(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動モータ部と、減速機部と、車輪用軸受部とから構成され、ケーシングを備えており、前記減速機部が平行軸歯車による減速構造を有するインホイールモータ駆動装置において、
前記平行軸歯車は、前記電動モータ部に連結され入力歯車を備えた入力軸、入力側中間歯車と出力側中間歯車を備えた1つ又は複数の中間軸および前記車輪軸受部に連結され最終出力歯車を備えた出力軸とから構成され、前記入力軸、前記中間軸および前記出力軸のそれぞれの両端部が転がり軸受によって回転自在に支持され、
前記中間軸と前記出力軸のアウトボード側を支持する2つの転がり軸受と、前記中間軸と前記出力軸のインボード側を支持する2つの転がり軸受の少なくとも片側の2つの転がり軸受は、その軸受幅が軸方向に重ならない位置に配置され、
前記出力軸を支持する転がり軸受とは別に独立して前記車輪用軸受部が設けられており、前記出力軸が前記車輪用軸受部にトルク伝達可能に連結されていることを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
前記軸受幅が軸方向に重ならない位置に配置されている2つの転がり軸受が、前記中間軸と前記出力軸のアウトボード側を支持する転がり軸受であることを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
【背景技術】
【0002】
インホイールモータ駆動装置は、ホイールの内部に収められるため、車両のばね下重量となる。ばね下重量の増加は車両の乗り心地を悪化させるため、インホイールモータ駆動装置の小型軽量化は重要な要件である。電動モータの出力トルクは、電動モータのサイズおよび重量に比例するため、モータ単体で車両の駆動に必要なトルクを発生させようとすると、大型のモータが必要になる。そのため、電動モータを減速機と組み合わせて使用することで、小型化する手段が用いられる。
【0003】
しかし、電動モータ、減速機、車輪用軸受を直列に並べると、ホイールからインボード側へのインホイールモータ駆動装置の張り出し量が大きくなる。ホイールハウジングのスペースが内燃機関の車両と同じである場合、車両が転舵、上下動した際、車体とインホイールモータ駆動装置との干渉が発生する。そのため、タイヤ可動範囲を減らすか、インホイールモータ駆動装置専用に車体を改造する必要がある。
【0004】
従来技術として、インホイールモータ駆動装置において、電動モータの回転を減速して減速機構の出力軸から駆動輪に伝達し、減速機構が平行軸歯車列からなり、この平行軸歯車列により電動モータの回転軸が車両の垂直方向の上方にオフセットされて配置したものが提案されている(特許文献1)。このインホイールモータ駆動装置では、電動モータの回転軸を車輪用軸受の軸心に対して径方向にオフセットさせることにより、ホイール内の
電動モータが占有していない空間に懸架機構との接続点やブレーキキャリパ取付部等を設けることができる。また、インホイールモータ駆動装置全体を小さくすることができるので、転舵機構による旋回運動や懸架機構による上下運動に伴う車体や懸架部品との干渉を回避しやすくしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のインホイールモータ駆動装置では、平行軸歯車減速機を適用することで、電動モータのオフセット配置により軸方向の小型化を図っている。しかし、電動モータを含めたインホイールモータ駆動装置の全体をホイール内周の円筒状の空間に収める構造には至っていない。そのため、懸架部品の形状に制限が加わることで、懸架部品の重量増加や強度低下、最低地上高さの減少などの悪影響が生じたり、干渉を回避するために、車体側の設計変更が必要になることで車両の運動性能が低下したり、車体の共通化にコストメリットが失われるという問題が考えられる。
【0007】
