特許第6786525号(P6786525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6786525末端ブロック含有吸収性ポリマーの凍結乾燥発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786525
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】末端ブロック含有吸収性ポリマーの凍結乾燥発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20201109BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   C08J9/28CFD
   C08G63/08
【請求項の数】28
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-562698(P2017-562698)
(86)(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公表番号】特表2018-517816(P2018-517816A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】US2016033894
(87)【国際公開番号】WO2016196076
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】14/728,226
(32)【優先日】2015年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ドナーズ・ジャッキー
(72)【発明者】
【氏名】ウィスヌデル・マーク
(72)【発明者】
【氏名】ティマー・マーク
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0105525(US,A1)
【文献】 特開平09−012689(JP,A)
【文献】 米国特許第06355699(US,B1)
【文献】 特開平06−277274(JP,A)
【文献】 特開平01−284262(JP,A)
【文献】 特開昭63−145661(JP,A)
【文献】 特開平11−181077(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/149801(WO,A1)
【文献】 特開平04−213320(JP,A)
【文献】 特開2002−291867(JP,A)
【文献】 特開2001−049018(JP,A)
【文献】 特表2012−522871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
B29C 44/00−44/60;67/20
C08G 63/00−64/42
A61L 15/00−33/00
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位のランダムな中央ブロックセグメントと、主として重合グリコリドを含む末端ブロックセグメントとを有する、半結晶性吸収性セグメント化コポリマーを含み、前記セグメント化コポリマー全体の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、5:45〜5:35であり、前記ランダムな中央ブロックセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、5:55〜0:40である、吸収性ポリマー発泡体。
【請求項2】
前記セグメント化コポリマーが、25℃のHFIPの0.1g/dL溶液中で測定した場合に.5dL/g〜.5dL/gの固有粘度を有する、請求項1に記載の泡体。
【請求項3】
.5mm〜3mmの厚さを有する、請求項1に記載の発泡体。
【請求項4】
mm〜mmの厚さを有する、請求項3に記載の発泡体。
【請求項5】
連続圧縮下で37℃、pH7.27の緩衝溶液中で28日間のインキュベーション後、高さ2mmにおいて0.5gf/mmよりも大きい圧縮圧力を有する、請求項1に記載の発泡体。
【請求項6】
連続圧縮下で37℃、pH7.27の緩衝溶液中でインキュベートした場合に−0.095gf/(mm・日)未満の分解係数を有するように調製された、請求項1に記載の発泡体。
【請求項7】
埋め込み後、少なくとも30日間、機械的一体性を有する、請求項1に記載の発泡体。
【請求項8】
埋め込み後、少なくとも60日間、機械的一体性を有する、請求項1に記載の発泡体。
【請求項9】
0%よりも高い結晶化度を有する、請求項1に記載の発泡体。
【請求項10】
0%よりも高い結晶化度を有する、請求項1に記載の発泡体。
【請求項11】
凍結乾燥プロセスによって吸収性発泡体を製造する方法であって、
a)重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位のランダムな中央ブロックセグメントと、主として重合グリコリドを含む末端ブロックセグメントとを有する半結晶性吸収性セグメント化コポリマーを含む吸収性ポリマーを提供する工程であって、前記セグメント化コポリマー全体の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、5:45〜5:35であり、前記ランダムな中央ブロックセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、5:55〜0:40である、工程と、
b)凍結乾燥用の溶液を形成するために、充分な量の前記セグメント化コポリマーを適当な溶媒に溶解する工程と、
c)前記溶液の少なくとも一部を、早期のゲル形成を防止するうえで充分に効果的な温度で好適な成形型の中へと注入する工程と、
d)後の凍結乾燥プロセスにおける溶媒除去を促進するために、早期のゲル形成を防止するような充分に速い速度で前記溶液を凍結させる工程と、
e)前記成形型内の結溶液を前記凍結乾燥プロセスに供する工程であって、圧力を低下させ、熱を加えて前記溶媒を昇華させて吸収性発泡体を形成する、工程と、を含む、方法。
【請求項12】
前記セグメント化コポリマーが、25℃のHFIPの0.1g/dL溶液中で測定した場合に.5dL/g〜.5dL/gの固有粘度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、1,4−ジオキサン、少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の水との混合物、及び少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の分子量1500未満の有機アルコールとの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記凍結乾燥用の溶液の固形分含量が、0重量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記凍結乾燥用の溶液の固形分含量が、5重量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記凍結乾燥用の溶液が、50℃よりも高い温度で前記好適な成形型の中へと注入される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記凍結の速度が、−5℃/分に等しいか又はこれよりも速い、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記凍結の速度が、−10℃/分に等しいか又はこれよりも速い、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
1,4−ジオキサン、少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の水との混合物、及び少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の分子量1500ダルトン未満の有機アルコールとの混合物からなる群から選択される溶媒と、
重量%〜0重量%の半結晶性吸収性のセグメント化コポリマーであって前記セグメント化コポリマーが、重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位のランダムな中央ブロックセグメントと、主として重合グリコリドを含む末端ブロックセグメントとを有し、前記セグメント化コポリマー全体の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、5:45〜5:35であり、前記ランダムな中央ブロックセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、5:55〜0:40である、半結晶性吸収性セグメント化コポリマーと、を含む、凍結乾燥用の溶液。
【請求項20】
前記セグメント化コポリマーが、25℃のHFIPの0.1g/dL溶液中で測定した場合に.5dL/g〜.5dL/gの固有粘度を有する、請求項19に記載の溶液。
【請求項21】
前記凍結乾燥用の溶液の固形分含量が、0重量%である、請求項19に記載の溶液。
【請求項22】
前記凍結乾燥用の溶液の固形分含量が、5重量%である、請求項19に記載の溶液。
【請求項23】
前記溶液が、早期のゲル形成を防止する温度に維持される、請求項19に記載の溶液。
【請求項24】
前記溶液が、50℃よりも高い温度に維持される、請求項19に記載の溶液。
【請求項25】
請求項1に記載の発泡体をアニーリングする方法であって、
前記発泡体が、0℃〜10℃の温度に加熱され、かつ前記温度に時間〜2時間維持される、法。
【請求項26】
前記発泡体が、0℃〜00℃の温度に加熱される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記発泡体が、5℃〜5℃の温度に加熱される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記発泡体が、時間の間加熱される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な吸収性ポリマーに関し、より詳細には、吸収性医療装置に適したε−カプロラクトンとグリコリドとの半結晶性ブロックコポリマーの、特に凍結乾燥発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
合成吸収性ポリエステルポリマーは当該技術分野では周知のものである。公開文献、科学文献及び特許文献には特に、グリコリド、L(−)−ラクチド、D(+)−ラクチド、メソ−ラクチド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートで作製されたポリマー及びコポリマーについて記載されている。かかるポリマーは、従来より吸収性医療装置の製造に使用されている。
【0003】
あらゆる吸収性医療装置のうちの極めて重要な側面の1つに、その機械的特性がインビボで保持される時間の長さがある。例えば、多くの外科的用途では、装置がその所望の機能を果たしながら、身体が治癒するのに必要な充分に長い時間、強度を維持することが重要である。
【0004】
ポリマー発泡体の形の医療装置は、当該技術分野では周知のものである。圧縮後のスプリングバックを提供し、かつ優れた取扱い性を外科医に与える機械的弾性を示すだけ充分に柔らかいにもかかわらず、完全な吸収性を保ちながら長期にわたって効果的に機能するように埋め込み後にその機械的特性を維持するような発泡体に形成することができる吸収性ポリマーは現時点では存在していない。したがって、これらのニーズに応えることができるようなポリマーを提供するという課題が残っている。かかるポリマーから製造された吸収性発泡体に対するニーズもある。
【0005】
吸収性発泡体には、一般的に連続気泡構造と独立気泡構造の2つの基本的な形態がある。連続気泡発泡体は、細胞の内部成長を必要とする組織工学の用途において特に有利である。生体適合性ポリマーで作製された様々な種類のバットレス設計を機械的外科用ステープラで使用することについて記載されてきている。バットレスの機能の1つに外科用ステープルラインを強化することがある。しかしながら、長期使用のニーズに応えたバットレスとしての有用性を有する埋め込み式吸収性発泡体はこれまでに提供されていなかった。
【0006】
ポリマー材料からの発泡体形成については、長年にわたって様々な研究者によって記載されてきた。例えば、発泡体は、発泡剤との押出し、及び超臨界二酸化炭素の使用などの溶融プロセスによって製造されてきた。
【0007】
例えば、発泡体の製造における超臨界二酸化炭素の使用については、「Formation and Size distribution of Pores in Poly(ε−Caprolactone)Foams Prepared by Pressure Quenching using Supercritical CO」,by Karimi,et.al.,J.of Supercritical Fluids,61(2012)175〜190に開示されている。発泡体の作製における超臨界二酸化炭素の使用については、「Supercritical Carbon Dioxide:Putting the Fizz into Biomaterials」,Barry,et.al,Phil.Trans.R.Soc.A,2006 364,249〜261にも開示されている。
