特許第6786295号(P6786295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6786295錘保持構造又は部材を備えるスピニングリール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786295
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】錘保持構造又は部材を備えるスピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20201109BHJP
【FI】
   A01K89/01 Z
   A01K89/01 H
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-149604(P2016-149604)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-14954(P2018-14954A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年4月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509344157
【氏名又は名称】ピュア・フィッシング・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅敬
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04457095(US,A)
【文献】 特開昭61−187737(JP,A)
【文献】 特許第5180111(JP,B2)
【文献】 実公昭48−011833(JP,Y1)
【文献】 特開2009−082073(JP,A)
【文献】 特開2013−118869(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3197817(JP,U)
【文献】 特開昭63−254936(JP,A)
【文献】 実開平04−030862(JP,U)
【文献】 実開昭60−194972(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/169910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00−89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、脚部と、スプールと、ハンドルと、ロータとを備え、ハンドルの回転に連動して、該ロータが回転し、該スプールが前後動することで、該スプールの糸巻胴部に釣糸が巻かれるスピニングリールにおいて、
該糸巻胴部より後方に、錘付きの仕掛けを通過させ又は導入し、該釣り糸の張力によって該錘を直接保持することができる孔及び/又は切り込みを有
更に、該リール本体のハンドル設置側と反対側の側面に、該ハンドルを駆動軸に取り付けるための開口部を覆う着脱可能な蓋部を有し、該蓋部に該釣り糸の張力によって該錘を直接保持することができる部材(以下、錘保持部材という)が設けられている、スピニングリール。
【請求項2】
前記孔及び/又は切り込みを、前記脚部、前記スプールの後端鍔部、及び前記ロータの腕部の少なくとも1箇所に有する、請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記錘保持部材は、回転可能に設けられている、請求項1又は2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記錘保持部材は、仕掛けの糸を導入可能な大きさの開口部が回転軸の軸方向に開口している錘保持部を有する、請求項に記載のスピニングリール。
【請求項5】
記仕掛けを導入できるように開口し、且つ前記釣り糸の張力によって前記錘を直接保持できる切込みを有する、請求項1〜の何れかに記載のスピニングリール。
【請求項6】
更に、前記仕掛けの経路を決定するガイドを備え、前記仕掛けが前記ガイドを介して前記孔若しくは切り込み又は前記錘保持部材に至り、前記錘が前記孔又は切り込み又は前記錘保持部材で直接保持される、請求項1〜の何れかに記載のスピニングリール。