平行軸歯車減速機では、最終出力歯車を備えた出力軸と中間歯車を備えた中間軸の軸間距離は、歯車側の要件、軸受側の要件および懸架装置への取付け構造を考慮する必要があることが判明した。具体的には、歯車側の要件として、最終出力歯車が大径になりすぎると懸架装置のロアアームとの干渉が生じ、中間歯車が小径になりすぎると歯車として成立しなくなる。軸受側の要件として、大きなラジアル荷重、スラスト荷重により転動体と軌道面の接触楕円が軌道面の肩に乗り上げないように転動体の直径や転動体のピッチ円直径を大きくする必要がある。このような要件が関係するので、例えば、歯車としては最適ではないが、軸受側の要件で、出力軸と中間軸の軸間距離が決まることや、径方向に十分小型化できないという問題が判明した。さらに、懸架装置への取付け構造のためのスペースを確保する必要がある。平行軸歯車減速機を備えたインホイールモータ駆動装置を径方向に小型化するために上記のような問題に辿りつき、この問題に着目したのが本発明である。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑み、平行軸歯車減速機を備えたインホイールモータ駆動装置の径方向の小型化を図ると共に、運転性能、車両搭載性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するために種々検討した結果、前述した歯車側の決定要件と軸受側の決定要件との寸法的な相互依存を解消すると共に懸架装置への取付け構造のためのスペースを確保するという新たな着想により、本発明に至った。
【0010】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、電動モータ部と、減速機部と、車輪用軸受部とから構成され、ケーシングを備えており、前記減速機部が平行軸歯車による減速構造を有するインホイールモータ駆動装置において、前記平行軸歯車は、前記電動モータ部に連結され入力歯車を備えた入力軸、入力側中間歯車と出力側中間歯車を備えた1つ又は複数の中間軸および前記車輪軸受部に連結され最終出力歯車を備えた出力軸とから構成され、前記入力軸、前記中間軸および前記出力軸のそれぞれの両側が転がり軸受によって回転自在に支持され、前記中間軸と前記出力軸のアウトボード側を支持する2つの転がり軸受と、前記中間軸と前記出力軸のインボード側を支持する2つの転がり軸受の少なくとも片側の2つの転がり軸受は、その軸受幅が軸方向に重ならない位置に配置されていることを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
【0011】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、電動モータ部と、減速機部と、車輪用軸受部とから構成され、ケーシングを備えており、前記減速機部が平行軸歯車による減速構造を有するインホイールモータ駆動装置において、前記平行軸歯車は、前記電動モータ部に連結され入力歯車を備えた入力軸、入力側中間歯車と出力側中間歯車を備えた1つ又は複数の中間軸および前記車輪軸受部に連結され最終出力歯車を備えた出力軸とから構成され、前記入力軸、前記中間軸および前記出力軸のそれぞれの両端部が転がり軸受によって回転自在に支持され、前記中間軸と前記出力軸のアウトボード側を支持する2つの転がり軸受と、前記中間軸と前記出力軸のインボード側を支持する2つの転がり軸受の少なくとも片側の2つの転がり軸受は、その軸受幅が軸方向に重ならない位置に配置され
、前記出力軸を支持する転がり軸受とは別に独立して前記車輪用軸受部が設けられており、前記出力軸が前記車輪用軸受部にトルク伝達可能に連結されていることを特徴とす
る。
【0012】
上記の軸受幅が軸方向に重ならない位置に配置されている2つの転がり軸受が、中間軸と出力軸のアウトボード側を支持する転がり軸受であること、また、中間軸を支持する転がり軸受に対して出力軸を支持する転がり軸受をインボード側にずらせることが好ましい。これにより、インホイールモータ駆動装置の径方向の小型化を図ると共に懸架装置への取付け構造のためのスペースを確保することができる。
【0013】
上記の減速構造が2段の平行軸歯車で構成されていることにより、部品点数を抑え、高減速比と小型化を両立させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、平行軸歯車減速機を備えたインホイールモータ駆動装置の径方向の小型化を図ると共に、運転性能、車両搭載性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置を
図1〜
図3、
図5および
図6に基づいて説明する。まず、本実施形態のインホイールモータ駆動装置を搭載した電気自動車を
図5、
