(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記経路決定部は、前記現在位置から前記目標位置に至り、前記指示された移動方向への迂回距離が異なる前記複数の迂回経路候補を決定する、請求項2記載のX線診断装置。
前記経路決定部は、前記方向指示器による前記移動方向の指示に関する操作量に応じて前記指示された移動方向への迂回距離を決定し、前記現在位置から前記目標位置に至り前記指示された移動方向に前記迂回距離だけ迂回した前記迂回経路を決定する、請求項1記載のX線診断装置。
前記制御部は、前記移動指示器により前記オートポジショニングモードの実行の停止が指示された場合、前記停止の指示から所定の期間内だけ前記オートポジショニングモードを維持し、前記所定の期間内において前記方向指示器により移動方向が指示された場合、前記保持器が現在位置から前記指示された移動方向に迂回して前記目標位置に至る迂回経路を決定する、請求項1記載のX線診断装置。
前記経路決定部は、同一検査中において再び前記方向指示器により移動方向が指示された場合、前記現在位置から前記指示された移動方向に迂回して前記目標位置に至り、且つ前記干渉領域を回避する迂回経路を決定する、請求項10記載のX線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線診断装置を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置の構成を示す図である。
図2は、本実施形態に係るX線診断装置の外観を示す図である。
【0010】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るX線診断装置は、X線管保持装置1、寝台装置3、高電圧発生器5及びコンソール7を有する。例えば、X線管保持装置1、寝台装置3及び高電圧発生器5は撮影室に設置され、コンソール7は撮影室に隣接する制御室に設置される。
【0011】
図1及び
図2に示すように、X線管保持装置1は、少なくともX線管11を保持する機械装置である。本実施形態に係るX線管保持装置1としては、天井吊りタイプと床置きタイプとの何れでも良い。なお、床置きタイプとしては、X線管11とX線検出器13とを装備するCアーム15を移動自在に保持する循環器撮影タイプや、X線管11を寝台31に対して移動自在且つ寝台を傾動可能に保持する消化管撮影タイプであっても良い。また、本実施形態に係るX線管保持装置1は、床置きタイプのX線管保持装置と天井吊りタイプのX線管保持装置との何れかを備えるシングルプレーン方式であっても良いし、床置きタイプのX線管保持装置と天井吊りタイプのX線管保持装置との両方を備えるバイプレーン方式の何れの方式でも可能である。以下、本実施形態に係るX線管保持装置は、例示としてシングルプレーン方式の天井吊りタイプであるとする。
【0012】
図1及び
図2に示すように、X線管保持装置1は、例えば、X線管11、X線検出器13、Cアーム15及びCアーム保持系17を有している。X線管11は、高圧ケーブルを介して高電圧発生器5に接続されている。高電圧発生器5は、コンソール7のX線制御回路71からの制御信号に応じて、X線に印加する高電圧を発生する。X線管11は、高電圧発生器5からの高電圧の印加を受けてX線を発生する。X線検出器13は、X線管11から発生されたX線を検出する。具体的には、X線検出器13は、2次元平面状に配列された複数の検出器画素と読出回路とA/D変換回路とを有するFPD(flat panel detector)であるとする。各検出器画素は、X線管11から発生されたX線を検出し、検出されたX線の強度に応じた電気信号(検出信号)を生成する。読出回路は、複数の検出器画素から所定のタイミングで検出信号をフレーム単位で読み出す。A/D変換回路は、複数の検出器画素から読み出された検出信号をA/D変換し、被検体に関するX線画像データをフレーム単位で生成する。生成されたX線画像データは、コンソール7の画像データ記憶回路75に伝送される。
【0013】
図1及び
図2に示すように、X線管11とX線検出器13とはCアーム15に取り付けられている。Cアーム15は、X線管11とX線検出器13とを装備する支持構造体である。具体的には、Cアーム15の一端にX線管11が取り付けられ、X線管11に対向するCアーム15の他端にX線検出器13が取り付けられている。Cアーム15は、Cアーム保持系17に移動自在に保持されている。
【0014】
Cアーム保持系17は、Cアーム15を3次元的に移動自在に保持する。Cアーム保持系17は、Cアーム15の可動の自由度に応じて設計され、互いに係り合う複数の構造体(以下、保持構造体と呼ぶ)から構成される。
【0015】
図2に示すように、Cアーム保持系17は、例えば、ガイドレール171、第1スライダ172、第2スライダ173、支柱支持器174、支柱175及びCアーム支持器176等の保持構造体を有する。ガイドレール171は、天井に取り付けられた一対のレールである。ガイドレール171は、第1スライダ172を当該ガイドレール171の走行方向D1に関してスライド可能に支持する。第1スライダ172は、ガイドレール171をD1方向に関してスライドする構造体である。また、第1スライダ172は、D1方向に水平に直交するD2方向に沿って取り付けられた一対のガイドレール(図示せず)を装備している。第1スライダ172は、当該ガイドレールの走行方向であるD2方向に関して第2スライダ173をスライド可能に支持する。第2スライダ173は、第1スライダ172に設けられたガイドレールをD2方向に関してスライドする構造体である。第2スライダ173には支柱支持器174が取り付けられている。支柱支持器174は、支柱175を、鉛直に配置された旋回軸A1周りに旋回可能に支持する構造体である。支柱175は円弧形状を有する構造体である。支柱175の一端は支柱支持器174駆動制御回路に鉛直軸A1周りに旋回可能に支持され、他端にはCアーム支持器176が取り付けられている。Cアーム支持器176は、D1方向に平行する回転軸A2周りにCアーム15を回転可能に支持する構造体である。また、Cアーム支持器176は、アイソセンタICにおいて回転軸A2と撮影軸A3とに直交するスライド回転軸A4周りにCアーム15をスライド可能に支持している。なお、撮影軸A3はX線管11の焦点とX線検出器13の検出面中心とを結ぶ軸に規定される。