【請求項7】
前記孔又は切り込みの少なくとも1つは、前記仕掛けの経路を決定するガイドとして機能可能であり、前記ガイドとして機能する場合、前記孔又は切り込みには、前記錘は保持されず、他の前記孔若しくは切り込み又は前記錘保持部材に前記錘が保持される、請求項1〜の何れかに記載のスピニングリール。
【請求項8】
前記孔若しくは切り込み及び前記錘保持部材を、それぞれ、前記脚部と、前記リール本体のハンドル設置側と反対側の側面とに有し、前記脚部に有する前記孔若しくは切り込みは前記仕掛けの経路を決定するガイドとして機能可能であり、前記ガイドとして機能する場合、前記脚部に有する前記孔若しくは切り込みには前記錘は保持されず、前記リール本体のハンドル設置側と反対側の側面に有する前記錘保持部材に前記錘が保持される、請求項の何れかに記載のスピニングリール。
【請求項9】
更に、釣針を保持可能な構造又は部材を有する、請求項1〜の何れかに記載のスピニングリール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールに関し、より詳細には、仕掛けの錘が釣糸やリール又は釣竿に引っ掛かって仕掛けが絡まってしまうのを効果的に防止する構造又は部材を備えるスピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
リールを使用する釣りでは、ベールを開放して釣糸を放出し、リールを巻き取りモードにして釣糸を巻き取る操作が行なわれるが、釣糸を巻き取った際、竿の先端から延出する釣糸の部分は、ぶらぶらした状態でその動きは制限されない。釣糸の端部には仕掛けが取り付けられるが、通常、仕掛けは釣針や錘を含み、これらが、釣糸やリール又は釣竿の突出部分等に引っ掛かって仕掛けの糸が絡んでしまうことがある。
【0003】
このようなトラブルを防ぐには、釣糸や仕掛けを固定することが効果的である。
このため、釣人が釣針を釣竿のガイド又はフックキーパーに係止して仕掛けを固定することがある。しかし、このような場合には、釣針によって釣竿やガイドが傷付き、これが釣糸の切断を引き起こすことがある。
【0004】
これに対して、釣糸を係止する部材をリール本体に設けることや(特許文献1及び2)、釣針を係止する部材を釣竿に設けることが提案されている(特許文献3)。
しかしながら、釣糸を係止する部材をリール本体に設けるリールでは、釣針や錘を有する仕掛け部分が遊んでしまい、これらが、釣糸やリール又は釣竿の突出部分などに引っ掛かり、仕掛けが絡まるのを防止できない。また、係止した釣り糸は、係止部材により釣り糸の表面が傷付くことが有り、糸切れを起こすこともある。
また、釣針を係止する部材を釣竿に設ける釣り具の構成では、竿を握る部分などのリールの糸巻胴部より後ろの部分には係止部材を設けないため、糸巻胴部の前に設けられている係止部材に糸巻胴部からコイル状に放出される糸が引っ掛かってしまうことがある。また、錘については、遊んでしまうことから、錘が、釣糸やリール又は釣竿の突出部分に引っ掛かって仕掛けが絡まってしまうことがある。
【0005】
これに対して、リール本体のハンドル設置側と反対側の側部において、ハンドル駆動軸上に釣針ホルダーを外方へ向けて突設すると共に、このホルダーの先端の側面に、釣針係止部を、ハンドルの操作で回転するロータの腕部の回転軌跡より外側に位置するように配置した魚釣用スピニングリールが提案されている(特許文献4)。このリールでは、釣針が、スプールの糸巻胴部の後方で釣針係止部に係止されるとともに、釣針係止部が、ハンドルの操作で回転するロータの腕部の回転軌跡より外側に配置されているため、糸巻胴部から釣竿の最初のガイドまでに存在する釣糸に釣針が引っ掛かって、仕掛けが絡まってしまうことを防止できる。
しかしながら、この文献で開示する構造では、錘の部分が遊んでしまい、これが、釣糸や釣り竿又はリールの突出部分に引っ掛かって、仕掛けが絡まってしまうことがある。また、この文献で開示する釣針ホルダーは、釣針係止部をロータの腕部の回転軌跡より外側に配置するために、大きな部材にしなければならず、リールが大きくなってしまう。また、その構造上、リール本体のハンドル設置側と反対側の側部以外の場所に設置することはできない。
