(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
医療カテーテル法は、今日では日常的に行われている。例えば、心房細動などの心臓不整脈の場合、これは、心臓組織の領域が電気信号を異常に伝導するときに生じる。不整脈治療の手順としては、不整脈の原因となっている信号源を外科的に遮断することと、並びにそのような信号の伝達経路を遮断することと、が挙げられる。カテーテルを介してエネルギー、例えば高周波エネルギーを印加して心組織を選択的に焼灼することにより、望ましくない電気信号が心臓のある部分から別の部分へと伝播するのを止める又は修正することが可能となることがある。焼灼処理は、非伝導性の外傷部を形成することによって、望ましくない電気的経路を破壊するものである。
【0003】
典型的な心カテーテルは、患者の脈管系を通じて、心室、又は心臓の脈管構造に挿入される。カテーテルの遠位先端部は、活性化マップ、解剖学的位置情報、及びその他の機能像を生成するためのプロセッサを含むコンソールによって処理される、電気的及び位置的情報を得るために、心臓壁と接触させられる。
【0004】
近年では、カテーテルに基づいた焼灼が腎除神経で使用されている。世界中で成人の4人に1人が高血圧症に苦しんでいる。過度に活動的な交感神経系は、高血圧症の病因において決定的な役割を果たす。腎除神経は、難消化性高血圧症の患者の中で異例の血圧低下を実証した。腎カテーテル法では、非常に薄いカテーテルが鼠径部に挿入され、体内を腎動脈まで通される。所望の場所で、RF又は超音波エネルギーが起動されて、高血圧の原因となる機構の1つを効果的にオフにするやり方で腎動脈に関連する神経が弱められる。これらのいわゆる「交感神経性」神経は、過度に活動的になると、心拍数及びその他の要因を低下させることで身体が反応するそれらの活動を減少させることから、高血圧症の主原因となり得る。
【0005】
ニチノールワイヤは、多くの場合、治療用及び診断用カテーテルの先端の構成体に使用され、これには、心室又は心臓の脈動領域で使用し、その領域の側面との接触が望ましい、リング型、らせん型、又はバスケット型などの幾何学的な先端が含まれる。ニチノールワイヤは体温で可撓性及び弾性を帯び、ニチノールワイヤもほとんどの金属と同様に、最小限の力を受けたときに変形し、その力がなくなると元の形に戻る。したがって、3−D遠位アセンブリは、ガイドシースに送り込まれるように簡単に畳み込み、ガイドシースが取り出された時点で室又は脈動領域に容易に配置することができる。なぜなら、ニチノールは、形状記憶合金(SMA)と呼ばれる物質のクラスに属するためである。これらの物質は、ニチノールが「記憶された形状」を有することを可能にする形状記憶及び超弾性を含む、可撓性及び弾性を超える興味深い機械特性を有する。つまり、ニチノールは、焼きなましによって特定の形状を記憶するようにトレーニング処理することができる。
【0006】
ニチノールは、マルテンサイト相、オーステナイト相、及び焼きなまし相の3つの異なる温度相を有する。マルテンサイト相は低温度相であり、この相ではニチノールの結晶構造が揃い、キュービック状になる。合金は、簡単に屈曲又は形成することができる。屈曲すると、内部応力を生む合金の結晶構造が変形する。オーステナイト相では、ニチノールがその転移温度を超えて加熱され、結晶構造がその応力のない(キュービック)状態に戻る。ニチノールの転移温度は、正確なニッケル及びチタンの比に大きく依存する。ニチノールの転移温度は、合金組成及び/又はその工程によって約−100C〜+100Cの間で調節することができる。焼きなまし相は高温度相であり、この相では、ニチノールの結晶構造が、高温に晒される間にそれに課された形状を「記憶する」ように再配向され得る。ニチノールワイヤの焼きなまし相は約摂氏540度である。
【0007】
記憶が高温焼きなましで確立された後は、冷却されたニチノールワイヤは、記憶された形状から屈曲することができ、その後はニチロールワイヤのその転移温度を超える加熱によって、その記憶された形状に戻される。ニチノールは、一般に約摂氏70度であるその転移温度で、このような温度ムーブメントに対して活性化する。ニチノールワイヤの耐性は約2.5オーム/mであり、ワイヤに電流を通して電気的に加熱することができる。
