(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明する実施形態は、本発明の一実施形態にすぎず、何等これに限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0014】
「第一実施形態」
本実施形態では、塩化アンモニウムと炭酸カリウムからなる消火薬剤を調温され磁気処理された温水(磁気水)に溶解して消火液剤としている。
消火液剤は、塩化アンモニウム(NH
4Cl)を100重量部(主剤)に対して、炭酸カリウム(K
2CO
3)を68部乃至76部含んだ消火薬剤を予め摂氏30℃乃至摂氏50℃に調温され、3000ガウス乃至10000ガウス(G)の磁束密度で磁気処理された温水(磁気水)に1時間撹拌されることにより溶解してなるものとする。
温水(磁気水)の温度が摂氏30℃を下回る場合には後述する消火薬剤の溶解度(溶媒に溶ける限界量)が低下し、摂氏50℃を上回る場合には、溶媒である温水(磁気水)の蒸発量が増加し、また、冷却後に沈殿してしまうため消火能力が減少する。一般的に、水温が高いほど薬剤の溶解度が高く、本実施形態では摂氏40℃を最も好ましい設定温度とする。
【0015】
磁気処理は、磁石によって3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度で磁場が形成され、温水は、磁石の外周近傍で螺旋状に配された流路を旋回しながら通過する。このとき、温水が強い磁力線を横切るので、温水(水)の分子が細分化処理される。細分化処理された温水(磁気水)は、薬剤との接触面積が増加して溶解しやすい状態となる。さらに、水温が高いことの相乗効果で多くの薬剤が溶解し、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易くする効果がある。
磁束密度は高いほど効果的であると考えられるが、20000ガウスを超えると人体への影響を及ぼす可能性もあるため、本実施形態では10000ガウスを上限としている。また、3000ガウスより下回る場合には、温水を磁気処理した効果が低くなるため、本実施形態では、7800ガウスにて磁気処理するのが最も好ましいものとする。
したがって、高い磁束密度による人体へ影響を及ぼす可能性が無ければ(例えば、磁力線が外部に漏洩しないようなシールド構造を備えるなど)、10000ガウスを超えて(例えば15000ガウスや20000ガウス)温水に作用させた場合も本発明の範囲内である。
このようにして調整した消火液剤を火元(燃焼物)に投げ込んだ場合には、塩化アンモニウムと炭酸カリウムが反応して、アンモニアガス(NH
3)と炭酸ガス(CO
2)を放出する。
この場合の消火液剤を火元(燃焼物)に投げ込んだ場合には、塩化アンモニウム(NH
4Cl)と炭酸カリウム(K
2CO
3)が反応して、アンモニアガス(NH
3)と炭酸ガス(CO
2)を放出し、塩化カリウム(KCl)と水(H
2O)が生成される。
【化1】
このとき、塩化アンモニウムと炭酸カリウムは十分に溶解した水溶液であるため、燃焼することなく加熱され、急激に反応する。
また、その際に、水溶液としての水も水蒸気となる。これらのアンモニアガス、炭酸ガス、水蒸気が、火元(燃焼物)の周囲の空気(酸素)を急速に排除し燃焼を抑止することで消火する。
【0016】
炭酸カリウムが68部より下回っている場合には、ガスの十分な発生量を望めず、炭酸カリウムが76部より上回っている場合には、十分な溶解が進まず、消火液剤に固形物として残ったり、消火液剤の保存中に析出して沈殿物となったりすることがある。また、本実施形態では、炭酸カリウムの含有量としては、72.21部が最も好ましいものとする。
【0017】
ここで、塩化アンモニウムの特性は、膨張材などの食品添加物や調味料として使用することが認められている物質である。本発明で使用される塩化アンモニウムには特に制限はなく、食品添加物用や工業用などから幅広く選択可能である。
また、炭酸カリウムの特性は、中華そば用のかんすいとして使われる食品添加物でもある。本発明で使用される炭酸カリウムには特に制限はなく、食品添加物用や工業用などから幅広く選択可能である。
【0018】
この場合、消火液剤は、例えば、
図1の模式図に示すような消火液剤調製装置1によって調整される。
消火液剤調製装置1は、溶媒となる水を供給する給水部W、供給された水を調温する加温部H、調温された温水を磁気処理する磁気処理部M、磁気処理された温水(磁気水)に消火薬剤を投入して溶解する溶解処理部T、薬剤が溶解した溶液(消火液剤)をボトルBに充填する充填部Fと、溶解処理部Tから充填部Fに溶液(消火液剤)を圧送するポンプPとからなる。
【0019】
給水部Wは、上水道に接続され、必要に応じて、消火液剤調製装置1に水を供給する。なお、上水道に含まれる不純物や化合物を取り除くためのフィルターや浄水装置が併用されていても良い。
加温部Hは、前記消火液剤の調整時に要求される水温(本実施形態では、例えば、摂氏30℃乃至摂氏50℃)に調温する。なお、消火液剤調製装置1に供給される水量を連続的に調温可能であれば加温の方式は問わない。例えば電気式加温やガス式加温であっても良く、消火液剤調製装置1の設置される環境に応じて適宜選択されれば良い。
【0020】
磁気処理部Mは、所定の間隔で磁石(フェライト磁石、ネオジウム系磁石、アルニコ磁石、サマリウム系磁石など)が複数の棒状に並べられることによって、棒状の軸線とクロスする方向に強力な磁力線が放射されている。加温部Hで調温された温水は、棒状の軸線に沿った螺旋状に設定された流路を通過しつつ磁力線を横切り、強力な磁力線の影響を受ける。温水(磁気水)は磁力線の影響によって細分化処理されるため薬剤が溶け込みやすい性質となる。
【0021】
溶解処理部Tは、前記磁気処理部Mで磁気処理された温水(磁気水)を貯留するタンクであって、投入された消火薬剤を溶解して水溶液とするべく撹拌するための撹拌器Cを備える。
撹拌器Cは、先端側に所定距離(例えば30cm乃至40cm)隔てて2列のプロペラ状の撹拌子(羽根D1,D2)が備えられた長棒状の軸Sが、タンクの鉛直方向に対して斜めに挿し込まれている。その長棒状の軸Sが回転することによって、タンクの消火液剤L(水と消火薬剤)中にて撹拌子(羽根D1,D2)が回転し、消火液剤Lを撹拌して温水(磁気水)への消火薬剤の溶解を促進する。
また、長棒状の軸Sがタンクの鉛直方向に対して斜めに挿し込まれていることによって、撹拌による渦(ら旋流)がタンクの鉛直方向に対して斜めに発生するため、重力によってタンクの底に滞留しがちな消火薬剤を渦に乗せて旋回させる。これにより、消火薬剤を温水(磁気水)に溶解する効率が高くなる。
なお、本実施形態では、長棒状の軸Sの先端側には2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2を備えた場合を例示しているが、撹拌子の数はこれに限定解釈されるものではなく、要求される撹拌能力に応じて適宜増減すれば良い。
【0022】
また、
図2に示すように、タンクの上から鉛直方向に対して斜めに挿し込まれる第1の長棒状の軸S1と、タンクの下から、前記第1の長棒状の軸S1の軸線に合わせて位置した第2の長棒状の軸S2が備えられていても良い。
この場合には、前記第1の長棒状の軸S1の先端側にプロペラ状の撹拌子(羽根)D1を備えるとともに、前記第2の長棒状の軸S2の先端側にプロペラ状の撹拌子(羽根)D2を備え、2つのプロペラ状の撹拌子D1,D2は向かい合うように配されている。そして、プロペラ状の撹拌子(羽根)D1が水溶液を撹拌して消火薬剤を溶解するとともに、重力の作用によってタンクの底側に降下した消火薬剤をプロペラ状の撹拌子(羽根)D2が撹拌するので、消火薬剤を温水(磁気水)に溶解する効率がさらに高くなる。
【0023】
溶解処理部Tで十分に温水(磁気水)に消火薬剤が溶解された水溶液は、消火液剤Lとしてボトル詰めされる。ボトル詰めの方法は任意であるが、本実施形態では、例えば、充填部FがポンプPを制御することによって、消火液剤Lを溶解処理部Tから充填部Fに圧送する。また、充填部Fでは、空のボトル(衝撃破損性容器)B1に消火液剤Lを注入することによって、消火液剤Lが充填されて密封されたボトルB2が手投げ消火液弾(簡易消火用具)となる。
【0024】
例えば、前記消火液剤調製装置1によって消火液剤Lを調整する方法の一例を示すと、給水部Wから供給される水は、加温部Hで摂氏40℃に調温されて磁気処理部Mへと送られ、磁気処理部Mで10000ガウスの磁束密度の磁場を通して磁気処理された温水(磁気水)を溶解処理部Tに70kg(70リットル)貯留し、その温水(磁気水)に塩化アンモニウム14.32kg、炭酸カリウム10.34kgの消火薬剤を投入し、溶解処理部Tのタンクに斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、1時間の撹拌をして溶解させて消火液剤Lとすることができる。この場合には、温水(磁気水)35%に対して消火薬剤65%が溶解していることとなる。
