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特許6786039光学測定システム、光学セル及び光学測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786039
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】光学測定システム、光学セル及び光学測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20201109BHJP
   G01N 21/33 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   G01N21/03 Z
   G01N21/33
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-41119(P2017-41119)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-146366(P2018-146366A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄太
(72)【発明者】
【氏名】森田 金市
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−346798(JP,A)
【文献】 特開2013−145207(JP,A)
【文献】 特開2003−057178(JP,A)
【文献】 特表2015−518157(JP,A)
【文献】 特開2007−256208(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/013616(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0262343(US,A1)
【文献】 特開2014−032064(JP,A)
【文献】 特開2016−173265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/83
G01N 1/00− 1/34
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の光学測定を行う光学測定システムであって、
前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、
第1光と第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、
前記光学セルは、
前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、
前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有し、
前記光学セルは、前記中空部を取り囲む周壁部の一部に、
前記第1光、及び、前記第2光を透過させる両透過部と、
前記第1透過部と、
前記第2透過部とを有し、
前記第1導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第1透過部、前記中空部、及び、前記両透過部を通り、
前記第2導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第2透過部、前記中空部、及び、前記両透過部を通る、光学測定システム。
【請求項2】
試料の光学測定を行う光学測定システムであって、
前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、
第1光と第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、
前記光学セルは、
前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、
前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有し、
前記光学セルは、前記中空部を取り囲む周壁部の一部に、前記中空部と外部とを繋ぐ第1孔及び第2孔を有し、
前記第1導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第1孔、前記中空部、及び、前記第1透過部を通り、
前記第2導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第2孔、前記中空部、及び、前記第2透過部を通る、光学測定システム。
【請求項3】
試料の光学測定を行う光学測定システムであって、
前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、
第1光と第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、
前記光学セルは、
前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、
前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有し、
前記光学セルは、
前記中空部とは異なる第1参照中空部と、
前記中空部とも前記第1参照中空部とも異なる第2参照中空部と、
前記第1透過部とは異なる、前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1参照透過部と、
前記第2透過部とは異なる、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2参照透過部と、
前記第1導光路と光路長が同一である第1参照導光路と、
前記第2導光路と光路長が同一である第2参照導光路とをさらに有し、
前記第1参照導光路は、前記第1参照中空部と前記第1参照透過部を通り、
前記第2参照導光路は、前記第2参照中空部と前記第1参照透過部を通り、
前記第1透過部の中を光が通る距離と、前記第1参照透過部の中を光が通る距離は同一であり、
前記第2透過部の中を光が通る距離と、前記第2参照透過部の中を光が通る距離は同一である、光学測定システム。
【請求項4】
試料の光学測定を行う光学測定システムであって、
前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、