【0008】
凍結乾燥プロセスは、当該技術分野では周知のものであり、合成吸収性材料から連続気泡発泡体を調製するために用いられてきた。しかしながら、これらのプロセスには困難が伴わないわけでなない。凍結乾燥されるポリマーは、選択された溶媒中に可溶である必要があるため、凍結乾燥に適した溶媒の数は限られている。使用に適した溶媒の凝固点は、妥当な棚温度及び凝縮器温度(shelf and condenser temperature)よりも高く(約−70℃)、かつ凍結乾燥しようとする樹脂を都合よく溶解するうえで充分に低い必要がある。更に、低温における蒸気圧が、溶媒が凍結状態から充分に妥当な速度で昇華できるように充分に高くなくてはならない。凍結乾燥プロセスで便宜よく使用される一般的な溶媒としては、水、1,4−ジオキサン、DMSO、DMF、及び特定のアルコールが挙げられる。大部分の吸収性ポリエステルはその性質が疎水性であるが、凍結乾燥に適した溶媒はその性質が極性である傾向にあり、したがって、適切な凍結乾燥溶媒中に溶解できるのは希な吸収性ポリマーであることからこれにより溶解度の問題が生じる。
【0009】
凍結乾燥によって作製されるポリマー発泡体の最終的な構造は、溶媒中のポリマー濃度をはじめとする多くの因子に依存する。より高い機械的特性は、発泡体のバルク密度としばしば相関している。すなわち、高い密度は、溶解されたポリマーのより高濃度を必要とする。例えば、3重量%の初期固形分に対して、凍結乾燥溶媒中では10重量%の初期固形分が溶解されていることが必要である。所与のポリマーが溶媒中に可溶であると考えられたとしても、そのポリマーは発泡体医療装置に必要とされる場合がある高濃度では可溶でない場合がある。凍結乾燥に適した溶媒中に可溶であるこれらの吸収性ポリマーであっても、早すぎるゲル形成の現象から生じる別の難点が存在する場合がある。早すぎるゲル形成は、必要とされる均質な発泡体の製造の妨げとなることが知られている。早すぎるゲル化は、高濃度の溶液中では特に問題となる。ゲル化現象は、固体中での結晶化の際に起きうるものと同様であるが、それほど強くはない、分子鎖間及び分子鎖内会合によって生じうるものと考えられる。凍結乾燥ポリマー溶液中でいったんゲル化が生じると、純粋な溶媒(すなわち、ポリマーが溶解していない溶媒)が結晶化する際に生じなければならない相分離の間必要とされる移動度をポリマー鎖が有することが極めて困難となる。個々の鎖は定位置に「固定」されているため、ポリマー濃度が増大し続ける溶媒/ポリマー相と合わされるように解けることができない。
【0010】
一般的な凍結乾燥プロセスに関しては、製造の観点から、ポリマー溶液は180分よりも長い時間をかけてゲルを形成することが望ましいことになる。これにより、溶液を成形型に分注し、この成形型を凍結乾燥ユニット又は他の熱処理システムに装填し、望ましくないゲルが形成される前に凍結させるのに充分な時間を与えることになる。
【0011】
所与のポリマーの分子量を小さくすることによって、より高いポリマー濃度を有する溶液が得られる場合があることが知られている。しかしながら、これは、得られる発泡体の機械的特性が、ほとんどの外科的用途において許容しえないレベルに下がってしまうという難点を有している。
【0012】
医療用途で用いられる吸収性ポリマー発泡体は、典型的には寸法安定性を示すものでなければならない(すなわち、発泡体は、エチレンオキシド滅菌、輸送、倉庫での保管といった追加的なプロセス後の処理が行われる間、変形してはならない)。これは、ガラス転移温度が低いポリマーを扱う場合、分子移動度が高くなり、それにより、反り、収縮、及び他の歪みが生じやすくなるためにしばしば問題となる。発泡体を構成するポリマーの結晶化は、寸法安定性を実現するための一手段である。しかしながら、発泡体中での結晶化度が高すぎるポリマーは、所与の外科的用途には固すぎる最終的な物品となる場合があることに留意すべきである。例えば、「スプリングバック」のレベルは不適当である場合がある。したがって、重要な機械的特性は、ポリマー自体(Tなど)によって影響されるのみでなく、最終製品で生じるポリマーの形態によっても影響され、これはやはりポリマー及びその熱処理履歴によって大きく影響される。凍結乾燥溶媒中への溶解を試みる以前の樹脂中の結晶化度も、低Tの樹脂では重要である。結晶化度が低すぎると、樹脂ペレット(又は粉砕樹脂)が保管又は輸送の間に、例えば、20℃などのほんのわずかでさえ、温度上昇に曝された場合に、それ自体でくっつきはじめる。いったんは分割された、自由流動性ポリマー粒子は次第に大きな煉瓦状の塊に凝集する。樹脂の結晶化度が高すぎると、選択された溶媒中に樹脂を溶解しようとする間、困難が生じる場合がある(すなわち、樹脂が適切に溶解しない場合がある)。
【0013】
凍結乾燥プロセスは、好適な生成物を安定的に生成することが困難であるという点で課題があることが知られている。ポリマーが容易に溶解しない場合、ポリマーによるゲルの形成が速すぎる傾向がある場合、ポリマーがプロセスの間(及びその後のEOによる滅菌の間、又は輸送の間)寸法安定性を維持できない場合、又は溶媒が適切に除去されない場合には、好適な発泡体が得られない。
【0014】
適切な構造を有する吸収性ポリマー発泡体を作製できることは問題の解決とはならないことは言うまでもない。つまり、埋め込み後の適切な加水分解プロファイルを実現する適切なエステル化学特性を有する発泡体を提供することが必要である。多くの長期的外科用途に対する機械的特性の維持は、治癒の遅い患者又は治癒の遅い体組織では極めて重要である。最後に、ポリマーは、手術部位から身体によって除去されるように、吸収性、すなわち、インビボでゆっくりと加水分解するものでなければならない。
【0015】
したがって、ポリマーが凍結乾燥法による外科的発泡体製品の製造に好適なものであるためには、ポリマーは、所定の溶解度特性及び結晶化特性、並びに所定の機械的及び加水分解特性を有するものでなければならない。
【0016】
凍結乾燥プロセスによる発泡体形成のためのいくつかの吸収性合成ポリエステルの使用は周知のものであり、当該技術分野において開示されている。例として、1993年1月21日出願、1995年11月21日発行のBezwadaらによる米国特許第5,468,253号、「Elastomeric Medical Device」が挙げられ、約30〜約70重量%の、a)ε−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、及びエーテルラクトン、又はこれらの混合物と、b)実質的にグリコリド、パラ−ジオキサノン、又はこれらの混合物である残部とのランダムコポリマーを含む生体吸収性エラストマーで形成された医療装置又は医療装置の構成部品を開示している。米国特許第5,468,253号は、このエラストマーで作製された生体吸収性発泡体を更に開示している。
【0017】
1999年6月30日出願、2002年3月12日発行のVyakarnamらによる米国特許第6,355,699号、「Process for Manufacturing Biomedical Foams」は、生体吸収性発泡構造体を形成するための改善された凍結乾燥プロセスを開示している。
【0018】
Vyakarnamらにより記載されたε−カプロラクトン/グリコリドコポリエステルは、弾性材料を目的としたものである(第5段、32〜36行を参照)。当該発明者らによる、1工程のワンポット重合プロセス法は、モノマー繰り返し単位のランダムな分布を示すポリマーを生成する傾向を有する。一般的に、Bezwadaら及びVyakarnamらの実質的なランダムコポリマーは、少なくとも1種の凍結乾燥溶媒である1,4−ジオキサンによく溶け、長期間後に望ましくないゲルを生成するのみである。この最後の特性は、プロセス時間に大きな余裕を与えることから製造の観点から有用である。しかしながら、Bezwadaらによって記載されているランダムε−カプロラクトン/グリコリドコポリエステルの望ましくない特性は、当該発明者らのコポリマーは低い結晶度しか得られない点である。これは、これらのコポリマーは比較的低いガラス転移温度を有し、したがって寸法安定性を得るために必要とされる結晶化度を有しないことから、極めて重要な特性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、医療用途で使用するための新規な吸収性ポリマー発泡体が当該技術分野において求められている。厳密に言うと、吸収性発泡体の場合において、埋め込み後の長期間にわたる機械的特性の維持を提供することが求められている。これに加えて、滅菌、保管、輸送、又はわずかに高い温度に曝される間の、反り、収縮、及び他の歪みを防止するための改善された寸法安定性を有する発泡体を提供することが求められている。更に、圧縮時に良好な「スプリングバック」を与える、柔らかすぎもしなければ固すぎもしない、適切な固さを有する吸収性発泡体を提供することが求められており、これには、適正な範囲の結晶化度及びTが必要である。
【0020】
最後に、凍結乾燥プロセスによって寸法的に安定した発泡体を形成することができるように、適切な結晶化速度及び適切な結晶化レベルを得る能力を有する吸収性ポリマーを提供するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
吸収性医療用途用のグリコリドとε−カプロラクトンとの半結晶性ブロックコポリマーで作製された新規な発泡体が開示される。半結晶性吸収性セグメント化コポリマーは、重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位のランダムセグメントと、主として重合グリコリドを含む少なくとも1つのセグメントとを有する。全セグメント化コポリマーの重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比は、約55:45〜約65:35である。ランダムセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比は、約45:55〜約60:40である。
【0022】
好ましい一実施形態では、本発明の新規な発泡体は、約3重量%〜約20重量%、より好ましくは約5重量%〜約15重量%の固形分含量を有する。本発明の発泡体は、好ましくは約0.5mm〜約13mm、好ましくは約1mm〜約5mmの厚さを有する。
【0023】
本発明の別の態様は、凍結乾燥プロセスによって吸収性発泡体を作製する方法である。本プロセスは以下の工程を有する。すなわち、
a)重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位を含む半結晶性吸収性セグメント化コポリマーを含む吸収性ポリマーを提供する工程であって、重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約55:45〜約65:35であり、中央ブロック内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約45:55〜約60:40である、工程と、
b)凍結乾燥用の溶液(すなわち、凍結乾燥溶液)を形成するために、充分な量のコポリマーを好適な溶媒に溶解する工程と、
c)溶液の少なくとも一部を、早期のゲル形成を防止するうえで充分に効果的な温度で好適な成形型内に注入する工程と、
d)後の凍結乾燥プロセスにおける溶媒除去を促進するために溶液を早期のゲル形成を防止するような充分に速い速度で凍結させる工程と、
e)成形型内の凍結溶液を凍結乾燥プロセスに供する工程であって、圧力を低下させ、熱を加えて溶媒を昇華させて吸収性発泡体を形成する、工程と、を有する。
【0024】
本発明の更に別の態様は、凍結乾燥溶液である。溶液は、1,4−ジオキサン、少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の水との混合物、及び少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の分子量1500ダルトン未満の有機アルコールとの混合物からなる群から選択される溶媒を含む。更に、本発明の凍結乾燥溶液は、約3重量%〜約20重量%の、重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位を有する半結晶性吸収性セグメント化コポリマーであって、重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約55:45〜約65:35であり、中央ブロック内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約45:55〜約60:40である、半結晶性吸収性セグメント化コポリマーを含む。
【0025】
本発明のなお更なる別の態様は、本発明の上記の凍結乾燥発泡体のアニーリングプロセスである。アニーリングプロセスは、発泡体を約60℃〜約110℃の範囲の温度に約1〜約12時間曝すことによって凍結乾燥発泡体の機械的特性及び寸法安定性の微調整を可能とするものである。
【0026】
