(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記清磨手段は、作業者に把持される把持部を備え、作業者によりハンドリング可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車軸清磨装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の事情を鑑みてなされたもので、歯車を収容したギアケースが設けられた列車用の車軸を、従来に比べて効率的に清磨できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の第1の発明は、歯車を収容したギアケースが設けられている列車用の車軸の
うち、集電環の取付部及び前記ギアケースの両側の油切り座を含む摺擦部
の表面を
、汚れを除去して磨く清掃精磨するための車軸清磨装置であって、
前記車軸を軸心回りに回転させる回転手段と、前記車軸の摺擦部表面と当接して当該摺擦部表面を
清掃精磨する清磨手段と、前記ギアケースを固定する固定手段と、前記車軸または前記ギアケースを昇降させる昇降手段とを備え、
前記固定手段により前記ギアケースを固定し、かつ、前記昇降手段により前記車軸または前記ギアケースを昇降させて前記ギアケースと前記車軸及び前記歯車の各々との間に隙間を介在させた状態で、前記回転手段により前記車軸を回転させつつ前記清磨手段により当該車軸の摺擦部表面を
清掃精磨するように構成したものである。
当該第1の発明に係る車軸清磨装置によれば、ギアケースが固定された状態で車軸が回転され、この車軸の摺擦部表面に清磨手段が当接されて当該摺擦部表面が清磨されるため、車軸を手磨きしていた従来に比べ、仕上げ寸法の高精度化・安定化や作業時間の短縮化を図ることができる。
【0007】
また、望ましくは、前記清磨手段のうち前記車軸の摺擦部表面と当接する当接面の温度を計測する温度計測手段と、
前記温度計測手段が計測した前記当接面の温度が所定値を超えた場合に、前記回転手段を制御して前記車軸の回転を減速または停止させる回転制御手段と、
を備えるようにする。
これにより、車軸の回転を自動化させたことに伴って従来の手磨きよりも車軸表面が高温化しやすくなるところ、清磨手段の当接面の温度を介して間接的に車軸の表面温度を管理することができるため、高温化による車軸表面の変質等を防ぐことができる。
【0008】
また、望ましくは、前記清磨手段を前記車軸に当接させたときの押し当て荷重を計測する荷重計測手段と、
前記荷重計測手段が計測した前記押し当て荷重が所定値を超えた場合に、前記回転手段を制御して前記車軸の回転を減速または停止させる回転制御手段と、
を備えるようにする。
これにより、清磨手段から車軸表面に加わる荷重を管理することができるため、過大な荷重による車軸表面の損傷等を防ぐことができる。
【0009】
さらに、望ましくは、清磨手段が作業者に把持される把持部を備え、作業者によりハンドリング可能に構成する。
これにより、作業者は身軽に清磨作業を行うことができ、ひいては清磨作業を行いやすくすることができる。
さらに、望ましくは、前記車軸は炭素鋼からなり、前記摺擦部に高周波焼入れが施されているようにする。
【0010】
本願の第2の発明は、上記第1の発明に係る車軸清磨装置を用いた車軸清磨方法であって、
前記固定手段により前記ギアケースを固定させるギア固定工程と、
前記昇降手段により前記車軸または前記ギアケースを昇降させて、前記ギアケースと前記車軸及び前記歯車の各々との間に隙間を介在させる昇降工程と、
前記回転手段により前記車軸を回転させつつ前記清磨手段により当該車軸の摺擦部表面を
清掃精磨する清磨工程と、
を含むようにしたものである。
当該第2の発明に係る車軸清磨方法によれば、上述した第1の発明に係る車軸清磨装置と同様の効果を得ることができる。すなわち、ギアケースが固定された状態で車軸が回転され、この車軸の摺擦部表面に清磨手段が当接されて当該摺擦部表面が清磨されるため、車軸を手磨きしていた従来に比べ、仕上げ寸法の高精度化・安定化や作業時間の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、歯車を収容したギアケースが設けられた列車用の車軸を、従来に比べて効率的に清磨することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[車軸清磨装置の構成]