また、この文献に記載するホルダーは、基本的に、リール本体に固定されるものと解され、ハンドルの設置位置に応じて、取り付け位置を変更して使用することは意図されていない。また、このホルダーの釣糸係止部は、ホルダーの先端の側壁に取り付けられ、当該側壁と共に回転するものであり、針を係止する際には、釣糸係止部を釣糸と対向する位置まで回転する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭56−131770号公報
【特許文献2】実開昭55−142973号公報
【特許文献3】特許第3053771号公報
【特許文献4】特許第5180111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑み、仕掛けの糸の損傷を生じることなく、仕掛けの錘が釣糸やリール又は釣竿の構成部材に引っ掛かって仕掛けと釣糸が絡まってしまうのを効果的に防止することができるスピニングリールを提供することを第一の目的とする。
本発明はまた、リールを大型化することなく、仕掛けの錘が釣糸やリール又は釣竿の構成部材に引っ掛かって仕掛けと釣糸が絡まってしまうのを効果的に防止することができるスピニングリールを提供することを第二の目的とする。
本発明はまた、第一又は第二の目的を達成しながらも、リールの種々の箇所に錘を保持可能なスピニングリールを提供することを第三の目的とする。
本発明はまた、第一、第二又は第三の目的を達成しながらも、ハンドルの設置位置に応じて錘保持構造又は部材の設置位置を変更可能な釣用リールを提供することを第四の目的とする。
本発明はまた、第一、第二、第三又は第四の目的の目的を達成しながらも、全方位で錘を有する仕掛けと係合可能で簡単に錘を保持可能な錘保持構造又は部材を備えるスピニングリールを提供することを第五の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような課題を解決するために、以下のスピニングリール、部材及び方法を提供する。
[1]リール本体と、脚部と、スプールと、ハンドルと、ロータとを備え、ハンドルの回転に連動して、ロータが回転し、スプールが前後動することで、該スプールの糸巻胴部に釣糸が巻かれるスピニングリールにおいて、
該糸巻胴部より後方に、該釣糸に取り付けられる仕掛けの錘を保持可能な構造又は部材を有する、釣り用リール。
[2]前記錘を保持可能な構造又は部材を、前記脚部、前記スプールの後端鍔部、及び前記ロータの腕部の少なくとも1箇所に有する、[1]に記載のスピニングリール。
[3]前記錘を保持可能な構造又は部材を、前記リール本体のハンドル設置側と反対側の側面に有する、[1]又は[2]に記載のスピニングリール。
[4]前記ハンドル設置側と反対側の側面に、前記ハンドルを駆動軸に取り付けるための開口部を覆う着脱可能な蓋部を有し、該蓋部に前記錘を保持可能な構造又は部材が設けられている、[5]に記載のスピニングリール。
[5]前記錘を保持可能な構造又は部材は、回転可能に設けられている、[3]又は[4]に記載のスピニングリール。
[6]前記錘を保持可能な構造又は部材は、前記仕掛けの糸を導入可能な大きさの開口部が回転軸の軸方向に開口している錘保持部を有する、[5]に記載のスピニングリール。
[7]前記錘を保持可能な構造又は部材は、前記仕掛けを通過させ又は導入でき、且つ錘を保持可能な形状及び大きさの孔又は切り込みを有する、[1]〜[6]の何れかに記載のスピニングリール。
[8]前記錘を保持可能な構造又は部材は、前記仕掛けを導入できるように開口し、且つ錘を保持できる形状及び大きさの切込みを有する、[7]に記載のスピニングリール。
[9]更に、前記仕掛けの経路を決定するガイドを備える、[1]〜[8]の何れかに記載のスピニングリール。
[10]前記錘を保持可能な構造又は部材は、前記仕掛けの経路を決定するガイドとして機能可能である、[1]〜[9]の何れかに記載のスピニングリール。
[11]前記錘を保持可能な構造又は部材を、2以上有し、その内の少なくとも1つが、前記仕掛けの経路を決定するガイドとして機能可能である、[1]〜[10]の何れかに記載のスピニングリール。
