【実施例】
【0077】
(実施例1)
ε−カプロラクトンとグリコリドとのランダムコポリマーの合成(対照)
撹拌装置を備えた従来の38リットル(10ガロン)のステンレス鋼製オイルジャケット付き反応器を使用して、9,153gのε−カプロラクトン及び15,848gのグリコリドを、25mLのジエチレングリコールと14.6mLのオクタン酸スズの0.33Mトルエン溶液と共に加えた。初期投入後、回転数8RPMで下向きに撹拌しながらパージサイクルを開始した。反応器を0.1kPa(1Torr)未満の圧力に真空排気した後、窒素ガスを導入した。サイクルを更に2回繰り返し、確実に乾燥雰囲気とした。最後の窒素パージの終了時に、圧力を1気圧を少し上回るように調節した。オイルコントローラを190℃に設定することにより容器を加熱した。バッチ温度が140℃に達した時点で攪拌装置の回転を上向きに切り替え、速度を15RPMに上げた。190℃で2時間反応させた後、攪拌速度を8RPMに下げた。オイル温度が190℃に達した時点から反応を18時間継続し、その後、温度を215℃に上げた。放出の前に反応をこの温度で更に2.5時間進行させた。
【0078】
最終反応期間の終了時に、撹拌装置の速度を下向きで5RPMまで下げ、ポリマーを反応容器から好適な容器に放出した。冷却後、ポリマーを容器から取り出し、約−20℃に設定されたフリーザー内に最低でも24時間置いた。この後、ポリマーをフリーザーから取り出し、分粒篩を備えたCumberland造粒機に入れてポリマー粒子の粒径を約0.96cm(3/8インチ)まで小径化した。次いで、粉砕ポリマーをPatterson−Kelleyタンブル乾燥機に入れて残留モノマーをすべて除去した。
【0079】
Patterson−Kelleyタンブル乾燥機を閉じ、圧力を27Pa(200mTorr)未満に下げた。圧力が27Pa(200mTorr)よりも低くなった時点で、乾燥機の回転を10RPMの回転速度で開始し、加熱せずに16時間回転させた。16時間後にオイルジャケット温度を110℃に設定し、この温度で24時間乾燥した。最後の加熱期間の終了時に、回転及び真空を維持しながらバッチを室温に冷却した。容器を窒素で加圧し、放出弁を開き、ポリマー粒子を長期保管用の待機容器中に下降させることによってポリマーを乾燥機から放出させた。長期保管容器は、樹脂が真空下で保管されるように気密状態で、排気ができるような弁が取り付けられたものとした。
【0080】
(実施例2)
本発明のポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)セグメント化ブロックコポリマーの合成
撹拌装置を備えた従来の8リットル(2ガロン)のステンレス鋼製オイルジャケット付き反応器を使用して、2,376gのε−カプロラクトン及び所望のグラム数のグリコリド(表1を参照)を、3.95mLのジエチレングリコールと3.50mLのオクタン酸スズの0.33Mトルエン溶液と共に加えた。初期投入後、回転数15RPMで下向きに撹拌しながらパージサイクルを開始した。反応器を0.1kPa(1Torr)未満の圧力に真空排気した後、窒素ガスを導入した。サイクルを更に2回繰り返し、確実に乾燥雰囲気とした。最後の窒素パージの終了時に、圧力を1気圧を少し上回るように調節した。オイルコントローラを198℃に設定することにより容器を加熱した。バッチ温度が135℃に達した時点で攪拌装置の回転を上向きに切り替え、速度を25RPMに上げた。バッチが198℃に達した時点で温度を205℃に上げ、第1のモノマー添加を行った(詳細は表1を参照)。攪拌装置の回転を10分間下向きに切り替えた後、回転を上向きに戻して温度を198℃に下げた。第1の添加の1時間後、同じ方法にしたがって第2の添加を行った。2時間の反応後、攪拌装置の速度を20rpmに下げ、反応を4時間継続した。
【0081】
重合の第1段階部分の完了後、ごく少量の樹脂を解析の目的で放出し、選択した特性評価を行った。この後、温度を205℃に上げ、グリコリドモノマーの最後の量を加えてグリコリドの末端ブロックを形成させた。10分後に温度を198℃に下げ、反応を更に2時間継続した。
【0082】
最終反応期間の終了時に、撹拌装置の速度を下向きで5RPMまで下げ、ポリマーを反応容器から好適な容器に放出した。冷却後、ポリマーを容器から取り出し、約−20℃に設定されたフリーザー内に最低でも24時間置いた。この後、ポリマーをフリーザーから取り出し、分粒篩を備えたCumberland造粒機に入れてポリマー粒子の粒径を約0.476cm(3/16インチ)まで小径化した。次いで、粉砕ポリマーをPatterson−Kelleyタンブル乾燥機に入れて残留モノマーをすべて除去した。
【0083】
Patterson−Kelleyタンブル乾燥機を閉じ、圧力を27Pa(200mTorr)未満に下げた。圧力が27Pa(200mTorr)よりも低くなった時点で、乾燥機の回転を10RPMの回転速度で開始し、加熱せずに10時間回転させた。10時間後、オイルジャケット温度を80℃に設定し、この温度で32時間乾燥した。最後の加熱期間の終了時に、回転及び真空を維持しながらバッチを室温に冷却した。容器を窒素で加圧し、放出弁を開き、ポリマー粒子を長期保管用の待機容器中に下降させることによってポリマーを乾燥機から放出させた。長期保管容器は、樹脂が真空下で保管されるように気密状態で、排気ができるような弁が取り付けられたものとした。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例3)
カプロラクトン/グリコリドポリマーの選択されたデータ
実施例1及び2のポリマーの分子量を、ヘキサフルオロイソプロパノール中、2mg/mLの濃度でゲル透過クロマトグラフィーを使用して測定した。固有粘度を、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中、0.10g/dLの濃度で測定した。
