(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車室内に設けられる引き出し装置として、例えば、本出願人による特許第5336247号公報(特許文献1)が知られている。この特許文献1に記載された引き出し装置200が
図11及び
図12に示されている。
図11は、従来の引き出し装置200を示す概略斜視図であり、
図12は、
図11の分解斜視図である。
図11及び
図12に示すように、前面開口の箱形状のハウジング110と、ハウジング110に出し入れ可能に設けられた上方開口の収納体120(特許文献1のトレー)と、収納体120の上方に配置されて収納体120とは個別にハウジング110に出し入れ可能に設けられたトレー130(特許文献1のカップホルダプレート)と、を備えている。このような構成により、特許文献1の引き出し装置200は、収納体120のみが引き出された状態では小物入れとして利用でき、収納体120とトレー130との双方が引き出された状態では、カップホルダとして利用できる。
【0003】
この引き出し装置200は、トレー130と収納体120とを選択的に連結可能な連結機構180(
図11参照)を更に有しており、トレー130と収納体120との双方が最大引き出し位置に引き出された状態から双方がハウジング110内に格納される場合には、連結機構180によってトレー130と収納体120とが連動して格納されるようになっている。そして、再度収納体120をハウジング110から引き出すと、連結機構180の作用によってトレー130も引き出されるため、追加的な操作を行うことなく、引き出し装置200をカップホルダとして使用することができる。更に、この状態からトレー130のみをハウジング110内に格納すれば、引き出し装置200を小物入れとして使用することができる。このように、特許文献1の引き出し装置200は、面倒な操作を必要とすることなく、小物入れあるいはカップホルダとして選択的に使用することができる、使い勝手の良いものである。
【0004】
一方、引用文献1の引き出し装置200は、収納体120のみが最大引き出し位置に引き出された状態から、すなわちトレー130のみがハウジング110内に格納された状態から、収納体120をハウジング110内に格納した場合には、再度収納体120をハウジング110から引き出す時にトレー130が連動しては引き出されない。これは、収納体120とトレー130とが引き出された状態からトレー130のみをハウジング110内に格納させる際に、連結機構180による収納体120とトレー130との連結状態が解除されるためである。この場合、引き出し装置200をカップホルダとして使用する際には、手動でトレー130をハウジング110から引き出すことが必要であるため、更なる利便性の向上が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、収納体がハウジング内に格納される時にトレーが引き出されていたか格納されていたかにかかわらず、再度収納体を引き出す際に、収納体とトレーとが連動して引き出される引き出し装置を提供することである。換言すれば、本発明の目的は、収納体を引き出す際に常にトレーも連動して引き出される引き出し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前面開口の箱形状のハウジングと、
前記ハウジングに出し入れ可能に設けられた上方開口の収納体と、
前記収納体の上方に配置されて前記収納体とは個別に前記ハウジングに出し入れ可能なトレーと、を備え、
前記収納体及び前記トレーには、それぞれ、互いに係合可能な係合部が設けられ、
前記収納体が前記ハウジングから引き出されることにより、前記係合部が互いに係合して前記収納体と前記トレーとが連動して前記ハウジングから引き出される
ことを特徴とする引き出し装置である。
【0008】
本発明によれば、収納体がハウジング内に格納される時にトレーが引き出されていたか格納されていたかにかかわらず、収納体及びトレーにそれぞれ設けられた係合部が互いに係合する。このため、再度収納体を引き出す際に、収納体とトレーとが連動して引き出される引き出し装置、すなわち収納体を引き出す際に常にトレーも連動して引き出される引き出し装置、を提供することができる。