本発明のこれら及びその他の態様並びに利点は、以下の説明及び添付の図面からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のポリマーの概略図である。
図2】本発明のポリマーの組成のグラフによる表現である。
図3】選択されたポリマーのロットについて等温結晶化曲線を示したグラフである。
図4】ランダムコポリマー(カプロラクトン/グリコリド)の凍結乾燥に対する一次乾燥プロファイルを示したグラフである。
図5】異なるゲル化時間を有する本発明のセグメント化ブロックコポリマー溶液の凍結乾燥に対する一次乾燥プロファイルを示したグラフである。
図6】異なるゲル化時間を有する本発明のセグメント化ブロックコポリマー溶液の凍結乾燥に対する一次乾燥プロファイルを示したグラフである。
図7】様々な温度でアニーリングされたポリマー5に基づく発泡体のDSCサーモグラムを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
同時係属中の、本願と同一譲受人に譲渡された、本願と同日に出願された米国特許出願第______号(代理人整理番号ETH5807)を参照により援用するものとする。
【0029】
吸収性、生体吸収性、生体再吸収性、再吸収性、生分解性なる用語は、本明細書では互換可能に用いられる。
【0030】
本明細書で使用される場合の、また明確にする目的で、多くの用語を定義する。ランダム(コポリエステル)コポリマーとは、すべてのモノマーを重合反応器に一工程で添加した、重合時の反応性比の考慮によって支配される、ラクトンモノマー又はヒドロキシ酸から作製されたその全体の組成を有するコポリマーと少なくとも同程度にランダムな、鎖に沿ったモノマー部分の連鎖分布を有するコポリエステルとして定義される。
【0031】
統計的コポリマーは、モノマーの順序の残基が統計的な規則に従うコポリマーである。鎖の中の特定の点において所与のタイプのモノマー残基を見出す確率は、鎖の中のモノマー残基のモル分率に等しく、その結果ポリマーは、「真にランダムなコポリマー」と呼んでもよい。ランダムコポリマーでは、モノマー状の単位の連鎖分布は、ベルヌーイの統計学に従う。
【0032】
真のランダムコポリマーは、モノマー反応比の現象の複雑さに起因して見出すのが困難である。モノマーは、単一の工程でバッチ反応器に添加されてもよいが、成長している鎖に別のモノマーの上に1つのモノマーを添加するのに、わずかな傾向がある場合がある。これについては本明細書で下記に更に考察する。
【0033】
バッチ重合プロセスでランダムコポリマーを形成するために、モノマーは、一般に単一の工程でバッチ反応器に添加される。連続的な重合プロセスでは、モノマーは、実質的に一定の組成で連続的な反応器に添加される。
【0034】
セグメント化(コポリエステル)コポリマーは、一方で、反応比の考慮に基づいて予想されるものを超えた、ランダムコポリマーよりもランダムでない非ランダム連鎖分布を有する。
【0035】
所与のモノマーの連鎖長さが大きくなり始めると、ブロック状構造に近くなり始める。「ブロックコポリマー」は、マルチブロックの性質となる可能性があり、テトラブロック、トライブロック、又はジブロックなど、異なる化学ブロックの数に依存する。
【0036】
「ジブロックコポリマー」であるブロックコポリマーは、2つの異なる化学ブロックを含む構造を有してもよく、A−Bブロックコポリマーと呼ばれる。トライブロックコポリマーが、1つのモノマー連鎖を有する場合、その両端部にA、そして2番目にBをその内側に置くと、A−B−Aブロックコポリマー呼ばれる場合がある。
【0037】
非ランダム連鎖分布を開環重合で生成する既知の技法は、異なるモノマー供給を段階的に反応器に追加する方法である。例えば、ある量のモノマーBを、1官能性反応開始剤と共に反応器に添加してもよい。B連鎖のみで作製されたポリマーが形成される。次に、第2のモノマーAを反応器に添加するが、これにより形成されるコポリマーは、したがってA−Bブロックコポリマーとなってもよい。あるいは、重合の開始時に二官能性反応開始剤を使用した場合、これにより形成されるコポリマーは、したがってA−B−Aブロックコポリマーとなってもよい。
【0038】
コポリマーの連鎖分布の「ブロック度」の特徴付けの助けとするため、Harwoodは、「連鎖数」(run number)の概念を開示している(参考文献:Harwood,H.J.;Ritchey,W.M.,Polymer Lett.1964,2,601)。重合した「A」繰返し単位と重合した「B」繰返し単位とで作り上げられたコポリマーでは、対応する連鎖数は、個々の「モノマー」に対する平均鎖連鎖長さを反映する。鎖を下流に辿り、A単位に遭遇する毎に、カウンターを作動させた。別のA単位が認められる毎にカウンターを1増やした。B単位に達したら直ちにカウンターを止めた。鎖全体がサンプリングされ、樹脂の残りの部分について作業が完了した時点で、「A」単位に対するHarwoodの連鎖数について平均値を確立することができる。「B」についても同様のことを行うことができる。統計処理は、理論的にA/Bモル組成のランダムコポリマーに対して、構成要素のそれぞれに対するHarwoodの連鎖数を、下記の式に基づいて計算することができることを示している。
HRN=1+([A]/[B])及びHRN=1+([B]/[A]) (1)
式中、HRN及びHRNは、繰返し単位A及びBのそれぞれに対するHarwood連鎖数であり、[A]及び[B]は、繰返し単位A及びBのそれぞれのモル分率である。
【0039】
したがって、A単位及びB単位から作り上げられた20/80 A/Bランダムコポリマーは、A及びBのそれぞれに対して1.25及び5.0のHarwoodの連鎖数を有することが予想される。非ランダムコポリマーの場合では、同じ20/80の組成のコポリマーでも、A成分についてのHarwood連鎖数が、ランダムコポリマーに見られる1.25という値よりも大幅に高い、例えば、1.5又は3であるような値を有する可能性がある。これは、「A」単位が一緒になる傾向、すなわちブロック状の連鎖分布を明らかに示している。
【0040】
共重合では、モノマーは、モノマー1が「モノマー1の繰返し単位」で終端する成長中の鎖に付加される傾向が高いか、又はモノマー1が「モノマー2の繰返し単位」で終端する成長中の鎖に付加される傾向が高いという現象のために、厳密にランダムに連鎖されない場合がある。この現象を説明するために、反応比(r1及びr2)の概念が開発されている。
【0041】
本発明の実施において有用なセグメント化コポリマーは、本質的に半結晶性である。セグメント化コポリマーは、多かれ少なかれランダムなカプロラクトン及びグリコリドモノマーの繰り返しからなる中央ブロックと、主としてグリコリドモノマーからなる末端ブロックとを有している(図1に概略的に示される)。プレポリマー組成物は、グリコリド/ε−カプロラクトンが、モル基準で典型的には約45/55〜約60/40の範囲であり、最終組成物は、典型的には約55/45〜約65/35である。驚くべきこと、また予期せざることとして、本発明の実施において有用なコポリマーは、ガラス転移温度が室温よりも大幅に低い、本質的に半結晶性のものであることが発見された。他の用途の中でも特に好ましい、かかるポリマーの1つの用途に、新規の、強くて柔軟な、寸法的に安定した発泡体の製造がある。
【0042】
ポリ(グリコリド)は、高いガラス転移温度(約40℃のT)を有する半結晶性ポリエステルである。この材料は高い弾性率を有し、そのため極めて固い。ポリ(グリコリド)が示す高い弾性率のため、ポリ(グリコリド)は圧縮可能で良好な回復性を示さなければならない発泡体にも適しておらず、ポリ(グリコリド)から作製されたこうした物品は単純に固すぎる。しかしながら、グリコリドとε−カプロラクトンの特定のコポリマーは、驚くべきこと、また予期せざることとして、柔軟性及び圧縮性、並びにより長期の機械的な特性の損失プロファイルが求められる用途において特に有用であることが判明した。
【0043】
本発明は、グリコリドとε−カプロラクトンとのコポリマーで作製された発泡体の形態の医療装置、及びかかる構造体の製造方法を提供するものである。より具体的には、このクラスのコポリマーはグリコリドを多く含み、ランダムではない、ブロック状の連鎖分布を有するように作製される。材料の大部分がグリコリド系である、かかるグリコリド/ε−カプロラクトンコポリマーでは、樹脂の形態は、本用途で有用であるように最適化される必要がある。組成物は、グリコリドを豊富に有する必要があり、例えば、50パーセント以上の重合したグリコリド含有量を有することを我々は発見した。
【0044】
新規の吸収性ポリマーが比較的狭い組成範囲及び非ランダムな連鎖分布を有することが、驚くべきこと、また予期せざることとして発見された。この吸収性ポリマーを、発泡体へと作製した場合、良好な取扱い特性を与えるように充分な柔らかさを有する一方で、インビボで埋め込み後、4週間以上にわたって充分に効果的な機械的一体性を有する発泡体が得られる。約55mol%〜約65パーセントのモル濃度を有する重合グリコリドと、約35mol%〜約45mol%のモル濃度の重合ε−カプロラクトンとを含むセグメント化された、すなわち、反応比の考慮に基づいて予想されるもの以上の非ランダムな連鎖分布を有するポリ(グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)コポリマーは、本発明の実施において有用である。このクラスのコポリマー、つまりグリコリドが豊富なポリ(グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)ファミリーは、好ましくは約35mol%〜約45mol%の重合ε−カプロラクトンを含む。
【0045】
厳密に言うと、約55mol%よりも低い濃度の組込まれたグリコリドを有する、重合グリコリドが豊富なポリ(グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)コポリマーは、結晶化が困難であることから、本発明の実施において有用なコポリマーとしては不適当である。一方、約70mol%より高い濃度の組込まれたグリコリドを有する、重合したグリコリドが豊富なポリ(グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)コポリマーは、凍結乾燥に適した溶媒に不溶であるために不適当である。
【0046】
外科用装置の製造に使用される発泡体、フィルム、及び不織布の寸法安定性は、使用前の滅菌包装中だけでなく、外科的な埋め込み後の患者体内(インビボ)でも、収縮及び反りを防止するうえで極めて重要である。低T材料の寸法安定性は、形成された物品を結晶化することによって達成することができる。コポリマーの結晶化現象に関し、多数の因子が重要な役割を果たす。これらの因子は、総合的な化学組成及び連鎖分布を含む。本発明の発泡体の寸法安定性は、わずかに高い温度(例えば37℃)に曝された場合、かつ/又は滅菌時に起きうるようにエチレンオキシドなどの可塑化ガスに曝露された場合にもその物理的寸法を実質的に維持するこれらの物品の能力と関連している。全体的な結晶化度(及び材料のT)は寸法安定性のうえの役割を持つが、結晶化度を達成する速度が処理にとって重要であるということに気付くことが重要である。より低Tの材料を加工する場合であって、その結晶化速度が非常に遅い場合、収縮と反りが発生し易いので寸法許容差が非常に維持し難い。したがって、迅速な結晶化が有利である。本発明のシステムに関し、所与の全体的な化学的組成のコポリマーの結晶化速度を高めるには、ブロック構造がランダム連鎖分布より好ましいことが発見された。しかしながら、驚くべきこと、かつ予想せざることとして、実験的な困難、並びにエステル交換及び他の要因に起因する課題にもかかわらず、2種類のラクトンモノマー、例えば、グリコリド及びε−カプロラクトンを用いてこれを実現することがここに可能となった。
【0047】
本発明の実施において有用である、本発明の半結晶性コポリマーの組成上の連鎖は、以下のように概略的に図示される。すなわち、
GGGGGGGGGGGGGG−GCGCGGCGCGCGGGCGCGGCG−GGGGGGGGGGGGGG
(重合グリコリドブロック−重合(グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)−重合グリコリドブロック)
【0048】
半結晶性ポリグリコリドブロックは、コポリマーのおよそ約5重量%〜約20重量パーセントを表し、中央ブロックは、重合グリコリドとε−カプロラクトンとに基づいたほぼ非晶質のランダムプレポリマーから形成されている。上記の式で、Gはグリコリドを表し、Cはε−カプロラクトンを表す。
【0049】
