特許第6786574号(P6786574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6786574照明装置用OLEDパネル及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786574
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】照明装置用OLEDパネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/06 20060101AFI20201109BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201109BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20201109BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20201109BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H05B33/06
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/28
   H05B33/10
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-217995(P2018-217995)
(22)【出願日】2018年11月21日
(65)【公開番号】特開2019-102445(P2019-102445A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2018年11月21日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0162293
(32)【優先日】2017年11月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】金 泰 ▲オク▼
(72)【発明者】
【氏名】宋 泰 俊
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/122938(WO,A1)
【文献】 特開2005−183209(JP,A)
【文献】 特開2015−220089(JP,A)
【文献】 特開2012−049112(JP,A)
【文献】 特開2003−036971(JP,A)
【文献】 特開2011−035388(JP,A)
【文献】 特開2017−143172(JP,A)
【文献】 特開2007−234431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光領域と、前記発光領域の外郭のパッド領域とに分けられる基板と、
前記基板上に配置され、上部に向かうほど幅が細くなるテーパー状の断面を有する補助配線パターンと
前記補助配線パターンおよび前記基板上に前記補助配線パターンを覆うように配置される第1電極と
前記第1電極上に配置され、前記補助配線パターンと重畳するパッシベーション層であって、補助配線パターンが配置される領域内に配置され、第1の電極に接触するパッシベーション層と、
前記パッシベーション層および前記第1電極上に配置するOLED発光構造体と、
前記OLED発光構造体上に配置する第2電極と、
前記第2電極上に配置する封止層とを含み、
前記発光領域において、前記パッシベーション層は、前記補助配線パターンの断面に対応する断面を有し、
前記発光領域の縁及び前記パッド領域の縁にパッシベーション層がさらに配置され、
前記パッド領域の縁は、前記発光領域と前記パッド領域との間の境界と対応する部分と、前記基板の縁と対応する他の部分とを含み、
前記パッド領域に、前記第1電極と連結される第1の電極パッド及び前記第2電極と連結される第2の電極パッドを配置し、
前記第1の電極パッドは、前記補助配線パターンと同じ材質の下部層と、前記第1電極と同じ材質で第1の電極から延びる上部層を含み、
前記第2の電極パッドは、前記補助配線パターンと同じ材質の下部層と、前記第2電極と同じ材質で第2の電極から延びる上部層を含み、
前記パッド領域において、前記パッシベーション層は前記第1の電極パッドの一部が露出するように前記第1の電極パッドの縁を覆い、
前記パッド領域において、前記パッシベーション層は前記第2の電極パッドの前記下部層と前記第2の電極パッドの前記上部層との間に配置され、前記第2の電極パッドの前記下部層の縁を覆う、照明装置用OLEDパネル。
【請求項2】
前記パッシベーション層は、上部平面部と、前記上部平面部から下側方に延びる傾斜部からなる断面を有する、請求項1に記載の照明装置用OLEDパネル。
【請求項3】
前記第1電極は、TCO(Transparent Conductive Oxide)材質であり、
前記補助配線パターンは、金属を含む材質である、請求項1に記載の照明装置用OLEDパネル。
【請求項4】
前記OLED発光構造体及び前記第2電極は、前記第1電極の断面に対応する断面を有する、請求項1に記載の照明装置用OLEDパネル。
【請求項5】
発光領域と、前記発光領域の外郭のパッド領域とに分けられる基板の発光領域及びパッド領域上に互いに電気的に連結された複数の補助配線を含む補助配線パターンを配置することと、
