(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクリル系ポリマーブロック中の前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が、90質量%以上である請求項2に記載の高分子分散剤の製造方法。
前記重合溶剤が、炭素数8以上の炭化水素、炭素数8以上のアルカノール、炭素数8以上の脂肪酸、炭素数8以上の脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、及びシリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項2又は3に記載の高分子分散剤の製造方法。
前記液媒体が、炭素数8以上の炭化水素、炭素数8以上のアルカノール、炭素数8以上のアルケノール、炭素数8以上の脂肪酸、炭素数8以上の不飽和脂肪酸、炭素数8以上の脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、炭素数8以上の不飽和脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、及びシリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項5又は6に記載のフィラー分散液。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3で提案された現像剤等の組成物であっても、フィラーの分散性は必ずしも優れているとは言えず、さらなる改良の余地があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、低極性の液媒体中にフィラーを安定して分散させることが可能な高分子分散剤を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記高分子分散剤の製造方法、及び上記高分子分散剤を用いて得られる、フィラーが安定して分散されているとともに、フィラーの分散性が低下した場合であっても容易に再分散させることが可能なフィラー分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、その末端に1以上の水酸基を有する長鎖アルキル基含有ポリマーブロックに、長鎖アルキル基等を含むコハク酸無水物誘導体等を反応させた反応物である特定のアクリル系ポリマーが有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す高分子分散剤が提供される。
[1]低極性の液媒体中にフィラーを分散させるために用いる高分子分散剤であって、
その末端に1以上の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックと、下記一般式(1)で表されるコハク酸誘導体及び下記一般式(2)で表されるコハク酸無水物誘導体の少なくともいずれかとの反応物である、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマーであり、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が、80質量%以上であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が、2,000〜12,000である高分子分散剤。
【0009】
(前記一般式(1)及び(2)中、R
1は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。前記一般式(3)中、R
2は水素原子又はメチル基を示し、R
3は炭素数8〜22のアルキル基を示す)
【0010】
また、本発明によれば、以下に示す高分子分散剤の製造方法が提供される。
[2]前記[1]に記載の高分子分散剤の製造方法であって、重合溶剤中、1以上の水酸基を有するアゾ系ラジカル開始剤及び連鎖移動剤の少なくともいずれかを使用し、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を重合して、その末端に1以上の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを得る工程と、前記アクリル系ポリマーブロックと、下記一般式(1)で表されるコハク酸誘導体及び下記一般式(2)で表されるコハク酸無水物誘導体の少なくともいずれかと、を反応させる工程と、を有する高分子分散剤の製造方法。
【0011】
(前記一般式(1)及び(2)中、R
1は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。前記一般式(3)中、R
2は水素原子又はメチル基を示し、R
3は炭素数8〜22のアルキル基を示す)
【0012】
[3]前記アクリル系ポリマーブロック中の前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が、90質量%以上である前記[2]に記載の高分子分散剤の製造方法。
[4]前記重合溶剤が、炭素数8以上の炭化水素、炭素数8以上のアルカノール、炭素数8以上の脂肪酸、炭素数8以上の脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、及びシリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも一種である前記[2]又は[3]に記載の高分子分散剤の製造方法。
【0013】
さらに、本発明によれば、以下に示す以下に示すフィラー分散液の製造方法が提供される。
[5]低極性の液媒体、フィラー、及び前記液媒体中に前記フィラーを分散させる分散剤を含有するフィラー分散液であって、前記分散剤が、前記[1]に記載の高分子分散剤であるフィラー分散液。
[6]前記フィラーが、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種である前記[5]に記載のフィラー分散液。
