(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786340
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】枕木切断アタッチメントおよび枕木撤去工法
(51)【国際特許分類】
E01B 29/11 20060101AFI20201109BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
E01B29/11
E02F3/36 A
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-198852(P2016-198852)
(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公開番号】特開2018-59364(P2018-59364A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】名和 修司
(72)【発明者】
【氏名】二村 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恒二
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−062317(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0007742(US,A1)
【文献】
特開2001−065177(JP,A)
【文献】
実開平04−004901(JP,U)
【文献】
実開昭60−066702(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 29/11
E04G 23/02
E02F 3/36
B02C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーショベル等の作業機に取り付けられるブラケットと、ブラケットに支持された枕木切断装置とを備え、枕木切断装置が開閉可能な一対のアームと、一対のアームを開閉する駆動装置とを含み、一方のアームが枕木を切断する刃部を備え、他方のアームが枕木を受ける枕木受け部を備え、前記刃部が前記枕木受け部に向かって張り出すように形成されていることを特徴とする枕木切断アタッチメント。
【請求項2】
前記一対のアームが、枕木を挟持する挟持部を備えた請求項1記載の枕木切断アタッチメント。
【請求項3】
前記一対のアームが、ブラケットに固定された固定アームと、連結軸により固定アームに回動可能に連結された可動アームとを含む請求項2記載の枕木切断アタッチメント。
【請求項4】
前記可動アームが、連結軸と挟持部の中間部位に前記刃部を備えた請求項3記載の枕木切断アタッチメント。
【請求項5】
前記一対のアームが、連結軸より略等距離の位置に前記挟持部を備えた請求項3又は4記載の枕木切断アタッチメント。
【請求項6】
請求項2〜5の何れか一項に記載の枕木切断アタッチメントのブラケットを前記作業機に取り付ける工程と、前記駆動装置により前記一対のアームを閉じて前記刃部により枕木を切断する工程と、切断後の枕木を前記挟持部で挟持して線路床から撤去する工程とを含む枕木撤去工法。
【請求項7】
前記作業機をレール上の台車の上に載せ、前記枕木切断アタッチメントをレールに沿って移動する工程をさらに含む請求項6記載の枕木撤去工法。
【請求項8】
前記枕木を切断する工程が、2本のレールの内側2箇所で枕木を切断して3分割する手順を含み、前記枕木を撤去する工程が、中央の切断片を線路床から上方へ撤去し、左右の切断片を線路床からレールの外側へ撤去する手順を含む請求項6又は7記載の枕木撤去工法。
【請求項9】
前記枕木を切断する工程が、前記一対のアームを開放し、前記枕木切断アタッチメントを傾けた状態で、一方のアームを他方のアームよりも先に枕木近傍のバラスト中に突き刺す手順を含む請求項6〜8の何れか一項に記載の枕木撤去工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーショベル等の作業機に取り付けて枕木を線路床から撤去するための枕木切断アタッチメント、および該アタッチメントを用いた枕木撤去工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木製の枕木は、列車走行時の衝撃で損傷しやすいため、定期的に更新する必要があり、また、鉄道線路によってはコンクリート製枕木への交換も推進されている。しかし、従来は、枕木を主に手作業で撤去していた。例えば、