本発明の実施において有用な新規なコポリマーは、約190℃〜約220℃の温度でグリコリドとε−カプロラクトンモノマーとを最初に重合させることによって調製される。約195℃〜約205℃の温度が特に有用であり、好ましい。ドデカノールなどの単官能アルコールを反応開始のために使用することもあるが、ジエチレングリコールなどのジオールが良好に作用することが分かっている。従来の1官能性反応開始剤と、2官能性又は多官能性の反応開始剤との組み合わせもまた、結晶化速度並びに最終的な結晶化度レベルを含む形態生成などの更にいくつかの重要な特性の影響を与える手段として使用されてもよい。反応時間は触媒濃度に応じて変えてもよい。好適な触媒としては、オクタン酸スズ(stannous octoate)などの従来の触媒が挙げられる。十分に有効な量の触媒が利用される。触媒は、約10,000/1〜約300,000/1の範囲の全体的なモノマー/触媒濃度で、好ましくは25,000/1〜約100,000/1の濃度で使用されてもよい。この第1段階の重合(例えば、約4〜8時間)の完了後、温度は、約210℃より上(典型的には約210℃〜215℃)に上げられる。温度が、例えば、約215℃に上げられた時点でグリコリドモノマーの残りを反応器に加えることができるが、これはモノマーを予め溶融し、これを溶融した形態で加えることによって簡便に行うことができる。グリコリドモノマーの第2の部分が加えられた後、共重合を完了させるために、充分に効果的な時間(例えば、約1〜2時間)の間、温度を約195℃〜約205℃にする。
【0050】
本発明のコポリマーを生産するための様々な代替的な重合の方策及びパラメータが可能であることが当業者には明らかであろう。例えば、好ましくはないが、重合のすべて又は一部を触媒の存在無しで行うことも可能である場合がある。
【0051】
プレポリマーへ添加されるモノマー供給物は、必ずしも純粋なグリコリドである必要はないことが理解されるであろう。プレポリマーに純粋なグリコリドモノマーを添加する代わりに、プレポリマーに添加するモノマー供給物を調節するために、最高約10mol%の別のモノマーを使用してもよい。例えば、プレポリマーに添加されるモノマー供給物は、少量のε−カプロラクトンを含んでいてもよい。モノマー供給物は、例えば90/10グリコリド/ε−カプロラクトンであってよい。ε−カプロラクトンの「末端ブロック」への添加は、融点、結晶化速度、及び最終的なコポリマーの全体的な結晶化度を下げる。約10mol%より多い添加は、最終的なコポリマーの必要とされる特性を、多くの用途で有用でなくなるほど大幅に低下させてしまう。本発明の半結晶性コポリマーのこの変異型の組成上の連鎖は、以下のように概略的に図示される。
GGCGGGGGGGGCGG−CGCGCCGCGCGCCCGCGCCGC−GGGGGGGCGGGGGG
【0052】
重合の変例は、「プレポリマー」又は「第2段階」モノマーを複数の工程で添加する可能性を含む。あるいは、形成されたプレポリマーに、短時間にわたって(例えば、約10分間)又は比較的長い時間にわたって(例えば、約2時間)連続的に更なるモノマーを添加してもよい。
【0053】
すべての触媒を重合の開始時に、すなわちプレポリマーの形成の開始時において添加するように記載しているが、その代わりに、触媒の一部分のみを重合のこの段階で添加し、残部を後で、ここで形成されたプレポリマーにモノマーを導入している間に添加してもよい。
【0054】
充分に効果的な量の、許容される染料及び顔料などの着色剤が、重合の任意の段階で添加されてもよいことを理解するべきである。かかる着色剤としては、D&C Violet No.2又はD&C Green No.6が挙げられる。あるいは、凍結乾燥プロセスなどの後の処理工程の間に染料を導入することができる。
【0055】
ここでも、当業者は、本発明の新規のコポリマーを提供するために、様々な代替的な重合スキームを提供することができる。
【0056】
本発明の実施において有用な新規なコポリマーは、本質的に半結晶性である。その分子量は、その意図される機能を発揮するのに必要とされる機械特性を事実上有する医療用デバイスをそれらから形成できるほど十分に高い。メルトブロー不織布構造及びマイクロスフェア形成については、分子量は少し低い場合があり、従来の溶融押出繊維については、分子量が少し高い場合がある。典型的に、例えば、本発明のコポリマーの分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、又はヘキサフルオロ−2−プロパノール)中、25℃において0.1g/dlの濃度で測定されたときに約0.5〜約2.5dL/gの固有粘度を示す程度である。コポリマーのより典型的な固有粘度は、HFIP中、25℃において0.1g/dLの濃度中で測定したときに、約0.8dL/g〜約2.0dL/gの範囲であり、好ましい値は約1.2dL/g〜約1.8dL/gの範囲である。
【0057】
一実施形態では、本発明の共重合体で作製された医療用装置は、十分に有効な量の従来の有効成分を含んでもよく、又はかかる成分を含むコーティングを含んでもよく、かかる成分としては、抗菌剤、抗生物質、治療薬、止血薬、放射線不透過性材料、組織増殖因子、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。一実施形態では、抗菌剤は、トリクロサン、PHMB、銀及び銀誘導体、又は任意の他の生物活性剤である。
【0058】
使用してもよい治療薬の種類は、数限りない。一般に、本発明のこれらの医療用装置及び組成物を介して投与してもよいできる治療剤としては、非限定的に、抗生物質及び抗ウィルス薬などの抗感染薬、鎮痛薬及び鎮痛薬の組み合わせ、食欲抑制薬、駆虫薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、癒着防止薬(adhesion preventatives)、抗けいれん薬、抗うつ薬、抗利尿薬、止瀉薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤;抗偏頭痛製剤、避妊薬、抗嘔吐薬、抗腫瘍薬、パーキンソン病治療薬、抗そう痒剤;抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬;交感神経模倣薬、キサンチン誘導体、ピンドロール及び抗不整脈薬などのカルシウムチャネル遮断薬及びβ遮断薬を含む心血管製剤、降圧薬、利尿薬、全般的な冠血管、抹消及び大脳を含む血管拡張薬、中枢神経刺激薬、鬱血除去剤を含む咳及び感冒製剤、エストラジオール、及びコルチコステロイドなどのその他のステロイドなどのホルモン、催眠薬、免疫抑制薬、筋弛緩薬、副交感神経抑制薬、覚醒剤、鎮静薬、精神安定薬、天然由来の又は遺伝子組み換えされたタンパク質、多糖類、糖タンパク質又はリポタンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗原、コリン作用剤、化学療法剤、止血剤、血栓溶解薬、放射性医薬品及び細胞増殖抑制薬(cystostatics)を挙げることができる。治療的に有効な用量は、インビトロ又はインビボの方法によって決定されてもよい。それぞれの特定の添加剤又は有効成分については、要求される最適な投与量を判定するために個々に決定することができる。所望の結果を得るための効果的な用量レベルの決定は、当業者の範囲内である。添加剤又は有効成分の放出速度はまた、治療すべき治療状態に応じて、有利なプロファイルを決定するために当業者の範囲内で異なる場合がある。
【0059】
本発明のコポリマーは、様々な常套法によって溶融押出成形されてもよい。モノフィラメント繊維の形成は、溶融押出した後、成形品をアニール処理しながら又はアニール処理せずに延伸させることによって達成できる。マルチフィラメント繊維の形成は、常套法で実行できる。モノフィラメント及びマルチフィラメント編組縫合糸の製造方法については、「Segmented Copolymers of epsilon−Caprolactone and Glycolide」という名称の米国特許第5,133,739号、及び「Braided Suture with Improved Knot Strength and Process to Produce Same」という名称の米国特許第6,712,838号に開示されており、これら特許文献の全体は、参照により本明細書に援用される。
【0060】
本発明のコポリマーは、従来のプロセスを用いて従来の医療用デバイス、更には縫合糸を製造するのに使用してもよい。例えば、コポリマーを成形型内で結晶化させた後、射出成形を行ってもよく、あるいは、生体適合性の核形成剤をコポリマーに添加してサイクル時間を短縮してもよい。本発明のコポリマーは、著しい破壊、割れ、分離、又は他の形態の破損を被ることなく変形可能とすることによって部分的に機能する医療用デバイスを製造するために使用されてもよい。変形可能とすることによって部分的に機能する医療用デバイスとしては、蝶番を有するもの、又は実質的に曲がるように求められるものが挙げられる。医療用デバイスとしては、ステープル、鋲、クリップ、縫合糸、かかり付きの縫合糸、組織定着デバイス、メッシュ定着デバイス、吻合デバイス、縫合糸及び骨アンカー、組織及び骨ネジ、骨プレート、プロテーゼ、支持構造体、組織増強デバイス、組織結紮デバイス、パッチ、基板、メッシュ、組織工学スカフォールド、薬物送達デバイス、並びにステント、等々を含む従来の医療用デバイス、特に植え込み式の医療用デバイス、が挙げられうる(しかしこれに限定されない)。
【0061】
本発明のコポリマーは、相互接続された連続気泡型多孔質発泡体を凍結乾燥によって製造するために使用することができる。凍結乾燥プロセスは、最初にコポリマーを好適な溶媒に溶解して均一な溶液を調製するように説明される。本発明のポリマー溶液(すなわち凍結乾燥溶液)の濃度は、約3重量%〜約20重量%、より好ましくは約5重量%〜約15重量%の範囲である。次いで、凍結乾燥溶液に冷却熱処理を行って溶液を凍結させることによりポリマーと溶媒成分とを相分離させ、細孔の形態を固定する。当業者であれば、溶媒結晶が発泡体の最終的な細孔を形成することは認識されるであろう。次いで、凍結したポリマー/溶媒系に真空乾燥サイクルを行って昇華により溶媒を除去すると、多孔質のポリマー構造が残る。真空乾燥サイクルは典型的には複数の温度で行われる。「一次乾燥」は、溶媒の凝固点よりも低い温度における昇華によって行われ、このプロセスの間に大部分の溶媒が除去される。多くの場合、溶媒の凝固点よりも高い温度で「二次乾燥」を用いて残留結合溶媒がある場合、蒸発によってすべて除去する。一次乾燥の間に溶媒の大部分を除去することが有利である。その理由は、溶媒の凝固点よりも高い温度では、残留する溶媒が大量に存在するとポリマーを再溶解して発泡体の多孔質構造を破壊するおそれがあるためである。この現象はしばしば「メルトバック」と呼ばれ、反り返った、すなわち「ポテトチップ」状の外見を有する製品をもたらす可能性がある。
【0062】
凍結乾燥に使用される溶媒は、凍結乾燥における適合性(適切な凝固点、蒸気圧など)及び適切なポリマー溶解度について選択されるべきである。凍結乾燥に適した溶媒としては、水、ギ酸、ギ酸エチル、酢酸、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、環状エーテル(すなわち、TMF、DMF、及びPDO)、アセトン、C2〜C5アルコールのアセテート(例えば、酢酸エチル及び酢酸t−ブチル)、グリム(すなわち、モノグリム、エチルグリム、ジグリム、エチルジグリム、トリグリム、ブチルジグリム及びテトラグリム)、メチルエチルケトン、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ラクトン(例えば、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネート)、ジメチルカーボネート、ベンゼン、トルエン、ベンジルアルコール、p−キシレン、ナフタレン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、1,2−ジクロロメタン、モルホリン、ジメチルスルホキシド、ヘキサフルオロアセトンセスキ水和物(HFAS)、アニソール、及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒のうち、本発明の実施において好ましい溶媒は1,4−ジオキサンである。
【0063】
ポリマー溶液は、典型的には、1)熱処理のために液体ポリマー溶液の閉じ込めを行う、2)得られる発泡体の形状に対するテンプレートを与える、という2つの目的で凍結乾燥に先立って成形型内に分注される。溶液の充填深さは、発泡体の厚さと直接相関し、本発明の発泡体の好ましい得られる厚さは、約0.5mm〜約13mmの範囲である。鋳型は溶媒が昇華できるように開口部を有する必要がある。成形型は、プロセスの全体を通じて成形型の完全性を維持するために溶媒系と適合性を有する任意の材料で作製することができる。成形型は、熱処理を行うためにポリマー溶液への熱伝達を促進するため、高い熱伝導率を有する材料で形成されることがしばしば好ましい。本発明のために好ましい成形型材料としては、アルミニウム及びステンレス鋼が挙げられるが、当業者であれば、広範な従来の材料を使用してもよいことを理解するであろう。
【0064】
最も生体吸収性の高い材料は、凍結乾燥に適した溶媒中に溶けにくい。驚くべきことに、望ましいバルク密度を有する発泡体をもたらす濃度のポリマー溶液を、本発明のコポリマーを用いて作製することができる。これらの凍結乾燥溶液の特定のものが、望ましくないゲルを速い速度で形成することが予期せずして見出された。ゲルが形成されると、純粋な溶媒が結晶化する際に生じなければならない相分離において必要とされる移動度をポリマー鎖が有することが極めて困難となる。そのため、溶媒がこれらの「固定された」鎖内に閉じ込められ、昇華によって溶媒を除去することが極めて困難となる。一次乾燥におけるどのパラメータ(温度、圧力、又は時間)も、ゲル化したポリマー溶液から溶媒を除去するうえで効果的ではないことが判明している。更に、ゲルを熱処理(加熱、冷却、及び/又は加熱/冷却サイクル)に曝しても、溶媒を乾燥させることができないことも判明している。これらのポリマー溶液を凍結乾燥するうえで唯一成功を収めた方法は、望ましくないゲルが形成される前に溶液を速やかに凍結させ、これにより溶媒がゲル内部に閉じ込められることを防止することであった。