まず、本実施形態における車軸清磨装置の構成について説明する。
図1及び
図2は、本実施形態における車軸清磨装置が備える軸支持装置10の正面図及び平面図である。
【0015】
本実施形態における車軸清磨装置は、列車用の車軸90の表面を
清掃精磨するためのものであ
る。「清掃精磨」とは、付着した汚れを除去して磨くことをいい、本明細書では「清磨」とも記載する。当該車軸清磨装置は、図1及び
図2に示すように、この車軸90を支持する軸支持装置10を備えている。
車軸90は、本実施形態においては新幹線用のものであり、部分的に高周波焼入れなどの熱処理が施された炭素鋼からなるものである。この車軸90には、中央よりもやや一端寄りの部分に動力伝達用のギアユニットが取り付けられている。具体的には、歯車91がギアケース92内に収容された状態で圧入等により車軸90に固定されており、当該車軸90はギアケース92両側面の挿通孔92aに挿通されて当該ギアケース92を貫通している(
図4(b)参照)。
【0016】
軸支持装置10は、車軸90の両端を軸支する一対の支持台20,20(20A,20B)を備えている。これら一対の支持台20,20は、基台70上に立設されており、車軸90の端部を軸支する軸支部30を昇降可能にそれぞれ支持している。
具体的に、各支持台20は、脚台21上に立設されたガイド部22で軸支部30を昇降可能に支持している。ガイド部22には、送りねじ23及びリニアガイド24がそれぞれ上下に延在するように設けられており、軸支部30の背板31に固定された可動体25が、リニアガイド24に案内されつつ送りねじ23の回転によって上下に移動するように当該ガイド部22に取り付けられている(
図3(b)参照)。送りねじ23の下端は、脚台21内で所定の減速比のギアボックス26の出力軸と連結されている。ギアボックス26は、一対の支持台20,20における2つのものが、互いの入力軸を側方向きに対向させるように配置されている。これら2つのギアボックス26,26の入力軸には、当該2つのギアボックス26の中間地点に設けられた昇降用モーター27の出力軸の両端が、それぞれ連結ロッド28を介して連結されている。
このような構成により、昇降用モーター27の駆動による連結ロッド28の回転に伴って、一対の支持台20,20では、各々においてギアボックス26を介して送りねじ23が回転し、可動体25が上下に移動する結果、互いの軸支部30が同時に同じ量だけ昇降する。
【0017】
図3(a),(b)は、支持台20Aに支持された軸支部30を示す図であり、このうち(a)が正面から見た図、(b)が、可動体25に支持された軸支部30を右側方から見た図である。なお、
図3(b)では、後述の軸押さえユニット35の図示を省略している。
軸支部30は、
図2及び
図3(a),(b)に示すように、背板31の下端に固定されたベース板32上に、車軸90のジャーナル部90aを軸支する一対のローラー33,33と、車軸90の端面と当接して当該車軸90の軸方向への移動を規制する軸押さえユニット35とを備えている。
【0018】
一対のローラー33,33は、ベース板32のうち車軸90中央側の端部に並設されており、車軸90のジャーナル部90aを当該一対のローラー33,33の間に載置させた状態で軸支する。
また、当該一対のローラー33,33のうち、一方の支持台20Aに設けられた1つのローラー33には、ベース板32の下面に取り付けられた回転用モーター34に駆動されるベルト341が、当該ローラー33と同軸上のプーリー331に張架されている。そのため、回転用モーター34の駆動に伴って支持台20Aの当該ローラー33が回転し、車軸90を回転させるようになっている。
【0019】
軸押さえユニット35は、車軸90と当接する樹脂製の突当て部材36と、突当て部材36を回転可能に支持する軸受部37と、軸受部37を支持する台座部38と、車軸90の軸方向への移動を抑える軸押さえシリンダ39とを備えている。
