(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホイールブラシを回転させた状態で砥材束の外周側の端部分をワークに接触させたときに、砥材束が回転中心線方向に広がると、砥材束を構成する各線状砥材に折れが発生しやすくなるという問題がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ワークを研削、研磨する加工動作時に、砥材束ホルダから外周側に突出する砥材束の線状砥材に折れが発生することを抑制できるホイールブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のホイールブラシは、回転中心線の回りを放射状に配列された複数の砥材束と、前記複数の砥材束のそれぞれの内周側の端部分を保持する砥材束ホルダと、を有し、前記砥材束ホルダは、前記回転中心線を囲んで外周側を向く環状の砥材束保持面を備え、前記砥材束保持面は、周方向に配列された複数の保持孔を備え、各砥材束は、並列に纏められた複数本の線状砥材を備え、各線状砥材の内周側の端部分が各保持孔に挿入されて前記砥材束保持面から外周側に突出し、前記砥材束保持面における各保持孔の開口縁において前記回転中心線方向の一方側で当該保持孔に隣接する第1開口縁部分には、それぞれ前記砥材束保持面よりも外周側に突出する第1突起が設けられ
おり、前記砥材束保持面における各保持孔の開口縁において前記回転中心線方向の他方側で当該保持孔に隣接する第2開口縁部分には、それぞれ前記砥材束保持面よりも外周側に突出する第2突起が設けられており、各第1突起は、前記周方向で隣り合う前記第1突起と連続して環状の第1鍔部を構成し、各第2突起は、前記周方向で隣り合う前記第2突起と連続して環状の第2鍔部を構成していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、砥材束ホルダの砥材保持面において回転中心線方向で保持孔に隣接する第1開口縁部分に第1突起が設けられている。従って、ホイールブラシを回転中心線回りに回転させてワークに対する加工動作を行う際に、砥材束が回転中心線方向の一方側に広がろうとした場合には、曲がり始めた砥材束が第1突起と当接する。これにより、砥材束の一方側への広がりが抑制されるので、加工動作時に砥材束を構成する線状砥材が回転中心線方向に過度に湾曲して、折れが発生することを抑制できる。また、砥材束の回転中心線方向への広がりが抑制されるので、加工動作時にホイールブラシがワークの表面を研削、研磨する研削力の低下を抑制できる。
【0010】
また、本発明によれば、前記砥材束保持面における各保持孔の開口縁において前記回転中心線方向の他方側で当該保持孔に隣接する第2開口縁部分には、それぞれ前記砥材束保持面よりも外周側に突出する第2突起が設けられている
。従って、ホイールブラシを回転中心線回りに回転させてワークに対する加工動作を行う際に、砥材束が回転中心線方向の他方側に広がろうとした場合には、曲がり始めた砥材束が第2突起と当接する。これにより、砥材束の他方側への広がりが抑制されるので、加工動作時に砥材束を構成する線状砥材が回転中心線方向に過度に湾曲して、折れが発生することを抑制できる。また、砥材束の回転中心線方向への広がりが抑制されるので、加工動作時にホイールブラシがワークの表面を研削、研磨する研削力の低下を抑制できる。
【0011】
さらに、本発明によれば、各第1突起は、前記周方向で隣り合う前記第1突起と連続して環状の第1鍔部を構成し、各第2突起は、前記周方向で隣り合う前記第2突起と連続して環状の第2鍔部を構成している
。従って、加工動作時に砥材束が周方向に湾曲した状態となった場合においても、砥材束が回転中心線方向の一方側および他方側(回転中心線方向の一方側および他方側)に広がることを抑制できる。よって、加工動作時に砥材束を構成する線状砥材に折れが発生することを抑制できる。また、砥材束の回転中心線方向への広がりが抑制されるので、加工動作時にホイールブラシがワークの表面を研削、研磨する研削力の低下を抑制できる。また、この場合に、前記第1鍔部の外周端面において前記回転中心線方向で前記保持孔の側に位置する第1縁部分は、前記保持孔に向かって前記回転中心線方向の他方側に傾斜し、前記第2鍔部の外周端面において前記回転中心線方向で前記保持孔の側に位置する第2縁部分は、前記保持孔に向かって前記回転中心線方向の一方側に傾斜することが好ましい。
【0012】
この場合において、前記砥材束ホルダは、前記複数の保持孔および前記第1鍔部を備える第1ホルダ部材と、前記第2鍔部を備え前記第1ホルダ
部材の前記第1鍔部とは反対側に積層された第2ホルダ部材と、を備え、前記第1ホルダ部材において前記第2ホルダ部材が重ねられる積層面には、各保持孔が開口しているものとすることができる。このようにすれば、砥材束を保持孔に挿入して砥材束ホルダに保持させる際に、第1ホルダ部材の積層面に露出する保持孔の開口および第1ホルダ部材の外周面(砥材束保持面)に露出する保持孔の開口を介して、保持孔に砥材束を挿入できる。従って、第1ホルダ部材に砥材束を保持させることが容易である。また、砥材束を保持孔に挿入する際に砥材束を第1鍔部に当接させれば、第1鍔部が砥材束を保持孔に案内する案内部として機能する。従って、砥材束の保持孔への挿入が容易となる。
