(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記恒久足場パネル仮吊り工程では、前記鋼桁に設置した水平方向に揺動自在なジブクレーンを用いて、既に仮吊りした前記恒久足場パネルから順次跳ね出して前記恒久足場パネルを仮吊りすること
を特徴とする請求項4又は5に記載の橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(恒久足場パネル)
先ず、
図1を用いて、本発明の実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法に用いる恒久足場パネルについて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法に用いる恒久足場パネル1を示す斜視図である。
【0023】
本発明の実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法に用いる恒久足場パネル1は、本無足場設置工法により最終的に設置する恒久足場の一部であるとともに、その設置作業の途中に仮設足場としても使用するものである。
【0024】
図1に示すように、恒久足場パネル1は、最終的に設置する恒久足場が所定の大きさのパネル状に分割されてユニット化されたものである。この恒久足場パネル1は、曲げ剛性を向上させてパネル全体を支持する支持梁として、橋軸方向に沿って取り付けられる複数本の縦梁10と、これらの縦梁10の下端に直交して取り付けられた複数本の横梁など、を備えている。横梁は、縦梁10の両端に取り付けられた一対の端末横梁11と、これらの一対の端末横梁11間の中央付近に取り付けられた中間横梁12と、これらの端末横梁11と中間横梁12との間に取り付けられた複数本の根太13など、から構成されている。
【0025】
また、これらの横梁(端末横梁11、中間横梁12、及び根太13)の下端には、これらと直交して複数本の固定式のルーバー14が取り付けられ、これらの横梁の上端には、断面が凹凸状に折り曲げ成形された折板15が取り付けられている。
【0026】
この恒久足場パネル1は、高所作業車で揚重可能な所定の大きさ、例えば、一般的な高所作業車のケージ内に納まる縦2m×横3m程度で、重量が1177N(120kgf)程度を限度とする大きさに分割・ユニット化されている。勿論、前述の恒久足場パネル1の大きさは、あくまでも目安であり、使用可能な高所作業車を適宜選定しそれに応じて揚重可能な範囲を設定すればよいことは云うまでもない。
【0027】
本実施形態に係る一対の縦梁10は、一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる梁成200mm×梁幅100mm×ウェブ厚5.5mm×フランジ厚8mmのH形鋼に防錆のための溶融亜鉛めっきが施された梁であり、橋軸方向に沿って取り付けられる部材である。ここで、橋軸方向とは、橋梁の鋼桁の軸方向を指し、橋直方向とは、この橋軸方向に直交する水平方向を指している(以下、同じ)。
【0028】
本実施形態に係る横梁(端末横梁11、中間横梁12、及び根太13)は、いずれも防錆のため高耐食性の溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっきが施された鋼材からなる。端末横梁11は、梁成100mm×梁幅70mm×厚さ3.2mmの溝形鋼からなり、中間横梁12は、梁成100mm×梁幅100mm×ウェブ厚2.3mm×フランジ厚3.2mmのH形鋼からなる。また、根太13は、梁成100mm×梁幅50mm×厚さ1.0mmの溝形鋼からなる。
【0029】
また、ルーバー14は、アルミ合金から押出成形された断面台形状の条材からなる恒久足場の下面の見栄えを良くする外装化粧用のルーバーであり、前述の横梁の下端に一定間隔を空けて固着されている。
【0030】
折板15は、板厚0.4mmの高耐食性の溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板から橋軸方向に沿った凹凸状に折り曲げ加工された折板であり、恒久足場の歩行面となる。なお、
図1には、2本の縦梁10間にのみ図示されているが、縦梁10の外側にも取り付けられるものである。
【0032】
次に、前述の恒久足場パネル1を橋梁の鋼桁に固定支持するための本設吊支材について簡単に説明する。
図2は、恒久足場パネル1の本設吊支材を示す図であり、(a)が正面図、(b)がそのA−A線断面図、(c)がB矢視図、(d)がC矢視図、(e)D−D線断面図である。
【0033】
本設吊支材は、
図2に示すように、前述の一対の縦梁10間に架け渡される横梁G1と、この横梁G1を橋梁の鋼桁H1に吊り下げ固定するための吊支材など、から構成されている。吊支材は、橋梁の鋼桁H1のウェブ側面に突設されるブラケットB1と、このブラケットB1に上端が固定されて横梁G1を吊り下げ支持する吊り材L1など、から構成されている。