[12]前記錘を保持可能な構造又は部材を、前記脚部と、前記リール本体のハンドル設置側と反対側の側面とに有し、前記脚部に有する前記錘を保持可能な構造又は部材は前記仕掛けの経路を決定するガイドとして機能可能である、[3]〜[11]の何れかに記載のスピニングリール。
[13]前記脚部が、その少なくとも一部がスプール軸方向に傾斜しており、前記仕掛けを該傾斜した部分を介して前記リール本体のハンドル設置側と反対側の側面に有する前記錘を保持可能な構造又は部材に導き、該構造又は部材に前記錘を保持可能となっている、[3]〜[12]の何れかに記載のスピニングリール。
[14]更に、釣針を保持可能な構造又は部材を有する、[1]〜[13]の何れかに記載のスピニングリール。
[15]スピニングリールのハンドルを駆動軸に取り付けるための開口部を覆う着脱可能な蓋であって、錘を保持可能な構造又は部材が設けられており、同構造又は部材における錘保持部は、回転可能であり、仕掛けの糸を導入可能な大きさの開口部が回転軸の軸方向に開口している、蓋。
[16][13]に記載のスピニングリールを用いて、仕掛けの錘を保持する方法。
【0009】
本発明の一の実施の形態では、リールの糸巻胴部より後ろに錘を保持可能な構造又は部材が設けられているため、糸巻胴部から釣竿のガイドを至る経路で存在する釣糸に、錘が引っ掛かることを効果的に防止することができる。また、錘自体が錘を保持可能な構造又は部材に保持されるために、仕掛けの糸が損傷することを効果的に防止することができる。
また、本発明の他の実施の形態では、錘を保持可能な構造又は部材を脚部等に設けているため、或いは仕掛けの経路を決定するガイドをリールに設けているので、ロータ腕部の回転軌跡より半径方向外方で錘を保持可能にするために保持部材を大きくする必要は無い。
本発明の更に他の実施の形態では、錘を保持可能な構造若しくは部材又はその錘保持部分は、単なる切込み及び/又は孔で形成されるため、動作を伴う部材に設けることが可能であり、しかも仕掛けの経路を決定するガイドとしても機能し得る。また、このような構造又は部材では、糸の張力(糸の伸び、又は竿の曲げ力から得られる)により錘が部材に押圧され、糸が張った状態になるため、仕掛けの糸と周囲の部材との接触が回避されて糸が損傷するのを効果的に防止できる。
更に他の実施の形態によれば、錘を保持可能な構造又は部材は、仕掛けの糸を導入するための開口部が、(好ましくはハンドル駆動軸と同心の)回転軸の軸方向に開口している錘保持部を有しており、これにより、錘保持部材は、全方位から仕掛けの糸と係合でき、簡単な操作で錘を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、釣竿にリールを取り付け、端部に仕掛けが取り付けてある釣糸をリールに巻き上げた状態を示す模式図である。
図2図2は、図1に示すリールとリールを取り付けた釣竿の部分の周辺を示す模式図である。
図3図3は、本発明の一の実施形態によるスピニングリールを、ハンドル設置側の反対側から見た模式図である。
図4図4は、図3のスピニングリールを、Y方向から見た模式図である。
図5図5(a)は、図3においてCで示す脚部をX方向から見た模式図であり、図5bは、図3においてCで示す脚部の断面図である。但し、図5(b)では、錘を含む仕掛けの一部が追記され、錘保持且つ仕掛け位置決めのための構造に仕掛けが係合している状態を示す。
図6図6は、図3においてAで示すロータ腕部の一部の断面図である。但し、図6では、錘を含む仕掛けの一部が付記され、錘保持且つ仕掛け位置決めのための構造に仕掛けが係合している状態を示す。
図7図7(a)、図7(b)、及び図7(c)は、それぞれ、脚部、ロータ腕部及びスプール後端鍔部に設けられた錘保持構造又は部材の変形例を示す模式図である。
図8図8(a)は、図3においてBで示す錘保持部材を拡大して示す模式図であり、図8(b)は、図4においてDで示す錘保持部材の断面図である。但し、図8(a)では、錘を含む仕掛けの一部が付記され、錘保持部材に錘が保持されている状態を示す。
