特許第6786064号(P6786064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786064
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】上皮細胞増殖剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/39 20060101AFI20201109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201109BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20201109BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20201109BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20201109BHJP
   C08B 37/00 20060101ALN20201109BHJP
【FI】
   A61K38/39
   A61P43/00 107
   A61P17/16
   A61K8/73
   A61Q19/00
   !C08B37/00 Q
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-80177(P2016-80177)
(22)【出願日】2016年4月13日
(65)【公開番号】特開2017-190297(P2017-190297A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(72)【発明者】
【氏名】商 怡
(72)【発明者】
【氏名】早野 亜衣子
(72)【発明者】
【氏名】内沢 秀光
(72)【発明者】
【氏名】山口 信哉
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−165681(JP,A)
【文献】 特開2005−344073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/39
A61K 8/73
A61P 17/16
A61P 43/00
A61Q 19/00
C08B 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鮭由来のプロテオグリカンを、プロトン型強酸性陽イオン交換樹脂に接触させ、次に、該接触プロテオグリカンをピリジンで中和させ、次に、中和したプロテオグリカンに三酸化硫黄ピリジン錯体を加え、ジメチルスルホキシド中で20〜40℃で1〜5時間反応させ得られる硫酸基が22重量%以上36重量%以下の範囲で付加されたプロテオグリカンを有効成分とする上皮細胞増殖剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効果の高い多硫酸化プロテオグリカンの上皮細胞増殖剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肌などの上皮細胞増殖剤の細胞のターンオーバーの速さは、火傷における回復やシミ、皺などの減少にも関わるので、医薬品や化粧料では重要な事項である。ターンオーバーの速さは細胞の増殖能と同義的であり、細胞増殖因子様作用を有する物質としてタンパク質やペプチドを中心に見出されている。
【0003】
化粧料の分野では、皮膚の健康や美容を保つため、保水性と細胞増殖因子様作用を有する物質が求められている。近年、プロテオグリカンは保水性を有するばかりでなく、細胞増殖因子様作用も有することが明らかにされてきた(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)。しかし、プロテオグリカンの細胞増殖因子様作用は弱いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−247803号 公報
【特許文献2】特開2011−108339号 公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Food Style 21、第13巻No.1、70−72頁、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のプロテオグリカンの上皮細胞増殖因子様作用を改善することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の上皮細胞増殖剤は、プロテオグリカンについて、硫酸基を22重量%以上含む多硫酸化プロテオグリカンを有効成分とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硫酸基を22重量%以上含む多硫酸化プロテオグリカンは、安全で、上皮細胞増殖効果の高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態をより具体的に説明する。
【0010】
本発明の原料となるプロテオグリカンは、動物や魚類に存在するグリコサミノグリカンとタンパク質の共有結合物からなる分子量数十万から数百万の天然高分子化合物である。起源となる生物や抽出・製造条件により、分子量や含まれる糖(ウロン酸、アミノ糖、中性糖など)やアミノ酸の種類や量、比率も異なっているが、本発明の原料となるプロテオグリカンは、起源となる生物や抽出・製造条件を問わない。プロテオグリカンは、糖タンパク質の一種であるが、グリコサミノグリカンの重量構成比が70%以上であり、ウロン酸とアミノ糖がほぼ当量で含まれている。そのため、プロテオグリカンの簡易な定性法、定量法として、ウロン酸に特異的な呈色反応法であるカルバゾール硫酸法が、一般的に用いられている。
【0011】
本発明でいう多硫酸化プロテオグリカンとは、プロテオグリカンのヒドロキシ基に硫酸基がエステル結合したものであって、プロテオグリカン全体の重量のうち、硫酸基を22重量%以上含有するプロテオグリカンをいう。本発明は天然のプロテオグリカンに硫酸基を付加させた多硫酸化プロテオグリカンが、上皮細胞増殖剤として有効であることを見出したものである。
