特許第6786044号(P6786044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786044
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ホーム柵構成用の可動バーユニット
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20201109BHJP
   E01F 1/00 20060101ALI20201109BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20201109BHJP
   E05F 15/40 20150101ALI20201109BHJP
【FI】
   B61B1/02
   E01F1/00
   E05F15/643
   E05F15/40
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-15242(P2017-15242)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-122664(P2018-122664A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391049150
【氏名又は名称】コトヒラ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津端 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小山田 美和
(72)【発明者】
【氏名】有馬 徹
(72)【発明者】
【氏名】神山 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 信
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅之
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−210246(JP,A)
【文献】 特開2016−106058(JP,A)
【文献】 特開2005−263199(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0101101(KR,A)
【文献】 特開2017−1409(JP,A)
【文献】 特開平7−329771(JP,A)
【文献】 実開平5−96373(JP,U)
【文献】 特開昭56−135366(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/058940(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
E01F 1/00
E05F 15/40
E05F 15/643
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長い直方体状をなす筐体と、該筐体の内部にその長手方向に沿って往復移動可能に収納された可動バーと、該可動バーを軸方向へ移動させるための駆動手段と、を備え、
前記筐体の側壁には、前記可動バーが突出したり後退したりすることが可能な開口が形成されているとともに、
前記筐体の上壁および底壁には、突起および該突起と係合可能な係合穴が、互いに対応する部位に位置するように形成され、
支持台もしくは固定柵上に設置されることでホーム柵を構成可能であることを特徴とする可動バーユニット。
【請求項2】
前記筐体内の前記開口に対応する部位には、前記可動バーが後退する方向へ移動する際に、前記開口の内側へ異物が進入したことを検知して前記可動バーの移動を停止させるための引込み防止機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の可動バーユニット。
【請求項3】
前記引込み防止機構は、前記開口の形状の半分に対応した凹部を有し当該凹部が互いに向い合うように配置されることで前記開口に対応した形状の開口を形成可能な一対のカバー部材と、該カバー部材の移動を検知可能な移動検知手段と、を備え、
前記一対のカバー部材は、互いに向い合う側と反対側に設けられたヒンジ機構によりそれぞれ回動可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の可動バーユニット。
【請求項4】
前記一対のカバー部材は、前記ヒンジ機構の回動軸が鉛直方向を向くように配設されていることを特徴とする請求項3に記載の可動バーユニット。
【請求項5】