第1光と第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、
前記光学セルは、
前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、
前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有し、
前記光源部と、前記光学セルからの光を検出する光検出部との間に、
光を通過させるか、遮断するかを制御する光シャッターを備える、光学測定システム。
【請求項5】
試料の光学測定を行う光学測定システムであって、
前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、
260nmの波長の光である第1光と280nmの波長の光である第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、
前記光学セルは、
前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、
前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有する、光学測定システム。
【請求項6】
光学測定対象の試料を保持するための中空部を有する光学セルであって、
第1光を第2光よりも透過させる第1透過部及び前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない第1導光路と、
前記第2透過部及び前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない第2導光路と、を備え
前記中空部を取り囲む周壁部の一部に、
前記第1光、及び、前記第2光を透過させる両透過部と、
前記第1透過部と、
前記第2透過部とを有する、光学セル
【請求項7】
光学測定対象の試料を保持するための中空部を有する光学セルであって、
第1光を第2光よりも透過させる第1透過部及び前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない第1導光路と、
前記第2透過部及び前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない第2導光路と、を備え
前記中空部を取り囲む周壁部の一部に、前記中空部と外部とを繋ぐ第1孔及び第2孔を有し、
前記第1導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第1孔、前記中空部、及び、前記第1透過部を通り、
前記第2導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第2孔、前記中空部、及び、前記第2透過部を通る、光学セル。
【請求項8】
光学測定システムにおいて試料の光学測定を行う光学測定方法であって、
前記光学測定システムは、
前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、
260nmの波長の光である第1光と280nmの波長の光である第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部と、
前記光学セルからの光を検出する光検出部と、
前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、
前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを備え、
前記光検出部が、前記第1導光路を通る光と前記第2導光路を通る光とを別個に検出する検出ステップを含む、光学測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の光学測定を行う光学測定システム、光学セル及び光学測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ライフサイエンス分野において、紫外線(以下、UV光とも言う)を用いた光分析の要請は大きい。UV光を用いた光分析法としては、吸光度測定法、光(レーザ)誘起蛍光測定法などがある。
【0003】
例えば、UV光を用いた吸光度測定により、核酸の純度を測定することも可能である。
DNA、RNA,オリゴヌクレオチド等の核酸は、260nm付近のUV光をよく吸収する。これは、構成する4種類の各塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)の最大吸収波長が、250〜270nmの波長域内にあることに由来する。また、タンパク質は、波長280nm付近のUV光をよく吸収する。これは、タンパク質中のアミノ酸のうち、トリプトファン・チロシン・フェニルアラニンの芳香族のベンゼン環がこの付近に吸収ピークをもつことに由来する。
【0004】
そのため、260nmと280nmの吸光度の比(A260/A280)を、核酸試料の純度の指標とすることができる。核酸試料にタンパク質が混入している場合は、280nmの光もよく吸収されるため、A260/A280の値が低くなる。A260/A280の値の判断基準としては、DNAの場合は1.8以上、RNAの場合は2.0以上であれば純度が高いと判断する。
【0005】
通常、核酸やタンパク質等は、試料が微量であることが多い。そこで、体積がマイクロリットルオーダーの微量試料(液体)の光学測定が出来るものとして、表面張力を利用して円筒状に保持した試料を光測定する方法・装置が知られている(特許文献1及び2)。このような装置を用いることにより、試料を光学セルに保持することなく、紫外線を用いた光学測定を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4982386号公報