【0013】
本発明において、前記砥材束保持面における各保持孔の開口縁において前記周方向で当該保持孔の隣に位置する周方向開口縁部分は、当該保持孔に向かって内周側に傾斜していることが望ましい。このようにすれば、保持孔に保持された砥材束が周方向に湾曲しやすい。これにより、ホイールブラシを回転中心線回りに回転させて砥材束の外周側の端部分をワークに接触させる加工動作時に、砥材束がよく撓るので、ワークの側から砥材束にかかる負荷を砥材束の撓りによって逃がすことができる。よって、砥材束を構成している線状砥材に折れが発生することをより抑制できる。また、砥材束保持面における周方向開口縁部分が保持孔に向かって内周側に傾斜していれば、砥材束を保持孔に挿入する際に、周方向開口縁部分が砥材束を保持孔に案内する案内面となるので、その挿入が容易となる。
【0014】
本発明において、前記砥材束保持面における各保持孔の開口は、前記周方向の幅寸法が前記回転中心線方向の高さ寸法と比較して短い扁平形状であり、前記砥材束を前記砥材束保持面に沿って切断した断面は、前記砥材束保持面における各保持孔の開口と嵌合する扁平形状であることが望ましい。このようにすれば、砥材束は、その砥材束断面が扁平形状ではない場合と比較して、砥材束断面の短手方向(周方向)に撓りやすい。従って、ホイールブラシを回転中心線回りに回転させて砥材束の外周側の端部分をワークに接触させる加工動作時に、ワークの側から砥材束にかかる負荷を砥材束の撓りによって逃がすことができる。よって、砥材束を構成している砥材に折れが発生することをより抑制できる。ここで、扁平形状とは、断面の中心から外周までの距離が一定でない形状であり、かつ、長手方向と短手方向の長さが異なる形状である。
【0015】
本発明において、各砥材束として纏められた前記複数本の線状砥材のうちの10%以上の前記線状砥材は、前記砥材断面の短手方向を周方向に向けていることが望ましい。複数の線状砥材を纏めて砥材束としたときに、その一部分の線状砥材を、その砥材断面の短手方向が周方向に向くように配向すれば、線状砥材を配向せずに纏めて砥材束とした場合と比較して、砥材束が周方向に撓りやすくなる。従って、ホイールブラシを回転中心線回りに回転させて砥材束の外周側の端部分をワークに接触させる加工動作時に、ワークの側から砥材束にかかる負荷を砥材束の撓りによって逃がすことができる。よって、砥材束を構成している線状砥材に折れが発生することを抑制できる。なお、扁平形状とは、砥材断面の中心から外周までの距離が一定でない形状であり、かつ、長手方向と短手方向の長さが異なる形状である。また、線状砥材がその砥材断面の短手方向を周方向に向けているとは、周方向と砥材断面の短手方向との角度差が45°未満であることをいう。
【0016】
本発明において、各保持孔内で前記砥材束ホルダと前記砥材束との間に介在して当該砥材束を当該砥材束ホルダに固定する接着剤を有し、前記保持孔は、前記周方向で対向する第1内壁面および第2内壁面と、前記第1内壁面における内周側の端および前記第2内壁面における前記内周側の端とを接続する第3内壁面と、を備え、前記第1内壁面と前記第2内壁面との間隔は、前記砥材束保持面から前記第3内壁面の側に向かって広がることが望ましい。このようにすれば、保持孔の奥側(内周側)に、砥材束と砥材束ホルダとの間に介在する接着剤が充填される空間が形成される。従って、かかる空間に充填された接着剤のアンカー効果によって、保持孔に挿入された砥材束が抜けることを防止或いは抑制できる。
【0017】
本発明において、各保持孔内で前記砥材束ホルダと前記砥材束との間に介在して当該砥材束を当該砥材束ホルダに固定する接着剤を有し、前記保持孔は、前記周方向で対向する第1内壁面および第2内壁面と、前記第1内壁面における内周側の端および前記第2内壁面における前記内周側の端とを接続する第3内壁面と、を備え、前記第1内壁面および前記第2内壁面の少なくとも一方には、他方から離間する方向に窪む凹部が設けられていることが望ましい。このようにすれば、保持孔の第1内壁面または第2内壁面の少なくとも一方に設けられた凹部に砥材束と砥材束ホルダとの間に介在する接着剤を充填できる。従って、凹部に充填された接着剤のアンカー効果によって、保持孔に挿入された砥材束が抜けることを防止或いは抑制できる。
【0018】
本発明において、各保持孔内で前記砥材束ホルダと前記砥材束との間に介在して当該砥材束を当該砥材束ホルダに固定する接着剤を有し、前記保持孔は、前記周方向で対向する第1内壁面および第2内壁面と、前記第1内壁面における内周側の端および前記第2内壁面における前記内周側の端とを接続する第3内壁面と、を備え、前記第3内壁面は、屈折または屈曲していることが望ましい。このようにすれば、第3内壁面において、砥材束との接着面積を広くすることができる。従って、保持孔に挿入された砥材束が抜けることを防止或いは抑制できる。
【0019】