前記基板および前記補助配線パターン上に第1電極を配置することであって、前記第1電極は前記補助配線パターンを覆い、
前記第1電極上に高分子を配置するものの、前記発光領域の前記補助配線パターンの互いに隣接した補助配線らの間に高分子を配置することと、
前記高分子をマスクとして使用し、前記第1電極にパッシベーション物質を蒸着した後、前記第1電極上にパッシベーション層を形成した前記高分子を除去することであって、前記パッシベーション層は、前記発光領域における前記補助配線パターンの前記補助配線のそれぞれ上部と重畳し、前記第1電極と接触し、
前記パッシベーション層が配置された前記第1電極上にOLED発光構造体を配置することと、
前記OLED発光構造体上に第2電極を配置することと、
前記第2電極上に封止層を形成することとを含み、
前記発光領域の縁及び前記パッド領域の縁に前記パッシベーション層をさらに配置するように、前記発光領域の縁及び前記パッド領域の縁には前記高分子を配置せず、
前記パッド領域の縁は、前記発光領域と前記パッド領域との間の境界と対応する一部分と、前記基板の縁と対応する別の部分とを含み、
前記高分子に光分解可能な触媒が含まれる、照明装置用OLEDパネルの製造方法。
【請求項6】
前記高分子の配置は、インクジェット法によって液状高分子を印刷した後に硬化する方法で行われる、請求項に記載の照明装置用OLEDパネルの製造方法。
【請求項7】
前記パッシベーション物質の蒸着は、常圧ALD蒸着方法で行われる、請求項に記載の照明装置用OLEDパネルの製造方法。
【請求項8】
記高分子の除去は、光照射によって前記触媒を光分解させる方法で行われる、請求項に記載の照明装置用OLEDパネルの製造方法。
【請求項9】
前記パッド領域に、前記第1電極と連結される第1の電極パッド及び前記第2電極と連結される第2の電極パッドを配置するものの、
前記補助配線パターンの配置段階において、前記補助配線パターンと同じ材質の下部層を配置し、前記第1電極の配置段階において、前記第1電極と同じ材質の上部層を配置する方法で、前記第1の電極パッドを配置して、
前記補助配線パターンの配置段階において、前記補助配線パターンと同じ材質の下部層を配置し、前記第2電極の配置段階において、前記第2電極と同じ材質の上部層を配置する方法で、前記第2の電極パッドを配置する、請求項に記載の照明装置用OLEDパネルの製造方法。
【請求項10】
前記第1の電極パッドの上部層上に高分子をさらに配置して、前記パッシベーション層の形成段階において、前記第1の電極パッドの上部層上に配置した高分子を共に除去して、前記第1の電極パッドの上部層を露出する、請求項に記載の照明装置用OLEDパネルの製造方法。
【請求項11】
前記第1の電極パッドの上部層上に高分子をさらに配置して、前記封止層の形成後に前記第1の電極パッドの上部層上に配置した高分子を除去して、前記第1の電極パッドの上部層を露出する、請求項に記載の照明装置用OLEDパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置用OLEDパネルに関し、より詳細には、広い発光面積を有する照明装置用OLEDパネルに関する。
【0002】
また、本発明は、照明装置用OLEDパネルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、照明装置としては、主に蛍光灯や白熱灯を使用している。白熱灯の場合、演色指数は良いものの、エネルギー効率が非常に低いという短所がある。蛍光灯の場合、エネルギー効率は良いものの、演色指数が低く、水銀を含有しており、環境問題が発生する問題点がある。
【0004】
最近は、発光ダイオード(LED)に基づく照明装置が提案されている。発光ダイオードは、GaNのような窒化物半導体の積層構造で形成されており、青色波長帯において発光効率がもっとも高く、赤色と視感度のもっとも高い色である緑色波長帯域に行くほど発光効率が低下する。従って、赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、青色発光ダイオードを組み合わせて白色光を発光する場合、発光効率が低くなるという問題があった。また、赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、青色発光ダイオードを用いる場合、それぞれの発光ピーク(peak)の幅が狭いため、色演色性も低下するという問題もある。
【0005】
このような問題を解決するために、赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、青色発光ダイオードを組み合わせる方式の代りに、青色発光ダイオードと黄色蛍光体を組み合わせて白色光を出力する照明装置が提案されている。このような構成の発光ダイオードが提案される理由は、発光効率の低い緑色発光ダイオードを用いるより、効率の高い青色発光ダイオードのみを用いて、残りの色は、青色光を受けて黄色光を発散する蛍光物質を用いる方法がさらに効率的であるからである。
【0006】
しかし、青色発光ダイオードと黄色蛍光体を組み合わせて白色光を出力する照明装置の場合も、黄色光を発光する蛍光物質自体の発光効率が良くないため、照明装置の発光効率を向上させるには限界があった。
