(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786467
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】エンジン発電機
(51)【国際特許分類】
F02D 29/06 20060101AFI20201109BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20201109BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20201109BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20201109BHJP
F02P 5/15 20060101ALI20201109BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20201109BHJP
H02P 101/25 20150101ALN20201109BHJP
【FI】
F02D29/06 M
F02D43/00 301B
F02D43/00 301H
F02D43/00 301K
F02D41/04
F02D45/00
F02P5/15 B
H02P9/04 J
H02P101:25
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-229336(P2017-229336)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-100198(P2019-100198A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100166648
【弁理士】
【氏名又は名称】鎗田 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】山村 要一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 恭介
(72)【発明者】
【氏名】福本 亘
【審査官】
家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−074998(JP,A)
【文献】
特開平06−213122(JP,A)
【文献】
特開2010−048154(JP,A)
【文献】
特開2013−106447(JP,A)
【文献】
特開2009−219315(JP,A)
【文献】
特開2010−246297(JP,A)
【文献】
特開昭60−162025(JP,A)
【文献】
特開2012−125077(JP,A)
【文献】
特開2000−27631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/06
F02D 41/00 − 41/40
F02D 43/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに供給される空気の流入量を調整するスロットルと、
前記エンジンに燃料を噴射する噴射装置と、
前記エンジンにおいて前記燃料と前記空気との混合気体に点火する点火装置と、
前記エンジンにより駆動されて発電する発電機と、
前記発電機により生成された電力を外部負荷に供給する供給部と、
前記外部負荷に対して前記供給部から電力を供給することを示す予告を受け付ける受付部と、
前記受付部に前記予告が受け付けられると、前記外部負荷が前記供給部に接続される前に、前記発電機で供給できる電力が一時的に増強されるよう前記空気の流入量、前記燃料の噴射量に起因した空燃比および前記点火装置の点火時期の進角を制御することで、前記外部負荷が前記供給部に接続された後における前記エンジンの失速を予防する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記予告が受け付けられると、
前記発電機の出力が所定閾値を超えているかどうかと、
前記エンジンの温度が前記電力の一次的増強を許可可能な温度であるかどうかと、
前記スロットルの開きの余裕度が所定閾値以上かどうかと、を判定し、
前記発電機の出力が所定閾値を超えているか、前記エンジンの温度が前記電力の一次的増強を許可可能な温度でないか、または、前記制御部は前記スロットルの開きの余裕度が所定閾値以上でなければ、前記電力の一次的増強を禁止し、
前記発電機の出力が所定閾値を超えておらず、かつ、前記エンジンの温度が前記電力の一次的増強を許可可能な温度であり、かつ、前記スロットルの開きの余裕度が所定閾値以上であれば、前記発電機の出力が所定閾値を超えていなければ前記電力の一次的増強を許可する、エンジン発電機。
【請求項2】
前記予告が受け付けられると計時を開始するタイマーをさらに有し、
