(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、融点が300℃以下の低融点金属より成る拡散接合部材を接合部材と被接合部材の間に介在させ、レーザーで溶融して接合することで、スパッタを抑制し、耐久性に優れた接合を提供できる、という旨の記述がある。
【0008】
特許文献2には、接合部材と被接合部材の間にインサート材を挿入して、抵抗溶接し、低融点共晶を形成することで強固な接合を可能する、という旨の記述がある。
【0009】
ここで、特許文献1に記載の技術は、接合部材と被接合部材の間に低融点金属を介在させているので、溶融して混ざり合った異種金属界面で腐食が生じる可能性があり、耐久性に優れるとは限らない。特許文献2に記載の技術についても特許文献1に記載の技術と同様なことが言える。また、特許文献1〜4に記載の技術のように、インサート材を入れることで、接合部の電気的な抵抗値が上昇してしまうことも懸念される。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑み、長期に亘って大電流が流れても、腐食が生じ難く、低抵抗な接合状態を維持することができ、かつ外部からの振動に耐えることのできる接合強度も備えた金属接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、以下の手段により上記課題を解決できることを見出した。
[1]
金属層1、中間層1、及び金属層2をこの順に積層した金属接合体であって、
前記中間層1と前記金属層2とは界面接合しており、かつ
前記金属層2は、ニッケル、錫、金、酸化銅、又は酸化アルミニウムのいずれかを主成分とする複数の金属のうち、1つないし2つを分散して含有する、
前記金属接合体。
[2]
前記中間層1は、単一層である、[1]に記載の金属接合体。
[3]
前記金属層1と前記金属層2は、銅又はアルミニウムを主成分とする金属材料から構成される、[1]又は[2]に記載の金属接合体。
[4]
前記中間層1は、ニッケル、錫、金、酸化アルミニウム又は酸化銅のいずれか1つの金属を主成分とする層から成る、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の金属接合体。
[5]
ニッケル又は金が、前記金属層2中には分散して含有されているが、前記中間層1中には分散しないで含有されている、[1]に記載の金属接合体。
[6]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の金属接合体を少なくとも一部に有する金属複合体。
[7]
表面層1と金属層1との積層体1と、表面層2と金属層2との積層体2とを接合させる接合方法であって、
前記積層体1と前記積層体2を、前記表面層1と前記表面層2とが接するように重ね合わせて超音波振動を与える工程と、
前記超音波振動によって、前記表面層2を破壊して、拡散し、前記金属層2の内部に前記表面層2由来の金属を分散させる工程と、
前記金属層2と前記表面層1の界面接合状態を作る工程と、
を有することを特徴とする前記接合方法。
[8]
[1]〜[5]のいずれか1項に記載の金属接合体又は[6]に記載の金属複合体を有する蓄電モジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、金属接合体において、金属層1の表面に単一層が存在することで、接合界面の腐食を抑制した接合状態を提供することができる。また、金属層2の内部に分散して含有する金属によって、外部から加わった振動を軽減し、接合部分への応力を緩和することができる。さらに、金属を十分に分散させることで接合部分の電気的な抵抗値も低減可能である。すなわち、本発明は、耐腐食性及び耐振動性に優れ、かつ低抵抗な金属接合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0015】
[金属接合体]
本発明の実施形態に係る金属接合体は、金属層1、中間層1及び金属層2をこの順に積層した積層構造を含む。
本発明の実施形態に係る金属接合体を金属平面に対して垂直な方向に切断した時の断面図を
図1に示す。