図9図9(a)は、図3に示すスピニングリールにおいて、仕掛けの糸を、脚部の錘保持構造を介して、ハンドル設置側と反対側のリール本体側部に設けた錘保持部材に到らせて、当該錘保持部材で錘を保持した状態を示す模式図である。図9(b)は、脚部に孔及び切り込みの無いスピニングリールにおいて、仕掛けの糸を、脚部の傾斜部分を介して、ハンドル設置側と反対側のリール本体側部に設けた錘保持部材に到らせて、当該錘保持部材で錘を保持した状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0011】
1:スピニングリール
2:リール本体
2a、2b:リール本体側部(側面)
3:脚部
4:スプール
4a:糸巻胴部
4b:後端鍔部
5:ロータ
5a、5b:ロータ腕部
6:ベール
7:ハンドル
8:蓋部
9:錘を保持可能な構造又は部材(錘保持部材(ガイド))
10:錘を保持可能な構造又は部材(錘保持部材(ガイド))
11:錘を保持可能な構造又は部材(錘保持部材(ガイド))
12:錘を保持可能な構造又は部材(錘保持部材(ガイド))
13:錘を保持可能な構造又は部材(錘保持部材(ガイド))
14:錘を保持可能な構造又は部材(錘保持部材(ガイド))
15:錘を保持可能な構造又は部材(錘保持部材)
15a:保持部
20:仕掛け
21:錘
22:釣針
23:釣糸
30:釣竿
31:ガイド
32:先端
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。但し、本発明は、以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0013】
図1は、釣竿にリールを取り付け、端部に仕掛けが取り付けてある釣糸をリールで巻き上げた状態を模式的に示す。図2は、釣竿に取り付けたリール及びリールを取り付け釣竿の部分の周辺を模式的に示す。リール1は、脚部3を介して釣竿30に取り付けられる。釣糸23は、スプール4の糸巻胴部4aからロータ腕部5bを介して釣竿30に設けられたガイド31に導かれ、釣竿の先端32から錘21と釣針22を有する仕掛け20が垂れ下がっている。この状態では、仕掛け20は、ぶらぶらした状態であり、動きは制限されない。
図3及び図4は、本発明の一の実施形態によるスピニングリールを示す模式図である。図5(a)は、図3においてCで示す脚部をX方向から見た模式図であり、図5(b)は、図3においてCで示す脚部の断面図である。図6は、図3においてAで示すロータ腕部の一部断面図であり、図7(a)、図7(b)、図7(c)は、それぞれ、脚部、ロータ腕部及びスプール後端鍔部に設けられた錘保持構造又は部材の変形例を示す模式図であり、図8(a)は、図3においてBで示すリール本体のハンドル設置側と反対側の側面に設けた錘保持部材の拡大図であり、図8(b)は、図4においてDで示す当該錘保持部材の断面図であり、図9(a)及び図9(b)は、図3及び図4に示すリールを利用して錘を保持する例を示す。なお、これらの図面は、本発明の説明に必要のない構成は省略している。
【0014】
図3及び図4に示す通り、スピニングリール1は、主な構成部材として、リール本体2と、脚部3と、スプール4と、ハンドル7と、ロータ5とを備え、ハンドル7の回転に連動して、ロータ5が回転し、スプール4が前後動することで、釣糸(図示せず)がロータ腕部5bを介してスプール糸巻胴部4aに巻き取られる。釣糸を放出する場合には、ベール6を開放位置にして釣糸を釣竿のガイドを介して放出可能にする。図3及び図4では、左手で操作可能な位置にハンドル7が設置され、反対側のリール本体側部2bでは、ハンドル7を駆動軸(図示せず)に連結させるための開口部が蓋部8で覆われている。右手で操作可能にする場合には、ハンドル7を取り外し、蓋部8を取り外して、反対側2bの開口部から駆動軸にハンドル7を取り付け、ハンドル7を取り外した側2aの開口部に蓋8をすればよい。リール1は、脚部3によって釣竿に取り付けられ、脚部3は、リール本体2と一体的に形成されてもよく、別部材として形成されてもよい。脚部3の形状については、特に制限は無いが、少なくとも一部でスプール軸方向に対して傾斜した部分を有することが好ましい。
【0015】
