(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、第1の実施形態に係る薬剤揮散具10は、内部が空洞の略球形の2つの容器2、4を環状のゴム紐6(紐状部材)でつないだ構造を有する。ゴム紐6は、必ずしも環状である必要はなく1本の紐状部材であってもよく、必ずしも伸縮可能な材料により形成しなくてもよい。
【0011】
図2に示すように、一方の容器2の中には、揮発性を有する薬剤(芳香剤や消臭剤など)を封入したマイクロカプセル(図示せず)を担持したマイクロカプセル担持体1、およびマイクロカプセル担持体1に接触する接触体3(以下、総称して内容物1、3とする場合もある)が収容されている。マイクロカプセル担持体1、および接触体3の個数は任意に設定可能であり、形状や大きさも任意に設定可能であり、容器2に振動を与えたときに容器2内で移動可能であればよい。
【0012】
もう一方の容器4(別の容器)は、容器2と同じように内容物1、3を収容してもよく、内容物1、3を収容しなくてもよい。2つの容器2、4の大きさや形状も同じである必要はない。容器4は、内部を空洞にする必要もない。しかし、本実施形態では、容器4を容器2と同じ構造に形成した。つまり、2つの容器2、4を同じ形状にし、容器4内にも内容物1、3を収容した。よって、以下の説明では、一方の容器2の構造について詳細に説明し、他方の容器4の構造については、容器2と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。なお、容器4は、内容物1、3を収容してもしなくても、容器2に衝突することで振動を与える衝突部材(振動付与手段)として機能する。
【0013】
上記の構造を有する薬剤揮散具10は、例えば、
図4に示すように、車のヘッドレスト12に結び付けたり、バックミラーに括り付けたり、エアコンの吹き出し口にあるルーバーに引っ掛けて取り付けたり、後部座席の上方にあるアシストグリップに結び付けたりして使用することができる。薬剤揮散具10を例えばヘッドレスト12に結び付ける場合、ゴム紐6をヘッドレスト12の一方の支柱12aに結び付ける。本実施形態の薬剤揮散具10は、容器2に振動を与えることで、マイクロカプセル担持体1のマイクロカプセルが破袋して薬剤が揮散するものであるため、車などの移動体に取り付けて使用するのに適している。
【0014】
以下、薬剤揮散具10の構造についてより詳細に説明する。
図2に示すように、容器2は、略半球状の2つの透明な樹脂ケース2a、2bの開口部を互いに嵌め合わせた構造を有する。一方の樹脂ケース2aには、複数個の円形の揮散孔2cが樹脂ケース2aを貫通して設けられている。これに対し、他方の樹脂ケース2bには、揮散孔2cが設けられていない。揮散孔2cの大きさは、内容物1、3が通過できない大きさに設計されている。揮散孔2cの個数や形状は任意に設定可能である。樹脂ケース2a、2は、透明である必要はなく例えば樹脂ケース2a、2bの表面に絵柄を描いてもよい。
【0015】
容器2内にマイクロカプセル担持体1、および接触体3を収容する場合、まず、揮散孔2cの無い樹脂ケース2b内に内容物1、3を収容し、樹脂ケース2bの開口部にシール部材(図示せず)を貼り付けて密閉する。樹脂ケース2bの開口部には、もう一方の樹脂ケース2aを嵌合する段部が設けられており、開口部の縁にシール部材が貼り付けられる。この状態で、樹脂ケース2bに振動が与えられてマイクロカプセル担持体1のマイクロカプセルが破袋しても、薬剤が外部に揮散することを防止できる。
【0016】
そして、開口部を密閉したシール部材を覆うようにもう一方の樹脂ケース2aを段部に嵌合する。このとき、樹脂ケース2a内には内容物1、3を収容しない。2つの樹脂ケース2a、2bを嵌合させる際には、一方の樹脂ケース2aの開口部の縁を他方の樹脂ケース2bの開口部の縁にある段部に重ねて圧入させてもよく、或いは段部にネジを設けて両者を螺合してもよい。
【0017】