【0016】
ここで、D1方向に平行する軸をZ軸、Z軸に水平に直交する軸をX軸、Z軸及びX軸に鉛直に直交する軸をY軸に規定する。XYZ座標系は直交座標系をなす。
【0017】
図1に示すように、X線管保持装置1は、X線管保持装置1を駆動するための動力を発生するCアーム駆動系19を有している。典型的には、Cアーム駆動系19は、Cアーム保持系17に搭載されている。例えば、
図2に例示するCアーム保持系17に対応するCアーム駆動系19としては、第1スライダ172をD1方向にスライドするための駆動装置(以下、第1スライダ駆動装置と呼ぶ)、第2スライダ173をD2方向にスライドするための駆動装置(以下、第2スライダ駆動装置と呼ぶ)、支柱175を旋回軸A1周りに旋回するための駆動装置(以下、支柱旋回駆動装置と呼ぶ)、Cアーム15を回転軸A2周りに回転するための駆動装置(以下、アーム回転駆動装置と呼ぶ)、Cアーム15をスライド回転軸A4周りにCアーム15の形状に沿ってスライドするための駆動装置(以下、スライド回転駆動装置と呼ぶ)を有する。各駆動装置は、例えば、コンソール7の駆動制御回路73からの駆動信号を受けて駆動する。各駆動装置は、例えば、サーボモータ等の既存のモータが用いられる。各駆動装置には位置検出器21が設けられている。位置検出器21は、Cアーム駆動系19に含まれる駆動装置毎に設けられている。例えば、位置検出器21は、当該駆動装置のモータ回転軸が一定角度回転する毎にパルス信号(位置検出信号)を出力する。位置検出信号は、駆動制御回路73に伝送される。
【0018】
図1及び
図2に示すように、ガイドレール171の下方には寝台31が設けられている。寝台31は、天板311と基台313とを有している。天板311には被検体が載置される。基台313は、天板311を移動自在に支持している。基台313には寝台駆動系33が搭載されている。寝台駆動系33は、例えば、天板311をD1方向に平行する長軸方向にスライドするための駆動装置、天板311を鉛直方向に昇降するための駆動装置を有している。各駆動装置は、例えば、コンソール7の駆動制御回路73からの駆動信号を受けて駆動する。各駆動装置は、例えば、サーボモータ等の既存のモータが用いられる。各駆動装置には位置検出器35が設けられている。位置検出器35は、寝台駆動系33に含まれる駆動装置毎に設けられている。例えば、位置検出器35は、当該駆動装置のモータ回転軸が一定角度回転する毎にパルス信号(位置検出信号)を出力する。位置検出信号は、駆動制御回路73に伝送される。
【0019】
図2に示すように、基台313には、X線管保持装置1や寝台装置3の移動等を指示するための検査室入力機器315が取り付けられている。
図3は、検査室入力機器315の斜視図であり、
図4は、
図3の検査室入力機器315の側面図である。
図3に示すように、検査室入力機器315は、基台313に設けられた筐体317を有している。筐体317にはユーザが把持するための把手(ハンドル)319が、当該筐体317の外側に延出するように設けられている。
【0020】
筐体317の表面には通常モードボタンB1、オートモードボタンB2、制御対象選択ボタンB3、方向指示桿B4及びトリガースイッチB5が設けられている。通常モードボタンB1は、後述の通常モードを選択するためのボタンである。通常モードボタンB1が押下された場合、駆動制御回路73により動作モードが通常モードに切り替えられる。
【0021】
オートモードボタンB2は、後述のオートポジショニングモードモードを選択するためのボタンである。オートモードボタンB2が押下された場合、駆動制御回路73により動作モードがオートポジショニングモードに切り替えられる。
【0022】
制御対象選択ボタンB3は、通常モードにおける制御対象を選択するためのボタンである。制御対象としては、第1スライダ172のD1方向に関するスライドのための第1スライド駆動装置、第2スライダ173のD2方向に関するスライドのための第2スライド駆動装置、支柱支持器174による支柱175の旋回軸A1周りの旋回のための支柱旋回駆動装置、Cアーム支持器176によるCアーム15の回転軸A2周りの回転のためのアーム回転駆動装置、Cアーム支持器176によるCアーム15のスライド回転軸A4周りのスライドのためのスライド回転駆動装置が挙げられる。制御対象選択ボタンB3が押下された場合、駆動制御回路73により制御対象が切り替えられる。
【0023】
方向指示桿B4は、Cアーム15の移動方向を指示するための操作桿(ジョイスティック)である。方向指示桿B4は、全周方向に亘り傾動可能に筐体317により支持されている。典型的には、方向指示桿B4は、把手319を把持している手の親指により傾動される。
【0024】
トリガースイッチB5は、Cアーム駆動系19又は寝台駆動系33の駆動を指示するためのボタンである。トリガースイッチB5は、典型的には、把手319を把持している手の人差し指により押下される。トリガースイッチB5は、デッドマンスイッチである。例えば、オートポジショニングモードが選択されている場合、トリガースイッチB5が押下されている期間、駆動制御回路73によりCアーム駆動系19が駆動されCアーム15が移動される。通常モードにおいてトリガースイッチB5を押下しながら方向指示桿B4が傾動された場合、駆動制御回路73によりCアーム駆動系19が駆動され傾動方向にCアーム15が移動される。オートポジショニングモードにおいてトリガースイッチB5を押下しないで方向指示桿B4が傾動された場合、演算回路79により傾動方向に迂回する迂回経路が決定される。
【0025】