【0008】
ヒトの心臓は4つの室と、それらの室の内外に流れる脈動領域と、を有する。心性EPカテーテルは典型的に、患者の大腿静脈内の切開を通じて脈管系に挿入され、心臓の右心房に流れ込む上大静脈内を前進させられる。心カテーテルの先端は、その後、右心房に留めることも、又は別の室及び/又は脈動領域へ更に前進させられることもできる。心性EPカテーテルは、カテーテル制御ハンドルに反応する1つ以上の牽引ワイヤを用いて操舵され、これらの領域それぞれへ偏向させられる。
図11に示すとおり、心カテーテルは、さまざまな偏向曲率を提供し、それぞれ典型的に均一の曲率を有する(異なる半径の円弧を形成する)。同様に、腎動脈は大腿動脈内の切開を介して接近され、腎カテーテルは大動脈内を前進させられて腎動脈に到達する。ただし、比較的幅広い上大動脈から接近される空洞領域である右心房とは異なり、左及び右腎動脈は大動脈より狭く、大動脈に対してほぼ垂直であることから、腎カテーテルの接近を更に困難している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、開示される実施形態によるカテーテル10は、長手方向軸を有する挿入シャフト又はカテーテル本体12と、カテーテル本体の長手方向軸から、軸外に偏向させることができる、カテーテル本体の中間偏向部分14と、を含み得る、細長形本体を含む。中間部分14から遠位に延在する遠位部分15は、遠位先端電極17及び1つ以上のリング電極19を含む。制御ハンドル11は、カテーテル本体12の基端から延在する。本発明の特徴により、偏向部分14は、温度の影響を受けるトレーニング処理された形状を有する支持部材で構築され、この形状は、ある形態から別の形態に変わるために熱活性化されることができ、冷却されたときに、前の形態に戻されるか、又は別の形態に形作られることができる。
【0018】
図2A及び2Bに示される実施形態では、カテーテル本体12は、単一の軸方向又は中央管腔18を有する細長い管状構成体を含む。カテーテル本体12は可撓性であり、即ち屈曲可能であるが、実質的にその長さに沿って圧縮不能である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造のものでよく、任意の好適な材料で作製することができる。現在好ましい構成体は、ポリウレタン又はPEBAXで作製された外壁20を備える。外壁20は、カテーテル本体12の捩り剛性を増大させるために、当該技術分野において一般的に既知の、ステンレス鋼等の埋め込み式編組みメッシュを含むことにより、制御ハンドル16を回転させると、中間部分14が、対応する方式で回転することになる。
【0019】
カテーテル本体12の外径は重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは7フレンチである。同様に、外壁20の厚さも重要ではないが、中央管腔18が任意の所望のワイヤ、ケーブル、及び/又は管を収容できるように充分に薄いものである。外壁20の内表面は、捩り安定性を高めるために補強管21で裏打ちされている。補強管21の外径は、外壁20の内径とほぼ同じか、又はそれよりも僅かに小さい。補強管21は、極めて良好な剛性を提供し、かつ体温で軟化することがない、ポリイミドなどの任意の好適な材料で作製することができる。
【0020】
図2A、2B及び2Cを参照すると、偏向可能な中間部分14は、複数の管腔を有する管材22の短い部分を含み、複数の管腔のそれぞれは、カテーテル本体12から中間部分14を通じて延在するさまざまな構成要素によって占有されている。例示の実施形態には、少なくとも4つの軸外管腔が存在する。電極リード線24は、第1管腔31を通過する。形状記憶を有する細長い支持部材25は、第2管腔32を通過する。遠位先端電極17に灌注流体を供給するための灌注管材26が、第3管腔34を通過する。遠位位置センサー29に接続されたケーブル28(
図3A及び3Bを参照)は、第1管腔31を通過する。牽引ワイヤ30は、第4管腔34を通過して偏向部分14を提供する。