[7]前記液媒体が、炭素数8以上の炭化水素、炭素数8以上のアルカノール、炭素数8以上のアルケノール、炭素数8以上の脂肪酸、炭素数8以上の不飽和脂肪酸、炭素数8以上の脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、炭素数8以上の不飽和脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、及びシリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも一種である前記[5]又は[6]に記載のフィラー分散液。
[8]前記フィラー100質量部に対して、前記高分子分散剤を3〜50質量部含有する前記[5]〜[7]のいずれかに記載のフィラー分散液。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低極性の液媒体中にフィラーを安定して分散させることが可能な高分子分散剤を提供することができる。また、本発明によれば、上記の高分子分散剤を簡便に製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、上記の高分子分散剤を用いて得られる、フィラーが安定して分散されているとともに、フィラーの分散性が低下した場合であっても容易に再分散させることが可能なフィラー分散液を提供することができる。本発明のフィラー分散液は、例えば、化粧品、液体現像剤、油性インクジェットインク、紫外線硬化型インクジェットインク、弱溶剤型塗料、オフセットインク、潤滑剤、洗浄剤、殺虫剤、離形剤、接着剤などとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<高分子分散剤>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の高分子分散剤は、低極性の液媒体中にフィラーを分散させるために用いる、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマーである。そして、本発明の高分子分散剤(アクリル系ポリマー)は、その末端に1以上の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックと、下記一般式(1)で表されるコハク酸誘導体及び下記一般式(2)で表されるコハク酸無水物誘導体の少なくともいずれかとの反応物であり、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が、80質量%以上であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が、2,000〜12,000である。
【0017】
(前記一般式(1)及び(2)中、R
1は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。前記一般式(3)中、R
2は水素原子又はメチル基を示し、R
3は炭素数8〜22のアルキル基を示す)
【0018】
本発明の高分子分散剤は、低極性の液媒体に溶解しうるアクリル系ポリマーであり、その末端、好ましくはその片末端にカルボキシ基を有する。このカルボキシ基がフィラーと水素結合、イオン結合、又は化学結合することで、高分子分散剤がフィラーに吸着し、低極性の液媒体中にフィラーを安定して分散させることができる。カルボキシ基は、低極性の液媒体に溶解しうる、長鎖のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸誘導体やコハク酸無水物誘導体が、アクリル系ポリマーブロックの水酸基と反応することで形成される。
【0019】
その末端に1以上の水酸基、好ましくは2以上の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックは、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含む疎水性のポリマーブロックである。一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルは長鎖のアルキル基を有するモノマーであるため、この(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含むアクリル系ポリマーブロックは疎水性が高い。したがって、このアクリル系ポリマーブロックと、所定のコハク酸無水物誘導体等とを反応させた反応物である本発明の高分子分散剤は、低極性の液媒体に対する相溶性及び溶解性が高く、このような低極性の液媒体中にフィラーを分散させるための分散剤として好適である。
【0020】
一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニルなどを挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
高分子分散剤中、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上である。(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量を80質量%以上とすることで、低極性の液媒体に溶解しうる高分子分散剤とすることができる。(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量が80質量%未満であると、低極性の液媒体に溶解しにくくなり、フィラーを安定して分散させることが困難になる。
【0022】