図6に基づいて説明する。
図5は、インホイールモータ駆動装置21を搭載した電気自動車11の概略平面図、
図6は、電気自動車11を後方から見た概略断面図である。
【0017】
電気自動車11は、
図5に示すように、シャシー12と、操舵輪としての前輪13と、駆動輪としての後輪14と、後輪14に駆動力を伝達するインホイールモータ駆動装置21とを装備する。後輪14は、
図6に示すように、シャシー12のホイールハウジング15の内部に収容され、懸架装置(サスペンション)16を介してシャシー12の下部に固定されている。
【0018】
懸架装置16は、左右に延びるサスペンションアームにより後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットにより、後輪14が地面から受ける振動を吸収してシャシー12の振動を抑制する。左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時などの車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられている。懸架装置16は、路面の凹凸に対する追従性を向上させ、後輪14の駆動力を効率よく路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させる独立懸架式としている。
【0019】
電気自動車11は、ホイールハウジング15の内部に、左右それぞれの後輪14を駆動するインホイールモータ駆動装置21を設けることによって、シャシー12上にモータ、ドライブシャフトおよびデファレンシャルギヤ機構などを設ける必要がなくなるので、客室スペースを広く確保でき、かつ、左右の後輪14の回転をそれぞれ制御することができるという利点を有する。
【0020】
第1の実施形態の特徴的な構成を説明する前にインホイールモータ駆動装置21の全体構成を
図1〜
図3に基づいて説明する。以下の説明では、インホイールモータ駆動装置21を車両に搭載した状態で、車両の外側寄りとなる側をアウトボード側と称し、中央寄りとなる側をインボード側と称する。特許請求の範囲におけるアウトボード側およびインボード側という用語は前記の意味で用いる。
【0021】
図1は、
図2のP−P線で矢視したインホイールモータ駆動装置の縦断面図で、
図2は、
図1のQ−Q線で矢視したインホイールモータ駆動装置の横断面図で、
図3は、
図1のR−R線で矢視したインホイールモータ駆動装置の横断面図である。
【0022】
図1に示すように、インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させる電動モータ部Aと、電動モータ部Aの回転を減速して出力する減速機部Bと、減速機部Bからの出力を駆動輪としての後輪に伝達する車輪用軸受部Cとを備えている。電動モータ部A、減速機部B、および車輪用軸受部Cは、それぞれケーシング22に収容あるいは取り付けられる。ケーシング22は
図1に示すように一体構造とする他、分割可能な構造にすることもできる。
【0023】
電動モータ部Aは、ケーシング22に固定されたステータ23と、ステータ23の径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ24と、ロータ24の径方向内側に配置されてロータ24と一体回転するモータ回転軸25とを備えたラジアルギャップ型の電動モータ26で構成されている。モータ回転軸25は、毎分一万数千回転程度で高速回転可能である。ステータ23は磁性体コアにコイルを巻回することによって構成され、ロータ24は永久磁石等で構成されている。
【0024】
モータ回転軸25は、その軸方向一方側の端部(
図1の左側)が転がり軸受40により、軸方向他方側の端部(
図1の右側)が転がり軸受41により、ケーシング22に対してそれぞれ回転自在に支持されている。
【0025】
減速機部Bは、入力歯車30と、中間歯車としての入力側中間歯車31および出力側中間歯車32と、最終出力歯車35とを有する。入力歯車30は入力軸30aを一体に有しており、この入力軸30aはスプライン嵌合(セレーション嵌合を含む。以下、同じ)によってモータ回転軸25と同軸に連結されている。入力側中間歯車31および出力側中間歯車32を備える中間軸S1は、両中間歯車31、32と一体に形成されている。最終出力歯車35を備える出力軸36は、最終出力歯車35と一体に形成されている。
