【実施例】
【0068】
[実施例1:ナノファイバーマット/膜の調製]
電界紡糸ナイロン−6ナノファイバー複合パルボウイルス保持マットを、PCT公開特許出願番号WO2014093345(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたように製造し、NF UF(即ち、ナノファイバーUF膜)と称す。二層複合ベースおよび活性保持層ナノファイバーマットを溶液から平滑なHirose不織基材(廣瀬製紙、日本国高知県土佐市、部品番号#HOP−60HCF)上に電界紡糸させるために、商標Ultramid B24(BASF Corp.、米国ニュージャージ州フローラム・パーク)のナイロン−6を使用する。ベース層は、酢酸:ギ酸混合物(2:1)中の10.3%w/wのナイロン−6から電界紡糸され、平均繊維直径70nmで約25から30ミクロンの厚さである。10nmの平均繊維直径を有する活性保持層はギ酸:水:2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE):ギ酸アンモニウム混合物(20.5:20.5:10.3:40:0.7)中の8.0%w/wのナイロン−6の溶液から電界紡糸され、厚さは数ミクロンと推定される。電界紡糸ナノファイバーUF膜を、60Hz、140mmの距離、10°から16°の露点の間の制御された湿度、60kVの電圧、2cm/分のライン速度で3つの回転電極を用いてElmarco(チェコ共和国リベレツ)からのパイロット規模の電界紡糸装置で製造する。
【0069】
[実施例2:ポリエーテルスルホン限外濾過膜の調製]
ポリエーテルスルホン限外濾過膜(PES UF)を、カスタムメンブレンキャスティング装置(EMD Millipore、米国ニューハンプシャー州ジェフリー)を使用してポリオレフィン不織基材上に溶液浸漬キャスティングを用いて特注する。
【0070】
一般に、溶液浸漬法は、2つ以上の成分の均質なポリマー溶液を、硬質膜構造を形成する固体のポリマー富化相と、膜孔を形成する液体のポリマー不足相とを有する2相系に変換することを含む(例えば、Membranes and Membrane Processes、1986 Springer US、Drioli、Enrico;Nakagaki、Masayuki。Preparation of Microporous Membranes by Phase Inversion Processes、Strathmann、H.、p115−135を参照)。
【0071】
[実施例3:膜特性の検討]
2つの膜、NF UFおよびPES UFの特性を、以下に記載される様々な技術を用いて検討する。
【0072】
1. SEM画像および繊維直径
電界紡糸されたナイロン−6ナノファイバー限外濾過膜(NF UF)およびポリエーテルスルホン限外濾過膜(PES UF)の代表的な走査型電子顕微鏡写真(SEM画像)をそれぞれ
図1および2に示す。
図1では、試料をディスクから切断し、両面導電性炭素テープでアルミニウムSEMスタブ上に載せる。次いで、それらをCressington 208HR高分解能スパッターコーターを用いて5nmのイリジウムでコーティングする。試料を、5kVでFEI Quanta 200F電界放出走査型電子顕微鏡(FESEM)で画像化する。この画像は、ナイロン−6ナノファイバーが、500ナノメートルのスケールバーに対して約10ナノメートルの程度の直径を有するポリマー繊維のランダムに重ねられた不織マットであることを示す。電界紡糸されたナイロンNF UFの多孔性は、重なり合う繊維間の空間に起因する。
【0073】
図2は、溶液相反転法を使用して作製されたポリエーテルスルホン限外濾過膜(PES UF)の多孔性を示す。試料を膜ディスクから切断し、次いで、両面導電性炭素テープでアルミニウムSEMスタブ上に載せる。次いで、それらをCressington 208HR高分解能スパッターコーターを用いて5nmのイリジウムでコーティングする。試料画像を、5kVでFEI Quanta 200F電界放出走査電子顕微鏡(FESEM)で撮影する。
【0074】
図2のPES UFと電界紡糸されたナイロン−6 NF UFの
図1とを比較すると、それらが3次元構造または形態に関してどのように劇的に異なるかが示される。
【0075】