一般式(1)で表されるコハク酸誘導体としては、ブチルコハク酸、ペンチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、2−ヘキセン−1−イル−コハク酸、オクチルコハク酸、2−エチルヘキシルコハク酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、イソオクタデセニルコハク酸、オクタデシルコハク酸などを挙げることができる。また、一般式(2)で表されるコハク酸無水物誘導体としては、上記のコハク酸誘導体の酸無水物を挙げることができる。なかでも、低極性の液媒体に対する相溶性及び溶解性等の観点から、一般式(1)及び(2)中のR
1は、炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。
【0023】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される高分子分散剤のポリスチレン換算の数平均分子量は2,000〜12,000であり、好ましくは2,000〜10,000である。数平均分子量が2,000未満であると、分子量が小さすぎるためにフィラーを分散させた際の立体反発が発揮されず、安定な分散液を得ることができない。一方、数平均分子量が12,000超であると、フィラーを分散させた分散液の粘度が過剰に高くなるとともに、フィラーへの吸着部分が相対的に少なくなるため、分散剤の使用量を増やす必要がある。
【0024】
本発明の高分子分散剤は、低極性の液媒体中にフィラーを分散させるために用いられる。低極性の液媒体としては、炭素数8以上の炭化水素、炭素数8以上のアルカノール、炭素数8以上のアルケノール、炭素数8以上の脂肪酸、炭素数8以上の不飽和脂肪酸、炭素数8以上の脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、炭素数8以上の不飽和脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、及びシリコーンオイルなどを挙げることができる。これらの液媒体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの液媒体の比誘電率は2前後と非常に低い。また、これらの液媒体の溶解性パラメーターは約8以下である。このため、これらの液媒体は非常に低極性な液媒体である。
【0025】
炭素数8以上の炭化水素としては、オクタン、オクテン、2−エチルヘキサン、ノナン、デカン、イソデカン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、ウンデカン、オクタデカン、C8−20のイソパラフィン、スクアラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添ポリイソブテン、1−オクテン、2−オクテン、1−ノネン、2−ノネン、1−デセン、2−デセン、1−ウンデセン、2−ウンデセン、1−ドデセン、2−ドデセン、1−トリデセン、2−トリデセン、1−テトラデセン、2−テトラデセン、1−ペンタデセン、2−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、2−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、2−ヘプタデセン、1−オクタデセン、2−オクタデセンジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。
【0026】
炭素数8以上のアルカノール及びアルケノールとしては、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、イソデカノール、ドデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどを挙げることができる。
【0027】
炭素数8以上の脂肪酸及び不飽和脂肪酸としては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノレイン酸、ウンデシレン酸、イソノナン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、2−エチルヘキサン酸などを挙げることができる。
【0028】
炭素数8以上の脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、及び炭素数8以上の不飽和脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステルとしては、ラウリン酸メチル、ウンデシレン酸ヘプチル、イソノナン酸イソノニル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスチル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、ステアリン酸コレステリル脂肪酸などを挙げることができる。さらには、グリセリンとのトリエステルであるアーモンド油、アボガド油、オリーブ油、シア脂、シア脂油、月見草油、チャボトケイソウ種子油、ツバキ油、ババス油、ピーナッツ油、ローズヒップ油などの油脂;ミツロウ、モクロウ、ホホバ油、キャンデリラロウ、カルナウバロウなどの蝋;などを挙げることができる。
【0029】
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどを挙げることができる。
【0030】
フィラーとしては、無機顔料、有機顔料、体質顔料、充填剤、無機微粒子、ダイヤモンド、グラフェン、グラファィト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、クレイ、導電性フィラー、熱伝導剤、炭素繊維、ガラス繊維、セルロース、セルロースナノフィバーなどを挙げることができる。これらのフィラーは、強度や機能性の向上及びコスト低減のために、プラスチックス、ゴム、塗料、インクなどに添加される粒子状、粉状、又は繊維状の物質である。フィラーとしては、無機系化合物である無機フィラーを用いることが好ましい。より具体的には、白色顔料である二酸化チタン;紫外線反射能を有する、日焼け止めなどに使用される酸化亜鉛;弁柄、オーカー、鉄黒などの色材として使用される酸化鉄;透明性及び強度向上のために使用されるシリカ;などが好ましい。フィラーの結晶形、粒子径、表面状態、表面処理の有無などについては特に制限されない。