【0007】
特に、窒化物半導体発光ダイオード(LED)に基づく照明装置の場合、発光ダイオードで発生する多くの熱により、照明装置の背面に放熱手段を配置しなければならず、高品質の窒化物半導体の成長のためには、高価のサファイア基板を用いる必要がある。
【0008】
また、発光ダイオードに基づく照明装置の場合、窒化物半導体を成長させるためのエピ工程と、個別発光ダイオードチップを製造するためのチップ工程と、個別発光ダイオードチップを回路基板に実装するための実装工程とを含む多くの工程が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−95293
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであって、照明装置用OLED(Organic Light Emitting Diode)パネルを提供することを課題とする。
【0011】
また、本発明は、前記照明装置用OLEDパネルを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態による照明装置用OLEDパネルは、基板、補助配線パターン、第1電極、パッシベーション層、OLED発光構造体、第2電極及び封止層を含む。
【0013】
基板は、発光領域と、発光領域の外郭のパッド領域とに分けられる。補助配線パターンは、互いに電気的に連結された複数の補助配線を含む。補助配線パターンは、基板上に配置され、上部に向かうほど幅が狭くなるテーパー状の断面を有する。第1電極は、補助配線パターンが配置された基板上に配置する。パッシベーション層は、第1電極上に配置するものの、補助配線パターンが配置された領域上に配置する。OLED発光構造体は、パッシベーション層が配置された前記第1電極上に配置する。第2電極は、OLED発光構造体上に配置する。封止層は、第2電極上に配置する。
【0014】
パッシベーション層は、前記補助配線パターンの断面に対応する断面を有する。これにより、パッシベーション層の面積を減少して広い発光面積を有することができる。
【0015】
より具体的には、パッシベーション層は、上部平面部と、前記上部平面部から下側方に延びる傾斜部からなる。通常、パッシベーション層の場合、上部平面部、傾斜部のほか、傾斜部から延びる下部平面部をさらに含むが、本発明の場合、下部平面部が除去された構造を有することで、発光面積を増大することができる。
【0016】
一方、発光領域の縁及びパッド領域の縁にパッシベーション層をさらに配置してもよい。発光領域の縁及びパッド領域の縁の場合、相対的に水気浸透性に弱いところ、パッシベーションをさらに配置することにより、水気浸透による第1電極と第2電極との間のショート発生を防止する効果を高めることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態による照明装置用OLEDパネルの製造方法は、発光領域と、前記発光領域の外郭のパッド領域とに分けられる基板の発光領域及びパッド領域上に互いに電気的に連結された複数の補助配線を含む補助配線パターンを配置することと、補助配線パターンが配置された基板上に第1電極を配置することと、第1電極上に高分子を配置するものの、発光領域の補助配線パターンの互いに隣接した補助配線らの間に高分子を配置する段階、高分子をマスクとして使用し、第1電極上にパッシベーション物質を蒸着した後、高分子を除去して、前記発光領域の前記補助配線パターンの上部領域にパッシベーション層を形成することと、パッシベーション層が配置された前記第1電極上にOLED発光構造体を配置することと、OLED発光構造体上に第2電極を配置することと、第2電極上に封止層を形成することとを含む。
【0018】
このとき、前記高分子の配置は、インクジェット法によって液状高分子を印刷した後に硬化する方法で行うことができる。
【0019】
また、パッシベーション物質の蒸着は、ALD(Atomic Layer Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)など、様々な蒸着方法を適用することができる。好ましくは、常圧ALD蒸着方法で行うことができる。そして、前記高分子に光分解可能な触媒が含まれており、前記高分子の除去は、光照射によって前記触媒を活性化して高分子の粘着力を緩和する方法で行ってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明による照明装置用OLEDパネルは、大面積化が容易で、面発光が可能であり、窒化物半導体発光ダイオードの形成のために高価なサファイア基板を必要とせず、発熱も窒化物半導体発光ダイオードに比べて良好である。
【0021】
特に、本発明による照明装置用OLEDパネルは、段差により自己整列が可能である高分子マスクを用いてパッシベーション層を形成した結果、パッシベーション層の面積を減少させることができる。これにより、広い発光面積を確保することができる。
【0022】