【0009】
このような引き出し装置において、前記係合部は、前記収納体及び前記トレーのうち少なくとも一方に前記収納体の出し入れ方向に沿って複数設けられ、当該複数の係合部は、前記収納体及び前記トレーのうち他方に設けられた前記係合部と選択的に係合するようになっていて良い。
【0010】
この場合、収納体をハウジングから引き出す際に、収納体とトレーとを確実に連動させることができる。更に、収納体に対するトレーの相対位置を選択的に決定することができる。
【0011】
また、前記トレーを前記収納体に対して移動させることにより、前記収納体及び前記トレーのうち一方に設けられた前記係合部と前記収納体及び前記トレーのうち他方に設けられた前記係合部との係合状態が解除可能であっても良い。
【0012】
この場合、収納体とトレーとを個別に引き出すことができる。更に、収納体とトレーとをハウジングから引き出した状態でトレーのみをハウジング内に格納すれば、収納体を小物入れとして利用することができる。
【0013】
以上の引き出し装置において、前記収納体の前記係合部と前記トレーの前記係合部とは、前記収納体の出し入れ方向に沿って配置され、少なくとも一方が弾性部材を有していて良い。
【0014】
この場合、簡易な構成によって、収納体の係合部とトレーの係合部とが互いを乗り越え可能な(係合状態を解除可能な)機構を実現できる。係合状態が解除される際にクリック感を発生させることができる。
【0015】
あるいは、以上の引き出し装置において、前記収納体の前記係合部と前記トレーの前記係合部とは、前記収納体の出し入れ方向に沿って配置され、少なくとも一方が付勢手段を介して設けられていても良い。
【0016】
この場合も、簡易な構成によって、収納体の係合部とトレーの係合部とが互いを乗り越え可能な(係合状態を解除可能な)機構を実現できる。すなわち、収納体とトレーとを個別に出し入れ可能な引き出し装置を実現できる。更に、係合状態が解除される際にクリック感を発生させることができる。
【0017】
前記トレーは、容器挿入孔または容器挿入用切り欠き部を有していて良い。この場合、トレーにより、缶等の容器を安定して保持することができる。
【0018】
また、前記トレーは、前記ハウジングの開口側に少なくとも1つの操作部を有していて良い。この場合、トレーのみをハウジングから出し入れする操作を容易に行うことができる。
【0019】
また、前記収納体の前記係合部と前記トレーの前記係合部とのうち少なくとも一方は、前記収納体の出し入れ方向に対して傾斜した斜面を有していて良い。
【0020】
この場合、収納体の係合部とトレーの係合部とが互いを乗り越える際に、スムーズな動作を実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、収納体がハウジング内に格納される時にトレーが引き出されていたか格納されていたかにかかわらず、収納体及びトレーにそれぞれ設けられた係合部が互いに係合する。このため、再度収納体を引き出す際に、収納体とトレーとが連動して引き出される引き出し装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付の図面を参照して、本開示の一実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
図1Aは、本発明の一実施の形態による引き出し装置100の格納状態を示す概略斜視図であり、
図1Bは、
図1Aの引き出し装置100を異なる角度から示す概略斜視図である。また、
図2乃至
図4Bは、
図1A及び
図1Bに示す引き出し装置100の構成部品を示している。具体的には、
図2は、引き出し装置100のハウジング10を示す概略斜視図であり、
図3は、引き出し装置100の収納体20を示す概略斜視図であり、
図4Aは、引き出し装置100のトレー30を示す、上方から見た概略斜視図であり、
図4Bは、トレー30を下方から見た概略斜視図である。
【0025】
図1乃至
図4Bに示すように、引き出し装置100は、前面開口の箱形状のハウジング10と、ハウジング10に出し入れ可能に設けられた上方開口の収納体20と、収納体20の上方に配置されて収納体20とは個別にハウジング10に出し入れ可能なトレー30と、を備えている。