1H−NMR分光法(Varian 400MHz NMRシステム)を用いて組成分析を行って残留モノマー濃度、並びにカプロイルブロック及びグリコリルブロックの平均連鎖長ASL(それぞれASL(C)及びASL(G))を実験的に求めた。使用したピーク割当て及び方法解析は、同様のコポリマーのクラスについて以前に報告されている研究に基づいて行った(Z.Wei et al./Polymer 50(2009)1423〜1429)。熱分析は、走査速度10℃/分における自動サンプラーを備えたTA Instrumentsより販売されるモデルQ20−3290熱量計を使用して行った。
【0086】
表2(
図2にグラフで示される)は、所与の組成では、カプロラクトンの平均連鎖長はブロック長の増大と共に増大することを示している。ブロック長が増大し、組成が一定であれば、共重合することができるグリコリドモノマーが少なくなることを考慮すると、中央ブロックのランダム度は実際に低下することになる。同じ理由で、所与のブロック長では、カプロラクトンの平均連鎖長は全組成中のカプロラクトン含量が増大するにしたがって増大する。グリコリド連鎖長は、予想されるように、グリコリドの末端ブロック長が増大し、全組成中のグリコリド含量が増大するにしたがって増大する。
【0087】
【表2】
*ASL=平均連鎖長、C=カプロラクトン、G=グリコリド
【0088】
表3より、本発明の発明によるポリマーは、従来技術の対照のポリマーと比較して大幅に高い結晶化度(第1の加熱の融解熱より推定される)を示すことが明らかである。同様に、第2の加熱データは、冷却操作の時間枠内でグリコリド末端ブロック含有ポリマーに大幅に大きな結晶化度が生じることを示している。
【0089】
【表3】
【0090】
いずれの場合においても、第1の加熱走査後に1つのみのT
gが観察されている点に留意することが極めて重要である。T
g値は、−9℃〜−25℃の範囲であり、いずれも室温よりも大幅に低かった。低いT
g値は、これらの材料から製造された医療装置の高い柔軟性に寄与する場合がある。
【0091】
(実施例4)
結晶化の速度に対する組成及び末端ブロックの影響
本発明のポリマーの等温結晶化速度論を、異なる示差走査熱量測定法を用いて評価した。実施例1及び実施例2で説明した乾燥樹脂をDSCパン内に置き、190℃で2分間、完全に溶融して試料中に存在する核生成部位をすべて除去した。次に、試験材料を所望の結晶化温度に急速に冷却/急冷した(−65℃/分の速度)。この等温法では、試料が試験温度に達するまで結晶化は生じないものと仮定しているが、得られたデータはこの仮定を支持するものであった。5つの試料の結晶化挙動を、50℃〜90℃の広範囲の温度にわたって特性評価した。等温結晶化速度論(一定温度における)を、時間の関数として熱流量の変化として監視した。等温熱流量曲線を積分して結晶化度パラメータを求めた。
【0092】
熱流量/時間曲線の積分を行った後、1/2結晶化時間(t
1/2)を決定することができる。1/2結晶化時間とは、等温試験の間に生じる総量の50%結晶化度に達するのに要する時間である。結晶化速度論を表すため、1/2結晶化時間の逆数を結晶化温度の関数として示した。これらのデータを
図3にグラフで示す。グラフより、本発明のポリマーは、従来技術による対照のポリマーの2〜5倍速く結晶化することが明らかである。結晶化は、末端ブロック長の増大に伴ってより速くなることも分かる。最後に、組成に対する依存が認められる。ポリマー3についても評価を行ったが、溶融温度から選択した温度へと冷却すると完全に結晶化した。
【0093】
(実施例5)
溶解度
1,4−ジオキサンへの樹脂の最大溶解度を、漸増添加法によって試験した。開始に当たり、10gの樹脂を、250mLの丸底フラスコ中で100mLの1,4−ジオキサンに加えた。溶液の入ったフラスコを、窒素ラインに接続された入口アダプタが取り付けられた、85℃に加熱された水浴上に置いた。溶解後、樹脂が2時間以内に完全に溶けなくなるか又はゲル化が起きるまで樹脂を1g刻みで加えた。
【0094】
表4は、グリコリドの末端ブロック長が増大するにつれて1,4−ジオキサンへの溶解度が低下することを示している。更に、溶解度は、全組成中のグリコリド含量が増大するにつれて低下している。実際、ポリマー4は、関連する濃度(<0.5重量%)では可溶でない。
【0095】
【表4】
**6重量%の濃度において
【0096】
(実施例6)
ゲル化
本発明のすべてのポリマー、及び従来技術による対照ポリマーは、室温に冷却させた後、18時間以内に有機ゲルを形成した。ブルックフィールド粘度計を使用してゲル化の開始時間を測定した。最初に、所望の最終濃度の選択された樹脂の1,4−ジオキサン溶液150mLを、実施例5で説明したようにして調製した(特にそうでないことが記載されないかぎり、10重量%で)。この溶液の125mLを、20℃の水浴中に置かれた細い200mLガラスビーカーに移した。次いで、S61スピンドルを溶液中に浸漬してから、0に合わせたブルックフィールドDVI−I+粘度計に接続した。10rpmでの溶液粘度を監視し、一定の間隔で記録した。ゲル化の開始時間を、粘度が急速に増大しはじめた点を検出することによって測定した。発泡体製造プロセスの目的では、180分よりも長いゲル化の開始時間は無関係とみなした。
【0097】
4つのポリマーが、凍結乾燥プロセスに影響を及ぼさない程度に充分に緩慢に有機ゲルを形成した。これらのポリマーは、従来技術のコントロールポリマー、45/55のカプロラクトン/グリコリド組成を有するポリマー、及び40/60のカプロラクトン/グリコリドの全体組成を有する、最も短いグリコリド末端ブロックを有する2つのポリマーである。他のポリマーは、全体のカプロラクトン含量に強い依存を示し、グリコリド末端ブロック長に副次的な依存を示した。更に、温度及び分子量の両方と指数関数的な関係があると考えられ、ゲル化は、より低い温度かつより大きな分子量でより速やかに生じた。