図3に示すように、繊維半径を、Image Pro Plus v6.0内のカスタム開発ユークリッド距離マップ(EDM)ルーチンを利用して測定する。各ナノファイバー層の試料の平均繊維直径を計算し、SEM用の試料調製中に適用された5nmの金属コーティングを差し引くことによって、最終直径を決定する。電界紡糸ナイロン−6ナノファイバー限外濾過膜(NF UF)の平均繊維直径は平均半径の2倍であり、次にSEM用の試料調製物の金属コーティングの5ナノメートルを差し引く。
【0076】
2.平均泡立ち点および透水性
この実験は、NF UFおよびPES UF膜について測定された平均泡立ち点および透水性の測定を記載する。本明細書に示され、
図4に示されるように、NF UF膜試料は、ベンチマークのために予め選別されたPES UF膜の4つの異なる試料と同様のまたはより高い平均フロー泡立ち点でより高い透水性を示す。
【0077】
平均流量泡立ち点を、ASTM E1294−89「Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter」に従って測定する。特注の毛細管流ポロシメータを使用するASTM F316による自動泡立ち点法は、原理上はPorous Materials、Inc.(米国ニューヨーク州イサカ)の市販の装置に類似している。ポリオレフィン不織基材を有する、直径25mmにダイカットされたナノファイバーUF(NF UF)膜試料を、(3M、米国ミネソタ州セントポール)から市販されているペルフルオロヘキサンFluorinert(商標)FC−72(10ダイン/cm)で湿らせた。各試料をホルダーに入れ、空気の差圧を加え、流体を試料から除去する。湿った流れが乾燥流れの半分(湿潤溶媒のない流れ)に等しい差圧を使用し、供給されたソフトウェアを用いて平均流量細孔径を計算する。
【0078】
ポリエーテルスルホンUF(PES UF)膜の平均流量泡立ち点を、2−プロパノールを用いて測定する。
図4に示すように、NF UF膜平均流量泡立ち点を、PES UF試料との比較のために2−プロパノールの表面張力(21.4ダイン/cm)に調整する。
図4は、1000kDaのデキストラン篩わけR90カットオフを有する電界紡糸ナイロン−6 NF UFの4つの試料が、1200kDaのデキストラン篩分けR90カットオフを有するPES UF膜よりも大きな透水性およびより高い平均流量泡立ち点を有することを示す。
【0079】
13.4cm
2のフィルター面積および3psiで0.5mLのホールドアップ体積を有する50mL攪拌セル(Model 8050、EMD Millipore、マサチューセッツ州ビレリカ)中の直径44.5mmの膜ディスクを用いて、LMH/psiで表される透水性を測定する。ポリオレフィン不織基材を有するダイカットしたNF UF膜を、第2のポリオレフィン不織基材上に乾燥状態で置き、撹拌セルに固定する。PES UF膜をエタノールで湿らせ、水に交換し、第2のポリオレフィン不織布ディスク上の攪拌セルに固定する。試料を水で濡らし、5psiで2×50mLの水を用いてフラッシュして全ての空気を除去する。
【0080】
3. デキストランR90カットオフ
この実験では、
図5に示すように、デキストラン排除測定値を使用して、NF UFおよびPES UF膜のデキストランR90カットオフを決定する。NF UF試料は、1000および1500kDaのデキストランR90カットオフを含んでいた。4つの異なるPES UF膜試料は、800、1200、1700および4800kDaのデキストランR90カットオフを有する。
図5に示すように、この4つのPES UF膜は、高分子の限外濾過のための業界では一般的であり、NF UF膜試料のものと同様のデキストラン保持曲線を示す。
図5は、1000kDaのデキストラン篩分けR90カットオフを有する電界紡糸されたナイロン−6 NF UF膜の4つの試料が、1200kDaのデキストラン篩分けR90カットオフを有するPES UF膜の重複試料に対して、x軸およびy軸の両方でおよび傾きに関して同様のデキストラン篩分け曲線を有することを示す。
【0081】
NF UF膜は、
図6に示されるように、デキストランR90および平均流量泡立ち点においてPES UF膜に類似しており、
図7に示すように、同様のデキストランR90でより高い透水性を示す。
【0082】