【0012】
硫酸基含量の測定法は、元素分析あるいはロジゾン酸法などの比色法など、硫酸基が定量できる方法であればいずれでもよい。元素分析の場合は、分析の結果から得られた硫黄含量を基に硫酸基含量を算出する。プロテオグリカンにおいて、硫黄原子は糖鎖中の硫酸基とタンパク質中のアミノ酸に含まれる。プロテオグリカンのタンパク質中のアミノ酸の硫黄量は、プロテオグリカンの糖鎖中の硫酸基の硫黄量に比べて極めて少ない。よって、本明細書においては、元素分析で測定された硫黄含量を、糖鎖の硫酸基由来の硫黄含量として表し、硫黄含量から硫酸基含量を計算で求める。硫黄含量を測定する元素分析については、硫黄含量を測定できる手法であればいずれでもよい。
【0013】
硫酸基を22重量%以上含む多硫酸化プロテオグリカンは、原料となるプロテオグリカンを有機溶媒に可溶な状態にし、有機溶媒中にて、硫酸や三酸化硫黄ピリジン錯体、三酸化硫黄トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄ジメチルホルムアミド錯体など各種硫酸化試薬を反応させることにより得られる。有機溶媒は可能な限り予備乾燥され、水分や不純物が少ないものが、反応効率の点で好ましい。反応温度は概ね20〜60℃程度、反応時間は概ね1時間以上必要である。硫酸化試薬は、そのまま反応液に添加する方法でもよいし、はじめに有機溶媒に溶解させ、その溶解液を反応液に滴下する方法でもよい。
【0014】
硫酸化反応後、少量の水を添加することで反応を止め、塩基による中和工程や、エタノール沈殿や透析などによる精製工程を経て、本発明の実施の形態に係る多硫酸化プロテオグリカンが得られる。
【0015】
本発明の上皮細胞増殖剤は使用製品形態により異なるが、多硫酸化プロテオグリカンをおおよそ0.01重量%以上含んだ状態で使用するのが好ましい。
【0016】
本発明の上皮細胞増殖剤の有効成分である多硫酸化プロテオグリカンは水溶性であることから、そのまま固体での使用以外にも、水溶液に溶解し使用可能であり、ハンドリングに優れている。化粧料として使用する場合は、化粧水、乳液、クリームなどに容易に添加することができる。医薬用的な利用として、皮膚へ塗布するクリームや貼付剤の原料の一部として添加してもよい。また、他の原材料と一緒にカプセルの中に封じ込めたり、錠剤化してもよい。
【0017】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これは単に例示の目的で述べるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
(多硫酸化プロテオグリカンの製造1−1:プロテオグリカンピリジニウム塩の調製)
原料となるプロテオグリカンは、市販の鮭由来プロテオグリカン(角弘プロテオグリカン研究所)を購入し、用いた(以降、「原料PG」と表記する)。強酸性陽イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSK1B(三菱化学))をガラス製カラムに充填し(内径4.5cm、高さ5cm)、1M塩酸60mLと脱イオン水200mLを順次流下して樹脂をプロトン型に活性化した後、原料PG0.50gを脱イオン水10mLに溶解した溶液を、室温でカラム上方から添加・流下した。その後、樹脂に脱イオン水を約50mL流下し、溶出液約60mLを得た。溶出液のpHを卓上pHメータ(F−55、堀場製作所製)で測定したところ、2.1であった。pHを測定しながら、ピリジン(試薬特級、関東化学)を滴下し、溶出液のpHを6.6とした。中和後の溶液を回収し、凍結乾燥し、0.54gの白色綿状固体であるプロテオグリカンピリジニウム塩を得た。以降の実施例で用いるプロテオグリカンピリジニウム塩は、すべて本実施例と同じ方法で得たものである。
【0019】
(多硫酸化プロテオグリカンの製造1−2:硫酸化反応)
本実施例に係るプロテオグリカンピリジニウム塩15mgとジメチルスルホキシド(特級、関東化学)0.9mLをふた付バイアル瓶に入れ、続いて三酸化硫黄ピリジン錯体(純度90%以上、和光純薬工業)47mgを添加し、プロテオグリカンピリジニウム塩と三酸化硫黄ピリジン錯体をジメチルスルホキシドに溶解させた。バイアル瓶のふたを閉め、溶液が入ったバイアル瓶を20℃の恒温水層に入れた。1時間後にバイアル瓶を恒温水層から取り出し、溶液のpHを卓上pHメータ(F−55、堀場製作所製)により測定したところ、弱酸性を呈した。溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和し、全量をプラスチック製遠沈管に移し、エタノール30mLを加え、卓上遠心機(himac CT 6D、日立工機製)を用い、2,000rpmで10分間、室温で遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約10mLを加え、溶解させた。溶解液にエタノール30mLを加え、再度遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約15mLを加え、溶解させた。溶解液全量を透析用セルロースチューブ(エーディア)に入れ、チューブの両端をクリップ留めし、脱イオン水を外液にして透析した。外液は1日に3回交換した。3日後、透析用セルロースチューブ内液を回収し、エバポレーターで溶液が約5mLになるまで濃縮した。濃縮後の溶液を凍結乾燥し、15mgの白色綿状固体である多硫酸化プロテオグリカンを得た。
【0020】
(多硫酸化プロテオグリカンの分析1)
実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンのウロン酸含量をカルバゾール硫酸法で求めた。実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンの200μg/mL水溶液0.25mLに、カルバゾール溶液50μLと濃硫酸1.5mLを添加してよく撹拌し、20分間100℃で加熱した。放冷後、分光光度計(U−3410、日立製作所製)で535nmの吸光度を測定した。グルクロン酸(シグマ)を標準物質として作成した検量線より、実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンのウロン酸含量は32.7重量%と算出された。