なお、そのようにして、前記消火液剤調製装置1で調製した消火液剤Lについて、磁気処理部Mを共振波式磁力装置に置き換えた消火液剤調製装置で調製した消火液剤(比較例1)および磁気処理部Mを静電界式磁力装置に置き換えた消火液剤調製装置で調製した消火液剤(比較例2)とともにゼータ電位を調製直後と1週間後および2週間後にわたって測定した結果を表1に示す。
【表1】
【0025】
本実施形態では、上述のごとく磁気処理された温水(磁気水)に消火薬剤を撹拌しながら溶解している。磁気処理で水の分子が細分化処理されて薬剤との接触面積が増加し、さらに、水温が高い状態で撹拌されるため、水の分子と薬剤との接触回数が増大し、溶解反応も促進され、それらの相乗効果により多くの薬剤が溶解し得る。また、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易く、高い消火能力を発揮する。
【0026】
「第二実施形態」
本実施形態では、塩化アンモニウム(NH
4Cl)と炭酸カリウム(K
2CO
3)と、第二リン酸アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)と、重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)とからなる消火薬剤を磁気処理され調温された温水(磁気水)に溶解して消火液剤Lとしている。
消火液剤Lは、塩化アンモニウムを100重量部(主剤)に対して、炭酸カリウムを61部乃至68部含み、第二リン酸アンモニウムを19部乃至22部含み、重炭酸ナトリウムを11部乃至13部含んだ消火薬剤が、予め摂氏30℃乃至摂氏50℃に調温され、磁気処理部Mで3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度で磁気処理された温水(磁気水)に溶解されている。なお、消火薬剤Lは、塩化アンモニウム、炭酸カリウム、第二リン酸アンモニウム、重炭酸ナトリウムの順に温水(磁気水)が貯留された溶解処理部Tに投入され、合計で1時間撹拌されて溶解される。
温水の調温および磁気処理については、前記第一実施形態と同様であるのであるのでここではその説明を省略する。
なお、本実施形態による消火液剤Lも、前記第一実施形態による消火液剤Lと同様に、
図1の模式図に示すような消火液剤調製装置1によって調整され、本実施形態による消火薬剤を磁気処理した温水(磁気水)に投入し、溶解処理部Tのタンクに斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、1時間の撹拌をすることで溶解して消火液剤Lを得る。その詳細については、前記第一実施形態による消火液剤調製装置1と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0027】
本実施形態による消火液剤Lを火元(燃焼物)に投げ込んだ場合には、塩化アンモニウム(NH
4Cl)と炭酸カリウム(K
2CO
3)が反応して、アンモニアガス(NH
3)と炭酸ガス(CO
2)を放出し、塩化カリウム(KCl)と水(H
2O)が生成される。
さらに、本実施形態で添加した第二リン酸アンモニウムが加熱されてアンモニアガスを放出するとともに、重炭酸ナトリウムが炭酸ガスを放出して、消火作用を補助する。また、重炭酸ナトリウムは、常温において塩化アンモニウムと炭酸カリウムの反応を抑制して消火液剤の長期安定化にも寄与している。
【0028】
炭酸カリウムが61部を下回っている場合には、消火ガスの発生量が不足する、また、78部を上回っている場合には、十分な溶解が進まず、消火液剤に固形物として残ったり、消火液剤の保存中に析出して沈殿物となったりして消火能力が減少する。また、本実施形態では、炭酸カリウムの含有量としては、64.58部が最も好ましいものとする。
また、第二リン酸アンモニウムが19部を下回っている場合には、消火ガスの発生量が不足する、また、22部を上回っている場合には、十分な溶解が進まず、消火液剤に固形物として残ったり、消火液剤の保存中に析出して沈殿物となったりして消火能力が減少する。
また、本実施形態では、第二リン酸アンモニウムの含有量としては、20.54部が最も好ましいものとする。
重炭酸ナトリウムが11部を下回っている場合には、消火ガスの発生量が不足する、また、13部を上回っている場合には、十分な溶解が進まず、消火液剤に固形物として残ったり、消火液剤の保存中に析出して沈殿物となったりして消火能力が減少する。
また、本実施形態では、重炭酸ナトリウムの含有量としては、11.9部が最も好ましいものとする。
具体的には、本実施形態では、例えば、塩化アンモニウム336gに対して炭酸カリウム217gと、第二リン酸アンモニウム69gと、重炭酸ナトリウム11.9gを調合して温水(磁気水)1000g(1リットル)に溶解することで1633.9g(1225リットル)の消火液剤Lを得ている。
【0029】
本実施形態においても、上述のごとく磁気処理された温水(磁気水)に消火薬剤を撹拌しながら溶解している。磁気処理で水の分子が細分化処理されて薬剤との接触面積が増加し、さらに、水温が高い状態で撹拌されるため、水の分子と薬剤との接触回数が増大し、溶解反応も促進され、それらの相乗効果により多くの薬剤が溶解し得る。また、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易く、高い消火能力を発揮する。
【0030】
「第三実施形態」
本実施形態では、塩化アンモニウムと重炭酸ナトリウムとからなる消火薬剤を磁気処理され調温された温水(磁気水)に溶解して消火液剤としている。
消火液剤Lは、塩化アンモニウムを100重量部(主剤)に対して、重炭酸ナトリウムを68部乃至76部含んだ消火薬剤を予め摂氏30℃乃至摂氏50℃に調温され、磁気処理部Mで3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度で磁気処理された温水(磁気水)が貯留された溶解処理部Tに投入され、に1時間撹拌されて溶解されている。
温水の調温および磁気処理については、前記第一実施形態と同様であるのでここではその説明を省略する。
なお、本実施形態による消火液剤Lも、前記第一実施形態による消火液剤Lと同様に、
図1の模式図に示すような消火液剤調製装置1によって調整され、本実施形態による消火薬剤を磁気処理した温水(磁気水)に投入し、溶解処理部Tのタンクに斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、1時間撹拌することで溶解して消火液剤Lを得る。その詳細については、前記第一実施形態による消火液剤調製装置1と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0031】
重炭酸ナトリウムが弱アルカリ性であり、塩化アンモニウムも弱アルカリ性であり、両者が調合された本実施形態の消火液剤もまた弱アルカリ性となる。具体的には、消火液剤Lは、pH7.5乃至10の範囲となるように調製される。pHが7.5より下回る場合には、消火液剤のアンモニウム臭が強くなり、保存状態もわるくなる。また、pHが10より上回る場合には、アルカリ度が強いので、消火薬剤が溶けにくく、長期保存のうちに容器の底に沈殿物が発生する。なお、本実施形態では、消火液剤のpHは8乃至9であることが最も好ましいものとする。
また、本実施形態による消火液剤Lを火元(燃焼物)に投げ込んだ場合には、塩化アンモニウム(NH
4Cl)と重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)が反応して、アンモニアガス(NH
3)と炭酸ガス(CO
2)を放出し、塩化ナトリウム(NaCl)と水(H
2O)が生成される。
【化2】
このとき、塩化アンモニウムと重炭酸ナトリウムは十分に溶解した水溶液であるため燃焼することなく加熱され、急激に反応する。また、その際に、水溶液としての水も水蒸気となる。これらのアンモニアガス、炭酸ガス、水蒸気が、火元(燃焼物)の周囲の空気(酸素)を急速に排除し燃焼を抑止することで消火する。
【0032】
重炭酸ナトリウムが68部を下回っている場合には、消火ガスの発生量が不足する、また、76部を上回っている場合には、十分な溶解が進まず、消火液剤に固形物として残ったり、消火液剤の保存中に析出して沈殿物となったりすることがある。また、本実施形態では、重炭酸ナトリウムの含有量としては、72.21部が最も好ましいものとする。