【0026】
ハウジング10は、車両のインパネなど引き出し装置100が使用される場所に設置されて、収納体20及びトレー30を内部に格納するためのものである。本実施の形態のハウジング10は、樹脂製であり、4枚の側壁11〜14と、これらの側壁11〜14の後部に配置された後壁15と、によって構成された箱形の形状を有し、前面(
図2における手前側の面)に開口部10aが規定されている。対面する一対の側壁11、13は、円弧に沿った形状の開口部11n、13nと、当該開口部11n、13nに沿ってその上方に設けられた突条11p、13pと、を有している。後述されるが、これらの開口部11n、13n及び突条11p、13pによって、収納体20がガイドされるようになっている。更に、ハウジング10の内側には、側壁11、13の上部(
図2における上部)に突条11g(側壁13に設けられた突条は、
図2では視認されない)が、側壁12に互いに平行な2本の長孔12n(
図1B参照)が、それぞれ設けられており、これらの突条11g及び長孔12nによって、トレー30がガイドされるようになっている。
【0027】
次に、収納体20について
図3を参照して説明する。図示されるように、収納体20は、上方が開口となった収納部21と、この収納部21の前面(
図3における左上方の面)に設けられた化粧板22と、を有している。本実施の形態の収納部21及び化粧板22は、いずれも樹脂製である。収納部21は、一対の側壁21wと後壁21rと底部25とを有する箱形の形状を有している。一対の側壁21wには、外面に弾性爪23と、弧状のガイド溝24と、がそれぞれ設けられている。収納体20がハウジング10内に装着された状態において、弾性爪23は、ハウジング10の開口部11n、13n内に位置付けられるようになっており、ガイド溝24は、ハウジング10の突条11p、13pに摺動可能に係合するようになっている。更に、
図3に示すように、収納体20の後壁21rは、収納体20の底部25に対して鋭角をなすように配置されており、その外面には、係合部として第1突起26及び第2突起27が設けられている。これら第1突起26及び第2突起27は、
図3に示すように、収納体20の後壁21rに対して鈍角をなすように傾斜した斜面26s、27sを有している。
【0028】
次に、
図4A及び
図4Bを参照して、トレー30について説明する。図示されるように、トレー30は、板状の本体部31と、本体部31の上面(
図4Aにおける手前側の面)に幅方向に整列して設けられた2つの弾性爪34と、本体部31の裏面に設けられた係合部36と、本体部31の前方に設けられた2つの操作部32、33と、を有している。本実施の形態の本体部31は、図示されるように、前端面35の輪郭線が円弧状となるように切り欠かれており、トレー30によって飲料が収容された紙コップや缶などが好適に保持されるようになっている。また、2つの操作部32、33は、
図4A及び
図4Bに示すように、前端面35の幅方向の両端部に1つずつ設けられている。但し、一方(
図4Aにおける左方、
図4Bにおける右方)の操作部32は、他方(
図4Aにおける右方、
図4Bにおける左方)の操作部33よりも前方(
図4A及び
図4Bにおける左上方)に延び出ている。更に、本体部31の両側面には、案内溝31gが設けられている。
【0029】
ここで、
図4Bを参照して、本実施の形態の係合部36の構造について詳述する。係合部36は、樹脂製であり、幅方向に延びるトンネル状の外形を有する凸部36pとこの凸部36pの周縁部の前後において立ち上がる一対の壁部36wと、凸部36pの幅方向両端に設けられた係合突起36eを有している。更に、この係合突起36eを収容する所定の長さの係合孔37nが設けられた台座37が本体部31の裏面から垂下しており、この係合孔37n内を係合突起36eが移動することによって、係合部36が本体部31に対して上下方向(本体部31の上面における法線方向)に移動可能となっている。但し、
図4Bには現れていないが、係合部36は、伸縮可能なコイルバネ38(
図6、
図8及び
図10参照)によって本体部31に対して下方(