また、乾式エッチングによるパッシベーション層のパターニングの場合、第1電極の損失が発生するが、本発明の場合、自己整列が可能である高分子マスクを用いて、これを光分解によって除去することで、パッシベーション層の形成のためのパターニング時に第1電極の損失が発生しない。これにより、第1電極厚の均一度を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の場合、高分子マスクをパッド領域に適用することもでき、工程に求められるマスク数を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による照明装置用OLEDパネルの平面図を概略的に示したものである。
図2図1のI−I' 断面図を示した例である。
図3図1のII−II' 断面図を示した例である。
図4図1のA領域のパッシベーション層の配置例を示した断面図である。
図5図1のA領域のパッシベーション層の他の配置例を示した断面図である。
図6a】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6b】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6c】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6d】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6e】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6f】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6g】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6h】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6i】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6j】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
図6k】本発明による照明装置用OLEDパネルを製造する方法を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、図面を参照して、本発明による照明装置用OLEDパネル及びその製造方法に対する実施形態を説明する。
【0026】
以下では、第1、第2などのように、序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するに使われるが、該構成要素は、このような用語によって限定されるものではない。これらの用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使われる。
【0027】
また、本発明において、「〜上にある」ということは、「ある部分が他の部分と接触した状態で真上にある」ことを意味するだけでなく、「ある部分が他の部分と接触していない状態であるか、第3の部分が中にさらに形成されている状態で他の部分上にある」ことを意味する場合もある。
【0028】
図1は、本発明による照明装置用OLEDパネルの平面図を概略的に示したものである。また、図2は、図1のI−I’断面図を示した例であり、図3は、図1のII−II’断面図を示した例である。
【0029】
図1図3を参照すると、本発明による照明装置用OLEDパネルは、基板110、補助配線パターン120、第1電極130、パッシベーション層140、OLED発光構造体150、第2電極160及び封止層170を含む。
【0030】
基板110は、発光領域(LA)と、前記発光領域の外郭のパッド領域(PA)とに分けられる。
【0031】
基板110は、ガラス基板、高分子基板を用いることができる。基板110として高分子基板が用いられる場合、高分子基板のプレキシブルな特性に起因して、ロール・ツー・ロール(Roll−to−Roll)工程で照明装置用OLEDパネルを製造することができる。
【0032】
補助配線パターン120は、基板110上に配置する。本発明における補助配線パターン120は、上部に向かうほど幅が狭くなるテーパー状の断面を有する。
【0033】
補助配線パターン120は、互いに電気的に連結された複数の補助配線を含む。補助配線パターン120の役割は、次の通りである。後述する第1電極130は、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine−doped Tin Oxide)などのようなTCO(transparent Conductive Oxide)材質から形成され得るが、TCO材質の場合、OLED発光構造体150で発光される光を透過するという長所を有するものの、金属に比べて電気抵抗が非常に高いという短所がある。従って、大面積の照明装置用OLEDパネルを製造する場合、TCOの高い抵抗により、印加される電圧の分布が第1電極全体にかけて不均一となり、このような不均一な電圧分布は、大面積の照明装置の輝度均一性を低下させる。
【0034】
このため、補助配線パターン120は、TCOより低い抵抗を有する材質、例えば、金属を含む材質から形成されており、補助配線パターン120と接触して形成される第1電極130に印加される電圧の分布を第1電極130全体にかけて均一にする役割を担う。
【0035】