具体的には、本実施形態では、例えば、塩化アンモニウム14.32kgに対して重炭酸ナトリウム10.34kgを調合して温水(磁気水)82kg(82リットル)に溶解することで100kg(100リットル)の消火液剤Lを得ている。
【0033】
ここで、第二リン酸アンモニウムの特性は、醸造用薬品などの食品加工物として使用することが認められている物質である。本発明で使用される第二リン酸アンモニウムには特に制限はなく、食品添加物用や工業用などから幅広く選択可能である。
また、重炭酸ナトリウムの特性は、膨張剤などの食品添加物でもある。本発明で使用される重炭酸ナトリウムには特に制限はなく、食品添加物用や工業用などから幅広く選択可能である。
【0034】
本実施形態においても、上述のごとく磁気処理された温水(磁気水)に消火薬剤を撹拌しながら溶解している。磁気処理で水の分子が細分化処理されて薬剤との接触面積が増加し、さらに、水温が高い状態で撹拌されるため、水の分子と薬剤との接触回数が増大し、溶解反応も促進され、それらの相乗効果により多くの薬剤が溶解し得る。また、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易く、高い消火能力を発揮する。
【0035】
「第四実施形態」
本実施形態では、塩化アンモニウムと第二リン酸アンモニウムと重炭酸ナトリウムとからなる消火薬剤を磁気処理され調温された温水(磁気水)に溶解して消火液剤としている。
消火液剤Lは、塩化アンモニウムを100重量部(主剤)に対して、第二リン酸アンモニウムを19部乃至22部含み、重炭酸ナトリウムを71部乃至81部含んだ消火薬剤が、磁気処理部Mで予め摂氏30℃乃至摂氏50℃に調温され、3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度で磁気処理された温水(磁気水)に溶解されている。なお、消火薬剤は、塩化アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、重炭酸ナトリウムの順に温水(磁気水)が貯留された溶解処理部Tに投入され、合計で1時間撹拌されて溶解される。
温水の調温および磁気処理については、前記第一実施形態と同様であるのでここではその説明を省略する。
なお、本実施形態による消火液剤Lも、前記第一実施形態による消火液剤Lと同様に、
図1の模式図に示すような消火液剤調製装置1によって調整され、本実施形態による消火薬剤を磁気処理した温水(磁気水)に投入し、溶解処理部Tのタンクに斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、1時間撹拌することで溶解して消火液剤Lを得る。その詳細については、前記第一実施形態による消火液剤調製装置1と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0036】
重炭酸ナトリウムが弱アルカリ性であり、塩化アンモニウムも弱アルカリ性であり、両者が調合された本実施形態の消火液剤もまた弱アルカリ性となる。具体的には、消火液剤Lは、pH7.5乃至10の範囲となるように調製される。pHが7.5より下回る場合には、消火液剤のアンモニウム臭が強くなり、保存状態もわるくなる。また、pHが10より上回る場合には、アルカリ度が強いので、消火薬剤が溶けにくく、長期保存のうちに容器の底に沈殿物が発生する。なお、本実施形態では、消火液剤のpHは8乃至9であることが最も好ましいものとする。
【0037】
また、この場合の消火液剤を火元(燃焼物)に投げ込んだ場合には、塩化アンモニウム(NH
4Cl)と重炭酸ナトリウム(NaHCO3)は十分に溶解した水溶液であるため燃焼することなく加熱され、急激に反応して、アンモニアガス、炭酸ガス、塩化ナトリウムと水が生成される。また、その際に、水溶液としての水も水蒸気となる。これらのアンモニアガス、炭酸ガス、水蒸気が、火元(燃焼物)の周囲の空気(酸素)を急速に排除し燃焼を抑止することで消火する。
さらに、本実施形態で添加した第二リン酸アンモニウムが加熱反応によってアンモニアガスを放出するとともに、重炭酸ナトリウムが炭酸ガスを放出して、消火作用を補助する。また、重炭酸ナトリウムは、常温において塩化アンモニウムと炭酸カリウムの反応を抑制して消火液剤の長期安定化にも寄与している。
なお、本実施形態による消火液剤Lも、前記第一実施形態による消火液剤と同様に、
図1の模式図に示すような消火液剤調製装置1によって調整され、本実施形態による消火薬剤を磁気処理した温水(磁気水)に1時間撹拌することで溶解して消火液剤Lを得る。その詳細については、前記第一実施形態による消火液剤調製装置1と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0038】
重炭酸ナトリウムが71部を下回っている場合には、消火ガスの発生量が不足する、また、80部を上回っている場合には、十分な溶解が進まず、消火液剤に固形物として残ったり、消火液剤の保存中に析出して沈殿物となったりして消火能力が減少する。また、本実施形態では、重炭酸ナトリウムの含有量としては、76.49部が最も好ましいものとする。
また、第二リン酸アンモニウムが19部を下回っている場合には、消火ガスの発生量が不足する、また、22部を上回っている場合には、十分な溶解が進まず、消火液剤に固形物として残ったり、消火液剤の保存中に析出して沈殿物となったりして消火能力が減少する。
また、本実施形態では、第二リン酸アンモニウムの含有量としては、20.54部が最も好ましいものとする。
重炭酸ナトリウムが11部を下回っている場合には、消火ガスの発生量が不足する、また、13部を上回っている場合には、十分な溶解が進まず、消火液剤に固形物として残ったり、消火液剤の保存中に析出して沈殿物となったりして消火能力が減少する。
また、本実施形態では、重炭酸ナトリウムの含有量としては、11.9部が最も好ましいものとする。
具体的には、本実施形態では、例えば、塩化アンモニウム336gに対して第二リン酸アンモニウム69gと、重炭酸ナトリウム257gを調合して温水(磁気水)1000g(1リットル)に溶解することで1662g(1225リットル)の消火液剤Lを得ている。
【0039】
本実施形態においても、上述のごとく磁気処理された温水(磁気水)に消火薬剤を撹拌しながら溶解している。磁気処理で水の分子が細分化処理されて薬剤との接触面積が増加し、さらに、水温が高い状態で撹拌されるため、水の分子と薬剤との接触回数が増大し、溶解反応も促進され、それらの相乗効果により多くの薬剤が溶解し得る。また、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易く、高い消火能力を発揮する。
【0040】
「第五実施形態」
本実施形態では、上記第一実施形態による消火液剤を第1の消火液剤とし、その第1の消火液剤に界面活性液剤を添加することによって油火災に対応して消火可能な消火液剤Lとしている。
すなわち、前記第一実施形態と同様に、塩化アンモニウムと炭酸カリウムからなる消火薬剤を予め摂氏30℃乃至摂氏50℃に調温され、磁気処理部Mで3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度で磁気処理された温水(磁気水)に投入し、溶解処理部Tのタンクの斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、1時間撹拌し溶解することで第1の消火液剤(A液)とし、さらに、予め摂氏50℃乃至摂氏60℃に調温され、前記第一実施形態と同様の磁気処理部Mで3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度で磁気処理された温水(磁気水)が貯留された溶解処理部Tに界面活性剤を投入し、溶解処理部Tと同様のタンクと斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、30分撹拌し溶解することで界面活性液剤(B液)とし、その第1の消火液剤(A液)と界面活性液剤(B液)とを混合して撹拌することで本実施形態の消火液剤Lとしている。
【0041】
第1の消火液剤(A液)の調製については、前記第一実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
界面活性液剤(B液)の調整に当たって、温水(磁気水)の温度が摂氏50℃を下回る場合には界面活性剤の溶解度(溶媒に溶ける限界量)が低下し、摂氏60℃を上回る場合には、溶媒である温水(磁気水)の蒸発量が増加する。一般的に、水温が高いほど界面活性剤の溶解度が高いため、本実施形態では摂氏60℃を最も好ましい設定温度とする。
なお、磁気処理については、前記第一実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0042】