【0021】
中間部分14の多管腔管材22は、好ましくはカテーテル本体12よりも可撓性の高い好適な無毒性材料で作製される。好適な材料は、編組みポリウレタン又はPEBAX、即ち、編み組まれたステンレス鋼などの埋込みメッシュを有するポリウレタン又はPEBAXである。各管腔を通じて延びる構成要素を収容するだけの充分な空間があれば、管腔の数及びサイズは重要ではない。第2及び第4管腔32及び34の位置が軸外である場合を除き、各管腔の位置も重要ではなく、支持部材25及び牽引ワイヤ30によって生成される偏向は、管材22の各側に向かい、それに沿って各構成要素がそれぞれ延びることを理解されよう。このように、いくつかの実施形態では、カテーテルには反対の双方向偏向がもたらされ、支持部材25及び牽引ワイヤ30は正反対の管腔32及び34に位置する。
【0022】
カテーテルの有用な長さ、即ち患者の体内に挿入され得る部分は、所望に応じて変動し得る。好ましくは、この有用な長さは、約60cm〜約95cmである。中間部分14の長さは、この有用な長さの比較的小さい部分であり、好ましくは約2cm〜約10cm、より好ましくは約5cm〜約7cmの範囲である。
【0023】
カテーテル本体12を中間部分14に取り付ける手段が、
図2A及び
図2Bに示されている。中間部分14の近位端は、カテーテル本体12の外壁20の内面を受容する外周ノッチ35を含む。中間部分14及びカテーテル本体12は、接着剤など(例えば、ポリウレタン)によって取り付けられる。必要な場合、カテーテル本体12内の、補強管21の遠位端と中間部分14の近位端との間にスペーサー(図示せず)を設けることによって、カテーテル本体12と中間部分との接合部に可撓性が移行する部分を与えることにより、接合部が折れたり又は捻れたりすることなく、滑らかに屈曲することが可能となる。そのようなスペーサーの例が、米国特許第5,964,757号に更に詳細に記載されており、その開示内容は参照によって本願に組み込まれる。
【0024】
中間部分14の遠位には、遠位部分15がある。
図3A及び3Bに示すとおり、遠位部分15は管材13の短い部分を含み、中央管腔16を有し、管材22の遠位端と遠位先端電極17との間に延在する。また、管材13はEM位置センサー29を収容する。遠位先端電極17用のリード線24T、リング電極19用のリード線24R、及び灌注管材26は、中央管腔16を通って延在する。
【0025】
管材13を中間部分14の管材22に取り付ける手段が、
図3A及び3Bに示されている。中間部分14の遠位端は、管材13の近位端の内周ノッチを受容する外周ノッチ37を備える。管材22及び管材13は、接着剤など(例えば、ポリウレタン)によって取り付けられる。
【0026】
図4A、4B、及び4Cを参照すると、遠位先端電極17は、近位茎部17P及び非外傷性遠位端17Dを持つほぼ中実円筒形の本体を有する。近位茎部17Pは、管材13の遠位端に受容される。本体の近位面は盲穴40を有し、圧着フェルール41によって盲穴40に固定されたリード線24Tの遠位端を受容する。いくつかの実施形態では、近位面はまた、灌注管材26の遠位端を受容する長手方向流路42を有し、この流路を通って、流体は、流体源(図示せず)からカテーテルの長さに沿って先端電極17へ流れ込み、流体ポート46を介して先端電極17を出て、長手方向流体経路42と通じる流体ブランチ44を横断することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、
図4A及び4Bに示すとおり、リング電極19はコネクター管材13の外側表面に固定される。当業者によって理解されるとおり、リード線24Rは、管材13の側壁に形成される孔50(
図4A)を介してリング電極19に接続される。
【0028】