シール部材は、薬剤揮散具10の使用時に取り除かれる。この場合、例えば、一方の樹脂ケース2a(2b)の開口部近くにシール部材を取り除くためのスリット(図示せず)を設けておき、このスリットを介してシール部材を引き抜くようにしてもよい。或いは、一旦、2つの樹脂ケース2a、2bを分離してシール部材を剥がしてから2つの樹脂ケース2a、2bを再び嵌合させるようにしてもよい。シール部材を取り除くと、容器2内で内容物1、3が移動自在となり、複数の揮散孔2cを介して薬剤の揮散が可能となる。
【0018】
或いは、2つの樹脂ケース2a、2bの間にシール部材を設ける代わりに、揮散孔2cを有する樹脂ケース2aの外表面を覆うシール部材(図示せず)を貼り付けてもよい。この場合、もう一方の樹脂ケース2bにも揮散孔2cを設けて容器2の外表面全体をシール部材で覆うようにしてもよい。いずれにしても、シール部材は、容器2の外表面から剥離可能であり、使用時に容器2から取り除かれる。また、或いは、シール部材を容器2の表面に貼り付けるのではなく、容器2全体を覆う外側ケース(図示せず)をさらに設けて容器2全体を密閉するようにしてもよい。
【0019】
容器2の内面、すなわち樹脂ケース2a、2bの内面には、凸凹を設けてもよい。この場合、2つの樹脂ケース2a、2bのうち少なくとも一方の内面に凸凹を設ければよい。凸凹の突出高さや大きさは任意に設定可能であり、凸凹の数も任意に設定可能であり、凸凹を設ける領域や面積も任意に設定可能である。容器内面の凸凹は、マイクロカプセル担持体1が容器内面にぶつかった際にマイクロカプセルの破袋を促進するよう機能するものであればよい。
【0020】
一方の樹脂ケース2aの開口部の縁には、ゴム紐6をつなげるための取付孔7aを有する突起7が設けられている。突起7は、容器2の外表面の任意の位置から突設すればよい。或いは、複数個の揮散孔2cを有する一方の樹脂ケース2aに孔を開けてゴム紐6を挿通してつなぐようにしてもよい。この場合、ゴム紐6を通す孔が揮散孔としても機能する。容器2の樹脂ケース2aに孔を開けてゴム紐6をつなげた一例を
図1に示す。
【0021】
容器2内に収容したマイクロカプセル担持体1は、例えば、薬剤を封入したマイクロカプセルを含むスラリーを香料含浸体に含浸させ、接触体3の間に収容配置されたものである。香料含浸体として、例えば、多孔性セルロース粒子であるビスコパール(商品名)、紙、多孔性ケイ酸カルシウム粒子であるフローライト、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)ビーズなどが用いられる。マイクロカプセルは、外部から圧力が加えられた際に破袋して内部に封入した薬剤を放出する。マイクロカプセルを含むスラリーは、香料含浸体に含浸され表面に塗布されているため、香料含浸体の外部から圧力が加わった際にマイクロカプセルが破袋するようになっている。この際、外部からの圧力は、摩擦などの接触による加圧を含む。
【0022】
接触体3は、マイクロカプセルを含浸しておらず、形状も球体に限らない。本実施形態では、接触体3を比較的凸凹の多い星型に形成した。接触体3は、走行中の車など外部の振動源からの振動によって容器2内で移動してマイクロカプセル担持体1にぶつかる(接触する)。これにより、マイクロカプセル担持体1のマイクロカプセルが破袋して薬剤が揮散される。
【0023】
以下、上述した第1の実施形態の薬剤揮散具10の作用について説明する。
薬剤揮散具10は、ゴム紐6を取付対象物に結び付けることで取り付けが可能であるため、従来、薬剤揮散具10の設置場所の確保が難しかった場所にも設置することができる。例えば、車のヘッドレスト12やバックミラーなど、車内の比較的高い位置に取り付けることもできる。薬剤揮散具10は、車、自転車、ベビーカーなどの移動体に取り付けるのに適しているが、取り付け場所は車などの移動体に限らず、人間や動物の身体に身に着けたり、マッサージチェアや掃除機、ドアノブなど振動を発生する振動源に直接取り付けることも有効である。この場合、取付対象物である振動源に結び付けるゴム紐6は、容器2(容器4)に振動を与える振動付与手段として機能する。なお、この場合、2つの容器2、4が互いに衝突する場合も考えられることから、容器2に対して容器4も振動付与手段として機能し、容器4に対して容器2も振動付与手段として機能する。
【0024】