また、本実施形態による消火液剤に添加可能な界面活性液剤としては、広範囲の界面活性剤から選択可能であるが、その中でも、陰イオン(アニオン)系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩と、陰イオン系界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム塩及び、非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の中から1つ以上が選択されることが好ましい。
【0043】
その場合には、前記第一実施形態の消火液剤調製装置1の磁気処理部と同様の磁気処理装置Mを使用して、3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度の磁場を通して処理され、摂氏50℃乃至摂氏60℃に調温された温水(磁気水)を100重量部とした場合に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤を4.5部乃至5.1部、ラウリル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤を7.7部乃至8.6部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の界面活性剤を9.6部乃至10.6部を混合し、前記消火液剤調製装置1の磁気処理部と同様の溶解処理部Tによって30分撹拌することで溶解して界面活性溶液(B液)を得る。そして、B液を前記A液(第1の消火液剤)と混合して消火液剤とする。
【0044】
なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤が4.5部を下回った場合には、溶質の溶解分散が不十分となって沈殿が生じやすい傾向があり、5.1部を上回った場合には、界面活性剤同士で集まってしまい、重量が増える割に有効成分量が下がることとなる。
また、ラウリル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤が7.7部を下回った場合には、溶質の溶解分散が不十分となって沈殿が生じやすい傾向があり、8.6部を上回った場合には界面活性剤同士で集まってしまい、重量が増える割に有効成分量が下がることとなる。
また、ポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の界面活性剤が9.6部を下回った場合には、溶質の溶解分散が不十分となって沈殿が生じやすい傾向があり、10.6部を上回った場合には界面活性剤同士で集まってしまい、重量が増える割に有効成分量が下がることとなる。
なお、本実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤が4.808部、ラウリル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤が8.173部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の界面活性剤が10.096部の割合で混合されるのが最も好ましいものとする。
また、使用可能なポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤の商品としては花王株式会社のラテムル(登録商標)などがあり、ラウリル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤としては花王株式会社のエマール(登録商標)10Gなどがあり、ポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の界面活性剤としては花王株式会社のエマルゲン(登録商標)105などがある。
【0045】
なお、本発明の消火液剤に使用する界面活性剤の一例を説明したが、選択可能な界面活性剤はこれに限定解釈されるものではなく、一般に普及している界面活性剤を広く利用できる。
本発明の消火液剤に使用できる界面活性剤として、例えば、水中で解離したとき陰イオンとなる陰イオン系界面活性剤(アニオン性界面活性剤)、水中で解離したとき陽イオンとなる陽イオン系界面活性剤(カチオン性界面活性剤)、分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両方をもち、溶液のpHに応じて陽・両性・陰イオンとなる両性界面活性剤(双性界面活性剤)及びイオン化する親水性部分を持たない非イオン系界面活性剤(非イオン性界面活性剤)のいずれも好ましく利用できる。これらの界面活性剤は1種または2種以上を組合せて使用することができる。
【0046】
本発明に使用可能な他の陰イオン系界面活性剤(アニオン性界面活性剤)としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤などがある。
本発明に使用可能な非イオン系界面活性剤(非イオン性界面活性剤)としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテルなどがある。
また、非イオン系界面活性剤との組み合わせにおいて注意を要するが、本発明に使用可能な陽イオン系界面活性剤(カチオン性界面活性剤)としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などがあり、さらに、両性界面活性剤(双性界面活性剤)としてのアルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、アルキルアミノ脂肪酸塩なども使用可能である。
【0047】
このようにして調製された本実施形態による消火液剤Lを火元(燃焼物)に投げ込んだ場合には、塩化アンモニウム(NH
4Cl)と炭酸カリウム(K
2CO
3)が反応して、アンモニアガス(NH
3)と炭酸ガス(CO
2)を放出し、塩化カリウム(KCl)と水(H
2O)が生成される。
このとき、塩化アンモニウムと炭酸カリウムは十分に溶解した水溶液であるため、火炎によって燃焼することなく加熱され、急激に反応する。また、その際に、水溶液としての水も水蒸気となる。これらのアンモニアガス、炭酸ガス、水蒸気が、火元(燃焼物)の周囲の空気(酸素)を急速に排除し燃焼を抑止することで消火する。
【0048】
また、陰イオン系界面活性剤の分散効果によって、前記第1の消火液剤の消火薬剤が温水(磁気水)中に浮遊した状態となり、また溶け込んだ状態で安定する。このため、消火液剤が油火災の火元(燃焼物)に投げ入れられ散布された場合に、消火薬剤に火炎の熱が効率よく取り込まれ、アンモニアガスと炭酸ガスの発生反応が活発になる(ガスの発生量が増加する)。さらに、非イオン系界面活性剤を使用することで、界面活性剤による過度な起泡(泡立ち作用)を抑えて、撹拌による溶解効率が高く保たれ、より多くの消火薬剤を火元(燃焼物)の熱に晒すことができる。
【0049】
さらに、油火災の火元(燃焼物)は、燃焼熱で発生する水蒸気を界面活性剤と消火液剤とが形成する泡に閉じ込められる。
この泡は消火薬の成分のうち反応後に気体となって放散することなく残った塩化物とともに油火災の火元(燃焼物)を包み込むように覆い、空気との接触を断って消火する。なお、この泡は、流動性のある燃焼物や、凹凸のある燃焼物に対しても燃焼物全体を包み込むように覆うことができる。また、一旦消火した後も可燃物(燃焼していた物)を包み込むように覆うことで、可燃物(燃焼していた物)を冷却しつつ空気を遮断し続けるため、再燃を抑止することができる。
【0050】
本実施形態においては、磁気処理で水の分子が細分化処理されて薬剤や界面活性剤との接触面積が増加し、さらに、水温が高い状態で撹拌されるため、水の分子と薬剤や界面活性剤との接触回数が増大し、溶解反応も促進され、それらの相乗効果により多くの薬剤や界面活性剤が溶解し得る。また、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易く、高い消火能力を発揮する。
【0051】
「第六実施形態」
本実施形態は、前記第五実施形態の変形例を示し、前記第五実施形態と同様に、上記第一実施形態による消火液剤を第1の消火液剤(A液)とし、その第1の消火液剤(A液)に界面活性溶液(B液)を添加することによって油火災に対応して消火可能な消火液剤Lとしているが、前記第五実施形態の界面活性溶液(B液)で使用した陰イオン系界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム塩による界面活性剤に代えて、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤を使用している。
【0052】