一方、補助配線パターン120は、図1に示す例のような網状であってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。また、補助配線パターン120は、左右対称に近い形態に形成されてもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0036】
第1電極130は、補助配線パターン120を配置した基板上に配置される。上述のように、第1電極130は、ITOのようなTCO材質から形成されてもよいし、スパッタリング工程又はコーティング工程によって形成されてもよい。
【0037】
パッシベーション層140は、第1電極130上に配置するものの、補助配線パターン120が配置された領域上に配置する。
【0038】
OLED照明において、第1電極と第2電極との間にショート(short)が発生する際、電流ドロップ(current drop)によりショートが発生した部分だけでなく、全体パネルの輝度低下が発生するという問題点がある。これを防止するため、補助配線パターン120の上部にはパッシベーション層140が形成される。
【0039】
パッシベーション層140は、ポリイミド系物質のような有機物材質から形成されてもよいし、アルミナ(Al2O3)、窒化シリコーン(SiNx)などのような無機物材質から形成されてもよい。
【0040】
図4は、図1のA領域、すなわち、発光領域のパッシベーション層の配置例を示した断面図である。図5は、図1のA領域、すなわち、発光領域のパッシベーション層の他の配置例を示した断面図である。
【0041】
パッシベーション層は、図4に示した例のような断面状を仮定することができる。これは、パッシベーション物質の蒸着及び乾式エッチングによるパターニングの結果と言える。乾式エッチングによるパターニング時に工程マージンによって上部平面部124a、傾斜部140bのほか、下部平面部140cまで形成される。かかる下部平面部140cの存在は、発光面積の減少をもたらす。また、乾式エッチングによるパターニングの場合、第1電極130も一部消失する結果をもたらす。これは、第1電極130厚さの均一度を低下させる要因となり得る。
【0042】
しかし、図5に示す断面状のパッシベーション層は、補助配線パターン120に対応する断面状を有してもよいが、より具体的には、上部平面部140aと、上部平面部140aから下側方に延びる傾斜部140bからなり、下部平面部140cは、存在しなくてもよい。
【0043】
かかる補助配線パターン120に対応する、すなわち、上部平面部140aと傾斜部140bからなるパッシベーション層140は、後述する光分解可能な高分子マスクを適用することで達成できる。この場合、図4とは違って、下部平面部140cが存在しておらず、その分発光面積を増大させることができる。また、本発明に適用する高分子マスクの場合、光分解が可能であり、第1電極130の厚さの均一度低下が問題とならない。
【0044】
パッシベーション層140は、発光領域(LA)の縁及びパッド領域(PA)の縁にさらに配置してもよい。発光領域の縁及びパッド領域の縁の場合、水気浸透に相対的に弱い領域に該当する。このため、発光領域の縁及びパッド領域の縁にパッシベーションをさらに配置して、水気浸透による第1電極と第2電極との間のショート発生を防止する効果を高められる。
【0045】
OLED発光構造体150は、パッシベーション層140が配置された第1電極130上に配置する。OLED発光構造体150には、有機発光層(EML:emission layer)と、前記有機発光層に孔(hole)を提供するための孔注入層(HIL:hole injection layer)及び/又は孔輸送層(HTL:hole transport layer)、前記有機発光層に電子(electron)を提供するための電子輸送層(ETL:electron transport layer)及び/又は電子注入層(EIL:electron injection layer)が含まれていてもよい。
【0046】
第2電極160は、OLED発光構造体150上に配置する。第2電極160は、ITOのようなTCO材質、Al、Agなどのような金属材質などから形成されてもよい。例えば、下面発光型である場合、第2電極は、金属材質であってもよいし、両面発光型である場合、第2電極は、TCO材質であってもよい。
【0047】
一方、OLED発光構造体150及び第2電極160は、発光領域(LA)に全体として形成され得るところ、第1電極130の断面に対応する断面を有してもよい。
【0048】
封止層170は、第2電極160上に配置して、外部から水気や空気が浸透することを防止する役割を担う。かかる封止層170は、アクリレート系化合物、エポキシ系化合物のような有機物材質、セラミックス、金属のような無機物材質又は有無機複合材から形成されてもよいし、断層構造あるいは多層構造で形成されてもよい。
【0049】
図2及び図3には、封止層170が第2電極160の上部にのみ形成される例を示したが、水気などの浸透防止効果を高めるために封止層170は、発光領域に形成された各要素110〜160の側面にも形成されてもよい。
【0050】
封止層170上には、接着層180を介してさらに保護フィルム190が配置してもよく、また、この保護フィルム190も外部から水気や空気が侵透することを防止する役割を担う。保護フィルム190は、PET基板、金属箔などであってもよい。