次に、本発明は、回転中心線回りを放射状に配列された複数の砥材束のそれぞれの内周側の端部分を保持するホイールブラシの砥材束ホルダにおいて、前記回転中心線を囲んで外周側を向く環状の砥材束保持面を備え、前記砥材束保持面は、周方向に配列された複数の保持孔を備え、前記砥材束保持面における各保持孔の開口縁において前記回転中心線方向の一方側で当該保持孔に隣接する第1開口縁部分には、それぞれ
前記砥材束保持面よりも外周側に突出する第1突起が設けられており、
前記砥材束保持面における各保持孔の開口縁において前記回転中心線方向の他方側で当該保持孔に隣接する第2開口縁部分には、それぞれ前記砥材束保持面よりも外周側に突出する第2突起が設けられており、各第1突起は、前記周方向で隣り合う前記第1突起と連続して環状の第1鍔部を構成し、各第2突起は、前記周方向で隣り合う前記第2突起と連続して環状の第2鍔部を構成し、前記保持孔には、各砥材束の内周側の端部分が挿入されて保持されることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、砥材束ホルダの砥材保持面において回転中心線方向で保持孔に隣接する第1開口縁部分に第1突起が設けられている
とともに、回転中心線方向の他方側で保持孔に隣接する第2開口縁部分に第2突起が設けられている。従って、砥材束ホルダに複数の砥材束を保持することにより構成したホイールブラシを回転中心線回りに回転させてワークに対する加工動作を行う際に、砥材束が回転中心線方向の一方側に広がろうとした場合には、曲がり始めた砥材束が第1突起と当接する。
また、砥材束が回転中心線方向の他方側に広がろうとした場合には、曲がり始めた砥材束が第2突起と当接する。これにより、砥材束の一方側への広がり
、および、砥材束の他方側への広がりが抑制されるので、加工動作時に砥材束を構成する線状砥材などの砥材が回転中心線方向に過度に湾曲して、折れが発生することを抑制できる。また、砥材束の回転中心線方向への広がりが抑制されるので、加工動作時にホイールブラシがワークの表面を研削、研磨する研削力の低下を抑制できる。
さらに、本発明によれば、各第1突起は、前記周方向で隣り合う前記第1突起と
連続して環状の第1鍔部を構成し、各第2突起は、前記周方向で隣り合う前記第2突起と連続して環状の第2鍔部を構成している。従って、加工動作時に砥材束が周方向に湾曲した状態となった場合においても、砥材束が回転中心線方向の一方側および他方側(回転中心線方向の一方側および他方側)に広がることを抑制できる。よって、加工動作時に砥材束を構成する線状砥材に折れが発生することを抑制できる。また、砥材束の回転中心線方向への広がりが抑制されるので、加工動作時にホイールブラシがワークの表面を研削、研磨する研削力の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、本発明の実施の形態のホイールブラシを説明する。
(全体構成)
図1は本発明を適用した実施例1のホイールブラシの斜視図である。本例のホイールブラシは、シャンク2と、シャンク2の一方の端部分に同軸に固定された円環状の砥材束ホルダ3と、シャンク2の軸線L(ホイールブラシ1の回転中心線)回りを放射状に配列された複数の砥材束4を備える。各砥材束4は並列に配置された複数の線状砥材5を纏めたものである。砥材束4は線状砥材5の材軸方向Mをシャンク2の軸線Lと直交する方向に向けている。砥材束ホルダ3は各砥材束4の内周側の端部分を保持する。以下の説明では、ホイールブラシ1の軸線L方向において砥材束ホルダ3が位置する方向を第1方向L1、第1方向L1とは反対側を第2方向L2とする。
【0023】
(砥材束ホルダ)
図2は砥材束ホルダの斜視図である。
図2に示すように、砥材束ホルダ3は、円環状であり、軸線Lと同軸の中心孔11と、軸線Lと同軸で外周側を向く環状の砥材束保持面12を備える。砥材束ホルダ3は樹脂製である。砥材束ホルダ3の中心孔11を軸線L方向から見た場合の輪郭形状は、軸線Lを挟んで軸線Lと直交する方向に平行に延びる一対の直線輪郭部分13と、一対の直線輪郭部分13の一方の端部分を接続する第1円弧輪郭部分14と、一対の直線輪郭部分13の他方の端部分を接続する第2円弧輪郭部分15を備える。ここで、シャンク2は第1方向L1の端部分に砥材束ホルダ3の中心孔11に嵌合する装着部(不図示)を備えており、装着部を中心孔11に挿入した状態で砥材束ホルダ3に固定される。
【0024】
砥材束保持面12は周方向Rに配列された複数の保持孔16を備える。各保持孔16は径方向を内周側に窪む。砥材束保持面12における各保持孔16の開口17は、矩形であり、周方向Rの幅が軸線L方向の高さよりも短い長方形をしている。複数の保持孔16は周方向Rに等間隔に設けられている。各保持孔16には、各砥材束4の内周側の端部分が挿入される。
【0025】
砥材束保持面12における各保持孔16の開口縁において、第1方向L1で当該保持孔16に隣接する第1開口縁部分17aには、それぞれ外周側に突出する第1突起18が設けられている。本例では、各第1突起18は、周方向Rで隣り合う第1突起18と連続して環状の第1鍔部19を構成している。また、砥材束保持面12における各保持孔16の開口縁において、第2方向L2で当該保持孔16に隣接する第2開口縁部分17bには、それぞれ外周側に突出する第2突起20が設けられている。本例では、各第2突起20は、周方向Rで隣り合う前記第2突起20と連続して環状の第2鍔部21を構成している。
