(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786102
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】回転釜の食材取り出し方法
(51)【国際特許分類】
A47J 27/16 20060101AFI20201109BHJP
A47J 27/14 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
A47J27/16 C
A47J27/14 D
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-185218(P2016-185218)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-47098(P2018-47098A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】森 寛
(72)【発明者】
【氏名】森本 守
【審査官】
川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−285546(JP,A)
【文献】
特開2014−223136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に食材を出し入れする開口部を持った底のある処理槽と、処理槽を上下方向に回転するための回転駆動機構を持っており、処理槽内に食材を収容して上部の開口部は蓋で閉じた状態で処理槽内を高温・高圧として処理槽内の食材を加熱調理するようにしている回転釜であって、加熱調理終了後には、蓋を閉じたままで処理槽内の圧力を低下させる減圧工程と、処理槽を傾ける傾動工程を行い、その後に、処理槽を正立位置に戻して蓋を開放して、処理槽を傾けて食材の取り出しを行うようにしていることを特徴とする回転釜の食材取り出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部に開口部と開口部を塞ぐ蓋を持っている処理槽内に食材を収容しておき、処理槽内への蒸気供給や処理槽を周囲から加熱することによって処理槽内に収容している食材を加熱するようにしており、加熱調理後の食材は蓋を開けた処理槽を傾けることで取り出すようにしている回転釜の食材取り出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
納豆の製造では、水を吸わせた大豆を蒸煮し、その後に納豆菌を噴霧して発酵させるようにしている。大豆の蒸煮に使用する釜では、上部に開口部と開口部を塞ぐ蓋を設置している処理槽内に大豆を収容し、蓋を閉じて処理槽内は密閉しておき、処理槽内に蒸気を導入して処理槽内を高温・高圧とすることで蒸煮を行う。このような釜では、蒸煮中に大豆を撹拌するためや、蒸煮後の大豆を取り出す際に処理槽を傾けるため、処理槽は縦方向に回転できるようにした回転釜が用いられる。
【0003】
また、豚骨スープの抽出などで使用する釜は、処理槽の周囲から加熱して処理槽内の食材を煮込むようにしており、加熱手段として処理槽の外面に蒸気ジャケットを設置しておき、蒸気ジャケット内へ蒸気を供給することで処理槽内の食材を加熱することも広く行われている。高温・高圧の力を利用しての時間短縮を行う圧力釜であれば、蓋は処理槽にしっかりと固定し、処理槽内は密閉した状態で処理槽内を加熱して煮込みを行う。この場合も煮込みを行った食材の取り出しは、処理槽を傾けて処理槽上部の開口部から取り出すようにするため、処理槽には回転駆動装置を設置しておいて処理槽を縦方向に回転できるようにしている回転釜が多く使用されている。回転釜での処理槽の回転は、特許5814777号にあるように、手動のハンドルや処理槽に固定した回転軸、さらにハンドルと回転軸の間を連結した歯車などからなる回転駆動装置、また動力は電動モータを使用して自動で回転させるようにした回転駆動装置を設置しておいて回転を行っている。
【0004】
処理槽内を加圧して加熱調理を行った場合、調理終了時点では処理槽内は100℃よりも高くなっており、圧力も大気圧より高くなっているため、そのままでは蓋を開くことができない。そのため、処理槽内の圧力を低下させ、処理槽内を大気圧まで減圧してから蓋を開くようにしており、その後に処理槽を傾けることで加熱調理を行った食材を取り出している。このとき、加熱調理を行った食材が小さな粒であった場合や、上面に脂の層ができていた場合などで、断熱層ができて食材層内部に溜まっていた熱が逃げなくなっていた場合、処理槽内は減圧しても食材層内では100℃より高い温度域が残ることがあった。そしてこの状態で食材を取り出すために処理槽を傾けると、断熱層が崩れて食材層内の高温部が大気圧中に出てきた瞬間に食材内部が沸騰状態となり、食材を飛び散らせるということがあった。処理槽を傾けての食材取り出し時に、食材が内部から沸騰すると、食材が処理槽の周囲に飛び散ることになるため、取り出し時の食材の飛び散りを防止させることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5814777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、回転釜において加熱調理終了後に処理槽を傾けての食材取り出し時に、食材内部からの沸騰によって食材の飛び散りが発生することを防止することのできる回転釜の食材取り出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、上部に食材を出し入れする開口部を持った底のある処理槽と、処理槽を上下方向に回転するための回転駆動機構を持っており、処理槽内に食材を収容して上部の開口部は蓋で閉じた状態で処理槽内を高温・高圧として処理槽内の食材を加熱調理するようにしている回転釜であって、加熱調理終了後には、蓋を閉じたままで処理槽内の圧力を低下させる減圧工程と、処理槽を傾ける傾動工程を行い、その後に、処理槽を正立位置に戻して蓋を開放して、処理槽を傾けて食材の取り出しを行うようにしていることを特徴とする。
【0008】