前記制御部は、前記予告が受け付けられると前記発電機で供給できる電力が増強されるよう前記空気の流入量を増加させ、前記燃料の噴射量に起因した空燃比をリッチにし、かつ、前記点火装置の点火時期の進角を増加させ、前記タイマーにより計時された時間が所定時間以上になると、前記空気の流入量、前記燃料の噴射量に起因した空燃比、および、前記点火装置の点火時期の進角を元の値に戻すことを特徴とする請求項1に記載のエンジン発電機。
【請求項3】
前記電力の一次的増強を禁止すべきときに前記供給部に過大な外部負荷が接続されることを警告する通知を出力する出力手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン発電機。
【請求項4】
前記受付部は前記電力の一次的増強を要求する状態と前記電力の一次的増強を解除した状態とを切り替えるスイッチを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のエンジン発電機。
【請求項5】
前記受付部は前記電力の一次的増強を要求する状態と前記電力の一次的増強を解除した状態とを切り替える指示を受信する通信手段を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のエンジン発電機。
【請求項6】
前記制御部は、前記発電機で供給できる電力を一時的に増強するために前記空燃比を12.0以上でかつ12.5以下に設定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のエンジン発電機。
【請求項7】
前記制御部は、前記発電機で供給できる電力を一時的に増強するために前記点火装置の点火時期をMBT(ミニマムアドバンスドフォーベストトルク)に設定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のエンジン発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンを有した携帯型発電機は建設現場やアウトドアレジャー、屋台で電気機器に電力を供給するために使用される。特許文献1によれば、負荷の起動時に負荷の大きさに応じた回転速度でエンジンを駆動することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−106447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、RV(レジャーヴィークル)に搭載されるエアコンに電力を供給するために携帯型発電機が利用されることもある。このようなエアコンはモータ(誘導電動機)とコンプレッサを有しているが、エアコンの起動時にモータが定格値を超える起動電力を必要とする。そのため、モータの定格値に相当する発電容量の発電機をユーザが用意しても、エアコンを起動できなかった。特許文献1のような手法では、エアコンの起動電力に対応した回転速度までエンジンの回転速度がすぐには上昇できないため、結局のところエンジンが失速してしまう。したがって、ユーザは、より大きな発電容量の発電機を買いなおさなければならず、ユーザビリティが欠けていた。そこで、本発明は、起動時において比較的に大きな電力を必要とする負荷に対しても失速せずに電力を供給できるエンジン発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、たとえば、
エンジンと、
前記エンジンに供給される空気の流入量を調整するスロットルと、
前記エンジンに燃料を噴射する噴射装置と、
前記エンジンにおいて前記燃料と前記空気との混合気体に点火する点火装置と、
前記エンジンにより駆動されて発電する発電機と、
前記発電機により生成された電力を外部負荷に供給する供給部と、
前記外部負荷に対して前記供給部から電力を供給することを示す予告を受け付ける受付部と、
前記受付部に前記予告が受け付けられると、前記外部負荷が前記供給部に接続される前に、前記発電機で供給できる電力が一時的に増強されるよう前記空気の流入量、前記燃料の噴射量に起因した空燃比および前記点火装置の点火時期の進角を制御することで、前記外部負荷が前記供給部に接続された後における前記エンジンの失速を予防する制御部と、
を有
し、
前記制御部は、前記予告が受け付けられると、
前記発電機の出力が所定閾値を超えているかどうかと、
前記エンジンの温度が前記電力の一次的増強を許可可能な温度であるかどうかと、
前記スロットルの開きの余裕度が所定閾値以上かどうかと、を判定し、
前記発電機の出力が所定閾値を超えているか、前記エンジンの温度が前記電力の一次的増強を許可可能な温度でないか、または、前記制御部は前記スロットルの開きの余裕度が所定閾値以上でなければ、前記電力の一次的増強を禁止し、