【0026】
砥材束保持面12における各保持孔16の開口縁において周方向Rで当該保持孔16の隣に位置する周方向開口縁部分17c、17dは当該保持孔16に向かって内周側に傾斜している。本例では、各保持孔16の周方向Rの両側に位置する周方向開口縁部分17c、17dの双方が当該保持孔16に向かって内周側に傾斜する凸形状(R形状)の湾曲面となっている。なお、周方向開口縁部分17c、17dは、保持孔16に向かって内周側に傾斜する平坦な傾斜面とすることもできる。
【0027】
図3は砥材束ホルダ3の分解斜視図である。
図3に示すように、砥材束ホルダ3は、軸線L方向に積層された第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24を備える。第1ホルダ部材23は、複数の保持孔16および第1鍔部19を備える。第2ホルダ部材24は、第2鍔部21を備える。
【0028】
第1ホルダ部材23において第2ホルダ部材24が重ねられる積層面23a(第1ホルダ部材23の第2方向L2の端面)には各保持孔16が開口している。すなわち、第1ホルダ部材23において、各保持孔16は、周方向Rで対向する第1内壁面16aおよび第2内壁面16bと、第1内壁面16aにおける内周側の端および前記第2内壁面16bにおける内周側の端とを接続する第3内壁面16cと、第1内壁面16aの第1方向L1の端、第2内壁面16bの第1方向L1の端、第3内壁面16cの第1方向L1の端を接続する第4内壁面16dによって区画されている。各保持孔16の第1内壁面16aと第2内壁面16bとの間隔は、砥材束保持面12から第3内壁面16cの側(内周側)に向かって広がる。換言すれば、第1内壁面16aは内周側に向かって第2内壁面16bから離間する方向に傾斜し、第2内壁面16bは内周側に向かって第1内壁面16aから離間する方向に傾斜する。第3内壁面16cは、周方向Rの中央部分が内周側に湾曲している。
【0029】
ここで、第2ホルダ部材24における第1方向L1の側の面24aは平面であり、第2ホルダ部材24が第1ホルダ部材23に積層されると、第2ホルダ部材24によって積層面23aにおける各保持孔16の開口は封鎖される。これにより、保持孔16は砥材束保持面12における開口17のみを備えるものとなる。
【0030】
(砥材束)
図4(a)は砥材束4を各線状砥材5の材軸方向Mと直交する面(軸線Lと平行な面)で切断した砥材束断面を模式的に示す断面図であり、
図4(b)は各線状砥材5の材軸方向Mと直交する面(軸線Lと平行な面)で切断した砥材断面を模式的に示す断面図である。
図5は砥材束断面の一部分を拡大して示す拡大断面図である。
図5では、実際の砥材束断面における砥材断面の輪郭をトレースして示す。
【0031】
図1に示すように、各砥材束4は、内周側の端部分が各保持孔16に挿入され、砥材束保持面12から外周側に突出する。各砥材束4を各線状砥材5と直交する方向(軸線L方向)に切断した砥材束断面26は、
図4(a)に示すように、各保持孔16の開口17の形状と対応する扁平形状である。すなわち、纏められた複数本の線状砥材5(砥材束4)の砥材束断面26は、周方向Rの幅が軸線L方向の高さよりも短い長方形である。
【0032】
各線状砥材5は樹脂により固めた無機長繊維の集合糸である。より詳細には、各線状砥材5は、アルミナ繊維等の無機長繊維の集合糸にエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等のバインダー樹脂を含浸、硬化させて線状に形成したものである。集合糸は、例えば、繊維径が8μm〜50μmのアルミナ長繊維(無機長繊維)を250本〜3000本、集合させたものである。無機長繊維は、被研磨材に対して相対的に研磨性を有する材料、すなわち、研磨する材料よりも硬くてかつ脆い材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミナ繊維の他、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、あるいはガラス繊維を用いることができる。
【0033】
各線状砥材5は、
図4(b)および
図5に示すように、その材軸方向Mと直交する砥材断面27が扁平形状である。扁平形状とは、砥材断面27の中心から外周までの距離が一定でない形状であり、かつ、砥材断面27の長手方向5Lと短手方向5Sの長さが異なる形状である。
図5に示すように、砥材断面27の長手方向5Lは、砥材断面27の最長部が延びる方向である。砥材断面27の短手方向5Sは、長手方向5Lと直交する方向である。砥材束4を構成している各線状砥材5の砥材断面27の扁平率は1.1以上、8.0以下である。扁平率とは、砥材断面27の長手方向5Lの寸法を短手方向5Sの寸法で除算した値である。砥材断面27の長手方向5Lの寸法とは、砥材断面27の最長部の寸法である。短手方向5Sの寸法は、長手方向5Lと直交する方向において、最も幅の広い部分の寸法である。