【0034】
また、吊り材L1は、L形アングルL2を介して横梁G1に接合され、ブラケットB1は、L形アングルL3を介して鋼桁H1に接合されている。
【0035】
なお、本実施形態に係る吊支材は、溶融亜鉛めっきが施された一般構造用圧延鋼材(SS400)からなり、これらの部材間の接合は、ハイテンションボルトでボルト接合されている。
【0036】
以上説明した本実施形態に係る恒久足場パネル及びその本設吊支材で例示した材質や防錆処理は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、適宜変更できることは云うまでもない。
【0037】
<橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法>
【0038】
次に、
図3〜
図11を用いて、本発明の実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法について、前述の恒久足場パネル1を用いて、I形鋼からなる3本の鋼桁H1で床版S1を支持する橋梁Bに適用する場合で説明する。
図3は、本実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法の仮設材取付工程を斜視図で示す工程説明図である。
【0040】
先ず、
図3に示すように、本実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法では、恒久足場パネル1の縦梁10間に仮設条材を架け渡して補強するとともに、仮設条材に橋梁の鋼桁H1に仮固定するための鉄骨用クランプを取り付ける仮設材取付工程を行う。
【0041】
具体的には、本工程では、仮設材として一般的な単管パイプP1を仮設条材として用い、この単管パイプP1を二本、恒久足場パネル1の縦梁10の両端付近に架け渡し、本設の横梁G1が取り付けられていない恒久足場パネル1の曲げ剛性を補強する。
【0042】
そして、架け渡した単管パイプP1に、これと直交する単管パイプP2を直交クランプで接合し、この単管パイプP2の上端付近に、鋼桁H1の下フランジに接合するためのバイス型クランプC1を取り付ける。
【0043】
このとき、単管パイプP2の間隔は、鋼桁H1の下フランジの幅に合わせるとともに、バイス型クランプC1に取り付け高さも、恒久足場パネル1を設置する正規の高さになるよう設定する。後工程で、本設吊支材に盛り替える際に、吊上げたり水平にずらしたりする手間を省くためである。
【0044】
勿論、単管パイプも角形鋼管、C型チャンネル(溝形鋼)、L形アングル(山形鋼)など、仮設材として設ける条材であればよく、バイス型クランプC1も、これに限られず、鋼桁H1の下フランジに接合可能な鉄骨用クランプであればよい(以下同じ)。
【0045】
なお、本工程は、恒久足場パネル1を製造する工場や恒久足場を設置する橋梁近郊の空き地など、交通規制の必要のない場所で行うことが好ましい。また、
図3中の破線は、高所作業車の一般的なケージの大きさを表している。
【0047】
次に、本実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法では、揚重した恒久足場パネル1を鋼桁H1に仮固定するともに、仮設線材を用いて鋼桁H1に単管パイプP1の両端部を吊り下げて支持する恒久足場パネル仮吊り工程を行う。この恒久足場パネル仮吊り工程は、
図4〜
図9に示すように、複数のステップがあるため順を追って説明する。
図4は、橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法の恒久足場パネル仮吊り工程の第1足場パネル1−1の仮固定ステップを示す工程説明図であり、(a)が鉛直断面図、(b)が見下げ斜視図、(c)が見上げ斜視図である。
【0048】
本工程では、先ず、
図4に示すように、最終的に設置する恒久足場を前述の所定の大きさに分割してユニット化した複数の恒久足場パネル1の内の1つである第1足場パネル1−1を揚重して仮固定する。なお、揚重方法については、後で詳述する。また、第1足場パネル1−1は、
図4に示すように、恒久足場パネル1の内、橋直方向の端部に位置するパネルを例示している。
【0049】
具体的には、前述の要領で取り付けたバイス型クランプC1で鋼桁H1の下フランジに第1足場パネル1−1を恒久足場の設計通りの高さ及び位置に掛け止めて仮固定する。そして、鋼桁H1の上部に取り付けたUボルトUBに仮設線材である足場チェーンC2を通し、足場チェーンC2の両端を単管パイプP1の両端付近に固定する。このように、足場チェーンC2で吊るのは、本設の横梁G1が未だ取り付けられておらず、曲げ剛性の弱い第1足場パネル1−1の橋直方向の端部を足場チェーンC2で吊り下げ支持するためである(