【特許文献2】特開2009−530642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1又は2に開示されている技術を用いて光測定を行う場合、測定の都度ピペットを用いて装置の測定部に試料を供給する必要がある。すなわち、測定試料を事前に準備しておくことができない。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、核酸やタンパク質等の光学測定に適した光学測定システム等を新たに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、試料の光学測定を行う光学測定システムであって、前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、第1光と第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、前記光学セルは、前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有し、前記光学セルは、前記中空部を取り囲む周壁部の一部に、前記第1光、及び、前記第2光を透過させる両透過部と、前記第1透過部と、前記第2透過部とを有し、前記第1導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第1透過部、前記中空部、及び、前記両透過部を通り、前記第2導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第2透過部、前記中空部、及び、前記両透過部を通る、光学測定システムである。
【0010】
本発明の第2の観点は、試料の光学測定を行う光学測定システムであって、前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、第1光と第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、前記光学セルは、 前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有し、前記光学セルは、前記中空部を取り囲む周壁部の一部に、前記中空部と外部とを繋ぐ第1孔及び第2孔を有し、前記第1導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第1孔、前記中空部、及び、前記第1透過部を通り、前記第2導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第2孔、前記中空部、及び、前記第2透過部を通る、光学測定システムである。
【0011】
本発明の第3の観点は、試料の光学測定を行う光学測定システムであって、前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、第1光と第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、前記光学セルは、前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有し、前記光学セルは、前記中空部とは異なる第1参照中空部と、前記中空部とも前記第1参照中空部とも異なる第2参照中空部と、前記第1透過部とは異なる、前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1参照透過部と、前記第2透過部とは異なる、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2参照透過部と、前記第1導光路と光路長が同一である第1参照導光路と、前記第2導光路と光路長が同一である第2参照導光路とをさらに有し、前記第1参照導光路は、前記第1参照中空部と前記第1参照透過部を通り、前記第2参照導光路は、前記第2参照中空部と前記第1参照透過部を通り、前記第1透過部の中を光が通る距離と、前記第1参照透過部の中を光が通る距離は同一であり、前記第2透過部の中を光が通る距離と、前記第2参照透過部の中を光が通る距離は同一である、光学測定システムである。
【0012】
本発明の第4の観点は、試料の光学測定を行う光学測定システムであって、前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、第1光と第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、前記光学セルは、前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有し、前記光源部と、前記光学セルからの光を検出する光検出部との間に、光を通過させるか、遮断するかを制御する光シャッターを備える、光学測定システムである。
【0013】
本発明の第5の観点は、試料の光学測定を行う光学測定システムであって、前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、260nmの波長の光である第1光と280nmの波長の光である第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部とを備え、前記光学セルは、前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを有する、光学測定システムである。
【0014】
本発明の第6の観点は、光学測定対象の試料を保持するための中空部を有する光学セルであって、第1光を第2光よりも透過させる第1透過部及び前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない第1導光路と、前記第2透過部及び前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない第2導光路と、を備え前記中空部を取り囲む周壁部の一部に、前記第1光、及び、前記第2光を透過させる両透過部と、前記第1透過部と、前記第2透過部とを有する、光学セルである。
【0015】
本発明の第7の観点は、光学測定対象の試料を保持するための中空部を有する光学セルであって、第1光を第2光よりも透過させる第1透過部及び前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない第1導光路と、前記第2波長透過部及び前記中空部を通り、前記第1波長透過部を通らない第2導光路とを備え、前記中空部を取り囲む周壁部の一部に、前記中空部と外部とを繋ぐ第1孔及び第2孔を有し、前記第1導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第1孔、前記中空部、及び、前記第1透過部を通り、前記第2導光路は、前記光源部の方向から順に、前記第2孔、前記中空部、及び、前記第2透過部を通る、光学セルである。
【0016】