薬剤揮散具10を車などの移動体に取り付けた場合、車の静止時にはマイクロカプセル担持体1に担持された薬剤は揮散しない。そして、車の走行時には、車体に発生する振動が薬剤揮散具10に伝えられ、容器2(容器4)内に収容したマイクロカプセル担持体1が接触体3と衝突して接触するとともに容器2の内面に衝突する。これにより、マイクロカプセル担持体1のマイクロカプセルが破袋し、中の薬剤が放出されて空気中に揮散する。つまり、本実施形態の薬剤揮散具10は、外部から振動が与えられてマイクロカプセル担持体1が他の部材に接触することで薬剤の揮散を開始するものであり、言い換えると外部からの振動が与えられない静止した状態では薬剤を揮散しない。このため、例えば薬剤揮散具10を車に取り付けた場合、走行時には薬剤を積極的に揮散する一方、駐車場に停めた後はしばらくしてマイクロカプセル担持体1からは薬剤の揮散をしなくなる。
【0025】
以上のように、第1の実施形態によると、薬剤の揮散が必要なときにより積極的に薬剤を揮散させることができ、薬剤の揮散が不必要であるときには自然に薬剤の揮散が止まる薬剤揮散具10を提供することができる。そのため、薬剤揮散具10の使用寿命を延長することができる。例えば、薬剤揮散具10を車に取り付けた場合、車の走行時に限らず、ドアを開け閉めする際の振動や窓から入る風によっても薬剤揮散具10が動いてマイクロカプセル担持体1からの薬剤の揮散が始まる。すると、薬剤揮散具10から揮散される薬剤の量が増加し、高い使用実感を得ることができる。一方、薬剤揮散具10を未使用の状態で保管して例えば数か月後に使用を開始した場合、保管時に薬剤が揮散することがないため、シール部材を剥がす前の保管期間が長くても、通常通りの使用寿命で使用できる。
【0026】
次に、第2の実施形態について説明する。
図3に示すように、第2の実施形態に係る薬剤揮散具10の一方の容器2の中には、揮発性を有する薬剤(芳香剤や消臭剤など)を封入したマイクロカプセル(図示せず)を担持したマイクロカプセル担持体1、マイクロカプセル担持体1に接触する接触体3、および薬剤担持体5(以下、総称して内容物1、3、5とする場合もある)が収容されている。マイクロカプセル担持体1、接触体3、および薬剤担持体5の個数は任意に設定可能であり、形状や大きさも任意に設定可能であり、容器2に振動を与えたときに容器2内で移動可能であればよい。
【0027】
もう一方の容器4(別の容器)は、容器2と同じように内容物1、3、5を収容してもよく、内容物1、3、5を収容しなくてもよい。2つの容器2、4の大きさや形状も同じである必要はない。容器4は、内部を空洞にする必要もない。しかし、本実施形態では、容器4を容器2と同じ構造に形成した。つまり、2つの容器2、4を同じ形状にし、容器4内にも内容物1、3、5を収容した。よって、以下の説明では、一方の容器2の構造について詳細に説明し、他方の容器4の構造については、容器2と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。なお、容器4は、内容物1、3、5を収容してもしなくても、容器2に衝突することで振動を与える衝突部材(振動付与手段)として機能する。
【0028】
上記の構造を有する薬剤揮散具10は、例えば、
図3に示すように、車のヘッドレスト12に結び付けたり、バックミラーに括り付けたり、エアコンの吹き出し口にあるルーバーに引っ掛けて取り付けたり、後部座席の上方にあるアシストグリップに結び付けたりして使用することができる。薬剤揮散具10を例えばヘッドレスト12に結び付ける場合、ゴム紐6をヘッドレスト12の一方の支柱12aに結び付ける。本実施形態の薬剤揮散具10は、容器2に振動を与えることで、マイクロカプセル担持体1のマイクロカプセルが破袋して薬剤が揮散するものであるため、車などの移動体に取り付けて使用するのに適している。
【0029】
以下、第2の実施形態の薬剤揮散具10の構造についてより詳細に説明する。
図3に示すように、容器2は、略半球状の2つの透明な樹脂ケース2a、2bの開口部を互いに嵌め合わせた構造を有する。一方の樹脂ケース2aには、複数個の円形の揮散孔2cが樹脂ケース2aを貫通して設けられている。これに対し、他方の樹脂ケース2bには、揮散孔2cが設けられていない。揮散孔2cの大きさは、内容物1、3、5が通過できない大きさに設計されている。揮散孔2cの個数や形状は任意に設定可能である。樹脂ケース2a、2は、透明である必要はなく例えば樹脂ケース2a、2bの表面に絵柄を描いてもよい。