前記発電機の出力が所定閾値を超えておらず、かつ、前記エンジンの温度が前記電力の一次的増強を許可可能な温度であり、かつ、前記スロットルの開きの余裕度が所定閾値以上であれば、前記発電機の出力が所定閾値を超えていなければ前記電力の一次的増強を許可する、エンジン発電機が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、起動時において比較的に大きな電力を必要とする負荷に対しても失速せずに電力を供給できるエンジン発電機が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
●実施例1
<エンジンシステム>
図1はエンジンシステム100を示す概略図である。エンジンシステム100は電子燃料噴射制御システムと呼ばれてもよい。内燃エンジン1は4ストローク式のエンジンである。クランクケース2にはクランクシャフト19が収容されている。クランクシャフト19が回転することでコンロッド3に連結されたピストン4をシリンダ内で上下運動させる。クランクシャフト19には内燃エンジン1を始動するためのリコイルスターター5が連結されている。リコイル操作者はリコイルスターター5の把手を掴んで引っ張ることでクランクシャフト19を回転させる。クランクシャフト19には発電機6が連結されており、クランクシャフト19が回転することで発電機6のローターが回転して発電する。クランクシャフト19のクランク角はクランク角センサ7によって検知される。クランク角センサ7は、たとえば、クランクシャフト19に連結されたフライホイールに設けられたマグネットの磁気を検知するホール素子などであってもよい。クランク角センサ7の検知結果はエンジン回転速度を演算するために使用されてもよい。電源回路8は発電機6により生成された交流を、一定周波数の交流に変換するインバータや、交流を直流に変換する回路、直流電圧のレベルを変換する回路などを有している。電源回路8は発電機6により生成された電力を制御部9に供給する。なお、リコイルスターター5によってクランクシャフト19が回転すると、発電機6は制御部9が動作するのに十分な電力を発生する。制御部9はエンジン制御ユニット(ECU)であり、電源回路8から点火装置11、燃料ポンプ14、インジェクタ15およびスロットルモータ16などに供給する電力を制御する。点火装置11は、点火プラグ12に火花放電させるための点火電力を供給する。燃料タンク13は燃料を収容する容器である。燃料ポンプ14は燃料タンク13に収容されている燃料をインジェクタ15に供給するポンプである。
図1において燃料ポンプ14は燃料タンク内に設けられている。スロットルモータ16は吸気経路50を介してシリンダに流入する空気の流入量を制御するためのモータである。吸気バルブ17はクランクシャフト19の回転運動を上下運動に変換するカム等によって開閉するバルブである。吸気バルブ17は吸気行程において開き、圧縮行程、膨張行程および排気行程では基本的に閉じている。排気バルブ18はクランクシャフト19の回転運動を上下運動に変換するカム等によって開閉するバルブである。排気バルブ18は排気行程において開き、圧縮行程、膨張行程および吸気行程においては基本的に閉じている。排気から吸気への遷移をスムーズにするために、吸気バルブ17と排気バルブ18とが同時に開く期間が設けられてもよい(オーバーラップ)。O2センサ42はシリンダから排気経路51へ排出された排気ガス中における酸素濃度を検知するセンサである。温度センサ43は内燃エンジン1の温度を検知するセンサである。
【0009】
<制御部と電源回路>
図2は制御部9の機能と電源回路8の機能を示している。制御部9の機能はASICやFPGAなどのハードウエアにより実現されてもよいし、CPUがメモリに記憶されている制御プログラムを実行することで実現されてもよい。ASICは特定用途集積回路の略称である。FPGAはフィールドプラグラマブルゲートアレイの略称である。CPUは中央演算処理装置の略称である。
【0010】
設定部20は内燃エンジン1の制御パラメータを設定するユニットである。設定部20は、スロットル制御部23を通じてスロットルモータ16を制御し、空気の流入量を調整する。これにより、エンジン回転速度が制御される。設定部20は点火制御部24を通じて点火装置11を制御する。点火制御部24は、クランク角センサ7の検知結果に基づき点火時期の進角を調整する。設定部20は、温度センサ43により検知された内燃エンジン1の温度や発電機6の負荷、ワークアウトスイッチ25のオン/オフなどに応じて目標空燃比を決定してもよい。設定部20は、O2センサ42の検知結果を空燃比に変換し、この空燃比が目標空燃比となるようにポンプ制御部27を通じて燃料ポンプ14を駆動し、燃料の供給量を調整してもよい。設定部20はクランク角センサ7の検知結果に基づきエンジン行程を判別し、エンジン行程にしたがってインジェクタ制御部26を通じてインジェクタ15の噴射タイミングを制御してもよい。ワークアウトスイッチ25は、外部負荷がACアウトレット33に接続されるのに先立って、外部負荷が接続すること(大きな電力の供給を開始すること)を予告するためのスイッチである。