図4における左手前方向)に付勢されている。この係合部36は、収納体20がハウジング10から引き出されることにより、収納体20の後壁21rに設けられた第1突起26または第2突起27に互いに係合するようになっている。このことによって、収納体20とトレー30とが連動してハウジング10から引き出されるのである。更に、収納体20とトレー30とが引き出し方向(
図1Aの略左右方向)に相対移動される際に、コイルバネ38の存在によって、係合部36が収納体20の第1突起26及び第2突起27を乗り越えることが可能である。すなわち、係合部36と収納体20の第1突起26及び第2突起27との係合状態が解除可能となっている。
【0030】
次に、ハウジング10、収納体20及びトレー30を組み付ける方法の一例について説明する。
【0031】
まず、ハウジング10の突条11gとトレー30の案内溝31gとが互いに嵌り合うようにハウジング10にトレー30がセットされ、この状態でトレー30がハウジング10内に押し込まれる。この時、トレー30は、本体部31の上面に設けられた2つの弾性爪34が側壁12に当接して撓みつつハウジング10内に移動される。そして、当該弾性爪34がハウジング10の側壁12に設けられた2本の長孔12nに入り込むと、その撓み状態が解放される。弾性爪34は、
図4Aに示すように、トレー30の前方に向かって次第に立ち上がる形状となっている。このため、トレー30がハウジング10に取り付けられた状態でトレー30をハウジング10から引き抜こうとすると、弾性爪34と長孔12nの前端縁とが干渉することになる。このような構成によって、トレー30がハウジング10から不所望に脱落することが防止される。
【0032】
次いで、ハウジング10内に収納体20が取り付けられる。具体的には、ハウジング10の一対の側壁11、13に設けられた突条11p、13pと収納体20の一対の側壁21wに設けられたガイド溝24とが互いに嵌り合うようにハウジング10に収納体20がセットされ、この状態でハウジング10内に収納体20が押し込まれる。この時、収納体20は、一対の側壁21wの外側に設けられた弾性爪23がハウジング10の一対の側壁11、13に当接して撓みつつハウジング10内に移動される。そして、当該弾性爪23がハウジング10の一対の側壁11、13に設けられた開口部11n、13nに入り込むと、その撓み状態が解放される。弾性爪23は、
図3に示すように、収納体20の前方(
図3における左上方)に向かって次第に立ち上がる形状となっている。このため、収納体20がハウジング10内に取り付けられた状態で収納体20をハウジング10から引き抜こうとすると、弾性爪23と開口部11n、13nの前端縁とが干渉することになる。このような構成によって、収納体20がハウジング10から不所望に脱落することが防止される。
【0033】
なお、収納体20がハウジング10に取り付けられる過程で、後述されるように、トレー30の係合部36と収納体20の第1突起26及び第2突起27とが互いに当接する。しかしながら、トレー30の係合部36は、前述したように圧縮可能なコイルバネ38によって付勢されているため、当該コイルバネ38が圧縮変形されることによって、係合部36が収納体20の第1突起26及び第2突起27を乗り越えることができる。
【0034】
次に、以上のようにして組み付けられた引き出し装置100の作用について、
図5乃至
図10を参照して説明する。
【0035】
図5は、
図1A及び
図1Bの引き出し装置100を示す概略平面図であり、
図6は、
図5のA−A線断面図である。
図5及び
図6において、収納体20及びトレー30は共にハウジング10内に格納されている。この時、
図5に示すように、収納体20の化粧板22がハウジング10の前面の開口部10aを閉鎖している。また、
図6に示すように、収納体20の第1突起26及び第2突起27は、いずれもトレー30の係合部36の後方(
図6における左方)に位置している。具体的には、第1突起26及び第2突起27のうち相対的に上方に位置する第1突起26が、トレー30の係合部36のすぐ後ろに位置している。このため、ハウジング10から収納体20が引き出されると、収納体20の第1突起26がトレー30の係合部36を前方に押し出し、これによって収納体20に連動してトレー30もハウジング10から引き出される。
【0036】