示された実施形態では、支持部材25が管材22の第2管腔32を通って延在し、中間偏向部分14の1つ以上の形状を画定する。支持部材25は、可撓性及び弾性がある材料、即ち、力が行使されると、その本来の形状から離れて直線状に伸ばすか又は屈曲させることができ、かつ力を取り除くと、実質的に本来の形状に戻ることが可能である材料で、作製される。本発明の特徴により、支持部材25の構築に好適な材料はまた、熱の影響を受けやすく、その中で支持部材が帯びることができる形状又は形態は支持部材の温度に依存する。したがって、支持部材25に好適な材料は形状記憶合金(SMA)である。これらの材料は、支持部材25が「記憶された形状」を有することを可能にする、形状記憶及び超弾性などの興味深い機械的特性を有する。つまり、支持部材25は、焼きなまし工程によって特定の形状を記憶するようにトレーニング処理されている。
【0029】
本発明の特徴により、支持部材25は例えば
図5の実線に示されているように、第1形態に配置され、焼きなまし相における高温加熱によって第1形態を記憶するようにトレーニング処理されている。支持部材25がその後、室温(約70F、即ち21C)まで冷却されると、支持部材はマルテンサイト相に入り、その時点で例えば
図5の破線に示すような、第2形態に形作られる。支持部材25が続いてその転移温度(例えば、約70C〜130C、即ち158F〜266Fの間)まで加熱されると、支持部材はオーステナイト相に入り、その時点で、例えば
図5の実線で示されているような、焼きなまし相でトレーニング処理された第1形態に概ね戻る。加熱が停止されると、支持部材25はその転移温度未満まで冷却されてよく、その状態で異なる形に作られてよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1の「トレーニング処理された」形態は、少なくとも鋭い若しくは先の尖った曲がりX、又は少なくとも、複数の異なる曲率A、B、及びC(それぞれ異なる半径RA、RB、及びRCを持つ円の弧を描く)を有する曲がりを含むことにより、その長さに沿った全体の曲率は均一ではない。第2形態(
図5の破線)は、真っ直ぐ若しくはより線形の形態、又は曲率の小さいほぼ線形の形態であってよい。トレーニング処理された形態にはまた、ジグザグ型若しくは「S」などの2−D形態と、スパイラル及びらせん状などの3−D形態と、を挙げることができる。
【0031】
好適な材料には、ニッケル/チタン合金が挙げられる。このような合金は、典型的には、約55%のニッケルと45%のチタンを含むが、約54%〜約57%のニッケルと、チタンである残部を含んでもよい。好適なニッケル/チタン合金は、延性、強度、耐食性、電気抵抗、及び温度安定性と共に、優れた形状記憶を有する、ニチノールである。
【0032】
支持部材50は、既定の形状の断面を有し、この既定の形状は、概して円形、又は、正方形を含めた、概して矩形とすることができる。概して矩形の断面は、同等のサイズの円形断面と比較して、より大きい剛性を提供し得ることが理解されよう。
【0033】
図2Bに示すとおり、支持部材25を焼きなまし相まで加熱するため、リード線52、例えば銅線は、例えば
図2Bに示すように支持部材25の近位部分に巻き付けるなど、支持部材25に電気的に接続される。リード線52は、支持部材25から、カテーテル本体12の中央管腔18を通って、制御ハンドル11へ近位に延在し、制御ハンドルの近位端で電気ピンコネクタに接続され、それを通じて、リモート電源装置(図示せず)から、抵抗加熱によって支持部材25を加熱するための電流が送られ得る。回路を完了させるため、リターンリード線52Rは支持部材25に電気的に接続され、例えば、
図3Bに示すように支持部材25の遠位部分に巻き付けられて、カテーテル本体12の管材22の管腔32及びカテーテル本体12の管腔18を通って制御ハンドル11へ近位に延在し、そこで電気ピンコネクタに接続される。支持部材25は、カテーテル及び患者を過度の熱から保護するため、支持部材25の長さに沿って延在する断熱収縮スリーブ54で囲み、被覆することができる。
【0034】
図6は、大動脈102を経由して接近される腎動脈100で使用する、本発明のカテーテル10を示している。本発明の特徴により、カテーテルは、その転移温度を超えたときに第1、即ち「トレーニング処理された」形態(実線)を帯びる形状記憶支持部材25を有し、その転移温度未満になったときに可撓性となり、第2形態(破線)へ形作られ得る。
【0035】