図6は、1000kDaのデキストラン篩分けR90カットオフを有する電界紡糸ナイロン−6NF UF膜試料の4つの試料が、1200kDaのデキストラン篩分けR90カットオッフを有するPES UF膜試料より低いデキストラン篩分けR90カットオフおよびより高い平均流量泡立ち点を有することを示す。電界紡糸ナイロン−6ナノファイバー限外濾過膜(NF UF)は、より高い泡立ち点をおよびより低いデキストラン篩分けR90カットオフを提供する、より小さい平均細孔径を有する。
【0083】
図7は、1000kDaのデキストラン篩分けR90カットオフを有する電界紡糸ナイロン−6 NF UF膜試料の4つの試料が、1200kDaというより高いデキストラン篩分けR90カットオフを有するPES UF膜試料より大きな透水性およびより低いデキストラン篩分けR90を有することを示す。
【0084】
NF UF膜およびPES UF膜のデキストラン分子量篩分け測定を、カスタムデキストラン保持試験を用いて行う。全ての膜試料を攪拌セル内で調製し、実施例3−2に記載のように予めフラッシュする。供給物試料および透過液試料の分析的サイズ排除クロマトグラフィーを用いてMW排除および篩分け曲線を生成し、そこから各膜についてデキストランR90カットオフを決定する。
【0085】
pH7.0の50mMリン酸塩緩衝液中の0.75%w/wデキストランの混合デキストラン供給物を用いてNF UF膜またはPES UF膜にチャレンジする。デキストランはPharmacosmos A/S(Roervangsvej 30、DK−4300、デンマークホルベック)から購入する。使用したデキストランの平均分子量(Mw)は以下の通りである:1,000Da(デキストランT1、5510 0001 4000);3,500Da(デキストランT3.5、5510 0003 4007);10,000Da(デキストランT10、5510 0010 4007);40,000Da(デキストランT40、5510 0040 4007);70,000Da(デキストランT70、5510 0070 4007);500,000Da(デキストランT500、5510 0500 4006);および2,000,000Da(デキストランT2000、5510 2000 4007)。
【0086】
混合されたデキストラン供給物40mLを撹拌セルに注ぐ。標準的なマグネチックスターラーバーをセルに入れ、マグネチックスターラープレート上で320RPMで攪拌するように設定する。蠕動ポンプに取り付けられたPVCチューブ1/16”ID(フィッシャー科学カタログ番号14−190−118)を0.22mL/分の一定流量で液体を吸引するために透過液側に接続する。10LMHの一定の流束の下で、最初の2から3mlを捨て、約1時間再循環させて平衡にし、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いるさらなる分析のために透過液試料を収集する。
【0087】
デキストランの分析的サイズ排除クロマトグラフィーを、Phenomenex Shodex OH pak13μmSB−806M HQゲル濾過カラム(品番:SB−806MHQ、カラムサイズ:300×8mm、Phenomenex Inc.、カナダ・トーランス)を使用して、Waters 2695分離モジュールおよびWaters 2414屈折率検出器を用いて実施する。アイソクラチック移動相は、pH7.0の50mMのリン酸カリウムと、10mg/Lアジ化ナトリウムから構成される。カラムを35℃の温度で20分間1.0mL/分の流速で運転する。
【0088】
保持時間から分子量を較正するために使用される分子量デキストラン標準は、Sigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、グルコース、MW=180Da(#158968)、マルトヘプタオース、MW=1,153Da(#284017)およびAmerican Polymer Standards(オハイオ州メンター)デキストラン:Mp=2,800Da(DXT3K)、Mp=6,300Da(DXT7K)、Mp=20,500Da(DXT25K)、Mp=43,000Da(DXT47K)、Mp=85,000Da(DXT97K)、Mp=245,000Da(DXT325K)、Mp=350,000Da(DXT550K)、Mp=1,465,000Da(DXT2100K)、Mp=6,300,000Da(DXT5900K)およびMp=9,110,000Da(DXT8035K)(Mpは平均ピーク分子量)から購入する。
【0089】
[実施例4:カスタム供給物を使用したTFF(UF/DF)膜の適用比較]