【0098】
(実施例7)
実施例1の樹脂の凍結乾燥プロセス(ランダムコポリマー)
a)溶液の調製
40gの実施例1のポリマーと360gの無水1,4−ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度とすることによって溶液を調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間70℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルター(extra course filter)に通してろ過した。
【0099】
この後、溶液の試料を取って乾燥重量測定を介して濃度を測定した。溶液の重量を記録した後、一晩蒸発させた後、50℃に加熱した真空オーブン中で溶液を48時間加熱することによって1,4−ジオキサンを除去した。溶液の濃度を測定したところ10.4(重量/重量)%であった。
【0100】
b)凍結乾燥
ポリマー溶液の発泡構造体への凍結乾燥は、SP Scientificにより製造されたLyoStar3ユニットで行った。
【0101】
凍結乾燥に先立って溶液を75℃へと約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)を用いてコンピュータによって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。このレシピは以下の順序からなるものである。
1.熱処理:充填された成形型を、15℃の温度に設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。チャンバを15℃に30分間維持した後、2℃/分の速度の温度勾配で−10℃とした。次いで、棚温度を0.5℃/分の速度で−45℃に冷却し、1時間維持した。温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0102】
凍結乾燥ユニットにPirani真空ゲージを取り付けた。これは、キャパシタンスマノメータ(CM)を用いた比較圧力測定を介して凍結乾燥中の一次乾燥時間を評価するために用いられた(Patel SM et al.,AAPS PharmSciTech,11,2010)。簡単に述べると、CMがチャンバ内の絶対圧力(真空設定点)を測定するのに対して、Piraniゲージは、チャンバ内の溶媒蒸気の熱伝導率を測定する原理に基づいて動作する。溶媒蒸気が存在する時の昇華の間、PiraniゲージはCMよりも高い指示値を示す。チャンバ内に蒸気が存在しなくなると、Piraniゲージの指示値はCMと同じになる。このことは、
図4にこの凍結乾燥測定について示されるように、一次乾燥の間に2つの曲線が交差する場合に単純に目視で確認される。
【0103】
凍結乾燥後、発泡体のストリップを成形型から外して更なる使用まで窒素下で保管した。
【0104】
(実施例8)
ゲル化ポリマー溶液の凍結乾燥
この実験では、ゲル化が速やかに開始する樹脂のポリマー溶液(実施例2のポリマー3)を使用し、低残留溶媒の均一な発泡体を製造するための凍結乾燥レシピを開発する試みを行った。ポリマー溶液を順調に凍結乾燥させるべく、多くの凍結乾燥パラメータを変更した。
【0105】
a)溶液の調製
ポリマー(実施例2のポリマー3)と無水1,4−ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度とすることによって溶液を調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間85℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルターに通してろ過した。次いで、ろ過した溶液を使用時までカバーをした状態で室温で保管した。
【0106】
b)凍結乾燥
凍結乾燥に先立って溶液を75℃へと約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)によって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。この実験の基準となるレシピは、以下の順序からなるものである。
1.熱処理:充填された成形型を、15℃の温度に予め設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。チャンバを15℃に30分間維持した後、2℃/分の速度の温度勾配で−10℃とした。次いで、棚温度を0.5℃/分の速度で−45℃に冷却し、1時間維持した。温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0107】
次いで、このレシピを表5に示したようにこれらの実験について以下のパラメータによって変更した。
【0108】
【表5】
【0109】
凍結乾燥ユニットにPirani真空ゲージを取り付け、これを用いてキャパシタンスマノメータ(CM)を用いた比較圧力測定によって一次乾燥を評価した。発泡体は、Pirani曲線がCM曲線と交差した時点で乾燥状態とみなした。発泡体は凍結乾燥後に目視でも検査した。
【0110】
c)結果と考察