このうち、突当て部材36は、車軸90のセンタ穴90bのうち端部の面取り部分に対応した形状の凸部361を端面に有しており、当該凸部361をセンタ穴90bに嵌めた状態で車軸90の端面と当接して連れ回るようになっている。
軸受部37は、突当て部材36に連結された回転軸371を内蔵のジャーナル及びスラストの各軸受(図示省略)で支持している。
台座部38は、車軸90の軸方向に沿った一対のガイドレール381,381上に取り付けられており、図示しない駆動モータに駆動されることにより、当該一対のガイドレール381,381上を突当て部材36及び軸受部37とともに移動可能となっている。
台座部38と軸受部37との間には所定厚さのシム382を挿入可能になっており、このシム382の有無(または厚さの変更)により軸受部37及び突当て部材36の高さを調節し、ジャーナル部90aの径が異なる車軸90にも対応できる(車軸90と突当て部材36の中心軸を一致させることができる)ように構成されている。また、台座部38には、シム382を検知するためのシム検知センサー383(
図6参照)が設けられている。
軸押さえシリンダ39は、軸方向への車軸90の移動に伴って台座部38が接近してきたときに、その反対方向へ台座部38を押圧することにより、車軸90の軸方向への一定量以上の移動を規制する。
【0020】
軸支持装置10の基台70上のうち、手前側の端部であって、一対の支持台20,20の中間よりもやや他方の支持台20B側寄りの部分には、ギアケース92を固定するためのギア固定ユニット40が設けられている。
図4(a),(b)は、ギアケース92を固定した状態のギア固定ユニット40を示す図であり、このうち(a)が正面から見た図、(b)が左側方から見た図である。
これらの図に示すように、ギア固定ユニット40は、脚台41と、脚台41上に車軸90の軸方向に沿って設けられたガイドレール42と、ガイドレール42上に移動可能に取り付けられた一対の固定具43,43とを備えている。
一対の固定具43,43は、ギアケース92と当接する樹脂製の当接部44をそれぞれ有するとともに、ギアケース92の端部を車軸90の軸方向に挟持して固定するように互いの当接部44を対向させている。各固定具43では、当接部44が2つのリニアブッシュ45によって移動可能に支持されるとともに、当該当接部44が圧縮ばね46によってギアケース92に近接する方向に押圧されている。また、各固定具43には、当接部44がギアケース92に当接したことを検知する当接検知センサー47が設けられている。
【0021】
また、本実施形態における車軸清磨装置は、車軸90と当接してその表面を清磨する清磨具50を備えている。
図5(a)〜(c)は、清磨具50の正面図、側面図及び下面図である。
これらの図に示す様に、清磨具50は、車軸90の表面を清磨するためのサンドペーパーPを保持する下部のペーパーホルダー部51と、清磨作業を行う作業者に把持される上部のハンドル部55とを備えている。
【0022】
ペーパーホルダー部51は、略矩形平板状に形成されており、その下面の幅方向中央が、車軸90の清磨対象部よりも大きな曲率半径の凹状の円弧面51aとなっている。この円弧面51aの幅方向の両側には、円弧面51a上に被せたサンドペーパーPをばね521の付勢力で押さえるペーパー押さえ52がそれぞれ設けられている。
また、円弧面51aには、幅方向中央部の所定範囲に亘って、複数(本実施形態では、幅方向に5列,厚さ方向に3段の15個)の温度計測孔51b,…が形成されている。これら複数の温度計測孔51b,…の各々には、熱電対(シース熱電対)53が、先端を円弧面51aとほぼ面一にした状態で内側(上側)から挿通されている。各熱電対53の基端側は、ペーパーホルダー部51の幅方向の側方から引き出され、後述する制御部64に接続されている。
【0023】
ハンドル部55は、ペーパーホルダー部51よりもやや厚さ方向に薄い略矩形平板状に形成されている。このハンドル部55の上端部には、幅方向に沿った円柱状のハンドルバー56が設けられており、作業者が当該ハンドルバー56を把持して清磨具50をハンドリング可能となっている。