図7(a)に示すように、作業員は、撤去しようとする枕木Tに沿って取り出し溝51を掘り、止め釘を抜いたのちに、枕木Tを取り出し溝51に落とし入れ、
図7(b)に示すように、レールRの下を潜らせて枕木Tを長手方向へ引き抜き、線路床Fの側方へ撤去していた。このため、撤去作業に多大な労苦を要した。
【0003】
そこで、従来、枕木の撤去作業を機械化する工法が提案されている。例えば、特許文献1には、レール上を走行可能な台車上に吊具と横行装置を搭載し、吊具で枕木の一端を吊り上げた状態で、その吊具を横行装置により線路幅方向へ移動して、枕木を長手方向へ引き抜く工法が記載されている。特許文献2には、線路床のバラストを吸引装置で除去し、バラストのない領域で枕木を回転装置によりレールと平行になる向きに回転したのち、グリッパで把持して2本のレールの間から上方へ撤去する工法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−17610号公報
【特許文献2】特開2014−505812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の撤去装置および工法は、長尺の枕木を長手方向に引き抜いているため、工事対象の線路に隣接してケーブルの配線ダクトや別の線路が敷設されているような鉄道線路に適用できないという問題点があった。また、特許文献2の装置および工法によると、広範囲の線路床から吸引したバラストを一時的に貯留する容器が必要になるうえ、バラストを線路床に戻すためのコンベヤも必要になり、総じて装置が大型化し、工期も長くかかるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明の主要な目的は、パワーショベル等の作業機を用いて枕木を線路床から容易に撤去できる枕木切断アタッチメントを提供することにある。本発明の別の目的は、限られた広さの工事領域で小型のアタッチメントを用いて枕木を短時間に撤去できる枕木撤去工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明による枕木切断アタッチメントは、パワーショベル等の作業機に取り付けられるブラケットと、ブラケットに支持された枕木切断装置とを備え、枕木切断装置が開閉可能な一対のアームと、該アームを開閉する駆動装置とを含み、少なくとも一方のアームが枕木を切断する刃部を備えたことを特徴とする。本発明の好ましい実施形態では、一対のアームに、枕木を挟持する挟持部が設けられる。
【0008】
ここで、一対のアームは、両方を共に可動とすることもでき、一方を固定し他方を可動とすることもできる。本発明の一実施形態では、一対のアームがブラケットに固定された固定アームと、連結軸により固定アームに回動可能に連結された可動アームとを含む。
【0009】
枕木を切断する刃部は、固定および可動アームの両方に設けることもでき、どちらか片方にのみ設けることもできる。本発明の一実施形態では、強力な切断力を発揮できるように、可動アームが連結軸と挟持部の中間部位に刃部を備えている。
【0010】
一方、枕木を挟持するための挟持部は、一対のアームのそれぞれに設けるのが望ましい。本発明の一実施形態では、一対のアームが、それぞれ連結軸よりほぼ等距離の位置に挟持部を備えている。
【0011】
本発明による枕木撤去工法は、上記のように構成された枕木切断アタッチメントを用いて実施され、枕木切断アタッチメントのブラケットをパワーショベル等の作業機に取り付ける工程と、駆動装置により一対のアームを閉じて刃部で枕木を切断する工程と、切断後の枕木を挟持部によって挟持し、線路床から撤去する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、アタッチメントをレール上で移動しつつ複数本の枕木を連続的に撤去できるように、本発明の工法は、さらに、作業機をレール上の台車の上に載せ、枕木切断アタッチメントをレールに沿って移動する工程を含む。
【0013】
枕木を切断する工程では、一本の枕木を2つ、3つ、またはそれ以上に分割することができる。本発明の一実施形態の工法は、枕木を切断する工程が2本のレールの内側2箇所で枕木を切断して3分割する手順を含み、枕木を撤去する工程が、中央の切断片を線路床から上方へ撤去し、左右の切断片を線路床からレールの外側へ撤去する手順を含む。
【0014】