すなわち、前記第五実施形態の界面活性溶液(B液)の陰イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤(例えば、花王株式会社のラテムル(登録商標))と、前記第五実施形態の界面活性溶液(B液)の非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の界面活性剤(例えば、花王株式会社のエマルゲン(登録商標)105)と、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(陰イオン系界面活性剤)と温水(磁気水)とによって、界面活性剤溶液(B液)を調製している。
なお、使用可能な特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤の商品としては、花王株式会社のデモールEP(登録商標)、ポイズ520(登録商標)、ポイズ530(登録商標)などがあり、ポイズ520やポイズ530が選択されることが特に好ましい。
【0053】
その場合には、前記第一実施形態の消火液剤調製装置1の磁気処理部と同様の磁気処理装置Mを使用して、3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度の磁場を通して処理され、摂氏50℃乃至摂氏60℃に調温された温水(磁気水)を100重量部とした場合に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤を4.75部乃至5.25部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の界面活性剤を9.5部乃至10.5部、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤を7.6部乃至8.40部を混合して、磁気処理され調温された温水(磁気水)に投入し、溶解処理部Tと同様のタンクと斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、30分撹拌することで溶解して界面活性溶液(B液)を得る。そして、B液と前記A液(第1の消火液剤)とを混合して撹拌することで消火液剤Lとする。
なお、具体的には、例えば、50gの温水(磁気水)に対して、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤が2.5g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の界面活性剤が5g、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤が4gの割合で調合される。
このように、前記第五実施形態の陰イオン系界面活性剤の一部を変更することによって、磁気処理され、調温された溶媒(温水・磁気水)中に、消火液剤の消火薬剤が、より一層溶け込み易く安定するため、沈殿物の発生も抑えることができ、消火の効果を発揮することができる。
【0054】
また、前記第五実施形態の界面活性溶液(B液)で使用した陰イオン系界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム塩と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩による界面活性剤に代えて、β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩による界面活性剤と、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤とを使用し、非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩による界面活性剤を除外しても良い。
【0055】
すなわち、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(陰イオン系界面活性剤)と、β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩による界面活性剤(陰イオン系界面活性剤)と、温水(磁気水)とによって、界面活性剤溶液(B液)を調製している。
なお、使用可能な特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤の商品としては、花王株式会社のデモールEP(登録商標)、ポイズ520(登録商標)、ポイズ530(登録商標)などがあり、ポイズ520やポイズ530が選択されることが特に好ましく、使用可能なβ‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩による界面活性剤としては花王株式会社のデモールNL(登録商標)などが好適である。
【0056】
このように陰イオン系界面活性剤をβ‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩による界面活性剤と、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤とに変更し、非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩による界面活性剤を除外した場合には、非イオン系界面活性剤を配合していた割合が減少しているため、消火薬剤(A液)の配合割合を増やすことが可能となり、消火薬剤(A液)が増えることによって消火能力が増加することとなる。
【0057】
本実施形態においても、磁気処理で水の分子が細分化処理されて薬剤や界面活性剤との接触面積が増加し、さらに、水温が高い状態で撹拌されるため、水の分子と薬剤や界面活性剤との接触回数が増大し、溶解反応も促進され、それらの相乗効果により多くの薬剤や界面活性剤が溶解し得る。また、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易く、高い消火能力を発揮する。
【0058】
なお、本実施形態の場合であっても、第1の消火液剤(A液)の組成および調整方法については、前記第1の消火液剤(A液)の組成および調整方法と同様であるので、ここではその説明を省略する。
また、界面活性溶液(B液)の調整方法については、前記第五実施形態の界面活性溶液(B液)の調整方法と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、このようにして調製された油火災に対応可能な消火液剤Lを火元(燃焼物)に投げ込んだ場合の作用についても、前記第1の消火液剤(A液)作用および、第五実施形態による消火液剤(B液)の作用と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0059】
「第七実施形態」
本実施形態では、上記第二実施形態による消火液剤を第2の消火液剤(A液)とし、その第2の消火液剤(A液)に界面活性液剤(B液)を添加することによって油火災に対応して消火可能な消火液剤Lとしている。
すなわち、前記第二実施形態と同様に、塩化アンモニウムと炭酸カリウムと第二リン酸アンモニウムと重炭酸ナトリウムからなる消火薬剤を磁気処理され調温された温水(磁気水)に投入し、溶解処理部Tのタンクの斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、1時間撹拌し溶解することで第2の消火液剤(A液)とし、さらに、予め摂氏50℃乃至摂氏60℃に調温され、磁気処理部Mで3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度で磁気処理された温水(磁気水)に界面活性剤を投入し、溶解処理部Tと同様のタンクと斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、30分撹拌し溶解することで界面活性液剤(B液)とし、その第2の消火液剤(A液)と界面活性液剤(B液)とを混合して撹拌することで本実施形態の消火液剤Lとしている。
【0060】
なお、第2の消火液剤(A液)の調整は、前記第二実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
界面活性液剤(B液)の調製は、前記第五実施形態の界面活性液剤(B液)と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0061】
このようにして調製された油火災に対応可能な消火液剤を火元(燃焼物)に投げ込んだ場合には、塩化アンモニウム(NH
4Cl)と炭酸カリウム(K
2CO
3)が反応して、アンモニアガス(NH
3)と炭酸ガス(CO
2)を放出し、塩化カリウム(KCl)と水(H