本実施例の実験の範囲内では、ゲル化ポリマー溶液の凍結乾燥は成功しなかった。様々な凍結乾燥パラメータに多くの調整を行ったところ、発泡体は製造されたが、これらの発泡体は外観が悪く、高濃度の残留溶媒を有していた。変更例1では、遅い冷却速度を用いてゲル化を確実に生じさせ、基準レシピと同じ温度及び圧力を維持したまま、凍結時間及び一次乾燥時間を延長した。この実験は、成形型から外すことができない、製品中に溶媒が依然残留していることを示す1,4−ジオキサンの強い臭いを有する不良発泡体を生じた。この結果は、基準レシピのパラメータの時間を延ばすことは、ゲル化溶液を効果的に凍結乾燥させず、また進歩をもたらすには維持時間以外の変量を操作する必要があることを示した。
【0111】
変更例2は、発泡体を製造する別の試みであり、溶液のゲル化を遅らせる方法として棚装填温度を40℃に上げた後、2℃/分の棚冷却速度で速やかに冷却することによる。得られた発泡体は強い臭いがあり、外観が悪く、CM曲線とPirani曲線とは交差しなかった。このことは、高い棚装填温度及び棚の冷却速度の制御がゲル化を防止しなかったことを示唆している。最も高い可能性として、溶液が棚よりも遅い速度で冷却されると、低い温度が棚から成形型を介し、更に溶液を介して伝導されなければならないために、溶液はゲル化しはじめると考えられる。
【0112】
一次乾燥温度を−20℃に下げ、熱処理を含むか又は除外するかのいずれかである変更例3及び4では、ゲル化溶液の乾燥に影響は見られなかった。一次乾燥のプロファイルはほぼ同じであり、いずれの実験も、成形型から外すことができず、また強い1,4−ジオキサン臭を有する不良発泡体をもたらした。
【0113】
一次乾燥温度を高くした場合について、変更例5、6、7及び8で評価を行ったが、これにより凍結ゲルからの昇華が増大することになると考えられた。一次乾燥温度が10℃よりも高いとジオキサンの除去性が改善され、1,4−ジオキサンの臭いは検出されず、Pirani曲線はCM曲線により近づいた。しかしながら、この温度は、発泡体の構造的崩壊、又は発泡体の底部がフィルム状の外観を有する発泡体の「メルトバック」を生じるだけ充分に高かった。この結果に基づけば、一次乾燥温度の操作のみでは、ゲル化溶液の凍結乾燥の可能な方法とはならなかった。
【0114】
変更例9では、製品の崩壊を生じない最も高い一次乾燥温度(5℃)を、一次乾燥の間のより低い圧力と共に用いた。一次乾燥の間のより低いチャンバ圧は、チャンバ圧とゲル中の溶媒の蒸気圧との差を増加する補助となるため、昇華を促進する力を増加すると考えられた。得られたCM及びPirani曲線は、一次乾燥の終了前に交差せず、不完全な乾燥を示した。これらの発泡体でもやはり崩壊が見られたが、これが、一次乾燥条件が極端すぎたことによるものか、又は一次乾燥における昇華が完了するよりも先にサイクルが二次乾燥段階に進んだことによるものかを判断することはできなかった。
【0115】
変更例10では、溶液をより速やかに冷却するために成形型を−45℃に設定したチャンバ内に置く「急冷」を用いた。急冷のより速やかな凍結は、ポリマー溶液がゲルを形成する前にポリマー溶液を凍結させると考えられる。乾燥プロファイルは、Pirani曲線とCM曲線との交差を示し、一次乾燥の間に溶媒が除去されることが示された。得られた発泡体は更に、機械的弾性を示す均一な外観を有した。
【0116】
(実施例9)
凍結乾燥に対する冷却速度の影響
実施例8の「急冷」熱処理の成功に基づき、急冷の温度及び方法によって制御される冷却速度の影響を、ゲル化の速やかな開始を示した樹脂(実施例2のポリマー3)を用いて作製したポリマー溶液の凍結乾燥について評価した。
【0117】
a)溶液の調製
ポリマー(実施例2のポリマー3)と無水1,4−ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度とすることによって溶液を調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間85℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルターに通してろ過した。次いで、ろ過した溶液を使用時までカバーをした状態で室温で保管した。
【0118】
b)凍結乾燥
凍結乾燥に先立って溶液を75℃へと約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)によって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。この実験の基準となるレシピは、以下の順序からなるものである。
1.熱処理:ポリマー溶液を、以下の急冷方法によって定義される異なる冷却速度に供した。
急冷番号1:充填された成形型を、−10℃の温度に設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。次いで、棚温度を2℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで下げた。
急冷番号2:充填された成形型を、−45℃の温度に設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。
急冷番号3:高温のポリマー溶液を、−45℃の温度で一晩保管することによってその温度に予め冷却したステンレス鋼製成形型内に分注した。成形型を充填した後、−45℃の温度に設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に成形型を入れた。
すべての急冷法について、急冷及び装填後、ユニットの温度を−45℃に1時間保った。次いで、温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0119】
凍結乾燥ユニットにPirani真空ゲージを取り付け、これを用いてキャパシタンスマノメータ(CM)を用いた比較圧力測定を介して一次乾燥を評価した。各急冷法の一次乾燥プロファイルを
図5に重ね合わせて示す。分かりやすくするために、CM曲線は1本のみプロットしてある。
