特許第6786209号(P6786209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786209
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】誘導発熱ローラ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/06 20060101AFI20201109BHJP
   H05B 6/14 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H05B6/06 393
   H05B6/14
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-241676(P2015-241676)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2017-107780(P2017-107780A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】外村 徹
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌義
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−298816(JP,A)
【文献】 特開昭64−088127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/06
H05B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール本体の内部に誘導発熱機構を設けてなる誘導発熱ローラ装置であって、
前記ロール本体に設けられたN個(Nは3以上の整数)の測温抵抗体が結線されてN個の外部端子が設けられた温度検出用回路と、
電源が接続された前記N個の外部端子からの検出値に基づいて、前記N個の測温抵抗体温度を演算する演算制御装置とを備え
前記演算制御装置は、前記電源から各外部端子間への給電を切り替えることにより、前記各外部端子間を流れる電流及び前記各外部端子間の電圧を計測して前記各測温抵抗体の抵抗値を算出し、前記各測温抵抗体の温度を演算する、誘導発熱ローラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導発熱ローラ装置では、回転するロール本体の各部の温度検出するために、複数の温度検出用素子が設けられている。
【0003】
ここで、温度検出用素子として測温抵抗体を使用した場合、ロール本体の外部に設けられた電源から複数の測温抵抗体に給電するための給電機構としては、回転トランスを用いて電磁的結合を得る方式や、スリップリングを用いて電気的結合を得る方式が採用されている。
【0004】
しかしながら、測温抵抗体の数が増えれば増えるほど、回転側であるロール本体と固定側との結合箇所が多くなってしまう。具体的に測温抵抗体の数がn個の場合、一般的に結合箇所は2n箇所であり、片側極性を互いに接続した場合でも結合箇所は(n+1)箇所となる。そうすると、ロール本体に設けられるロータ機器及び固定側に設けられるステータ機器の数も多くなり、また、給電機構が大きくなってしまい、誘導発熱ローラ装置に組み込むことが困難になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−48871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、誘導発熱ローラ装置において、3つ以上の測温抵抗体を設けた場合に、外部端子の数を減らすことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る誘導発熱ローラ装置は、ロール本体の内部に誘導発熱機構を設けてなる誘導発熱ローラ装置であって、前記ロール本体に設けられたN個(Nは3以上の整数)の測温抵抗体が結線されてN個の外部端子が設けられた温度検出用回路と、前記N個の外部端子からの検出値に基づいて、前記N個の測温抵抗体の温度を演算する演算制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、N個(Nは3以上の整数)の測温抵抗体を結線してN個の外部端子とし、当該N個の外部端子からの検出値に基づいてN個の測温抵抗体の温度を演算するので、3つ以上の測温抵抗体を設けて温度を検出する場合に、外部端子の数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態の3素子3端子の温度検出用回路の構成を示す図である。
図3】同実施形態の2素子3端子の温度検出用回路の構成を示す図である。
図4】変形実施形態の4素子4端子の温度検出用回路の構成を示す図である。
図5】4素子4端子の温度検出用回路の変形例を示す図である。
図6】変形実施形態の5素子5端子の温度検出用回路の構成を示す図である。
図7】変形実施形態の5素子5端子の温度検出用回路の構成を示す図である。
【0010】
1.第1実施形態
以下に本発明に係る誘導発熱ローラ装置の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100は、図1に示すように、回転自在に支持されたロール本体2と、このロール本体2の内部に設けられ、鉄心31及び当該鉄心31に巻回された巻き線32からなる誘導発熱機構3と、巻き線32に接続されるとともに、交流電流又は交流電圧を制御する制御素子4が設けられた電源回路5とを備えている。