本発明の第8の観点は、光学測定システムにおいて試料の光学測定を行う光学測定方法であって、前記光学測定システムは、前記試料を保持するための中空部を有する光学セルと、260nmの波長の光である第1光と280nmの波長の光である第2光を含むブロード光を前記光学セルに照射する光源部と、前記光学セルからの光を検出する光検出部と、前記第1光を前記第2光よりも透過させる第1透過部、及び、前記中空部を通り、前記第2光を前記第1光よりも透過させる第2透過部を通らない、第1導光路と、前記第1導光路とは別に、前記第2透過部、及び、前記中空部を通り、前記第1透過部を通らない、第2導光路とを備え、前記光検出部が、前記第1導光路を通る光と前記第2導光路を通る光とを別個に検出する検出ステップを含む、光学測定方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の各観点によれば、同一光源からの光を、同一の光学セル中の試料に照射し、二波長における光学測定結果を得ることが可能になる。よって、例えば、DNA純度測定など、少量の試料について二波長での光学測定を必要とする場合に有用である。
【0018】
また、試料は、光学測定装置自体に注入するのではなく、光学セルの中空部に注入するため、光学セルを複数用意しておけば、複数の試料の注入作業をまとめて行うことができる。これにより、光学測定の度に注入操作を必要する場合よりも、ユーザーの作業負担を軽減させることが可能になる。
【0019】
また、特許文献1又は2に記載の光測定装置では、試料の露出面積が広いため、試料の蒸発により濃度が変動するおそれがある。また、光学測定中に試料を通過する通過光の光路が絶えず変化し、安定した光学測定が困難となる可能性がある。それに対して、本発明では、光学セルの中空部の中に試料を注入するため、試料の量が少なくても蒸発の影響は殆どなく、安定な光学測定が可能になる。
【0020】
また、特許文献1又は2に記載の光測定装置において複数回の測定を実施する場合には、測定が終了する度に、測定部の試料を拭き取る必要がある。そのため、2回目以降の測定は、前回の試料の混入による濃度変動や試料汚染のおそれがある。それに対して、本発明では、光学セルを入れ替えれば良いため、試料の濃度変動及び汚染の防止が容易である。
【0021】
本発明の第及び第の観点によれば、光源部及び光検出部の設定を変更せずに、異なる波長透過部を有する光学セルに入れ替えるだけで、測定波長を変更することが可能になる。また、光学セル自体に第1波長透過部及び第2波長透過部を設けたため、光学測定システムを構成する光学測定装置には回折格子等の分光機能又は波長選択性を有する光学素子を必要としない。よって、光学測定装置のコンパクト化も可能になる。
【0022】
また、本発明の第の観点を、第2の観点と比較すると、両透過部が不要になる。よって、第1導光路及び第2導光路において光が試料中を通る距離を長くすること、及び/又は、光学セルのコンパクト化が可能になる。
【0023】
本発明の第の観点によれば、試料を注入した光学セルをセットした状態において、二波長測定だけでなく、ブランク測定までも可能になる。
【0024】
本発明の第の観点によれば、第1導光路と第2導光路への光源からの光の入射を制御することが可能になる。
【0025】
本発明の第の観点によれば、DNA純度の測定に適した光学測定システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の光学測定システム(実施例1)の構成を示す図である。
図2】本発明の光学測定システム(実施例2)の構成を示す図である。
図3】本発明の光学測定システム(実施例3)の構成を示す図である。
図4】本発明の光学測定システム(実施例4)の構成を示す図である。
図5】光測定ユニットを2組有する光学測定システムの構成を示す図である。
図6】V字状の流路を有する光測定用マイクロチップの光源側の側面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の光学測定システムの実施例について述べる。ここでは、DNA及びタンパク質の定量のために、DNA及びタンパク質を含む試料に、260nm及び280nmの波長のUV光(本願請求項に記載の「第1光」及び「第2光」の一例)を照射して吸光度測定を行う例を示す。
【実施例1】
【0028】
図1は、光学測定装置と光測定用マイクロチップからなる本発明の光学測定システム1の構成の一例を示す図である。この光学測定システム1を構成する光測定用マイクロチップ3(本願請求項に記載の「光学セル」の一例)は、内部に測定試料(本願請求項に記載の「試料」の一例)を保持可能な流路5(本願請求項に記載の「中空部」の一例)を有する。この流路5は、測定試料が導入される導入口7(本願請求項に記載の「第1孔」の一例)、測定試料が排出される排出口9(本願請求項に記載の「第2孔」の一例)を有する。マイクロチップ本体11は、例えばPDMS等のシリコーン樹脂からなる。マイクロチップ本体11を構成するシリコーン樹脂は、光が流路5を通過する際に生じる迷光を吸収可能な顔料を含有する。顔料としては、例えば、カーボンブラックが用いられる。流路5の底面側には、例えば、UV(紫外線)透過性シリコーン樹脂からなるUV透過窓部13(本願請求項に記載の「両透過部」の一例)が配置される。UV透過性シリコーン樹脂としては、例えば、PDMSが用いられる。
【0029】
光測定用マイクロチップ3の流路5内に保持される測定試料に、波長260nm及び280nmの紫外線を照射する場合、流路5の導入口7に260nm又は280nmの紫外線の一方を、流路5の排出口9に上記紫外線の他方を照射する。導入口7、排出口9に導光される波長260nm、280nmの各紫外線は、流路5内に配置される測定試料を通過して、UV透過窓部13から外部に放出される。すなわち、光測定用マイクロチップ3の導入口7、排出口9は、流路5を介してUV透過性シリコーン樹脂部の一部と対向するように配置される。
【0030】
波長260nm、280nmの紫外線は、例えば以下のような構成を用いて、光測定用マイクロチップ3の導入口7、排出口9へ照射される。図1に示すように、光源(本願請求項に記載の「光源部」の一例)からUV光を含む光を放出させる。光源としては、例えば、キセノンランプ、Deep UVランプ等が用いられる。以下、UV光を含む光を放出する光源として上記したようなランプを使用する例を示し、当該光源をUVランプ15と称する。
【0031】