【0120】
重ね合わせは、予め冷却した成形型内にポリマー溶液を分注することによって得られたより速い冷却速度が、Pirani曲線とCM曲線とが交差する時間によって示されるより速い乾燥時間を有したことを示している。凍結乾燥ユニットのチャンバ内での急冷を−45℃に設定した中間の冷却速度もPirani曲線とCM曲線との交差を示したが、より長い時間かかった。−10℃の急冷による最も遅い冷却速度では、一次乾燥の5時間の維持時間以内にPirani曲線とCM曲線との交差は見られなかった。Pirani曲線の下向きの傾きは、一次乾燥が延長されればPirani曲線がCM曲線と交差する場合があることを示唆している。
【0121】
これらの急冷法によって生成された発泡体を、ガスクロマトグラフィーによって残留1,4−ジオキサンについても試験した。急冷番号1、2、及び3の発泡体の残留濃度は、それぞれ3、1、及び1,306PPMであった。
【0122】
これらの結果は、凍結乾燥による発泡体加工を可能とするため、望ましくないゲル形成の前にポリマー溶液を凍結させるためにはより速い冷却速度が必要であるという主張を裏付けるものである。
【0123】
(実施例10)
凍結乾燥に対するポリマー溶液のゲル化時間の影響
実施例2のポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)ブロックコポリマーを使用して、凍結乾燥に対するそれらのゲル化開始時間の影響を調べた。
【0124】
a)溶液の調製
実施例2のポリマー2、3、5、6及び対照を用いた溶液を、ポリマー樹脂と無水1,4ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度となるように調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間85℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルターに通してろ過した。次いで、ろ過した溶液を使用時までカバーをした状態で室温で保管した。
【0125】
実施例2のポリマー1及びポリマー3の6(重量/重量)%ポリマー溶液を、上述したのと同様の様式で調製した。
【0126】
b)凍結乾燥
凍結乾燥に先立って溶液を75℃に約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)によって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。この実験の基準となるレシピは、以下の順序からなるものである。
1.熱処理:充填された成形型を、−45℃の温度に予め設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。1時間後、温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0127】
この研究では、ポリマーを含まない(すなわち、1,4−ジオキサン100%)の溶液を凍結乾燥して溶媒のみの一次乾燥プロファイルを評価した。
【0128】
凍結乾燥ユニットにPirani真空ゲージを取り付け、これを用いてキャパシタンスマノメータ(CM)を用いた比較圧力測定を介して一次乾燥を評価した。各急冷法に対する一次乾燥プロファイルを
図6に重ね合わせて示す。分かりやすくするために、CM曲線は1本のみプロットしてある。
【0129】
重ね合わせた曲線は、ポリマー溶液間で異なる乾燥挙動を示している。1,4−ジオキサン単独では、溶媒がバルク相でのみ昇華しているため、ピーク圧力レベルから大変急激な低下を示し、CMのレベルと交差している。各ポリマー溶液は、恐らくは、溶媒蒸気が曲がりくねった小孔構造を通り抜けてポリマー/溶媒の界面から分離しなければならないことからよりなだらかな傾きを有している。最も遅い溶液は、実施例6で測定したように最も速いゲル化の開始も示していたポリマー3の10(重量/重量)%溶液であった。次に遅い乾燥溶液は、2番目に速いゲル化の開始を示していたポリマー2の6(重量/重量)%溶液であった。最も遅いゲル化溶液(対照ポリマーの10(重量/重量)%溶液)は、最も速い乾燥時間を示した。中間のゲル化時間を示したポリマー2、5、及び6の10(重量/重量)%の群は中間の乾燥時間を示したが、驚くべきことに上述したような乾燥時間とゲル化の開始時間との間の相関関係には従わなかった。
【0130】
より速いゲル化を示すポリマー溶液では、乾燥時間がより長くなる傾向があるようである。このことは、より速いゲル化を示すポリマー溶液は、発泡体への凍結乾燥がうまくいくよう、望ましくないゲルの形成が生じる前にこれらの溶液をより速やかに凍結させるためにより速い冷却速度を必要とすることを示唆していることになる。
【0131】
(実施例11)
実施例2のセグメント化ブロックコポリマーから作製された凍結乾燥発泡体の機械的特性
実施例2で製造したポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)ブロックコポリマーで作製された発泡体の圧縮特性を評価することによって、末端ブロック及びカプロラクトン/グリコリド組成の影響を評価した。ポリマー2、3、5及び7から作製した発泡体は、10(重量/重量)%の溶液濃度によって制御されるように一定の密度で調製した。更に、実施例1で説明したポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)のランダムコポリマーで形成された発泡体も、対照として含めた。
【0132】
発泡体の調製
a)溶液の調製