【0024】
ペーパーホルダー部51とハンドル部55とは、それぞれの幅方向中央部でロードセル57を介して連結・固定されている。このロードセル57は、幅方向と直交する上下方向への荷重を計測可能となっており、車軸90に対する清磨具50の押し当て荷重を計測する。
【0025】
続いて、本実施形態における車軸清磨装置の制御構成について説明する。
図6は、本実施形態における車軸清磨装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、本実施形態における車軸清磨装置は、操作部61と、表示部62と、警報部63と、制御部64とを備えている。
【0026】
操作部61は、作業者による各種操作を受け付ける部分である。具体的に、操作部61は、軸支持装置10の近傍に設置された回転用モーター34駆動(ON/OFF切替)用のフットペダルや、車軸90の回転数設定用のボリューム、非常停止ボタンなど(いずれも図示省略)を備えており、これらの操作状態に対応する信号を制御部64に出力する。
【0027】
表示部62は、図示しないディスプレイを備えており、制御部64から入力される表示信号に基づいて、軸支持装置10の状態や熱電対53の温度計測値などの各種情報をディスプレイに表示する。
【0028】
警報部63は、図示しないスピーカーや赤色ランプを備えており、制御部64から入力されるアラーム信号に基づいて、スピーカーからアラーム音を出力したり赤色ランプを点灯させたりする。
【0029】
制御部64は、操作部61から入力される操作信号等に応じて、表示部62及び警報部63や軸支持装置10の各部の動作を制御し、車軸清磨装置を統括的に制御する。また、制御部64は、後述するように、軸支持装置10のシム検知センサー383及び当接検知センサー47や、清磨具50の熱電対53及びロードセル57からの入力信号に基づいて、昇降用モーター27及び回転用モーター34の駆動や表示部62及び警報部63の動作を制御する。
【0030】
[車軸清磨装置による車軸の清磨手順]
続いて、本実施形態における車軸清磨装置による車軸90の清磨作業手順について説明する。
図7は、この清磨作業の流れを示すフローチャートである。
【0031】
図7に示すように、まず作業者は、車軸90の各ジャーナル部90aを各支持台20の一対のローラー33上に載せるようにして、当該車軸90を軸支持装置10に搭載する(ステップS1)。この状態では、ギアケース92が車軸90(または歯車91)と接触しており、車軸90はスムーズに回転しない。なお、このときには、各支持台20では軸支部30が下限位置まで降下しているとともに、軸押さえユニット35の突当て部材36は車軸90の端面から離間している。
またこのとき、作業者は、車軸90の種類(ジャーナル部90aの径)に対応させて、車軸90と突当て部材36の中心軸が一致するように、必要に応じて軸押さえユニット35の軸受部37と台座部38との間にシム382を挿入する。
【0032】
次に、作業者は、ギア固定ユニット40によりギアケース92を固定する(ステップS2)。具体的に、作業者は、一対の固定具43,43をガイドレール42上で移動させて各当接部44をギアケース92の端部に両側から十分な押圧力で当接させることにより、当該ギアケース92を車軸90の軸方向に挟持して所定の高さで固定する。
【0033】
次に、作業者は、操作部61への所定の入力操作により、制御部64に昇降用モーター27を駆動させて一対の支持台20,20の軸支部30を上昇させ、車軸90を上昇させる(ステップS3)。これにより、ギアケース92と車軸90及び歯車91の各々との間に隙間が介在した状態となり、車軸90はギアケース92に拘束されることなくスムーズに回転可能となる。
またこのとき、制御部64により、各軸支部30において軸押さえユニット35の台座部38が移動されて突当て部材36が車軸90の端面に当接されることにより、車軸90の両端面が押さえられて当該車軸90の軸方向への移動が規制される。
【0034】
