフォーマットによって表される各特徴に関して、少なくとも1つの参照点を決定する、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記ディジタル道路モデルの区間に関する高度成分を、前記少なくとも1つの軌跡のデータから、トポグラフィデータバンクから、またはディジタル高度モデルから補完する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの道路区間に関するディジタル道路モデルを作成するためのシステムであって、
軌跡および画像を呼び出し可能に記憶するためのデータバンクと、
前記少なくとも1つの道路区間に関する車両の少なくとも1つの軌跡を受信し、かつ前記少なくとも1つの軌跡を前記データバンクに記憶するための第1のモジュールと、
高所の位置から実質的に垂直に下方を向いて撮影された画像に相当する眺望を有し、かつ前記少なくとも1つの道路区間の少なくとも一部を示す、少なくとも1つの画像を受信し、該少なくとも1つの画像を前記データバンクに記憶するための第2のモジュールと、
前記少なくとも1つの軌跡が、前記少なくとも1つの画像内の道路の経過と一致するように、前記少なくとも1つの軌跡を、前記少なくとも1つの画像に重畳させるための第3のモジュールと、
前記軌跡に沿って延在し、かつ前記軌跡を包囲するコリドー内の前記少なくとも1つの画像を解析し、前記コリドー内の前記道路区間の走行または位置決めに関連する特徴を識別するための第4のモジュールと、
前記少なくとも1つの軌跡に基づいて位置合わせされた前記少なくとも1つの画像内、および前記軌跡を包囲する前記コリドー内で識別された、前記走行または位置決めに関連する特徴から前記ディジタル道路モデルを生成するための第5のモジュールと、
前記車両によって検出された、前記道路区間の走行または位置決めに関連する特徴についての情報を受信するための第6のモジュールと、
を備え
前記特徴は、各検出場所または検出位置についての情報を含む、
システム。
【請求項6】
前記ディジタル道路モデルの区間に関する高度成分を、前記少なくとも1つの軌跡、トポグラフィデータバンクまたはディジタル高度モデルから抽出し、前記ディジタル道路モデルの前記区間を前記高度成分について相応に補完するための第7のモジュールをさらに備える、請求項記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地域の一部を上方から実質的に垂直に平面視したものを表す航空画像または衛星画像と、道路の走行時に車両によって検出されたデータ、例えばサンプリングを行うセンサ、すなわちレーダセンサ、ライダセンサ、超音波センサなどのセンサのデータまたはカメラ画像と、の組合せを用いる、ディジタル道路モデルの生成に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル道路モデルは、モビリティの分野における多くの用途、例えばナビゲーションシステム、ドライバアシスタンスシステム、自動運転車両に必要とされる。特に、衛星ナビゲーションまたは推測航法などの公知の位置決め方法と比較して、より正確な位置特定を実現するために、ドライバアシスタンスシステムおよび自動運転車両に関しては、ディジタル道路モデルにおける道路上のまたは道路に沿った可能な限り多くの数の特異な特徴および一般的に高い精度が必要になる。
【0003】
ディジタル道路モデルの提供者は、道路モデルが基礎とするデータを検出および更新するために、一連の種々のセンサが装備されている特殊車両で道路を走行することが許可されている。この目的のために使用される車両の数は少ないので、道路データの更新にはより長い時間が必要になると考えられる。さらに、位置決めセンサの不正確性に起因して、車両の位置データは不正確であることが多いので、その結果、総じて不正確なディジタル道路モデルが生じる。
【0004】
航空写真または衛星写真からのディジタル道路モデルの生成は、個々の画像の結合を必要とする。画像解像度および重畳が十分なものであれば結合は可能であるように思われるが、これは、検出に漏れがあった場合には制限的にしか実現されない。つまり、いずれの場合においても、継ぎ目が非連続的になる可能性があり、これはモデル全体の精度を低下させる。使用される光学系による歪み、特に画像の縁部における歪み、また異なるソースに由来する画像の異なる解像度も、航空画像または衛星画像の高精度の結合を困難にする。最後に、河川または水路が誤って道路として識別されることないように、また樹木によって覆い隠されている道路が見落とされることがないように、合成された画像において、コストを掛けて道路および道の探索を行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高精度のディジタル道路モデルの生成および時宜にかなった更新を実現するシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立請求項に記載のシステムまたは方法によって解決される。システムまたは方法の有利な構成は、相応の従属請求項に記載されている。