【0065】
ポリマー溶液の凍結は、ゲル化に必要な時間よりも速い速度で生じる必要がある。しかしながら、ポリマー鎖の移動度も温度によって影響されるため、ゲル化の速度論は温度が下がるにつれて大きくなることは理解されるべきである。溶液の温度が下がるにしたがって、ゲル化が開始するまでの時間は長くなる。本発明の好ましい実施形態の最初の熱処理の好ましい冷却速度は、5℃/分(温度速度とみなした場合には−5℃/分)に等しいか又はそれよりも速い。より好ましい冷却速度は、10℃/分(温度速度とみなした場合には−10℃/分)に等しいか又はそれよりも速い。
【0066】
凍結される溶液の量、凍結される溶液の深さ、成形型の設計、対流及び伝導による熱伝達、並びにコールドフィンガーなどの熱伝達補助手段などの多くの因子を組み入れることができる、上記の冷却速度を実現するための多くの方法が存在しうる。本発明の好ましい方法は、「急冷」を利用することであり、ポリマー溶液(成形型内の)を、凍結乾燥ユニット、冷蔵庫、液体窒素若しくは他の冷媒浴、又は液体窒素で冷却された急速冷凍庫内の低温棚など、典型的には−30℃よりも低い極度の低温環境の中へと導入する。溶液は、予め冷却した成形型内に直接注入することもでき、溶液は成形型内で直ちに低温環境に曝されるが、これにより溶液が成形型を完全に満たす能力は影響される。熱電対を使用して溶液の温度を監視し、少なくとも5℃/分の所望の冷却速度を得るための適切な条件を規定することができる。
【0067】
望ましくないゲル化が生じる前のポリマー溶液の初期凍結させた後、凍結したポリマー/溶媒系に所望により更なる熱処理を行うことができる。これは、温度を凍結乾燥溶液のガラス転移温度として知られるTg’よりも高いが、その凍結温度よりも低い温度に昇温させることでオストワルド成長により溶媒の氷の結晶サイズを標準化する工程を含むことができると。溶媒が融解してポリマーを可溶化し、望ましくないゲルが形成される可能性を生じることから、溶媒の凍結温度を超えないようにすることが重要である。
【0068】
本発明の凍結乾燥プロセスは、従来のトレー型の凍結乾燥機(凍結乾燥ユニットとしても知られる)内で行ってもよい。ユニットは、冷却システムによって加熱及び冷却することができる複数の棚を有するキャビネットを備えてもよい。これらの棚は、熱処理及び乾燥サイクル用の加熱及び冷却を行うことが可能であり、典型的には−70℃〜60℃の範囲の棚温度を与える。凍結乾燥ユニットのキャビネットの内部は、キャビネット内の周囲ガス圧を低下させる真空ポンプと、製品から典型的には−40℃〜−80℃に冷却された表面上で昇華する溶媒蒸気を回収する凝縮器とに直接接続されている。凍結乾燥ユニットは、製品熱電対、比較圧力測定(ピラニ真空計対キャパシタンスマノメータ)、露点、圧力上昇試験、及びPatel et al.,AAPS PharSciTech,11,2010に記載される他のものなどの一次乾燥の終了点の決定を助ける機器を有することが好ましい。凍結乾燥は、マニホールド及び回転式凍結乾燥機を含む他の従来の凍結乾燥機の構成内でも行うことができることを当業者は理解するであろう。
【0069】
本発明で生成されるポリマー発泡体は、相互接続された連続気泡型多孔質構造体である。発泡体の密度は、ポリマー溶液の濃度と直接相関しており、典型的には約50mg/cc〜約300mg/ccの範囲とすることができる。発泡体は、約3重量%〜約20重量%、好ましくは約5重量%〜約15重量%の固形分含量を有する。本発明の発泡体の好ましい厚さは、約0.5mm〜約13mm、好ましくは約1mm〜約5mmの範囲である。
【0070】
本発明のコポリマーから形成される発泡体は、組織工学用の足場、バットレス材料、欠損又は空間充填材、創傷治癒ドレッシング材、多孔質グラフトなどの3D装置、並びに他の埋め込み式の創傷の治癒、補強、及び再生装置といった医療用途で使用されてもよい。発泡体は、他の装置(メッシュ及び他の繊維製品など)又は凍結乾燥工程の間に添加することができる添加剤と組み合わせて使用されてもよい。発泡体は、発泡体を形成する前に治療薬をポリマー溶液中に混合するか又は発泡体を形成した後で発泡体内に充填することによって、薬剤送達マトリクスとしても使用されてもよい。
【0071】
本発明のコポリマーで形成された発泡体部品は、製造の間、エチレンオキシドによる滅菌の間、及びパッケージングされた製品の保管の際に優れた寸法安定性を示すことが見出されている。
【0072】
更に、所与のバルク密度では、本発明のコポリマーは、これらの樹脂により実現可能なより高い結晶度に起因して、所与の発泡体バルク密度でより高い機械的特性を与えることが見出されている。
【0073】
しかしながら、最も重要な点として、本明細書の本発明による発泡体は、Vyakarnamらによるものよりも遅い速度で劣化することが見出されている。埋め込み後に認められる長期にわたる機械的特性の喪失プロファイルは、特定の重要な外科手技において極めて重要である。明確にするために述べると、Vyakarnamらの発泡体は、37℃、pH7.27での約25日間のインビトロ処理で圧縮下の残留強度が0であるのに対して、本発明の発泡体は、40日間以上の期間にわたって持続する。
【0074】
本発明の発泡体の寸法安定性及び機械的特性を、凍結乾燥後の熱処理プロセス工程(すなわちアニーリング)を利用して最適化することができることが更に見出されている。驚くべき、また予期せざることとして、より高い温度でのアニーリングは、1.0mmに圧縮された後の「スプリングバック」又は圧縮力の回復がより高い発泡体をもたらした。しかしながら、アニーリングの温度が高すぎる(例えば120℃)と、得られた発泡体は、より低い温度でアニーリングされたものよりも加水分解によって分解しながらその機械的特性をより早く喪失した。したがって、所望の用途に応じて更に精度を高めることができるバランスが見つけられるべきである。本発明の発泡体の好ましいアニーリングは、約60℃〜約110℃、好ましくは約70℃〜約100℃、より好ましくは約85℃〜約95℃である。アニーリングプロセスの時間の長さは、約1時間〜約12時間、好ましくは約4時間〜約8時間である。
【0075】
以上まとめると、本発明の発泡体は、従来技術の発泡体に優る多くの利点を有するものである。これらの利点としては、本発明の発泡体が、所与の発泡体バルク密度(凍結乾燥される溶液の固形分に基づく)で実現可能な高い結晶度の両方によるより高い機械的特性、製造、エチレンオキシド滅菌、及び保管時の発泡体部品の優れた寸法安定性、並びに埋め込み後に見られる長期にわたる機械的特性の損失プロファイルを示すことが挙げられる。
【0076】
以下の実施例は、本発明の原理及び実施を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
ε−カプロラクトンとグリコリドとのランダムコポリマーの合成(対照)
撹拌装置を備えた従来の38リットル(10ガロン)のステンレス鋼製オイルジャケット付き反応器を使用して、9,153gのε−カプロラクトン及び15,848gのグリコリドを、25mLのジエチレングリコールと14.6mLのオクタン酸スズの0.33Mトルエン溶液と共に加えた。初期投入後、回転数8RPMで下向きに撹拌しながらパージサイクルを開始した。反応器を0.1kPa(1Torr)未満の圧力に真空排気した後、窒素ガスを導入した。サイクルを更に2回繰り返し、確実に乾燥雰囲気とした。最後の窒素パージの終了時に、圧力を1気圧を少し上回るように調節した。オイルコントローラを190℃に設定することにより容器を加熱した。バッチ温度が140℃に達した時点で攪拌装置の回転を上向きに切り替え、速度を15RPMに上げた。190℃で2時間反応させた後、攪拌速度を8RPMに下げた。オイル温度が190℃に達した時点から反応を18時間継続し、その後、温度を215℃に上げた。放出の前に反応をこの温度で更に2.5時間進行させた。
【0078】
最終反応期間の終了時に、撹拌装置の速度を下向きで5RPMまで下げ、ポリマーを反応容器から好適な容器に放出した。冷却後、ポリマーを容器から取り出し、約−20℃に設定されたフリーザー内に最低でも24時間置いた。この後、ポリマーをフリーザーから取り出し、分粒篩を備えたCumberland造粒機に入れてポリマー粒子の粒径を約0.96cm(3/8インチ)まで小径化した。次いで、粉砕ポリマーをPatterson−Kelleyタンブル乾燥機に入れて残留モノマーをすべて除去した。
【0079】
Patterson−Kelleyタンブル乾燥機を閉じ、圧力を27Pa(200mTorr)未満に下げた。圧力が27Pa(200mTorr)よりも低くなった時点で、乾燥機の回転を10RPMの回転速度で開始し、加熱せずに16時間回転させた。16時間後にオイルジャケット温度を110℃に設定し、この温度で24時間乾燥した。最後の加熱期間の終了時に、回転及び真空を維持しながらバッチを室温に冷却した。容器を窒素で加圧し、放出弁を開き、ポリマー粒子を長期保管用の待機容器中に下降させることによってポリマーを乾燥機から放出させた。長期保管容器は、樹脂が真空下で保管されるように気密状態で、排気ができるような弁が取り付けられたものとした。
【0080】
(実施例2)
本発明のポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)セグメント化ブロックコポリマーの合成
撹拌装置を備えた従来の8リットル(2ガロン)のステンレス鋼製オイルジャケット付き反応器を使用して、2,376gのε−カプロラクトン及び所望のグラム数のグリコリド(表1を参照)を、3.95mLのジエチレングリコールと3.50mLのオクタン酸スズの0.33Mトルエン溶液と共に加えた。初期投入後、回転数15RPMで下向きに撹拌しながらパージサイクルを開始した。反応器を0.1kPa(1Torr)未満の圧力に真空排気した後、窒素ガスを導入した。サイクルを更に2回繰り返し、確実に乾燥雰囲気とした。最後の窒素パージの終了時に、圧力を1気圧を少し上回るように調節した。オイルコントローラを198℃に設定することにより容器を加熱した。バッチ温度が135℃に達した時点で攪拌装置の回転を上向きに切り替え、速度を25RPMに上げた。バッチが198℃に達した時点で温度を205℃に上げ、第1のモノマー添加を行った(詳細は表1を参照)。攪拌装置の回転を10分間下向きに切り替えた後、回転を上向きに戻して温度を198℃に下げた。第1の添加の1時間後、同じ方法にしたがって第2の添加を行った。2時間の反応後、攪拌装置の速度を20rpmに下げ、反応を4時間継続した。
【0081】
重合の第1段階部分の完了後、ごく少量の樹脂を解析の目的で放出し、選択した特性評価を行った。この後、温度を205℃に上げ、グリコリドモノマーの最後の量を加えてグリコリドの末端ブロックを形成させた。10分後に温度を198℃に下げ、反応を更に2時間継続した。
【0082】
最終反応期間の終了時に、撹拌装置の速度を下向きで5RPMまで下げ、ポリマーを反応容器から好適な容器に放出した。冷却後、ポリマーを容器から取り出し、約−20℃に設定されたフリーザー内に最低でも24時間置いた。この後、ポリマーをフリーザーから取り出し、分粒篩を備えたCumberland造粒機に入れてポリマー粒子の粒径を約0.476cm(3/16インチ)まで小径化した。次いで、粉砕ポリマーをPatterson−Kelleyタンブル乾燥機に入れて残留モノマーをすべて除去した。
【0083】
Patterson−Kelleyタンブル乾燥機を閉じ、圧力を27Pa(200mTorr)未満に下げた。圧力が27Pa(200mTorr)よりも低くなった時点で、乾燥機の回転を10RPMの回転速度で開始し、加熱せずに10時間回転させた。10時間後、オイルジャケット温度を80℃に設定し、この温度で32時間乾燥した。最後の加熱期間の終了時に、回転及び真空を維持しながらバッチを室温に冷却した。容器を窒素で加圧し、放出弁を開き、ポリマー粒子を長期保管用の待機容器中に下降させることによってポリマーを乾燥機から放出させた。長期保管容器は、樹脂が真空下で保管されるように気密状態で、排気ができるような弁が取り付けられたものとした。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例3)
カプロラクトン/グリコリドポリマーの選択されたデータ
実施例1及び2のポリマーの分子量を、ヘキサフルオロイソプロパノール中、2mg/mLの濃度でゲル透過クロマトグラフィーを使用して測定した。固有粘度を、25℃のヘキサフルオロイソプロパノール中、0.10g/dLの濃度で測定した。H−NMR分光法(Varian 400MHz NMRシステム)を用いて組成分析を行って残留モノマー濃度、並びにカプロイルブロック及びグリコリルブロックの平均連鎖長ASL(それぞれASL(C)及びASL(G))を実験的に求めた。使用したピーク割当て及び方法解析は、同様のコポリマーのクラスについて以前に報告されている研究に基づいて行った(Z.Wei et al./Polymer 50(2009)1423〜1429)。熱分析は、走査速度10℃/分における自動サンプラーを備えたTA Instrumentsより販売されるモデルQ20−3290熱量計を使用して行った。