図1で示される実施形態は、表面層1(2)と金属層1(1)との積層体の前記表面層1(2)上に金属層2(3)が界面接合している金属接合体(5)である。ここで言う界面接合とは、接合したい対象物を、溶融させることなく界面を形成した接合状態であり、その界面は、原子の拡散により粗さを持つことが特徴である。具体的には、表面層1と金属層2の界面の粗さRa12は、金属層1(1)と表面層1(2)の界面の粗さRa11に比べて大きくなっている。ここでいう界面の粗さRaは、算術平均粗さを示しており、Ra12、及びRa11はそれぞれ、1μm≦Ra12、及びRa11<1μmの範囲の数値となる。これは、超音波振動を与えることによって、表面層1と金属層2の界面の金属原子を拡散させ、原子配列の秩序が乱れた状態になるためである。この粗さが、本実施形態における接合強度の向上の一因である。
したがって、本明細書では、積層体1と積層体2を接合することにより得られた金属接合体において、金属層1と金属層2の間に存在する中間層1は、表面層1と対応するものとする。
【0016】
金属層2は内部に、ニッケル、錫、金、酸化銅、又は酸化アルミニウムのいずれかを主成分とする複数の金属のうち、1つないし2つを分散して含有することを特徴としている。ここで示した金属を使用すれば、金属腐食、又は高抵抗といった懸念を抑制し、さらには外部からの振動を軽減し、接合部に掛かる応力を緩和することができる。
【0017】
また、一般に、金属層2の材料が表面層1の材料よりも線膨張係数が高い場合において、線膨張係数の違いから、熱によるひずみ又はクラックが生じ易い状況にある。これに対して、本実施形態では、金属層2の内部に金属層2よりも線膨張係数が高い金属を分散して含有することで、金属層2の線膨張係数を低減させることができ、中間層1(表面層1)と金属層2の線膨張係数の差を縮めることが可能になるため、接合部分のひずみ又はクラックの抑制につながるという効果もある。例えば、金属層2が銅であって、中間層1(表面層1)がニッケルであるとき、線膨張係数が16.8の銅の中に、線膨張係数が銅よりも低いニッケル又は金を分散させることで、金属層2の線膨張係数を低減させることができ、接合界面でのひずみ又はクラックの低減が可能になるというメリットも存在する。
さらに、金属層2の線膨張係数を制御することにより接合界面を確保するという観点から、ニッケル又は金が、金属層2中には分散して含有されているが、中間層1(表面層1)中には分散しないで含有されていることが好ましい。
【0018】
[金属層1と金属層2]
金属層1と金属層2は、銅またはアルミニウムを主成分とする金属材料から構成される層である。銅またはアルミニウムであれば、電気的に低抵抗な接合を実現することができる。尚、本明細書では、金属の主成分とは、金属の90質量%以上を構成する成分をいう。
【0019】
[表面層]
表面層とは、金属層の表面に、ある一定の膜厚で形成された層のことを言う。金属層と表面層の界面は、表面層を構成する原子が秩序を保った状態で、金属層上に配列し、金属結合がなされている。ここで言う秩序とは、上記の界面接合で述べた秩序が乱れた状態と比較した上での言葉であり、相対的な表現である。
【0020】
本実施形態において、中間層1と対応する表面層1は、金属層1の表面に形成されており、かつ金属層1と金属層2の間に位置する。表面層1(中間層1)は、特定の主成分で構成されている単一層であることが好ましく、ニッケル、酸化アルミニウム、酸化銅、錫又は金を主成分とする金属のいずれか1つから構成されることがより好ましい。これらのいずれか1つを主成分とする金属であれば、腐食を抑制することができ、かつ強固な接合を実現することができる。
【0021】
さらに、表面層1の厚みは、好ましくは0.01μm以上、60μm以下であり、更に好ましくは0.1μm以上、30μm以下である。表面層1の厚みが0.01μm未満の場合、腐食を十分に抑制することができず、保護の役割を果たさない。また、表面層1の厚みが60μmよりも大きくなると、電気的な抵抗値が上昇してしまうため好適ではない。なお、複数の層から表面層1を形成するときには、各層の合計の厚みを表面層1の厚みとする。
【0022】
[金属層内部に特定の金属を分散して含有する状態]
本明細書では、金属層内部に特定の金属を分散して含有する状態とは、金属層内部にその金属が存在し、その金属の周囲を別の金属が取り囲んでいる状態を言う。内部に存在する金属の形状は、超音波による被膜の拡散又は破壊によって生じるため、粒子状又は棒状といった認識し易い形状ではなく、いびつな形状になることが多い。したがって、その形状は、超音波の伝わり方次第で変わるので、一定ではなくランダムである。ここで重要なのは、内部に金属が存在することであって、これが防波堤となり、接合部に加わる外部からの振動を軽減することができる。