【0034】
なお、扁平形状の線状砥材5は、集合糸に未硬化の樹脂バインダーを含浸した後に、集合糸をダイスに通して所定の扁平形状に整形することにより、製造できる。ここで、集合糸に未硬化の樹脂バインダーを含浸する前に集合糸に縒りをかける工程を備えれば、縒りをかけた分、集合糸において無機長繊維が纏まった状態になり、線状砥材5の断面形状を制御しやすくなる。
【0035】
各砥材束4では、材軸方向Mと直交して互いに直交する2方向を砥材束短手方向4Sおよび砥材束長手方向4Lとしたときに、複数本の線状砥材5のうちの75%以上の線状砥材5は、砥材断面27の短手方向5Sを砥材束短手方向4Sに向けている。線状砥材5がその砥材断面27の短手方向5Sを砥材束短手方向4Sに向けているとは、砥材束短手方向4Sと砥材断面27の短手方向5Sとの角度差が45°未満であることをいう。
【0036】
(ホイールブラシの製造方法)
ホイールブラシ1を製造する際には、複数本の線状砥材5を、砥材束断面26が扁平形状となるように纏めて、砥材束4とする。また、複数本の線状砥材5を纏める際に、或いは、複数本の線状砥材5を纏めた後に、各線状砥材5の材軸方向Mと直交する方向から、これらの線状砥材5に圧力を付与する。本例では、砥材束断面26が扁平形状となるように纏められた複数本の線状砥材5(砥材束)を、砥材束短手方向4Sの両側から治具で挟んで圧力を付与する。これにより、複数本の線状砥材5が配向する。また、本例では、複数本の線状砥材5のうちの75%以上の線状砥材5がその砥材断面27の短手方向5Sを砥材束短手方向4Sの側に向けるまで、砥材束短手方向4Sから圧力をかける。ここで、複数本の線状砥材5に付与する圧力を調整することにより、砥材束4の配向率を変更することができる。よって、例えば、複数本の線状砥材5のうちの90%以上の砥材束4を、その断面形状が所定の方向を向くように配向することもできる。
【0037】
次に、砥材束4を砥材束ホルダ3に保持させる。より、具体的には、第1ホルダ部材23の各保持孔16に接着剤を充填し、しかる後に、各保持孔16に各砥材束4の端部分を挿入する。
【0038】
砥材束4を各保持孔16に保持させる際には、砥材束4の内周側の端部分を、第1ホルダ部材23の外周側および第2方向L2の側から保持孔16に挿入する。ここで、砥材束4の保持孔16への挿入は、
図3に点線で示すように、砥材束4を第1鍔部19に当接させながら行う。これにより、第1鍔部19は、砥材束4を第1方向L1の側から支持するとともに、砥材束4を保持孔16の内周側に案内する案内部として機能する。また、砥材束4を保持孔16に挿入する際には、砥材束保持面12の周方向開口縁部分17c、17dが、砥材束4を保持孔16の内側に案内する。従って、砥材束4を保持孔16に挿入することが容易である。
【0039】
砥材束4は、各保持孔16に挿入する際に、砥材束短手方向4Sが周方向Rを向く姿勢とされる。従って、砥材束4を構成する線状砥材5のうちの75%以上の線状砥材5は、その砥材断面27の短手方向5Sが砥材束ホルダ3の周方向Rを向くものとなる。
【0040】
その後、第1ホルダ部材23の積層面23aに接着剤を塗布して、第2ホルダ部材24を被せる。これにより、保持孔16における積層面23aの開口が封鎖され、第1ホルダ部材23に第2ホルダ部材24が固定される。従って、環状に配列された複数の砥材束4は砥材束ホルダ3に保持される。
【0041】
なお、砥材束4を砥材束ホルダ3に保持させる際には、まず、第1ホルダ部材23と第2ホルダ部材24とを接着して砥材束ホルダ3を構成し、次に、各保持孔16に接着剤を充填し、しかる後に、砥材束ホルダ3の外周側から各保持孔16に各砥材束4の端部分を挿入してもよい。
【0042】
次に、砥材束ホルダ3の中心孔11にシャンク2の第1方向L1の端部分を挿入する。その後、シャンク2を砥材束ホルダ3に固定して、砥材束ホルダ3とシャンク2を一体とする。
【0043】
(ホイールブラシによる加工方法)
図6はホイールブラシ1によるワークの加工方向の説明図である。
図6ではホイールブラシ1を第1方向L1から見ている。ホイールブラシ1を用いてワークWを加工する際には、シャンク2を工作機械のヘッドに連結してホイールブラシ1をシャンク2の軸線L回りに回転させる。そして、砥材束4の外周側の端部分をワークWに接触させて、ワークWを研削、研磨する。
【0044】
ここで、ワークWに対する加工動作を行う際に砥材束4が軸線L方向の第1方向L1に広がろうとした場合には、第1方向L1に曲がり始めた線状砥材5が第1突起18(第1鍔部19)と当接する。これにより、線状砥材5のそれ以上の変形が抑制されるので、砥材束4の第1方向L1への広がりが抑制される。同様に、ワークWに対する加工動作を行う際に砥材束4が軸線L方向の第2方向L2に広がろうとした場合には、第2方向L2に曲がり始めた線状砥材5が第2突起20と当接する。これにより、線状砥材5のそれ以上の変形が抑制されるので、砥材束4の第2方向L2への広がりが抑制される。よって、ワークWを研削、研磨する加工動作時に、砥材束ホルダ3から外周側に突出する砥材束4の線状砥材5が軸線L方向に過度に湾曲して折れが発生することを抑制できる。また、砥材束4の軸線L方向への広がりが抑制されるので、加工動作時にホイールブラシ1がワークWの表面を研削、研磨する研削力の低下を抑制できる。
