特許第6786230号(P6786230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786230
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ジャーナル軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/02 20060101AFI20201109BHJP
【FI】
   F16C17/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-52852(P2016-52852)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-166598(P2017-166598A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 信博
(72)【発明者】
【氏名】藤川 健一
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−224578(JP,A)
【文献】 特開2015−187457(JP,A)
【文献】 特開2004−301258(JP,A)
【文献】 特開昭58−102819(JP,A)
【文献】 特開平7−139543(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0074337(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第2537046(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00− 17/26
F16C 33/00− 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸外周面に対面する軸受内周面の一部に凹部を有しており、
前記軸受内周面が周方向の曲率を一定に形成され、かつ前記凹部の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、前記凹部の内面の曲率と前記軸受内周面の曲率とが異なり、
前記回転軸外周面の周方向の曲率xaと、前記凹部の周方向の曲率xbと、前記軸受内周面の周方向の曲率xcとが、xc<xa、xc<xbの関係を満たし、
前記凹部の内面の最大深さeと前記回転軸の直径rとが、0.003≦e/r≦0.007の関係を満たす、ジャーナル軸受。
【請求項2】
回転軸外周面に対面する軸受内周面の一部に凹部を有しており、
前記軸受内周面が周方向の曲率を一定に形成され、かつ前記凹部の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、前記凹部の内面の曲率と前記軸受内周面の曲率とが異なり、
前記回転軸外周面の周方向の曲率xaと、前記凹部の周方向の曲率xbと、前記軸受内周面の周方向の曲率xcとが、xc<xa、xc<xbの関係を満たし、
かつ、回転軸の周方向で分割された複数のパッドからなり、前記パッドは回転軸外周面に対面する軸受内周面の一部に前記凹部を有し、1つの前記パッドにおける前記軸受内周面が周方向の曲率を一定に形成され、かつ前記凹部の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、前記凹部の内面の弧長の中心線が前記軸受内周面の弧長の中心線と位置が異なり、前記凹部の内面の弧長の中心線が前記軸受内周面の弧長の中心線に対して前記回転軸の回転方向の前方にずれて配置されている、ジャーナル軸受。
【請求項3】
前記凹部は周方向の一定の曲率で軸方向に連続して形成されている、請求項1または2に記載のジャーナル軸受。
【請求項4】
回転軸外周面に対面する軸受内周面の一部に凹部を有しており、
前記凹部の内面の最大深さeと前記回転軸の直径rとが、0.003≦e/r≦0.007の関係を満たす、ジャーナル軸受。
【請求項5】
回転軸の周方向で分割された複数のパッドからなり、前記パッドは回転軸外周面に対面する軸受内周面の一部に前記凹部を有し、1つの前記パッドにおける前記軸受内周面が周方向の曲率を一定に形成され、かつ前記凹部の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、前記凹部の内面の弧長の中心線が前記軸受内周面の弧長の中心線に一致する、請求項1、3、4のいずれか1つに記載のジャーナル軸受。
【請求項6】
回転軸の周方向で分割された複数のパッドからなり、前記パッドは回転軸外周面に対面する軸受内周面の一部に前記凹部を有し、1つの前記パッドにおける前記軸受内周面の周方向長さθwと、1つのパッドにおける前記凹部の周方向長さβとが0.5≦β/θw≦0.8の関係を満たす、請求項1からのいずれか1つに記載のジャーナル軸受。
【請求項7】
回転軸外周面に対面する軸受内周面の一部に凹部を有しており、
回転軸の周方向で分割された複数のパッドからなり、前記パッドは回転軸外周面に対面する軸受内周面の一部に前記凹部を有し、1つの前記パッドにおける前記軸受内周面が周方向の曲率を一定に形成され、かつ前記凹部の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、前記凹部の内面の弧長の中心線が前記軸受内周面の弧長の中心線と位置が異なり、前記凹部の内面の弧長の中心線が前記軸受内周面の弧長の中心線に対して前記回転軸の回転方向の前方にずれて配置されている、ジャーナル軸受。
【請求項8】
前記凹部が前記軸受内周面の縁に掛からず設けられている、請求項1からのいずれか1つに記載のジャーナル軸受。