支持部材25が第2形態(破線)に可撓性をもって形作られる室温で、カテーテル10は、EP専門家により、大腿動脈(図示せず)内の切開を通じて患者内を非外傷的に前進させられる。カテーテル10は、ガイドシース106を介して送り込まれ、そのシースの遠位端は腎動脈100付近の下方の大動脈102に配置される。遠位部分15及び中間部分14が腎動脈100付近にある場合、ガイドシース106は、遠位部分15及び中間部分14を晒すために、その第2形態(破線)にある支持部材を用いて引き込まれる。
【0036】
腎動脈100に入るため、EP専門家が電源装置(図示せず)を作動させ、支持部25をその転移温度を上回るまで加熱するように、リード線52を介して電流を送る。その転移温度を上回るまで加熱された支持部材25は、その第1、即ち「トレーニング処理された」形態(実線)を帯び、遠位先端部分15が狭い腎動脈102に入りやすくなるように、中間部分14を鋭角に偏向するため、遠位先端電極17は腎神経104に接触することができる。支持部材25がもたらす中間部分14の鋭角な偏向は、制御ハンドル11の偏向ノブ58(
図1)を介してEP専門家により制御されると同時に、牽引ワイヤ30によって調節又は強調され得る。
【0037】
EP専門家が腎領域からカテーテルを再配置又は取り出す準備ができると、リード線52への電流が切断され、支持部材25は周囲の血流によってその転移温度未満まで冷却され、その時点で支持部材25は再び可撓性となり、第2形態又は別の形態へ(再び)形作ることができるので、ガイドシース106を介して容易に再配置又は近位に引き込まれて、患者の脈管系を出ることが可能となる。
【0038】
支持部材25は、所望及び必要に応じて、数限りない第1及び第2形態で付与され得ることを理解されたい。第1及び第2(又はトレーニング処理済み及び後続の)形態はそれぞれ、1−D、2−D、又は3−D形態になり得る。第1及び第2形態は、第4管腔34を通って延在する牽引ワイヤ30により、必要又は所望に応じて、調節、強調、調整、変更、又は阻止若しくは抵抗でさえされ得ることもまた理解されたい。牽引ワイヤは制御ハンドル11の偏向ノブ58によって強調され、
図3Bに示すとおり、中間部分14の管材22の側壁にある既定の場所に、例えばTバー56によって固定された遠位端を有する。牽引ワイヤ30と支持部材25との間の所望の相互作用に応じて、遠位端の場所は、支持部材25の位置に対して変化され得る。いくつかの実施形態では、この場所は、支持部材25の遠位端の近位、支持部材25の遠位端の遠位、又は支持部材25の長さ沿いであってよい。
【0039】
代替の実施形態では、支持部材25及び牽引ワイヤ30は両方とも、
図7に示すとおり、中間部分14の管材22内の共通の管腔を通過することができ、特に、これらの構成要素の相互作用は、対立的であるよりもむしろ相補的であることが意図される。
【0040】
図2Bに示すとおり、カテーテル本体12の端から端にわたる牽引ワイヤ30の部分は、カテーテル本体12と中間偏向部分14との接合部付近に遠位端を有する、圧縮コイル43で囲まれている。圧縮コイル43は、任意の好適な金属、好ましくはステンレス鋼で作製され、可撓性、即ち屈曲を提供するが、圧縮には抵抗するように、それ自体に対して緊密に巻き付けられる。圧縮コイルの内径は好ましくは、牽引ワイヤ30の直径よりもわずかに大きなものである。圧縮コイルの外側表面は、例えばポリイミド管材で作製される、可撓性の非導電性シース45によって被覆される。この圧縮コイルは、正方形又は矩形の断面積を有するワイヤで形成されてよく、その場合、円形の断面積を有するワイヤから形成される圧縮コイルよりも、圧縮性が小さくなる。結果として、圧縮コイル43は、より多くの圧縮を吸収するため、牽引ワイヤ30が近位に引き込まれる際に、カテーテル本体12が偏向することを防ぐ。中間部分14を通って延在する牽引ワイヤ30の部分は、プラスチックの、例えばTeflon(登録商標)の、牽引ワイヤシースによって囲まれ、このシースは、中間部分14が偏向される際に、牽引ワイヤ30が中間部分14の管材22の壁内に切れ込むことを防ぐ。
【0041】