以下の表1に要約されるカスタムデキストラン供給物を用いるTFF(UF/DF)モードでの膜比較のために、R90=1000kDaを有するナノファイバーUFおよびR90=1200kDaを有するPES UF膜を選択する。上記の膜は、NF UFおよびPES UFと称され、
図4から7に実証される物理的特性を有する。
【0090】
電界紡糸NF UF膜は、接線流濾過(TEF)モードにおいて、溶液浸漬キャストPES UF膜と同等または改善された性能を有する。デキストラン濃度および低分子量除去ための限外濾過モードおよび透析濾過モードは、表1に要約されるように、ナノファイバー膜が収率、選択率および濾過流束に関して限外濾過膜と同様に機能することを示した。
【0091】
【表1】
【0092】
輸送および選択率、透析濾過ならびに限外濾過のために、膜をTFFモードで二重に並べて検査する。表1および残りの実施例は実験比較を要約する。流束対TMP実験での保持液および透過液のサンプリングによって、輸送および選択率を、流束対TMP、物質移行対TMPおよび選択率対流束により、測定する。
【0093】
結合型多糖体ワクチン産業で使用される濃縮工程および分離工程をシミュレートするために、NF UFおよびPES UF TFF(UF/DF)膜評価用に3つのカスタムデキストラン供給物を調製する。
【0094】
使用したデキストランはPharmacosmos A/S(Roervangsvej 30、DK−4300、Holbaek、デンマーク)から市販されており、1,950,000および112,000Daの平均分子量(Mw)を有する110,000Daデキストラン(T110、5510 0110 9006)および2,000,000Dデキストラン(T2000、5510 2000 9007)である。3桁を包含する3つの供給物A、B、およびCは以下のようであり、即ち、表2に示すpH7.0の50mMリン酸塩緩衝液中の0.0385;0.844;および8.44%w/wの総デキストラン質量%である。表2は、各Pharmacosmosのストック番号、質量比、および20℃での粘度を詳述する。
【0095】
【表2】
【0096】
図8に示すように、0.0385%w/wのデキストランを用いる供給物Aのゲル浸透クロマトグラム、および
図9に示すように、0.844%および8.44%w/wのデキストランを用いる供給物BおよびCのゲル浸透クロマトグラム(供給物Cは10×供給物Bであるか、または緩衝液で1:10に希釈した場合、
図9に示すクロマトグラムをもたらす)に見られるように、3つの供給物は、10,000から10,000,000Daの3桁の範囲の非常に多分散性の分子量分布を有する。
【0097】
以下の比較限外濾過および透析濾過の例のために、3つの分子量7,250,000Da(D7250)、2,000,000Da(D2000)および110,000Da(D110)を選択する。
【0098】
図8のクロマトグラムは、供給物Aが10,000から10,000,000ダルトンの3桁を包含する非常に多分散性の分子量分布を有することを示す。表3における7,250,000Da(D7250)、2,000,000Da(D2000)、および110,000Da(D110)の3つの分子量のパーセンテージは、各MWのピーク面積/総面積から得られる。
【0099】
図9のクロマトグラムは、供給物Bが10,000から10,000,000ダルトンの3桁を包含する非常に多分散性の分子量分布を有することを示す。表3における7,250,000Da(D7250)、2,000,000Da(D2000)、および110,000Da(D110)の3つの分子量のパーセンテージは、各MWのピーク面積/総面積から得られる。表2および表3の供給物Cは、10×供給物Bであるか、または緩衝液で1:10に希釈した場合、
図9と同一である。
【0100】
表3は、3つの供給物の各々において7,250,000Da(D7250)、2,000,000Da(D2000)、および110,000Da(D110)のMWを有するデキストランの実際のピーク高さパーセンテージを要約したものである。表3に要約するように、供給物中の7250,000Da(D7250)、2,000,000Da(D2000)、および110,000Da(D110)のピーク高さのパーセンテージおよび0.0385、0.844および8.44%の総デキストラン質量パーセントに基づいて、D7250、D2000 、およびD110の実際のパーセンテージを計算する。