UVランプ15と、光測定用マイクロチップ3の導入口7、排出口9との間には、UVランプ15から放出されるUV光17(本願請求項に記載の「ブロード光」の一例)を含む光から、波長260nm光、280nm光を選択的に透過するための波長選択部材18が配置される。波長選択部材は、遮光性の基板中に、第1波長(260nm)光19(本願請求項に記載の「第1光」の一例)を選択的に透過する光学部材からなる第1波長(260nm)選択部21(本願請求項に記載の「第1透過部」の一例)と、第2波長(280nm)光23(本願請求項に記載の「第2光」の一例)を選択的に透過する光学部材からなる第2波長(260nm)選択部25(本願請求項に記載の「第2透過部」の一例)が設けられている。
【0032】
実施例1においては、波長選択部材18は、UVランプ15からの光が第1波長選択部21に入射することより選択的に透過された第1波長(260nm)光19が光測定用マイクロチップ3の導入口7に入射するとともに、UVランプ15からの光が第2波長選択部25に入射することより選択的に透過された第2波長(280nm)光23が光測定用マイクロチップ3の排出口9に入射するような位置に配置される。
【0033】
また、UVランプ15と波長選択部材18との間には、UVランプ15からの光が波長選択部材18の第1波長選択部21へ入射するのを遮光する遮光部材である第1シャッター27(本願請求項に記載の「光シャッター」の一例)が配置される。同様に、UVランプ15からの光が波長選択部材18の第2波長選択部25へ入射するのを遮光する遮光部材である第2シャッター29(本願請求項に記載の「光シャッター」の一例)が配置される。第1シャッター27、第2シャッター29とも、図示を省略したシャッター駆動機構により、図1の矢印(A)方向に移動して遮光の有無を切替可能となっている。
【0034】
波長選択部材18の第1波長選択部21、第2波長選択部25以外の部分を構成する遮光性の基板は、UVランプ15からの光を遮光する機能を奏すればよいが、当該基板における、UVランプ15からの光反射が小さいことが望ましい。よって、例えば、基板は、UVランプ15からの光を吸収する特性がある顔料を含有したシリコーン樹脂で構成される。顔料としては、例えば、カーボンブラックが採用される。
【0035】
なお、光測定用マイクロチップ3において、マイクロチップ本体11を構成する顔料含有シリコーン樹脂とUV透過窓部13を構成するUV(紫外線)透過性シリコーン樹脂とは、同じ材質、または、ほぼ同一の屈折率の材質を用いることが好ましい。これにより、マイクロチップ本体11とUV透過窓部13との界面では、屈折率差がほぼ0となる。そのため、両樹脂の界面での迷光等の反射・散乱を抑制することが可能となる。
【0036】
UV透過窓部13を透過した光は、集光レンズ31等の集光手段により集光され、測定センサ部33(本願請求項に記載の「光検出部」の一例)に導かれる。なお、UV透過窓部13を透過する紫外線の波長が260nmおよび280nmである場合、集光レンズ31を使用すると波長差に伴う色収差が生じ、光軸上の結像位置が相違する。しかし、吸光度測定の場合、測定光の光強度を計測するので、測定光が測定センサ部33の受光面で必ずしも結像している必要はない。また、両者の波長差は20nmと小さいので色収差自体も小さい。よって、図1のような光学系において、測定センサ部33における波長260nm光、および波長280nm光の強度測定に及ぼす色収差の影響は小さい。
【0037】
続いて、液体試薬をDNA含有溶液とし、図1に示す光学測定システムを用いて、DNA純度を測定する方法の一例を示す。まず、流路5にDNA含有溶液が注入されている光測定用マイクロチップ3を用意する(ステップ1)。次に、このマイクロチップ3を光測定装置の測定位置に設置する(ステップ2)。光測定装置の光学系は、マイクロチップ3が所定の位置に設置されると、波長選択部材18を通過する第1波長(=260nm)光19がマイクロチップ3の導入口7に入射し、当該波長選択部材18を通過する第2波長(=280nm)光23がマイクロチップ3の導入口7に入射し、マイクロチップ3のUV透過窓部13を通過した波長260nm光、280nm光が集光レンズ31によって、測定センサ部33の受光部に導光されるように予めセッティングされている。
【0038】
UVランプ15と波長選択部材18の第1波長選択部21との間、およびUVランプ15と波長選択部材18の第2波長選択部25との間に、図示を省略したシャッター駆動機構により第1シャッター27、第2シャッター29を挿入する(ステップ3)。UVランプ15に図示を省略した電源より電力を供給して、UVランプ15を点灯する(ステップ4)。シャッター駆動機構により、UVランプ15と波長選択部材18の第1波長選択部21との間に挿入していた遮光部材である第1シャッター27を離脱させる(ステップ5)。この結果、マイクロチップ3内の液体試料には第1波長19である波長260nm光が照射され、UV透過窓部13からは液体試料に吸収されて減光した波長260nm光が放出される。ステップ5において、UV透過窓部13から放出される波長260nm光が集光手段である集光レンズ31に入射し、当該波長260nmは集光レンズ31により集光されて測定センサ部33に入射するので、測定センサ部33を用いて波長260nm光の強度を測定する(ステップ6)。
【0039】
次に、シャッター駆動機構により、UVランプ15と波長選択部材18の第1波長選択部21との間に第1シャッター27を再び挿入する(ステップ7)。次いで、シャッター駆動機構により、UVランプ15と波長選択部材18の第2波長選択部25との間に挿入していた第2シャッター29を離脱させる(ステップ8)。この結果、マイクロチップ3内の液体試料には第2波長23である波長280nm光が照射され、UV透過窓部13からは液体試料に吸収されて減光した波長280nm光が放出される。ステップ8において、UV透過窓部13から放出される波長280nm光が集光手段である集光レンズ31に入射し、当該波長280nmは集光レンズ31により集光されて測定センサ部33に入射するので、測定センサ部33を用いて波長280nm光の強度を測定する(ステップ9)。ステップ6で測定した波長260nm光の透過光強度(以下、A260と称する)とステップ8で測定した波長280nm光の透過光強度(以下、A280と称する)を用いて、式(1)によりDNA純度を測定する(ステップ10)。
【0040】
【数1】
【0041】