【請求項9】
回転軸が横置きに配置された場合、前記凹部が前記回転軸外周面の下半部に対面する前記軸受内周面に設けられている、請求項1からのいずれか1つに記載のジャーナル軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャーナル軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のジャーナルパッド軸受装置は、軸受台座の内周面に配置され、かつ内周面に接する背面が円筒面もしくは球面からなる分割された複数のパッドにおいて、パッドの背面曲率を軸受台座の内周面曲率の0.85倍から0.9倍の曲率にすることが記載されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2に記載のティルティングパッド型ジャーナル軸受は、軸受ハウジング内に配設された複数個のティルティングパッドで回転軸を支承するジャーナル軸受において、ティルティングパッドの背面の曲率半径を軸受ハウジングの内面の曲率半径よりも小さく形成すると共に、ティルティングパッドの内面の曲率半径を回転軸の曲率半径よりも大きく形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−60723号公報
【特許文献2】実開平3−69713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ジャーナル軸受は、軸受内周面と回転軸外周面との間の潤滑油の油膜により回転軸を支持するため、軸受内周面と回転軸外周面との間の軸受隙間と、軸受内周面半径との比(軸受隙間比=軸受隙間/軸受内周面半径)に関係して、ジャーナル軸受が回転軸を支持する剛性である軸受剛性(K)と潤滑油に基づき回転軸の挙動を減衰させる軸受減衰(Cω)との関係Cω/Kが変化する。具体的には、軸受隙間比が小さくなると軸受減衰(Cω)および軸受剛性(K)が大きくなり、軸受隙間比が大きくなると軸受減衰(Cω)および軸受剛性(K)が小さくなる。軸受減衰(Cω)と軸受剛性(K)の効き具合によってCω/Kの大小関係は変化し、Cω/Kが大きくなると回転軸を支持する軸受安定性が高くなって回転軸の振動を抑制する効果が高い傾向となり、Cω/Kが小さくなると軸受安定性が低くなって回転軸の振動を抑制する効果が低い傾向となる。
【0006】
そして、試験により回転軸が軸受内周面に近づいて軸受隙間が小さくなるほど、軸受回転軸の振動が増加する事象がある。この事象は、軸受隙間が小さくなるほど潤滑油の油膜の硬さが高くなり軸受に掛かる荷重が大きくなって軸受剛性(K)が過大となり、Cω/Kが小さくなって軸受安定性が低くなっているものと考えられる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、軸受隙間が小さくなっても軸受安定性の低下を抑制することのできるジャーナル軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係るジャーナル軸受は、回転軸外周面に対面する軸受内周面の一部に凹部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係るジャーナル軸受では、前記軸受内周面が周方向の曲率を一定に形成され、かつ前記凹部の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、前記凹部の内面の曲率と前記軸受内周面の曲率とが異なることが好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様に係るジャーナル軸受では、前記回転軸外周面の周方向の曲率xaと、前記凹部の周方向の曲率xbと、前記軸受内周面の周方向の曲率xcとが、xc<xa、xc<xbの関係を満たすことが好ましい。
【0011】
また、本発明の一態様に係るジャーナル軸受では、前記凹部の内面の最大深さeと前記回転軸の直径rとが、0.003≦e/r≦0.007の関係を満たすことが好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様に係るジャーナル軸受では、周方向に分割された複数のパッドからなり、1つのパッドにおける前記軸受内周面の周方向長さθwと、1つのパッドにおける前記凹部の周方向長さβとが0.5≦β/θw≦0.8の関係を満たすことが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様に係るジャーナル軸受では、周方向に分割された複数のパッドからなり、1つのパッドにおける前記軸受内周面が周方向の曲率を一定に形成され、かつ前記凹部の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、前記凹部の内面の弧長の中心線が前記軸受内周面の弧長の中心線に一致することが好ましい。
【0014】