前記一対のカバー部材の互いに対向する側の上端部および下端部には、互いに重なり合う段差部がそれぞれ形成され、上端部に形成されている前記段差部と下端部に形成されている前記段差部とは重なる面の向きが逆であることを特徴とする請求項3または4に記載の可動バーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道駅のプラットホームに設置されるホーム柵に適用して有効な技術に関し、特に水平方向に移動可能なバーを備え支持台もしくは固定柵上に設置されることでホーム柵を構成可能な可動バーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道路線の駅のプラットホーム(以下、単にホームと称する)には、乗降者の安全を確保するために、開閉可能なドアパネルとドアパネルを収納する安全柵を兼ねた戸袋とを備えたホームドア装置が設置されるようになっている。また、ホームによっては、列車が停車した際にホームと列車との間に隙間が生じることがあり、かかる隙間に利用者が転落するのを防止するため、ホーム柵を設置する意義がある。一方、簡易式のロープ柵を設けているホームもあるが、停車する列車の車種が複数ある場合には、ドア位置が異なることがあり、その場合には、ロープの架け替えが必要であり、人手を要していた。
【0003】
また、従来のホームドア装置の多くは、乗降者の安全確保に効果的であるものの、製造コストが高いとともに、装置が重くホームの強化が必要となることが多いため設置コストが高いという課題がある。また、従来のホームドア装置は、一般にドア位置が固定されているため、車種の異なる車両の複数のドア配置への対応が難しいなどの課題が普及の妨げとなっている。
これらの課題に対し、軽量化を図った可動バー式のホーム用乗降通路開閉装置や、戸袋自体も可動式とすることで開口位置を変えられるようにしたホームドア装置に関する発明が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5828054号公報
【特許文献2】特開2016−120745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている可動バー式のホーム用乗降通路開閉装置は、列車のドア位置が異なる場合における開閉位置の変更については考慮していないため、複数車種の列車が停止するホームへの対応が難しいという課題がある。また、可動バー式のホーム柵の場合、バーの後退の際に異物を引き込むおそれがあるが、特許文献1にはそのような引込み防止対策については開示されていない。
また、戸袋も可動式とした特許文献2に記載されているホームドア装置は、製造コスト、重量などの課題が解決できていない。
【0006】
また、従来のホームドア装置は、いずれかのドアで故障が発生した場合、ホーム上のすべてのドアを動作させることができなくなり、故障が発生したドアの修理が終了するまで安全柵としての機能が果たせないという課題がある。
さらに、そもそもドア故障の主な原因としては、ドアやバーの後退の際の異物の引込みが考えられるが、従来の引込み防止対策は、光電センサを用いるものやドアまたはバーの駆動モータのトルク異常を検出して開閉動作を停止するもので、対策が充分でなかった。また、物理的な引込み防止対策として、ドアやバーの出入り口に、フラップシールやウェザーストリップモールのようなものを設けることも考えられるが、乗客の衣服や手荷物が接触するおそれがあるとともに、耐久性に難があるため定期的に交換するなどメンテナンスが必要になるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題に着目してされたもので、その目的とするところは、列車利用者の安全性を担保しつつ車種の異なる車両の複数のドア配置への対応が容易であるホーム柵構成用の可動バーユニットを提供することにある。
本発明の他の目的は、故障時の対応が容易であり、故障発生時にホーム柵全体が停止したり長時間にわたって機能を果たせなくなったりすることがない可動バーユニットを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、バーの後退の際に異物を引き込むおそれの少ない可動バーユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る可動ホーム柵構成用の可動バーユニットは、
一方向に長い直方体状をなす筐体と、該筐体の内部にその長手方向に沿って往復移動可能に収納された可動バーと、該可動バーを軸方向へ移動させるための駆動手段と、を備え、
前記筐体の側壁には、前記可動バーが突出したり後退したりすることが可能な開口が形成されているとともに、
前記筐体の上壁および底壁には、突起および該突起と係合可能な係合穴が、互いに対応する部位に位置するように形成され、
支持台もしくは固定柵上に設置されることでホーム柵を構成可能にしたものである。
【0009】
上記手段によれば、複数の可動バーユニットを適宜組み合わせることで、列車利用者の安全性を担保しつつ車種の異なる車両の複数のドア配置への対応が容易である可動ホーム柵をプラットホーム上に構成することができる。また、各可動バーユニットの筐体の上壁および底壁には、突起および該突起と係合可能な係合穴が、互いに対応する部位に位置するように形成されているため、複数の可動バーユニットを任意の数だけ容易に積み上げて所望の高さを有する可動ホーム柵をプラットホーム上に構成することができる。さらに、可動バーがユニット化されているため、故障時の対応が容易であり、故障発生時に全体が停止したり長時間にわたって機能を果たせなくなったりするのを回避することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記筐体内の前記開口に対応する部位には、前記可動バーが後退する方向へ移動する際に、前記開口の内側へ異物が進入したことを検知して前記可動バーの移動を停止させるための引込み防止機構を設けるようにする。