図5も参照)。勿論、使用する仮設線材は、足場チェーンC2に限られず、ワイヤロープなどの吊り下げ支持に必要な強度を有する線材であれば採用することができる。
【0050】
次に、本工程では、
図5に示すように、第1足場パネル1−1に隣接する第2足場パネル1−2を仮固定して足場チェーンC2で吊り下げ支持する第2足場パネル1−2仮固定ステップを行う。仮固定の方法や足場チェーンC2で吊り下げ支持の方法は、前ステップと同様である。
図5は、恒久足場パネル仮吊り工程の第2足場パネルの仮固定ステップを示す工程説明図であり、(a)が鉛直断面図、(b)が見下げ斜視図、(c)が見上げ斜視図である。
【0051】
また、第1足場パネル1−1と第2足場パネル1−2との接合は、横梁(端末横梁11、中間横梁12、及び根太13)同士を、添接板などを用いて本設と同じハイテンションボルトでボルト接合する。なお、仮固定状態では、ボルト接合の強度は期待していない。
【0052】
次に、本工程では、
図6に示すように、第2足場パネル1−2に隣接する第3足場パネル1−3を仮固定して足場チェーンC2で吊り下げ支持する第3足場パネル1−3仮固定ステップを行う。
図6は、恒久足場パネル仮吊り工程の第3足場パネルの仮固定ステップを示す工程説明図であり、(a)が鉛直断面図、(b)が見下げ斜視図、(c)が見上げ斜視図である。
【0053】
また、横梁(端末横梁11、中間横梁12、及び根太13)同士を、添接板などを用いてボルト接合することにより第2足場パネル1−2と第3足場パネル1−3との接合も行う。なお、図示形態では、第3足場パネル1−3と、第1足場パネル1−1とは、左右対称の関係となっている。
【0054】
次に、本工程では、
図7に示すように、第1足場パネル1−1及び第3足場パネル1−3と橋梁Bとの間の側面を塞ぐ恒久側面パネル2も、一般的に支保工などに用いるパイプサポートP3と単管パイプP4を用いて仮固定する。なお、恒久側面パネル2は、第1足場パネル1−1と橋梁Bとの間が第1側面パネル2−1であり、第3足場パネル1−3と橋梁Bとの間が第2側面パネル2−2である。
【0055】
具体的には、第1側面パネル2−1を第1足場パネル1−1の上の所定の位置に載置し、長さ調整可能なパイプサポートP3を伸縮させて第1側面パネル2−1の設置角度を微調整する。これにより、第1足場パネル1−1と第1側面パネル2−1とが直角となるように設置し(
図10も参照)、そのパイプサポートP3で固定した角度で第1側面パネル2−1の下部を単管パイプP4で仮固定する。単管パイプP4は、第1足場パネル1−1の単管パイプP1に自在クランプ等で接合し、第1側面パネル2−1の下部を斜めに方杖として固定支持する。また、第2側面パネル2−2も同様に仮固定する。
【0056】
以上のステップにより、
図8、
図10に示すように、恒久足場パネル1の1スパンの仮固定が完了する。このステップを繰り返すことで、
図9に示すように、恒久足場パネル1を1スパンずつ順次に仮固定して行き、恒久足場を設置する全範囲の恒久足場パネル1の仮固定を完了させることにより、本工程である恒久足場パネル仮吊り工程が終了する。
【0057】
なお、
図8は、恒久足場パネル仮吊り工程の1スパンが完了した状態を示す見上げ斜視図であり、
図9は、恒久足場パネル仮吊り工程の3スパンが完了した状態を示す見上げ斜視図である。また、
図10は、恒久足場パネル仮吊り工程の1スパンが完了した状態を示す鉛直断面図である。
【0058】
図11は、
図10の恒久足場を箱桁橋に適用した場合の変形例を示す鉛直断面図である。
図11に示すように、橋梁B’が箱桁橋であっても、前述の恒久足場パネル仮吊り工程と同様に、単管パイプと足場チェーンで恒久足場パネルを仮固定することができる。
【0059】
(3)本設吊支材盛替工程
次に、本実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法では、
図12に示すように、前工程で仮吊りした恒久足場パネル1を足場として利用して、前述の仮設材及び仮設線材を
図2に示した本設の吊支材に盛り替える本設吊支材盛替工程を行う。
図12は、本実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法の本設吊支材盛替工程を示す工程説明図である。
【0060】
具体的には、単管パイプP1、単管パイプP2、単管パイプP4、及びパイプサポートP3を徐々に撤去して、
図2に示した横梁G1、ブラケットB1、吊り材L1などの本設の吊支材をハイテンションボルトで接合することにより、盛り替える。
【0061】
このとき、工具やボルト、仮設材等が本設である恒久足場に落下したり接触したりして損傷するおそれがある。このため、本工程で本設の吊支材に盛り替え作業を行う前に、恒久足場パネル1の折板15などの上にPP樹脂パネルやプラスチック段ボールなどの床養生材を敷設することが好ましい。
【0062】