【0030】
容器2内にマイクロカプセル担持体1、接触体3、および薬剤担持体5を収容する場合、まず、揮散孔2cの無い樹脂ケース2b内に内容物1、3、5を収容し、樹脂ケース2bの開口部にシール部材(図示せず)を貼り付けて密閉する。樹脂ケース2bの開口部には、もう一方の樹脂ケース2aを嵌合する段部が設けられており、開口部の縁にシール部材が貼り付けられる。この状態で、樹脂ケース2bに振動が与えられてマイクロカプセル担持体1のマイクロカプセルが破袋しても、薬剤が外部に揮散することを防止できる。
【0031】
そして、開口部を密閉したシール部材を覆うようにもう一方の樹脂ケース2aを段部に嵌合する。このとき、樹脂ケース2a内には内容物1、3、5を収容しない。2つの樹脂ケース2a、2bを嵌合させる際には、一方の樹脂ケース2aの開口部の縁を他方の樹脂ケース2bの開口部の縁にある段部に重ねて圧入させてもよく、或いは段部にネジを設けて両者を螺合してもよい。
【0032】
シール部材は、薬剤揮散具10の使用時に取り除かれる。この場合、例えば、一方の樹脂ケース2a(2b)の開口部近くにシール部材を取り除くためのスリット(図示せず)を設けておき、このスリットを介してシール部材を引き抜くようにしてもよい。或いは、一旦、2つの樹脂ケース2a、2bを分離してシール部材を剥がしてから2つの樹脂ケース2a、2bを再び嵌合させるようにしてもよい。シール部材を取り除くと、容器2内で内容物1、3、5が移動自在となり、複数の揮散孔2cを介して薬剤の揮散が可能となる。
【0033】
或いは、2つの樹脂ケース2a、2bの間にシール部材を設ける代わりに、揮散孔2cを有する樹脂ケース2aの外表面を覆うシール部材(図示せず)を貼り付けてもよい。この場合、もう一方の樹脂ケース2bにも揮散孔2cを設けて容器2の外表面全体をシール部材で覆うようにしてもよい。いずれにしても、シール部材は、容器2の外表面から剥離可能であり、使用時に容器2から取り除かれる。また、或いは、シール部材を容器2の表面に貼り付けるのではなく、容器2全体を覆う外側ケース(図示せず)をさらに設けて容器2全体を密閉するようにしてもよい。
【0034】
容器2の内面、すなわち樹脂ケース2a、2bの内面には、凸凹を設けてもよい。この場合、2つの樹脂ケース2a、2bのうち少なくとも一方の内面に凸凹を設ければよい。凸凹の突出高さや大きさは任意に設定可能であり、凸凹の数も任意に設定可能であり、凸凹を設ける領域や面積も任意に設定可能である。容器内面の凸凹は、マイクロカプセル担持体1が容器内面にぶつかった際にマイクロカプセルの破袋を促進するよう機能するものであればよい。
【0035】
一方の樹脂ケース2aの開口部の縁には、ゴム紐6をつなげるための取付孔7aを有する突起7が設けられている。突起7は、容器2の外表面の任意の位置から突設すればよい。或いは、複数個の揮散孔2cを有する一方の樹脂ケース2aに孔を開けてゴム紐6を挿通してつなぐようにしてもよい。この場合、ゴム紐6を通す孔が揮散孔としても機能する。容器2の樹脂ケース2aに孔を開けてゴム紐6をつなげた一例を
図1に示す。
【0036】
容器2内に収容したマイクロカプセル担持体1は、例えば、薬剤を封入したマイクロカプセルを含むスラリーを香料含浸体に含浸させ、接触体3および薬剤担持体5の間に収容配置されたものである。香料含浸体として、例えば、多孔性セルロース粒子であるビスコパール(商品名)、紙、多孔性ケイ酸カルシウム粒子であるフローライト、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)ビーズなどが用いられる。マイクロカプセルは、外部から圧力が加えられた際に破袋して内部に封入した薬剤を放出する。マイクロカプセルを含むスラリーは、香料含浸体に含浸され表面に塗布されているため、香料含浸体の外部から圧力が加わった際にマイクロカプセルが破袋するようになっている。この際、外部からの圧力は、摩擦などの接触による加圧を含む。
【0037】