【0021】
原料PGのウロン酸含量を、同様の方法で測定したところ、34.6重量%であった。
【0022】
実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンの硫酸基含量を、燃焼型元素分析装置vario EL cube(エレメンタール社製)を用い、炭素・水素・窒素・硫黄の4元素測定モードで測定した結果より算出した。実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンの硫黄含量は7.5重量%であり、硫酸基含量は22.5重量%と算出された。同様の測定法で原料PGを測定したところ、硫黄含量は4.5重量%であり、硫酸基含量は13.5重量%と算出された。
【0023】
実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンの炭素含量を、燃焼型元素分析装置vario EL cube(エレメンタール社製)を用い、炭素・水素・窒素・硫黄の4元素測定モードで測定した。実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンの炭素含量は29.95重量%であり、炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.25であった。同様の測定法で原料PGの炭素含量を測定したところ、炭素含量は30.85重量%であり、炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.15であった。硫酸化反応の前後で、プロテオグリカンの基本骨格を成す炭素原子の量は不変であるため、炭素含量に対する硫黄含量の重量比を比較することで、硫酸基の導入度合を算出することができる。炭素含量に対する硫黄含量の重量比の相対比より、実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PGの約1.7倍に硫酸基が増えたことが分かった。
【0024】
(上皮細胞数の測定方法の検討)
上皮細胞として、正常ヒト皮膚線維芽細胞(クラボウ)を用いた。96ウェルプレートに、5%FBS/DMEM培地を用いて、37℃、5%COの条件下で、細胞数を変えて播種した。細胞数の測定にあたって、生細胞に特異的に反応し、生成する水溶性ホルマザンの濃度を指標として、細胞数を算出した。具体的には、セルカウンティングキット−8 (同仁化学)を用い、最終濃度10%(v/v)となるように各ウェルに加え、37℃、5%COの条件下で1時間反応させ、マイクロプレートリーダー(TriStar LB941、ベルトールドジャパン社製)を用いて、450nmの吸光度を測定した。予備試験の結果、細胞数0〜4×10cells/ウェルの範囲で、450nmの吸光度と正の一次相関が得られた。以下、明細書では細胞数を吸光度で測定することとする。
【0025】
(上皮細胞増殖促進効果の検討1)
正常ヒト皮膚線維芽細胞(クラボウ)を96ウェルプレートに4×10cells/ウェルの密度で播種し、5%FBS/DMEM培地を用いて、37℃、5%COの条件下24時間前培養を行った。その後、試験物質として原料PGまたは実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカン(添加濃度100、200、400mg/mL)を添加した0.25%FBS/DMEM培地に交換して、さらに72時間培養した。試験物質を添加していない区分を無添加対照群とした。また5%FBS/DMEM培地で37℃、5%COの条件下で培養したものを陽性対照群とした(各群のサンプル数8)。培養終了後、セルカウンティングキット−8 (同仁化学)を用い、上記と同様に450nmの吸光度を測定した。実験データは平均値±標準誤差で表し、無添加対照群の細胞増殖率を100%として、テューキー法の検定により各群の細胞増殖率を比較した。
【0026】
その結果、原料PG群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ106.4±1.4、109.0±1.2、110.4±1.3%であった。実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカン群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ117.4±2.1、122.0±1.9、126.6±2.5%であった。なお、陽性対照群の細胞増殖率は169.1±2.6であった。テューキー法の検定により各群の細胞増殖率を比較したところ、原料PG群の100mg/mLの添加に対して、実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンの100mg/mL添加は有意差(p<0.01)があり、原料PG群の400mg/mLの添加に対して、200と400mg/mL添加は有意差(p<0.01)があった。実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PG群に対して有意な細胞増殖能の向上が認められた。なお、実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカン群は全ての添加濃度において、無添加対照群に対して有意差(p<0.01)があり、細胞増殖能の向上が認められた。原料PG及び実施例1に係る多硫酸化プロテオグリカンを添加しても、細胞の形態などには異常が観察されず、細胞毒性などはないものと判断された。
【実施例2】
【0027】
(多硫酸化プロテオグリカンの製造2)