【0007】
用語の説明
本明細書の文脈において、軌跡とは、車両がある時点に実際に車道上または道路上で位置していた一連のウェイポイントに相当する。各ウェイポイントを、例えば相対的な座標によって、例えば、路側を基準とした、または車道上もしくは道路上の標示、または車道もしくは道路に面した標示を基準とした、または他の一義的に位置特定可能な参照点を基準とした、各ウェイポイントの距離および方向を記述するベクトルによって表される相対的な座標によって、一義的に決定することができる。この種の位置決定のために、例えば、車両の画像生成センサを使用することができ、例えばカメラ、またはサンプリングを行うライダシステムを使用することができる。路面標示の識別を、例えば、車道表面と標示との色の差異を識別することによって行うことができ、または異なる表面構造を識別することによって行うことができる。識別された標示を、相対的な位置決めに適している相応の特徴またはパラメータによって表すことができる。しかしながら、第1の軌跡のウェイポイントを、例えば衛星ナビゲーションシステムによって提供されるような絶対的な座標を求めることによっても決定することができる。位置決定のための他のシステムおよび方法、例えば時間にわたる加速および減速の検出ならびに操舵角もしくは速度の検出による位置算出、または精度を高めるための種々の方法の組合せも同様に使用することができる。ウェイポイントが非連続的に検出される場合には、複数のウェイポイントを結ぶことによって軌跡を近似させることができ、例えば多項式関数に従う曲線またはスプライン状の線によって近似させることができる。第1の軌跡は始点および終点を有することができるが、特定の長さを設定することは必ずしも必要ではない。
【0008】
本明細書の文脈において、走行に関連するか、または位置決定に関連する道路の特徴には、特に路面標示、車道または車線の特徴的な幾何学、縁石の位置、マンホールの位置、路面電車用線路の位置および鉄道用線路の位置などが含まれる。文脈から他に何も明らかにならない場合、「走行に関連する」という語句を、「位置決めに関連する」という語句に読み替えることができる。何故ならば、走行に関連する道路の特徴は、通常の場合、車両の位置の決定にも使用することができ、またそれとは反対に、車両の位置の決定は、通常の場合、走行に関連する道路の特徴の決定にも使用することができるからである。
【0009】
高精度のディジタル道路モデルの生成および時宜にかなった更新のための本発明によるシステムは、軌跡および画像を呼び出し可能に記憶するためのデータバンクの他に、少なくとも1つの道路区間に関する車両の少なくとも1つの軌跡を受信し、少なくとも1つの軌跡をデータバンクに記憶するための第1のモジュールを備えている。システムの第2のモジュールは、高所の位置から実質的に垂直に下方を向いて撮影された画像に相当する眺望を有し、かつ少なくとも1つの道路区間の少なくとも一部を示す、少なくとも1つの画像を受信し、少なくとも1つの画像をデータバンクに記憶するように構成されている。軌跡または画像を受信するためのモジュールは、送信器および/または受信器を備えた1つまたは複数のディジタルデータインタフェースを備えることができ、それらのディジタルデータインタフェースは、1つまたは複数の遠隔通信標準と互換性があるように構成されており、かつシステムの他のコンポーネントと通信を行うように接続されている。
【0010】
システムの第3のモジュールは、少なくとも1つの軌跡が、少なくとも1つの画像内の道路の経過と一致するように、少なくとも1つの軌跡を少なくとも1つの画像に重畳させるように構成されている。システムは、さらに、軌跡に沿って延在し、かつ軌跡を包囲するコリドー(Korridor:回廊)内の少なくとも1つの画像を解析し、コリドー内の道路区間の走行または位置決めに関連する特徴を識別するための第4のモジュールと、少なくとも1つの軌跡に基づいて位置合わせされた少なくとも1つの画像内、および軌跡を包囲するコリドー内で識別された、走行または位置決めに関連する特徴からディジタル道路モデルを生成するための第5のモジュールと、を備えている。
【0011】