2O)が生成される。
これら、A液の消火薬剤の水溶液による消火作用については、前記第二実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
また、界面活性剤溶液(B液)による消火作用については、前記第五実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態においても、前記第五実施形態の界面活性液剤(B液)と同様に、広範囲の界面活性剤から選択可能である。例えば、陰イオン(アニオン)系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩と、陰イオン系界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム塩及び、非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の中から1つ以上が選択されても良いし、陰イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤)に代えて、β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩や特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤が使用されても良いし、β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩と特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤が使用され非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩が除外されても良く、その場合の作用効果も同様である。
【0062】
本実施形態においても、磁気処理で水の分子が細分化処理されて薬剤や界面活性剤との接触面積が増加し、さらに、水温が高い状態で撹拌されるため、水の分子と薬剤や界面活性剤との接触回数が増大し、溶解反応も促進され、それらの相乗効果により多くの薬剤や界面活性剤が溶解し得る。また、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易く、高い消火能力を発揮する。
【0063】
「第八実施形態」
本実施形態では、上記第三実施形態による消火液剤を第3の消火液剤(A液)とし、その第3の消火液剤(A液)に界面活性液剤(B液)を添加することによって油火災に対応して消火可能な消火液剤Lとしている。
すなわち、前記第三実施形態と同様に、塩化アンモニウムと重炭酸ナトリウムからなる消火薬剤を磁気処理され調温された温水(磁気水)に投入し、溶解処理部Tのタンクの斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、1時間撹拌し溶解することで第3の消火液剤(A液)とし、さらに、予め摂氏50℃乃至摂氏60℃に調温され、磁気処理部Mで3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度で磁気処理された温水(磁気水)に界面活性剤を投入し、溶解処理部Tと同様のタンクと斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、30分撹拌し溶解することで界面活性液剤(B液)とし、その第3の消火液剤(A液)と界面活性液剤(B液)とを混合して撹拌し、pHを7.5乃至10の範囲に調整して油火災に対応可能な消火液剤Lとする。なお、本実施形態ではpH8乃至9を最も好ましいものとする。
第3の消火液剤(A液)の調整は、前記第三実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
界面活性液剤(B液)の調製は、前記第五実施形態の界面活性液剤(B液)と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、消火液剤LのpHを弱アルカリ性に整えることで、消火液剤Lの性質を安定させ、消火薬剤の溶解度を高くしている。
すなわち、消火液剤Lのアルカリ度が強い場合には、消火薬剤が溶けにくく、長期保存のうちに容器の底に沈殿物が発生するが、さらに、界面活性剤による起泡(泡立ち作用)が過多となる傾向がある。
過度な起泡(泡立ち作用)は非イオン系界面活性剤の使用により抑制効果が認められるが、pHを弱アルカリ性に整えることによっても抑制効果があり、双方の抑制効果を併用することによって、過度な起泡(泡立ち作用)を効率よく制御(抑止)することが可能となる。
【0065】
このようにして調製された油火災に対応可能な消火液剤Lを火元(燃焼物)に投げ込んだ場合の作用についても、前記第三実施形態による消火液剤(A液)の作用および、第五実施形態による消火液剤(B液)の作用と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態においても、前記第五実施形態の界面活性液剤(B液)と同様に、広範囲の界面活性剤から選択可能である。例えば、陰イオン(アニオン)系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩と、陰イオン系界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム塩及び、非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の中から1つ以上が選択されても良いし、陰イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤)に代えて、β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩や特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤が使用されても良いし、β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩と特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤が使用され非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩が除外されても良く、その場合の作用効果も同様である。
【0066】
本実施形態においても、磁気処理で水の分子が細分化処理されて薬剤や界面活性剤との接触面積が増加し、さらに、水温が高い状態で撹拌されるため、水の分子と薬剤や界面活性剤との接触回数が増大し、溶解反応も促進され、それらの相乗効果により多くの薬剤や界面活性剤が溶解し得る。また、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易く、高い消火能力を発揮する。
【0067】
「第九実施形態」
本実施形態では、上記第四実施形態による消火液剤を第4の消火液剤(A液)とし、その第4の消火液剤(A液)に界面活性液剤(B液)を添加することによって油火災に対応して消火可能な消火液剤Lとしている。
すなわち、前記第四実施形態と同様に、塩化アンモニウムと第二リン酸アンモニウムと重炭酸ナトリウムからなる消火薬剤を磁気処理され調温された温水(磁気水)に投入し、溶解処理部Tのタンクの斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、1時間撹拌し溶解することで第四の消火液剤(A液)とし、さらに、予め摂氏50℃乃至摂氏60℃に調温され、磁気処理部Mで3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度で磁気処理された温水(磁気水)に界面活性剤を投入し、溶解処理部Tと同様のタンクと斜めに設置された2枚のプロペラ状の撹拌子(羽根)D1,D2により、30分撹拌し溶解することで界面活性液剤(B液)とし、その第3の消火液剤(A液)と界面活性液剤(B液)とを混合して撹拌し、pHを7.5乃至10の範囲に調整して油火災に対応可能な消火液剤Lとする。なお、本実施形態ではpH8乃至9を最も好ましいものとする。
第4の消火液剤(A液)の調整は、前記第四実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
界面活性液剤(B液)の調製は、前記第五実施形態の界面活性液剤(B液)と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0068】
本実施形態でも、前記第七実施形態と同様に消火液剤LのpHを弱アルカリ性に整えることで、消火液剤Lの性質を安定させ、消火薬剤の溶解度を高くしている。その作用効果については前記第七実施形態と同様であるため、ここではその説明を省略する。