ポリマー樹脂と無水1,4−ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度とすることによって溶液を調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間85℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルターに通してろ過した。次いで、ろ過した溶液を使用時までカバーをした状態で室温で保管した。
【0133】
b)凍結乾燥
ポリマー溶液の発泡構造体への凍結乾燥は、SP Scientificにより製造されたLyoStar3ユニットで行った。
【0134】
凍結乾燥に先立って溶液を75℃へと約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3.5mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)によって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。この実験の基準となるレシピは、以下の順序からなるものである。
1.熱処理:充填された成形型を、−45℃の温度に予め設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。1時間後、温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0135】
凍結乾燥後、発泡体のストリップを成形型から外して更なる使用まで窒素下で保管した。
【0136】
c)アニーリング
アニーリングは、Thermal Product SolutionsのBlue Mオーブンを使用して窒素下で行った。発泡体をいかなる固定もせずにオーブンの棚の上に置いた。ユニットを窒素で1時間パージした後、オーブンの温度を温度勾配で90℃とし、その温度で6時間維持した後、室温に戻した。アニーリングの後、発泡体のストリップを更なる使用時まで窒素下で保管した。
【0137】
圧縮試験
発泡体のストリップをすべて、10mm×60mm×3.25mmの寸法に切断した。発泡体を異なる程度まで圧縮し、1000NのILC−Sロードセル、70mm圧縮圧盤、及びMultiTest 2.5−xtソフトウェアを装備したMecmesinの機械圧縮/張力荷重フレームマルチ(Multi)を使用して圧縮力を測定した。簡単に述べると、発泡体を高さ2.0mmまで圧縮し、その高さに15秒間保持した後の圧縮力を記録した。次いで、同じ試料を1.5mm、1.0mm、その後再び2.0mmの高さに順次圧縮し、それぞれの高さで15秒間保持した後の圧縮力を記録した。それぞれの高さでの圧縮圧力を、圧縮力を試料の面積で割ることにより計算した。回復比を、2mmにおける初期圧力に対する回復圧力(1.0mmに圧縮した後の2.0mmにおける2回目の測定値)の比として定義した。試験の結果を表6に示す。
【0138】
【表6】
*データは平均±標準偏差を表す。
【0139】
対照ポリマー並びにポリマー2及びポリマー3で作製された発泡体を使用して、所与の全体組成におけるブロック長の影響を評価した。ポリマー2のより小さいブロックは圧縮力の増大を示さなかったのに対して、ポリマー3のより長いブロックは、約33%の増大を示した。更に、ブロック長の増大にしたがって回復比の低下が認められた。しかしながら、ポリマー3で形成されたより固い発泡体では、これにより対照ポリマーよりも高い回復圧力がなおも得られた。
【0140】
ポリマー3、5及び7で作製された発泡体はいずれも同じブロック長を有したが、カプロラクトンがそれぞれ、36〜40〜45と増えてゆく異なる組成を有していた。カプロラクトン含量が大きくなるにしたがって圧縮力は小さくなることが示された。対照的に、ランダムセグメント中のカプロラクトン含量が増大するにつれて回復比は大きくなった。
【0141】
(実施例12)
実施例2のセグメント化ブロックコポリマーから作製された凍結乾燥発泡体のインビトロ分解挙動
実施例2で製造されたポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)ブロックコポリマーで作製された発泡体のインビトロ分解挙動を評価することによって、末端ブロック及びカプロラクトン/グリコリド組成の影響を評価した。これは、加水分解を行いながら、固定高さまで圧縮された発泡体の圧縮力を測定することによって評価した。ポリマー2、3、5及び6、並びに実施例1のランダムコポリマーで作製された各発泡体を実施例11で説明したようにして調製した。
【0142】
連続圧縮下でのインビトロ分解
発泡体がクッション又は欠陥充填材として機能することになる用途をシミュレーションするため、連続的な圧縮下で各発泡体を試験した。発泡体の各ストリップをすべて、10mm×60mm×3.25mmの寸法に切断した。次いで、発泡体を、圧盤を利用して発泡体を高さ2.0mmに圧縮する固定具内に置いた。圧盤の上には、Honeywell SC3004データ収集ユニットを使用して圧縮力を5Hzの取得率で連続的に記録するロードセルを配置した。次いで、発泡体試料を含む固定具全体を、37℃の温度に維持されたpH7.27のリン酸緩衝生理食塩水の浴中に浸漬した。実験を停止した時には、28日間の圧縮力が記録されていた。次いで、時間に対する圧縮力のプロットを用いて、曲線の対数関数フィットの崩壊係数として表される分解係数を求めた。1日目及び28日目の圧縮力並びに分解係数を表7に示す。
【0143】
【表7】
【0144】
結果は、末端ブロックを有するコポリマーにおける分解係数の減少を示し、より長い分解プロファイルを表示している。一方でポリマーとポリマー2及びポリマー3とを比較し、他方でポリマー5とポリマー6とを比較したところ、1日目及び28日目における圧縮強さは、末端ブロックが大きくなるにしたがって増大することが示された。更に、ポリマー3とポリマー5との比較により、ランダムセグメント中のカプロラクトン含量を増大させると、1日目及び28日目において保持される強さが低下したことが示された。