実施例1に係るプロテオグリカンピリジニウム塩15mgとジメチルスルホキシド(特級、関東化学)0.9mLをふた付バイアル瓶に入れ、続いて三酸化硫黄ピリジン錯体(純度90%以上、和光純薬工業)79mgを添加し、プロテオグリカンピリジニウム塩と三酸化硫黄ピリジン錯体をジメチルスルホキシドに溶解させた。バイアル瓶のふたを閉め、溶液が入ったバイアル瓶を20℃の恒温水層に入れた。1時間後にバイアル瓶を恒温水層から取り出し、溶液のpHを卓上pHメータ(F−55、堀場製作所製)により測定したところ、弱酸性を呈した。溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和し、全量をプラスチック製遠沈管に移し、エタノール30mLを加え、卓上遠心機(himac CT 6D、日立工機製)を用い、2,000rpmで10分間、室温で遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約10mLを加え、溶解させた。溶解液にエタノール30mLを加え、再度遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約15mLを加え、溶解させた。溶解液全量を透析用セルロースチューブ(エーディア)に入れ、チューブの両端をクリップ留めし、脱イオン水を外液にして透析した。外液は1日に3回交換した。3日後、透析用セルロースチューブ内液を回収し、エバポレーターで溶液が約5mLになるまで濃縮した。濃縮後の溶液を凍結乾燥し、15mgの白色綿状固体である多硫酸化プロテオグリカンを得た。
【0028】
(多硫酸化プロテオグリカンの分析2)
実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカンのウロン酸含量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、29.9重量%であった。
【0029】
実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカンの硫酸基含量を、実施例1と同様の方法で算出したところ、硫黄含量は8.5重量%であり、硫酸基含量は25.0重量%であった。
【0030】
実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカンの炭素含量を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、炭素含量は28.29重量%であり、炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.30であった。実施例1より、原料PGの炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.15であった。炭素含量に対する硫黄含量の重量比の相対比より、実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PGの約2.0倍に硫酸基が増えたことが分かった。
【0031】
(上皮細胞増殖促進効果の検討2)
試験物質として原料PGと実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカンを用いて、実施例1と同様の方法で試験を行った。その結果、原料PG群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ106.4±1.4、109.0±1.2、110.4±1.3%であった。実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカン群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ113.5±1.9、123.3±2.8、123.9±2.9%であった。なお、陽性対照群の細胞増殖率は169.1±2.6であった。テューキー法の検定により各群の細胞増殖率を比較したところ、原料PG群の100mg/mLの添加に対して、実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカンの100mg/mL添加は有意差(p<0.05)があり、原料PG群の400mg/mLの添加に対して、実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカンの200と400mg/mL添加は有意差(p<0.01)があった。実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PG群に対して細胞増殖能の向上が認められた。なお、実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカン群は全ての添加濃度において、無添加対照群に対して有意差(p<0.01)が有り、細胞増殖能の向上が認められた。実施例2に係る多硫酸化プロテオグリカンを添加しても、細胞の形態などには異常が観察されず、細胞毒性などはないものと判断された。
【実施例3】
【0032】
(多硫酸化プロテオグリカンの製造3)
実施例1に係るプロテオグリカンピリジニウム塩30mgとジメチルスルホキシド(特級、関東化学)1.8mLをふた付バイアル瓶に入れ、続いて三酸化硫黄ピリジン錯体(純度90%以上、和光純薬工業)94mgを添加し、プロテオグリカンピリジニウム塩と三酸化硫黄ピリジン錯体をジメチルスルホキシドに溶解させた。バイアル瓶のふたを閉め、溶液が入ったバイアル瓶を40℃の恒温水層に入れた。1時間後にバイアル瓶を恒温水層から取り出し、溶液のpHを卓上pHメータ(F−55、堀場製作所製)により測定したところ、弱酸性を呈した。溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和し、全量をプラスチック製遠沈管に移し、エタノール30mLを加え、卓上遠心機(himac CT 6D、日立工機製)を用い、2,000rpmで10分間、室温で遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約10mLを加え、溶解させた。溶解液にエタノール30mLを加え、再度遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約15mLを加え、溶解させた。溶解液全量を透析用セルロースチューブ(エーディア)に入れ、チューブの両端をクリップ留めし、脱イオン水を外液にして透析した。外液は1日に3回交換した。3日後、透析用セルロースチューブ内液を回収し、エバポレーターで溶液が約5mLになるまで濃縮した。濃縮後の溶液を凍結乾燥し、35mgの白色綿状固体である多硫酸化プロテオグリカンを得た。