かかる構成によれば、可動バーの後退の際に、可動バーと開口(バーの出入り口)との隙間に異物を引き込むのを防止することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記引込み防止機構は、前記開口の形状の半分に対応した凹部を有し当該凹部が互いに向い合うように配置されることで前記開口に対応した形状の開口を形成可能な一対のカバー部材と、該カバー部材の移動を検知可能な移動検知手段と、を備え、
前記一対のカバー部材は、互いに向い合う側と反対側に設けられたヒンジ機構によりそれぞれ回動可能に構成する。
かかる構成によれば、2つに分割されたリング状のカバー部材の回動により、可動バーと開口(バーの出入り口)との隙間への異物の引き込みを検知するので、確実に異物の引き込みを検知することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記一対のカバー部材は、前記ヒンジ機構の回動軸が鉛直方向を向くように配設する。
かかる構成によれば、可動バーと開口(バーの出入り口)との隙間への異物の引き込んだ際に、鉛直方向の軸を中心としてカバー部材が回動するので、一対のカバー部材の回動動作のバランスが良くなり、引き込み検知動作がばらつくのを回避できるとともに、故障の発生を減らすことができる。
【0013】
また、望ましくは、前記一対のカバー部材の互いに対向する側の上端部および下端部には、互いに重なり合う段差部がそれぞれ形成され、上端部に形成されている前記段差部と下端部に形成されている前記段差部とは重なる面の向きが逆であるように構成する。
かかる構成によれば、一対のカバー部材のうちいずれか一方のカバー部材に外力が作用して回動した際に、他方のカバー部材も連動して回動することになるので、より確実に異物の引き込みを検知することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、列車利用者の安全性を担保しつつ車種の異なる車両の複数のドア配置への対応が容易であるホーム柵構成用の可動バーユニットを実現することができる。また、故障時の対応が容易であり、故障発生時に全体が停止したり長時間にわたって機能を果たせなくなることがない可動バーユニットを実現することができる。さらに、バーの後退の際に異物を引き込むおそれの少ない可動バーユニットを実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る可動ホーム柵の一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】実施形態の可動ホーム柵の組み立て状態を示す正面図である。
図3】(A)は実施形態の可動ホーム柵の第1の使用例を示す図、(B)は実施形態の可動ホーム柵の第2の使用例を示す図である。
図4】実施形態の可動ホーム柵を構成する可動バーユニットの詳細を示す拡大斜視図である。
図5】実施例の可動バーユニットの側壁部を可動バーの突出側から見た斜視図である。
図6】実施例の可動バーユニットの内部構造(引込み防止機構)を示す斜視図である。
図7】実施例の可動バーユニットに設けられている引込み防止機構を構成するバー出入り口のカバーの動作状態を示す断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る可動ホーム柵の一実施形態を示す分解斜視図、図2はその組み立て状態を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の可動ホーム柵10は、支持台11A〜11Cによってホーム上に固定される格子状の固定柵12と、軸方向に移動可能なパイプ状の可動バー31およびその駆動機構32を有し前記固定柵12の上部に取り付けられる可動バーユニット13Aおよび13Bと、可動バーユニット13Bの上面に載置される天板カバー14と、可動バーユニット13Aおよび13Bを駆動制御するための制御盤15と、制御盤15に対する指令を入力するための操作盤16Aおよび16Bとを備える。
【0017】
可動バー31は、カーボンファイバやグラスファイバなど軽量な素材で形成されており、可動バーユニット13A,13Bから突出する方向へ移動して片持ち支持された状態(突出状態)でのたわみが少なくなるように構成されている。また、可動バー31は、全体の長さが1〜2m程度であるが、数10cmの短いパイプを複数個繋ぎ合わせることで所望の長さに設定するとともに、異なる長さの可動バーを用意したり、長さの変更があった際に容易に対応できるようにされている。
【0018】