システムの第5のモジュールは、少なくとも1つの軌跡に基づいて位置合わせされた少なくとも1つの画像内、および軌跡を包囲するコリドー内で識別された、走行または位置決めに関連する特徴からディジタル道路モデルを生成するように構成されている。
【0012】
システムの少なくとも2つのモジュールは、データ交換のための相応の物理的または論理的なインタフェースおよび/またはバスシステムを介して、通信を行うように相互に接続されている。システムのモジュールのうちの1つまたは複数は、1つまたは複数のコンピュータを含むことができ、この1つまたは複数のコンピュータは、各モジュールによって実施される、少なくとも1つの道路区間に関するディジタル道路モデルを作成するための本発明による方法の一部を実現する対応するコンピュータプログラムを実行する。しかしながら、システムのモジュールのうちの1つまたは複数を、対応するコンピュータプログラムとして実現することもでき、本発明による方法の少なくとも一部を実施するために、それらのコンピュータプログラムのうちの複数を、1つのコンピュータにおいて実行することができ、また相互作用させることができる。
【0013】
システムを、機能モジュールアーキテクチャの意味において1つまたは複数の機能ブロックから形成されているものと解することもできる。この場合、各機能ブロックは、対応する機能を実施するための手段を表している。それらの手段を、モジュールにおいて説明したように、コンピュータプログラムによって対応する機能を実施するように構成されている、1つまたは複数のコンピュータまたはデータ処理ユニットによって実現することができる。
【0014】
システムの1つまたは複数のコンピュータは、1つまたは複数のマイクロプロセッサを含むことができ、この1つまたは複数のマイクロプロセッサを、作業メモリおよび/または不揮発性メモリ手段、ならびに他のシステムコンポーネントに、1つまたは複数のデータバスを介して、通信を行うように接続することができ、この1つまたは複数のデータバスは、コンピュータプログラム命令の実行前かつ/または実行中にデータを受信かつ/または送信することができ、これによってコンピュータまたは処理ユニットは方法の少なくとも一部を実施する。不揮発性メモリ手段には、種々の記憶媒体、例えば光学メモリまたは磁気メモリ、相変化メモリまたはフラッシュメモリが含まれる。複数のモジュールまたは機能ブロックを、コンピュータまたはデータ処理ユニットとして実現することができる。
【0015】
本発明による方法の各部分を実現する1つまたは複数のコンピュータ命令を、1つまたは複数のデータ担体または記憶手段に記憶させることができる。コンピュータ命令を、無線によって接続されているか、またはケーブルもしくは線路を用いて接続されているインタフェースを使用して記憶手段に伝送することができる。コンピュータプログラム命令は、システム外に、コンピュータ可読媒体または機械可読媒体に永続的に記憶されているコンピュータプログラム製品として存在しており、またこのコンピュータプログラム製品を、担体媒体に記憶されているコンピュータプログラムと解することができる。
【0016】
コンピュータプログラム製品は、永続的ではない一時的な形態で、例えばコンピュータプログラム命令をそれ自体の変調によって一時的に表す電磁信号または光信号として存在していてもよい。したがって、変調によって、例えばデータ担体からシステムへのコンピュータプログラム命令の伝送中に、信号によって、コンピュータプログラム命令を一時的に読み取り可能に表すことができる。この場合には、例えば変調されたキャリアによって表される信号が、コンピュータプログラム製品を具体的に具現化したものを表し、そこからコンピュータプログラム製品を取り出すか、またはコンピュータプログラム製品にアクセスすることができる。
【0017】
車両外部のデータバンクにおいて実施される、少なくとも1つの道路区間に関するディジタル道路モデルを作成するための本発明による方法は、少なくとも1つの道路区間に関する車両の少なくとも1つの軌跡を受信するステップを有している。同一の車線および同一の走行方向の同一の道程区間に関する、複数の車両の複数の軌跡が受信される場合には、結果として生じた軌跡が本方法のために使用される前に、それら複数の軌跡を統計的な方法によって、単一の軌跡に統合することができる。適切な統計的な方法には、特に、平均的な軌跡または中央の軌跡を形成することを含み、そのような軌跡は、道程区間に沿った長手方向における対応する位置に関する、走行方向を横切る方向に位置する複数の軌跡の位置値から形成される。
【0018】