【0086】
表2(図2にグラフで示される)は、所与の組成では、カプロラクトンの平均連鎖長はブロック長の増大と共に増大することを示している。ブロック長が増大し、組成が一定であれば、共重合することができるグリコリドモノマーが少なくなることを考慮すると、中央ブロックのランダム度は実際に低下することになる。同じ理由で、所与のブロック長では、カプロラクトンの平均連鎖長は全組成中のカプロラクトン含量が増大するにしたがって増大する。グリコリド連鎖長は、予想されるように、グリコリドの末端ブロック長が増大し、全組成中のグリコリド含量が増大するにしたがって増大する。
【0087】
【表2】
ASL=平均連鎖長、C=カプロラクトン、G=グリコリド
【0088】
表3より、本発明の発明によるポリマーは、従来技術の対照のポリマーと比較して大幅に高い結晶化度(第1の加熱の融解熱より推定される)を示すことが明らかである。同様に、第2の加熱データは、冷却操作の時間枠内でグリコリド末端ブロック含有ポリマーに大幅に大きな結晶化度が生じることを示している。
【0089】
【表3】
【0090】
いずれの場合においても、第1の加熱走査後に1つのみのTが観察されている点に留意することが極めて重要である。T値は、−9℃〜−25℃の範囲であり、いずれも室温よりも大幅に低かった。低いT値は、これらの材料から製造された医療装置の高い柔軟性に寄与する場合がある。
【0091】
(実施例4)
結晶化の速度に対する組成及び末端ブロックの影響
本発明のポリマーの等温結晶化速度論を、異なる示差走査熱量測定法を用いて評価した。実施例1及び実施例2で説明した乾燥樹脂をDSCパン内に置き、190℃で2分間、完全に溶融して試料中に存在する核生成部位をすべて除去した。次に、試験材料を所望の結晶化温度に急速に冷却/急冷した(−65℃/分の速度)。この等温法では、試料が試験温度に達するまで結晶化は生じないものと仮定しているが、得られたデータはこの仮定を支持するものであった。5つの試料の結晶化挙動を、50℃〜90℃の広範囲の温度にわたって特性評価した。等温結晶化速度論(一定温度における)を、時間の関数として熱流量の変化として監視した。等温熱流量曲線を積分して結晶化度パラメータを求めた。
【0092】
熱流量/時間曲線の積分を行った後、1/2結晶化時間(t1/2)を決定することができる。1/2結晶化時間とは、等温試験の間に生じる総量の50%結晶化度に達するのに要する時間である。結晶化速度論を表すため、1/2結晶化時間の逆数を結晶化温度の関数として示した。これらのデータを図3にグラフで示す。グラフより、本発明のポリマーは、従来技術による対照のポリマーの2〜5倍速く結晶化することが明らかである。結晶化は、末端ブロック長の増大に伴ってより速くなることも分かる。最後に、組成に対する依存が認められる。ポリマー3についても評価を行ったが、溶融温度から選択した温度へと冷却すると完全に結晶化した。
【0093】
(実施例5)
溶解度
1,4−ジオキサンへの樹脂の最大溶解度を、漸増添加法によって試験した。開始に当たり、10gの樹脂を、250mLの丸底フラスコ中で100mLの1,4−ジオキサンに加えた。溶液の入ったフラスコを、窒素ラインに接続された入口アダプタが取り付けられた、85℃に加熱された水浴上に置いた。溶解後、樹脂が2時間以内に完全に溶けなくなるか又はゲル化が起きるまで樹脂を1g刻みで加えた。
【0094】
表4は、グリコリドの末端ブロック長が増大するにつれて1,4−ジオキサンへの溶解度が低下することを示している。更に、溶解度は、全組成中のグリコリド含量が増大するにつれて低下している。実際、ポリマー4は、関連する濃度(<0.5重量%)では可溶でない。
【0095】
【表4】
**6重量%の濃度において
【0096】
(実施例6)
ゲル化
本発明のすべてのポリマー、及び従来技術による対照ポリマーは、室温に冷却させた後、18時間以内に有機ゲルを形成した。ブルックフィールド粘度計を使用してゲル化の開始時間を測定した。最初に、所望の最終濃度の選択された樹脂の1,4−ジオキサン溶液150mLを、実施例5で説明したようにして調製した(特にそうでないことが記載されないかぎり、10重量%で)。この溶液の125mLを、20℃の水浴中に置かれた細い200mLガラスビーカーに移した。次いで、S61スピンドルを溶液中に浸漬してから、0に合わせたブルックフィールドDVI−I+粘度計に接続した。10rpmでの溶液粘度を監視し、一定の間隔で記録した。ゲル化の開始時間を、粘度が急速に増大しはじめた点を検出することによって測定した。発泡体製造プロセスの目的では、180分よりも長いゲル化の開始時間は無関係とみなした。
【0097】
4つのポリマーが、凍結乾燥プロセスに影響を及ぼさない程度に充分に緩慢に有機ゲルを形成した。これらのポリマーは、従来技術のコントロールポリマー、45/55のカプロラクトン/グリコリド組成を有するポリマー、及び40/60のカプロラクトン/グリコリドの全体組成を有する、最も短いグリコリド末端ブロックを有する2つのポリマーである。他のポリマーは、全体のカプロラクトン含量に強い依存を示し、グリコリド末端ブロック長に副次的な依存を示した。更に、温度及び分子量の両方と指数関数的な関係があると考えられ、ゲル化は、より低い温度かつより大きな分子量でより速やかに生じた。
【0098】
(実施例7)
実施例1の樹脂の凍結乾燥プロセス(ランダムコポリマー)
a)溶液の調製
40gの実施例1のポリマーと360gの無水1,4−ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度とすることによって溶液を調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間70℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルター(extra course filter)に通してろ過した。
【0099】
この後、溶液の試料を取って乾燥重量測定を介して濃度を測定した。溶液の重量を記録した後、一晩蒸発させた後、50℃に加熱した真空オーブン中で溶液を48時間加熱することによって1,4−ジオキサンを除去した。溶液の濃度を測定したところ10.4(重量/重量)%であった。
【0100】
b)凍結乾燥
ポリマー溶液の発泡構造体への凍結乾燥は、SP Scientificにより製造されたLyoStar3ユニットで行った。
【0101】
凍結乾燥に先立って溶液を75℃へと約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)を用いてコンピュータによって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。このレシピは以下の順序からなるものである。
1.熱処理:充填された成形型を、15℃の温度に設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。チャンバを15℃に30分間維持した後、2℃/分の速度の温度勾配で−10℃とした。次いで、棚温度を0.5℃/分の速度で−45℃に冷却し、1時間維持した。温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0102】
凍結乾燥ユニットにPirani真空ゲージを取り付けた。これは、キャパシタンスマノメータ(CM)を用いた比較圧力測定を介して凍結乾燥中の一次乾燥時間を評価するために用いられた(Patel SM et al.,AAPS PharmSciTech,11,2010)。簡単に述べると、CMがチャンバ内の絶対圧力(真空設定点)を測定するのに対して、Piraniゲージは、チャンバ内の溶媒蒸気の熱伝導率を測定する原理に基づいて動作する。溶媒蒸気が存在する時の昇華の間、PiraniゲージはCMよりも高い指示値を示す。チャンバ内に蒸気が存在しなくなると、Piraniゲージの指示値はCMと同じになる。このことは、図4にこの凍結乾燥測定について示されるように、一次乾燥の間に2つの曲線が交差する場合に単純に目視で確認される。
【0103】
凍結乾燥後、発泡体のストリップを成形型から外して更なる使用まで窒素下で保管した。
【0104】
(実施例8)
ゲル化ポリマー溶液の凍結乾燥
この実験では、ゲル化が速やかに開始する樹脂のポリマー溶液(実施例2のポリマー3)を使用し、低残留溶媒の均一な発泡体を製造するための凍結乾燥レシピを開発する試みを行った。ポリマー溶液を順調に凍結乾燥させるべく、多くの凍結乾燥パラメータを変更した。
【0105】
a)溶液の調製
ポリマー(実施例2のポリマー3)と無水1,4−ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度とすることによって溶液を調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間85℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルターに通してろ過した。次いで、ろ過した溶液を使用時までカバーをした状態で室温で保管した。
【0106】
b)凍結乾燥
凍結乾燥に先立って溶液を75℃へと約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)によって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。この実験の基準となるレシピは、以下の順序からなるものである。
1.熱処理:充填された成形型を、15℃の温度に予め設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。チャンバを15℃に30分間維持した後、2℃/分の速度の温度勾配で−10℃とした。次いで、棚温度を0.5℃/分の速度で−45℃に冷却し、1時間維持した。温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0107】
次いで、このレシピを表5に示したようにこれらの実験について以下のパラメータによって変更した。
【0108】
【表5】
【0109】
凍結乾燥ユニットにPirani真空ゲージを取り付け、これを用いてキャパシタンスマノメータ(CM)を用いた比較圧力測定によって一次乾燥を評価した。発泡体は、Pirani曲線がCM曲線と交差した時点で乾燥状態とみなした。発泡体は凍結乾燥後に目視でも検査した。
【0110】
c)結果と考察
本実施例の実験の範囲内では、ゲル化ポリマー溶液の凍結乾燥は成功しなかった。様々な凍結乾燥パラメータに多くの調整を行ったところ、発泡体は製造されたが、これらの発泡体は外観が悪く、高濃度の残留溶媒を有していた。変更例1では、遅い冷却速度を用いてゲル化を確実に生じさせ、基準レシピと同じ温度及び圧力を維持したまま、凍結時間及び一次乾燥時間を延長した。この実験は、成形型から外すことができない、製品中に溶媒が依然残留していることを示す1,4−ジオキサンの強い臭いを有する不良発泡体を生じた。この結果は、基準レシピのパラメータの時間を延ばすことは、ゲル化溶液を効果的に凍結乾燥させず、また進歩をもたらすには維持時間以外の変量を操作する必要があることを示した。
【0111】
変更例2は、発泡体を製造する別の試みであり、溶液のゲル化を遅らせる方法として棚装填温度を40℃に上げた後、2℃/分の棚冷却速度で速やかに冷却することによる。得られた発泡体は強い臭いがあり、外観が悪く、CM曲線とPirani曲線とは交差しなかった。このことは、高い棚装填温度及び棚の冷却速度の制御がゲル化を防止しなかったことを示唆している。最も高い可能性として、溶液が棚よりも遅い速度で冷却されると、低い温度が棚から成形型を介し、更に溶液を介して伝導されなければならないために、溶液はゲル化しはじめると考えられる。
【0112】
一次乾燥温度を−20℃に下げ、熱処理を含むか又は除外するかのいずれかである変更例3及び4では、ゲル化溶液の乾燥に影響は見られなかった。一次乾燥のプロファイルはほぼ同じであり、いずれの実験も、成形型から外すことができず、また強い1,4−ジオキサン臭を有する不良発泡体をもたらした。
【0113】
一次乾燥温度を高くした場合について、変更例5、6、7及び8で評価を行ったが、これにより凍結ゲルからの昇華が増大することになると考えられた。一次乾燥温度が10℃よりも高いとジオキサンの除去性が改善され、1,4−ジオキサンの臭いは検出されず、Pirani曲線はCM曲線により近づいた。しかしながら、この温度は、発泡体の構造的崩壊、又は発泡体の底部がフィルム状の外観を有する発泡体の「メルトバック」を生じるだけ充分に高かった。この結果に基づけば、一次乾燥温度の操作のみでは、ゲル化溶液の凍結乾燥の可能な方法とはならなかった。
【0114】
変更例9では、製品の崩壊を生じない最も高い一次乾燥温度(5℃)を、一次乾燥の間のより低い圧力と共に用いた。一次乾燥の間のより低いチャンバ圧は、チャンバ圧とゲル中の溶媒の蒸気圧との差を増加する補助となるため、昇華を促進する力を増加すると考えられた。得られたCM及びPirani曲線は、一次乾燥の終了前に交差せず、不完全な乾燥を示した。これらの発泡体でもやはり崩壊が見られたが、これが、一次乾燥条件が極端すぎたことによるものか、又は一次乾燥における昇華が完了するよりも先にサイクルが二次乾燥段階に進んだことによるものかを判断することはできなかった。