また、バラスト中に埋設された枕木を容易に切断できるように、本発明の工法は、枕木を切断する工程が、枕木切断アタッチメントの一対のアームを開放し、アタッチメントの全体を線路床に対して傾けた状態で、一方のアームを他方のアームよりも先に枕木近傍のバラスト中に突き刺す手順を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の枕木切断アタッチメントおよび枕木撤去工法によれば、一対のアームで枕木を切断するとともに、切断後の枕木を挟持して撤去するので、パワーショベル等の作業機を用いて枕木を容易に撤去きるとともに、限られた広さの工事領域で小型のアタッチメントを用いて枕木を短時間に撤去できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態を示す作業機の側面図である。
【
図2】本発明による枕木切断アタッチメントの一実施形態を示す側面図である。
【
図3】本発明による枕木撤去工法の準備工程を示す概略図である。
【
図4】枕木切断工程を示すアタッチメントの機構図である。
【
図5】
図4に続く枕木切断工程を示す機構図である。
【
図7】従来の枕木撤去工法を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の枕木切断用アタッチメント11は作業機1におけるアーム2の先端に取り付けられている。図示例の作業機1はパワーショベルであって、最終運動部であるアーム2の先端が、車体3の走行、上部旋回体4の旋回、ブーム5の揺動およびアーム2の傾動を組み合わせた複合運動を行うようになっている。ただし、本発明の枕木切断用アタッチメント11は、パワーショベル以外の各種作業機の最終運動部に取り付けることもできる。
【0018】
作業機1は台車7の上に積載され、台車7が作業現場のレールR上に走行可能に支持されている。枕木切断用アタッチメント11は、アーム2に取り付けられたブラケット12と、枕木Tを切断する枕木切断装置13とを装備している。ブラケット12には、作業機1側の圧油供給源に接続される油圧配管(図示略)が設けられている。枕木切断装置13は、ブラケット12に支持された横回転可能な回転盤10と、回転盤10を駆動するアクチュエータ(図示略)と、回転盤10の下側で開閉可能な一対のアーム14,15と、各アーム14,15を開閉するための駆動装置としての油圧シリンダ16とを備えている。
【0019】
図2に詳しく示すように、枕木切断装置13のアームには、固定アーム14と可動アーム15が含まれている。固定アーム14は上下に長く形成され、基端(上端)がブラケット12の下面に固定され、先端(下端)に挟持部17が設けられている。可動アーム15は、固定アーム14よりも短く形成され、基端が連結軸19によって固定アーム14の中間部に回動可能に連結され、先端に挟持部18が設けられている。各アーム14,15の挟持部17,18は、連結軸19から等距離を離れた位置に設けられ、アーム14,15が閉じたときに、両者の間に枕木Tを横方向(レールRの延伸方向)から挟持するようになっている(
図6参照)。
【0020】
連結軸19と挟持部18との間において可動アーム15には、枕木を切断する刃部20が固定アーム14の枕木受け部21に向かって張り出すように形成されている。刃部20を備えた可動アーム15は、バラストを巻き込むことなく枕木を容易に切断できるように、全体的に固定アーム14よりも薄く形成され、刃部20が可動アーム15の他の部分よりもさらに薄く形成されている。
図2に例示する刃部20は、枕木受け部21に相対する2つの凹形弧状のエッジ22,23と、それらの中間で枕木に喰い込むチゼルポイント24とを備えている。そして、油圧シリンダ16が固定アーム14上に設置され、そのピストンロッド25が可動アーム15の入力端26に軸着され、ピストンロッド25の伸縮に伴い、可動アーム15が固定アーム14に対して開閉され、可動アーム15の閉鎖方向終端位置において、刃部20が枕木Tを切断するように構成されている(
図5参照)。
【0021】
次に、上記のように構成された枕木切断アタッチメント11を用いて、線路床から枕木を撤去する工事工法を主に
図3〜
図6に従って説明する。この実施形態の枕木撤去工法は、枕木切断アタッチメント11を作業機1に取り付け、作業機1をレールR上の台車7に載せる準備工程(
図1参照)と、撤去しようとする枕木Tの両端近傍の線路床Fに取り出し穴31を掘削する掘削工程と(
図3参照)、一対のアーム14,15を閉じて刃部20により枕木Tを切断する切断工程(
図4,5参照)と、切断後の枕木Tをアーム14,15の挟持部17,18で把持して線路床Fから撤去する撤去工程(
図6参照)とからなっている。
【0022】
準備工程では、