【0033】
(多硫酸化プロテオグリカンの分析3)
実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンのウロン酸含量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、28.5重量%であった。
【0034】
実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンの硫酸基含量を、実施例1と同様の方法で算出したところ、硫黄含量は11.0重量%であり、硫酸基含量は33.0重量%であった。
【0035】
実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンの炭素含量を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、炭素含量は26.24重量%であり、炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.42であった。実施例1より、原料PGの炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.15であった。炭素含量に対する硫黄含量の重量比の相対比より、実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PGの約2.8倍に硫酸基が増えたことが分かった。
【0036】
(上皮細胞増殖促進効果の検討3)
試験物質として原料PGと実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンを用いて、実施例1と同様の方法で試験を行った。その結果、原料PG群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ106.4±1.4、109.0±1.2、110.4±1.3%であった。実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカン群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ115.7±1.8、118.5±2.4、122.5±3.0%であった。なお、陽性対照群の細胞増殖率は169.1±2.6であった。テューキー法の検定により各群の細胞増殖率を比較したところ、原料PG群の100mg/mLの添加に対して、実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンの100mg/mL添加は有意差(p<0.01)があり、原料PG群の200mg/mLの添加に対して、実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンの200mg/mL添加は有意差(p<0.05)があり、原料PG群の400mg/mLの添加に対して、実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンの400mg/mL添加は有意差(p<0.01)があった。実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PG群に対して細胞増殖能の向上が認められた。なお、実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカン群は全ての添加濃度において、無添加対照群に対して有意差(p<0.01)があり、細胞増殖能の向上が認められた。実施例3に係る多硫酸化プロテオグリカンを添加しても、細胞の形態などには異常が観察されず、細胞毒性などはないものと判断された。
【実施例4】
【0037】
(多硫酸化プロテオグリカンの製造4)
実施例1に係るプロテオグリカンピリジニウム塩30mgとジメチルスルホキシド(特級、関東化学)1.8mLをふた付バイアル瓶に入れ、続いて三酸化硫黄ピリジン錯体(純度90%以上、和光純薬工業)157mgを添加し、プロテオグリカンピリジニウム塩と三酸化硫黄ピリジン錯体をジメチルスルホキシドに溶解させた。バイアル瓶のふたを閉め、溶液が入ったバイアル瓶を40℃の恒温水層に入れた。1時間後にバイアル瓶を恒温水層から取り出し、溶液のpHを卓上pHメータ(F−55、堀場製作所製)により測定したところ、弱酸性を呈した。溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和し、全量をプラスチック製遠沈管に移し、エタノール30mLを加え、卓上遠心機(himac CT 6D、日立工機製)を用い、2,000rpmで10分間、室温で遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約10mLを加え、溶解させた。溶解液にエタノール30mLを加え、再度遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約15mLを加え、溶解させた。溶解液全量を透析用セルロースチューブ(エーディア)に入れ、チューブの両端をクリップ留めし、脱イオン水を外液にして透析した。外液は1日に3回交換した。3日後、透析用セルロースチューブ内液を回収し、エバポレーターで溶液が約5mLになるまで濃縮した。濃縮後の溶液を凍結乾燥し、38mgの白色綿状固体である多硫酸化プロテオグリカンを得た。
【0038】
(多硫酸化プロテオグリカンの分析4)
実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカンのウロン酸含量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、27.5重量%であった。
【0039】
実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカンの硫酸基含量を、実施例1と同様の方法で算出したところ、硫黄含量は12.0重量%であり、硫酸基含量は36.0重量%であった。