図1に示すように、コンソール7は、X線診断装置を統括するコンピュータ装置である。コンソール7は、システム制御回路87を中枢として、X線制御回路71、駆動制御回路73、画像データ記憶回路75、画像処理回路77、演算回路79、表示回路81、入力回路83及び主記憶回路85を有する。X線制御回路71、駆動制御回路73、画像データ記憶回路75、画像処理回路77、演算回路79、表示回路81、入力回路83、主記憶回路85及びシステム制御回路87は互いにバス(bus)を介して通信可能に接続されている。
【0026】
X線制御回路71は、予め設定されたX線条件に対応するX線曝射を行うように高電圧発生器5に制御信号を供給する。制御信号の供給を受けた高電圧発生器5は、当該制御信号に応じた高電圧をX線管11に印加し、高電圧の印加を受けてX線管11はX線を曝射する。
【0027】
駆動制御回路73は、X線管保持装置1と寝台装置3との位置決めのためにCアーム駆動系19と寝台駆動系33とを制御する。駆動制御回路73は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置(プロセッサ)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリ)とを有する。例えば、駆動制御回路73は、本実施形態に係る動作制御プログラムを実行し、当該動作制御プログラムに従いCアーム駆動系19を制御する。駆動制御回路73は、当該動作制御プログラムの実行により位置決定機能731、通常モード機能733、オートモード機能735及びモード切替機能737を実現する。なお、駆動制御回路73は、位置決定機能731、通常モード機能733、オートモード機能735及びモード切替機能737を実現するためのハードウェア構成として特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Logic Device:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)を有しても良い。
【0028】
位置決定機能731の実行により駆動制御回路73は、Cアーム駆動系19に取り付けられた位置検出器21からの位置検出信号に基づいてCアーム15の3次元的な位置を決定し、寝台駆動系33に取り付けられた位置検出器35からの位置検出信号に基づいて天板311の3次元的な位置を決定する。具体的には、駆動制御回路73は、Cアーム駆動系19を構成する各駆動装置からの位置検出信号に基づいて、各駆動装置の可動軸に関する保持構造体の座標を決定する。そして駆動制御回路73は、各保持構造体の座標と形態とに基づいて、XYZ座標系において各保持構造体が占める存在領域の座標を、Cアーム15の3次元的な位置として決定する。すなわち、本実施形態に係る位置は、X線管保持装置1に設定された任意の基準点の3次元座標ではなく、X線管保持装置1が占める空間領域を意味する。実際には、本実施形態に係る位置は、Cアーム保持系17を構成する、各駆動装置の可動軸に関する保持構造体の座標の組合せにより規定される。駆動制御回路73は、天板311の3次元的な位置も同様に、寝台駆動系33を構成する各駆動装置からの位置検出信号に基づいて決定する。
【0029】
通常モード機能733の実行により駆動制御回路73は、ユーザのマニュアル操作に従いCアーム15又は天板311を移動させるためにCアーム駆動系19又は寝台駆動系33を制御する。ユーザ指示は、ユーザによる検査室入力機器315の操作を介して入力される。このような、ユーザのマニュアル操作によりCアーム15や天板311を移動させる動作モードを、通常モードと呼ぶことにする。
【0030】
オートモード機能735の実行により駆動制御回路73は、予め設定された目標位置にX線管保持装置1を自動的に移動させるためにCアーム駆動系19を制御する。より詳細には、駆動制御回路73は、演算回路39によるシーケンス決定機能795により決定された動作シーケンスに従いCアーム駆動系19を同期的に制御する。当該動作シーケンスは、所定の経路をCアームが通るために、Cアーム駆動系19が有する各駆動装置の駆動の順番や駆動量を規定する情報である。このような、X線管保持装置1を自動的に移動させる動作モードを、オートポジショニングモードと呼ぶことにする。なお、本実施形態に係る目標位置は、位置決め後におけるX線管保持装置1の3次元的な位置を示す。
【0031】
モード切替機能737の実行により駆動制御回路73は、ユーザによる検査室入力機器315を介した指示に従い又は所定の条件に従い自動的に、通常モードとオートポジショニングモードとを切り替える。
【0032】
画像データ記憶回路75は、X線検出器13から伝送されたX線画像データを記憶するHDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。
【0033】
画像処理回路77は、ハードウェア資源として、CPU、GPU、MPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。画像処理回路77は、X線画像データに散乱線補正等の種々の画像処理を施す。なお画像処理回路77は、上記画像処理を実現するASICやFPGA、CPLD、SPLDにより実現されても良い。
【0034】
演算回路79は、ハードウェア資源として、CPU、GPU、MPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。演算回路79は、本実施形態に係る処理プログラムを実行し、当該処理プログラムに従い各種機能を実現する。具体的には、演算回路79は、当該処理プログラムの実行により経路決定機能791、干渉領域登録機能793及びシーケンス決定機能795を実現する。
【0035】