操作盤16Aは可動バーユニット13Aの動作を指令するもの、操作盤16Bは可動バーユニット13Bの動作を指令するものであり、制御盤15と操作盤16A,16Bは、固定柵12の側面に取り付け可能に構成されている。また、図示しないが、図1に示す可動ホーム柵10は1つのホーム上に複数台設置されており、それらを同時に動作させるための駅制御盤も設置され、図示しないケーブルによって各制御盤15と接続される。また、制御盤15と可動バーユニット13A,13Bとは、制御盤15から延設され先端にコネクタを有するケーブル17によって接続される。
【0019】
可動バーユニット13Aと13Bは同一構成を有しており、図1および図2に示すものでは、可動バーユニット13Aの上に、上下を逆にした可動バーユニット13Bを載置することで、それぞれのユニットから可動バー31が逆向きに突出するように構成されている。可動バー31およびその駆動機構32がユニットとして構成されているため、例えば同じ向きの2つのユニットを上下に積むことで同一方向に2本の可動バー31が突出するホーム柵や、4つのユニットを2つずつ逆向きして交互に積み上げることで、可動バー31が固定柵12を挟んで左右方向へそれぞれ2本ずつ突出可能なホーム柵を構成することもできる。また、固定柵12の高さを変えることで、可動バー31の高さを変えることができる。
【0020】
可動バーユニット13Aと13B(以下、これらを区別しないときは単に可動バーユニット13と記す)に内蔵される可動バー31の長さは同一であるのが、製造コスト上、有利であるが、適用するホームによっては、同一長さの可動バーユニットのみで所望の位置に乗降通路を形成することができないことがある。そのような場合には、長さが異なる複数の可動バーユニットを用意しておいて、長さが異なるものを適宜組み合わせて可動ホーム柵10を構成するようにしてもよい。
また、可動バーユニット13を複数個積み重ねた状態で、図2に示すように複数の可動バーユニットを覆う大きさの前面パネル18を、可動バーユニット(13A,13B)の前面に装着して、ユニット同士がずれないように一体化するようにしても良い。
【0021】
図3には、図1に示す可動ホーム柵10を並べて配置する際の可動バーユニット13の配設例を示す。図3(A)に示されているように、乗降通路を挟んで向き合う可動ホーム柵10は、可動バー31が同一の高さになるように可動バーユニットを載置し、隣り合う乗降通路同士では、可動ホーム柵10の可動バーが異なる高さになるように配置する。これにより、同一の乗降通路において、左右の可動ホーム柵10から突出した可動バーの高さがずれてしまうのを回避することができるとともに、すべての可動バーの高さが同一になるように配置する場合に比べて、固定柵12の幅を小さくすることができる。
なお、ホームによっては、図3(B)に示すように、すべての可動バーの高さが同一になるように、可動バーユニット13を背中合わせにして配置することも可能である。
【0022】
上述したような構成を有する可動ホーム柵10によれば、3ドア車両や4ドア車両のようにドア位置が異なる複数車種の列車が停車する場合にも、停車した列車のドア位置に合わせた開閉が可能になる。また、現在主流である開閉ドアと戸袋を有するホームドア装置に比べて、総重量を低減することができるため、従来行われていたホームの強度を高める大掛かりな工事が必要でなくなる場合もある。
さらに、本実施形態の可動ホーム柵10は、可動バーユニット13はもちろんのこと、固定柵12を外すことができるので、駅設備の保守のために、ホームに横付けした作業車からホーム上へ比較的大きな機材や設備を降ろしたり、ホームから作業車へ機材や撤去した設備を積載したりする作業を容易に行える。
【0023】
次に、可動バーユニット13の具体的な構成例について説明する。
図4に示すように、可動バーユニット13は、一方の面(図では前面)が開口した横長な直方体状の本体フレーム33と、該本体フレーム33の後壁中央に長手方向に沿って固定されたガイドレール34と、モータを内蔵し本体フレーム33の底壁に固定された駆動ユニット35と、該駆動ユニット35のモータの回転軸に装着された駆動プーリ36Bと、本体フレーム33の可動バー突出側の端部に固定されたブロック37に回転可能に支持された従動プーリ36Aと、前記駆動プーリ36Bと従動プーリ36Aと間に捲回されたコグドベルト38と、該コグドベルト38の一部を挟持し前記ガイドレール34に沿って移動可能に設けられた可動ブロック39とを備える。
【0024】
本体フレーム33の底面と上面には突起および該突起に対応した位置に形成された係合穴が設けられており、複数の可動バーユニット13を積み重ねた際に、下側ユニットの上面の突起または係合穴と、上側ユニットの係合穴または突起とが係合することで、位置合わせをすることができるように構成されている。突起の代わりに鉤状のフックを設けるとともに、係合穴を少しずらした位置に形成し、フックを他のユニットの係合穴に係合させるようにして2つのユニットを重ねた後、フレーム全体をスライドさせることでフックを係合穴の縁部に噛み合せて結合状態を維持できるように構成しても良い。
【0025】