図3及び図4に示す実施形態では、仕掛けの錘を保持可能な構造又は部材(以下、錘保持部材という)9、10、11、15は、スプール4の糸巻胴部4aより後方に設けられている。錘保持部材がこの位置で設けられることで、糸巻胴部4aから釣竿のガイドに至って存在する釣糸に、仕掛けの錘が引っ掛かることを効果的に防止することができる。従って、錘保持部材は、スプール4の糸巻胴部4aより後方に位置するリール1の種々の部位に設けることができる。後述する通り、本発明の錘保持部材は、好ましい実施形態において、単純な構造とすることができるため、図3及び図4に示す実施形態のように、錘保持部材10、11を、スプール4の後端鍔部4b、ロータの腕部5aといった回転動作や前後動などの動作を伴う部材に設けることができる。また、図3及び図4に示す実施形態のように、錘保持部材9を、脚部3に設けることも好ましい。脚部3に設けられた錘保持部材9では、仕掛けを錘保持部材9で固定した状態でロータ5を回転する場合でも、仕掛けの経路がロータ腕部5a、5bの回転軌道の外にあり、ロータ5の回転運動を妨げない。
【0016】
図3及び図4に示す実施形態のように、錘保持部材15は、リール本体2に設けることもできる。この場合、図3及び図4に示すように、リール本体2のハンドル設置側2aと反対側の側面2bに設けることが好ましい。この位置は、特に構成部材が設けられないことが多く、この領域を錘を保持するために活用でき、釣人にとっても、作業し易い領域である。
【0017】
錘保持部材の構造又は形状は、錘を保持できる構造又は形状であれば特に制限は無いが、好ましい実施形態として、図3図4図5(a)、図5(b)、及び図6に示すような貫通孔9、10、11や、図7(a)、図7(b)、及び図7(c)に示すような切り込み12、13、14といった簡単な形状又は構造を挙げることができる。例えば、図3図4図5(a)、図5(b)、及び図6に示すように、錘21が通過可能な大きさを有する部分9b、10b、11bと、仕掛け20の糸だけが通過可能な部分9a、10a、11aとで構成される貫通孔9、10、11で構成することができる。この錘保持部材9、10、11では、仕掛け20の錘21を9b、10b、11bの部分を通じて貫通孔9を通し、仕掛け20の糸を9a、10a、11a側に移動させた状態で引くと錘21が9a、10a、11aの開口部で保持される。従って、9a、10a、11aの開口部は、錘の形状に概略対応する窪みを設けて窪みに錘が嵌まり込むようにするとよい。
図7(a)、図7(b)、図7(c)に示すような切り込み12、13、14は、仕掛け20の糸が通過可能であるが錘21は通過できない幅で形成され、切り込み12、13、14を設けた部材の外縁に達して開口している。この錘保持部材12、13、14では、仕掛け20の糸を切り込みの開口部12a、13a、14aから切り込み内に導入し、仕掛け20の糸を引くと錘21が切り込みの端部で保持される。この錘保持部材12、13、14でも、錘21が保持される箇所に、錘21の形状に概略対応する窪みを形成しておき、窪みに錘21が嵌まり込むようにすることが好ましい。なお、切り込みの形状は様々な形状にすることができる。また、この錘保持部材では、糸の張力により錘が部材に押圧され、仕掛けの糸が周囲の部材と非接触の状態になるため、糸が損傷するのを効果的に防止できる。
【0018】
図3及び図4に示すように、リール本体2のハンドル設置側2aと反対側の側面2bには、ハンドル7の設置位置を変更可能とするために、ハンドル駆動軸へのハンドル7の取り付けを可能とする開口部が形成され、ハンドル7が取り付けられない場合には、この開口部を覆う蓋部8が設けられることが多い。従って、リール本体2のハンドル設置側2aと反対側の側面2bに錘保持部材を設ける場合には、この蓋部8を錘保持部材として構成することが好ましい。例えば、図4及び図8bに示すように、蓋部8を錘保持部15aが突設された錘保持部材15とすることができる。この実施形態において、錘保持部15aは回転可能に取り付けられ、錘保持部材15に保持される錘21の向きに応じて、適切に錘保持部15aを位置付けられるようになっている。具体的には、図8bに示す通り、リール本体2に形成された螺子15hに螺合するナット15iで、錘保持部15aが保持されるが、錘保持部15aはリール本体2から独立して構成され、回転可能になっている。また、錘保持部15aは、Oリング15j、ヘキサリング15kを介して取り付けられており、所望の位置まで回転させると、摩擦により錘保持部15aの向きがそのまま維持されるようになっている。