DNAは、260nm付近のUV光をよく吸収する。また、タンパク質は、波長280nm付近のUV光をよく吸収する。そのため、A260とA280の比を、DNA純度の指標とすることができる。DNA試料にタンパク質が混入している場合は、280nmもよく吸収されるため、A260/A280の値が低くなる。一般に、A260/A280の値が1.8以上であれば、タンパク質の混入が少なく、DNA純度が高いと判断されている。
【0042】
また、UVランプ15に電力を供給する電源の動作、UVランプ15と第1波長選択部21との間、およびUVランプ15と第2波長選択部25との間に第1シャッター27、第2シャッター29を挿入・離脱されるシャッター駆動機構の動作、測定センサ部33にて測定される透過光強度のデータ処理等は、例えば、図示を省略した制御部により行うことができる。
【0043】
なお、実際には、ステップ1からステップ10を行う前に、マイクロチップ3内の流路5は洗浄されている。そして、流路5を洗浄したマイクロチップ3に、DNA混入する前の溶媒(以下、参照用液体とも言う)を注入し、ステップ2からステップ9と同様の手順により、参照用液体を通過した波長260nm光、波長280nm光の透過光強度、すなわちブランク光強度の測定が事前に行われている。そして、ここで得られたブランク光強度は、ステップ6で測定した波長260nm光の透過光強度、及び、ステップ8で測定した波長280nm光の透過光強度の補正に用いる。
【0044】
本発明の光測定装置においては、液体試料を光測定用マイクロチップ3の流路5内に保持する方式であるので、測定前に事前に測定試料を準備しておくことができる。すなわち、流路5内に液体試料を注入したマイクロチップ3を事前に準備可能であり、必要に応じて、複数のマイクロチップを用意することも可能となる。そのため、測定をする者の負担を軽減可能である。
【0045】
また、光測定用マイクロチップ3の流路5内に測定試料を注入する方式であるので、液体試料の量が少なくても蒸発の影響は殆どない。よって、安定な光学測定を行うことが可能となる。
【0046】
複数回の光学測定を行う場合、流路5に測定試料を注入済みの複数のマイクロチップ3を用意すればよく、従来技術のように、測定の都度、測定部を洗浄する必要はない。そのため、各光学測定において、前回の測定の影響を受けることはなく、信頼性の高い光学測定を実施することが可能となる。
【実施例2】
【0047】
図2は、光学測定装置と光測定用マイクロチップからなる本発明の光学測定システム40の構成の一例を示す図である。図2(a)は、UVランプ15、流路5及び測定センサ部33を通る光学測定システム40の断面図であり、図2(b)は、UVランプ15側から光測定用マイクロチップ41を見た図である。実施例2は、光測定用マイクロチップ41が波長選択部材を含むという点で、実施例1と相違する。以下は、その相違点について記載する。
【0048】
図2(a)に示すように、実施例2のマイクロチップ本体11は、実施例1と同様、例えばPDMS等のシリコーン樹脂からなり、迷光を吸収可能な顔料を含有する。そして、流路の底面側には、例えば、UV(紫外線)透過性シリコーン樹脂からなるUV透過窓部13が配置される。また、流路の底面側と対向する上面側には、第1波長(260nm)選択部43と、第2波長(280nm)選択部45が設けられている。第1波長選択部43および第2波長選択部45の一方の面はUVランプ15に対向しており、他方の面は流路5の壁面の一部を構成している。
【0049】
なお、シャッター駆動機構は、UVランプ15から第1波長(260nm)選択部43への光の入射を許容する位置又は遮光する位置に、第1シャッターを駆動する際、いずれかの位置においても、UVランプ15から放出される光がマイクロチップ41の導入口7に入射しないように、当該第1シャッター27を駆動する。同様に、シャッター駆動機構は、UVランプ15から第2波長(280nm)選択部45への光の入射を許容する位置又は遮光する位置に、第2シャッター29を駆動する際、いずれかの位置においても、UVランプ15から放出される光がマイクロチップ41の排出口9に入射しないように、当該第2シャッター29を駆動する。
【0050】
実施例2の光学測定システム40によれば、実施例1の光学測定システム1と同等の効果を得られるとともに、マイクロチップ41と波長選択部材が一体化した構造を採用しているので、装置をコンパクトに構成することが可能となる。また、異なる波長選択部材を有するマイクロチップに変更すれば、光測定装置を変更することなく、異なる波長の測定が可能になる。従来の光測定装置を用いた光測定では、異なる波長の測定を行う場合には、マイクロチップではなく、光源や光検出器などの光測定装置の設定を変更する必要があった。
【実施例3】
【0051】
図3は、光学測定装置と光測定用マイクロチップからなる本発明の光学測定システム50の構成の一例を示す図である。図3(a)は、UVランプ15、流路5及び測定センサ部33を通る光学測定システム50の断面図であり、図3(b)は、UVランプ15側から光測定用マイクロチップ51を見た図である。実施例3は、実施例2の変形例であり、第1波長選択部及び第2波長選択部を流路の底面の一部に配置し、UV透過性窓部13と兼用させた点で実施例2と相違する。以下、その相違点について記載する。
【0052】
図3(a)に示すように、実施例3のマイクロチップ本体11は、実施例1と同様、例えばPDMS等のシリコーン樹脂からなり、迷光を吸収可能な顔料を含有する。そして、流路5の底面であって、導入口7と対向する位置に、第1波長(260nm)選択部53が配置される。また、流路5の底面であって、排出口9と対向する位置に、第2波長(280nm)選択部55が配置される。
【0053】
第1波長選択部53の上面及び第2波長選択部55の上面は、マイクロチップ51内の流路5の底面の一部を構成する。また、第1波長選択部53の下面及び第2波長選択部55の下面は、第1波長選択部53又は第2波長選択部55を透過する光の出射面となる。すなわち、第1波長選択部53及び第2波長選択部55の他方の面は、構成例2におけるUV透過窓部13の光出射面と同等の機能を奏する。よって、実施例3においては、実施例1及び2で用いたUV透過窓13部を必要としない。
【0054】
また、シャッター駆動機構は、UVランプ15からの光を、マイクロチップ51の導入口7へ入射させるように、または、導入口7に入射するのを遮光するように、第1シャッター27を駆動する。同様に、シャッター駆動機構は、UVランプ15からの光を、マイクロチップ51の排出口9へ入射させるように、または、排出口9に入射するのを遮光するように、第2シャッター29を駆動する。