この引き出しの過程で、トレー30の上面に設けられた2つの弾性爪34がハウジング10の側壁12に設けられた2本の長孔12nの前端縁に当接し、トレー30の引き出しが終了する。この状態から収納体20がハウジング10から更に引き出されると、収納体20の第1突起26がトレー30の係合部36を上方に押圧し、これによって係合部36を付勢しているコイルバネ38が圧縮変形されると共に係合部36が上方へ押し上げられる。そして、収納体20がハウジング10から更に引き出されると、収納体20の第1突起26が係合部36の前方に移動し、トレー30の係合部36が再びコイルバネ38によって初期状態まで押し戻される。要するに、収納体20がハウジング10から引き出される過程で、トレー30の係合部36が収納体20の第1突起26を乗り越える。前述したように、第1突起26には、収納体20の後壁21rに対して鈍角をなすように傾斜した斜面26sが設けられているため、トレー30の係合部36は、収納体20の第1突起26をスムーズに乗り越える。また、この乗り越えの際には、操作する者に対して、クリック感(節度感)が提供される。その後、収納体20の弾性爪23がハウジング10の一対の側壁11、13に設けられた開口部11n、13nの前端縁に当接し、収納体20及びトレー30のハウジング10からの引き出しが完了する。
【0037】
収納体20及びトレー30の引き出しが完了し、最大引き出し位置に位置付けられた状態が、
図7A乃至
図8に示されている。
図7Aは、
図1A及び
図1Bの引き出し装置100の、収納体20及びトレー30が共に引き出された状態を示す概略斜視図であり、
図7Bは、
図7Aの引き出し装置100を異なる角度から示す概略斜視図であり、
図8は、
図5のA−A線に対応する線で切断した、
図7A及び
図7Bの概略断面図である。
【0038】
図8から理解されるように、収納体20及びトレー30の引き出しが完了すると、収納体20の第2突起27が、トレー30の係合部36のすぐ後ろに位置付けられる。このため、トレー30は、不所望にハウジング10内へと移動してしまうことが無く、最大引き出し位置が維持される。
【0039】
本実施の形態による引き出し装置100は、収納体20及びトレー30の引き出しが完了した状態から、トレー30のみをハウジング10内に格納させることができる。この場合、格納操作をする者が例えばトレー30の一方の操作部32を把持し、トレー30を後方に、すなわちハウジング10内に向かって押し込めば良い。前述したように、トレー30は、最大引き出し位置において収納体20の第2突起27がトレー30の係合部36のすぐ後ろに位置し、互いに係合した状態にある。このため、トレー30をハウジング10内に格納させるためには、収納体20の第2突起27がトレー30の係合部36を付勢するコイルバネ38を圧縮変形させて当該係合部36を押し上げ得る程度の力で、一方の操作部32がハウジング10内に向かって押し込まれる必要がある。このことにより、トレー30の係合部36が収納体20の第2突起27を乗り越え、トレー30がハウジング10内に格納される。本実施の形態では、前述したように、第2突起27には、収納体20の後壁21rに対して鈍角をなすように傾斜した斜面27sが設けられているため、トレー30の係合部36は、収納体20の第2突起27をスムーズに乗り越える。
【0040】
トレー30のみがハウジング10内に格納された状態の引き出し装置100が、
図9A乃至
図10に示されている。
図9Aは、
図1A及び
図1Bの引き出し装置100の、収納体20のみが引き出された状態、すなわちトレー30のみがハウジング10内に格納された状態、を示す概略斜視図であり、
図9Bは、
図9Aの引き出し装置100を異なる角度から示す概略斜視図であり、
図10は、
図5のA−A線に対応する線で切断した、
図9A及び
図9Bの概略断面図である。
【0041】
図9A及び
図9Bに示すように、トレー30のみがハウジング10内に格納された状態では、収納体20の上方の開口が大きく露出するため、収納体20が小物入れとして好適に利用される。なお、前述したように、一方の操作部32は他方の操作部33よりも前方に位置している(
図4A及び
図4B参照)。このため、
図9A及び
図9Bに示すように、トレー30をハウジング10内に格納した状態において、一方の操作部32がハウジング10の前面の開口部10aから僅かに外部に露出する。