本発明はまた、1つ以上の熱対応支持部材を持つカテーテルを目的としており、これらの支持部材はそれぞれ、当該の管腔を占有する場合があり、又は中間部分14の管材22にある共通管腔を共有し、及び/又は共通のリード線によって連帯的に付勢されるか、若しくは各リード線によって別個に付勢される場合があり、それによって、カテーテルの同一又は異なる部分に沿って異なる動き及び形態をもたらす。
【0042】
図8Cでは、カテーテルは支持部材25A及び25Bを含み、共通の管腔32を共有するが、それぞれ当該のリード線52A及び52Bと、当該のリターンワイヤ52AR及び528Rを有する。支持部材25Aは、ある形態でトレーニング処理され、支持部材25Bは別の形態でトレーニング処理される。したがって、EP専門家は、加熱によって活性化する支持部材に応じて、カテーテルが帯びる形態を選択することができる。
図8Aは、リード線52Aによって電流が送られ、支持部材25Aがそのトレーニング処理された形態へ熱活性化されるときのカテーテルを示している。
図8Bは、リード線52Bによって電流が送られ、支持部材25Bがそのトレーニング処理された形態へ熱活性化されるときのカテーテルを示している。支持部材25A及び25Bの両方とも、ほぼ同じ方向の偏向を伴う、トレーニング処理された形態を有する。
【0043】
図9Cでは、カテーテルは支持部材25C及び25Dを含み、それぞれ異なる管腔を占有し、それぞれ異なるリード線52C及び52D、並びに異なるリターンワイヤ52CR及び52DRを有する。
図9Aは、リード線25Cによって電流が送られ、支持部材25Cがそのトレーニング処理された形態へ熱活性化されるときのカテーテルを示している。
図9Bは、リード線25Dによって電流が送られ、支持部材25Dがそのトレーニング処理された形態へ熱活性化されるときのカテーテルを示している。この例示の実施形態では、支持部材25C及び25Dはほぼ反対の方向に、トレーニング処理された形態を有することができる。
【0044】
図10Aは、直列に配置された支持部材25M及び25Nを持ち、それぞれが専用のリード線52M及び52N、並びに専用のリターン線52MR及び52NRによって電流を受容するにように構成されたカテーテルを示している。断熱コネクター38は、2つの部材の間に延在し、それらを接続する。
図10Bは、リード線25Mによって電流が送られ、支持部材25Mがそのトレーニング処理された形態(is trained configuration)に熱活性化され、リード線25Nによって電流が送られることなく、支持部材25Nは影響を受けないままであるときのカテーテルを示している(破線で図示)。電流が続けて支持部材25Nに送達されると、その支持部材はそのトレーニング処理された形態を帯びる(実線で図示)。支持部材25M及び25Nは連帯的に、又は所望の運動又は形態を得るために任意の時間系列で熱活性化され得ることを理解されたい。
【0045】
灌注流体は、制御ハンドル16の近位のルアーハブ100(図示せず)に近位端が取り付けられて、ポンプ(図示せず)によって供給される流体を受容する、灌注管材43によって、遠位アセンブリ17に供給される。この灌注管材は、制御ハンドル16、カテーテル本体12の中央管腔18、中間部分14の第3管腔33、管材13の中央管腔を通り、先端電極17の流体経路42へ延在する。
【0046】
各電極リード線24T及び24Rの近位端は、組織から電気信号を送信する、及び/又は電気エネルギーを供給して焼灼を達成するために、制御ハンドル11の遠位の好適なコネクター(図示せず)に電気的に接続される。リード線は制御ハンドル11に延在し、制御ハンドル11の近位端で電気コネクターに接続される。
【0047】
本発明のカテーテルは、心臓及び腎領域を含む、解剖学的構造の任意の領域で使用され得る。患者の心臓内又は付近に配置されたカテーテルは、心室又は心臓の脈動領域の電気生理学的マッピングを容易にし、焼灼を目的として、エネルギー、例えば高周波(RF)電流を、カテーテル電極へ伝送するように設計される。焼灼に関しては、このカテーテルは、マルチチャネルRF発振器及び灌注ポンプと共に使用される。腎領域に配置されるカテーテルは、腎神経を焼灼するために腎動脈に入るように設計される。
【0048】