接触体3は、マイクロカプセルを含浸しておらず、形状も球体に限らない。本実施形態では、接触体3を比較的凸凹の多い星型に形成した。接触体3は、走行中の車など外部の振動源からの振動によって容器2内で移動してマイクロカプセル担持体1にぶつかる(接触する)。これにより、マイクロカプセル担持体1のマイクロカプセルが破袋して薬剤が揮散される。薬剤担持体5は、マイクロカプセルを用いず、香料等の薬剤を直接分散させたスラリーを、マイクロカプセル担持体1と同様の材質の香料含浸体に含浸させたものである。また、薬剤担持体5に担持させる香料は、マイクロカプセル担持体1が担持する香料とは異なる香りのものを用いることが望ましい。接触体3および薬剤担持体5は、共にマイクロカプセル担持体1に接触してマイクロカプセルの破袋を促進する接触体として機能する。
【0038】
以下、上述した第2の実施形態の薬剤揮散具10の作用について説明する。
薬剤揮散具10は、ゴム紐6を取付対象物に結び付けることで取り付けが可能であるため、従来、薬剤揮散具の設置場所の確保が難しかった場所にも設置することができる。例えば、車のヘッドレスト12やバックミラーなど、車内の比較的高い位置に取り付けることもできる。薬剤揮散具10は、車、自転車、ベビーカーなどの移動体に取り付けるのに適しているが、取り付け場所は車などの移動体に限らず、人間や動物の身体に身に着けたり、マッサージチェアや掃除機、ドアノブなど振動を発生する振動源に直接取り付けることも有効である。この場合、取付対象物である振動源に結び付けるゴム紐6は、容器2(容器4)に振動を与える振動付与手段として機能する。なお、この場合、2つの容器2、4が互いに衝突する場合も考えられることから、容器2に対して容器4も振動付与手段として機能し、容器4に対して容器2も振動付与手段として機能する。
【0039】
薬剤揮散具10を車などの移動体に取り付けた場合、車の静止時にはマイクロカプセル担持体1に担持された薬剤は揮散せず、薬剤担持体5に担持された薬剤のみが空気中に揮散する。そして、車の走行時には、車体に発生する振動が薬剤揮散具10に伝えられ、容器2(容器4)内に収容したマイクロカプセル担持体1が接触体3および薬剤担持体5と衝突して接触するとともに容器2の内面に衝突する。これにより、マイクロカプセル担持体1のマイクロカプセルが破袋し、中の薬剤が放出されて空気中に揮散する。つまり、本実施形態の薬剤揮散具10は、外部から振動が与えられてマイクロカプセル担持体1が他の部材に接触することで薬剤の揮散を開始するものであり、言い換えると外部からの振動が与えられない静止した状態では薬剤を揮散しない。このため、例えば薬剤揮散具10を車に取り付けた場合、走行時には薬剤を積極的に揮散する一方、駐車場に停めた後はしばらくしてマイクロカプセル担持体1からは薬剤の揮散をしなくなる。
【0040】
以上のように、本実施形態によると、薬剤の揮散が必要なときにより積極的に薬剤を揮散させることができ、薬剤の揮散の必要度が低いときには自然に一部の薬剤の揮散が止まる薬剤揮散具10を提供することができる。そのため、薬剤揮散具10の使用寿命を延長することができるとともに、高い使用実感を得ることができる。例えば、薬剤揮散具10を車に取り付けた場合、車の走行時に限らず、ドアを開け閉めする際の振動や窓から入る風によっても薬剤揮散具10が動いてマイクロカプセル担持体1からの薬剤の揮散が始まる。すると、薬剤揮散具10から揮散される薬剤の量および種類が増加し、高い使用実感を得ることができる。一方、薬剤揮散具10を未使用の状態で保管して例えば数か月後に使用を開始した場合、保管時に薬剤が揮散することがないため、シール部材を剥がす前の保管期間が長くても、通常通りの使用寿命で使用できる。
【0041】
また、本実施形態の薬剤揮散具10は、薬剤を封入したマイクロカプセルを担持したマイクロカプセル担持体1を収容した2つの容器2、4をゴム紐6でつないだ構造を有するため、ヘッドレストやバックミラーなど車内のあらゆる場所に取り付けることができ、設置場所を自由に選ぶことができ、利便性を向上させることができる。また、容器2、4の形状や大きさを自由に設計できるため、デザイン性を向上させることができる。
【0042】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0043】