【0042】
もちろん、トレー30のみがハウジング10内に格納された状態から、トレー30を再度引き出すことも可能である。この場合、トレー30をハウジング10内に格納する時とは逆の動作を行えばよい。すなわち、操作する者が例えば一方の操作部32を把持して前方に引き出せばよい。これに伴って、トレー30がハウジング10から引き出される。そして、トレー30が最大引き出し位置まで引き出される直前に、トレー30の係合部36が収納体20の第2突起27に当接する。ここから更に操作部32を前方に引き出すと、収納体20の第2突起27がトレー30の係合部36を付勢するコイルバネ38を圧縮変形させて係合部36を押し上げ、トレー30の係合部36が収納体20の第2突起27を乗り越える。その後、トレー30の2つの弾性爪34がハウジング10の長孔12nの前端縁に当接し、トレー30の更なる引き出しが防止される。このようにして、トレー30が最大引き出し位置に位置付けられる(
図7A乃至
図8参照)。
【0043】
収納体20及びトレー30が共に最大引き出し位置に位置している状態から、収納体20及びトレー30をハウジング10内に格納させるためには、格納操作をする者が、例えば化粧板22を把持して収納体20を後方に、すなわちハウジング10内に向かって、押し込めばよい。この押し込み操作により、まず収納体20がハウジング10内に向かって移動する。この時、トレー30は最大引き出し位置を維持している。そして、
図8から理解されるように、収納体20がハウジング10内に向かってある程度移動すると、トレー30の係合部36に収納体20の第1突起26が前方から当接し係合する。このことにより、収納体20がハウジング10内に向かって更に移動されると、収納体20に連動してトレー30もハウジング10内に向かって移動する。
【0044】
そして、収納体20がハウジング10内に完全に格納される直前に、トレー30の後端部がハウジング10の後壁15に当接し、トレー30の格納が完了する。この状態から収納体20を更にハウジング10内に向かって(後方に)移動させると、収納体20の第1突起26がトレー30の係合部36を付勢するコイルバネ38を圧縮させて当該係合部36を押し上げつつ後方に移動する。その後、収納体20の第1突起26が係合部36の後方へと移動すると、収納体20がハウジング10の後壁15に当接し、収納体20の格納が完了する。すなわち、
図1A、
図1B及び
図6に示す状態が復元される。
【0045】
他の格納の態様として、
図9A乃至
図10に示すようにトレー30がハウジング10内に格納され収納体20のみがハウジング10から引き出されている状態から、収納体20をハウジング10内に格納する場合の動作について説明する。この場合も、格納操作をする者が、例えば化粧板22を把持して収納体20を後方に、すなわちハウジング10内に向かって、押し込めばよい。この押し込み操作により、収納体20がハウジング10内に向かって移動する。そして、
図10から理解されるように、収納体20がハウジング10内に向かって移動すると、トレー30の係合部36に収納体20の第2突起27が前方から当接する。この状態から収納体20をハウジング10内に向かって(後方に)更に移動させると、収納体20の第2突起27がトレー30の係合部36を付勢するコイルバネ38を圧縮させて当該係合部36を押し上げつつ後方に移動する。そして、収納体20をハウジング10内に向かって(後方に)更に移動させると、次は、収納体20の第1突起26がトレー30の係合部36を付勢するコイルバネ38を圧縮させつつ後方に移動する。このことにより、収納体20の第1突起26は、当該係合部36の後方に位置付けられ、この時、収納体20のハウジング10内への格納が完了する。すなわち、
図1A、
図1B及び
図6に示す初期状態が復元される。
【0046】
以上の説明から明らかなとおり、トレー30がハウジング10から引き出されているか否かによらず、収納体20をハウジング10内に格納すると、
図1A、
図1B及び
図6に示す初期状態が復元される。このため、再度収納体20をハウジング10から引き出すと、前述したように、常に、収納体20に連動してトレー30も引き出されるのである。
【0047】