【0040】
実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカンの炭素含量を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、炭素含量は25.30重量%であり、炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.47であった。実施例1より、原料PGの炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.15であった。炭素含量に対する硫黄含量の重量比の相対比より、実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PGの約3.1倍に硫酸基が増えたことが分かった。
【0041】
(上皮細胞増殖促進効果の検討4)
試験物質として原料PGと実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカンを用いて、実施例1と同様の方法で試験を行った。その結果、原料PG群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ106.4±1.4、109.0±1.2、110.4±1.3%であった。実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカン群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ120.2±2.6、128.5±2.4、131.6±2.8%であった。なお、陽性対照群の細胞増殖率は169.1±2.6であった。テューキー法の検定により各群の細胞増殖率を比較したところ、原料PG群の400mg/mLの添加に対して、実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカンの100mg/mL添加は有意差(p<0.05)があり、実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカンの200、400mg/mL添加は有意差(p<0.01)があった。実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PG群に対して細胞増殖能の向上が認められた。なお、実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカン群は全ての添加濃度において、無添加対照群に対して有意差(p<0.01)があり、細胞増殖能の向上が認められた。実施例4に係る多硫酸化プロテオグリカンを添加しても、細胞の形態などには異常が観察されず、細胞毒性などはないものと判断された。
【実施例5】
【0042】
(多硫酸化プロテオグリカンの製造5)
実施例1に係るプロテオグリカンピリジニウム塩30mgとジメチルスルホキシド(特級、関東化学)1.8mLをふた付バイアル瓶に入れ、続いて三酸化硫黄ピリジン錯体(純度90%以上、和光純薬工業)157mgを添加し、プロテオグリカンピリジニウム塩と三酸化硫黄ピリジン錯体をジメチルスルホキシドに溶解させた。バイアル瓶のふたを閉め、溶液が入ったバイアル瓶を40℃の恒温水層に入れた。5時間後にバイアル瓶を恒温水層から取り出し、全量をプラスチック製遠沈管に移し、エタノール6mLを加え、卓上遠心機(himac CT 6D、日立工機製)を用い、2,000rpmで10分間、室温で遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約3mLを加え、溶解させた。溶液のpHを卓上pHメータ(F−55、堀場製作所製)により測定したところ、弱酸性を呈した。溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和し、溶液全量を透析用セルロースチューブ(エーディア)に入れ、チューブの両端をクリップ留めし、脱イオン水を外液にして透析した。外液は1日に3回交換した。3日後、透析用セルロースチューブ内液を凍結乾燥し、39mgの白色綿状固体である多硫酸化プロテオグリカンを得た。
【0043】
(多硫酸化プロテオグリカンの分析5)
実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカンのウロン酸含量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、22.3重量%であった。
【0044】
実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカンの硫酸基含量を、実施例1と同様の方法で算出したところ、硫黄含量は11.8重量%であり、硫酸基含量は35.4重量%であった。
【0045】
実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカンの炭素含量を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、炭素含量は24.45重量%であり、炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.48であった。実施例1より、原料PGの炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.15であった。炭素含量に対する硫黄含量の重量比の相対比より、実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PGの約3.2倍に硫酸基が増えたことが分かった。
【0046】
(上皮細胞増殖促進効果の検討5)