例えば、上述した実施形態の薬剤揮散具10は、薬剤の揮散が無くなって使用寿命に達した後、容器2、4の樹脂ケースを分割して、新たなマイクロカプセル担持体1や薬剤担持体5に交換することもできる。また、例えば、内容物1、3、5に対し、経時的に色が変わる性質を付与して、薬剤揮散具10の使用寿命を外部から視認可能としてもよい。この場合、内容物1、3、5とは別に、経時的に色の変わる部材を容器2(または容器4)内に収容してもよい。或いは、マイクロカプセル担持体1の表面に色を付けて、摩擦による色落ちに基づいて使用寿命を判断するようにしてもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、振動付与手段が容器2につなぐゴム紐6である場合について説明したが、これに限らず、振動付与手段として容器にスプリングを接続したり、容器を揺動可能な保持具に取り付けたりしてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、薬剤担持体5は、マイクロカプセルを用いずに香料等の薬剤を担持させたものとして説明したが、これに限らず、第3の実施形態として、マイクロカプセル担持体1と同様に、薬剤担持体5にも薬剤を封入したマイクロカプセルを含むスラリーを香料含浸体に含浸させることで薬剤を担持させてもよい。
【0046】
この場合、薬剤揮散具10を車などの移動体に取り付けると、車の走行時には車体に発生する振動が薬剤揮散具10に伝えられ、容器2(容器4)内に収容したマイクロカプセル担持体1および薬剤担持体5が接触体3と衝突して接触するとともに容器2の内面に衝突する。これにより、マイクロカプセル担持体1および薬剤担持体5のマイクロカプセルが破袋し、中の薬剤が放出されて空気中に揮散する。つまり、薬剤揮散具10は、外部から振動が与えられてマイクロカプセル担持体1および薬剤担持体5が他の部材に接触することで薬剤の揮散を開始するものであり、言い換えると外部からの振動が与えられない静止した状態では薬剤を揮散しない。このため、例えば薬剤揮散具10を車に取り付けた場合、駐車場に停めた後はしばらくして薬剤の揮散をしなくなる。
【0047】
以上のように、第3の実施形態によると、薬剤の揮散が必要なときに効果的に薬剤を揮散させることができ、薬剤の揮散が不要なときには自然に揮散が止まる薬剤揮散具10を提供することができ、薬剤の不所望な揮散を抑制でき、薬剤揮散具10の使用寿命を延長することができる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
揮発性を有する薬剤を封入したマイクロカプセルを担持した担持体と、
揮散孔を有し、前記担持体を移動可能に収容した容器と、
を有することを特徴とする薬剤揮散具。
[2]
振動源の振動を前記容器に与える振動付与手段をさらに有することを特徴とする[1]に記載の薬剤揮散具。
[3]
前記振動付与手段は、前記振動源と前記容器をつないだ紐状部材を含むことを特徴とする[2]に記載の薬剤揮散具。
[4]
前記紐状部材は、伸縮可能な材料により形成されていることを特徴とする[3]に記載の薬剤揮散具。
[5]
前記振動付与手段は、前記容器の外側に設けた衝突部材と、この衝突部材と前記容器をつないだ紐状部材と、を有し、前記紐状部材を前記振動源に結び付けて使用することを特徴とする[2]に記載の薬剤揮散具。
[6]
前記衝突部材は、揮発性を有する薬剤を封入したマイクロカプセルを担持した担持体を移動可能に収容した、揮散孔を有する別の容器であることを特徴とする[5]に記載の薬剤揮散具。
[7]
前記容器は、凸凹を有する内面を有することを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の薬剤揮散具。
[8]
前記容器および前記別の容器の少なくとも一方は、凸凹を有する内面を有することを特徴とする[6]に記載の薬剤揮散具。
[9]
前記容器内に前記担持体とともに収容した接触体をさらに有することを特徴とする[1]−[5]、[7]のいずれかに記載の薬剤揮散具。
[10]
前記容器および前記別の容器の少なくとも一方内に前記担持体とともに収容した接触体をさらに有することを特徴とする[6]または[8]に記載の薬剤揮散具。