【0101】
【表3】
【0102】
続く実験では、濃度、収率および選択率を、全て、
図8および
図9によって示されるように、各MWでの実際のピーク高さ対供給物クロマトグラムに基づいて、およびD7250、D2000およびD110の検査下で3つの選択された分子量についての表3のパーセンテージに基づいて計算する。
【0103】
GPC屈折率検出器のスケール上にとどまるために必要に応じて試料を希釈し、希釈に必要な場合調整する。実施例9に詳述するように、限外濾過濃縮実験における各MWの濃度を計算するために、D7250、D2000およびD110の濃度式を作成するために、供給物AおよびBを希釈したものを使用する。
【0104】
[実施例5.供給物流束対TMPの測定]
表2および3に示すカスタムデキストラン供給物A、B、およびCを使用して、平均流束対膜間圧(TMP)曲線を生成する。供給物A、BおよびCのそれぞれについて
図10、11および12は、NF UF膜が、同様のデキストランR90カットオフを有するPES UF膜よりもTMPに対して高い平均デキストラン供給物流束を有することを実証している。
図10、11、12に示すように、供給物A、B、およびCについての平均流束はLMHで表される3桁を包含し、
図12に示すように、NF UFおよびPES UF膜の両方の場合高濃度供給物Cについては物質移行分極がある。
【0105】
図10、11および12に示すように、NF UF膜は、TMPに対してより高い平均デキストラン供給物流束および
図7に示すように、より高い水流束の両方を有していた。
【0106】
実験は、実施例3に記載したように撹拌セル内で行う。供給物を320RPMで撹拌し、ハウス空気を用いて加圧する。GPC分析のために、供給物および透過液試料を各圧力で収集する。
【0107】
図10は、1000kDaのデキストラン篩分けR90カットオフを有する電界紡糸ナイロン−6 NF UF膜が、1200kDaのより高いデキストラン篩分けR90カットオフを有するPES UF膜と比較して、同じTMPでより大きい供給物A流束を有することを示す。
【0108】
図11は、1000kDaのデキストラン篩分けR90カットオフを有する電界紡糸ナイロン−6 NF UF膜が、1200kDaのより高いデキストラン篩分けR90カットオフを有するPES UF膜よりもTMPに対して大きい供給物B流束を有することを示す。
【0109】
図12は、1000kDaのデキストラン篩分けR90カットオフを有する電界紡糸ナイロン−6 NF UF膜が、1200kDaのより高いデキストラン篩分けR90カットオフを有するPES UF膜よりもTMPに対して大きい供給物C流束を有することを示す。
【0110】
[実施例6.物質移行対TMPの測定]
デキストラン質量/濃度輸送を、GPC分析のために各圧力で実施例5の供給物および透過液試料を収集することによって測定する。
図13および14は、NF UFおよびPES UF膜試料の2つの試料のうちの1つについて、供給物Aのゲル浸透クロマトグラムを示す。D7250、D2000およびD110の輸送を比C
P/C
Fによって決定し、ここで、C
PおよびC
Fは、各圧力における供給物および透過液中の濃度である。
【0111】
図13および14は、いかにして供給物Aの濃度が、流束対TMP実験を通してわずかに上昇するかを示す。
【0112】
図13において、クロマトグラムのオーバーレイは、いかにして、透過液中の供給物Aの濃度が最初はより高く、次いで流束対TMP実験を通して再び増加する前にわずかに減少するかを示し、このことは表面濃度分極平衡を形成できる前に、膜がより多くのD7250、D2000およびD110を最初に通すかを示す。
【0113】
図14において、クロマトグラムのオーバーレイは、いかにして、透過液中の供給物Aの濃度が最初はより高く、次いで流束対TMP実験を通して再び増加する前にわずかに減少するかを示し、このことは表面濃度分極平衡を形成できる前に、膜がより多くのD7250、D2000およびD110を最初に通すかを示す。
【0114】
図15の場合、D7250、D2000およびD110の輸送は、比C
P/C
Fであり、C
PおよびC
Fは、各TMP(psi)における供給物および透過液中の濃度である。
図15は、PES UF膜に対して電界紡糸ナイロン−6 NF UFについて、供給物A中のデキストランの平均質量/濃度輸送がTMPに対しより大きいことを示す。