この錘保持部材15では、錘保持部15aが駆動軸と同心の回転軸を有しており、仕掛けの糸を導入可能な大きさの開口部15bが、回転軸Zの軸方向に開口している。このような開口部15bを有する錘保持部15aとすると、全方位で仕掛けの糸を錘保持部15aに導入可能になり、釣人は、簡単な操作で仕掛けの錘を保持することができる。具体的には、回転軸の軸方向に開口している開口部15bから、仕掛けの糸を錘保持部15aに導入し、その後糸を引っ張る事で錘を保持することができる。このため、この錘保持部材15でも、錘が保持される箇所は、略円形の貫通孔15cが形成され、この貫通孔15cの周りに、錘の形状に概略対応する窪み15dが形成されており、これにより、窪み15dに錘が嵌まり込むようになっている。
この実施形態では、錘保持部材15が蓋部8として機能するように構成されており、錘保持部材15は、着脱可能になっている。従って、ハンドル7を設ける位置に応じて本体側面の左右何れにも設置可能である。
【0019】
本発明においては、図9bに示すように錘保持部材15を1箇所だけに設けてよいが、図3及び図4に示すように、2箇所以上に設けてもよく、例えば、図3及び図4に示すように、脚部3、スプールの後端鍔部4b、ロータの腕部5b及びリール本体2(ハンドル設置側2aと反対側の側面2b)の1箇所又は2箇所以上に錘保持部材9、10、11、15を設けることができる。
【0020】
また、仕掛けの経路を決定するガイド(図示せず)をリールに設けて、ガイドを経由させて仕掛けの錘を錘保持部材に保持する構成にすることもできる。例えば、仕掛けの経路がロータなどの動作を伴う部材の動作範囲に入らないように、仕掛けを、例えば脚部などの所定の位置に設けられたガイドを経由させて、リール本体などの他の部位に設けた錘保持部材に導き、当該錘保持部材に錘を保持させる構成を一例として挙げることができる。
この際、前述した錘保持部材9、10、11、12、13、14を、ガイドとして利用することもできる。すなわち、前述した錘保持部材9、10、11、12、13、14、15を複数設け、1つの錘保持部材9、10、11、12、13、14を経由させて他の部位に設けた錘保持部材15に導き、当該錘保持部材15に錘21を保持させることもできる。
図9は、1つの錘保持部材をガイドとして機能させ、これを経由して他の部位に設けた錘保持部材に錘を保持させた好ましい実施形態を示す。
この実施形態では、脚部3に設けられた錘保持部材9をガイドとして機能させており、その形状又は構造は前述の通りである。仕掛け20が、脚部3に設けられた錘保持部材9を経由すると、仕掛け20の経路はロータ腕部5a、5bの軌道範囲の外になり、仕掛け20がロータ5の運動を妨げることがなくなる。仕掛け20は、脚部3に設けられた錘保持部材9を通過した後、リール本体2(この実施形態では、リール本体2のハンドル設置側2aと反対側の側面2b)に設けられた錘保持部材15に導かれ、保持部15aに錘が保持される。このような構成とすれば、保持部15aがロータの腕部5a、5bの回転軌道の外に位置させるように錘保持部材15を大きくする必要はない。なお、このような仕掛けの経路を制御する構成は、種々の位置に設けられた複数の錘保持部材(ガイド)の組み合わせで可能なことは言うまでもない。
また、図9bに示すように、脚部3を少なくとも一部がスプール軸に対して傾斜している形状とするなど、部材の一部をガイドとして機能し得る形状とし、当該部材を経由させて他の部位に設けた錘保持部材15に導き、当該錘保持部材15に錘21を保持させることもできる。
【0021】
本発明によるリールでは、更に、釣針を保持可能な構造又は部材を有してもよい。例えば、脚部に釣針を保持可能な構造又は部材を設け、リール本体のハンドル設置側と反対側の側面に設けた錘保持部材で、錘を保持させる構造を挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上の通り、本発明によれば、仕掛けの錘が釣糸やリール又は釣竿の構成部材に引っ掛かって仕掛けと釣糸が絡まってしまうのを効果的に防止することができる錘保持構造又は部材を備えるスピニングリールが提供される。
図1
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図9