以上のように、本工程で全ての仮設材及び仮設線材の本設の吊支材への盛替作業が完了することにより、本実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法による橋梁点検用恒久足場の設置作業が完了する。
【0063】
本実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法によれば、仮吊りした恒久足場パネルを足場として利用して、仮設材及び仮設線材を本設の吊支材に盛り替えるので、通行止めが必要な夜間作業を極力少なくすることができる。即ち、前述の本設吊支材盛替工程で行う本設吊支材への盛替作業は、橋梁下の道路の通行止めをすることなく行うことができる。このため、通行止めを行うために発生する誘導員の増員や迂回手段を作るための作業、夜間作業による労務コストのコストアップなど作業手間と設置コストを低減することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法によれば、橋梁の点検用に設計された恒久足場をそのまま足場として設計通りの設置高さで利用する。このため、従来のように、仮設足場と恒久足場が接近して資材の搬入や移動が困難になることがなく、作業性が良好で短期間で恒久足場の設置が可能となる。
【0065】
それに加え、本実施形態に係る無足場設置工法によれば、恒久側面パネル2もパイプサポートP3等を用いて仮固定するので、設置作業の作業時間を低減できるだけでなく、資材や工具を恒久足場パネル1の端部から落下させるおそれを低減することができる。その上、恒久足場パネル1の側面に仮設の落下防止手摺等を設ける必要がなくなり、さらに作業手間と設置コストを低減することができる。
【0066】
[第1実施形態]
次に、
図13〜
図17を用いて、本発明の第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法についてについて説明する。基本的に、第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法は、前述の実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法と同じであるが、揚重方法を高所作業車で行う場合である。よって、揚重方法について主に説明し、その他の説明は省略する。
【0067】
図13は、本発明の実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法における従来の仮設足場設置範囲を模式的に示す側面図である。
図13に示すように、本発明の実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法であっても、橋脚P周りは、従来と同様に、仮設足場を設置する。仮設足場を設置する範囲は、例えば、橋脚から5mずつとなる10m程度の範囲である。このように、橋脚周りに仮設足場を設置する理由は、仮設材や本設の吊支材等を搬入する資材搬入口とし恒久足場パネルに開口を設ける必要があるとともに、橋脚の形状が橋梁により相違し、落橋防止装置等の取り合いが複雑だからである。
【0068】
図13に示す恒久足場仮吊り架設区間は、前述のように、恒久足場パネル1及び恒久側面パネル2を仮固定及び仮吊りを行う区間である。仮固定及び仮吊りの方法は、前述の通りである。
【0069】
先ず、
図14を用いて、前述の恒久足場パネル仮吊り工程で行う恒久足場パネル1及び恒久側面パネル2の揚重について説明する。
図14は、本発明の第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法の恒久足場パネル仮吊り工程を示す工程説明図である。
【0070】
図14に示すように、恒久足場パネル1及び恒久側面パネル2の揚重は、高所作業車のケージにパネルを載置して搬入し、パネルを設置する直下付近となる橋梁下の道路に高所作業車を設置して揚重する。作業員は、高所作業車のケージにパネルと一緒に搭乗して、前述の仮固定、仮吊りを行う。また、恒久足場パネル仮吊り工程で用いる足場チェーンなどの仮設材等も高所作業車のケージに搭載する。
【0071】
このように、第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法によれば、恒久足場パネル1及び恒久側面パネル2の揚重及び資材の供給を高所作業車で直接行う。このため、橋梁下の道路の一定区間の通行止めを伴い、必然的に夜間作業となる場合が多い。しかし、高所作業車で恒久足場パネル仮吊り工程を行うと、作業空間が自由にとれるため、恒久足場パネル1及び恒久側面パネル2の仮固定・仮吊りの作業自体は極めて作業効率が良く単位時間当たりに設置できる範囲は多くなる。なお、夜間作業の作業時間は、一般的に、PM10時〜AM6時が想定される。
【0072】
次に、
図15を用いて、前述の本設吊支材盛替工程で用いる本設吊支材の搬入・揚重について説明する。