【0045】
また、本例では、各保持孔16の開口縁に設けた突起18、20が周方向Rで連続して環状の第1鍔部19および第2鍔部21を構成しているので、加工動作時に砥材束4が周方向Rに湾曲した状態となった場合においても、砥材束4が第1方向L1および第2方向L2に広がることを抑制できる。
【0046】
さらに、本例では、砥材束保持面12における各保持孔16の周方向開口縁部分17c、17dが、保持孔16に向かって内周側に傾斜しているので、保持孔16に保持された砥材束4が周方向Rに湾曲しやすい。これにより、ホイールブラシ1を回転させて砥材束4の先端部分をワークWに接触させる加工動作時に、砥材束4がよく撓る。これにより、加工動作時にワークの側から砥材束4にかかる負荷を砥材束4の撓りによって逃がすことができるので、砥材束4を構成している線状砥材5に折れが発生することを抑制できる。
【0047】
また、本例では、砥材束4が、扁平形状(長方形)の砥材束断面26を備え、砥材束断面26の砥材束短手方向4Sを周方向Rに向けている。従って、砥材束4は、砥材束断面26が扁平形状ではない場合や、砥材束断面26の砥材束長手方向4Lを周方向Rに向けて砥材束ホルダ3に保持されている場合などと比較して、周方向Rに撓りやすい。
【0048】
さらに、本例では、砥材束ホルダ3に保持された砥材束4を構成する複数の線状砥材5は、いずれも扁平な砥材断面27を備え、全体の75%以上の線状砥材5が、その砥材断面27の短手方向5Sを周方向Rに向けて配向されている。ここで、扁平な断面形状を備える線状砥材5は、断面形状が扁平でない線状砥材5と比較して、砥材断面27の短手方向5Sに撓りやすい。従って、全体の75%以上の線状砥材5が、その砥材断面27の短手方向5Sを周方向Rに向けて配向された本例の砥材束4は、線状砥材5が配向されていない従来の砥材束と比較して、周方向Rに撓みやすい。
【0049】
このように、本例では、ホイールブラシ1を回転させて砥材束4の先端部分をワークWに接触させたときに、砥材束4が周方向Rに撓りやすい。これにより、加工動作時にワークの側から砥材束4にかかる負荷を砥材束4の撓りによって逃がすことができるので、砥材束4を構成している線状砥材5に折れが発生することを抑制できる。また、砥材束4が撓りやすいので、ワークWの加工動作時に、深い切込み設定を行うことが可能となる。さらに、砥材束4が撓りやすいので、加工動作時にワークWの表面に深い傷をつけることを回避できる。
【0050】
また、本例では、砥材束ホルダ3に保持された砥材束4は、線状砥材5が配向されていない従来の砥材束と比較して、軸線L方向に撓みづらい。すなわち、扁平な断面形状を備える線状砥材5は、砥材断面27の短手方向5Sに撓りやすい一方で、長手方向5Lには撓りづらい。これにより、加工動作時に、砥材束4が軸線L方向(砥材束長手方向4L)に広がることを抑制できるので、砥材束4の広がりによって研削力が低下することを抑制できる。
【0051】
さらに、本例では、第1ホルダ部材23が第1鍔部19を備えるので、砥材束4を第1ホルダ部材23の保持孔16に挿入する際に、砥材束4を第1鍔部19に当接させて、第1鍔部19によって砥材束4を保持孔16に案内できる。よって、砥材束4を保持孔16に挿入して砥材束ホルダ3に保持させることが容易である、また、砥材束保持面12における周方向開口縁部分17c、17dが保持孔16に向かって内周側に傾斜しているので、砥材束4を外周側から保持孔16に挿入する際に、周方向開口縁部分17c、17dが砥材束4を保持孔16に案内する案内面となり、その挿入が容易となる。よって、ホイールブラシ1の製造が容易となる。
【0052】
また、本例では、各保持孔16において周方向Rで対向する第1内壁面16aと第2内壁面16bとの間隔が内周側に向かって拡がっている。これにより、保持孔16の奥側(内周側)に、砥材束4と砥材束ホルダ3との間に介在する接着剤が充填される空間が形成される。従って、かかる空間に充填された接着剤のアンカー効果によって、保持孔16に挿入された砥材束4が抜けることを防止或いは抑制できる。また、第3内壁面16cが湾曲しているので、第3内壁面16cと砥材束4との接着面積を広くすることができる。従って、保持孔16に挿入された砥材束4が抜けることを防止或いは抑制できる。
【0053】
なお、砥材束4を構成する複数の線状砥材5のうちの所定の割合の線状砥材5を、その砥材断面27の短手方向5Sが砥材束4における砥材束断面26の砥材束短手方向4Sに向くように配向すれば、線状砥材5を配向していない場合と比較して、砥材束4は砥材束短手方向4Sに、より、撓りやすくなる。例えば、砥材束4を構成する複数の線状砥材5のうちの一部分の線状砥材5を、その砥材断面27の短手方向5Sが砥材束短手方向4Sに向くように配向しただけでも、砥材束4の砥材束短手方向4Sへの撓りやすさは向上する。また、砥材束4を構成する複数の線状砥材5のうち、砥材断面27の短手方向5Sが砥材束短手方向4Sに向くように配向された線状砥材5の割合を上昇させれば、それに伴って、砥材束4の砥材束短手方向4Sへの撓りやすさも向上する。ここで、砥材束4が撓れば、その分、工動作時にワークの側から砥材束4にかかる負荷を砥材束4の撓りによって逃がすことができるので、砥材束4を構成している線状砥材5に折れが発生することを抑制できる。