【0031】
<高分子分散剤の製造方法>
本発明の高分子分散剤の製造方法は、重合溶剤中、1以上の水酸基を有するアゾ系ラジカル開始剤及び連鎖移動剤の少なくともいずれかを使用し、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を重合して、その末端に1以上の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを得る工程(工程(1))と、得られたアクリル系ポリマーブロックと、一般式(1)で表されるコハク酸誘導体及び一般式(2)で表されるコハク酸無水物誘導体の少なくともいずれかと、を反応させる工程(工程(2))と、を有する。
【0032】
工程(1)では、重合溶剤中、1以上の水酸基を有するアゾ系ラジカル開始剤及び連鎖移動剤の少なくともいずれかを使用し、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を重合する。1以上の水酸基を有するアゾ系ラジカル開始剤や連鎖移動剤を用いて重合することで、これらの開始剤や連鎖移動剤に由来する残基が組み込まれたポリマー、すなわち、その末端に1以上の水酸基、好ましくは2以上の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを得ることができる。
【0033】
1以上の水酸基を有するアゾ系ラジカル開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド)、2、2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]の他、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)のカルボキシ基と、エポキシ基や2以上の水酸基を有する化合物とを反応させて得られる化合物などを挙げることができる。
【0034】
1以上の水酸基を有する連鎖移動剤としては、ヒドロキシエタンチオールやチオグリセロールの他、チオリンゴ酸などのチオール基含有カルボン酸化合物のエチレングリコールモノエステルやアミノエタノールとのアミド化物を挙げることができる。また、リビングラジカル重合で使用される水酸基を有する開始化合物を、1以上の水酸基を有する連鎖移動剤として使用することもできる。具体的には、可逆的移動触媒重合に使用される硫黄化合物であるビス(4−(エチル−(2−ヒドロキシエチル)カルバモイル)ベンジル)トリチオカーボネート、4−シアノ−4−((ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル)ペンタン酸のエステル;ニトロキサイド熱解離重合法に使用される4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラピペリジン−1−オキシなど;原子移動ラジカル重合や可逆的触媒移動重合などに使用されるハロゲン化合物である2−ブロモイソ酪酸のエチレングリコールモノエステル、2−アイオドイソ酪酸のエチレングリコールモノエステルなどを挙げることができる。
【0035】
上記のアゾ系ラジカル開始剤や連鎖移動剤の存在下、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分を重合することで、その末端に1以上の水酸基、好ましくは2以上の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを得ることができる。
なお、得られるアクリル系ポリマーブロックの末端には、2以上の水酸基が導入されていることが好ましい。その末端に2以上の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックとすることで、その後にコハク酸無水物誘導体等と反応させて得られる高分子分散剤(アクリル系ポリマー)の末端に2以上のカルボキシ基を導入することができ、フィラーへの吸着性がより向上した高分子分散剤とすることができる。
【0036】
上記のアゾ系ラジカル開始剤や連鎖移動剤を用いると、得られるアクリル系ポリマーブロックの片末端又は両末端に水酸基が導入されるが、アクリル系ポリマーブロックの片末端に水酸基が導入されることが好ましい。その両末端に水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを用いると、得られる高分子分散剤の両末端でフィラー同士が連結され、凝集しやすくなることがある。
【0037】
その末端に1以上の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロック中の、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。また、アクリル系ポリマーブロックは、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位のみで実質的に構成されていることがさらに好ましい。アクリル系ポリマーブロック中の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量を90質量%以上とすることで、低極性の液媒体に溶解しうる高分子分散剤を得ることができる。
【0038】