経路決定機能の実行により演算回路79は、オートポジショニングモードの実行時において方向指示桿B4により迂回方向が指示された場合、X線管保持装置1が現在位置から当該迂回方向に迂回して目標位置に至る迂回経路を決定する。現在位置は、方向指示桿B4により迂回方向が指示された時点におけるX線管保持装置1の3次元的な位置を指す。迂回経路は、XYZの直交三次元座標系により規定されるデータ空間において決定される。以下、迂回経路等の、オートポジショニングモードにおいて利用されるX線管保持装置1の移動経路を決定するためのデータ空間を単にデータ空間と呼ぶことにする。データ空間にはX線管保持装置1の現在位置や寝台装置3の現在位置が記録されている。演算回路79は、データ空間において迂回経路を決定する。データ空間のデータは、演算回路79のメモリ等に記憶されている。
【0036】
干渉領域登録機能793の実行により演算回路79は、干渉領域を上記のデータ空間に登録する。例えば、演算回路79は、方向指示桿B4により指示された移動方向と現在位置とに基づいて干渉領域を決定する。データ空間において干渉領域を登録することにより演算回路79は、当該干渉領域を回避する迂回経路を決定することができる。
【0037】
シーケンス決定機能795の実行により演算回路79は、迂回経路に対応する動作シーケンスを決定する。決定された動作シーケンスは、駆動制御回路73に供給される。駆動制御回路73は、供給された動作シーケンスに従いCアーム駆動系19を制御する。これにより駆動制御回路73は、X線管保持装置1を現在位置から迂回経路を通って目標位置に移動させることができる。
【0038】
表示回路81は、種々の情報を表示する。例えば、表示回路81は、X線検出器13から伝送されたX線画像データや画像処理回路77により画像処理が施されたX線画像データに対応するX線画像を表示する。また、表示回路81は、演算回路79により決定された迂回経路を表示する。具体的には、表示回路81は、表示インタフェース回路と表示機器とを有する。表示インタフェース回路は、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換する。表示信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表すビデオ信号を表示する。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ等の任意のディスプレイが適宜利用可能である。表示機器は、検査室に設けられても良いし、制御室に設けられても良いし、検査室と制御室との両方に設けられても良い。
【0039】
入力回路83は、具体的には、入力機器と入力インタフェース回路とを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。具体的には、入力機器は、検査室入力機器315を有する。検査室入力機器315は、上記の通り、寝台31に設けられており、例えば、通常モードボタンB1、オートモードボタンB2、制御対象選択ボタンB3、方向指示桿B4及びトリガースイッチB5を有する。なお、入力機器は、検査室入力機器315の他に、制御室に設けられた制御室入力機器を有していても良い。制御室入力機器は、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース回路は、入力機器からの出力信号をバスを介してシステム制御回路87に供給する。
【0040】
主記憶回路85は、種々の情報を記憶するHDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、主記憶回路85は、CD−ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、主記憶回路85は、X線診断装置の動作制御プログラムや処理プログラム等を記憶する。
【0041】
システム制御回路87は、X線診断装置の中枢として機能し、X線診断装置内の各部を制御する。システム制御回路87は、ハードウェア資源として、CPUあるいはMPUのプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。
【0042】
なお、上記の本実施形態に係るX線診断装置の構成は一例であり、これに限定されず、種々の変形が可能である。例えば、X線制御回路71、駆動制御回路73、画像データ記憶回路75、画像処理回路77、演算回路79、表示回路81、入力回路83、主記憶回路85及びシステム制御回路87の全てが単一のコンピュータ装置に搭載されている必要はなく、複数のコンピュータ装置に分けて搭載されても良い。
【0043】
次に、本実施形態に係るX線診断装置の動作の詳細について説明する。
【0044】
まずは、
図5及び
図6を参照しながら、本実施形態に係るX線診断装置の動作の概略について説明する。
図5は、本実施形態に係るX線診断装置を利用した手術が行われている検査室の様子を模式的に示す図である。
図6は、本実施形態に係るX線診断装置によるX線管保持装置1の動きを概略的に示す図である。
【0045】
図5に示すように、検査室にはX線管保持装置1が設置されており、患者が載置された寝台31の周囲には、医師や技師等の医療従事者や各種機器が位置する。各種機器としては、麻酔機器や心電計、人工呼吸器、表示機器、椅子等が挙げられる。これら機器は、X線診断装置との間で位置情報の通信がないため、X線診断装置が認識することが出来ない。以下、上記機器のような、X線診断装置との間で位置情報の通信がない機器を非通信機器と呼ぶことにする。オートポジショニングモードによりX線管保持装置1を移動させるときに非通信機器が移動経路に配置されていると、非通信機器はX線管保持装置1にとって障害物になり得る。X線管保持装置1と非通信機器とが干渉するとX線管保持装置1や当該非通信機器が破損する虞がある。
【0046】
従来、X線管保持装置と非通信機器との干渉を避けるため医療従事者等のユーザは、例えば、オートポジショニングモードを中断してマニュアルモードでX線管保持装置を移動させたり、移動経路に配置された非通信機器を人手により退避させたりしなければならない。これら対応により対処すると位置決めの動作時間が長くなり、位置決め効率が悪化してしまう。
【0047】