設定部20は、ワークアウトスイッチ25により予告が受け付けられると、外部負荷が接続されても失速しないように、内燃エンジン1の回転速度をワークアウト回転速度まで予め上昇させる。ワークアウト回転速度は、通常運転時における上限値よりも高い。これにより、発電機6は一時的に出力を増強できるようになる。設定部20は、ワークアウトスイッチ25から入力されるワークアウト指示または通信回路21を通じてリモコンまたはスマートフォンなどから受信されるワークアウト指示にしたがって、内燃エンジン1をワークアウト状態に遷移させる。ワークアウト状態とは、内燃エンジン1がワークアウト回転速度で動作している状態である。タイマー28はワークアウト状態の継続時間が制限時間を超えないように継続時間を監視するためのタイマーである。これにより内燃エンジン1が保護される。判定部29は、内燃エンジン1がワークアウト状態に遷移できるかどうかを判定する。出力部37は、内燃エンジン1がワークアウト状態に遷移できないときに警告を出力する。内燃エンジン1がワークアウト状態に遷移できないときにエアコンなどが接続されてしまうと、内燃エンジン1が失速してしまうからである。なお、内燃エンジン1がワークアウト状態に遷移可能となったこと(つまり、エアコンなどを接続可能となったこと)を示す通知を出力部37が出力してもよい。これによりユーザは安心してエアコンなどの外部負荷をACアウトレット33に接続できるようになろう。
【0011】
電源回路8においてインバータ30は、発電機6により生成された交流を所定周波数の交流に変換する変換回路である。整流回路31は発電機6により生成された交流により生成された交流を整流する回路である。平滑回路32は整流回路31により生成された脈流を平滑して直流を生成する回路である。これにより、たとえば、12Vの直流電圧が生成される。制御部9は発電機6や内燃エンジン1の負荷に応じて燃料ポンプ14に供給される電力をPWM制御してもよい。DC/DCコンバータ35は直流電圧のレベルを変換する回路である。たとえば、DC/DCコンバータ35は、12Vの直流電圧を5Vや3.3Vの直流電圧に変換する。DC/DCコンバータ35は、DCアウトレット34から外部負荷に直流電圧を供給する。
【0012】
インバータ30は、ACアウトレット33を通じて外部負荷に交流電圧を供給する。とりわけ、インバータ30とACアウトレット33との間には、設定部20によりオン/オフを切り替えられるスイッチ36(オプション)が設けられていてもよい。スイッチ36は、半導体スイッチやリレー回路などであってもよい。設定部20はワークアウト指示が受け付けられたときに、ワークアウト状態に遷移可能となるまでスイッチ36をオフにし、ワークアウト状態に遷移可能となるとスイッチ36をオンに切り替えてもよい。これにより、内燃エンジン1の失速が抑制されてもよい。
【0013】
出力監視部52は発電機6の出力を監視する。たとえば、ACアウトレット33が複数のコンセントレセプタクルを有している場合、複数の外部負荷に対して電力が供給可能である。そのため、エアコンをコンセントレセプタクルに接続しようとしたときに、すでに別の外部負荷が別のコンセントレセプタクルに接続されていることも考えられる。そのため、エアコンの起動電力と、別の外部負荷に供給されている電力との合計値が、ワークアウト電力を超えていれば、発電機6はエアコンに起動電力を供給できない。そのため、判定部29は、出力監視部52の監視結果に基づいてワークアウト状態に遷移可能かどうか(エアコンに起動電力を供給できるかどうか)を判定してもよい。ここで、ワークアウト状態における発電機6の発電能力とエアコンの起動電力とはほぼ一致していることが想定されている。
【0014】
<フローチャート>
図3はワークアウト運転を説明するフローチャートである。
【0015】
S301で設定部20はワークアウト指示が受け付けられているかどうかを判定する。ワークアウトスイッチ25や通信回路21を通じてワークアウト指示が受け付けられると、設定部20はS302に進む。ワークアウト指示は、たとえば、ワークアウトスイッチ25をオフからオンに切り替えることであってもよい。
【0016】
S302で判定部29は内燃エンジン1の状態と発電機6の状態を取得する。たとえば、判定部29は温度センサ43からエンジン温度を取得してもよい。判定部29は出力監視部52から発電機6の現在出力を示す情報を取得してもよい。判定部29はスロットル制御部23を通じてスロットルモータ16の開度(スロットル開度またはスロットル余裕度)を取得してもよい。
【0017】
S303で判定部29は内燃エンジン1の状態と発電機6の状態に基づき内燃エンジン1がワークアウト可能かどうかを判定してもよい。ワークアウトが可能な条件(ワークアウト条件)は、たとえば、以下のとおりである。
・エンジン温度が温度閾値以下であること