【0023】
図1に、金属層2の内部に分散して含有する金属(4)の状態の1例を示す。分散している金属(4)は、ニッケル、錫、金、酸化銅、又は酸化アルミニウムのいずれかを主成分とする複数の金属のうち、1つないし2つの金属から構成される。
【0024】
金属層2内に分散している金属の濃度は、任意の接合部の断面において、好ましくは、0.1面積%以上10面積%以下である。更に好ましくは、0.2面積%以上5面積%以下である。面積濃度が0.1%以上であれば、接合部に加わる外部からの振動を軽減することができる。また、面積濃度が10%以下であれば、電気的に低抵抗な接合状態を実現可能である。
【0025】
[金属複合体]
本発明の実施形態に係る金属複合体とは、上記で説明された金属接合体を少なくとも一カ所含有することを特徴とした金属体のことをいう。
図2は、本実施形態に係る金属複合体(7)を金属平面に対して垂直な方向に切断した時の断面図である。
図2に示される金属複合体(7)の接合部分は、
図1に示される金属接合体(5)と対応する金属接合体(6)を少なくとも一部分に備える。
【0026】
[金属接合体の実現方法]
表面層1と金属層1との積層体1と、表面層2と金属層2との積層体2とを用いて、本発明の実施形態に係る金属接合体を実現する方法について、以下に詳細を説明する。
【0027】
接合状態を実現するためには、積層体1と積層体2を、表面層1と表面層2とが接するように重ね合わせて超音波振動を与えるのが好適である。表面層2を有する金属層2に、超音波振動を与えることによって、積層体1及び積層体2の融点まで温度が上昇することなく、表面層2を破壊し、拡散して、金属層2の内部に表面層2由来の金属を分散して含有させることができ、その際に、表面層1と金属層2が原子間距離まで接近することによって界面接合状態が形成される。したがって、以下の工程:
積層体1と積層体2を、表面層1と表面層2とが接するように重ね合わせて超音波振動を与える工程と、
超音波振動によって、表面層2を破壊して、拡散し、金属層2の内部に表面層2由来の金属を分散させる工程と、
金属層2と表面層1の界面接合状態を作る工程と、
を含む、積層体1と積層体2の接合方法も本発明の一態様である。
【0028】
ここで、接合前の表面層1は、ニッケル、錫、金、酸化アルミニウム又は酸化銅を主成分とする複数の金属の内、1つないし2つを含む層から構成される。一方、接合後の表面層1は、ニッケル、錫、金、酸化アルミニウム又は酸化銅を主成分とする金属の内、1つを含む層から構成される。すなわち、接合前の表面層1が2つの層から構成される場合は、接合時に表面層2のみならず、表面層1の最外層も破壊して拡散することが望ましい。これは、接合部分において、金属層1と金属層2の間に2層以上存在すると、電気的な抵抗値が上昇してしまうことを防止するためである。
【0029】
表面層2を構成する金属の主成分は、表面層1の主成分と同じであっても異なっていてもよいが、表面層2の主成分の線膨張係数は、金属層2の主成分の線膨張係数以下であることが好ましい。表面層2の厚みについては、好ましくは、接合前の厚み又は未接合部の厚みが0.01μm以上、15μm以下である。表面層2の厚みが0.01μm未満の場合、未接合部の腐食を十分に抑制することができず、保護の役割を果たさない。また、表面層2の厚みが15μmよりも大きくなると、表面層2を破壊して、拡散するためのエネルギーが大きくなり、表面層1まで破壊してしまい、保護の役割を消失させてしまうため好適ではない。
【0030】
超音波振動を発生させるためには、超音波溶接法を用いることが好適である。超音波溶接は
図4に示すように、アンビル(14)上に、被接合物である表面層1と金属層1との積層体1(15)と、表面層2と金属層2との積層体2(16)とを重ね、この上からホーン(13)を押し当て、加圧方向(17)に沿って加圧した状態で、超音波振動を発生させることによって実施する。すなわち、溶接時の圧力と超音波振動の振幅又は振動時間に依存するピークパワーとが、装置の主な制御パラメータとなる。また、ピークパワーの大小と溶接によって接合される接合面積は接合状態に大きく影響を与えるため、ピークパワーを接合面積で除した値であるピークパワー密度を下記の説明の中で使用する。
【0031】