図6に示すように、本実施形態に係るX線診断装置は、オートポジショニングモードの移動経路に障害物(非通信機器)100が配置されている場合、オートポジショニングモード実行中においてユーザにより入力回路83を介して迂回方向の指示がされたことを契機として、当該迂回方向に迂回して目標位置に至る迂回経路を自動的に決定する。これにより、オートポジショニングモードを中断することなく、簡便な操作でX線管保持装置1を目標位置に移動させることができるので、X線管保持装置1の位置決め効率の悪化を抑制することができる。
【0048】
次に、本実施形態に係るシステム制御回路87の制御のもとに行われる迂回動作について説明する。
図7及び
図8は、本実施形態に係るシステム制御回路87の制御のもとに行われる迂回動作の典型的な流れを示す図である。
【0049】
図7に示すように、まず、ユーザにより入力回路83を介してオートポジショニングモードが選択される(ステップSA1)。具体的には、ユーザは、オートポジショニングモードの選択のため、寝台31に搭載された入力機器315のオートモードボタンB2が押下する。オートモードボタンB2が押下されるとシステム制御回路87は、駆動制御回路73にモード切替機能737を実行させる。モード切替機能737において駆動制御回路73は、動作モードをオートポジショニングモードに切り替える。
【0050】
ステップSA1が行われるとシステム制御回路87は、演算回路79に経路決定機能791を行わせる(ステップSA2)。ステップSA2において演算回路79は、目標位置及び初期の移動経路(以下、初期経路と呼ぶ)を設定する。目標位置及び初期経路は、データ空間において設定される。
【0051】
図9は、ステップSA2における、データ空間での目標位置の設定について説明するための図である。
図9は、天板311とCアーム15とが存在する検査室を真上から見下ろした図である。
図9に示すように、データ空間には、天板311に対応する領域(以下、天板領域と呼ぶ)311とCアーム15に対応する領域(以下、Cアーム領域と呼ぶ)R15とが記録されている。Cアーム領域R15に描画された点線の丸はX線管の位置を示している。なお、実際のデータ空間は、上記の通り、XYZ座標系により規定された3次元空間であるが、説明の簡単のため
図9等においては2次元的に示している。また、
図9等において天板に載置された被検体が図示されているが、データ空間には被検体に対応する領域が記録されていても良いし、記録されていなくても良い。
【0052】
現在位置PSは、位置検出器21からの位置検出信号に基づいて駆動制御回路73により決定される。ユーザは、検査室入力機器315を介して目標位置PEを指定する。例えば、表示回路81により目標位置の設定画面が表示され、当該設定画面を見ながら検査室入力機器315を操作して目標位置が指定されれば良い。演算回路79は、ユーザによる検査室入力機器315を介して指定された位置に目標位置PEを設定する。目標位置PEの指定方法は、既存の方法が用いられれば良い。
【0053】
図10は、ステップSA3における、データ空間での初期経路の設定について説明するための図である。
図10に示すように、目標位置PEが設定されると演算回路79は、現在位置から目標位置に至る経路を初期経路RO0として決定し、決定された初期経路RO0をデータ空間に設定する。例えば、
図10に示すように、現在位置PSが患者左手の脚部に対する横入れ状態であり、目標位置PEが患者左手の頭部に対する横入れ状態であるとする。この場合、初期経路RO0は、現在位置PSから目標位置PEを結ぶ直線的な経路に設定される。初期経路の決定方法は、既存の方法が用いられれば良い。
【0054】
ステップSA2が行われるとシステム制御回路87は、演算回路79にシーケンス決定機能795を行わせる(ステップSA3)。ステップSA3において演算回路79は、初期経路に対応する動作シーケンス(以下、初期動作シーケンスと呼ぶ)を決定する。初期動作シーケンスの決定方法は、既存の方法が用いられれば良い。
【0055】
ステップSA3が行われるとシステム制御回路87は、検査室入力機器315のトリガースイッチB5が押下されることを待機する(ステップSA4)。ユーザは、オートポジショングモードによるX線管保持装置1の移動の準備が整うとトリガースイッチB5を押下する。
【0056】
トリガースイッチB5が押下されると(ステップSA4:YES)、システム制御回路87は、駆動制御回路73にオートモード機能735を行わせる(ステップSA5)。ステップSA5において駆動制御回路73は、トリガースイッチB5が押下されている期間、初期動作シーケンスに従いCアーム駆動系19を制御してCアーム保持系17を作動させることにより、目標位置に向けて初期経路に沿ってCアーム15を移動させる。
【0057】
図8に示すように、システム制御回路87は、トリガースイッチB5が解放されることを待機する(ステップSB1)。ステップSB1においてユーザは、X線管保持装置1の移動先を確認しつつトリガースイッチB5を押下し、X線管保持装置1を目標位置まで移動させる。ここで、
図11に示すように、初期経路RO0に非通信機器100が配置されている場合がある。このままX線管保持装置1を初期経路RO0に沿って移動させた場合、X線管保持装置1が非通信機器100に干渉してしまう。この場合、ユーザは、X線管保持装置1の移動を一時停止するためトリガースイッチB5を解放する。
【0058】
トリガースイッチB5が解放されると(ステップSB1:YES)、システム制御回路87は、検査室入力機器315の方向指示桿B4が操作されることを繰り返し検知する(ステップSB2)。方向指示桿B4の操作が検知されない場合(ステップSB2:NO)、システム制御回路87は、トリガースイッチB5が解放された時点から所定時間が経過することを待機する(ステップSB3)。当該所定時間は、駆動制御回路73がオートポジショニングモードを維持する期間に対応する。すなわち、本実施形態においては、トリガースイッチB5が解放された時点においてオートポジショニングモードが中断されるのではなく、上記所定時間に限定して維持される。