以上のような本実施の形態による引き出し装置100によれば、収納体20がハウジング10内に格納される時にトレー30が引き出されていたか格納されていたかにかかわらず、収納体20の第1突起26とトレー30の係合部36とが互いに係合する。このため、再度収納体20を引き出す際に、収納体20とトレー30とが連動して引き出される引き出し装置100、すなわち収納体20を引き出す際に常にトレー30も連動して引き出される引き出し装置100、を提供することができる。
【0048】
また、本実施の形態による引き出し装置100において、収納体20には、当該収納体20の出し入れ方向に沿って複数の係合部である第1突起26及び第2突起27が設けられ、これら第1突起26及び第2突起27は、トレー30に設けられた係合部36と選択的に係合するようになっている。このため、収納体20をハウジング10から引き出す際に、収納体20とトレー30とを確実に連動させることができる。更に、収納体20に対するトレー30の相対位置を選択的に決定することができる。
【0049】
また、トレー30を収納体20に対して移動させることにより、収納体20の第1突起26及び第2突起27とトレー30に設けられた係合部36との係合状態が解除可能である。このため、収納体20とトレー30とを個別に引き出すことができる。更に、収納体20とトレー30とをハウジング10から引き出した状態でトレー30のみをハウジング10内に格納すれば、収納体20を小物入れとして利用することができる。
【0050】
更に、引き出し装置100において、収納体20の第1突起26及び第2突起27とトレー30の係合部36とは、収納体20の出し入れ方向に沿って配置され、トレー30の係合部36が圧縮状態のコイルバネ38を介して設けられている。このため、簡易な構成によって、トレー30の係合部36が収納体20の第1突起26及び第2突起27を乗り越え可能な(係合状態を解除可能な)機構を実現できる。すなわち、収納体20とトレー30とを個別に出し入れ可能な引き出し装置100が実現できる。更に、係合状態が解除される際にクリック感を発生させることができる。
【0051】
本実施の形態のトレーは、容器挿入孔または容器挿入用切り欠き部として、前端面35の輪郭線が円弧状となるように切り欠かれている。このため、トレー30により、缶等の容器を安定して保持することができる。
【0052】
また、トレー30は、ハウジング10の開口側に2つの操作部32、33を有しているため、トレー30のみをハウジング10から出し入れする操作を容易に行うことができる。
【0053】
また、収納体20の第1突起26及び第2突起27は、収納体20の出し入れ方向に対して鈍角に傾斜した斜面26s、27sを有しているため、トレー30の係合部36が収納体20の第1突起26及び第2突起27を乗り越える際に、スムーズな動作を実現することができる。
【0054】
なお、本実施の形態による引き出し装置100では、トレー30の係合部36が圧縮状態のコイルバネ38を介して設けられていたが、このような形態には限定されない。例えば、トレー30の係合部36が弾性部材で構成することによっても、簡易な構成によって、トレー30の係合部36が収納体20の第1突起26及び第2突起27を乗り越え可能な(係合状態を解除可能な)機構を実現できる。この場合も、係合状態が解除される際にクリック感を発生させることができる。
【0055】
本実施の形態による引き出し装置100は、収納体20に2つの係合部として第1突起26及び第2突起27が設けられ、トレー30に圧縮状態のコイルバネ38を介した係合部36が設けられているが、これとは逆に、収納体20に圧縮状態のコイルバネ38を介した係合部が設けられ、トレー30に2つの係合部が設けられていても良い。また、収納体20及びトレー30の少なくとも一方に複数の係合部が設けられる場合、その数は2つに限られず、3つ以上であっても良い。
【0056】
更に、係合部の具体的な態様としては、互いに凸部である必要は無く、例えば磁石を採用しても良い。すなわち、例えば収納体20にN極が上方を向くように第1の磁石を固定し、トレー30にS極が下方を向くように第2の磁石を固定し、これら第1及び第2の磁石の吸引力によって、トレー30を収納体20に連動してハウジング10から引き出されるようにしても良い。