本実施形態の金属接合状態を実現するためには、超音波溶接時にホーンが積層体1と積層体2を加圧する圧力が、好ましくは0.05MPa以上、0.20MPa以下、更に好ましくは0.08MPa以上、0.15MPa以下である。ホーンが金属層1と金属層2を加圧する圧力が0.05MPa未満の場合、金属層1と金属層2の間に隙間が生じ易くなり、接合に要するピークパワーが非常に大きくなる。これにより、金属層1と金属層2が変形又はひずみを伴った状態で接合するため、組立等の応用の際に悪影響が出る。また、ホーンが金属層1と金属層2を加圧する圧力が0.20MPaより大きい場合、超音波振動を伝えるためのホーンが必要以上に固定されてしまい、ホーンを振動させるためのピークパワーが大きくなる傾向にある。よって、上記と同じ悪影響が懸念される。
【0032】
また、本実施形態の金属接合状態を実現するためには、上記の好ましき圧力の範囲内において、超音波振動のピークパワー密度が、好ましくは250W/mm
2以上、450W/mm
2以下であり、更に好ましくは300W/mm
2以上、420W/mm
2以下である。ピークパワー密度が250W/mm
2未満の場合、積層体1と積層体2の接合が為され難い。接合したとしても、表面層2が十分に破壊又は拡散されないため接合強度は低く、さらには電気的に高抵抗な接合となってしまう。また、ピークパワー密度が450W/mm
2より大きくなる場合は、接合状態を作っても金属層1又は金属層2が変形又はひずみを伴い、その後の組立等の応用に支障をきたし、また、変形又はひずみが応用する上で問題にならないとしても、表面層1と表面層2がともに破壊されてしまうため、腐食を抑えるための保護機能を作ることができない。
【0033】
蓄電モジュールを構成するための接合部分に、本実施形態に係る金属接合体又は金属複合体を適用した場合についても以下に例示する。
【0034】
図3(a)及び(b)は、それぞれ、本実施形態に係る金属接合体を備えた、蓄電素子の負極リード部とバスバー(bus bar)の金属接合体の上面図及び側面図を示す。
図3(a)及び(b)に示す接合体(8)のように、蓄電素子(9)の負極リード(10)がバスバー(11)と接合されている。負極リード(10)とバスバー(11)はアルミニウムまたは銅を主成分とする金属から構成され、かつ表面層として、ニッケル、錫、金、酸化銅または酸化アルミニウムのいずれかを主成分とする金属の内、1つないし2つを含む層を備える。なお、接合体(8)の正極リード(12)は、正極に適合する既知のリード材料を含んでよく、かつ任意の構成要素(図示せず)、又はバスバー(11)とは異なるバスバー(図示せず)と接合されることができる。
【0035】
この蓄電素子(9)とバスバー(11)の接合体(8)を複数、直列または並列に組み合わせることで、蓄電モジュールを構成することが可能である。接合部分は蓄電モジュールの電流経路となる部分であり、長期使用時の腐食に対する耐久性が必要とされる。また、接合部分は振動による応力も掛かり易いため、ひずみ又はクラックに耐える強度も必要である。本実施形態に係る金属接合体及び金属複合体は、耐腐食性、及びひずみ又はクラックに耐える強度を蓄電モジュールに付与することができるため、蓄電モジュールの接合部分として好適である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
[金属接合体の作製]
本発明の実施形態は、発電要素に電気的に接続された正極リードおよび負極リードが金属ラミネート樹脂フィルム製の外装体に収容されて成る蓄電素子と、正極リード及び負極リードに接合するバスバーから成る。
【0038】
本実施例においては、負極リードとバスバーの接合についての詳細を報告する。
【0039】
蓄電素子の負極リードは、ベース金属には銅(金属層2)を、表面層にはニッケルめっき(表面層2)を使用している。ニッケルめっきの厚みは5μmである。
【0040】
バスバーは、銅を主成分とするベース金属(金属層1)に、ベース金属に近い方から順に、ニッケルめっき、及び金めっきが施されている(表面層1)。ニッケルめっき及び金めっきの厚みは、それぞれ15μm及び1μmである。
【0041】
接合には、超音波溶接装置(SONOPET ΣGM−1200)を用いた。使用したホーンは、先端の面積が2mm
2であった。ホーンとアンビルの間に、蓄電素子の負極リードとバスバーを固定し、負極リードがホーン側、バスバーがアンビル側に位置するようにした。