・発電機6の現在出力が出力閾値以下であること
・スロットル余裕度が閾値以上であること
判定部29はワークアウト条件が満たされていればS304に進む。判定部29はワークアウト条件が満たされていなければS310に進む。S310で判定部29は出力部37にワークアウトが不可能であることを示す警告を出力する。たとえば、出力部37は、ワークアウトが不可能であることを示す赤色LEDを点灯してもよい。あるいは、出力部37は、ワークアウトが不可能であることを示すメッセージを表示する表示装置を有していてもよい。また、出力部37は通信回路21を通じてリモコンやスマートフォンに警告を送信してもよい。
【0018】
S304で判定部29または設定部20はタイマー28をリセットしてカウントをスタートさせる。タイマー28はワークアウト運転の継続時間を計測する。
【0019】
S305で設定部20は、メモリ22からワークアウト運転用の制御パラメータを読み出して、スロットル制御部23、点火制御部24、ポンプ制御部27などに設定する。制御パラメータは、たとえば、目標回転速度、空燃比、点火時期の進角などを含む。
【0020】
図4は回転速度、軸出力および出力トルクの関係を示している。内燃エンジン1の軸出力はトルクと回転速度の積である。たとえば、回転速度に対してトルクが一定であれば、回転速度に比例して軸出力が増加する。つまり、回転速度に比例して発電機6の出力も増加する。外部負荷に対して急激に電力を供給しようとすると、内燃エンジン1の回転速度は低下する。たとえば、アイドル回転速度で動作している内燃エンジン1は、発電機6にエアコンが接続されると、失速してしまう。そこで、発電機6にエアコンが接続される前に、制御部9は、内燃エンジン1の回転速度をワークアウト回転速度まで上昇させる。エアコンが接続されると、内燃エンジン1の回転速度はワークアウト回転速度よりも低下するが、失速を免れることができる。このように、制御部9は、内燃エンジン1の回転速度がワークアウト回転速度に到達すると、外部負荷への電力の供給を開始してもよい。
【0021】
図5は空燃比(A/F比)と軸出力との関係を示している。一般にA/F比が12.0から12.5までであるときに、ガソリンエンジンの軸出力は最も大きくなることが知られている。一方でガソリンに含まれる炭化水素と空気に含まれる酸素を反応させることで、H2OとCO2が生成される。ここで、空気と酸素とのどちらも余剰とならないA/F比(ストイキ)は14.7であることも知られている。排気ガスエミッションに重点を置く場合、A/F比は14.7に設定されることが一般的である(ストイキ制御)。また、燃料消費の抑制に重点を置く場合、A/F比が18程度まで大きくされる(リーンバーン制御)。この場合、軸出力はかなり低下するため、発電機6の負荷駆動能力も低下する。ただし、発電機6で軽負荷を駆動するにはこの状態でも十分である。ワークアウト指示が入力されると、制御部9は、ストイキ制御またはリーンバーン制御を取りやめ、A/F比を12.0以上でかつ12.5以下のいずれかの値に設定する。
図5が示すように、A/F比が12.0以上でかつ12.5以下の範囲では軸出力が最大となることが期待される。
【0022】
図6は回転速度と出力トルクとの関係を示している。最大の出力トルクが期待できる点火時期はMBT(Minimum-advanced for Best Torque)と呼ばれる。しかし、内燃エンジン1の回転の安定を優先するため、点火時期がMBTに設定されないことがほとんどである。そこで、ワークアウト指示が入力されると、設定部20は、点火時期をMBTに設定する。これにより、出力期待値が最大となる。
【0023】
S306で判定部29は内燃エンジン1の状態、発電機6の状態、および、タイマー28のカウント値(タイマー値)を取得する。
【0024】
S307で判定部29は内燃エンジン1がワークアウト運転を継続可能かどうかを判定する。ワークアウト運転を継続可能な条件(継続条件)は、たとえば、以下のとおりである。
・エンジン温度が温度閾値以下であること
・発電機6の現在出力が最大出力値以下であること
・スロットル余裕度が閾値以上であること
・タイマー28により計測されたワークアウト継続時間が制限時間以下であること
判定部29は内燃エンジン1がワークアウトを継続可能であると判定すると、S306に戻る。一方で、判定部29は内燃エンジン1がワークアウト運転を継続可能でないと判定すると、S308に進む。
【0025】
S308で設定部20は、メモリ22から通常運転用の制御パラメータを読み出して、スロットル制御部23、点火制御部24、ポンプ制御部27などに設定する。制御パラメータは、たとえば、目標回転速度、空燃比、点火時期の進角などを含む。
【0026】
<まとめ>