【0115】
変更例10では、溶液をより速やかに冷却するために成形型を−45℃に設定したチャンバ内に置く「急冷」を用いた。急冷のより速やかな凍結は、ポリマー溶液がゲルを形成する前にポリマー溶液を凍結させると考えられる。乾燥プロファイルは、Pirani曲線とCM曲線との交差を示し、一次乾燥の間に溶媒が除去されることが示された。得られた発泡体は更に、機械的弾性を示す均一な外観を有した。
【0116】
(実施例9)
凍結乾燥に対する冷却速度の影響
実施例8の「急冷」熱処理の成功に基づき、急冷の温度及び方法によって制御される冷却速度の影響を、ゲル化の速やかな開始を示した樹脂(実施例2のポリマー3)を用いて作製したポリマー溶液の凍結乾燥について評価した。
【0117】
a)溶液の調製
ポリマー(実施例2のポリマー3)と無水1,4−ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度とすることによって溶液を調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間85℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルターに通してろ過した。次いで、ろ過した溶液を使用時までカバーをした状態で室温で保管した。
【0118】
b)凍結乾燥
凍結乾燥に先立って溶液を75℃へと約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)によって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。この実験の基準となるレシピは、以下の順序からなるものである。
1.熱処理:ポリマー溶液を、以下の急冷方法によって定義される異なる冷却速度に供した。
急冷番号1:充填された成形型を、−10℃の温度に設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。次いで、棚温度を2℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで下げた。
急冷番号2:充填された成形型を、−45℃の温度に設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。
急冷番号3:高温のポリマー溶液を、−45℃の温度で一晩保管することによってその温度に予め冷却したステンレス鋼製成形型内に分注した。成形型を充填した後、−45℃の温度に設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に成形型を入れた。
すべての急冷法について、急冷及び装填後、ユニットの温度を−45℃に1時間保った。次いで、温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0119】
凍結乾燥ユニットにPirani真空ゲージを取り付け、これを用いてキャパシタンスマノメータ(CM)を用いた比較圧力測定を介して一次乾燥を評価した。各急冷法の一次乾燥プロファイルを図5に重ね合わせて示す。分かりやすくするために、CM曲線は1本のみプロットしてある。
【0120】
重ね合わせは、予め冷却した成形型内にポリマー溶液を分注することによって得られたより速い冷却速度が、Pirani曲線とCM曲線とが交差する時間によって示されるより速い乾燥時間を有したことを示している。凍結乾燥ユニットのチャンバ内での急冷を−45℃に設定した中間の冷却速度もPirani曲線とCM曲線との交差を示したが、より長い時間かかった。−10℃の急冷による最も遅い冷却速度では、一次乾燥の5時間の維持時間以内にPirani曲線とCM曲線との交差は見られなかった。Pirani曲線の下向きの傾きは、一次乾燥が延長されればPirani曲線がCM曲線と交差する場合があることを示唆している。
【0121】
これらの急冷法によって生成された発泡体を、ガスクロマトグラフィーによって残留1,4−ジオキサンについても試験した。急冷番号1、2、及び3の発泡体の残留濃度は、それぞれ3、1、及び1,306PPMであった。
【0122】
これらの結果は、凍結乾燥による発泡体加工を可能とするため、望ましくないゲル形成の前にポリマー溶液を凍結させるためにはより速い冷却速度が必要であるという主張を裏付けるものである。
【0123】
(実施例10)
凍結乾燥に対するポリマー溶液のゲル化時間の影響
実施例2のポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)ブロックコポリマーを使用して、凍結乾燥に対するそれらのゲル化開始時間の影響を調べた。
【0124】
a)溶液の調製
実施例2のポリマー2、3、5、6及び対照を用いた溶液を、ポリマー樹脂と無水1,4ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度となるように調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間85℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルターに通してろ過した。次いで、ろ過した溶液を使用時までカバーをした状態で室温で保管した。
【0125】
実施例2のポリマー1及びポリマー3の6(重量/重量)%ポリマー溶液を、上述したのと同様の様式で調製した。
【0126】
b)凍結乾燥
凍結乾燥に先立って溶液を75℃に約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)によって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。この実験の基準となるレシピは、以下の順序からなるものである。
1.熱処理:充填された成形型を、−45℃の温度に予め設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。1時間後、温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0127】
この研究では、ポリマーを含まない(すなわち、1,4−ジオキサン100%)の溶液を凍結乾燥して溶媒のみの一次乾燥プロファイルを評価した。
【0128】
凍結乾燥ユニットにPirani真空ゲージを取り付け、これを用いてキャパシタンスマノメータ(CM)を用いた比較圧力測定を介して一次乾燥を評価した。各急冷法に対する一次乾燥プロファイルを図6に重ね合わせて示す。分かりやすくするために、CM曲線は1本のみプロットしてある。
【0129】
重ね合わせた曲線は、ポリマー溶液間で異なる乾燥挙動を示している。1,4−ジオキサン単独では、溶媒がバルク相でのみ昇華しているため、ピーク圧力レベルから大変急激な低下を示し、CMのレベルと交差している。各ポリマー溶液は、恐らくは、溶媒蒸気が曲がりくねった小孔構造を通り抜けてポリマー/溶媒の界面から分離しなければならないことからよりなだらかな傾きを有している。最も遅い溶液は、実施例6で測定したように最も速いゲル化の開始も示していたポリマー3の10(重量/重量)%溶液であった。次に遅い乾燥溶液は、2番目に速いゲル化の開始を示していたポリマー2の6(重量/重量)%溶液であった。最も遅いゲル化溶液(対照ポリマーの10(重量/重量)%溶液)は、最も速い乾燥時間を示した。中間のゲル化時間を示したポリマー2、5、及び6の10(重量/重量)%の群は中間の乾燥時間を示したが、驚くべきことに上述したような乾燥時間とゲル化の開始時間との間の相関関係には従わなかった。
【0130】
より速いゲル化を示すポリマー溶液では、乾燥時間がより長くなる傾向があるようである。このことは、より速いゲル化を示すポリマー溶液は、発泡体への凍結乾燥がうまくいくよう、望ましくないゲルの形成が生じる前にこれらの溶液をより速やかに凍結させるためにより速い冷却速度を必要とすることを示唆していることになる。
【0131】
(実施例11)
実施例2のセグメント化ブロックコポリマーから作製された凍結乾燥発泡体の機械的特性
実施例2で製造したポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)ブロックコポリマーで作製された発泡体の圧縮特性を評価することによって、末端ブロック及びカプロラクトン/グリコリド組成の影響を評価した。ポリマー2、3、5及び7から作製した発泡体は、10(重量/重量)%の溶液濃度によって制御されるように一定の密度で調製した。更に、実施例1で説明したポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)のランダムコポリマーで形成された発泡体も、対照として含めた。
【0132】
発泡体の調製
a)溶液の調製
ポリマー樹脂と無水1,4−ジオキサンを秤量して10(重量/重量)%の溶液濃度とすることによって溶液を調製した。これら2つの成分を三角フラスコ中で加え合わせた後、フラスコに攪拌子を入れ、水浴中に入れた。溶液を攪拌しながら1〜2時間85℃に加熱した。加熱から外した後、溶液を穏やかな窒素圧下で特別に目の粗いフィルターに通してろ過した。次いで、ろ過した溶液を使用時までカバーをした状態で室温で保管した。
【0133】
b)凍結乾燥
ポリマー溶液の発泡構造体への凍結乾燥は、SP Scientificにより製造されたLyoStar3ユニットで行った。
【0134】
凍結乾燥に先立って溶液を75℃へと約1時間加熱した。この高温のポリマー溶液を30個のキャビティーを有するステンレス鋼製成形型の中へと分注した。各キャビティーは、約10mm×60mm×3.5mmのストリップの構成を有していた。次いで、コンピュータ制御された処理工程(レシピ)によって指定される通りに凍結乾燥サイクルを開始した。この実験の基準となるレシピは、以下の順序からなるものである。
1.熱処理:充填された成形型を、−45℃の温度に予め設定した凍結乾燥ユニットのチャンバの中に入れた。1時間後、温度を1℃/分の速度で3℃に上げた後、ユニットを3℃に1時間維持した。次に−0.5℃/分の速度の温度勾配で−45℃まで戻して1時間維持した。
2.次に、60Pa(450mTorr)に真空を引いて排気を開始した。この真空度が得られた時点でユニットを−45℃に2時間維持した。
3.次に、0.5℃/分の速度の温度勾配でユニットを−10℃とし、5時間維持することによって一次乾燥を開始した。次に、真空度を3Pa(20mTorr)に下げ、棚温度を0.25℃/分の速度で10℃まで上げて3時間維持した。次いで棚温度を2℃/分の速度で20℃まで上げ、サイクルを停止して真空が窒素で破壊されるまでその温度に保った。
【0135】
凍結乾燥後、発泡体のストリップを成形型から外して更なる使用まで窒素下で保管した。
【0136】
c)アニーリング
アニーリングは、Thermal Product SolutionsのBlue Mオーブンを使用して窒素下で行った。発泡体をいかなる固定もせずにオーブンの棚の上に置いた。ユニットを窒素で1時間パージした後、オーブンの温度を温度勾配で90℃とし、その温度で6時間維持した後、室温に戻した。アニーリングの後、発泡体のストリップを更なる使用時まで窒素下で保管した。
【0137】
圧縮試験
発泡体のストリップをすべて、10mm×60mm×3.25mmの寸法に切断した。発泡体を異なる程度まで圧縮し、1000NのILC−Sロードセル、70mm圧縮圧盤、及びMultiTest 2.5−xtソフトウェアを装備したMecmesinの機械圧縮/張力荷重フレームマルチ(Multi)を使用して圧縮力を測定した。簡単に述べると、発泡体を高さ2.0mmまで圧縮し、その高さに15秒間保持した後の圧縮力を記録した。次いで、同じ試料を1.5mm、1.0mm、その後再び2.0mmの高さに順次圧縮し、それぞれの高さで15秒間保持した後の圧縮力を記録した。それぞれの高さでの圧縮圧力を、圧縮力を試料の面積で割ることにより計算した。回復比を、2mmにおける初期圧力に対する回復圧力(1.0mmに圧縮した後の2.0mmにおける2回目の測定値)の比として定義した。試験の結果を表6に示す。
【0138】
【表6】
データは平均±標準偏差を表す。
【0139】
対照ポリマー並びにポリマー2及びポリマー3で作製された発泡体を使用して、所与の全体組成におけるブロック長の影響を評価した。ポリマー2のより小さいブロックは圧縮力の増大を示さなかったのに対して、ポリマー3のより長いブロックは、約33%の増大を示した。更に、ブロック長の増大にしたがって回復比の低下が認められた。しかしながら、ポリマー3で形成されたより固い発泡体では、これにより対照ポリマーよりも高い回復圧力がなおも得られた。
【0140】
ポリマー3、5及び7で作製された発泡体はいずれも同じブロック長を有したが、カプロラクトンがそれぞれ、36〜40〜45と増えてゆく異なる組成を有していた。カプロラクトン含量が大きくなるにしたがって圧縮力は小さくなることが示された。対照的に、ランダムセグメント中のカプロラクトン含量が増大するにつれて回復比は大きくなった。
【0141】
(実施例12)