【0042】
ホーンが負極リードとバスバーを加圧する圧力を、0.1MPaに設定した。超音波振動の振幅と溶着時間を設定して、溶接を実施すると、接合状態を表すパラメータであるピークパワー値が得られ、そのピークパワー値を接合面積で除した値をピークパワー密度と規定したところ、420W/mm
2であった。
【0043】
[金属接合体の評価]
[接合状態の観察]
上記と同条件で作製し、複数得られた金属接合体の内の1つを用いて、断面を切り出し、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析(SEM/EDX)による画像をもとに解析を実施したところ、負極リードのベース金属(金属層2)とバスバーの表面層であるニッケル層(表面層1)の界面の算術平均粗さが2.7μmであり、界面接合していることを確認した。また、金属層2の内部にニッケルと金を分散し、含有していることも確認した。
ちなみに、バスバーの表面層1と金属層1の界面は、算術平均粗さが0.4μmであり、本発明で規定している界面接合とはなっていない。これは、下記実施例でも同様である。
【0044】
[金属接合体接合部分の抵抗測定]
四端子法にて接合部分の抵抗測定を実施した。得られた接合部の抵抗値は10μΩ未満であり、非常に低抵抗であった。尚、接合面積は6mm
2であった。
【0045】
[金属接合体接合部の耐振動性評価]
振動試験装置を用いて、耐振動性の評価を実施した。蓄電素子の負極リードとバスバーの接合体を治具に固定し、振動を与えた。振動パターンはリチウムイオンバッテリーの国際連合危険物輸送勧告(UN3480)に記載の内容を採用した。実施後、接合体を目視で観察したところ、溶接外れ、クラック等の無きことが確認され、耐振動性の有る接合状態であることが分かった。
【0046】
[金属接合体の耐腐食性評価]
蓄電素子の負極リードとバスバーの接合体を60℃、80%の高温多湿環境下に保存し、2ヶ月後の腐食状態を目視にて観察した。観察の結果、接合部分に腐食は見られなかった。
【0047】
[実施例2]
[金属接合体の作製]
実施例1と同様に、圧力を0.1MPaに設定して、振幅と溶着時間を変化させたところ、得られたピークパワー値は、380W/mm
2であった。
【0048】
[金属接合体の評価]
[接合状態の観察]
実施例1と同様に、金属接合体の断面を切り出し、SEM/EDXによる画像をもとに解析を実施したところ、負極リードのベース金属(金属層2)とバスバーの表面層であるニッケル層(表面層1)の界面の算術平均粗さが2.4μmであり、界面接合していることを確認した。また、金属層2の内部にニッケルと金を分散し、含有していることも確認した。
【0049】
[金属接合体接合部の抵抗測定]
実施例1と同様に、接合部分の抵抗測定を実施したところ、抵抗値は10μΩ未満であった。尚、接合面積は6mm
2であった。
【0050】
[金属接合体接合部の耐振動性評価]
実施例1と同様に、耐振動性を評価したところ、溶接外れ、クラック等の無きことが目視で確認され、耐振動性の有る接合状態であることが分かった。
【0051】
[金属接合体の耐腐食性評価]
実施例1と同様に、2ヶ月後の腐食状態を目視にて観察したところ、接合部分に腐食は見られなかった。
【0052】
[実施例3]
[金属接合体の作製]
実施例1と同様に、圧力を0.1MPaに設定して、振幅と溶着時間を変化させたところ、得られたピークパワー値は、320W/mm
2であった。
【0053】
[金属接合体の評価]
[接合状態の観察]
実施例1と同様に、金属接合体の断面を切り出し、SEM/EDXによる画像をもとに解析を実施したところ、負極リードのベース金属(金属層2)とバスバーの表面層であるニッケル層(表面層1)の界面の算術平均粗さが2.1μmであり、界面接合していることを確認した。また、金属層2の内部にニッケルを分散し、含有していることも確認した。
【0054】
[金属接合体接合部の抵抗測定]
実施例1と同様に、接合部分の抵抗測定を実施したところ、抵抗値は10μΩ未満であった。尚、接合面積は6mm
2であった。
【0055】
[金属接合体接合部の耐振動性評価]
実施例1と同様に、耐振動性を評価したところ、溶接外れ、クラック等の無きことが目視で確認され、耐振動性の有る接合状態であることが分かった。
【0056】
[金属接合体の耐腐食性評価]