【0051】
次に、パッド領域(PA)について説明する。パッド領域には、第1の電極パッド130a及び第2の電極パッド160aを配置する。第1の電極パッド130a及び第2の電極パッド160aは、外部電源に連結される。第1の電極パッド130aは、第1電極130と連結される。そして、第2の電極パッド160aは、第2電極160と連結される。図1には、パッド領域の中央部に第2の電極パッド160aが配置しており、第2の電極パッド160aの両側に第1の電極パッド130aが配置している例を示したが、第1の電極パッド130aが第1電極130と電気的に連結されて、第2の電極パッド160aが第2電極160と電気的に連結されるものであれば、電極パッドの配置形態や、電極パッドの大きさ、電極パッド数などは、必要によって変更可能である。
【0052】
図2を参照すると、第1の電極パッド130aは、補助配線パターン120と同じ材質の下部層131と、第1電極130と同じ材質の上部層132を含んでもよい。下部層131は、補助配線パターン120と同時に形成されてもよいし、補助配線パターン120と直接連結されてもよい。上部層132は、第1電極130と同時に形成されてもよい。下部層131が補助配線パターン120と直接連結される場合、上部層132は、第1電極130と直接連結されなくてもよい。
【0053】
また、図3を参照すると、第2の電極パッド160aは、補助配線パターン120と同じ材質の下部層161と、第2電極160と同じ材質の上部層162を含んでもよい。下部層161は、補助配線パターン120と同時に形成されてもよいし、上部層162は、第2電極160と同時に形成されてもよい。
【0054】
以下、図6a〜図6kを参照して、本発明による照明装置用OLEDを製造する方法について説明する。
【0055】
先ず、図6aに示す例のように、発光領域(LA)と、発光領域(LA)の外郭のパッド領域とに分けられる基板110上に、補助配線パターン120を配置する。
【0056】
補助配線パターン120は、互いに電気的に連結された複数の補助配線を含む。補助配線パターン120は、金属材質から形成されてもよいし、蒸着及び乾式エッチングによって上部に向かうほど幅が細くなるテーパー状の断面を有してもよい。
【0057】
また、補助配線パターン120は、発光領域(LA)及びパッド領域(PA)両方に形成されてもよい。パッド領域(PA)に関して、本段階において、補助配線パターンと同じ材質の第1の電極パターンの下部層(図2の131)及び第2の電極パターンの下部層(図3の161)を形成することができる。
【0058】
次に、図6bに示した例のように、補助配線パターン120が配置された基板上に第1電極130を配置する。第1電極130は、ITOのような透明電導性酸化物(TCO)材質から形成されてもよい。第1電極130は、発光領域(LA)全体に形成されてもよいし、第1の電極パッド130aを形成するためパッド領域(PA)の一部にも形成される。すなわち、第1電極の配置段階において、第1電極と同じ材質の第1の電極パッドの上部層132を形成する。
【0059】
次に、図6c〜図6eに示した例のように、パッシベーション層140を形成する。
【0060】
先ず、図6cに示した例のように、第1電極130上に高分子135を配置するものの、発光領域の補助配線パターン互いに隣接した補助配線らの間に高分子を配置する。
【0061】
高分子135の配置は、インクジェット印刷法で液状高分子を所望の領域に印刷した後、硬化工程によって行うことができる。液状高分子は、高分子が溶媒に溶解されている状態、又は、該工程温度で液状状態である高分子を意味する。液状高分子としては、低温硬化できるPVA(poly−vinyl alchohol)、PMMA(Poly−methyl methylmethacrylate)などが用いられるが、これに制限されるものではない。
【0062】
本発明の場合、補助配線パターン120が段差として作用し、この段差によって、インクジェット印刷された高分子が補助配線パターンの互いに隣接した補助配線らの間に自己整列(self aligment)されてもよい。インクジェット印刷した高分子は、表面張力によって、示したように半球状を有してもよい。
【0063】
また、パッド領域(PA)の第1の電極パッド上にも高分子が配置されるが、これは、パッド領域の縁にもパッシベーション層を形成するためである。
【0064】
一方、水気や空気浸透に弱い発光領域(LA)の縁及びパッド領域(PA)の縁にパッシベーション層140がさらに配置するようにする必要がある。このため、発光領域(LA)の縁及びパッド領域(PA)の縁には高分子を配置しなくてもよい。
【0065】
その後、図6dに示した例のように、高分子135をマスクとして、第1電極130上にパッシベーション物質を蒸着する。
【0066】
パッシベーション物質は、ポリイミドなどのような有機物、アルミナ、窒化シリコーンのような無機物であってもよい。パッシベーション物質の蒸着は、原子層蒸着(ALD)方法、化学気相蒸着(CVD)方法などを用いることができ、より好ましくは、常圧ALD蒸着方法を提示することができる。常圧ALD方法は、常圧で原子単位に薄膜を形成する蒸着法であって、表面反応(Surface Reaction)及び副産物の脱着(Desorption)に基づく。主に、TMA(trimethly−aluminium)を前駆体として、Al2O3をALD(atomic layer deposition)方法で蒸着する。これに限定されず、前駆体をZr(NMe2)4、HfCl4、TiCl4などにして、Al2O3、ZrO2、HfO2、TiO2などを常圧ALD方法で蒸着してもよい。