また、本発明の一態様に係るジャーナル軸受では、周方向に分割された複数のパッドからなり、1つのパッドにおける前記軸受内周面が周方向の曲率を一定に形成され、かつ前記凹部の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、前記凹部の内面の弧長の中心線が前記軸受内周面の弧長の中心線と位置が異なり、前記凹部の内面の弧長の中心線が前記軸受内周面の弧長の中心線に対して前記回転軸の回転方向の前方にずれて配置されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の一態様に係るジャーナル軸受では、前記凹部が前記軸受内周面の縁に掛からず設けられていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の一態様に係るジャーナル軸受では、前記凹部が周方向の下半部に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軸受隙間が小さくなっても軸受安定性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係るジャーナル軸受の概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るジャーナル軸受の詳細構成図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るジャーナル軸受の他の例の詳細構成図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るジャーナル軸受の他の例の詳細構成図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るジャーナル軸受の他の例の詳細構成図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るジャーナル軸受の他の例の詳細構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
図1は、本実施形態に係るジャーナル軸受の概略構成図である。図2は、本発明の実施形態に係るジャーナル軸受の詳細構成図であり、図2(a)は側面図、図2(b)は平面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のジャーナル軸受1は、回転軸3を回転可能に支持するため、軸受内周面1aを回転軸における回転軸外周面3aに対面させ、その間の軸受隙間Bに潤滑油の油膜をなすものである。このため、ジャーナル軸受1は、軸受外周面1bが、内輪5の内周面5aに対して固定されている。また、本実施形態のジャーナル軸受1は、回転軸3の回転方向である周方向で複数(本実施形態では4つ)に分割されたパッドからなる。
【0022】
本実施形態のジャーナル軸受1は、図2に示すように、軸受内周面1aの一部に凹部7を有している。凹部7は、軸受内周面1aから径方向外側(軸受外周面1b側)に凹んだ部分であって軸受外周面1b側に貫通しない。
【0023】
凹部7を有さないジャーナル軸受では、回転軸3がジャーナル軸受に近づいた場合、回転軸外周面3aと軸受内周面との間の軸受隙間が小さくなり、潤滑油の油膜の硬さが高くジャーナル軸受に掛かる荷重が大きくなって、ジャーナル軸受が回転軸3を支持する剛性である軸受剛性(K)が過大となり、潤滑油に基づき回転軸3の挙動を減衰させる軸受減衰(Cω)との関係であるCω/Kが小さくなって軸受安定性が低くなる。
【0024】
これに対して、凹部7を有する本実施形態のジャーナル軸受1によれば、凹部7を有することでジャーナル軸受1の負荷能力が低下することで軸受内周面1a側への回転軸3の沈み込み効果が生じるため、凹部7を有さないジャーナル軸受と同等の荷重状態であっても軸受内周面1aにおける軸受隙間比がより小さくなる。そして、凹部7の部分では、潤滑油が回転軸外周面3aによって押し出されるのに抵抗する圧力が生じるため(スクイズ効果という)、この発生圧力で軸受減衰(Cω)が大きくなる一方で、凹部7を有さないジャーナル軸受と同等の荷重状態であるため軸受剛性(K)の増加が小さい。すなわち、本実施形態のジャーナル軸受1は、凹部7を有さないジャーナル軸受と同等の運転条件であれば、Cω/Kが大きくなることから軸受安定性が高くなる。この結果、軸受隙間が小さくなっても軸受安定性の低下を抑制することができる。
【0025】
なお、凹部7は、回転軸3の回転方向である周方向の両側が、図2に示すように、傾斜により徐々に軸受内周面1aに近づいて繋がるように形成されていることがスクイズ効果を顕著に得るうえで好ましい。
【0026】
また、本実施形態のジャーナル軸受1では、図2に示すように、軸受内周面1aが中心Oaとして周方向の曲率を一定に形成され、かつ凹部7の内面が中心Obとして周方向の曲率を一定に形成されており、凹部7の内面の曲率と軸受内周面1aの曲率とが異なることが好ましい。
【0027】
このジャーナル軸受1によれば、軸受内周面1aの周方向の曲率を一定に形成し、かつ凹部7の内面の周方向の曲率を一定に形成することで、十分にスクイズ効果を得て軸受減衰(Cω)を大きくすることができるため、Cω/Kを大きくして軸受安定性を高くすることができる。
【0028】
また、本実施形態のジャーナル軸受1では、回転軸外周面3aの周方向の曲率xaと、凹部7の周方向の曲率xbと、軸受内周面1aの周方向の曲率xcとが、xc<xa、xc<xbの関係を満たすことが好ましい。
【0029】
このジャーナル軸受1によれば、xc<xa、xc<xbの曲率の関係を満たすことで、回転軸3の回転中に潤滑油が凹部7に入り込み易くなり、十分にスクイズ効果を得て軸受減衰(Cω)を大きくすることができるため、Cω/Kを大きくして軸受安定性を高くすることができる。
【0030】
また、本実施形態のジャーナル軸受1では、凹部7の内面の最大深さeと回転軸3の直径rとが、0.003≦e/r≦0.007の関係を満たすことが好ましい。回転軸3の直径rを300mmとした場合、凹部7の内面の最大深さeは1mm以上2mm以下程度となる。
【0031】
このジャーナル軸受1によれば、e/rを0.003以上とすることで、回転軸3の回転中に潤滑油が凹部7に入り込み易くなり、0.007以下とすることで十分にスクイズ効果を得ることができる。この結果、軸受減衰(Cω)を大きくすることができ、Cω/Kを大きくして軸受安定性を高くすることができる。