可動バー31は、その一端が上記可動ブロック39に固定されており、駆動ユニット35のモータが駆動されることによって駆動プーリ36Bが回転されると、コグドベルト38が移送され、それによって可動ブロック39がガイドレール34に沿って移動し、可動バー31が突出する方向または後退する方向へ移動されるように構成されている。
また、本体フレーム33の可動バー突出側端部には可動バー31の出入り口に対応して引込み防止機構40が設けられているとともに、本体フレーム33の他方の端部の側壁33Aには警報音等を発するためのスピーカ50が設けられている。
【0026】
さらに、本体フレーム33の可動バー突出側の側壁には、異物の有無を検出するための光電センサ60が設けられている。光電センサ60は、透過型でも反射型でもよいが、主として可動バー31の出入り口近傍における異物の有無を検出したい場合には反射型を用いるのが望ましい。透過型のセンサの場合には、対向する可動バーユニットの一方に発光素子を設け、他方に受光素子を設ける。光電センサ60が異物を検出した場合には、各可動バーユニット13に設けられているモータへの通電スイッチをオフさせ、可動バー31を緊急停止させるように構成することができる。
【0027】
さらに、図示しないが、駆動ユニット35のモータヘ流れる電流の変化を監視してトルク変動を検出し、異常なトルクが検出された場合にモータの駆動すなわちモータへの電流の供給を遮断する機能も設けられている。なお、この機能は、前述の制御盤15に持たせることもできるが、可動バーユニット13それぞれに持たせることもできる。
上記のように3種類の監視機能を持たせることで、可動ホーム柵10の安全性を高めることができる。特に、引込み防止機構40は、機械的な安全装置であるため、ノイズに強く信頼性が高いという利点がある。
【0028】
また、本実施形態では、各可動バーユニット13それぞれに3種類の監視機能が設けられているため、いずれかのユニットに故障が発生したとしても、他のユニットに悪影響を与えることがない。その結果、故障した可動バーユニット13のある乗降通路にのみ駅係員が立ち会って誘導することで、他の可動ホーム柵10を停止させることなく、稼働を続けられるという利点がある。また、可動ホーム柵10が可動バーユニット13で構成されているため、故障が発生した可動バーユニット13のみを外して、予備の可動バーユニット13を付け替えることで再稼働することができるので、故障によるホーム柵の稼働停止時間を短縮することができる。
【0029】
次に、上記3種類の監視機能のうち引込み防止機構40の詳細について、図5図7を用いて説明する。このうち、図5は可動バーユニット13の側壁部を可動バー31の突出側から見た斜視図、図6は可動バーユニット13の内部構造(引込み防止機構40)を示す斜視図、図7は引込み防止機構40を構成するカバーの動作状態を示す断面平面図である。
図5において、符号33Aが付されているのは、可動バーユニット13のフレーム33を構成する側板であり、該側板33Aは、外形がほぼ矩形状をなし中央に円形の開口33Bが形成されたプレート部33aと該プレート部33aの外縁部を90度内側へ折り曲げることで形成された起立壁33bとを備え、プレート部33aと起立壁33bに囲まれた空間内に引込み防止機構40が設けられている。
【0030】
引込み防止機構40は、図6に示すように、プレート部33aの内側面に接した状態で上記開口33Bを挟んで対向するように配設された一対のカバー41A,41Bと、カバー41A,41Bを外側方向へ付勢する一対のトーションバネ42A,42Bと、カバー41A,41Bの回動を検知する一対のフレキシブル・ロッド形スイッチ(以下、触覚スイッチと称する)43A,43Bと、カバー41A,41Bの回動位置規制を行うストッパ片44A,44Bと、を備える。
上記一対のカバー41A,41Bは、開口33Bと反対側の辺に設けられたヒンジ機構45A,45Bによって、回動可能に支承されているとともに、ヒンジ機構45A,45Bを構成する回動軸45a,45bに挿通されたトーションバネ42A,42Bによって外側方向すなわちプレート部33aの内側面に接する方向へ回動付勢されている。
【0031】
また、カバー41A,41Bは、合成樹脂で構成され、対向する側に半円状の凹部41a,41bが設けられており、凹部41aと41bとが合わさることで、上記側板33Aの中央に形成されている円形の開口33Bに対応する開口が形成され、該開口内を前記可動バー31が挿通可能に構成されている。なお、凹部41aと41bの縁部には、外側方向へ盛り上がった半円環状のリブR1,R2が形成されており、該リブR1,R2の外周の径が上記側板33Aの中央の円形の開口33Bの径よりも僅かに小さくなるように設定されており、カバー41A,41Bがトーションバネ42A,42Bによって外側方向へ付勢されると、リブR1,R2が側板33A中央の開口33Bに嵌合することで、フレーム33の側板33Aの外側面とカバー41A,41Bの外側面との間に段差が生じないように構成されている。
【0032】