試験物質として原料PGと実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカンを用いて、実施例1と同様の方法で試験を行った。その結果、原料PG群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ106.4±1.4、109.0±1.2、110.4±1.3%であった。実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカン群の細胞増殖率は、添加濃度100、200、400mg/mLで、それぞれ124.4±1.7、131.7±2.2、139.9±3.9%であった。なお、陽性対照群の細胞増殖率は169.1±2.6であった。テューキー法の検定により各群の細胞増殖率を比較したところ、原料PG群の400mg/mLの添加に対して、実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカンの100、200、400mg/mL添加は有意差(p<0.01)があった。実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PG群に対して細胞増殖能の向上が認められた。なお、実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカン群は全ての添加濃度において、無添加対照群に対して有意差(p<0.01)があり、細胞増殖能の向上が認められた。実施例5に係る多硫酸化プロテオグリカンを添加しても、細胞の形態などには異常が観察されず、細胞毒性などはないものと判断された。
【実施例6】
【0047】
(多硫酸化プロテオグリカンの製造6)
実施例1に係るプロテオグリカンピリジニウム塩30mgとジメチルスルホキシド(特級、関東化学)1.8mLをふた付バイアル瓶に入れ、続いて三酸化硫黄ピリジン錯体(純度90%以上、和光純薬工業)157mgを添加し、プロテオグリカンピリジニウム塩と三酸化硫黄ピリジン錯体をジメチルスルホキシドに溶解させた。バイアル瓶のふたを閉め、溶液が入ったバイアル瓶を40℃の恒温水層に入れた。5時間後にバイアル瓶を恒温水層から取り出し、溶液のpHを卓上pHメータ(F−55、堀場製作所製)により測定したところ、弱酸性を呈した。溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和し、全量をプラスチック製遠沈管に移し、エタノール60mLを加え、卓上遠心機(himac CT 6D、日立工機製)を用い、3,000rpmで15分間、室温で遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約10mLを加え、溶解させた。溶解液にエタノール60mLを加え、再度遠心分離を行った。遠心分離処理後、上澄みを除去し、得られた沈殿に脱イオン水約15mLを加え、溶解させた。溶解液全量を透析用セルロースチューブ(エーディア)に入れ、チューブの両端をクリップ留めし、脱イオン水を外液にして透析した。外液は1日に3回交換した。3日後、透析用セルロースチューブ内液を回収し、エバポレーターで溶液が約5mLになるまで濃縮した。濃縮後の溶液を凍結乾燥し、38mgの白色綿状固体である多硫酸化プロテオグリカンを得た。
【0048】
(多硫酸化プロテオグリカンの分析6)
実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカンのウロン酸含量を、実施例1と同様の方法で測定したところ、22.4重量%であった。
【0049】
実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカンの硫酸基含量を、実施例1と同様の方法で算出したところ、硫黄含量は11.6重量%であり、硫酸基含量は34.8重量%であった。
【0050】
実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカンの炭素含量を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、炭素含量は22.71重量%であり、炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.51であった。実施例1より、原料PGの炭素含量に対する硫黄含量の重量比は0.15であった。炭素含量に対する硫黄含量の重量比の相対比より、実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカンは、原料PGの約3.4倍に硫酸基が増えたことが分かった。
【0051】
(上皮細胞増殖促進効果の検討6)
試験物質として原料PGと実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカンを用いて、実施例1と同様の方法で試験を行った。その結果、原料PG群の細胞増殖率は、添加濃度100、と400mg/mLで、それぞれ105.0±2.2、108.1±2.7%であった。実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカン群の細胞増殖率は、添加濃度100と400mg/mLで、それぞれ113.2±1.5、122.0±2.5%であった。なお、陽性対照群の細胞増殖率は162.2±4.0であった。テューキー法の検定により各群の細胞増殖率を比較したところ、原料PG群の100mg/mLの添加に対して、実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカンの100mg/mL添加は有意差(p<0.05)があり、原料PG群の400mg/mLの添加に対して、実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカンの400mg/mL添加は有意差(p<0.01)があった。なお、実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカン群は全ての添加濃度において、無添加対照群に対して有意差(p<0.01)があり、細胞増殖能の向上が認められた。実施例6に係る多硫酸化プロテオグリカンを添加しても、細胞の形態などには異常が観察されず、細胞毒性などはないものと判断された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、従来のプロテオグリカンの上皮細胞増殖能を改善することができた。本発明は、化粧品、医薬品の分野で広く利用されることが可能である。