【0054】
ここで、本例のホイールブラシ1を用いてワークWを加工して、研削力の向上と、砥材束4における線状砥材5の折れの発生とを評価した結果を以下の表1に示す。評価では、ホイールブラシ1の砥材束4を構成する線状砥材5の配向割合を0〜100%の間で変化させている。線状砥材5の扁平率は4である。線状砥材5の配向割合が100%のホイールブラシ1は、各砥材束4を構成する全ての線状砥材5の砥材断面27の短手方向5Sが砥材束4における砥材束断面26の砥材束短手方向4Sを向き、かつ、砥材束短手方向4Sが周方向Rを向いているものである。評価において、加工対象のワークはS50C(機械構造用炭素鋼)である。ワークに対する加工はR面取り加工である。加工動作時のホイールブラシ1の回転数は2000min
−1である。切込み量は、1.0mmである。研削力は、加工後の表面粗さ(最大高さ)Ryにより示す。線状砥材5の折れは、加工動作時間終了後の折れ本数を目視で計測して示す。なお、加工前のワークの表面粗さRyは5.0μmである。加工動作時間は0.2分である。
【0056】
評価によれば、線状砥材5を配向すれば、砥材束4が撓りやすくなり、加工動作時に線状砥材5に折れが発生することが抑制されることが認められる。また、線状砥材5の配向割合を上昇させれば、それに伴って、加工動作時に線状砥材5に折れが発生することが抑制される効果が向上することが認められる。例えば、60%以上の線状砥材5が配向されており、配向された線状砥材5の砥材断面27の短手方向5Sと砥材束短手方向4Sとが周方向Rを向いている場合には、加工動作時における線状砥材5の折れの発生はなくなる。
【0057】
次に、ホイールブラシを用いてワークWを加工して、研削力の向上と、砥材束4における線状砥材5の折れ、割れの発生とを評価した結果を以下の表2に示す。評価では、線状砥材5の配向割合を60%として、ホイールブラシ1の砥材束4を構成する線状砥材5の扁平率を1.1〜10の間で変化させている。評価において、加工対象のワークはS50C(機械構造用炭素鋼)である。ワークに対する加工はR面取り加工である。加工動作時のホイールブラシ1の回転数は2000min
−1である。切込み量は、1.0mmである。研削力は、加工後の表面粗さ(最大高さ)Ryにより示す。線状砥材5の折れは、加工動作時間終了後の折れ本数を目視で計測して示す。線状砥材5の割れは、加工動作時間終了後に、線状砥材5が材軸方向に割れた本数を目視で計測して示す。なお、加工前のワークの表面粗さRyは5.0μmである。加工動作時間は0.2分である。表2には、砥材束4を構成する線状砥材5の砥材断面27が正方形の場合(扁平率が1の場合)の評価を参考として示す。
【0059】
評価によれば、扁平率が高い線状砥材5を用いれば、砥材束4が撓りやすくなり、加工動作時に線状砥材5に折れが発生することが抑制されることが認められる。砥材束4を構成する線状砥材5の扁平率が1.1〜10の範囲では、線状砥材5の扁平率が1の場合と比較して、研削力Ryは低下するが、ワークの表面に深い傷をつけることがなくなる。また、砥材束4を構成する線状砥材5の扁平率が2〜10の範囲では、砥材束4に線状砥材5に折れが発生していない。なお、砥材束4を構成する線状砥材5の扁平率が8となると、線状砥材5に割れの発生が認められる。砥材束4を構成する線状砥材5の扁平率が10となると、割れる線状砥材5の本数が増加する。
【0060】
(変形例)
上記の例では、砥材束保持面12における各保持孔16の軸線L方向の両側に鍔部19、21が設けられているが、これらの鍔部19、21のうちの少なくとも一方を設ければ、砥材束4が鍔部を設けた側に広がることが規制されるので、線状砥材5に折れが発生することを抑制できる。
【0062】
なお、上記の例では、各保持孔16の周方向開口縁部分17c、17dが保持孔16に向かって傾斜する傾斜面となっているが、この傾斜面は省略してもよい。また、各保持孔における第1内壁面16aと第2内壁面16bとは平行に延びていてよい。さらに、第3内壁面16cは平面としてもよい。
【0063】
また、上記の例では、砥材束ホルダ3は樹脂製であるが、砥材束ホルダ3は金属製とすることができる。このようにすれば、砥材束ホルダ3の剛性を向上させることができる。また、砥材束ホルダ3において第1鍔部19および第2鍔部21を樹脂製とし、第1鍔部19および第2鍔部21を除く他の部分を金属製とすることもできる。このようにすれば、砥材束ホルダ3の剛性を向上させる一方で、線状砥材5が第1鍔部19や第2鍔部21に当接したときに、線状砥材5に折れが発生することを防止できる。
【0064】
さらに、上記の例では、砥材束保持面12は、円環状であるが、軸線L方向から見た場合に多角形の輪郭を備える環状面とすることもできる。
【0065】