次に、作業者は、操作部61への所定の入力操作により、制御部64に回転用モーター34を駆動させて車軸90を軸心回りに回転させる(ステップS4)。
但し、軸押さえユニット35のシム検知センサー383により車軸90の種類に適合したシム382の挿入状態が検知されない(つまり、車軸90と突当て部材36の中心軸が一致していない)場合や、ギア固定ユニット40の当接検知センサー47により各固定具43の当接部44とギアケース92との当接が検知されない(つまり、ギアケース92が適切に固定されていない)場合には、制御部64は、車軸90が回転可能な状態にないものとして回転用モーター34を駆動させずに、表示部62にその旨を表示させる。
【0035】
次に、作業者は、清磨具50を使用して車軸90の表面を清磨する(ステップS5)。具体的に、作業者は、サンドペーパーPを取り付けた清磨具50の円弧面51aを回転中の車軸90の表面に押し当てて、当該表面を清磨する。この清磨作業では、車軸90全体に対するサビ落としに加え、特に、集電環の取付部やギアケース92両側の油切り座(いずれも図示省略)といった摺擦部が所定の精度まで清磨される。
【0036】
次に、清磨具50の複数の熱電対53による計測温度が所定の異常温度に達したか否かと、ロードセル57による計測荷重が所定の過大荷重に達したか否かとが、制御部64により判定される(ステップS6)。つまり、車軸90表面からサンドペーパーPを介した清磨具50の円弧面51aが異常な高温に達したか否か、或いは、作業者による車軸90への清磨具50の押し当て荷重が過大な値に達したか否かが判定される。なお、本実施形態では、異常温度として、車軸90表面に対する熱処理の効果が損なわれ得る温度よりも十分低い温度値が予め設定されている。
そして、少なくとも1つの熱電対53の計測温度が異常温度に達したか、或いは、ロードセル57の計測荷重が過大荷重に達したかの少なくとも一方の判定がされた場合(ステップS6;Yes)、制御部64により、回転用モーター34が制御されて車軸90の回転が停止され(後述のステップS11)、清磨作業が終了する。
【0037】
また、いずれの熱電対53の計測温度も異常温度に達しておらず、ロードセル57の計測荷重も過大荷重に達していない場合には(ステップS6;No)、複数の熱電対53による計測温度が、異常温度よりも低い所定の警報温度に達したか否かが、制御部64により判定される(ステップS7)。
そして、少なくとも1つの熱電対53の計測温度が警報温度に達したと判定された場合(ステップS7;Yes)、制御部64により、回転用モーター34が制御されて車軸90の回転が例えば半分の回転数などに減速されるとともに、警報部63が動作される(ステップS8)。またこの場合、作業者は清磨作業を中断する。
その後、この減速状態が所定時間保持されて、複数の熱電対53による全ての計測温度が警報温度以下まで低下したことが確認されたら、制御部64により回転用モーター34が制御されて車軸90の回転が当初の回転数まで上昇される(ステップS9)。そして、作業者は清磨作業を再開する(ステップS5)。
なお、車軸90の回転を減速させた後に、いずれかの熱電対53の計測温度が異常温度に達した場合には、制御部64により回転用モーター34が制御されて車軸90の回転が停止され、清磨作業が終了する。
【0038】
また、いずれの熱電対53の計測温度も警報温度に達していない場合(ステップS6;No)、作業者による終了操作が行われたか否かが制御部64により判定され(ステップS10)、終了操作が行われていない場合には(ステップS10;No)、清磨作業が継続される(ステップS5)、
一方、作業者による終了操作が行われた場合には(ステップS10;Yes)、制御部64により回転用モーター34が制御されて車軸90の回転が停止され(ステップS11)、清磨作業が終了する。
【0039】
[実施例]
続いて、本実施形態における車軸清磨装置の実施例について説明する。
本実施例では、本実施形態における車軸清磨装置を用いて車軸90の清磨作業を実施したときの油切り座の外径寸法のばらつき(最大値と最小値の差)を計測し、従来の手磨きによるものと比較した。ここで、従来の手磨きとは、回転していない車軸に対して作業者が手作業でサンドペーパーを掛けて行う清磨作業である。