処理槽内を高温・高圧にした状態で加熱調理を行った場合、加熱調理工程終了後に蓋を開く前に、処理槽内の減圧と、処理槽の傾動を行うと、処理槽内では食材層内の高温部が処理槽内の大気圧部に触れ、その時点で食材内での沸騰が発生する。食材内での沸騰が発生すると、蒸発時の気化熱によって食材内の温度が低下し、高温域は消失する。沸騰時には食材の飛び散りが発生するが、蓋を閉じた状態であるために食材が外部へ飛び出ることはない。その後、処理槽を正立位置まで戻して蓋を開いた後で処理槽を傾けると、食材層内には100℃を超える高温部は無くなっているために沸騰による飛び散りは発生することはなく調理した食材を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明を実施することで、処理槽内を高温・高圧で加熱調理した後の食材取り出し時に、食材内で沸騰が発生して食材が周囲に飛び出るということを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を実施している回転釜の正立時の正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施している回転釜の正立時の正面図、
図2は本発明を実施している回転釜の工程順説明図、
図3は比較のための従来の回転釜での工程順説明図である。
【0012】
回転釜は、処理槽1と処理槽1の左右に設けた処理槽支持台11などからなる。処理槽1は上部に食材を出し入れする開口部を持った有底の容器であり、蓋4によって処理槽上部の開口部をふさぐことができるようにしておく。処理槽1は、左右に設けている処理槽支持台11によって支えており、処理槽1と処理槽支持台11の接続部は処理槽1を縦方向に回転させることが可能なように接続している。
図1では処理槽1の左側に設置している処理槽支持台11には、ハンドルなどからなる回転駆動装置3を設置し、回転駆動装置3と処理槽1を釜回転軸2で接続しておき、回転駆動装置3によって釜回転軸2の回転を行うことで、釜回転軸2によって接続している処理槽1が縦方向に回転可能としている。
【0013】
もう一方の処理槽支持台11には蒸気供給配管9を通している。処理槽1の外側底部には蒸気ジャケット7を設置しており、蒸気供給配管9は先端側で蒸気ジャケット7に接続している。蒸気供給配管には、回転させることの可能なスイベルジョイント等を設置しておくことで、回転によるねじれの影響が発生しないようにしておく。
【0014】
処理槽1の上部開口部は蓋4によって塞ぐことができるようにしている。蓋4は処理槽内で食材を加熱調理する際に処理槽1を密閉することができるものとしており、密閉した状態で加熱することで処理槽内が高温・高圧となるようにしている。処理槽内で圧力を高めるものである場合、蓋4は高圧となった処理槽1内の圧力に耐える必要があるために頑丈な作りとしており、重量が非常に重くなる。そのために回転駆動装置3を設けている処理槽支持台11の上部には、釣り合いの錘を持たせている蓋開閉用アーム5を設け、蓋開閉用アーム5を使って蓋4を開閉するようにしている。蓋開閉用アーム5は蓋4を斜め上方へ跳ね上げるためのものであり、蓋開閉用アーム5を持ち上げると、蓋4が処理槽1から離れて処理槽1上部が開くことになる。また、処理槽1には排気配管8を接続し、排気配管8の途中には排気弁10を設置しておき、加熱調理終了後には排気配管8を通して処理槽1内の蒸気を排出することができるようにしている。
【0015】
次に、回転釜によって食材の加熱調理を行う場合の操作を説明する。加熱調理時の蒸気供給制御等は、処理槽支持台11に設置している操作盤6を用いて行う。食材を収容する準備の工程では、処理槽1を正立位置とし、蓋4を持ち上げておいて、処理槽1内へ食材を投入する。そして蓋開閉用アーム5を倒して蓋4を処理槽1に載せ置き、処理槽1と蓋4を固定して処理槽内を密閉する。
【0016】
次に加熱調理工程を行う。加熱調理の工程では、蒸気供給配管9を通して蒸気ジャケット内に蒸気を供給し、蒸気ジャケット内の蒸気が処理槽の壁面を加熱することで処理槽1内を高温高圧として煮込みなどの食材の加熱調理を行う。
【0017】
食材の加熱調理が終了すると、蓋4を開いて調理し終わった食材の取り出しを行うのであるが、加熱調理時に処理槽1内の圧力が高まっているため、処理槽1内の圧力を大気圧に戻す必要がある。減圧の工程では、処理槽1内から蒸気を排出する排気配管8に設けている排気弁10を開くことで処理槽1内からの蒸気の排出を行う。
【0018】
従来の回転釜であれば、処理槽内を減圧するとそのまま蓋4を開いて食材を取り出していたが、その場合には食材取り出し時に食材内で沸騰が発生して食材が処理槽の外へ飛び出すことがあった。排気弁10を開くだけでは食材層内の深い部分に100℃を超える高温域が残っていることがあるので、食材槽内の熱を放出するために処理槽1を傾ける傾動の工程を行う。蓋4は閉じたままで処理槽1を90°まで傾けると、処理槽1内では食材の層が崩れて撹拌され、食材層内にあった高温域も処理槽1内の空間部へ出てくる。食材内に100℃よりも高い部分があった場合、処理槽1内が大気圧まで低下していると、食材内で沸騰が発生し、食材内の高温部は蒸発による気化熱などによって温度は低下する。
【0019】
食材内部の熱を処理槽内で放出後、処理槽1は水平位置に戻してから蓋4を開く蓋開放の工程を行う。また、上記の沸騰によって処理槽1内の圧力が上昇していれば、蓋4を開く前にその蒸気も排気しておいてから、蓋開閉用アーム5をはね上げることで処理槽1の上部を開口する。釜の側面に食材を受ける容器を準備し、回転駆動装置3を操作して処理槽1を斜めに傾け、処理槽1内から食材を取り出す。その後、処理槽1を正立位置に戻せば最初の状態に戻り、一サイクルの作業工程は終了する。
【0020】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。例えば実施例の回転釜は処理槽底部に蒸気ジャケットを設けておき、蒸気ジャケット内に供給した蒸気によって処理槽内の食品を間接的に加熱するものであるが、処理槽内に蒸気を直接供給することで処理槽内の食材を蒸煮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 処理槽
2 釜回転軸
3 回転駆動装置
4 蓋
5 蓋開閉用アーム
6 操作盤
7 蒸気ジャケット
8 排気配管
9 蒸気供給配管
10 排気弁
11 処理槽支持台