【実施例1】
【0014】
図4は本発明の一実施例に係る原子力プラント状態監視装置を有する特定重大事故等対処施設及び原子炉建屋の概略図であり、
図5は
図4において2重化された注水配管系の一方が破断した状態を示す図である。
図4に示すように、原子炉建屋2に離間し地中に埋設された特定重大事故等対処施設3が設けられている。特定重大事故等対処施設3は、原子炉建屋2への冷却水の供給源である貯水槽31を備え、貯水槽31から地下に埋設された配管を経由してポンプにより貯水槽内の水を供給可能に構成されている。また、原子炉建屋2内の状況をモニタリングするため原子炉建屋2内に設置される複数のセンサからの信号を伝送可能な信号線(図示せず)が地下に埋設されている。具体的には、特定重大事故等対処施設3は、貯水槽31内の冷却水を送水するためのポンプ32、ポンプ32の下流側で分岐する第1注水配管33a及び第2注水配管33b、第1注水配管33aに設置される第1電動弁34a及び第1圧力計35a、及び、第2注水配管33bに設置される第2電動弁34b及び第2圧力計35bを備え、更に、原子力プラント状態監視装置1を有する。
【0015】
なお、
図4に示すように、特定重大事故等対処施設3より地中に埋設される冷却水供給用の第1注水配管33a及び第2注水配管33bは、地下から原子炉建屋2内に引き回される。但し、それ以外にも原子炉建屋2の上方より散水する必要があるため、一部の冷却水供給用の配管(図示せず)は原子炉建屋2の外壁(側壁)に沿って地中より上方へと敷設される配管が存在する。この場合、原子炉建屋2の上方で、冷却水供給用の配管を多重化するため、相互に対向する外壁(側壁)に沿って敷設される(隣接する外壁間ではない)。これは、原子炉建屋2自体がそもそも堅牢な建屋であると共に、仮に、原子炉建屋2に飛翔体6(大型航空機など)が衝突した場合であっても、当該飛翔体6が衝突した原子炉建屋2の外壁より進入し、衝突面に対向する外壁まで貫通することは無いことを想定している。
従って、仮に、冷却水供給用の配管が敷設された原子炉建屋2の外壁(側面)に飛翔体6が衝突した場合であっても、衝突面と対向する外壁に敷設された冷却水供給用の配管の健全性は維持される。よって、飛翔体6が原子炉建屋2に対しどの位置に衝突したかを検出することが重要となる。
【0016】
また、特定重大事故等対処施設3と原子炉建屋2との間の距離dは、例えば100m以上である。これは、上述の平成25年(2013年)7月8日に施行された「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則」の第42条の規定に準拠する。
【0017】
図5に示す例は、上述の
図2に示したように、飛翔体6である例えば大型航空機が原子炉建屋2の外壁のうち、ドライヤ・セパレータプール5側の外壁に衝突し進入したことにより、第2注水配管33bが破断した状態を示している。詳細後述する原子力プラント状態監視装置1は、第2注水配管33bの破断を検出し、第2電動弁34bを閉状態とすると共に第1電動弁34aを状態とし、ポンプ32を稼働させ貯水槽31より第1注水配管33aを介して冷却水を供給する。
【0018】
[原子力プラント状態監視装置の構成]
図6は、
図4に示す原子力プラント状態監視装置1の機能ブロック図である。
図6に示すように、原子力プラント状態監視装置1は、処理部10、入力部11、及び表示部12を備える。処理部10は、入力I/F13、監視制御部14、原子炉建屋データベース15、センサ情報データベース16、計測値取得部17、通信I/F18、及び表示制御部19を備え、これらは相互に内部バス20を介して接続されている。これら、監視制御部14、計測値取得部17、及び表示制御部19は、例えば、図示しないCPU等のプロセッサ、各種プログラムを格納するROM、演算過程のデータを一時的に格納するRAM、外部記憶装置等の記憶装置にて実現されると共に、CPU等のプロセッサがROMに格納された各種プログラムを読み出し実行し、実行結果である演算結果をRAM又は外部記憶装置に格納する。
【0019】
以下では、複数のセンサ(計器)である、第1センサ21a,第2センサ21b・・・第Nセンサ21nとして、例えば、原子炉建屋2内に設置される発電運転用の各系統のプロセスを監視するために設置される系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)を用いる場合を一例として説明する。
【0020】
なお、プロセスを監視するために設置されるセンサ(計器)は、通常の原子力発電用に設置されるものであり、また、環境監視用に設置されるセンサは上記に限らず所望のセンサを設置しても良い。なお、新たに環境監視用などにセンサを設置した場合には、当該センサの種別情報及び位置情報が、入力部11、入力I/F13、及び内部バス20を介してセンサ情報データベース16に格納される。
【0021】
計測値取得部17は、通信I/F18及び内部バス20を介して転送される、第1センサ21a,第2センサ21b・・・第Nセンサ21nからの系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)の計測値に対し、例えば、平滑化処理或いはノイズ除去処理を実行する。そして、計測値取得部17は平滑化処理或いはノイズ除去処理後の信号(データ)を監視制御部14へ内部バス20を介して転送する。
【0022】