このようにして調製された油火災に対応可能な消火液剤を火元(燃焼物)に投げ込んだ場合の作用についても、前記第四実施形態による消火液剤(A液)の作用および、第五実施形態による消火液剤(B液)の作用と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0069】
また、本実施形態においても、前記第五実施形態の界面活性液剤(B液)と同様に、広範囲の界面活性剤から選択可能である。例えば、陰イオン(アニオン)系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩と、陰イオン系界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム塩及び、非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の中から1つ以上が選択されても良いし、陰イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤)に代えて、β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩や特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤が使用されても良いし、β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩と特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤が使用され非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル塩が除外されても良く、その場合の作用効果も同様である。
【0070】
本実施形態においても、磁気処理で水の分子が細分化処理されて薬剤や界面活性剤との接触面積が増加し、さらに、水温が高い状態で撹拌されるため、水の分子と薬剤や界面活性剤との接触回数が増大し、溶解反応も促進され、それらの相乗効果により多くの薬剤や界面活性剤が溶解し得る。また、冷却後においても溶解状態が長期間維持され易く、高い消火能力を発揮する。
【0071】
「第十実施形態」
前記第一実施形態乃至第八実施形態による消火液剤(油火災に対応可能な消火液剤を含む)はそのまま火元(燃焼物)に流し込むことで、アンモニアガスと炭酸ガスが発生して消火することができるが、消火液剤を封入した衝撃破損性容器(ボトル)Bを火元(燃焼物)に投げ入れることによって、火元(燃焼物)に手をかざすことなく消火可能である。
消火液剤が充填される衝撃破損性容器(ボトル)Bは、例えば
図3乃至
図7に示すような片手で把持可能なサイズの筒型に形成されている。
なお、
図3は衝撃破損性容器(ボトル)Bの正面図であり、
図4はその右側面図であり、
図5はその底面図である。また、
図6は、
図3のA−A線による断面図であり、
図7は斜視図である。
【0072】
衝撃破損性容器(ボトル)Bは、所定高さに形成された筒状部2と、筒状部2の上端を閉塞して形成された上面部3と、筒状部2の下端を閉塞して形成された底面部4とで構成される。
筒状部2は、上面部3から下面部4に亘って所定幅の平面に形成される正面側平面部5と、上面部3から下面部4に亘って正面側平面部5と平行で、正面側平面部5と同様の幅の平面に形成される背面側平面部6と、正面側平面部5および背面側平面部6を凸曲面で連結して形成される2つの曲面部7,7とによって筒状に形成される。
また、正面側平面部5の幅は筒状部2の最大径(2つの曲面部7,7が形成される径)の半分よりやや大きな幅に設定される。さらに、正面側平面部5の上縁5a(上面部3との境界縁)、下縁5b(下面部4との境界縁)、右縁5c(曲面部7との境界縁)および左縁5d(曲面部7との境界縁)は、面取りが施されることなく、角が立った状態に形成される。
また、背面側(
図4の右側)の背面側平面部6も正面側平面部5と同様の形状に形成される。さらに、背面側平面部6の上縁6a(上面部3との境界縁)、下縁6b(下面部4との境界縁)、右縁6c(曲面部7との境界縁)および左縁6d(曲面部7との境界縁)は、面取りが施されることなく、角が立った状態に形成される。
【0073】
曲面部7,7の上下方向略中央部には、前記正面側平面部5と背面側平面部6を水平方向に結ぶ凹状周面71が所定の上下幅で形成される。
なお、凹状周面71が形成される幅は、成人の手指の太さの約2倍の寸法で設定される。例えば、約27mmに設定されていれば良い。
さらに、凹状周面71と、凹状周面71の左右端側の曲面部7との境界部は段差面71aによって接続されている。
また、凹状周面71の下側に隣接して、凹状周面71と同様の形状に凹状周面72が形成され、凹状周面72の左右端側の曲面部7との境界部は段差面72aによって接続されている。
さらに、凹状周面71の上側に隣接して、凹状周面71と同様の形状に凹状周面73が形成され、凹状周面73の左右端側の曲面部7との境界部は段差面73aによって接続されている。
また、凹状周面71と凹状周面72との隣接部分81、凹状周面71と凹状周面73との隣接部分82、凹状周面71の下側の曲面部7との接続部分83、凹状周面73の上側の曲面部7との接続部分84は、それぞれ、角が立った状態に形成される。
【0074】
また、凹状周面71は、衝撃破損性容器(ボトル)Bに消火液剤を充填した場合に、重心となる位置に配されている。そして、凹状周面71に手指の中指を沿わせて衝撃破損性容器(ボトル)Bを把持すると、人差し指と薬指が凹状周面72と凹状周面73に沿うようになる。さらに、反対側に形成される凹状周面72と凹状周面73の何れかに親指が沿うようになるとともに、手のひらに正面側平面部5か背面側平面部6の何れかが沿うため、衝撃破損性容器(ボトル)Bがふらつくことなく、しっかりと手中に把持される。
また、段差面71a、72a、73aに指先が引っ掛かるため、濡れた手で把持した場合であっても、衝撃破損性容器(ボトル)Bが滑り落ちてしまうことも無い。
このように、衝撃破損性容器(ボトル)Bが、しっかりと手中に把持されるため、投てきする際に、火元(燃焼物)を狙いやすく、また、狙い通りに投げやすい。
【0075】
上面部3には、その中央部に、上面部3から上方に向けて一体に、ボトル内外を連通した円環状に突き出した注ぎ込み口31が形成される。さらに、注ぎ込み口31の外周側には、周方向に連続して嵌合凸部31aが形成される。
また、注ぎ込み口31には、プラスチック製のキャップ32が外嵌される。キャップ32の内径は、注ぎ込み口31の外径よりも僅かに大きく設定されるとともに、注ぎ込み口31の嵌合凸部31aと相対する位置に嵌合凹部32aが形成される。
注ぎ込み口31は、ボトルBの内部に消火液剤を充填するための注入口となる。さらに、消火液剤の充填が完了すると、打栓機によってキャップ32が押圧され、注ぎ込み口31の嵌合凸部31aとキャップ32の嵌合凹部32aが嵌合することで、注ぎ込み口31にキャップ32が、容易に開栓することのないように固く固定され、注ぎこみ口31が閉鎖される。
また、底面部4は、中央部が僅かに上方に窪んで形成される凹部4aと、凹部4aの周りに水平な環状に形成される縁部4aとで形成される。
机などの平面に衝撃破損性容器(ボトル)Bを立てた場合には、水平な環状に形成される縁部4aが机の平面に接することで、ボトルBが座り良く安定する。
なお、衝撃破損性容器(ボトル)Bの各寸法については、需要に応じて適宜設定されれば良いが、例えば、正面側平面部5と背面側平面部6との間の幅は、70mmに設定され、曲面部7と対向する曲面部7との間の幅は、83mmに設定され、高さは、注ぎ込み口31を含めずに182mmに設定されている。また、衝撃破損性容器(ボトル)Bの厚みは、約2mmに設定されている。
【0076】
また、衝撃破損性容器(ボトル)Bの内容量は500ml乃至1200mlであることが好ましい。
内容量が500mlを下回る場合には、火元(燃焼物)の消火に要する衝撃破損性容器(ボトル)Bの本数が増えるため、消火作業(衝撃破損性容器を火元に投げる動作)の回数も増えることとなり、消火に要する時間も長くなってしまう問題がある。
内容量が1200mlを上回る場合には、火元(燃焼物)の消火に要する衝撃破損性容器(ボトル)Bの本数は少なくなるものの、重くなるため、狙ったとおりに火元に投げいれるための投てき動作に熟練を要するという問題がある。
なお、前記第一実施形態乃至第9実施形態による消火液剤(油火災に対応可能な消火液剤を含む)が充填される衝撃破損性容器(ボトル)としては、800mlの内容量に設定されるのが最も好ましいものとする。
【0077】