【0026】
入力軸30a、中間軸S1および出力軸36は互いに平行に配置されている。入力軸30aは転がり軸受42、43によって、中間軸S1は転がり軸受44、45によって、出力軸36は転がり軸受48、49によって、それぞれ、両端部がケーシング22に対して回転自在に支持されている。ここで、入力軸30a、中間軸S1および出力軸36の両端部とは、それぞれの軸端部のみに限定されるものではなく、例えば、
図1に示すように、出力軸36の最終出力歯車35の外側(アウトボード側)の途中位置を含む概念のものである。要は、入力軸30a、中間軸S1および出力軸36が、転がり軸受42、43、44、45、48、49によって、両持ちで支持されることを意味する。本明細書および特許請求の範囲において、入力軸、中間軸および出力軸の両端部は上記の意味で用いる。
【0027】
図2および
図3に示すように、減速機部Bの入力軸30aの中心O1(モータ回転軸25の中心でもある)と車輪用軸受部Cの中心O3との間に、中間軸S1の中心O2が配置され、各中心O1、O2およびO3を結ぶ直線が三角状をなすように構成され、インホイールモータ駆動装置21の外周輪郭の小型化を図っている。これにより、既存の内燃機関の車両のホイール70内に装着することができる。
【0028】
図2は、
図1のQ−Q線で矢視した、すなわち、アウトボード側から見た横断面図であるが、出力軸36のアウトボード側を支持する転がり軸受49が、最終出力歯車35の内径側凹部47に配置されている。
図1に示すように、出力軸36のアウトボード側を支持する転がり軸受49と中間軸S1のアウトボード側を支持する転がり軸受45のそれぞれの軸受幅W4、W2は、軸方向に重ならない位置に配置されている。また、
図3は、
図1のR−R線で矢視した、すなわち、インボード側から見た横断面図であるが、中間軸S1のインボード側を支持する転がり軸受44が、入力側中間歯車31の内径側凹部33に配置されている。
図1に示すように、出力軸36のインボード側を支持する転がり軸受48と中間軸S1のインボード側を支持する転がり軸受44のそれぞれの軸受幅W3、W1は、軸方向に重ならない位置に配置されている。詳細は後述する。
【0029】
図1に示すように、減速機部Bでは、入力歯車30と入力側中間歯車31とが噛合し、出力側中間歯車32と最終出力歯車35とが噛合している。入力側中間歯車31の歯数は、入力歯車30および出力側中間歯車32の歯数よりも多く、最終出力歯車35の歯数は出力側中間歯車32の歯数よりも多い。以上の構成から、モータ回転軸25の回転運動を2段階に減速する平行軸歯車減速機39が構成される。2段の平行軸歯車からなる減速機構は、部品点数が比較的少なく、かつ、後述する平行軸歯車と支持軸受の配置構造とが相俟って、高減速比と小型化を両立させることができる。
【0030】
本実施形態では、減速機39を構成する入力歯車30、入力側中間歯車31、出力側中間歯車32および最終出力歯車35として、はすば歯車を用いている。はすば歯車は、同時に噛合う歯数が増え、歯当たりが分散されるので音が静かで、トルク変動が少ない点で有効である。歯車のかみあい率や限界の回転数などを考慮して、各歯車のモジュールは1〜3程度に設定するのが好ましい。
【0031】
車輪用軸受部Cは、内輪回転タイプの車輪用軸受50で構成される。車輪用軸受50は、ハブ輪60と内輪52とからなる内方部材61と、外輪53と、玉56および保持器(図示省略)を主な構成とする複列アンギュラ玉軸受である。
【0032】
ハブ輪60のアウトボード側の外周に車輪取り付け用のフランジ部60aが形成され、インボード側の小径段部に内輪52が嵌合され加締め固定されている。加締め部60bは、車輪用軸受50の組み立て後、内輪52を固定すると共に車輪用軸受50に予圧を付与している。ハブ輪60の外周にアウトボード側の内側軌道面54が形成され、内輪52の外周にインボード側の内側軌道面54が形成されている。図示は省略するが、車輪取り付け用のフランジ部60aには、ブレーキディスクおよびホイールが取り付けられる。外輪53の内周には、ハブ輪60の内側軌道面54および内輪52の内側軌道面54に対応して複列の外側軌道面55が形成されている。出力軸36は、ハブ輪60にスプライン嵌合し、トルク伝達可能に連結されている。