アクリル系ポリマーブロックは、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位以外の構成単位(その他の構成単位)を含んでいてもよい。その他の構成単位を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどのカルボキシ基含有メタクリル酸系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(アルケニル)(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(シクロアルケニル)(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートなどの酸素原子含有(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどのハロゲン原子含有(メタ)アクリレート;トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン(メタ)アクリレートなどのケイ素原子含有(メタ)アクリレート;2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収基を有する(メタ)アクリレート;テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート;などを挙げることができる。また、必要に応じて、片末端が(メタ)アクリロイル基であるマクロモノマーなどを用いることもできる。
【0039】
さらに、スチレン系ビニルモノマー、アミド系モノマー、アルカン酸ビニル系モノマー、マレイン酸系モノマーなどのモノマーを、その他の構成単位を構成するモノマーとして用いることができる。
【0040】
スチレン系ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ビニルキシレンなどを挙げることができる。アミド系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0041】
アルカン酸ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、ラウリン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどを挙げることができる。マレイン酸系モノマーとしては、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸ジブチルなどを挙げることができる。
【0042】
重合溶剤としては、炭素数8以上の炭化水素、炭素数8以上のアルカノール、炭素数8以上の脂肪酸、炭素数8以上の脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、及びシリコーンオイルなどの、フィラーを分散させる前述の液媒体と同様の低極性の溶剤を用いることが好ましい。これらの重合溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、フィラーを分散させる低極性の液媒体と実質的に同一種の溶剤を重合溶剤として用いることで、合成した高分子分散剤を分離や精製等することなく、フィラー分散液を製造するため材料としてそのまま使用することができるために好ましい。
【0043】
工程(2)では、工程(1)で得たアクリル系ポリマーブロックと、一般式(1)で表されるコハク酸誘導体及び一般式(2)で表されるコハク酸無水物誘導体の少なくともいずれかと、を反応させる。これにより、アクリル系ポリマーブロックの末端に存在する水酸基と、コハク酸無水物誘導体等とが反応してエステル結合が形成され、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマーである高分子分散剤を得ることができる。
【0044】
なお、(i)前述の連鎖移動剤等とコハク酸無水物誘導体等を反応させて、カルボキシ基を有する連鎖移動剤等を得た後;(ii)得られたカルボキシ基を有する連鎖移動剤等を使用して一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー成分をラジカル重合する;といった手順によっても、目的とするその末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマーを得ることができる。しかし、上記の手順とした場合、カルボキシ基を有する連鎖移動剤等が低極性の重合溶剤に溶解しにくくなる場合がある。このため、前述の通り、工程(1)→工程(2)の手順で、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマーである高分子分散剤を製造することが好ましい。
【0045】
また、長鎖アルキル基等を有するコハク酸無水物誘導体等は低極性の重合溶剤に溶解しやすいため、アクリル系ポリマーブロックの末端に存在する水酸基と良好に反応し、その末端にカルボキシ基が効率的に導入された高分子分散剤を得ることができる。
【0046】
コハク酸誘導体とコハク酸無水物誘導体のうち、コハク酸無水物誘導体を使用することが好ましい。コハク酸誘導体を用いてもよいが、アクリル系ポリマーブロックの末端と反応させることから、収率が低くなる場合がある。なお、コハク酸誘導体のハロゲン化物を用いることもできるが、反応後にハロゲンを除去して精製する必要がある。
【0047】
アクリル系ポリマーブロックと、コハク酸無水物誘導体等との反応温度は、例えば、50〜150℃とすることが好ましく、70〜130℃とすることがさらに好ましい。また、反応に際して触媒を用いることもできる。触媒としては、p−トルエンスルホン酸等の強酸;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等の強塩基を用いることができる。なお、その末端に複数の水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを用いた場合、コハク酸無水物誘導体等と縮合反応してグラフト型ポリマーが形成される場合もある。但し、このようなグラフト型ポリマーが形成された場合であっても、カルボキシ基が末端に導入されていればよい。
【0048】
<フィラー分散液>