衝撃破損性容器(ボトル)Bは、内部に充填密封された消火液剤を長期の変質しないように保存可能であり、火元(燃焼物)に投げ入れた際には、火元やその周辺へ衝突した衝撃で容易に破壊されることを要する。
このため、衝撃破損性容器(ボトル)Bの材質としては、汎用ポリスチレン(GPPS:General Purpose Polystyrene)を100重量部に対して、スチレン−ブタジエン共重合物であるハイインパクトポリスチレン(HIPS:High Impact Polystyrene)を9部乃至30部混合した材料を所定の形状に成形している。
ハイインパクトポリスチレンの割合が9部を下回った場合には、衝撃破損性容器(ボトル)が小さな衝撃で壊れやすくなり、30部を上回った場合には、火元やその周辺へ衝突した衝撃で壊れない場合が発生する。
なお、本実施形態では、ハイインパクトポリスチレンが9部の割合で混合された場合を最も好ましい混合割合とする。
【0078】
ハイインパクトポリスチレンはゴム成分であるブタジエンを含んで対衝撃性能を向上させた樹脂材料であり、汎用ポリスチレンに上記混合比で混合することで、成形された衝撃破損性容器(ボトル)Bは、前記衝突の衝撃により容易に破壊されるものの、保管時には一定の強度を保ち容易に割れることの無い対衝撃性能を得ている。さらに、塩化ビニルなどと比べ、紫外線や酸素に長期間晒されることよる分解に強く耐久性が高い。
【0079】
また、衝撃破損性容器(ボトル)Bを成形する樹脂材料に着色料を混合することで、不透明な衝撃破損性容器(ボトル)として成形している。ボトルが不透明であるため、外部から照射される光線(太陽光や照明等)の影響がボトル内部の消火液剤に及ぶことなく、消火液剤の長期間保存可能となる。
なお、衝撃破損性容器(ボトル)の材質は、ポリスチレンが衝撃で破損しやすい特性に着目して、前記汎用ポリスチレンとハイインパクトポリスチレンを所定の混合比で混合した場合が特に好ましいものとして選択されているが、これに限定解釈されるものではなく、例えば、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等であっても利用可能である。
【0080】
このように、衝撃破損性容器(ボトル)は、比較的破壊され易い材質で形成されるとともに、その形状では、正面側平面部5と背面側平面部6の縁部や、凹状周面71,72,73に角が立った部分を多数形成しているため、火元(燃焼物)に投げ入れた際には、火元やその周辺へ衝突した衝撃が角部に集中した応力となり、容器(ボトル)B破壊のきっかけとして作用する。このため、比較的小さな衝突の衝撃であっても衝撃破損性容器(ボトル)Bが破壊されて内部に充填された消火液剤を火元(燃焼物)に散布することができる。
なお、衝撃破損性容器(ボトル)Bの前記角が立った部分の配置については、上記説明に限定解釈されるものではなく、衝撃破損性容器(ボトル)Bの外形などにより自由に増減して配置されれば良い。また、落下の衝撃で衝撃破損性容器(ボトル)Bの破壊が確実であれば、前記角が立った部分が無い衝撃破損性容器(ボトル)Bとする場合があっても良い。
【実施例】
【0081】
「消火試験1(普通火災)」
1.実施例、比較例
(1)消火液剤を充填した衝撃破損性容器(実施例)の調製
予め摂氏40℃に調温され、磁気処理された温水(磁気水)に、塩化アンモニウム(NH
4Cl)を100重量部(主剤)に対して、炭酸カリウム(K
2CO
3)を72.21部含むように溶解して消火液剤を調整した。具体的には、塩化アンモニウム14.32kgに対して炭酸カリウム10.34kgを調合して温水(磁気水)82kg(82リットル)に溶解することで100kg(100リットル)の消火液剤(実施例1)を調製し、汎用ポリスチレンを100重量部に対して、ハイインパクトポリスチレンを7部混合した樹脂材料を角部と正面側平面部、背面側平面部、凹状周面のある2mm厚のボトル形状(本発明の形状)に成形してなる衝撃破損性容器に800ml充填して封入した。
(2)消火液剤を充填した衝撃破損性容器(比較例)の調製
20℃の水道水に、塩化アンモニウム(NH
4Cl)を100重量部(主剤)に対して、炭酸カリウム(K
2CO
3)を50部含むように溶解して消火液剤(比較例1)を調整し塩化ビニル樹脂を2mm厚の円筒状のボトル形状に成形してなる衝撃破損性容器に800ml充填して封入した。
(3)消火試験
A.試験方法1(普通火災)
消火器の技術上の規格を定める法令(昭和39年自治省令第27号)の第3条2項で規定するA火災模型(第2模型)を消火試験の回数分用意し、同項にて規定の燃料に点火し、同模型の杉材の炎上を確認後、消火薬剤を充填した衝撃破損性容器が投てき者によって投げ込まれた時から消火に至るまでの投てき個数と消火に要した時間を試験した。
B.試験結果を表2に示す。
【表2】
【0082】
本消火試験1の比較例と実施例の結果では、全ての試験において、投てき個数と消火時間の数値が、比較例よりも実施例が優れている。
特に試験番号1(比較例)では火災模型に的中しないボトルがあったため、投てき個数と消火に要した時間の数値が大きくなった。比較例のボトルは円筒形で周面に引っ掛かりが無かったため投てき時の狙いが定まらず、また、重心位置を把持しなかったため、ボトルの飛跡が大きく逸れて火災模型に的中しなかったものと考えられる。
実施例の各試験では凹状周面に指を掛けて正面側/背面側の平面部が手のひらに収まり、投てき前に狙いを定める時間も短かった。
【0083】
「消火試験2(油火災)」
1.実施例、比較例
(1)消火液剤を充填した衝撃破損性容器(実施例)の調製
3000ガウス乃至10000ガウスの磁束密度の磁場を通して処理され、摂氏60℃に調温された温水(磁気水)を100重量部とした場合に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤が4.808部、ラウリル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤が8.173部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の界面活性剤が10.096部を混合し、30分撹拌することで溶解して界面活性溶液(B液)として、予め摂氏40℃に調温され、磁気処理された温水(磁気水)に、塩化アンモニウム(NH
4Cl)を100重量部(主剤)に対して、炭酸カリウム(K
2CO
3)を72.21部含むように溶解して消火液剤(A液)として、A液とB液を混合して撹拌することで消火液剤L(実施例)を調製し、汎用ポリスチレンを100重量部に対して、ハイインパクトポリスチレンを7部混合した樹脂材料を角部のある2mm厚のボトル形状に成形してなる衝撃破損性容器に800ml充填して封入した。
(2)消火液剤を充填した衝撃破損性容器(比較例)の調製
20℃の水道水(H
2O)に、塩化アンモニウム(NH
4Cl)を100重量部(主剤)に対して、炭酸カリウム(K
2CO
3)を50部含むように溶解し、さらに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤が3部、ラウリル硫酸ナトリウム塩の界面活性剤が6部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル塩の界面活性剤が8部の割合で混合して撹拌することで消火液剤(比較例)を調整し塩化ビニル樹脂を2mm厚のボトル形状に成形してなる衝撃破損性容器に800ml充填して封入した。
(3)消火試験
A.試験方法2(油火災)
消火器の技術上の規格を定める法令(昭和39年自治省令第27号)の第4条2項で規定するB火災模型を消火試験の回数分用意し、同項にて規定の燃料に点火し炎上を確認後、消火薬剤を充填した衝撃破損性容器が投てき者によって投げ込まれた時から消火に至るまでの投てき個数と消火に要した時間を試験した。
B.試験結果を表3に示す。
【表3】
【0084】
本消火試験2の比較例と実施例の結果では、全ての試験において、投てき個数と消火時間の数値が、比較例よりも実施例が優れている。
【0085】
「消火試験3(油火災)」
1.実施例、比較例
(1)消火液剤(実施例)の調製
前記消火試験2(油火災)で調整した消火液剤L(実施例)を衝撃破損性容器に充填せずに使用する。
(2)消火液剤(比較例)の調製
前記消火試験2(油火災)で徴した消火液剤(比較例例)を衝撃破損性容器に充填せずに使用する。
(3)消火試験
A.試験方法3(油火災)
金属容器に天ぷら油を任意量用意し、点火し炎上を確認後、消火薬剤を注いだ時から消火に至るまでに要した消火薬剤の量と消火に要した時間を試験した。
B.試験結果を表4に示す。
【表4】
【0086】
本消火試験3の比較例と実施例の結果では、全ての試験において、消火に要した消火液剤の量と消火時間の数値が、比較例よりも実施例が優れている。