さらに、高所の位置から実質的に垂直に下方を向いて撮影された画像に相当する眺望を有し、かつ軌跡が位置する道路区間の少なくとも一部を示す、少なくとも1つの画像が受信される。その種の画像は、例えば航空写真または衛星写真であってもよいし、一般的に、上方からの平面視に相当する画像であってもよい。画像が実質的に垂直に下方を見たものに相当する眺望を有していない場合には、斜め下を向いて撮影された画像を、相応の変換の適用によって、所望の眺望を有する画像に換算することもできる。
【0019】
少なくとも1つの軌跡が、少なくとも1つの画像内の道路の経過と一致するように、少なくとも1つの軌跡が、少なくとも1つの画像に重畳される。軌跡と道路の経過を一致させるために、画像もしくは軌跡の移動または回転の他に、1次元または2次元の伸張または収縮も実施することができる。相互に接しているか、または部分的に重畳している複数の画像にわたり軌跡が延在している場合には、軌跡をそれらの各画像にそれぞれ別個に重畳させ、その後、それら複数の画像を軌跡に基づいて相互に位置合わせすることができ、その結果、重畳が行われた後に、個々の画像から合成された総合画像が得られる。共通の縁部を有していないか、または重畳部分を有していない複数の画像にわたり軌跡が延在している場合には、対応する領域は総合画像内で空白のままであると考えられる。
【0020】
少なくとも1つの画像または総合画像に対して、少なくとも1つの道路区間の走行に関連する特徴を識別する画像解析が実施される。その際、解析は、軌跡を横切る方向において、軌跡の片側または両側に第1の距離にわたる幅を伴って軌跡に沿って延在する画像の領域、すなわち軌跡の周囲の、いわばコリドーまたはエンベロープがあてがわれた画像の領域においてのみ行われる。相互に接しているか、または重畳している画像領域において識別された走行または位置決めに関連する特徴、例えば一貫して延びる路面標示、サイドライン、縁石の縁部またはガードレールを、画像相互のさらに正確な位置合わせのために使用することができる。
【0021】
少なくとも1つの軌跡に基づいて位置合わせされた少なくとも1つの画像内、および軌跡を包囲するコリドー内で識別された、道路区間の走行または位置決めに関連する特徴から、最終的に、ディジタル道路モデルが生成される。ディジタル道路モデルは、種々の形態で存在することができ、例えば道路の縁部、および車両の位置決定に使用することができる他の特徴がベクトル表示のオブジェクトとして相互の相対的な位置と共に記憶されているベクトルモデルとして存在することができる。このために、個々のオブジェクトは、他のオブジェクトまでの距離および角度が特定されている、かつ/または地表における絶対的な位置が既知である、1つまたは複数の参照点を有することができる。
【0022】
Z成分または起伏成分とも称される、ディジタル道路モデルの高度成分を、本方法の1つの態様では、少なくとも1つの軌跡のデータ、トポグラフィデータバンクまたはディジタル高度モデルから補完することができる。
【0023】
本方法の1つの態様によれば、少なくとも1つの軌跡の他に、車両によって検出された走行または位置決めに関連する、道路区間の特徴についての情報が受信される。それらの情報を、例えば、サンプリングを行うセンサ、例えばレーダセンサ、ライダセンサまたは超音波センサなどのセンサまたはカメラの画像として伝送することができる。特徴には、例えば、道路上の標示、視線誘導標、交通標識、または緩慢にしか変化しないもしくは変化のない他の同等の特徴が含まれる。情報または特徴は、各検出場所または検出位置についての情報を含んでいるので、受信した情報または特徴を、受信した画像の位置合わせに使用することができ、またはディジタル道路モデルに引き継がせることができる。走行または位置決めに関連する、道路区間の特徴についての受信した情報は、例えば相互に接している画像において、例えばある特徴が2つの画像内で完全にまたは部分的に識別できる場合には、それらの画像をより正確に相互に位置合わせするために使用することができる。
【0024】
上記で説明した態様の1つの実施例では、付加的に受信する情報が、オブジェクト記述式のベクトルフォーマットで受信される。この実施例では、車両がセンサデータを評価し、また走行に関連する特徴から、それらの特徴のベクトルモデルを生成し、またオプションとして各ベクトルモデルに関して少なくとも1つの参照点を決定する。オブジェクト記述式のベクトルフォーマットで受信した情報を、受信した画像との位置合わせにも使用することができ、またはディジタル道路モデルに引き継がせることができる。例えば、ある道路区間のディジタル道路モデルが既に存在しており、かつ特徴に関する新たな情報をオブジェクト記述式のベクトルフォーマットで受信した場合には、オブジェクト記述式のベクトルフォーマットで表された特徴の位置合わせは、他の表現形式で実現されるであろう計算コストよりも少ない計算コストで行うことができる。その種のフォーマットで存在する複数の特徴についての情報が、それらの相互の相対的な位置と共に受信された場合には、ディジタル道路モデルにおけるベクトルモデルの位置合わせによって、検出時に使用された位置決めの不正確性を補償することができる。