【0059】
トリガースイッチB5が解放された時点から所定時間が経過していない場合(ステップSB3:NO)、システム制御回路87は、ステップSB2に係る方向指示桿B4の操作の検知を待機する。トリガースイッチB5が解放された時点から方向指示桿B4の操作がなく所定時間が経過された場合(ステップSB3:YES)、システム制御回路87は、駆動制御回路73にモード切替機能737を行わせる。この場合、駆動制御回路73は、オートポジショニングモードから通常モードに切り替える。これにより、本実施形態に係る迂回動作を終了する。
【0060】
一方、当該所定時間内においてユーザは、X線管保持装置1と非通信機器100との干渉を回避するため、X線管保持装置1の迂回方向を方向指示桿B4により指示することができる。例えば、
図11に示すように、初期経路RO0に非通信機器100が存在する場合、ユーザは、
図12に示すように、Cアーム15と非通信機器100との干渉を回避するため、方向指示桿B4を患者左手方向、すなわち、天板311から離れる方向に傾ける。方向指示桿B4により指示された方向に関する情報は迂回方向として演算回路79等に供給される。通常モードの場合、ユーザはトリガースイッチB5を押下しながら方向指示桿B4を操作する必要があるので、トリガースイッチB5が押下されていない期間において方向指示桿B4が傾動された場合、システム制御回路87等は、当該傾動操作は迂回方向の指示のための操作であることを認識することができる。
【0061】
当該所定時間内に方向指示桿B4の操作がなされた場合(ステップSB2:YES)、システム制御回路87は、演算回路79に経路決定機能791を行わせる(ステップSB4)。ステップSB4において演算回路79は、現在位置から迂回方向(指示方向)に迂回して目標位置に至る複数の迂回経路の候補を決定する。迂回経路は、例えば、現在位置と目標位置とを結び、X線管保持装置1のX線管11、X線検出器13、Cアーム15及びCアーム保持系17が通過する一連の3次元座標点により形成されると良い。なお、トリガースイッチB5は解放されている状態であるがオートポジショニングモードは維持されているので、ステップSA2において設定された目標位置は、ステップSB4においても維持されている。
【0062】
図13は、
図12にように患者左手方向に迂回方向が指定された場合における、迂回経路の候補の決定処理について説明するための図である。
図13に示すように、演算回路79は、現在位置PSと迂回方向と目標位置PEとに基づいて迂回経路の候補を決定する。迂回経路の候補は、データ空間において決定される。具体的には、演算回路79は、現在位置PSと目標位置PEとを結び迂回方向に迂回する複数の迂回経路を決定する。オートポジショニングモードにおいては、典型的には、2以上の保持構造体を同時に動作させないので、当該制限のもとに迂回経路が決定されると良い。例えば、演算回路79は、現在位置PSからD2方向に関して迂回方向(患者左手方向)に任意の距離だけ移動し、D1方向に関して患者頭部側まで移動し、D2方向に関して目標位置PEまでスライドする迂回経路を決定する。この際、現在位置PSから迂回方向に移動する距離(以下、迂回距離と呼ぶ)は任意の距離に決定されると良い。迂回距離は、迂回方向の指定のみからでは厳密には確定することができない。演算回路79は、現在位置から予め設定された間隔毎に迂回距離を伸ばした複数の迂回経路の候補を決定する。例えば、
図13に示すように迂回方向が患者左手方向の場合、現在位置PSから左手方向に向かい迂回距離が短い方から順番に候補RO1、候補RO2及び候補RO3が決定されると良い。候補数は、3つに限定されず、2以上であれば幾つであっても良い。
【0063】
なお、迂回距離は、予め設定された間隔毎に決定されるのではなく、ユーザにより指定可能にしても良い。例えば、演算回路79は、方向指示桿B4の操作量、すなわち、傾き量に応じて迂回距離を決定しても良い。この場合、傾き量と迂回距離とを関連づけたLUT(look up table)が予め生成され、演算回路79等に記憶されている。ユーザにより方向指示桿B4が傾動された場合、入力回路83は、方向指示桿B4の傾き方向と傾き量とを検知し、検知された傾き方向と傾き量とを演算回路79に供給する。そして演算回路79は、検知された傾き量をキーワードとして上記LUTを検索し、傾き量に関連づけられた迂回距離を決定する。これにより、迂回距離をユーザが指定することができる。
【0064】
ステップSB4が行われるとシステム制御回路87は、表示回路81に表示処理を行わせる(ステップSB5)。ステップSB5において表示回路81は、ステップSB4において決定された複数の迂回経路の候補を表示する。
【0065】
図14は、表示回路81により表示される迂回経路の候補の表示画面I1の一例を示す図である。
図14に示すように表示回路81は、表示画面I1において、XYZ空間におけるCアーム15の現在位置と目標位置とを模式的に表現した模式画像を表示する。この模式画像上において表示回路81は、ステップSB4において決定された迂回経路の複数の候補RO1,RO2,RO3を表現する複数の図柄(
図14において、それぞれRO1、RO2、RO3で図示)を表示する。このように、XYZ空間におけるCアーム15の現在位置と目標位置とを模式的に表現した模式画像において複数の候補RO1,RO2,RO3を表現する複数の図柄を表示することにより、ユーザは、実空間における迂回経路を容易に想像することができる。表示回路81は、採用する迂回経路の選択を促すためのメッセージIM1を表示すると良い。メッセージIM1としては、例えば、
図14に示すように、「RO1,RO2,RO3の中から迂回経路を選択して下さい」等が挙げられる。
【0066】
ステップSB5が行われるとシステム制御回路87は、演算回路79に経路決定機能791を行わせる(ステップSB6)。ステップSB6において演算回路79は、検査室入力機器315を介したユーザ指示に従い、複数の候補の中から迂回経路を確定する。例えば、ユーザは、