上記の説明は、現時点における本発明の好ましい実施形態に基づいて示したものである。本発明が関係する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨、及び範囲を大きく逸脱することなく、説明された構造の改変及び変更が実施されてもよいことを理解するであろう。いくつかの実施形態に開示されるすべての特徴又は構造は、必要に応じて、又は適宜、他の任意の実施形態の他の特徴の代わりに又はそれに加えて援用することが可能である。当業者には理解されるように、図面は必ずしも縮尺通りではない。したがって、上記の説明は、添付図面で説明及び図示した厳密な構造のみに関するものとして読まれるべきではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲と一致し、かつそれを支持するものとして読まれるべきであり、この特許請求の範囲が完全かつ公正な範囲を有することになる。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) 長手方向軸を有する細長形本体と、
トレーニング処理された形態(trained configuration)を帯びるために熱活性化用に適合された支持部材を有する偏向部分と、
前記支持部材に電流を送るように構成されたリード線と、を含むカテーテル。
(2) 組織の焼灼用に適合された先端電極を更に含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記支持部材がニチノールを含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) 前記リード線が前記支持部材を加熱するように適合された、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 前記支持部材の少なくとも一部を被覆する断熱層を更に含む、実施態様1に記載のカテーテル。
【0050】
(6) 前記トレーニング処理された形態が一次元で延在する、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記トレーニング処理された形態が二次元で延在する、実施態様1に記載のカテーテル。
(8) 前記トレーニング処理された形態が三次元で延在する、実施態様1に記載のカテーテル。
(9) 第2のトレーニング処理された形態を帯びるために熱活性化用に適合された、第2支持部材を更に含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(10) 前記第2支持部材が、前記第1支持部材の遠位にある少なくとも一部を有する、実施態様9に記載のカテーテル。
【0051】
(11) 前記第2支持部材が、前記長手方向軸沿いに前記第1支持部材と同一の広がりを持つ少なくとも一部を有する、実施態様9に記載のカテーテル。
(12) 前記第2支持部材に電流を送るように構成された第2リード線を更に含む、実施態様9に記載のカテーテル。
(13) 実施態様1に記載のカテーテルを使用する方法であって、
前記カテーテルの細長形本体及び偏向部分を患者の脈管系内に前進させることと、
前記支持部材を少なくともその転移温度まで加熱するように前記リード線を活性化することと、を含む、方法。
(14) 前記支持部材をその転移温度未満まで冷却させることと、
前記患者の脈管系から前記カテーテルを取り出すことと、を更に含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記支持部材を冷却させることが、前記リード線を非活性化することを含む、実施態様14に記載の方法。
【0052】
(16) 実施態様1に記載のカテーテルの製造方法であって、
前記支持部材をその焼きなまし相(annealing phase)まで加熱し、その焼きなまし相にある間に前記支持部材を第1形態に形成することと、
前記支持部材をその転移温度未満まで冷却し、前記支持部材を第2形態に形成することと、を含む方法。
(17) 前記加熱及び冷却が前記カテーテルを組み立てるより前である、実施態様16に記載の製造方法。