本発明のフィラー分散液は、低極性の液媒体、フィラー、及びこの液媒体中にフィラーを分散させる分散剤を含有する。そして、分散剤が、前述の高分子分散剤である。液媒体としては、前述の低極性の液媒体を使用する。なかでも、炭素数8以上の炭化水素、炭素数8以上のアルカノール、炭素数8以上のアルケノール、炭素数8以上の脂肪酸、炭素数8以上の不飽和脂肪酸、炭素数8以上の脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、炭素数8以上の不飽和脂肪酸と水酸基含有化合物とのエステル、及びシリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。なお、低極性の液媒体以外にも、例えば、種々の有機溶媒、モノマー、及び液状オリゴマーなども使用することができる。
【0049】
フィラーとしては、前述のフィラーを使用する。なかでも、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。フィラー分散液は、フィラー100質量部に対して、高分子分散剤を3〜50質量部含有することが好ましく、5〜30質量部含有することがさらに好ましい。フィラー100質量部に対する高分子分散剤の含有量が3質量部未満であると、フィラーを安定して分散させることが困難になる場合がある。一方、フィラー100質量部に対する高分子分散剤の含有量が50質量部超であると、フィラーの分散に寄与しない過剰の高分子分散剤が含まれることになり、フィラー分散液の粘度が高くなりやすいとともに、ゲル化しやすくなることがある。
【0050】
前述の低極性の液媒体、フィラー、及び高分子分散剤を使用して、定法にしたがって液媒体中にフィラーを分散させることで、本発明のフィラー分散液を得ることができる。フィラー分散液には、従来公知の添加剤や樹脂をさらに含有させてもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、色素誘導体(シナジスト)、染料、光重合開始剤などを挙げることができる。樹脂としては、感光性の樹脂ワニスや、非感光性の樹脂ワニスなどを用いることができる。
【0051】
感光性樹脂ワニスとしては、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂などを挙げることができる。非感光性の樹脂ワニスとしては、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂ワニスは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
高分子分散剤、フィラー、及び液媒体を混合し、必要に応じて各種添加剤を添加した後、分散機を使用して所望とする粒子径になるまでフィラーを分散させることで、フィラー分散液を得ることができる。分散機としては、ニーダー、アトライター、ボールミル、ガラスやジルコンなどを用いたサンドミルや横型メディア分散機、コロイドミルなどを使用することができる。
【0053】
フィラー分散液中のフィラーの粒子径は、フィラー分散液の用途応じて適宜設定すればよい。フィラー分散液中のフィラーの粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)や光散乱粒度分布計を使用して観察及び測定することができる。遠心分離機、超遠心分離機、又はろ過機などを使用して得られたフィラー分散液を処理し、混在する異物や粗大粒子を除去すれば、フィラー分散液の信頼性を高めることができるために好ましい。なお、フィラー分散液の粘度は、用途に応じて任意に設定すればよい。
【0054】
本発明のフィラー分散液は、例えば、化粧品、液体現像剤、油性インクジェットインク、紫外線硬化型インクジェットインク、弱溶剤型塗料、オフセットインク、潤滑剤、洗浄剤、殺虫剤、離形剤、接着剤などとして有用である。なかでも、フィラーの微粒子化と分散安定性が高度に要求される化粧品やインクジェットインク等として好適である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0056】
<高分子分散剤の製造>
(合成例1)
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応容器に、n−ドデカン100部、メタクリル酸ラウリル(LMA)100部、チオグリセロール(TGL)4部、及び2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)(商品名「V−601」、和光純薬工業社製(以下、「V−601」と記す))0.1部を入れ、窒素バブリングしながら80℃で4時間重合させた。V−601 0.05部を添加した後、さらに80℃で3時間重合して、その末端に2つの水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを含有するポリマー溶液を得た。サンプリングして測定したポリマー溶液の固形分は、50.2%であった。また、示差屈折率検出器(RI)を用いたGPCにより測定したアクリル系ポリマーブロックの数平均分子量(Mn)は3,600であり、分子量分布(PDI)は1.64であった。
【0057】
n−ドデシルコハク酸無水物(DSA)15.9部、触媒としての1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)0.2部、及び酸化防止剤としての3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.2部を添加した。反応液の一部をサンプリングし、赤外分光光度計(IR)を使用してDSA由来の酸無水物のピークの消滅及び水酸基由来のピークの減少を確認しながら、120℃で8時間反応させた。これにより、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー(SAP−1)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は54.4%であった。エタノール性0.1N水酸化カリウム溶液の滴定により測定したSAP−1の酸価は27.3mgKOH/gであった。また、SAP−1のMnは3,900であり、PDIは1.85であった。