原子炉建屋データベース15は、予め入力部11及び入力I/F13を介して入力された原子炉建屋配置図を格納している。
センサ情報データベース16は、予め入力部11及び入力I/F13を介して入力された、原子炉建屋2内に設置される第1センサ21a,第2センサ21b・・・第Nセンサ21nである、系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)、及び原子炉建屋2内を引き回されるケーブルの位置情報を格納する。
【0023】
監視制御部14は、計測値取得部17より転送された平滑化処理或いはノイズ除去処理後の信号(データ)に対し、所定の値に応じてレベル分け或いは複数の所定の閾値との比較を実行し、原子炉建屋データベース15に格納される原子炉建屋配置図とセンサ情報データベース16に格納されるセンサ(計器)及び引き回されるケーブルの位置情報との関係を求める。
【0024】
表示制御部19は、原子炉建屋配置図に監視制御部14により演算されたレベル或いは閾値との関係から輝度或いは色等を識別可能に表示部12の表示画面上に表示可能とする。なお、表示制御部19は、例えば、表示部12の表示画面上にセンサが設置されるエリア毎にデータに応じてコンターマップにて表示するよう制御する。
【0025】
[原子力プラント状態監視装置の動作]
次に、原子力プラント状態監視装置1の動作について説明する。例えば、仮に、外部より飛翔体6(大型航空機など)が原子炉建屋2に衝突した場合、飛翔体6が衝突した付近に設置される、系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)である第1センサ21a,第2センサ21b・・・第Nセンサ21nからの信号は喪失されるか或いは損傷により異常値を出力することになる。
【0026】
原子力プラント状態監視装置1を構成する監視制御部14は、計測値取得部17より転送される各系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)に対応する信号と、原子炉建屋データベース15に格納される原子炉建屋配置図及びセンサ情報データベース16に格納される上述の各系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)位置情報に基づき、例えば、所定の値に応じてレベル分け或いは複数の所定の閾値との比較を実行し、実行結果を表示制御部19へ内部バス20を介して転送する。
【0027】
表示制御部19は、
図7に示すように表示部12の表示画面40にコンターマップにて表示する。
図7において、黒丸は通常値を出力するセンサ36aを示しており、白丸は異常値を出力するセンサ36bを示している。異常値を出力するセンサの設置エリア37は、異常値を出力するセンサの設置エリア38よりも濃いハッチングにて示されており、白抜き矢印にて、推定衝突位置が表示されている。これによりオペレータは、表示画面40上に表示されるコンターマップを視認することにより、容易に、飛翔体6の衝突による原子炉建屋2内の損傷範囲(異常値を出力するセンサの設置エリア37,38)を把握することが可能となる。コンターマップの表示をハッチングの濃淡に代えて、輝度の高低或いは異なるカラーで表示する構成としても良い。また、コンターマップの表示に代えて、各センサ位置に計測値を表示するよう構成しても良い。
【0028】
なお、本実施例では、系統のプロセスを監視するために設置される系統用圧力センサ(圧力計)を用いる場合を一例として説明したが、系統用圧力センサ(圧力計)に代えて系統用流量センサ(流量計)を用いる構成としても良い。
【0029】
また、
図6では図示しないが原子力プラント状態監視装置1を構成する処理部10に出力I/Fを設け、上述の
図5に示したように、監視制御部14により、第2注水配管33bの破断を検出し、第2電動弁34bを閉状態とすると共に第1電動弁34aを状態とし、ポンプ32を稼働させ貯水槽31より第1注水配管33aを介して冷却水を供給するよう構成しても良い。
また、本実施例では、原子力プラント状態監視装置1を特定重大事故等対処施設3内に設ける構成としたがこれに限られるものではなく、原子力プラント状態監視装置1を特定重大事故等対処施設3外に設けても良い。
【0030】
以上の通り本実施例によれば、仮に外部より飛翔体が原子炉建屋に衝突した場合に、衝突による損傷範囲を的確に把握し得る原子力プラント状態監視装置を提供することが可能となる。
また、衝突による損傷範囲を的確に把握できることから、特定重大事故等対処施設の多重化および位置分散した系列のうち、どちらの系列を使用するか判断が可能となる。
【0031】
更には、オペレータは、表示画面上に表示されるコンターマップを視認することにより、容易に、飛翔体の衝突による原子炉建屋内の損傷範囲を把握することが可能となる。
【実施例2】
【0032】
図8は、本発明の他の実施例に係る実施例2の原子力プラント状態監視装置の機能ブロック図である。上述の実施例1では、複数のセンサとして、発電運転用の各系統のプロセスを監視するために設置される系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)を用いたのに対し、本実施例では複数のセンサ(計器)として更に加速度計を用いる点が実施例1と異なる。実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付し、以下では重複する説明を省略する。
【0033】