【0012】
ロール本体2の側周壁の肉厚内には、気液二相の熱媒体が封入される複数のジャケット室2Sが周方向に等間隔に形成されている。また、本実施形態の制御素子4は、半導体により交流電流又は交流電圧の通電角を制御するものであり、具体的にはサイリスタである。
【0013】
そして、本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、ロール本体2に設けられたN個(Nは3以上の整数)の測温抵抗体61が結線されてN個の外部端子Tが設けられた温度検出用回路6と、電源8が接続されたN個の外部端子Tの検出値に基づいて、N個の測温抵抗体61の温度を演算する演算制御装置7とを備えている。
【0014】
温度検出用回路6は、図2に示すように、3つの測温抵抗体61(以下、素子61a〜61cとも言う。)を三角結線して、3つの外部端子T〜Tを有する回路構成である。なお、測温抵抗体61は、例えば白金測温抵抗体である。
【0015】
演算制御装置7は、電源8から各端子T〜T間への給電を切り替えるとともに、各端子T〜T間を流れる電流及び各端子T〜Tの電圧を計測して各素子61a〜61cの抵抗値A〜Cを算出し、各素子61a〜61cの温度を演算するものである。なお、図1の符号9は、電源8からの電圧を温度検出用回路6に印加するための給電機構である。この給電機構9は、回転トランスを用いて電磁的結合を得る方式、又はスリップリングを用いて電気的結合を得る方式のものである。電源8としては、給電機構9に回転トランスを用いた場合には、交流電源を用い、スリップリングを用いた場合には、交流電源又は直流電源を用いる。
【0016】
具体的に本実施形態では、演算制御装置7は、端子T−T間と、端子T−T間と、端子T−T間との3点の電気抵抗を計測する。ここで、未知数は、素子抵抗A、B、Cの3つであり、演算制御装置7は、3つの連立方程式による演算でその値を算出する。そして、演算制御装置7は、算出した素子抵抗A、B、Cに基づいて、素子61a〜61cが位置する点の温度を算出する。
【0017】
また、演算制御装置7は、以下の内容により演算を行っても良い。
演算制御装置7は、端子T−T間に電圧Eを印加して、合成抵抗Rを計測する。このとき演算制御装置7は、端子T−T間の分圧eと、端子T−T間の分圧eを計測する。ここで、電圧比は素子抵抗比と同じになる。その比を1:Kとすれば、A:C=1:Kとなるので、C=KAとなる。したがって、未知数は、A、KA、Bであり、つまり、A及びBの2つとなる。
【0018】
また、演算制御装置7は、端子T−T間に電圧Eを印加して、合成抵抗Rを計測する。このとき演算制御装置7は、端子T−T間の分圧eと、端子T−T間の分圧eを計測する。ここで、電圧比は素子抵抗比と同じになる。その比を1:Lとすれば、B:C=1:Lとなるので、C=LBとなる。したがって、未知数は、A、LB、Bであり、つまり、A及びBの2つとなる。
【0019】
これら2つの計測により2つの連立方程式が得られ、この連立方程式を解くと、素子抵抗A、B、Cが求められる。
なお、詳細な計算は省略するが、素子抵抗A、B、Cは、以下の式により示される。
A={(1+K)(1+L)−1}RaRb/(1+K){(1+L)Rb−Ra}
B=K{(1+K)(1+L)−1}RaRb/L(1+K){(1+L)Rb−Ra}
C=K{(1+K)(1+L)−1}RaRb/(1+K){(1+L)Rb−Ra}
【0020】
なお、この演算制御装置7により得られた各部の温度に基づいて、電源回路5の制御素子4が制御されて、ロール本体2の温度が調整される。
【0021】
本実施形態の3素子3端子の温度検出回路6が設けられたロール本体2は、図3に示す2素子3端子の温度検出回路が設けられたロール本体と交換可能とされている。本実施形態の3素子3端子の温度検出回路6が設けられたロール本体2及び図3に示す2素子3端子の温度検出回路が設けられたロール本体は、何れも、3つの外部端子Tを有するため、給電機構9を共通化することができる。
【0022】
2.第2実施形態
次に第2実施形態の誘導発熱ローラ装置について説明する。
本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、前記実施形態とは、温度検出用回路6及び演算制御装置7の構成が異なる。
【0023】
温度検出用回路6は、図4に示すように、4つの測温抵抗体61(以下、素子61a〜61dとも言う。)を四角結線して、4つの外部端子T〜Tを有する回路構成である。
【0024】
演算制御装置7は、電源8から各端子T〜T間への給電を切り替えるとともに、各端子T〜T間を流れる電流及び各端子T〜Tの電圧を計測して各素子61a〜61dの抵抗値A〜Dを算出し、各素子61a〜61dの温度を演算するものである。
【0025】
具体的に本実施形態では、演算制御装置7は、端子T−T間と、端子T−T間と、端子T−T間と、端子T−T間の4点の電気抵抗を計測する。ここで、未知数は、素子抵抗A、B、C、Dの4つであり、演算制御装置7は、4つの連立方程式による演算でその値を算出する。そして、演算制御装置7は、算出した素子抵抗A、B、C、Dに基づいて、素子61a〜61dが位置する点の温度を算出する。なお、この方程式はかなり難解となる。
【0026】
そこで、演算制御装置7は、以下の内容により演算を行っても良い。
