特許第6786589号(P6786589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6786589ステープルドライバ縁部に圧縮可能機構を備える外科用ステープラカートリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786589
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ステープルドライバ縁部に圧縮可能機構を備える外科用ステープラカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20201109BHJP
【FI】
   A61B17/072
【請求項の数】18
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-504176(P2018-504176)
(86)(22)【出願日】2016年7月18日
(65)【公表番号】特表2018-521783(P2018-521783A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】US2016042739
(87)【国際公開番号】WO2017019350
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】14/811,087
(32)【優先日】2015年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517076008
【氏名又は名称】エシコン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Ethicon LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シャイブ・チャールズ・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スウェイズ・ジェフリー・エス
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0214030(US,A1)
【文献】 特表2010−504813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
(a)本体と、
(b)前記本体から遠位に延びているシャフト組立体と、
(c)エンドエフェクタであって、
(i)アンビルと、
(ii)下側ジョーであって、前記アンビルは、組織をクランプするために前記下側ジョーに向かって枢動可能である、下側ジョーと、を備えるエンドエフェクタと、
(d)前記下側ジョーと結合されたステープルカートリッジであって、
(i)前記アンビルに面しているデッキと、
(ii)前記デッキを通って形成された複数のステープル用開口部内に配置された複数のステープルと、
(iii)前記ステープルを前記ステープル用開口部から送り出すように構成された複数のステープルドライバであって、前記複数のステープルドライバの各ステープルドライバはステープルドライバ本体を備え、前記ステープルドライバ本体は上面及びステープル支持部を有し、前記ステープルドライバ本体の前記上面は前記ステープル支持部を備え、前記ステープルドライバの少なくとも一部分は、前記ステープルドライバ本体の前記上面から前記アンビルに向かって延びている圧縮可能機構を更に備える、ステープルドライバと、
を備える、ステープルカートリッジと、
を備える、装置。
【請求項2】
前記圧縮可能機構のそれぞれは弓形部材を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ステープルドライバ本体のそれぞれは第1端部及び第2端部を有し、対応する前記弓形部材は前記第1端部から前記第2端部まで延びている、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記ステープルドライバのそれぞれは対応する前記弓形部材の下に間隙を画定し、前記間隙は前記弓形部材の変形に適応するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記圧縮可能機構のそれぞれ、対応する前記ステープル支持側に配置された対向する圧縮可能部材を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記圧縮可能機構はそれぞれエラストマー材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記圧縮可能機構は、前記圧縮可能機構による前記アンビルに対する前記組織の圧縮に応じて変形するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記圧縮可能機構のそれぞれは非発射位置から発射位置に移行するように構成されており、前記圧縮可能機構のそれぞれは、前記発射位置において、前記アンビルのステープル形成ポケット内に突出するように構成されており、前記発射位置は、関連する前記ステープルを前記アンビルに向かって駆動する、対応する前記ステープルドライバ本体と関連付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記圧縮可能機構のそれぞれは、前記非発射位置において、前記デッキに対し奥まっているように構成されており、前記発射位置は、同様に前記デッキに対し奥まっている関連する前記ステープルと関連付けられている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記エンドエフェクタ内を移動するように構成された発射バーを更に備え、前記発射バーは前記ステープルドライバを前記アンビルに向かって駆動し、前記ステープルを発射位置へと移動するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記発射バーは更に、前記発射バーが前記ステープルドライバを前記アンビルに向かって駆動すると、前記組織を切断するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記圧縮可能機構は、前記発射バーが前記組織を切断する際に、前記アンビルに対して前記組織を圧縮するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記圧縮可能機構のそれぞれは、前記ステープルドライバ本体の前記上面から上方に延びている一対の部材を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記一対の部材は、前記複数のステープルのうち対応するステープルの一部分を前記一対の部材の前記部材の間に受け入れるように構成及び配置されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記圧縮可能機構のそれぞれは、一対の脚と、前記一対の脚の間に延びるブリッジと、を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記圧縮可能機構のそれぞれは一組の指部を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