図8に示す複数のセンサ(計器)である、第1センサ21a’,第2センサ21b’・・・第Nセンサ21n’は、発電運転用の各系統のプロセスを監視するために設置される系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)、に加え、環境監視用に原子炉建屋2内に設置される加速度計である。
原子力プラント状態監視装置1aを構成するセンサ情報データベース16aは、予め入力部11及び入力I/F13を介して入力された、原子炉建屋2内に設置される第1センサ21a,第2センサ21b・・・第Nセンサ21nである、発電運転用の各系統のプロセスを監視するために設置される系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)、に加え、加速度計及び原子炉建屋2内を引き回されるケーブルの位置情報を格納する。
【0034】
仮に、飛翔体6(大型航空機など)が原子炉建屋2に衝突した場合、飛翔体6の衝突により原子炉建屋2内に振動が生じ、伝搬することとなる。この際、飛翔体6が衝突した付近に設置される加速度計により計測される加速度が最も大きく、振動の伝搬距離に応じて、振動自体が減衰することから、各加速度計により計測される加速度の計測データに基づき、原子力プラント状態監視装置1aを構成する監視制御部14aが加速度データの分布(例えば、減衰分布)を演算し、センサ情報データベース16aに格納される各加速度計が設置される位置情報に基づき、2次元的或いは3次元的に加速度データの分布を求める。また、監視制御部14aは、計測された最大加速度から飛翔体6の衝突位置を推定する。監視制御部14aは、求めた2次元的或いは3次元的な加速度データの分布及び推定された飛翔体6の衝突位置を表示制御部19へ内部バス20を介して転送する。表示制御部19は、表示部12の表示画面上に原子炉建屋配置図と共に、コンターマップ及び推定された飛翔体6の衝突位置を表示する。これによりオペレータは、表示画面上に表示されるコンターマップ及び推定された飛翔体6の衝突位置を視認することにより、迅速に対応を図ることが可能となる。
【0035】
本実施例によれば、実施例1の効果に加え、飛翔体の衝突位置の推定精度の向上を図ることが可能となる。
【実施例3】
【0036】
図9は、本発明の他の実施例に係る実施例3の原子力プラント状態監視装置の機能ブロック図である。上述の実施例1では、複数のセンサとして、発電運転用の各系統のプロセスを監視するために設置される系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)を用いたのに対し、本実施例では複数のセンサ(計器)として更に環境監視用に設置されるセンサとして、火災検知器及び建屋内雰囲気温度センサ(温度計)を用いる点が実施例1と異なる。実施例1と同様の構成要素に同一の符号を付し、以下では重複する説明を省略する。
【0037】
図9に示す複数のセンサ(計器)である、第1センサ21a’’,第2センサ21b’’・・・第Nセンサ21n’’は、発電運転用の各系統のプロセスを監視するために設置される系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)、に加え、環境監視用に設置される火災検知器及び建屋内雰囲気温度センサ(温度計)である。
【0038】
原子力プラント状態監視装置1bを構成するセンサ情報データベース16bは、予め入力部11及び入力I/F13を介して入力された、原子炉建屋2内に設置される第1センサ21a,第2センサ21b・・・第Nセンサ21nである、発電運転用の各系統のプロセスを監視するために設置される系統用圧力センサ(圧力計)、系統用温度センサ(温度計)、及び/又は、環境監視用に設置される建屋内雰囲気圧力センサ(圧力計)、建屋内雰囲気温度センサ(温度計)、に加え、火災検知器及び建屋内雰囲気温度センサ(温度計)並びに原子炉建屋2内を引き回されるケーブルの位置情報を格納する。
【0039】
例えば、原子炉建屋2に飛翔体6(大型航空機など)が衝突した場合、当該飛翔体6が備える燃料タンクより燃料が原子炉建屋2内に漏洩し、引火により火災が発生する場合がある。このような場合において、原子力プラント状態監視装置1bを構成する監視制御部14bは、計測値取得部17より転送される各火災検知器及び建屋内雰囲気温度センサ(温度計)に対応する信号と、原子炉建屋データベース15に格納される原子炉建屋配置図及びセンサ情報データベース16bに格納される上述の火災検知器及び建屋内雰囲気温度センサ(温度計)の位置情報に基づき、例えば、所定の値に応じてレベル分け或いは複数の所定の閾値との比較を実行し、実行結果を表示制御部19へ内部バス20を介して転送する。表示制御部19は、表示部12の表示画面上に原子炉建屋配置図と共に、コンターマップにて表示する。なお、この場合において、原子炉建屋データベース15に格納される原子炉建屋配置図内に、防爆エリア或いは防火処理が施されたエリアを他のエリアと区別して格納しておくことが望ましい。これによりオペレータは、表示画面上に表示されるコンターマップを視認することにより、容易に、火災による影響範囲を把握することが可能となる。
【0040】
本実施例によれば、実施例1の効果に加え、容易に、火災による影響範囲を把握することが可能となる。
【0041】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。