演算制御装置7は、端子T−T間に電圧Eを印加して、合成抵抗Rを算出する。このとき演算制御装置7は、分圧e、e、e、eを計測する。それぞれの抵抗比は、A:B=e:e、C:D=e:eとなる。A:B=1:K、C:D=1:Lとすれば、B=KA、D=LCとなる。
【0027】
また演算制御装置7は、端子T−T間に電圧E’を印加して、合成抵抗rを算出する。このとき演算制御装置7は、分圧e’、e’、e’、e’を計測する。それぞれの抵抗比は、A:D=e’:e’、B:C=e’:e’となる。A:D=1:M、B:C=1:Nとすれば、D=MA、B=C/Nとなる。この抵抗比を用いれば、未知数は2つとなる。このように、2つの端子間T−T、T−Tの抵抗計測と、それぞれの分圧計測で、素子61a〜61dの抵抗値A〜Dは簡単に求めることができる。
【0028】
なお、詳細な計算は省略するが、素子抵抗A、B、C、Dは、以下の式により示される。
A=Rr{(1+L)(1+M)−(1+K)(1+1/N)}
/K(1+L)(1+N){R(1+M)−r(1+K)}
B=Rr{(1+L)(1+M)−(1+K)(1+1/N)}
/(1+L)(1+N){R(1+M)−r(1+K)}
C=Rr{(1+L)(1+M)−(1+K)(1+1/N)}
/(1+L)(1+1/N){R(1+M)−r(1+K)}
D=RrL{(1+L)(1+M)−(1+K)(1+1/N)}
/(1+L)(1+1/N){R(1+M)−r(1+K)}
【0029】
その他、4素子4端子の温度検出用回路6としては、図5に示すように、3つの素子61a〜61cを三角接続して、その1つの頂点に4番目の素子61dの一端を接続し、他端を4番目の外部端子Tとしても良い。この場合、演算制御装置7は、4番目の両端に電圧を印加して、当該4番目の素子61dの抵抗値Dを算出するとともに、残りの3つの素子61a〜61cについては、前記第1実施形態と同様にして、それらの抵抗値A〜Cを算出する。
【0030】
3.第3実施形態
次に第3実施形態の誘導発熱ローラ装置について説明する。
本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、前記実施形態とは、温度検出用回路6及び演算制御装置7の構成が異なる。
【0031】
温度検出用回路6は、図6に示すように、4つの素子61a〜61dを四角結線して、その1つの頂点に5番目の素子61fの一端を接続し、他端を5番目の外部端子Tとする。
【0032】
そして、演算制御装置7は、5番目の素子61fの両端に電圧を印加して、当該5番目の素子61fの抵抗値Fを算出するとともに、残りの4つの素子61a〜61dについては、前記第2実施形態と同様にして、それらの抵抗値A〜Dを算出する。
【0033】
その他、5素子5端子の温度検出用回路6としては、図7(A)、(B)に示すように、3つの測温抵抗体61a〜61cを三角接続して、その1つの頂点に4番目の素子61dの一端を接続して、他端を4番目の外部端子Tとし、1つの頂点に5番目の素子61fの一端を接続して、他端を5番目の外部端子Tとしてもよい。この場合、演算制御装置7は、4番目の素子61dの両端に電圧を印加して、当該4番目の素子61dの抵抗値Dを算出し、5番目の素子61fの両端に電圧を印加して、当該5番目の素子61fの抵抗値Fを算出し、残りの3つの素子61a〜61cについては、前記第1実施形態と同様にして、それらの抵抗値A〜Cを算出する。
【0034】
4.その他の実施形態
6素子以上の温度検出用抵抗の具体例について以下に説明する。
6素子6端子の場合は、前記第1実施形態の3素子3端子の回路を2組用いることが考えられる。また、第1実施形態の3素子3端子の回路の各頂点に1つずつ素子を接続することも考えられる。
7素子7端子の場合は、前記第1実施形態の素子3端子の回路と、前記第2実施形態の4素子4端子の回路とを組み合わせることが考えられる。
8素子8端子の場合は、前記第2実施形態の4素子4端子の回路を2組用いることが考えられる。
9素子9端子の場合は、前記第2実施形態の4素子4端子の回路と前記第3実施形態の5素子5端子の回路とを組み合わせることが考えられる。
10素子10端子の場合は、前記第3実施形態の5素子5端子の回路を2組用いることが考えられる。
【0035】
このように3素子以上の温度検出用回路6は、前記第1〜3実施形態の3素子3端子の回路、4素子4端子の回路及び5素子5端子の回路を組み合わせることによって構成することができる。
【0036】
このように構成した前記各実施形態の誘導発熱ローラ装置100によれば、N個(Nは3以上の整数)の測温抵抗体61を結線してN個の外部端子Tとし、当該N個の外部端子Tからの検出値に基づいてN個の測温抵抗体61の温度を演算するので、3つ以上の測温抵抗体61を設けて温度を検出する場合に、外部端子Tの数を減らすことができる。
【0037】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。また、各計算過程において実測値と計算値とに差異が生じる場合には、実測値から算出した補正係数を用いて補正を行うことも言うまでも無いことである。
【符号の説明】
【0038】
100・・・誘導発熱ローラ装置
2・・・ロール本体
2S・・・ジャケット室
3・・・磁束発生機構
32・・・巻き線
6・・・温度検出用回路
61・・・測温抵抗体
T・・・外部端子
7・・・演算制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7