【0025】
方法の1つの態様では、本発明により生成されたディジタル道路モデルが、例えばベクトルモデルとして、その軌跡が受信された車両に伝送される。各車両にセンサと、画像の評価に適したコンピュータとが適切に装備されている場合には、オブジェクト記述式のベクトルフォーマットで存在する、道路区間の特徴についての情報を、車両位置の決定の際の精度を改善するために使用することができる。これは、軌跡の精度を相応に改善する。これによって、本発明により解析されるべき領域をさらに限定することができ、例えば複数車線の道路の1つの車線に限定することができ、また限定された領域において、より正確な解析を行うことができる。
【0026】
本方法および対応するシステムは、衛星写真および航空写真内の道路および道路特徴の識別および抽出を簡略化し、またその際にエラー発生も低下させる。複数の航空写真または衛星写真相互の位置合わせおよび合成も、例えば1つの軌跡が複数の相互に接しているかまたは重畳している画像にわたり延在する場合には簡略化される。この際、例えば三角測量法を用いて車両の位置を決定する際に車両によって使用される点のような、経路上の特異点の使用を省略することができる。車両によって使用される、ランドマークとも称される特異点は、通常の場合、車両が捉える眺望から指定することができ、その一方で、航空写真または衛星写真は通常の場合、ランドマークへの全く別の視点を提供する。ランドマークを表したものを、基本的に、別の眺望に換算できる場合であっても、その際に不正確性が生じる可能性がある。これに対して、車両軌跡自体は、少なくとも部分的に十分に正確であり、通常の場合、非連続性を有しておらず、さらには、既に1つの次元に存在しているので、航空写真または衛星写真の位置合わせはより少ない変換で済む。車両軌跡は差し当たり、航空写真の解析が行われるコリドーの決定のためにのみ使用されるので、最初に必要とされる精度もそれほど高くない。さらに、必要に応じて、同一の道程区間に関する複数の車両軌跡から、一般的な軌跡を求めることができ、その軌跡は続いて、解析用のコリドーを決定するために使用される。軌跡の一部しか、航空写真または衛星写真内で識別可能な道路に一致させることができない場合、例えば航空写真または衛星写真内の道路が所々または部分的に樹木によって覆い隠され、それによって即座に道路として識別できない場合であっても、軌跡を重畳させることによって、より早期に結果が得られる。それにもかかわらず、軌跡の周囲に位置するコリドーの内側で詳細な解析を実施し、部分的に可視である特徴を識別することができる。
【0027】
以下では、図面を参照しながら本発明の態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】航空写真および軌跡の第1の例示的な図を示す。
図2】航空写真内で識別可能な道路に軌跡を一致させた、図1に示した航空写真を示す。
図3】道路の特徴の検索が行われる、軌跡の周囲のコリドーを例示的に示す。
図4図3に示したコリドーの一部を拡大した画像部分を示す。
図5】本発明によるシステムの例示的なブロック図を示す。
図6】本発明によるシステムのモジュールの例示的なブロック図を示す。
図7】本発明による方法の簡略化された例示的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面の各図において、同一または類似の構成要素には、同一の参照番号を付している。
【0030】
図1は、本発明によるシステムによって受信された、航空写真100および車両によって記録された軌跡102の第1の例示的な図を示す。軌跡102は、縮尺を伴わずに図示されており、また見やすくするために、白色の背景に図示されている。システムは、航空写真に写っている道路に軌跡を一致させるために、複数の方法ステップを実施する。このために、例えば衛星ナビゲーションシステムに由来する絶対的な座標を用いて初期位置決めを行うことができ、これによって、軌跡に応じた経過を有する道路の発見が簡略化および高速化される。方法ステップには、特に、少なくとも漸次的な線形伸張演算および線形収縮演算が含まれるが、回転演算も含まれる。画像の上側部分に破線で示されている楕円は、図4に拡大して図示されている画像部分を表している。
【0031】