図15は、第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法の本設吊支材盛替工程の資材搬入状況を示す説明図である。
【0073】
図15に示すように、本設吊支材の搬入・揚重は、前述の仮設足場設置範囲に設けた資材搬入口により行う。本設吊支材の搬入は、
図15に示すように、トラック等の搬入車両に本設吊支材を積載して資材搬入口の直下まで搬送して行う。搬入車両からの揚重は、鋼桁H1に架け渡した仮設材に電動ホイストやチェーンブロックを設置することで行う。
【0074】
このように、第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法によれば、本設吊支材の搬入・揚重は、資材搬入口の直下に搬入車両を一時的に停車して行う。このため、資材搬入口の直下の一時的な通行止めを要し、必然的に夜間作業となる場合が多い。しかし、設置した電動ホイスト等で揚重が可能であるため、揚重が容易で短時間に行うことができる。
【0075】
次に、
図16を用いて、前述の本設吊支材盛替工程で用いる本設吊支材の横移動について説明する。
図16は、第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法の本設吊支材盛替工程において、仮設材を本設の吊支材へ盛り替えている状況を示す説明図である。
【0076】
本設吊支材の横移動は、資材搬入口から取り込んだ本設吊支材を、恒久足場パネル1上を作業員が歩行して、人力で運搬し、
図16に示すように、ところどころに本設吊支材に集積することにより行う。また、台車等を利用することもできる。このとき、従来の仮設足場のように、高さがとれず、資材の横移動が極めて困難とならない。つまり、第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法によれば、点検するために設計された恒久足場の設置高さでそのまま利用するので、本設吊支材の横移動が極めて短時間で行える。
【0077】
このように、第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法によれば、本設吊支材の横移動は、仮吊りした恒久足場上において人力又は台車を利用して行う。このため、交通規制の必要は無く、昼間作業とすることができる。
【0078】
また、前述の本設吊支材盛替工程の主な作業は、騒音を伴う鋼材への孔開けやインパクトレンチによるボルト締めであり、昼間作業とすることが好ましく、本設吊支材の横移動と同時に行えるため作業効率が良い。
【0079】
図17は、本設吊支材盛替工程の完了状況を示す説明図である。
図17に示すように、前述の本設吊支材盛替工程が完了すると
図17の状態となる。第1実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法によれば、本設吊支材盛替工程では、ボルト締めや仕上げ塗装などの作業期間中、橋梁下の道路の交通規制が必要ない。このため、通行止めが必要な夜間作業を極力少なくすることができる。よって、通行止めを行うために発生する誘導員の増員や迂回手段を作るための作業、夜間作業による労務コストのコストアップなど作業手間と設置コストを低減することができる。
【0080】
[第2実施形態]
次に、
図18〜
図21を用いて、本発明の第2実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法についてについて説明する。基本的に、第2実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法も、前述の実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法と同じであるが、揚重方法及び横移動の方法が相違する。よって、揚重方法及び横移動の方法について主に説明し、その他の説明は省略する。
【0081】
先ず、
図18を用いて、前述の恒久足場パネル仮吊り工程で行う恒久足場パネル及び恒久側面パネルの揚重について説明する。
図18は、本発明の第2実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法の恒久足場パネル仮吊り工程における恒久足場パネルの取込状況を示す橋直方向断面図である。
【0082】
図18に示すように、恒久足場パネル及び恒久側面パネルの揚重は、
図12で示した仮設足場設置範囲に設けた資材搬入口から行う。具体的には、資材搬入口の直下に恒久足場パネル等を積載した搬入車両を付け、パネルを設置する直下付近となる橋梁下の道路に高所作業車を設置して揚重する。搬入車両からの揚重は、鋼桁H1に架け渡した仮設材に電動ホイストやチェーンブロックなどの揚重装置を設置することで行う。
【0083】