【0058】
(合成例2)
合成例1で用いた反応容器と同様の反応容器に、n−テトラデカン100部、メタクリル酸ステアリル(SMA)100部、TGL3部、及びV−601 0.1部を入れ、窒素バブリングしながら80℃で4時間重合させた。V−601 0.05部を添加した後、さらに80℃で3時間重合して、その末端に2つの水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを含有するポリマー溶液を得た。サンプリングして測定したポリマー溶液の固形分は、50.3%であった。また、アクリル系ポリマーブロックのMnは5,200であり、PDIは1.79であった。
【0059】
n−オクタデシルコハク酸無水物(ODSA)15.5部、DBU0.2部、及びBHT0.2部を添加した。反応液の一部をサンプリングし、IRを使用してODSA由来の酸無水物のピークの消滅及び水酸基由来のピークの減少を確認しながら、120℃で8時間反応させた。これにより、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー(SAP−2)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は54.6%であった。SAP−2の酸価は20.0mgKOH/gであり、Mnは5,500であり、PDIは1.83であった。
【0060】
(合成例3)
合成例1で用いた反応容器と同様の反応容器に、トリメチロールプロパントリオクタノエートとトリメチロールプロパントリデカノエートの混合物(商品名「ユニスターH327R」、日油社製(以下、「H327R」と記す))100部、メタクリル酸イソデシル(IDMA)100部、TGL5部、及びV−601 0.1部を入れ、窒素バブリングしながら80℃で4時間重合させた。V−601 0.05部を添加した後、さらに80℃で3時間重合して、その末端に2つの水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを含有するポリマー溶液を得た。サンプリングして測定したポリマー溶液の固形分は、50.1%であった。また、アクリル系ポリマーブロックのMnは2,600であり、PDIは1.66であった。
【0061】
n−ブチルコハク酸無水物(BSA)11.5部、DBU0.2部、及びBHT0.2部を添加した。反応液の一部をサンプリングし、IRを使用してBSA由来の酸無水物のピークの消滅及び水酸基由来のピークの減少を確認しながら、120℃で8時間反応させた。これにより、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー(SAP−3)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は53.8%であった。SAP−3の酸価は35.1mgKOH/gであり、Mnは2,800であり、PDIは1.74であった。
【0062】
(合成例4)
合成例1で用いた反応容器と同様の反応容器に、シリコーンオイル(商品名「KF−96L−2cs」、信越シリコーン社製(以下、「KF−96」と記す))100部、メタクリル酸セチル(CMA)100部、TGL2部、及びV−601 0.1部を入れ、窒素バブリングしながら80℃で4時間重合させた。V−601 0.05部を添加した後、さらに80℃で3時間重合して、その末端に2つの水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを含有するポリマー溶液を得た。サンプリングして測定したポリマー溶液の固形分は、50.2%であった。また、アクリル系ポリマーブロックのMnは8,200であり、PDIは1.88であった。
【0063】
テトラプロペニルコハク酸無水物(TPSA)7.9部、DBU0.2部、及びBHT0.2部を添加した。反応液の一部をサンプリングし、IRを使用してTPSA由来の酸無水物のピークの消滅及び水酸基由来のピークの減少を確認しながら、120℃で8時間反応させた。これにより、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー(SAP−4)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は52.0%であった。SAP−4の酸価は28.6mgKOH/gであり、Mnは8,500であり、PDIは1.65であった。
【0064】
(比較合成例1)
合成例1で用いた反応容器と同様の反応容器に、n−テトラデカン100部、LMA100部、TGL4部、及びV−601 0.1部を入れ、窒素バブリングしながら80℃で4時間重合させた。V−601 0.05部を添加した後、さらに80℃で3時間重合して、その末端に2つの水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを含有するポリマー溶液を得た。サンプリングして測定したポリマー溶液の固形分は、50.9%であった。また、アクリル系ポリマーブロックのMnは3,700であり、PDIは1.69であった。
【0065】
トリメリット酸無水物(TMA)11.4部、DBU0.2部、及びBHT0.2部を添加した。120℃に加温したが、TMAがn−テトラデカンに溶解しにくいために反応を進行させることができず、目的とするポリマーを得ることができなかった。
【0066】
(比較合成例2)
合成例1で用いた反応容器と同様の反応容器に、n−ドデカン100部、メタクリル酸n−ブチル(BMA)100部、TGL4部、及びV−601 0.1部を入れ、窒素バブリングしながら80℃で4時間重合させた。V−601 0.05部を添加した後、さらに80℃で3時間重合して、その末端に2つの水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを含有するポリマー溶液を得た。サンプリングして測定したポリマー溶液の固形分は、50.5%であった。また、アクリル系ポリマーブロックのMnは3,200であり、PDIは1.70であった。