本発明によれば、エンジンシステム100はエンジン発電機の一例である。スロットルモータ16は内燃エンジン1に供給される空気の流入量を調整するスロットルの一例である。燃料ポンプ14およびインジェクタ15は内燃エンジン1に燃料を噴射ないしは供給する噴射装置の一例である。点火装置11は内燃エンジン1において燃料と空気との混合気体に点火する点火装置の一例である。発電機6は内燃エンジン1により駆動されて発電する発電機の一例である。ACアウトレット33は発電機6により生成された電力を外部負荷(RVエアコンなど)に供給する供給部の一例である。ワークアウトスイッチ25や通信回路21などは外部負荷に対して供給部から電力を供給することを示す予告を受け付ける受付部の一例である。このように予告は大きな電力の供給開始を示唆している。制御部9は受付部に予告が受け付けられると、発電機6で供給できる電力が一時的に増強されるよう空気の流入量、燃料の噴射量に起因した空燃比および点火装置の点火時期の進角を制御する。これより、起動時において比較的に大きな電力を必要とする負荷に対して電力を供給しつつ失速もしにくいエンジン発電機が提供される。
【0027】
図2が示すようにタイマー28は予告が受け付けられると計時を開始するタイマーの一例である。制御部9は、予告が受け付けられると発電機6で供給できる電力が増強されるよう空気の流入量を増加させ、燃料の噴射量に起因した空燃比をリッチにし、かつ、点火装置の点火時期の進角を増加させる。制御部9は、タイマー28により計時された時間が所定時間以上になると、空気の流入量、燃料の噴射量に起因した空燃比、および、点火装置の点火時期の進角を元の値(例:通常運転用のパラメータ)に戻す。エアコンなど誘導電動機を用いる外部負荷は起動時に大きな電力を必要とする。ただし、大きな電力が必要となる時間はそれほど長くはない。そこで、内燃エンジン1をワークアウト回転速度で稼働させる時間を制限することで、燃料消費を低減することができる。また、内燃エンジン1の機械的な負担も軽減されよう。
【0028】
判定部29は、予告が受け付けられると、発電機6の出力が所定閾値を超えているかどうかを判定する出力判定手段の一例である。制御部9は発電機6の出力が所定閾値を超えていれば電力の一次的増強を禁止する。一方で、制御部9は、発電機6の出力が所定閾値を超えていなければ電力の一次的増強を許可する。これにより、内燃エンジン1の失速が抑制される。エアコンなどの外部負荷を接続する前に、すでに別の外部不可に発電機6が電力を供給していることも考えられる。このような場合にはエアコンなどの外部負荷に対して十分か起動電力を供給できない可能性がある。そこで、発電機6の現在出力に応じてば電力の一次的増強を禁止または許可することで、内燃エンジン1の失速が抑制される。
【0029】
温度センサ43は内燃エンジン1の温度を検知する温度センサの一例である。判定部29は、予告が受け付けられると、内燃エンジン1の温度が電力の一次的増強を許可可能な温度であるかどうかを判定する温度判定手段の一例である。制御部9は、内燃エンジン1の温度が電力の一次的増強を許可可能な温度でなければ電力の一次的増強を禁止する。また、制御部9は、内燃エンジン1の温度が電力の一次的増強を許可可能な温度であれば電力の一次的増強を許可する。これにより、内燃エンジン1の失速が抑制される。
【0030】
判定部29はスロットルの開きの余裕度が所定閾値以上かどうかを判定するスロットル判定手段の一例である。制御部9はスロットルの開きの余裕度が所定閾値以上でなければ電力の一次的増強を禁止し、スロットルの開きの余裕度が所定閾値以上であれば電力の一次的増強を許可する。これにより、スロットルの制御性を確保しつつ、内燃エンジン1の失速が抑制される。
【0031】
出力部37は電力の一次的増強を禁止すべきときに供給部に過大な外部負荷が接続されることを警告する通知を出力する出力手段の一例である。これにより、ユーザが過大な外部負荷を接続しないようになろう。
【0032】
ワークアウトスイッチ25は電力の一次的増強を要求する状態と電力の一次的増強を解除した状態とを切り替えるスイッチの一例である。通信回路21は電力の一次的増強を要求する状態と電力の一次的増強を解除した状態とを切り替える指示を受信する通信手段の一例である。
【0033】
制御部9は、発電機6で供給できる電力を一時的に増強するために空燃比を12.0以上でかつ12.5以下に設定してもよい。これは、
図5が示すように12.0以上でかつ12.5以下の空燃比では軸出力が最大となることが期待されるからである。
【0034】
制御部9は、発電機6で供給できる電力を一時的に増強するために点火装置11の点火時期をMBT(ミニマムアドバンスドフォーベストトルク)に設定してもよい。MBTでは出力トルクが最大となることが期待されるからである。
【符号の説明】
【0035】
100...エンジンシステム、1...内燃エンジン、6...発電機、5...リコイルスターター、9a、9b...制御部、15...インジェクタ、14...燃料ポンプ、11...点火装置、7...クランク角センサ、41...COセンサ