【0145】
更に、発泡体が分解する際の発泡体の完全性は、カプロラクトン含量が増大するポリマーで作製された発泡体間で異なることも観察された。ポリマー5及びポリマー6で作製された発泡体は、28日間の試験期間全体を通じて1つの連続的な発泡体の一片として維持された。ポリマー2及びポリマー3で作製された発泡体(カプロラクトン含量が低いもの)は、複数の部分に割れてしまうことが見出された。
【0146】
(実施例13)
アニーリングの効果
本発明の凍結乾燥発泡体の結晶化度及び結晶サイズは、ポリマーの構造に依存するが、発泡体を選択された温度の乾燥熱に充分に効果的な期間にわたって曝すことによって調節することができる。更に、これにより、発泡体の寸法安定性及び機械的特性の微調整を行うこともできる。発泡体を60℃〜120℃の範囲の温度で、1〜12時間の範囲の期間、アニーリングした。一般的に、アニーリング温度が高いほどより大きな収縮が観察された。興味深いことに、収縮はアニーリングの最初の1時間で生じ、その後は更なる収縮は観察されなかった。
【0147】
表8は、従来技術の対照ポリマー及び本発明のポリマー3に基づいた発泡体の寸法変化を示している。これから分かるように、末端ブロック含有ポリマーの寸法安定性は、Vyakarnamらと同様にして調製した材料よりも大幅に高くなっている。寸法の変化は、3つの次元すべてで概ね同等であるように思われる。
【0148】
【表8】
*データは平均±標準偏差を表す。
【0149】
図7は、ポリマー5に基づく発泡体の熱挙動に対する異なるアニーリング条件の影響を示す。低い温度では、複数のピークを有する幅広い溶融転移に反映される結晶サイズの幅広い分布が認められる。110℃でのアニーリングによって120℃周辺の狭い分布が得られるまで、アニーリング温度が高くなるほどこの分布は狭くなっている。わずかな量のより小さい結晶を、より低い温度での二次アニーリング工程によって再導入することができる。興味深いことに、全体の結晶化度に顕著な差は認められなかった。
【0150】
収縮は各次元で生じたが、厚さにおいて最も顕著であった。表9に見られるように、より低い温度では収縮は比較的わずかであったが、110℃ではより顕著となった。一般的に、アニーリング温度が高いほどより大きな収縮が認められた。興味深いことに、収縮はアニーリングの最初の1時間以内に生じ、その後は更なる収縮は認められなかった。
【0151】
【表9】
*データは平均±標準偏差を表す。
【0152】
ポリマー5に基づく発泡体の機械的特性に対するアニーリング条件の影響を、表10に示す。各発泡体を、実施例11で説明したような段階的な方法で圧縮した。驚くべきことに、アニーリング条件は発泡体の圧縮力の値にはほとんど影響を及ぼさなかったが、発泡体の反発力の代用となる回復比に対して顕著な影響を及ぼした。一般的に、アニーリング温度が高いほど観察される反発力は高かった。しかしながら、120℃でのアニーリングは12.92%の許容できない収縮率を生じることから、温度を上げることができる程度は収縮率によって制限される。
【0153】
【表10】
*データは平均±標準偏差を表す。
【0154】
ポリマー5から調製され、様々な温度でアニーリングされた発泡体を、実施例12で説明したインビトロ分解法で経時的な圧縮について評価した。表11に見られるように、最初は様々なアニーリング条件間で大きな差は観察されなかったが、後の時点では、最も高い温度(110℃)でアニーリングされた試料は、より低い温度でアニーリングしたものよりも保持された強さが大幅に低くなった。
【0155】
【表11】
【0156】
以上、本発明をその詳細な実施形態について図示及び説明してきたが、当業者であれば、特許請求される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の形態及び詳細に様々な変更を行い得る点が理解されるであろう。
【0157】
〔実施の態様〕
(1) 重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位のランダムセグメントと、主として重合グリコリドを含む少なくとも1つのセグメントとを有する、半結晶性吸収性セグメント化コポリマーを含み、前記セグメント化コポリマー全体の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約55:45〜約65:35であり、前記ランダムセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約45:55〜約60:40である、吸収性ポリマー発泡体。
(2) 前記コポリマーが、25℃のHFIPの0.1g/dL溶液中で測定した場合に約0.5dL/g〜約2.5dL/gの固有粘度を有する、実施態様1に記載の吸収性発泡体。
(3) 固形分含量が約3重量%〜約20重量%である、実施態様1に記載の発泡体。
(4) 5重量%〜15重量%の固形分含量を有する、実施態様3に記載の発泡体。
(5) 約0.5mm〜約13mmの厚さを有する、実施態様1に記載の発泡体。
【0158】
(6) 約1mm〜約5mmの厚さを有する、実施態様5に記載の発泡体。
(7) 連続圧縮下で37℃、pH7.27の緩衝溶液中で28日間のインキュベーション後、高さ2mmにおいて0.5gf/mm
2よりも大きい圧縮圧力を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(8) 10重量%の凍結乾燥溶液から調製された、実施態様7に記載の発泡体。
(9) 連続圧縮下で37℃、pH7.27の緩衝溶液中でインキュベートした場合に−0.095gf/(mm