【0067】
DSA15.9部、DBU0.2部、及びBHT0.2部を添加した。反応液の一部をサンプリングし、IRを使用してDSA由来の酸無水物のピークの消滅及び水酸基由来のピークの減少を確認しながら、120℃で8時間反応させた。これにより、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー(CP−1)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は52.9%であった。CP−1の酸価は29.1mgKOH/gであり、Mnは3,600であり、PDIは1.72であった。
【0068】
(比較合成例3)
合成例1で用いた反応容器と同様の反応容器に、n−ドデカン100部、LMA100部、TGL12部、及びV−601 0.1部を入れ、窒素バブリングしながら80℃で4時間重合させた。V−601 0.05部を添加した後、さらに80℃で3時間重合して、その末端に2つの水酸基を有するアクリル系ポリマーブロックを含有するポリマー溶液を得た。サンプリングして測定したポリマー溶液の固形分は、52.5%であった。また、アクリル系ポリマーブロックのMnは2,200であり、PDIは1.64であった。
【0069】
TPSA47.3部、DBU0.3部、及びBHT0.2部を添加した。反応液の一部をサンプリングし、IRを使用してTPSA由来の酸無水物のピークの消滅及び水酸基由来のピークの減少を確認しながら、120℃で8時間反応させた。これにより、その末端にカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー(CP−2)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は61.3%であった。CP−2の酸価は62.5mgKOH/gであり、Mnは2,800であり、PDIは1.95であった。
【0070】
合成例1〜4で得たポリマーの物性を表1に示す。また、比較合成例1〜3で得たポリマーの物性を表2に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
<フィラー分散液の調製>
(実施例1)
SAP−1を含有するポリマー溶液13.8部(ポリマー分7.5部、フィラーに対して5%)、及びデカン136.2部を均一に混合した。アルミナ処理した酸化チタン(数平均粒子径:210nm)150部を添加した後、ディスパーを使用して30分撹拌し、ミルベースを調製した。横型媒体分散機(商品名「ダイノミル0.6リットルECM型」、シンマルエンタープライゼス社製、ジルコニア製ビーズ(径0.65mm))を使用し、周速10m/sで調製したミルベースを分散処理し、フィラーを十分に分散させた。10μm及び5μmのメンブレンフィルターで順次ろ過して、白色の酸化チタン分散液T−1を得た。なお、ろ過時にメンブレンフィルターの詰まりは生じなかった。粒度測定器(商品名「NICOMP 380ZLS−S」、インターナショナル・ビジネス社製)を使用して測定した、酸化チタン分散液T−1中の酸化チタンの数平均粒子径は、211nmであった。また、E型粘度計を使用し、25℃、60rpmの条件で測定した酸化チタン分散液T−1の粘度は、9.6mPa・sであった。
【0074】
(実施例2〜5、比較例1〜3)
表3に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして各分散液を得た。表3中、「KJCMPA−100」は、極性の液媒体である3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドを意味する。また、フィラーに付したカッコ内の数値(nm)は、フィラーの数平均粒子径を意味する。
【0075】
【0076】
<フィラー分散液の評価>
調製したフィラー分散液を遮光したガラス瓶に入れ、60℃に設定した恒温槽内に1か月保存した。保存後のフィラー分散液の粘度及びフィラーの数平均粒子径を測定するとともに、保存後の沈降物の有無、及び撹拌による沈降物の状態を確認した。また、保存後の内容物をスパチュラで撹拌し、沈降物の状態を確認するとともに、撹拌後のフィラーの数平均粒子径を測定した。さらに、以下に示す評価基準にしたがって総合的に評価した。結果を表4に示す。
[評価基準]
◎(非常に良好):保存後に沈降物がなく、粘度及びフィラーの粒子径に実質的な変化なし
〇(良好):保存後の粘度及びフィラーの粒子径に実質的な変化なし
×(不良):保存後の粘度及びフィラーの粒子径のいずれかに実質的な変化あり
【0077】
実施例1のフィラー分散液は、保存後も上澄みが生ずることがなかった。保存後の瓶の底の部分をスパチュラですくってみたところ、若干粘稠な沈降物が観察された。さらに、内容物をスパチュラで撹拌したところ、ほとんどの沈降物はなくなり、元の分散液の状態へと戻った。
【0078】
【0079】
<油性インクジェットインクへの応用>
(応用例1)
実施例1で得た酸化チタン分散液T−1を油性インクジェットインク用のカラーとして使用してインク化し、油性インクジェットインクを調製した。調製したインクを充填したインクカートリッジをインクジェットプリンターに搭載し、表面処理された厚さ50μmのPETフィルムにベタ印刷した。得られた印刷物は、光学濃度及びグロス値が高いものであった。また、印字ヨレがなく、耐擦過性も良好であった。さらに、スーパーUV試験機を使用して耐光性試験を行ったところ、十分な耐光性を有していることがわかった。
【0080】
<化粧品への応用>
(応用例2)
実施例5で得た酸化チタン分散液T−2を用いて化粧料を調製した。調製した化粧料は酸化チタンが十分に分散されており、紫外線防御効果に優れていた。また、肌に塗布した後の触った感じ(さらさら感)が優れていることを確認した。