このとき、資材搬入口の間口は、鋼桁間隔等の要請から一般的に1500mm程度が限度であることから、恒久足場パネル及び恒久側面パネルは、前述のものより小さい恒久足場パネル1’及び恒久側面パネル2’となっている。具体的には、恒久足場パネル1’及び恒久側面パネル2は、作業員二人が人力で揚重可能な所定の大きさ、例えば、間口1500mmを通過できる縦3m×横1m程度で、重量が588N(60kgf)程度を限度とする大きさに分割・ユニット化されている。
【0084】
このように、第2実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法によれば、恒久足場パネル1’及び恒久側面パネル2’の揚重及び資材の供給を、橋脚付近に設けた資材搬入口から行う。このため、このため、資材搬入口の直下の一時的な通行止めを要し、必然的に夜間作業となる場合が多い。しかし、橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法のように、橋梁下の道路の全面通行止めまでは必要ない。また、設置した電動ホイスト等で揚重が可能であるため、揚重が容易である。
【0085】
次に、
図19を用いて、第2実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法における恒久足場パネル1’及び恒久側面パネル2’の縦送り作業について説明する。
図19は、恒久足場パネル仮吊り工程の恒久足場パネルの取込状況を示す橋軸方向断面図である。
【0086】
図19に示すように、恒久足場パネル1’及び恒久側面パネル2’ 縦送り作業は、前述の揚重装置3で揚重した恒久足場パネル1’等を、揚重装置3で吊上げたまま架設桁4上を走行させて移動することにより行う。架設桁4は、例えば、梁成200mm×梁幅100mmのI形鋼をレール材40として鋼桁H1に沿って取り付けたものであり、そのレール材40上を揚重装置3が走行自在に構成したものである。このレール材40は、鋼桁H1脇にパイプサポートP3で上下に突っ張って固定した仮設材に架け渡されて設置されている。
【0087】
このように、第2実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法によれば、恒久足場パネル1’及び恒久側面パネル2’の縦送り作業を、架設桁4を利用して行う。このため、作業員が人力で恒久足場パネル1’等を持ち上げる負担が減り、縦送り作業が極めて容易で短時間で行える。よって、さらに作業手間と設置コストを低減することができる。また、第1の実施形態のように高所作業車でパネルに設置する直下まで搬送する必要がなく、その分道路の通行止めの範囲を小さくすることができる。
【0088】
なお、恒久足場パネル1’及び恒久側面パネル2’の縦送り作業は、作業員二人で両側から持ち上げて、既に仮吊りした恒久足場パネル1’上を歩行して人力で移動させてもよい。これにより、前述の架設桁4の設置を省略することができる。
【0089】
次に、
図20及び
図21を用いて、第2実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法における恒久足場パネル仮吊り工程について説明する。
図20は、本発明の第2実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法における恒久足場パネル仮吊り工程でジブクレーンを用いて恒久足場パネル張り出す作業状況を示す橋直方向断面図であり、
図21は、その平面図である。
【0090】
図20、
図21に示すように、第2実施形態に係る恒久足場パネル仮吊り工程では、鋼桁H1に設置した水平方向に揺動自在なジブクレーン5を用いて、既に仮吊りした恒久足場パネル1’から順次跳ね出して恒久足場パネル1’を仮吊りする。
【0091】
このジブクレーン5は、水平の揺動角度が180度程度の揺動自在な溝形鋼からなるジブに揚重装置3が装着されたジブクレーンであり、前述の恒久足場パネル1’を吊り上げたまま、90度程度回転揺動させる機能を有している。このため、前述のように、縦送りされてきた恒久足場パネル1’等の向きを変えて、既に仮吊りした恒久足場パネル1’から順次跳ね出して恒久足場パネル1’を仮吊りすることが容易で短時間に行える。
【0092】
このように、第2実施形態に係る本工法によれば、恒久足場パネル1’を資材搬入口から取り込んで鋼桁H1に沿って縦送りし、ジブクレーン5で90度回転させて既に仮吊りした恒久足場パネル1’から順次跳ね出して恒久足場パネル1’を仮吊りする。このため、恒久足場パネル1’の仮吊り作業も殆ど橋梁下の道路の通行止めを行うことなく作業することができる。また、恒久足場パネル1’の縦送り作業も極めて容易で短時間で行える。よって、さらに作業手間と設置コストを低減することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態に係る橋梁点検用恒久足場の無足場設置工法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。