【0115】
図16の場合、D7250、D2000およびD110の輸送は、比C
P/C
Fであり、C
PおよびC
Fは、各TMP(psi)における供給物および透過液中の濃度である。
図16は、PES UF膜よりも電界紡糸ナイロン−6 NF UFについて、供給物B中のデキストランの平均質量/濃度輸送がTMPに対しより大きいことを示す。
【0116】
要約すると、観察されるように、(
図13に示すように)NF UF膜のデキストランD7250、D2000、およびD110の物質移行または濃度通過は、(
図14に示すように)PES UF膜よりも高い。平均C
P/C
Fを供給物Aについて計算し、(
図15に示されるように)TMPに対してプロットする。表面濃度分極平衡を形成できる前に、(
図13、14および15に示すように)NF UFおよびPES UF膜の両方がより多くのD7250、D2000、およびD110を最初に通す。供給物B中のデキストランの平均質量/濃度輸送は、(
図16に示すように)PES UF膜と比べてNF UF膜に対する方が大きい。
【0117】
[実施例7.選択率対流束の測定]
D7250、D2000およびD110についての実施例6の物質移行関係C
P/C
Fを用いて、上記の流束対TMPのデータから選択率係数対流束を作成する。流束に対してD110/D2000およびD110/D7250の平均通過選択率を決定するために、式[(C
P/C
F)
D110/(C
P/C
F)
D2000または
D7250]を用いて選択率係数を決定する。
【0118】
供給物AおよびBを用いたNF UFおよびPES UF膜についての平均選択率係数対流束をそれぞれ
図17および18に示す。観察されたように、PES UF膜は、TMP/Fluxの増加に伴ってNF UF膜よりも高い選択率係数を有するが、供給物AおよびBを用いるとNF UF膜およびPES UF膜の両方で、同様の流束において平均選択率は1に近づく(それぞれ
図17および
図18に示される)。両方の膜は、低い一定流束において最良の選択率を有する。50mL攪拌セル中の0.5mLのホールドアップ体積により、TMPおよび流束に対する実際のデータのいくらかの希釈化およびシフトが引き起こされる。
【0119】
図17は、電界紡糸ナイロン−6 NF UFおよびPES UF膜が、平均流束(LMH)に対して、供給物Aを用いるD110/D2000およびD110/D7250の同様の選択率を有し、両者が1より大きく、同様の流束で1に近づくことを示す。
【0120】
図18は、電界紡糸ナイロン−6 NF UFおよびPES UF膜が、平均流束(LMH)に対して、供給物Bを用いるD110/D2000およびD110/D7250の同様の選択率を有し、両者が1より大きく、同様の流束で1に近づくことを示す。
【0121】
[実施例8.一定流束における透析濾過の測定]
NF UFおよびPES UF膜を供給物Aを用いて比較するために、2つの定容透析濾過実験を2回行う。上記のようにして、膜試料を含む攪拌セルを調製する。30または60LMH(0.68または1.36mL/分)に相当する適合する流速を有する蠕動ポンプを使用して、透過液から引き出し、保持液に緩衝液を供給する。GPCによる分析のために、保持液および透過液試料を各40mLのダイアボリュームで採取する。30LMHの実験を640RPMで、60LMHの実験を320RPMで撹拌する。
【0122】
図19および
図20は、30LMHおよび640RPM実験の実行からのNF UFおよびPES UF膜試料の複製品の1つについて、1から6までの各ダイアボリュームにおける保持液および透過液試料のゲル浸透クロマトグラムを示す。
図21および
図22に示すように、NF UFおよびPES UF膜の両方は、より高いMWのデキストラン(D7250、D2000)を選択的に保持し、より低いMWのデキストラン(D110)を透過させることにおいて同様に機能する。
【0123】
図19のクロマトグラムのオーバーレイは、いかにして供給物Aの濃度が最初により高く、次いでダイアボリュームの増加に伴い、保持液のMW分布がより高いMWに向かって左にシフトする一方、透過液がより低いMWに向かって右にシフトするかを示す。
【0124】
図20のクロマトグラムのオーバーレイは、いかにして供給物Aの濃度が最初により高く、次いでダイアボリュームの増加に伴い、保持液のMW分布がより高いMWに向かって左にシフトする一方、透過液がより低いMWに向かって右にシフトするかを示す。