2・日)未満の分解係数を有するように調製された、実施態様1に記載の発泡体。
(10) 10重量%の凍結乾燥溶液から調製された、実施態様9に記載の発泡体。
【0159】
(11) 埋め込み後、少なくとも30日間、機械的一体性を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(12) 埋め込み後、少なくとも60日間、機械的一体性を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(13) 約10%よりも高い結晶化度を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(14) 約20%よりも高い結晶化度を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(15) 凍結乾燥プロセスによって吸収性発泡体を製造する方法であって、
a)重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位を有する半結晶性吸収性セグメント化コポリマーを含む吸収性ポリマーを提供する工程であって、重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約55:45〜約65:35であり、ランダムセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約45:55〜約60:40である、工程と、
b)凍結乾燥溶液を形成するために、充分な量の前記コポリマーを適当な溶媒に溶解する工程と、
c)前記溶液の少なくとも一部を、早期のゲル形成を防止するうえで充分に効果的な温度で好適な成形型の中へと注入する工程と、
d)後の凍結乾燥プロセスにおける溶媒除去を促進するために、早期のゲル形成を防止するような充分に速い速度で前記溶液を凍結させる工程と、
e)前記成形型内の前記凍結溶液を前記凍結乾燥プロセスに供する工程であって、圧力を低下させ、熱を加えて前記溶媒を昇華させて吸収性発泡体を形成する、工程と、を含む、方法。
【0160】
(16) 前記コポリマーが、25℃のHFIPの0.1g/dL溶液中で測定した場合に約0.5dL/g〜約2.5dL/gの固有粘度を有する、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記溶媒が、1,4−ジオキサン、少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の水との混合物、及び少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の分子量1500未満の有機アルコールとの混合物からなる群から選択される、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記凍結乾燥溶液の固形分含量が、約3〜約20重量%である、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記凍結乾燥溶液の固形分含量が、約5〜約15重量%である、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記凍結乾燥溶液が、50℃よりも高い温度で好適な成形型の中へと注入される、実施態様15に記載の方法。
【0161】
(21) 前記凍結の速度が、−5℃/分に等しいか又はこれよりも速い、実施態様15に記載の方法。
(22) 前記凍結の速度が、−10℃/分に等しいか又はこれよりも速い、実施態様15に記載の方法。
(23) 1,4−ジオキサン、少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の水との混合物、及び少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の分子量1500ダルトン未満の有機アルコールとの混合物からなる群から選択される溶媒と、
約3重量%〜約20重量%の、重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位を有する半結晶性吸収性セグメント化コポリマーであって、重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約55:45〜約65:35であり、前記ランダムセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約45:55〜約60:40である、半結晶性吸収性セグメント化コポリマーと、を含む、凍結乾燥溶液。
(24) 前記コポリマーが、25℃のHFIPの0.1g/dL溶液中で測定した場合に約0.5dL/g〜約2.5dL/gの固有粘度を有する、実施態様23に記載の溶液。
(25) 前記凍結乾燥溶液の固形分含量が、約3〜約20重量%である、実施態様23に記載の溶液。
【0162】
(26) 前記凍結乾燥溶液の固形分含量が、約5〜約15重量%である、実施態様23に記載の溶液。
(27) 前記溶液が、早期のゲル形成を防止する温度に維持される、実施態様23に記載の溶液。
(28) 前記溶液が、50℃よりも高い温度に維持される、実施態様23に記載の溶液。
(29) 前記発泡体が、約60℃〜約110℃の温度に加熱され、かつ前記温度に約1時間〜約12時間維持される、実施態様1に記載の発泡体をアニーリングする方法。
(30) 前記発泡体が、約70℃〜約100℃の温度に加熱される、実施態様29に記載の方法。
【0163】
(31) 前記発泡体が、約85℃〜約95℃の温度に加熱される、実施態様30に記載の方法。
(32) 前記発泡体が、約4〜約8時間の間加熱される、実施態様29に記載の方法。