【0032】
また、本実施形態のジャーナル軸受1では、周方向に分割された複数のパッドからなり、図2に示すように、1つのパッドにおける軸受内周面1aの周方向長さ(弧長)θwと、1つのパッドにおける凹部7の周方向長さ(弧長)βとが0.5≦β/θw≦0.8の関係を満たすことが好ましい。
【0033】
このジャーナル軸受1によれば、凹部7の範囲と軸受内周面1aの範囲とを上記のごとく規定することで、軸受内周面1aによるジャーナル軸受1の通常の軸受機能と、凹部7による回転軸3が近づいて回転軸外周面3aと軸受内周面1aとの間の軸受隙間Bが小さくなった場合の軸受安定性の低下を抑える機能とを両立することができる。
【0034】
また、本実施形態のジャーナル軸受1では、図1に示すように、周方向に分割された複数のパッドからなり、1つのパッドにおける軸受内周面1aが周方向の曲率を一定に形成され、凹部7の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、図2に示すように、凹部7の内面の弧長の中心線CL2が軸受内周面1aの弧長の中心線CL1に一致することが好ましい。
【0035】
このジャーナル軸受1によれば、軸受内周面1aの弧長の中心線CL1と、凹部7の内面の弧長の中心線CL2とを一致させることで、1つのパッドにおいて中心線CL1,CL2を境として平均的に軸受内周面1aによるジャーナル軸受1の通常の軸受機能と、凹部7による回転軸3が近づいて回転軸外周面3aと軸受内周面1aとの間の軸受隙間Bが小さくなった場合の軸受安定性の低下を抑える機能とを両立することができる。
【0036】
図3および図4は、本実施形態に係るジャーナル軸受の他の例の詳細構成図である。
【0037】
本実施形態のジャーナル軸受1では、図1に示すように、周方向に分割された複数のパッドからなり、1つのパッドにおける軸受内周面1aが周方向の曲率を一定に形成され、かつ凹部7の内面が周方向の曲率を一定に形成されており、図3および図4に示すように、凹部7の内面の弧長の中心線CL2が軸受内周面1aの弧長の中心線CL1と位置が異なってもよい。この場合、図3に示すように、凹部7の内面の弧長の中心線CL2が軸受内周面1aの弧長の中心線CL1に対して回転軸3の回転方向Rの前方にずれて配置されていることが好ましい。
【0038】
このジャーナル軸受1によれば、回転軸3の回転において、軸受内周面1aにおける凹部7の後方(上流側)で潤滑油による油膜の圧が比較的高く、軸受内周面1aにおける凹部7の前方(下流側)で潤滑油による油膜の圧が比較的低い。従って、凹部7の内面の弧長の中心線CL2が軸受内周面1aの弧長の中心線CL1に対して回転軸3の回転方向Rの前方にずれて配置されていると、凹部7の後方(上流側)で潤滑油による油膜の圧が比較的高い軸受内周面1aの面積が広くなるため、軸受減衰(Cω)を大きくすることができ、Cω/Kを大きくして軸受安定性を高くすることができる。しかも、凹部7の後方(上流側)で潤滑油による油膜の圧が比較的高い軸受内周面1aの面積を広くすることで、剛性向上によりジャーナル軸受1の負荷能力を維持することができる。
【0039】
図5は、本実施形態に係るジャーナル軸受の他の例の詳細構成図であり、図5(a)は側面図、図5(b)は平面図、図5(c)は縦断面図である。
【0040】
本実施形態のジャーナル軸受1では、図5に示すように、凹部7が軸受内周面1aの縁1cに掛からず設けられていることが好ましい。縁1cは、軸受内周面1aにおける回転軸3が延在する軸方向(スラスト方向)の端である。すなわち、凹部7の全周囲に軸受内周面1aが存在することが好ましい。
【0041】
このジャーナル軸受1によれば、凹部7の全周囲に軸受内周面1aが存在することで、凹部7の全周囲でスクイズ効果を得て軸受減衰(Cω)を大きくすることができるため、Cω/Kを大きくして軸受安定性を高くすることができる。
【0042】
図6は、本実施形態に係るジャーナル軸受の他の例の詳細構成図であり、図6(a)は側面図、図6(b)は平面図である。
【0043】
図6に示すように、本実施形態のジャーナル軸受1では、凹部7の周方向長さ(弧長)βが軸受内周面1aの周方向長さ(弧長)θωの範囲に設けられていてもよい。この構成であっても、スクイズ効果を得て軸受減衰(Cω)を大きくすることができ、Cω/Kを大きくして軸受安定性を高くすることができる。
【0044】
また、本実施形態のジャーナル軸受1では、図1に示すように、凹部7が周方向の下半部(水平線Hの下側)に設けられていることが好ましい。
【0045】
このジャーナル軸受1によれば、回転軸3は重力によりジャーナル軸受1の下半部の軸受内周面1aに近づくため、この下半部に凹部7を設けることで、スクイズ効果を得て軸受減衰(Cω)を大きくすることができるため、Cω/Kを大きくして軸受安定性を高くすることができる。
【0046】
ところで、図には明示しないが、ジャーナル軸受1は、複数のパッドからなる構成に限らず、周方向に連続してリング状に形成されていてもよい。この場合、凹部7は、周方向に連続してリング状に形成されていても、周方向で部分的に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ジャーナル軸受
1a 軸受内周面
1b 軸受外周面
3 回転軸
3a 回転軸外周面
5 内輪
5a 内周面
7 凹部
B 軸受隙間
CL1,CL2 中心線
H 水平線
Oa,Ob 中心
R 回転方向
r 直径
xa,xb,xc 曲率
β,θω 周方向長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6