【0125】
30LMHおよび640RPM(
図21に示される)ならびに60LMHおよび320RPM(
図23に示される)での透析濾過について、平均保持液C/C
o対供給物Aのダイアボリュームを計算する。両方の透析濾過条件下で、NF UFおよびPES UF膜は、D7250、D2000およびD110について、同様の平均保持液収率対ダイアボリュームを有する(
図21および23に示す)。
【0126】
図21は、NF UFおよびPES UF膜が、D7250、D2000およびD110について、ダイアボリュームに対して同様の平均保持液収率を有することを示す。
【0127】
図22は、NF UFおよびPES UF膜が、ダイアボリュームに対してD7250、D2000およびD110についての同様の平均保持液選択率を有することを示す。
【0128】
図23は、NF UFおよびPES UF膜が、D7250、D2000およびD110について、ダイアボリュームに対して同様の平均保持液収率を有することを示す。両方の膜は、
図21で観察されたよりも、より高い流束およびより低い攪拌で、同様のより低い保持率を有する。
【0129】
図21および23のNF UFおよびPES UF膜の平均保持液選択率を、D7250/D110=(C/C
o)
D7250/(C/C
o)
D110およびD2000/D110=(C/C
o)
D2000/(C/C
o)
D110を使用して計算し、(
図22および
図24に示すように)ダイアボリュームに対してプロットする。
【0130】
図24は、NF UFおよびPES UF膜が、D7250/D110およびD2000/D110に対して同様の平均保持液選択率対ダイアボリュームを有することを示す。両方の膜は、
図22で観察されたよりも、より高い流束およびより低い攪拌で、同様のより低い平均保持液選択率を有する。
【0131】
平均D7250/D110およびD2000/D110は、640RPMでの30LMHおよび320RPMでの60LMHの両方で、NF UFおよびPES UF膜の両方について非常に類似している。両方の膜は、より高い流束およびより低い攪拌において、(
図23に示されるように)同様の低い保持率および(
図24に示されるように)選択率を有する。
【0132】
[実施例9.一定のTMPでの限外濾過]
一定のTMPならびに供給物A、BおよびC(表1に要約する)を使用する撹拌の異なる条件においてNF UFおよびPES UF膜を比較するために、5つの限外濾過濃縮実験を2回実施する。(
図25、26、27に示すように)1つの条件の下での供給物A、(
図28および29に示すように)2つの条件の下での供給物B、ならびに(
図30、31、32に示すように)2つの条件の下での供給物C。
【0133】
5つのUF濃縮の実行は全て、NF UFおよびPES UF膜が同様の平均収率および選択率を提供する一方で、NF UF膜は全ての供給物および条件についてUF濃縮係数より一貫してより高い平均流束を有することを示す。
【0134】
実施例3−2に記載されているように、各条件について膜試料を有する撹拌セルを二重に調製する。流束を決定し、濃縮係数の後をたどるために、経時的な透過液の体積を測定する。上記のように、GPC分析のために各濃縮係数で保持液試料を採取して、D7250、D2000およびD110の収率および選択率を決定する。
【0135】
0.0385および0.844%w/wの総デキストラン質量パーセント(表2に記載)を有する供給物AおよびBを、最初の50mLの体積から2、4および8倍に濃縮する。供給物Aを、一定のTMP=0.5psiおよび600RPMで濃縮する(
図25、26、27に示す)。
図25は、NF UF膜が、PES UF膜と比較してより高い初期平均供給物流束を有し、2、4および8倍濃縮の実行全体にわたってそれを維持することを示す。
図26は、2、4、8倍の限外濾過濃縮の実行中のC/C
theo対濃縮係数としてD7250、D2000およびD110に対する同様の平均収率および選択率を示す。
図27は、NF UFおよびPES UF膜が同様の平均収率および選択率を有する2、4、8倍(左から右)の限外濾過濃縮の間の平均C/C
theo対平均流束を示す一方、2、4および8倍の濃縮の実行の間にNF UF膜は一貫してより高い平均流束を有することを示す。
【0136】
供給物Bを(