次に、砥材束保持面12における保持孔16の開口17を、楕円、長円などの扁平形状として、砥材束4が保持孔16の開口17に対応する扁平形状の砥材束断面26を備えるものとすることができる。また、砥材束保持面12における保持孔16の開口17を、三角形や台形や五角以上の多角形からなる扁平形状として、砥材束4が保持孔16の開口17に対応する扁平形状の砥材束断面26を備えるものとすることができる。また、砥材束保持面12における保持孔16の開口17を、三角形、正方形などの正多角形、或いは、円形として、砥材束4が保持孔16の開口17に対応する三角形、正多角形、或いは、円形の砥材束断面26を備えるものとしてもよい。また、線状砥材5として、砥材断面27が正方形或いは円形のものを用いて砥材束4を構成してもよい。
【0066】
ここで、保持孔16における第1内壁面16aおよび第2内壁面16bの少なくとも一方に、他方から離間する方向に窪む凹部を設けてもよい。
図7は、保持孔16を区画する第1内壁面16aおよび第2内壁面16bの形状を変更した変形例の砥材束ホルダ3の説明図である。
図7では第1ホルダ部材23の積層面23aに露出する保持孔16の開口部分を軸線L方向から見ている。
【0067】
図7(a)に示す変形例1の砥材束ホルダ3Aは、保持孔16Aの第1内壁面16aおよび第2内壁面16bにおける径方向の途中に、それぞれ周方向Rに窪む矩形の凹部31を備える。
図7(b)に示す変形例2の砥材束ホルダ3は、保持孔16Bにおける第1内壁面16aおよび第2内壁面16bの径方向の途中に、それぞれ周方向Rに窪む三角形形状の凹部32を備える。三角形形状の凹部32は楔型をしている。すなわち、凹部32は、第1内壁面16aおよび第2内壁面16bの一方の内壁面から径方向と直交する周方向Rに延びて他方の内壁面から離間する凹部第1壁面32aと、凹部第1壁面32aの周方向Rの端から内周側に向かって他方の内壁面に接近する凹部第2壁面32bを備える。
図7(c)に示す変形例3の砥材束ホルダ3Cは、保持孔16Cの第1内壁面16aおよび第2内壁面16bの径方向の途中に、それぞれ周方向Rに窪む円弧形状の凹部33を備える。ここで、保持孔16Aの第1内壁面16aおよび第2内壁面16bには、それぞれ複数の凹部31、32、33を設けることもできる。
【0068】
図7(d)に示す変形例4の砥材束ホルダ3は、第1内壁面16aは、砥材束保持面12から内周側に向かって第2内壁面16bから離間する方向に傾斜する外周側第1内壁面部分34aと、外周側第1内壁面部分34aの内周側の端から内周側に向かって第2内壁面16bの側に接近する方向に傾斜する内周側第1内壁面部分34bとを備える。これにより、第1内壁面16aは、全体として、径方向の途中に第2内壁面16bから離間する方向に窪む凹部34を備える。また、第2内壁面16bは、砥材束保持面12から内周側に向かって第1内壁面16aから離間する方向に傾斜する外周側第2内壁面部分35aと、外周側第2内壁面部分35aの内周側の端から内周側に向かって第1内壁面16aの側に接近する方向に傾斜する内周側第2内壁面部分35bとを備える。これにより、第2内壁面16bは、全体として、径方向の途中に第1内壁面16aから離間する方向に窪む凹部35を備える。
図7(e)に示す変形例5の砥材束ホルダ3Eでは、第1内壁面16aは、第2内壁面16bから離間する方向に窪む円弧形状である。これにより、第1内壁面16aには、全体として、径方向の途中に第2内壁面16bから離間する方向に窪む凹部36を備える。また、第2内壁面16bは、第1内壁面16aから離間する方向に窪む円弧形状である。これにより、第2内壁面16bは、全体として、径方向の途中に第1内壁面16aから離間する方向に窪む凹部37を備える。
【0069】
これらの砥材束ホルダ3A〜3Eにおいても、保持孔16の第1内壁面16aまたは第2内壁面16bの少なくとも一方に設けられた凹部31〜37に砥材束4と砥材束ホルダ3との間に介在する接着剤を充填できる。従って、凹部31〜37に充填された接着剤のアンカー効果によって、保持孔16に挿入された砥材束4が抜けることを防止或いは抑制できる。
【0070】
また、保持孔16における第3内壁面16cは外周側に向かって湾曲していてもよく、屈曲していてもよい。
図8は、保持孔16を区画する第3内壁面16cの形状を変更した変形例の砥材束ホルダ3の説明図である。
図8では第1ホルダ部材23の積層面23aに露出する保持孔16の開口部分を軸線L方向から見ている。
【0071】
図8(a)に示す変形例6の砥材束ホルダ3Fでは、保持孔16Fの第3内壁面16cは、周方向Rの中央部分が外周側に凸となる形状に湾曲している。
図8(b)に示す変形例7の砥材束ホルダ3Gでは、保持孔16Gの第3内壁面16cは、周方向Rの中央で屈曲しており、周方向Rの中央部分が内周側に窪んでいる。
図8(c)に示す変形例8の砥材束ホルダ3Hでは、保持孔16Hの第3内壁面16cは、周方向Rの中央で屈曲しており、周方向Rの中央部分が外周側に突出している。これら砥材束ホルダ3F〜4Hにおいても、第3内壁面16cにおいて、砥材束4との接着面積を広くすることができる。従って、保持孔16に挿入された砥材束4が抜けることを防止或いは抑制できる。