【0040】
図8は、本実施例の結果を示すグラフであって、清磨作業を実施した車軸における油切り座の寸法ばらつきを、車軸本数(何本目の車軸か)を横軸としてプロットしたものである。
この図に示すように、本実施形態における車軸清磨装置を用いた清磨作業(機械磨き)では、従来の手磨きによるものに比べ、寸法ばらつき自体が総じて大幅に低減できている、すなわち仕上げ寸法をより高精度化できていることが分かる。また、機械磨きでは、寸法ばらつきの分布も手磨きに比べて小さくまとまっており、作業者の作業練度等に依らずに仕上げ寸法をより安定化できていることが分かる。
【0041】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、ギアケース92が固定された状態で車軸90が回転され、この車軸90の摺擦部の表面に清磨具50が当接されて当該摺擦部の表面が清磨されるため、車軸を手磨きしていた従来に比べ、仕上げ寸法の高精度化・安定化や作業時間の短縮化を図ることができる。したがって、ギアケース92内に収容された歯車91が一体化された車軸90を、従来に比べて効率的に清磨することができる。
【0042】
また、清磨具50のうちサンドペーパーPを介して車軸90の摺擦部表面と当接する円弧面51aの温度が計測され、この円弧面51aの温度が所定の警報温度(または異常温度)を超えた場合に、車軸90の回転が減速(または停止)される。
これにより、車軸90の回転を自動化させたことに伴って従来の手磨きよりも車軸90表面が高温化しやすくなるところ、清磨具50の円弧面51aの温度を介して間接的に車軸90の表面温度を管理することができる。したがって、高周波焼入れされた車軸90であっても、この熱処理効果が損なわれ得る温度(例えば約150℃)までの高温化を防ぐことができ、ひいては高温化による車軸90表面の変質等を防ぐことができる。
【0043】
また、清磨具50を車軸90に当接させたときの押し当て荷重が計測され、この押し当て荷重が所定の過大荷重を超えた場合に、車軸90の回転が停止される。
これにより、清磨具50から車軸90表面に加わる荷重を管理することができるため、過大な荷重による車軸90表面の損傷等を防ぐことができる。
【0044】
また、清磨具50がハンドルバー56を備え、作業者によりハンドリング可能に構成されているので、作業者は身軽に清磨作業を行うことができ、ひいては清磨作業を行いやすくすることができる。
【0045】
[変形例]
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、清磨具50が作業者によりハンドリング可能なものであることとしたが、当該清磨具50を軸支持装置10と一体的に構成し、モーター駆動などにより車軸90に押し当て可能なものとしてもよい。
【0047】
また、作業者がギア固定ユニット40の一対の固定具43,43を手動で移動させてギアケース92を固定することとしたが、一対の固定具43,43をモーター駆動可能に構成するなどして、ギアケース92の固定を自動化してもよい。
【0048】
また、清磨作業におけるステップS3では、車軸90を上昇させることにより、ギアケース92と車軸90及び歯車91の各々との間に隙間を介在させることとしたが、当該隙間を設けることが可能であれば、車軸90を上昇でなく下降させてもよい。
さらに、ギアケース92を固定状態のまま昇降可能な昇降手段を設け、車軸90でなくギアケース92を昇降させることにより、上記の隙間を設けることとしてもよい。
【0049】
また、ロードセル57の計測荷重が所定の過大荷重に達した場合に車軸90の回転を停止させることとしたが、この計測荷重が上記の過大荷重よりも小さい所定荷重に達した場合に車軸90の回転を減速させる処理を加えてもよい。
【0050】
また、本明細書においては、「清磨」なる用語を、主として「元の状態に綺麗に戻すための磨き」という意味で使用しているが、本発明に係る車軸清磨装置及び車軸清磨方法は、この「清磨」を行うものに限定されず、高精度に磨き上げる「精磨」を行う装置及び方法にも適用可能である。