図28に示すように)5psiおよび600RPM、ならびに(
図29に示すように)7psiおよび600RPMで濃縮する。より低い圧力(
図28対29を参照)であるが、(
図29に示すように)7psiで予想されるようにわずかに高い平均流束でNF UFおよびPES NF膜の両方でより良好な収率および選択率が観察される。
【0137】
8.44%w/wの総デキストラン質量パーセント(表2に記載)を有する供給物Cを、40mLの初期体積から2倍および3倍に濃縮する。供給物Cを(
図30および31に示すように)5psiおよび300RPMならびに(
図32に示すように)7psiおよび300RPMで濃縮する。供給物Cの場合、2倍濃縮後、圧力を12psiに上昇させ、NF UFおよびPES UF膜については全ての場合において流束および収率が低下することが観察される。
図30は、5psiでNF UFおよびPES UF膜の両方について流束の減少を示す。収率および選択率は、NF UFおよびPES UF膜について同様であるが、NF UF膜は、(
図31および32に示すように)2および3倍濃縮の実行中に一貫してより高い平均流束を有する。
【0138】
[実施例10:NF UF膜を用いた生物学的物質の精製のためにTFFシステム]
代表的な例では、500KDaより大きい分子量を有する目的の生物学的物質を精製するために、NF UF膜をTFFモードで使用する。そのような生物学的物質の例には、結合型多糖体ワクチン、他の種類のワクチン、ウイルス様粒子、およびMW>500,000ダルトンを有するタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
NF UF膜を使用して目的の生物学的物質を精製するために使用されるTFFシステムの概略図を
図33に示す。目的の生物学的物質は、供給物保持タンクまたは容器中に存在する。使用される典型的な装置は、追加の緩衝液タンクまたは容器、供給物ポンプ、供給物バルブ、供給物圧力計、ホルダー付きの平板カセットまたは付属品付きのスパイラル型装置等のNF UF膜を含むTFFモジュール、保持液圧力計、圧力を制御するための保持液バルブ、および透過液容器である。供給物が限外濾過によって濃縮されている場合、保持液を供給タンクに戻し、透析濾過が行われている場合、別の容器が保持液を集め、透析濾過緩衝液容器が供給物ポンプに配管される。
【0140】
本明細書は、本明細書中に引用した参考文献の教示に照らして最も完全に理解され、それらは参照により本明細書に援用される。本明細書の実施形態は、実施形態の例示を提供するものであり、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者(熟練者)は、多くの他の実施形態が本開示に包含されることを容易に認識する。全ての刊行物および参考資料は、その全体が参照により援用される。参照により援用される資料が本明細書と矛盾するか、または食い違う範囲で、本明細書はそのような資料に優先する。本明細書における全ての参考文献の引用は、そのような参考文献が従来技術であることを認めるものではない。
【0141】
他に示されない限り、本明細書(特許請求の範囲を含む)で使用される成分の量、細胞培養、処理条件等を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。別段の支持がない限り、数値パラメータは近似値であり、本明細書に開示された実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る。特に断りのない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の要素の全てを指すと理解されるべきである。当業者であれば、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0142】
当業者には明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された実施形態の多くの修正および変化を行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、単なる例示として提供され、決して限定的であることを意味しない。本明細書および実施例は、例示のみとして考慮され、本開示の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。