【0055】
実施例3の光学測定システム50によれば、実施例2の光学測定システム40と同様の効果を得られるとともに、UV透過窓部13を省略することが可能となるので、マイクロチップ51をさらにコンパクトに構成することが可能となる。また、光が試料中を通る距離を、UV透過窓部を省略できる分だけ長く構成にしても良い。
【実施例4】
【0056】
図4は、光学測定装置と光測定用マイクロチップ61からなる本発明の光学測定システム60の構成の一例を示す図である。図4(a)は、UVランプ15、流路63及び測定センサ部33を通る光学測定システム60の断面図であり、図4(b)は、UVランプ15から光測定用マイクロチップ61を見た図である。実施例4は、実施例3の変形例であり、流路内に保持される液体試料を波長260nm、280nmの紫外線で光測定可能であるのみならず、参照データを取得可能とした点で実施例3と相違する。以下、相違点について記載する。
【0057】
図4(a)に示すように、実施例4の光測定用マイクロチップ61は、流路63の外側に参照データ取得用の第1の参照光用空洞65(本願請求項に記載の「第1参照中空部」の一例)及び第2の参照光用空洞67(本願請求項に記載の「第2参照中空部」の一例)が設けられている。また、第1の参照光用空洞65及び第2の参照光用空洞67の底面には、第1波長(260nm)参照選択部69(本願請求項に記載の「第1参照透過部」の一例)、第2波長(280nm)参照選択部71(本願請求項に記載の「第2参照透過部」の一例)が配置される。第1波長参照選択部69及び第2波長参照選択部材71は、それぞれ、第1波長選択部79及び第2波長選択部81と同一素材からなる。また、部材中を光が通る距離を一致させるため、第1波長参照選択部材69及び第2波長参照選択部材71は、それぞれ、第1波長選択部79及び第2波長選択部81と同じ厚みである。
【0058】
また、実施例4は、マイクロチップ61内の流路63が、1つの導入口73から分岐して2つの排出口(第1の排出口75、第2の排出口77)と繋がるように構成されている。なお、流路については、実施例1乃至3のように、1つの導入口と1つの排出口のみが流路を介して連通するような構成であってもよい。
【0059】
次に、液体試薬をDNA含有溶液とし、図4に示す光測定装置を用いて、DNA純度を測定する方法の一例を示す。まず、流路63にDNA含有溶液が注入されていて、第1の参照光用空洞65と第1波長参照選択部69とにより構成される第1ウエル(本願請求項に記載の「第1参照導光路」の一例)、及び、第2の参照光用空洞67と第2波長参照選択部71とにより構成される第2ウエル(本願請求項に記載の「第2参照導光路」の一例)に、DNA混入する前の溶媒(以下、参照用液体ともいう)が注入されている光測定用マイクロチップ61を用意する(ステップ1)。次に、このマイクロチップ61を光測定装置の測定位置に設置する(ステップ2)。光測定装置の光学系は、マイクロチップ61が所定の位置に設置されると、マイクロチップ61の第1の排出口75に入射し第1波長選択部79を通過する第1波長測定光19、第1の参照用空洞65に入射し第1波長参照選択部69を通過する第1波長参照光、マイクロチップ61の第2の排出口77に入射し第2波長選択部81を通過する第2波長測定光23、第2の参照用空洞67に入射し第2波長参照選択部71を通過する第2波長参照光が、集光レンズ31によって、測定センサ部33の受光部に導光されるように予めセッティングされている。
【0060】
続いて、図示を省略したシャッター駆動機構により、第1シャッター27をUVランプ15と光測定用マイクロチップ61との間の空間であって、UVランプ15からの光が第1の参照用空洞65に入射するのを遮光するような位置に挿入する(ステップ3)。次に、シャッター駆動機構により、第2シャッター29をUVランプ15と光測定用マイクロチップ61との間の空間であって、UVランプ15からの光が第2の参照用空洞67、第2の排出口77、導入口73及び第1の排出口75に入射するのを遮光するような位置に挿入する(ステップ4)。UVランプ15に図示を省略した電源より電力を供給して、UVランプ15を点灯する(ステップ5)。シャッター駆動機構により、UVランプ15からの光が第1の参照用空洞65に入射するのを遮光する位置に挿入していた第1シャッター27を離脱させる(ステップ6)。この結果、第1の参照用空洞65にはUVランプ15からの光が照射され、この光は参照用液体を透過し、第1波長参照選択部69から第1波長である第1波長参照光が放出される。ステップ6において、第1波長参照選択部69から放出される第1波長参照光が集光手段である集光レンズ31に入射し、第1波長参照光は集光レンズ31により集光されて測定センサ部33に入射するので、測定センサ部33を用いて第1波長参照光の強度(参照用液体を透過した透過光強度、すなわち、ブランク光強度)を測定する(ステップ7)。
【0061】
次に、シャッター駆動機構により、UVランプ15と光測定用マイクロチップ61との間の空間であって、UVランプ15からの光が第1の参照光用空洞65に入射するのを遮光するような位置に第1のシャッター27を挿入する(ステップ8)。次いで、シャッター駆動機構により、UVランプ15と光測定用マイクロチップ61との間の空間であって、UVランプ15からの光が導入口73、第2の排出口77及び第2の参照光用空洞67に入射するのを遮光するような位置に位置決めする(ステップ9)。この結果、UVランプ15からの光が、第1排出口75から入射し、流路63内の液体試料に吸収されて減光して第1波長選択部79を透過し、当該第1波長選択部79から液体試料により一部吸収されて減光した第1波長測定光19(波長260nm光)が放出される。ステップ9において、第1波長選択部79から放出される第1波長測定光19が集光レンズ31に入射し、第1波長測定光19は集光レンズ31により集光されて測定センサ部33に入射するので、測定センサ部33を用いて第1波長測定光19の強度(測定試料を透過した透過光強度)を測定する(ステップ10)。
【0062】