【0067】
その後、図6eに示した例のように、高分子135を除去して、発光領域(LA)の補助配線パターンの補助配線の上部領域にパッシベーション層を形成する。また、図6eに示した例のように、本段階において、パッド領域に形成された高分子も共に除去することができる。他の例として、図6fに示した例のように、パッド領域に形成された高分子を残留させることができ、後続工程(例えば、図6jのパッドオープン段階)において除去することができる。
【0068】
一方、高分子には光分解可能な触媒が含まれており、高分子の除去は、光照射によって触媒を光分解させる方法で行うことができる。かかる光分解可能な触媒は、TiO2、ZnO、CDS、ZrO2、SnO2、V2O2、WO3、Cerium stearata、SrTiO3などを用いることができる。高分子除去のために用いられる光は、レーザ光であってもよいし、パルス状に周期的に光を照射するIPL(Intense Pulsed Light)を用いることができる。IPL状の光を用いる場合、基板の温度が一定に維持した状態で、光分解可能な触媒が活性化して、高分子の粘着力を弱化させることができる。
【0069】
次に、図6gに示した例のように、発光領域(LA)にOLED発光構造体150を配置する。OLED発光構造体150の各層は、例えば、銅フタロシアニン(CuPc:copperphthalocyanine)、N、N−ジ(ナフタリン−1−イル)−N、N’−ジフェニルベンジジン(N、N’−Di(naphthalene−1−yl)−N、N’−diphenylbenzidine:NPB)、トリス−8−ヒドロキシクノリンアルミニウム(tris−8−hydroxyquinoline aluminum)(Alq3)などの有機物を真空蒸着法で蒸着する方法を用いて形成することができる。
【0070】
次に、図6hに示した例のように、OLED発光構造体150上に第2電極160を配置する。第2電極160は、金属やTCO材質から形成してもよい。
【0071】
第2電極160は、発光領域に全体として形成されており、図3に示した例のように、第2の電極パッド160aを形成するためパッド領域(PA)の一部にも形成される。第2電極の配置段階において、第2電極と同じ材質の第2の電極パッドの上部層162を形成することができる。
【0072】
第2電極160を形成した後、必要によっては、OLED発光構造体150の有機層にエージング電圧を印加して、OLED発光構造体150をエージングする過程をさらに行うことができる。有機発光物質は、寿命は短く、水気や酸素に弱く、高電圧や高電流の印加時に素子の損傷が発生し得る。また、第1及び第2電極130,160とOLED発光構造体150との間の界面特性が良くないため、素子の特性が不安定である問題点もある。また、第2電極160の形成時にOLED発光構造体150内に不純物が積層して、有機物の発光特性及び色感を低下させることもある。
【0073】
このような問題を解決するため、OLED発光構造体150に高電圧エージング電圧を印加して、OLED発光構造体150を短時間にエージング(aging)することができる。このとき、エージング電圧は、第1電極130及び第2電極160に印加される電圧より大きい高電圧であってもよいし、第1電極130及び第2電極160に印加される電圧の逆電圧であってもよい。
【0074】
次に、図6iに示した例のように、第2電極160上に封止層170を形成する。
【0075】
また、第1の電極パッド130a上に高分子135が残留している場合、パッドオープンのため図6jに示した例のように、高分子135を除去する工程を行う。
【0076】
また、図6kのように、平坦化した接着層180を配置して、その上に保護フィルム190を付着する工程をさらに行ってもよい。保護フィルム190は、外部から水気や空気が侵透することを防止する役割を行い、PET基板、金属箔などを用いることができる。
【0077】
以上の過程によって、本発明による照明装置用OLEDパネルを製造することができ、前記工程のほか、公知された追加工程がさらに含まれてもよい。
【0078】
以上では、本発明の実施形態を中心にして説明したが、通常の技術者の水準で多様な変更や変形を加えることができる。従って、このような変更と変形が本発明の範囲を脱しない限り、本発明の範疇内に含まれると理解することができる。
【符号の説明】
【0079】
LA 発光領域
PA パッド領域
110 基板
120 補助配線パターン
130 第1電極
130a 第1の電極パッド
131 第1の電極パッドの下部層
132 第1の電極パッドの上部層
135 高分子
140 パッシベーション層
150 OLED構造体
160 第2電極
160a 第2の電極パッド
161 第1の電極パッドの下部層
162 第1の電極パッドの上部層
170 封止層
180 接着剤層
190 保護フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図6g
図6h
図6i
図6j
図6k