図14に示す表示画面I1を見て検査室入力機器315等を操作して、複数の候補の中から、採用したい候補の図柄を選択する。図柄が選択された場合、演算回路79は、当該図柄に対応する経路を迂回経路に設定する。
【0067】
ステップSB6が行われるとシステム制御回路87は、演算回路79にシーケンス決定機能795を行わせる(ステップSB7)。ステップSB7において演算回路79は、ステップSB6において確定された迂回経路に対応する動作シーケンス(以下、修正動作シーケンスと呼ぶ)を決定する。例えば、
図14のRO2に迂回経路が設定された場合、例えば、演算回路79は、現在位置PSから第2スライダ173をD2方向に関して患者左手方向に、対応する迂回距離だけスライドし、第1スライダ172をD1方向に患者頭側までスライドし、第2スライダ173をD2方向に関して患者右手方向に目標位置PEまでスライドするための修正動作シーケンスを決定する。修正動作シーケンスに関する情報は、駆動制御回路73に供給される。
【0068】
ステップSB7が行われるとシステム制御回路87は、トリガースイッチB5が押下されることを待機する(ステップSB8)。例えば、ユーザは、再びX線管保持装置1を移動する準備が整うとトリガースイッチB5を押下することとなる。
【0069】
トリガースイッチB5が押下された場合(ステップSB8:YES)、システム制御回路87は、駆動制御回路73にオートモード機能735を実行させる(ステップSB9)。ステップSB9において駆動制御回路73は、修正動作シーケンスに従いCアーム駆動系19を制御し、迂回経路を通って目標位置に向かうようにX線管保持装置1を移動させる。X線管保持装置1に迂回経路を移動させることにより、初期経路上に存在していた非通信機器を避けて目標位置に移動させることができる。X線管保持装置1が目標位置に移動すると駆動制御回路73は、Cアーム駆動系19を制御し、X線管保持装置1を停止させる。
【0070】
以上により、本実施形態に係る迂回動作の説明を終了する。
【0071】
なお、ステップSB9が行われるとシステム制御回路87は、再びステップSB1に戻りトリガースイッチB5の解放を待機しても良い。ステップSB1に処理が戻ることにより、迂回経路に更に非通信機器が存在する場合においても上記と同様、トリガースイッチB5の解放操作と方向指示桿B4の傾動操作とにより、演算回路79は、更なる迂回経路を決定することができる。このように本実施形態によれば、トリガースイッチB5を解放してCアーム15を一旦停止させた後、方向指示桿B4により迂回方向を指示することにより、都度、任意の位置において何回でも迂回経路及び動作シーケンスをリアルタイムで変更することができる。
【0072】
上記実施形態において本実施形態に係る演算回路79は、迂回経路に基づいてX線管保持装置1との干渉の虞がある空間領域(以下、干渉領域と呼ぶ)を推定しても良い。例えば、演算回路79は、ステップSB6において迂回経路が確定されると干渉領域登録機能793を実行する。
【0073】
図15は、演算回路79による干渉領域の推定及び登録を説明するための図である。
図15に示すように、迂回経路RO2が確定された場合、演算回路79は、データ空間における現在位置PSと目標位置PEと迂回経路RO2とにより囲まれる空間領域を算出し、当該空間領域を干渉領域R200であると推定する。干渉領域R200の座標は、主記憶回路85により記憶される。この際、主記憶回路85は、干渉領域R200の座標を、実施している検査の検査番号に関連づけて記憶する。すなわち、主記憶回路85は、干渉領域R200の座標を検査番号単位で管理すると良い。検査が終了すると主記憶回路85は、当該終了した検査の検査番号に関連づけられた干渉領域R200を消去する。
【0074】
干渉領域R200を登録することにより、同一検査中において再度迂回経路を再定義する場合、演算回路79は、干渉領域R200を回避するように迂回経路を決定することができる。より詳細には、同一検査のステップSB2において方向指示桿B4により迂回方向が指示された場合、主記憶回路85から干渉領域R200の座標を読み出す。そして演算回路79は、現在位置から目標位置に至り当該迂回方向に迂回し、且つ読み出した干渉領域を通過しない迂回経路を決定する。このように、干渉領域R200を回避する迂回経路を決定することができるので、迂回経路の再定義の回数を減らすことができ、ひいては、Cアーム15の位置決めに関するユーザの手間を削減することができる。
【0075】
なお、同一検査内において非通信機器を移動させる場合もあるので、干渉領域R200は、入力回路83等を介して個別に消去可能である。
【0076】
また、上記の実施例は、一例であり種々の変更が可能である。例えば、ステップSB1においてトリガースイッチB5が解放されたことを契機として、ステップSB3においてオートポジショニングモードの保持期間である所定時間のカウントが開始するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、X線管保持装置1のX線管11やX線検出器13等の任意の部位に設けられた非接触検知器(例えば、タッチセンサ)により非通信機器が検知されたことを契機として、オートポジショニングモードの保持期間である所定時間のカウントが開始されても良い。
【0077】
また、干渉を回避しきれない場合、システム制御回路87は、警告を発しても良い。干渉を回避しきれない場合とは、例えば、構造的な制限により、ユーザが指示した迂回方向に移動できない場合が挙げられる。警告としてシステム制御回路87は、スピーカを介して警告音を発しても良いし、表示回路81を介して警告を表示しても良い。警告表示として表示回路81は、干渉を回避しきれない旨のメッセージや移動経路、障害物を表示しても良い。また、迂回経路に意図しがたい逆転動作が含まれている場合にユーザが認識可能な警告を、表示回路81は表示しても良い。
【0078】