次に、シャッター駆動機構により、UVランプ15と光測定用マイクロチップ61との間の空間であって、UVランプ15からの光が第1の参照光用空洞65、第1排出口75及び導入口73に入射するのを遮光するような位置に第1のシャッター27を位置決めする(ステップ11)。次いで、シャッター駆動機構により、UVランプ15と光測定用マイクロチップ61との間の空間であって、UVランプ15からの光が第2の参照光用空洞67に入射するのを遮光するような位置に位置決めする(ステップ12)。この結果、UVランプ15からの光が、第2排出口77から入射し、流路63内の液体試料に吸収されて減光して第2波長選択部81を透過し、当該第2波長選択部81から液体試料により一部吸収されて減光した第2波長測定光23(波長280nm光)が放出される。ステップ12において、第2波長選択部81から放出される第2波長測定光23が集光レンズ31に入射し、第2波長測定光23は集光レンズ31により集光されて測定センサ部33に入射するので、測定センサ部33を用いて第2波長測定光23の強度(測定試料と透過した透過光強度)を測定する(ステップ13)。
【0063】
次に、シャッター駆動機構により、UVランプ15と光測定用マイクロチップ61との間の空間であって、UVランプ15からの光が第1の参照光用空洞65、第1排出口75、導入口73及び第2排出口77に入射するのを遮光するような位置に第1のシャッター27を位置決めする(ステップ14)。次いでシャッター駆動機構により、UVランプ15からの光が第2の参照用空洞67に入射するのを遮光する位置に挿入していた第2シャッター29を離脱させる(ステップ15)。この結果、第2の参照用空洞67にはUVランプ15からの光が照射され、この光は参照用液体を透過し、第2波長参照選択部71から第2波長である第2波長参照光が放出される。ステップ15において、第2波長参照選択部71から放出される第2波長参照光が集光手段である集光レンズ31に入射し、第2波長参照光は集光レンズ31により集光されて測定センサ部33に入射するので、測定センサ部33を用いて第2波長参照光の強度(参照用液体を透過した透過光強度、すなわち、ブランク光強度)を測定する(ステップ16)。
【0064】
ステップ7で測定した第1波長参照光強度と、ステップ10で測定した第1波長測定光強度のデータから、第1波長測定光強度の値を補正する(ステップ17)。また、ステップ16で測定した第2波長参照光強度と、ステップ13で測定した第2波長測定光強度のデータから、第2波長測定光強度の値を補正する(ステップ18)。そして、ステップ17で補正した第1波長測定光強度(以下、補正A260と称する)とステップ18で補正した第2波長測定光強度(以下、補正A280と称する)を用いて、0043段落の式(1)によりDNA純度を測定する(ステップ19)。
【0065】
また、上記したUVランプ15に電力を供給する電源の動作、UVランプ15と第1波長選択部79との間、およびUVランプ15と第2波長選択部81との間に第1シャッター27、第2シャッター29を挿入・離脱されるシャッター駆動機構の動作、測定センサ部33にて測定される透過光強度のデータ処理等は、例えば、図示を省略した制御部により行うことができる。
【0066】
実施例4の光学測定システム60によれば、実施例1,2,3の光測定装置と同等の効果を得られるとともに、使用する光測定用マイクロチップ61に参照用空洞を設けているので、従来のように、ブランク光強度を測定後、光測定装置から光測定用マイクロチップを取り外し、次に流路内に液体試薬を注入した光測定用マイクロチップを光測定装置にセットして、液体試薬に対する波長260nm光、波長280nm光の透過光強度を測定するという手順を取る必要はない。すなわち、1回、光測定用マイクロチップ61を光測定装置にセットしてシャッターを駆動するだけで、ブランク光強度測定、液体試薬に対する波長260nm光、波長280nm光の透過光強度の測定を実施することが可能となる。
【0067】
なお、本発明の光測定装置は実施例1〜4に限るものではない。上記実施例では、波長260nm光、波長280nm光を1つの集光手段(集光レンズ)、1つの測定センサ部で光測定しているが、例えば、図5に示すように、波長260nm光測定用、波長280nm光測定用に、集光レンズ(91、93)および測定センサ部(95、97)からなる光測定ユニット(99、101)を2組用意してもよい。
【0068】
また、実施例1〜4においては、例えば、図2(b)、図3(b)、図4(b)に示すように、マイクロチップの導入口と排出口とを連結する流路は、マイクロチップの導入口および排出口が設けられている側から見ると直線状であるが、これに限るものではない。例えば、図6に示すように、マイクロチップ103に1つの導入口105と2つの排出口(第1排出口107及び第2排出口109)を設け、流路111がマイクロチップ103の導入口105、第1排出口107及び第2排出口109が設けられている側から見るとV字状となるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1・・・光学測定システム、3・・・光測定用マイクロチップ、5・・・流路、7・・・導入口、9・・・排出口、11・・・マイクロチップ本体、13・・・UV透過窓部、15・・・UVランプ、17・・・UV光、18・・・波長選択部材、19・・・第1波長(260nm)光、21・・・第1波長(260nm)選択部、23・・・第2波長(280nm)光、25・・・第2波長(260nm)選択部、27・・・第1シャッター、29・・・第2シャッター、31・・・集光レンズ、33・・・測定センサ部、40・・・光学測定システム、41・・・光測定用マイクロチップ、43・・・第1波長(260nm)選択部、45・・・第2波長(260nm)選択部、50・・・光学測定システム、51・・・光測定用マイクロチップ、53・・・第1波長(260nm)選択部、55・・・第2波長(260nm)選択部、60・・・光学測定システム、61・・・光測定用マイクロチップ、63・・・流路、65・・・第1の参照光用空洞、67・・・第2の参照光用空洞、69・・・第1波長(260nm)参照選択部、71・・・第2波長(280nm)参照選択部、73・・・導入口、75・・・第1の排出口、77・・・第2の排出口、79・・・第1波長選択部、81・・・第2波長選択部、91・・・集光レンズ、93・・・集光レンズ、95・・・測定センサ、97・・・測定センサ、99・・・光測定ユニット、101・・・光測定ユニット、103・・・マイクロチップ、105・・・導入口、107・・・第1排出口、109・・・第2排出口、111・・・流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6