図1に示すように、枕木切断アタッチメント11のブラケット12を作業機1のアーム2の先端に取り付け、油圧シリンダ16の油圧配管(図示略)を作業機1側の圧油供給源に接続する。クレーン等を用いて工事対象区域のレールRの上に台車7を載せ、台車7の上に作業機1を積載し、台車7をレールR上で移動し、撤去しようとする枕木Tの近傍に作業機1を配置する。また、準備工程では、工事区域のレールRから止め釘(図示略)を抜き、必要に応じて、撤去しようとする枕木近傍の線路床FにレールRを支承するジャッキ32を設置する(
図3参照)。
【0023】
掘削工程は、準備工程に先行して、あるいは、準備工に後続して実施することができる。ここでは、
図3に示すように、撤去しようとする枕木Tの両端近傍において、線路床Fに切断後の枕木Tを取り出すための取り出し穴31を掘削する。この工法によれば、長尺の枕木Tを分割して撤去するため、従来の取り出し溝51(
図7参照)と比較し、取り出し穴31の容積を大幅に縮小し、掘削工程を短時間に終了できるうえ、線路床Fが盛土の上に形成されているような現場では、掘削工程自体を省略することも可能である。
【0024】
切断工程では、まず、
図4(a)に示すように、固定アーム14および可動アーム15を開いた状態で、作業機1により枕木切断アタッチメント11を線路床Fに降下させ、次いで、
図4(b)に示すように、作業機1のアーム2を傾動し、アタッチメント11の全体を線路床Fに対して傾斜させた状態で、可動アーム15よりも先に、固定アーム14の先端(下端)を枕木T近傍のバラストBの中に突き刺す。こうすれば、可動アーム15を枕木Tの上側に残し、固定アーム14のみを比較的軽い力で上下方向の切断位置に配置できるとともに、固定アーム14により枕木周辺のバラストBを切断に先立って緩めておくこともできる。また、必要に応じて、回転盤10を横回転させ、固定アーム14を枕木Tに沿わせた状態でバラスト中に差し込むこともできる。
【0025】
可動アーム15が切断位置に配置されると、続いて、
図5(a)に示すように、油圧シリンダ16が付勢され、ピストンロッド25の伸びに伴って、可動アーム15が連結軸19の周りで閉鎖方向(矢印方向)へ回動される。そして、
図5(b)に示すように、ピストンロッド25がさらに伸びると、枕木Tが固定アーム14の受け部21により停止された状態で、可動アーム15の刃部20によって切断される。このとき、チゼルポイント24(
図2参照)を備えた刃部20のエッジ22,23により硬質の枕木Tをシャープに切断することができる。
【0026】
ここで、枕木Tの水平方向の切断位置CP(
図3に鎖線で示す)は、2本のレールRの内側2箇所とするのが望ましい。こうすれば、長尺の枕木Tを略同じ長さで3分割することができ、切断片をスムーズかつ迅速に撤去できる。撤去工程では、
図6(a)に示すように、固定および可動アーム14,15をいったん開き、アタッチメント11を僅かに上昇させた後に、アーム14,15を再び閉じ、刃部20の下側で挟持部17,18により枕木Tの切断片を横方向から挟持する。そして、
図6(b)に示すように、中央の切断片T1を線路床Fから上方へ撤去し、左右の切断片T2,T3を線路床Fから取り出し穴31を介してレールRの外側へ撤去する。その後、台車7によりアタッチメント11をレールR上で移動し、複数本の枕木Tを順次切断し撤去する。
【0027】
したがって、この実施形態の枕木切断アタッチメント11によれば、パワーショベル等の作業機1を用いて枕木Tを線路床Fから容易に取り外すことがきる。特に、刃部20を連結軸19と挟持部18との間において可動アーム15に設けたので、比較的低出力の小型作業機1を使用して枕木Tを容易に切断できる。また、この実施形態の枕木撤去方法によれば、長尺の枕木Tを3分割して撤去するので、限られた広さの工事領域で小型アタッチメント11を機動的に動作させ、枕木Tをスムーズに撤去でき、従来と比較し、工期を大幅に短縮できるという利点がある。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、作業機1を2本のレールRの外側で自走させつつ枕木Tを順次撤去したり、枕木Tを長手方向の中央位置で2分割して撤去したりするなど、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、アタッチメント11の構成や工事方法の手順を適宜変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 作業機
7 台車
11 枕木切断アタッチメント
12 ブラケット
13 枕木切断装置
14 固定アーム
15 可動アーム
16 油圧シリンダ
17 固定アームの挟持部
18 可動アームの挟持部
19 連結軸
20 刃部
F 線路床
R レール
T 枕木