実施例2のセグメント化ブロックコポリマーから作製された凍結乾燥発泡体のインビトロ分解挙動
実施例2で製造されたポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)ブロックコポリマーで作製された発泡体のインビトロ分解挙動を評価することによって、末端ブロック及びカプロラクトン/グリコリド組成の影響を評価した。これは、加水分解を行いながら、固定高さまで圧縮された発泡体の圧縮力を測定することによって評価した。ポリマー2、3、5及び6、並びに実施例1のランダムコポリマーで作製された各発泡体を実施例11で説明したようにして調製した。
【0142】
連続圧縮下でのインビトロ分解
発泡体がクッション又は欠陥充填材として機能することになる用途をシミュレーションするため、連続的な圧縮下で各発泡体を試験した。発泡体の各ストリップをすべて、10mm×60mm×3.25mmの寸法に切断した。次いで、発泡体を、圧盤を利用して発泡体を高さ2.0mmに圧縮する固定具内に置いた。圧盤の上には、Honeywell SC3004データ収集ユニットを使用して圧縮力を5Hzの取得率で連続的に記録するロードセルを配置した。次いで、発泡体試料を含む固定具全体を、37℃の温度に維持されたpH7.27のリン酸緩衝生理食塩水の浴中に浸漬した。実験を停止した時には、28日間の圧縮力が記録されていた。次いで、時間に対する圧縮力のプロットを用いて、曲線の対数関数フィットの崩壊係数として表される分解係数を求めた。1日目及び28日目の圧縮力並びに分解係数を表7に示す。
【0143】
【表7】
【0144】
結果は、末端ブロックを有するコポリマーにおける分解係数の減少を示し、より長い分解プロファイルを表示している。一方でポリマーとポリマー2及びポリマー3とを比較し、他方でポリマー5とポリマー6とを比較したところ、1日目及び28日目における圧縮強さは、末端ブロックが大きくなるにしたがって増大することが示された。更に、ポリマー3とポリマー5との比較により、ランダムセグメント中のカプロラクトン含量を増大させると、1日目及び28日目において保持される強さが低下したことが示された。
【0145】
更に、発泡体が分解する際の発泡体の完全性は、カプロラクトン含量が増大するポリマーで作製された発泡体間で異なることも観察された。ポリマー5及びポリマー6で作製された発泡体は、28日間の試験期間全体を通じて1つの連続的な発泡体の一片として維持された。ポリマー2及びポリマー3で作製された発泡体(カプロラクトン含量が低いもの)は、複数の部分に割れてしまうことが見出された。
【0146】
(実施例13)
アニーリングの効果
本発明の凍結乾燥発泡体の結晶化度及び結晶サイズは、ポリマーの構造に依存するが、発泡体を選択された温度の乾燥熱に充分に効果的な期間にわたって曝すことによって調節することができる。更に、これにより、発泡体の寸法安定性及び機械的特性の微調整を行うこともできる。発泡体を60℃〜120℃の範囲の温度で、1〜12時間の範囲の期間、アニーリングした。一般的に、アニーリング温度が高いほどより大きな収縮が観察された。興味深いことに、収縮はアニーリングの最初の1時間で生じ、その後は更なる収縮は観察されなかった。
【0147】
表8は、従来技術の対照ポリマー及び本発明のポリマー3に基づいた発泡体の寸法変化を示している。これから分かるように、末端ブロック含有ポリマーの寸法安定性は、Vyakarnamらと同様にして調製した材料よりも大幅に高くなっている。寸法の変化は、3つの次元すべてで概ね同等であるように思われる。
【0148】
【表8】
データは平均±標準偏差を表す。
【0149】
図7は、ポリマー5に基づく発泡体の熱挙動に対する異なるアニーリング条件の影響を示す。低い温度では、複数のピークを有する幅広い溶融転移に反映される結晶サイズの幅広い分布が認められる。110℃でのアニーリングによって120℃周辺の狭い分布が得られるまで、アニーリング温度が高くなるほどこの分布は狭くなっている。わずかな量のより小さい結晶を、より低い温度での二次アニーリング工程によって再導入することができる。興味深いことに、全体の結晶化度に顕著な差は認められなかった。
【0150】
収縮は各次元で生じたが、厚さにおいて最も顕著であった。表9に見られるように、より低い温度では収縮は比較的わずかであったが、110℃ではより顕著となった。一般的に、アニーリング温度が高いほどより大きな収縮が認められた。興味深いことに、収縮はアニーリングの最初の1時間以内に生じ、その後は更なる収縮は認められなかった。
【0151】
【表9】
データは平均±標準偏差を表す。
【0152】
ポリマー5に基づく発泡体の機械的特性に対するアニーリング条件の影響を、表10に示す。各発泡体を、実施例11で説明したような段階的な方法で圧縮した。驚くべきことに、アニーリング条件は発泡体の圧縮力の値にはほとんど影響を及ぼさなかったが、発泡体の反発力の代用となる回復比に対して顕著な影響を及ぼした。一般的に、アニーリング温度が高いほど観察される反発力は高かった。しかしながら、120℃でのアニーリングは12.92%の許容できない収縮率を生じることから、温度を上げることができる程度は収縮率によって制限される。
【0153】
【表10】
データは平均±標準偏差を表す。
【0154】
ポリマー5から調製され、様々な温度でアニーリングされた発泡体を、実施例12で説明したインビトロ分解法で経時的な圧縮について評価した。表11に見られるように、最初は様々なアニーリング条件間で大きな差は観察されなかったが、後の時点では、最も高い温度(110℃)でアニーリングされた試料は、より低い温度でアニーリングしたものよりも保持された強さが大幅に低くなった。
【0155】
【表11】
【0156】
以上、本発明をその詳細な実施形態について図示及び説明してきたが、当業者であれば、特許請求される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の形態及び詳細に様々な変更を行い得る点が理解されるであろう。
【0157】
〔実施の態様〕
(1) 重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位のランダムセグメントと、主として重合グリコリドを含む少なくとも1つのセグメントとを有する、半結晶性吸収性セグメント化コポリマーを含み、前記セグメント化コポリマー全体の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約55:45〜約65:35であり、前記ランダムセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約45:55〜約60:40である、吸収性ポリマー発泡体。
(2) 前記コポリマーが、25℃のHFIPの0.1g/dL溶液中で測定した場合に約0.5dL/g〜約2.5dL/gの固有粘度を有する、実施態様1に記載の吸収性発泡体。
(3) 固形分含量が約3重量%〜約20重量%である、実施態様1に記載の発泡体。
(4) 5重量%〜15重量%の固形分含量を有する、実施態様3に記載の発泡体。
(5) 約0.5mm〜約13mmの厚さを有する、実施態様1に記載の発泡体。
【0158】
(6) 約1mm〜約5mmの厚さを有する、実施態様5に記載の発泡体。
(7) 連続圧縮下で37℃、pH7.27の緩衝溶液中で28日間のインキュベーション後、高さ2mmにおいて0.5gf/mmよりも大きい圧縮圧力を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(8) 10重量%の凍結乾燥溶液から調製された、実施態様7に記載の発泡体。
(9) 連続圧縮下で37℃、pH7.27の緩衝溶液中でインキュベートした場合に−0.095gf/(mm・日)未満の分解係数を有するように調製された、実施態様1に記載の発泡体。
(10) 10重量%の凍結乾燥溶液から調製された、実施態様9に記載の発泡体。
【0159】
(11) 埋め込み後、少なくとも30日間、機械的一体性を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(12) 埋め込み後、少なくとも60日間、機械的一体性を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(13) 約10%よりも高い結晶化度を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(14) 約20%よりも高い結晶化度を有する、実施態様1に記載の発泡体。
(15) 凍結乾燥プロセスによって吸収性発泡体を製造する方法であって、
a)重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位を有する半結晶性吸収性セグメント化コポリマーを含む吸収性ポリマーを提供する工程であって、重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約55:45〜約65:35であり、ランダムセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約45:55〜約60:40である、工程と、
b)凍結乾燥溶液を形成するために、充分な量の前記コポリマーを適当な溶媒に溶解する工程と、
c)前記溶液の少なくとも一部を、早期のゲル形成を防止するうえで充分に効果的な温度で好適な成形型の中へと注入する工程と、
d)後の凍結乾燥プロセスにおける溶媒除去を促進するために、早期のゲル形成を防止するような充分に速い速度で前記溶液を凍結させる工程と、
e)前記成形型内の前記凍結溶液を前記凍結乾燥プロセスに供する工程であって、圧力を低下させ、熱を加えて前記溶媒を昇華させて吸収性発泡体を形成する、工程と、を含む、方法。
【0160】
(16) 前記コポリマーが、25℃のHFIPの0.1g/dL溶液中で測定した場合に約0.5dL/g〜約2.5dL/gの固有粘度を有する、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記溶媒が、1,4−ジオキサン、少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の水との混合物、及び少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の分子量1500未満の有機アルコールとの混合物からなる群から選択される、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記凍結乾燥溶液の固形分含量が、約3〜約20重量%である、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記凍結乾燥溶液の固形分含量が、約5〜約15重量%である、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記凍結乾燥溶液が、50℃よりも高い温度で好適な成形型の中へと注入される、実施態様15に記載の方法。
【0161】
(21) 前記凍結の速度が、−5℃/分に等しいか又はこれよりも速い、実施態様15に記載の方法。
(22) 前記凍結の速度が、−10℃/分に等しいか又はこれよりも速い、実施態様15に記載の方法。
(23) 1,4−ジオキサン、少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の水との混合物、及び少なくとも90重量%の1,4−ジオキサンと10重量%以下の分子量1500ダルトン未満の有機アルコールとの混合物からなる群から選択される溶媒と、
約3重量%〜約20重量%の、重合グリコリド及び重合ε−カプロラクトンの繰り返し単位を有する半結晶性吸収性セグメント化コポリマーであって、重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約55:45〜約65:35であり、前記ランダムセグメント内の重合グリコリドと重合ε−カプロラクトンとのモル比が、約45:55〜約60:40である、半結晶性吸収性セグメント化コポリマーと、を含む、凍結乾燥溶液。
(24) 前記コポリマーが、25℃のHFIPの0.1g/dL溶液中で測定した場合に約0.5dL/g〜約2.5dL/gの固有粘度を有する、実施態様23に記載の溶液。
(25) 前記凍結乾燥溶液の固形分含量が、約3〜約20重量%である、実施態様23に記載の溶液。
【0162】
(26) 前記凍結乾燥溶液の固形分含量が、約5〜約15重量%である、実施態様23に記載の溶液。
(27) 前記溶液が、早期のゲル形成を防止する温度に維持される、実施態様23に記載の溶液。
(28) 前記溶液が、50℃よりも高い温度に維持される、実施態様23に記載の溶液。
(29) 前記発泡体が、約60℃〜約110℃の温度に加熱され、かつ前記温度に約1時間〜約12時間維持される、実施態様1に記載の発泡体をアニーリングする方法。
(30) 前記発泡体が、約70℃〜約100℃の温度に加熱される、実施態様29に記載の方法。
【0163】
(31) 前記発泡体が、約85℃〜約95℃の温度に加熱される、実施態様30に記載の方法。
(32) 前記発泡体が、約4〜約8時間の間加熱される、実施態様29に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7