図2には、航空写真100内で識別可能な道路に軌跡102を一致させた、図1に示した航空写真が図示されている。図1と比較すると、軌跡102が、道路経過に応じるように、2次元の伸張演算によって拡大されたことがはっきりと見て取れる。
【0032】
図3には、道路の特徴の検索が行われる、軌跡102の周囲のコリドー104が例示的に示されている。コリドー104は、軌跡102(図示せず)および道路を包囲する、平行に延びる線によって表されている。
【0033】
図4は、拡大された画像部分における、図3に示したコリドーの一部を示している。軌跡102が道路の車線上に延びていることがはっきりと見て取れる。コリドー104の外側の境界は、軌跡に平行に延びており、また道路の大部分を包囲している。車両の位置決めのために使用することができる道路の特徴、例えば路面標示を識別するための航空写真の評価は、コリドー104の内側についてのみ行われ、これによって、例えば誤った対応付けをより容易に回避することができるので、識別に関する手間が大幅に低減され、また結果の信頼性がより高くなる。
【0034】
図5は、本発明によるシステムの一部500の例示的なブロック図を示す。データバンク502と、少なくとも1つの道路区間に関する車両の少なくとも1つの軌跡を受信し、少なくとも1つの軌跡をデータバンクに記憶するための第1のモジュール504と、少なくとも1つの道路区間の少なくとも一部を示す少なくとも1つの画像を受信するための第2のモジュール506とが、1つまたは複数のバスシステム514を介して、通信を行うように相互に接続されている。1つまたは複数のバスシステム514は、さらに、少なくとも1つの軌跡を少なくとも1つの画像に重畳させるための第3のモジュール508と、軌跡に沿って延在し、かつ軌跡を包囲するコリドー内の少なくとも1つの画像を解析し、コリドー内の道路区間の走行または位置決めに関連する特徴を識別するための第4のモジュール510と、少なくとも1つの軌跡に基づいて位置合わせされた少なくとも1つの画像内、および軌跡を包囲するコリドー内で識別された、走行または位置決めに関連する特徴からディジタル道路モデルを生成するための第5のモジュール512と、を相互に接続するか、またはそれらのモジュール508,510,512を第1のモジュール504、第2のモジュール506および/またはデータバンク502に接続する。
【0035】
図6は、本発明による方法の少なくとも一部の実施に適した、システムのモジュール600の例示的なブロック図を示す。モジュール600は、マイクロプロセッサ602、RAM604、不揮発性メモリ606、1つまたは複数のインタフェース608およびデータバンク610を含んでおり、それらは1つまたは複数のバスシステム612を介して、通信を行うように相互に接続されている。不揮発性メモリ606は、コンピュータプログラム指令を含んでおり、このコンピュータプログラム指令は、作業メモリ604に接続されており、また必要に応じて別のシステムコンポーネントにアクセスするマイクロプロセッサ602によって実行されると、本発明による方法の1つまたは複数の態様の少なくとも一部を実施する。
【0036】
図7は、本発明による方法の1つの態様の簡略化された例示的なフローチャートを示す。ここで、フローチャートは、各モジュールが本方法の対応する部分を実施する複数の機能モジュールを表したものと解することもできる。ステップまたはモジュール702では、少なくとも1つの道路区間に関する車両の少なくとも1つの軌跡が受信され、ステップまたはモジュール706では、高所の位置から実質的に垂直に下方を向いて撮影された画像に相当する眺望を有し、かつ少なくとも1つの道路区間の少なくとも一部を示す、少なくとも1つの画像が受信される。オプションのステップまたはモジュール704では、道路区間の走行に関連する特徴についての情報、および各検出場所または検出位置についての情報が受信され、かつ/または、道路区間の少なくとも一部に関する高度成分が受信されるか、または外部のデータバンクから呼び出される。ステップまたはモジュール708では、データが記憶され、またそのデータは、ステップまたはモジュール710で実施される重畳に関して呼び出されて提供される。軌跡を横切る方向の第1の距離にわたる幅を伴って軌跡に沿って延在し、かつ軌跡を包囲するコリドー内の少なくとも1つの画像の解析、およびコリドー内の道路区間の走行または位置決めに関連する特徴の識別が、ステップまたはモジュール712で行われる。最後に、ステップまたはモジュール712で識別された、走行または位置決めに関連する特徴から、ステップまたはモジュール714において、ディジタル道路モデルが生成され、呼び出し可能に記憶される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7