実施例1と同様に、2か月後の腐食状態を目視にて観察したところ、接合部分に腐食は見られなかった。
【0057】
[実施例4]
[金属接合体の作製]
実施例1と同様に、圧力を0.1MPaに設定して、振幅と溶着時間を変化させたところ、得られたピークパワー値は、290W/mm
2であった。
【0058】
[金属接合体の評価]
[接合状態の観察]
実施例1と同様に、金属接合体の断面を切り出し、SEM/EDXによる画像をもとに解析を実施したところ、負極リードのベース金属(金属層2)とバスバーの表面層であるニッケル層(表面層1)の界面の算術平均粗さが1.9μmであり、界面接合していることを確認した。また、金属層2の内部にニッケルを分散し、含有していることも確認した。
【0059】
[金属接合体接合部の抵抗測定]
実施例1と同様に、接合部分の抵抗測定を実施したところ、抵抗値は15μΩ未満であった。尚、接合面積は6mm
2であった。
【0060】
[金属接合体接合部の耐振動性評価]
実施例1と同様に、耐振動性を評価したところ、溶接外れ、クラック等の無きことが目視で確認され、耐振動性のある接合状態であることが分かった。
【0061】
[金属接合体の耐腐食性評価]
実施例1と同様に、2ヶ月後の腐食状態を目視にて観察したところ、接合部分に腐食は見られなかった。
【0062】
[比較例1]
[金属接合体の作製]
実施例1と同様に、圧力を0.1MPaに設定して、振幅と溶着時間を変化させたところ、得られたピークパワー値は、170W/mm
2であった。
【0063】
[金属接合体の評価]
[接合状態の観察]
実施例1と同様に、金属接合体の断面を切り出し、SEM/EDXによる画像をもとに解析を実施したところ、負極リードの表面層であるニッケル層(表面層2)とバスバーの表面層であるニッケル層(表面層1)の界面の算術平均粗さが1.2μmであり、表面層同士が界面接合していることを確認したが、金属層2と表面層1の界面接合とはなっていなかった。また、金属層2の内部に分散し、含有している金属は観察できなかった。
【0064】
[金属接合体接合部の抵抗測定]
実施例1と同様に、接合部分の抵抗測定を実施したところ、抵抗値は約200μΩであった。尚、接合面積は6mm
2であった。
【0065】
[金属接合体接合部の耐振動性評価]
実施例1と同様に、耐振動性を目視で評価したところ、溶接外れが確認され、耐振動性の無い接合状態であることが分かった。
【0066】
[金属接合体の耐腐食性評価]
実施例1と同様に、2ヶ月後の腐食状態を目視にて観察したところ、接合部分に腐食は見られなかった。
【0067】
[比較例2]
[金属接合体の作製]
実施例1と同様に、圧力を0.1MPaに設定して、振幅と溶着時間を変化させたところ、得られたピークパワー値は、560W/mm
2であった。
【0068】
[金属接合体の評価]
[接合状態の観察]
実施例1と同様に、金属接合体の断面を切り出し、SEM/EDXによる画像をもとに解析を実施したところ、負極リードの表面層2とバスバーの表面層1がともに破壊されており、金属層2と表面層1の界面接合とはなっていなかった。また、金属層1と金属層2の両方の内部にニッケルと金を分散し、含有していることも確認した。
【0069】
[金属接合体接合部の抵抗測定]
実施例1と同様に、接合部分の抵抗測定を実施したところ、抵抗値は10μΩ未満であった。尚、接合面積は6mm
2であった。
【0070】
[金属接合体接合部の耐振動性評価]
実施例1と同様に、耐振動性を評価したところ、溶接外れ、クラック等の無きことが目視で確認され、耐振動性の有る接合状態であることが分かった。
【0071】
[金属接合体の耐腐食性評価]
実施例1と同様に、2ヶ月後の腐食状態を目視にて観察したところ、接合部分に腐食が見られた。
【0072】
実施例1〜4及び比較例1〜2について、金属接合体の作製、接合部の状態、及び接合特性を下記表1に示す。
【表1】
【0073】
<表1中の耐振動性の評価基準>
○(良好):溶接外れ、クラック等が確認されなかった。
×(不良):溶接外れ、クラック等が確認された。
【0074】
<表1中の耐腐食性の評価基準>
○(良好):腐食が見られなかった。
×(不良):腐食が見られた。
【0075】
なお、表1中の比較例2の接合部の状態及び特性から、中間層1と対応する表面層1、及び表面層2を共に破壊してしまうと、ベース金属と表面層の線膨張係数の違いから、接合部にクラックが生じ易くなり、腐食の原因となることが分かる。