さらに、カバー41A,41Bは、お互いの突合せ部に、前後逆向きの段差S1,S2が形成されており、段差S1,S2同士が重なることで、カバー41Aと41Bとが平坦になるように構成されている。しかも、上記段差S1,S2は、上部側と下部側とで重なりが逆になるように形成されており、このような、逆重なり構造によって、一方のカバー41A(41B)を回動させると、段差を介して力が他方のカバー41B(41A)に伝わり、両方のカバー41A,41Bが連動して回動するようになっている。
【0033】
また、カバー41A,41Bは、ヒンジ機構45A,45Bを構成する回動軸45a,45bが鉛直方向を向くように、つまりカバー41A,41Bが左右対称の配置になるように設けられている。カバー41A,41Bを、回動軸45a,45bが水平方向になるように、つまりカバー41A,41Bが上下対称の配置になるように構成することも可能であるが、そのような配置にすると、カバー41A,41Bの重量の影響でトーションバネ42Aと42Bに作用する力が均等にならないため、円滑な動きが期待できなくなるとともに、部品の耐久性にも差が出てしまうおそれがあるが、本実施形態ではそのような不具合が発生するのを回避することができる。
【0034】
さらに、特に限定されるものでないが、カバー41A,41Bの上部と下部すなわち上記段差S1,S2の近傍には、上方と下方へ突出する突出部46A,46Bが設けられているとともに、該突出部46A,46Bの内側に水平方向の溝部46a,46bが形成されており、この溝部46a,46bに、上記回動検知用の触覚スイッチ43A,43Bの触覚(検出子)43a,43bがそれぞれ当接されるように構成されている。
前述したように、カバー41A,41Bは一方を回動させると他方が連動して回動する構成であるので、触覚スイッチが一つであってもカバー41A,41Bの回動を検知することはできるが、触覚スイッチを2個設けておくことで、一方が故障したとしても他方の触覚スイッチでカバー41A,41Bの回動を検知することができる。
【0035】
上記のような構成を有する引込み防止機構40によれば、可動バー31が後退する際に、乗降者の指や手荷物の一部等の異物が可動バー31と側板33Aの中央の開口33Bとの隙間に引き込まれたとしても、開口内側のカバー41A,41Bが回動して触覚スイッチ43A,43Bがそれを検知し、モータの回転を停止させることで、それ以上の引込みを防止することができる。また、触覚スイッチ43A,43Bがカバー41A,41Bの回動を検知した際に、モータを一旦逆転させてから停止させても良く、それによって引き込まれた異物を排出させることができる。
【0036】
さらに、カバー41A,41Bの回動規制を行うストッパ片44A,44Bが設けられているため、異物を引き込んでも、図7に示すようにカバー41A,41Bの回動が所定角度で阻止され、異物が奥まで引き込まれることがない。また、このとき触覚スイッチ43A,43Bが故障していたとしても、モータのトルクが増加するので、制御系がそれを検知してモータを停止させることができる。
さらに、バーの出入り口を覆うカバー41A,41Bが合成樹脂製であるため、誤って乗降者の指が引き込まれたとしても傷つけたりするおそれもない。
【0037】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、カバー41A,41Bの回動を触覚スイッチで検出しているが、マイクロスイッチや光電式のセンサであっても良い。また、前記実施形態では、可動バーと開口(バーの出入り口)との隙間を覆うカバー部材を2分割しているが、3分割あるいは4分割の構成にしても良い。
さらに、前記実施形態においては、駅制御盤によって可動ホーム柵10の可動バーユニット13を作動させると説明したが、列車の乗務員が列車側の開扉ボタンまたは閉扉ボタンを操作したことを無線通信(電波)で可動ホーム柵10へ知らせ、可動バーユニット13を動作させるように構成しても良い。
【0038】
また、上記実施形態においては、固定柵と複数の可動バーユニットとで可動ホーム柵を構成すると説明したが、フレーム(筐体)が可動バーユニットと同じ(共通)で内部に可動バーおよび駆動装置を内蔵していないダミーユニットを別途用意しておいて、固定柵とダミーユニットと可動バーユニットとを組み合わせることによって、任意の高さで任意の本数の可動バーを有する可動ホーム柵を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 可動ホーム柵
11A〜11C 支持台
12 固定柵
13A,13B 可動バーユニット
14 天板カバー
15 制御盤
16A,16B 操作盤
31 可動バー
33 本体フレーム
33a,33b 起立壁
34 ガイドレール
35 駆動ユニット
36A,36B プーリ
38 コグドベルト
39 可動ブロック
40 引込み防止機構
41A,41B カバー
41a,41b 凹部
42A,42B トーションバネ
43A,43B 触覚スイッチ
43a,43b 検出子
44A,44B ストッパ片
45A,45B ヒンジ機構
45a,45b 回転軸
46A,46B 突出部
46a,46b 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7