【0033】
外輪53の外周にフランジ部53aが形成され、このフランジ部53aにアタッチメント46がボルト72により締結固定されている。アタッチメント46は、ボルト72の周方向位置とは異なる周方向位置でボルト71によりケーシング22に締結固定されている。これにより、アタッチメント46を介して車輪用軸受50とケーシング22とが結合される。アタッチメント46は、
図1の下方に延び、図示は省略するが、懸架装置のブラケットにボルトで締結固定される。図示のように、インホイールモータ駆動装置21では、車輪用軸受50の外径側に位置するケーシング22の限定された部分が懸架装置への取付け構造のためのスペースとなる。
【0034】
インホイールモータ駆動装置21では、電動モータ26の冷却や減速機39の潤滑および冷却のため、図示しない回転ポンプで潤滑油が各部に供給される。車輪用軸受50の軸受内部はグリースにより潤滑される。
【0035】
インホイールモータ駆動装置21は、ホイールハウジング15(
図6参照)の内部に収められ、ばね下荷重となるため、小型軽量化が必須である。前述した構成の平行軸歯車減速機39を電動モータ26と組み合わせることで、低トルクかつ高回転型の小型電動モータ26を使用することが可能となる。例えば、減速比11の平行軸歯車減速機39を用いた場合、毎分一万数千回転程度の高速回転の電動モータ26を使用することにより電動モータ26を小型化することができる。これにより、コンパクトなインホイールモータ駆動装置21を実現することができ、ばね下重量を抑えて走行安定性およびNVH特性に優れた電気自動車11を得ることができる。
【0036】
本実施形態のインホイールモータ駆動装置21の全体構成は以上のとおりである。次に特徴的な構成を説明する。
【0037】
インホイールモータ駆動装置21を小型軽量化するには、平行軸歯車減速機39の1段あたりの減速比を大きくすることが有効である。ところが、平行に配置された中間軸S1、出力軸36および支持する転がり軸受44、45、48、49の配置関係から、前述したように、最終出力歯車35を備えた出力軸36と中間歯車31、32を備えた中間軸S1の軸間距離Lは、歯車側の要件、軸受側の要件および懸架装置への取付け構造を考慮して決定する必要がある。本実施形態のインホイールモータ駆動装置21の平行軸歯車減速機39では、歯車側の決定要件と軸受側の決定要件との寸法的な相互依存を解消すると共に懸架装置への取付け構造のためのスペースを確保するという新たな着想により到達したものである。
【0038】
本実施形態のインホイールモータ駆動装置21では、平行軸歯車減速機39の中間軸S1と出力軸36のアウトボード側を支持する2つの転がり軸受45、49と、中間軸S1と出力軸36のインボード側を支持する2つの転がり軸受44、48の少なくとも片側の2つの転がり軸受は、その軸受幅が軸方向に重ならない位置に配置されていることを特徴的な構成とする。
【0039】
図1に示すように、アウトボード側を支持する2つの転がり軸受45、49の軸受幅W2、W4およびインボード側を支持する2つの転がり軸受44、48の軸受幅W1、W3は軸方向に重ならない位置に配置されている。これにより、上記の2つの転がり軸受45、49間および44、48間において、径方向寸法による制約が解消されるの
で、歯車側の決定要件と軸受側の決定要件との寸法的な相互依存を解消し、設計自由度が向上することによる。例えば、アウトボード側の2つの転がり軸受45、49の軸受幅W2、W4の軸方向のずれ量(軸受端面間の距離)や転がり軸受45の装着面への組込方向等を適宜変更すれば、2つの転がり軸受45、49の外径面が極接近した構造やさらには外径面が半径方向に重なる構造も可能になる。
【0040】
このため、入力側中間歯車31、出力側中間歯車32、最終出力歯車35の歯数やピッチ円直径などの諸元が歯車側の使用条件のみに基づいて最適化でき、この結果により、中間軸S1と出力軸36の軸間距離Lが決定される。
【0041】
また、中間軸S1と出力軸36の両端部を支持する転がり軸受44、45、48、49には、はすば歯車を用いた入力側中間歯車31、出力側中間歯車32、最終出力歯車35から大きなラジアル荷重とスラスト荷重が負荷される。これらの荷重に対して転動体と軌道面の接触楕円が軌道面の肩に乗り上げないように転動体の直径や転動体のピッチ円直径を大きくする必要があるが、軸受仕様は、軸受側の使用条件のみに基づいて最適化でき、決定することができる。