上記の実施形態において迂回方向等の方向指示のための入力機器として、全周方向に亘り傾動可能な方向指示桿B4が設けられるとした。しかしながら、方向指示のための入力機器は方向指示桿B4のみに限定されない。例えば、上ボタンや下ボタン、右ボタン、左ボタン等の各方向に対応するボタンが設けられても良い。
【0079】
上記の通り、本実施形態に係るX線診断装置は、X線管保持装置1、方向指示桿B4、トリガースイッチB5、駆動制御回路73、演算回路79及び表示回路81を有する。X線管11は、X線を発生するX線管11を保持する。方向指示桿B4は、X線管保持装置1の移動方向を指示する。トリガースイッチB5は、X線管保持装置1を予め決定された動作シーケンスに従い目標位置まで移動するためのオートポジショニングモードの実行を指示する。駆動制御回路73は、トリガースイッチB5を介した指示に従い、オートポジショニングモードでのX線管保持装置1の動作を制御する。演算回路79は、オートポジショニングモードの実行時において方向指示桿B4により迂回方向が指示された場合、X線管保持装置1が現在位置から当該指示された迂回方向に迂回して目標位置に至る迂回経路を決定する。表示回路81は、迂回経路を表示する。
【0080】
上記の構成により本実施形態に係るX線診断装置は、オートポジショニングモードの実行中、トリガースイッチB5を解放して方向指示桿B4により迂回方向が指示された場合、演算回路79は、現在位置から迂回方向に迂回して目標位置に至る新たな移動経路の候補をリアルタイムで再定義する。再定義された候補は表示回路81に表示され、ユーザが採用する経路を選択してトリガースイッチB5を再び押下することにより、迂回経路に対応する修正動作シーケンスに従いオートポジショニング動作を再開始することができる。これにより本実施形態によれば、オートポジショニングモードを維持しつつ、トリガースイッチB5の解放と方向指示桿B4の傾動との簡単な操作により、オートポジショニングモードに関する移動経路及び動作シーケンスをリアルタイムで変更することができる。すなわち、本実施形態によれば、従来のように移動経路上の非通信機器(障害物)を人手により移動させた後にオートポジショニングモードを実行してX線管保持装置1を移動させたり、あるいは、オートポジショニングを中断して通常モードを実行してマニュアル操作によりX線管保持装置1を移動させたりする必要をなくすことができる。
【0081】
かくして、本実施形態によれば、X線管保持装置1の位置決め効率を向上することが可能となる。
【0082】
(応用例)
例えば、
図16に示すように、現在位置PSが患者左手側の横入れ状態であり、目標位置PEが患者頭側左手パークであり、現在位置PSから目標位置PEへ初期経路RO0を通るオートポジショニング動作の実行中を考える。
図17に示すように、現在位置PSから患者左手側遠方に非通信機器(障害物)100がある場合、D2方向に関し患者左手から離れる方向にCアーム15が移動している間、トリガースイッチB5を解放してCアーム15を停止させた後、方向指示桿B4を、例えば、上方に傾動させる。この場合、演算回路79は、停止位置から患者左手方向には非通信機器100があると認識し、当該干渉領域を回避するように目標位置PEに向かう経路を、X線管保持装置1の3次元的な動きを加味して決定することができる。例えば、寝台31の天板311が干渉領域にある場合、D1方向に関する天井長手動、D2方向に関する天井横手動、旋回軸A1周りの支柱回転等の2次元的な動きだけでは干渉領域を回避できない場合がある。従って演算回路79は、D1方向に関する天井長手動、D2方向に関する天井横手動、旋回軸A1周りの支柱回転だけでなく、回転軸A2周りのCアーム主回転、スライド回転軸A4周りのスライドも考慮して迂回経路を決定する。
【0083】
また、迂回経路を決定する際、ユーザが優先的に動作させたい保持構造体(可動軸)がある場合が考えられる。応用例に係る演算回路79は、優先的に動作させたい保持構造体と迂回方向とが指示された場合、演算回路79は、現在位置PSから当該保持構造体を当該迂回方向に迂回させ目標位置PEに至る迂回経路を決定する。
【0084】
例えば、
図9、
図10及び
図11に示すように、Cアーム15を現在位置PSから目標位置PEまで直線的な移動経路RO0をオートポジショニングモードで移動する場合において、移動経路RO0に非通信機器100が存在するとき、Cアーム15の旋回軸A1周りの支柱回転により非通信機器100を回避することも考えられる。以下、この場合の迂回経路の決定処理について
図18を参照しながら説明する。
【0085】
この場合、
図18に示すように、ユーザは、ステップSB2において、まず優先的に動作させたい保持構造体として支柱支持器174を制御対象選択ボタンB3により選択する。次にユーザは、迂回方向として患者右手方向を方向指示桿B4により指示する。優先的に動作させたい保持構造体と迂回方向とが指示された場合、演算回路79は、現在位置PSから当該保持構造体を当該迂回方向に迂回させ目標位置PEに至る迂回経路を決定する。優先的に動作させたい保持構造体として支柱支持器174が選択され、迂回方向として患者右手方向が指示された場合、演算回路79は、現在位置PSから支柱支持器174を旋回軸A1周りに180度回転させ、第1スライダ172をD1方向に患者頭側までスライドし、支柱支持器174を旋回軸A1周りに180度回転させ目標位置PEに至る迂回経路を決定する。その後、演算回路79は、当該迂回経路に対応する修正動作シーケンスを決定し、駆動制御回路73は、決定された修正動作シーケンスに従いCアーム駆動系19を制御してCアーム15を迂回経路に沿って移動させる。
【0086】
このようにユーザが選択した保持構造体を優先的に動作させることにより演算回路79は、ユーザが意図する迂回経路を決定することができる。これにより迂回経路の決定の時間を短縮し、ひいてはCアーム15の位置決め効率を向上させることができる。
【0087】
かくして本実施形態によれば、X線管を保持器の位置決め効率を向上することが可能となる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。