【0042】
また、中間軸S1のアウトボード側を支持する転がり軸受45に対して、出力軸36のアウトボード側を支持する転がり軸受49をインボード側にずらせることにより、アタッチメント46をケーシング22にボルト71で締結固定する等の懸架装置への取付け構造のためのスペースを確保することができる。
【0043】
図1に示すように、入力側中間歯車31と出力側中間歯車32を備えた中間軸S1は、両端部を転がり軸受44、45によって支持され、最終出力歯車35を備えた出力軸36は、両端部を転がり軸受48、49によって支持されている。入力側中間歯車31は大きな直径を有し、インボード側の幅面31aに内径側凹部33が形成され、この内径側凹部33に転がり軸受44の内輪が嵌合する装着面33aが形成されている。これにより、イントボード側を支持する転がり軸受44、48の軸受幅W1、W3を軸方向に重ならない位置に配置すると共に、軸方向寸法の短縮化、入力側中間歯車31の軽量化を図っている。
【0044】
また、最終出力歯車35も大きな直径を有し、アウトボード側の幅面35aに内径側凹部47が形成され、この内径側凹部47に転がり軸受49の内輪が嵌合する装着面47aが形成されている。これにより、アウトボード側を支持する転がり軸受45、49の軸受幅W2、W4を軸方向に重ならない位置に配置すると共に、軸方向寸法の短縮化、最終出力歯車35の軽量化を図っている。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置を
図4に基づいて説明する。本実施形態では、最終出力歯車のアウトボード側の幅面には内径側凹部が形成されてなく、中間軸に駐車用ロック機構に用いる歯車が設けられた点が、第1の実施形態とは異なる。その他の構成については第1の実施形態と同様であるので、同じ機能を有する部位には同じ符号を付して要点のみ説明する。
【0046】
図4に示すように、本実施形態では、最終出力歯車35’のアウトボード側には転がり軸受49の装着面47aが設けられているが、幅面35aにはフラットな面で形成され、内径側凹部は形成されていない。しかし、本実施形態においても、中間軸S1’と出力軸36’のアウトボード側を支持する2つの転がり軸受45、49の軸受幅W2、W4およびインボード側を支持する2つの転がり軸受44、48の軸受幅W1、W3は軸方向に重ならない位置に配置されている。
【0047】
本実施形態では、最終出力歯車35’にアウトボード側の幅面に内径側凹部を形成しない構造にしたので、中間軸S1’の出力側中間歯車32のアウトボード側に生じたスペースに駐車用ロック機構に用いる歯車73が設けられている。
【0048】
本実施形態におけるアウトボード側を支持する2つの転がり軸受45、49およびインボード側を支持する2つの転がり軸受44、48の軸受幅W2、W4およびW1、W3は軸方向に重ならない位置に配置された構成による作用効果や、
図4のQ−Q線で矢視したアウトボード側から見た横断面図、
図4のR−R線で矢視したインボード側から見た横断面図、その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態において前述した内容を準用し、説明を省略する。
【0049】
以上の実施形態では、中間軸S1、S1’と出力軸36、36’のアウトボード側を支持する2つの転がり軸受45、49とインボード側を支持する2つの転がり軸受44、48の両側の2つの転がり軸受45、49および44、48について、軸受幅W2、W4およびW1、W3が軸方向に重ならない位置に配置されているものを例示したが、これに限られず、アウトボード側を支持する2つの転がり軸受45、49の軸受幅W2、W4のみを軸方向に重ならない位置に配置されたものとし、インボード側を支持する2つの転がり軸受44、48の軸受幅W1、W3については、軸方向に重なった位置に配置されたものしてもよい。
【0050】
以上の実施形態のインホイールモータ駆動装置21の減速機部Bは、2段減速の平行軸歯車減速機39を用いたものを例示したが、これに限定されるものではなく、1段減速や3段減速以上のものにしてもよい。
【0051】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。