外科用ステープラのエンドエフェクタと共に使用するためのステープルカートリッジであって、
(a)カートリッジ本体であって、カートリッジデッキを含み、前記カートリッジデッキを貫通している複数のステープル用開口部を更に画定する、カートリッジ本体と、
(b)前記複数のステープル用開口部と関連付けられた複数のステープルと、
(c)前記複数のステープル用開口部及び前記複数のステープルと関連付けられた複数のステープルドライバであって、前記ステープルドライバは、前記カートリッジデッキに向かって移動し、前記ステープルを前記ステープル用開口部から送り出すように構成され、前記複数のステープルドライバの各ステープルドライバはステープルドライバ本体を備え、前記ステープルドライバ本体は上面およびステープル支持部を有し、前記ステープルドライバ本体の前記上面は前記ステープル支持部を備える、複数のステープルドライバと、
(d)前記複数のステープルドライバの少なくともいくつかと関連付けられた複数の圧縮可能機構であって、前記圧縮可能機構は前記ステープルドライバ本体の前記上面からアンビルに向かって延びるように構成され、関連する前記ステープルドライバと共に動くことができる、複数の圧縮可能機構と、
を備える、ステープルカートリッジ。
【請求項18】
前記圧縮可能機構は、前記ステープルが組織を通って前記アンビルに向かって駆動される際、前記ステープル用開口部を通って駆動され、前記組織を前記アンビルに対して圧縮するように構成されている、請求項17に記載のステープルカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
切開創をより小さくすることで、術後の回復時間及び合併症を低減させ得ることから、一部の状況では、従来の開腹外科用装置よりも内視鏡外科用器具が好ましい場合がある。このため、内視鏡外科用器具の中には、トロカールのカニューレを通して所望の手術部位に遠位エンドエフェクタを配置するのに適したものがある。これらの遠位エンドエフェクタは、様々な形で組織と係合して診断又は治療効果を得ることができる(例えば、エンドカッター、把持具、カッター、ステープラ、クリップアプライヤ、アクセス装置、薬物/遺伝子治療送達装置、及び、超音波振動、RF、レーザなどを使用するエネルギー送達装置など)。内視鏡外科用器具は、エンドエフェクタとハンドル部分との間に、臨床医によって操作されるシャフトを含むことがある。かかるシャフトは、所望の深さへの挿入及びシャフトの長手方向軸線を中心とした回転を可能にし、それにより患者の体内でエンドエフェクタの位置付けを行うことを容易とする。エンドエフェクタの位置付けは、エンドエフェクタをシャフトの長手方向軸線に対して選択的に関節動作させるか又は別の形でたわませることを可能にする、1つ又は2つ以上の関節ジョイント又は機構を含めることによって更に容易に行うことができる。
【0002】
内視鏡外科用器具の例として、外科用ステープラが挙げられる。かかるステープラのいくつかは、組織層をクランプし、クランプされた組織層を切断し、組織層を通してステープルを打ち込むことによって、組織層の切断された端部の近くで、切断された組織層同士を互いに実質的にシールするように動作可能である。あくまで例示の外科用ステープラが以下に開示されている。すなわち、1989年2月21日に発行された「Pocket Configuration for Internal Organ Staplers」と題する米国特許第4,805,823号、1995年5月16日に発行された「Surgical Stapler and Staple Cartridge」と題する米国特許第5,415,334号、1995年11月14日に発行された「Surgical Stapler Instrument」と題する米国特許第5,465,895号、1997年1月28日に発行された「Surgical Stapler Instrument」と題する米国特許第5,597,107号、1997年5月27日に発行された「Surgical Instrument」と題する米国特許第5,632,432号、1997年10月7日に発行された「Surgical Instrument」と題する米国特許第5,673,840号、1998年1月6日に発行された「Articulation Assembly for Surgical Instruments」と題する米国特許第5,704,534号、1998年9月29日に発行された「Surgical Clamping Mechanism」と題する米国特許第5,814,055号、2005年12月27日に発行された「Surgical Stapling Instrument Incorporating an E−Beam Firing Mechanism」と題する米国特許第6,978,921号、2006年2月21日に発行された「Surgical Stapling Instrument Having Separate Distinct Closing and Firing Systems」と題する米国特許第7,000,818号、2006年12月5日に発行された「Surgical Stapling Instrument Having a Firing Lockout for an Unclosed Anvil」と題する米国特許第7,143,923号、2007年12月4日に発行された「Surgical Stapling Instrument Incorporating a Multi−Stroke Firing Mechanism with a Flexible Rack」と題する米国特許第7,303,108号、2008年5月6日に発行された「Surgical Stapling Instrument Incorporating a Multistroke Firing Mechanism Having a Rotary Transmission」と題する米国特許第7,367,485号、2008年6月3日に発行された「Surgical Stapling Instrument Having a Single Lockout Mechanism for Prevention of Firing」と題する米国特許第7,380,695号、2008年6月3日に発行された「Articulating Surgical Stapling Instrument Incorporating a Two−Piece E−Beam Firing Mechanism」と題する米国特許第7,380,696号、2008年7月29日に発行された「Surgical Stapling and Cutting Device」と題する米国特許第7,404,508号、2008年10月14日に発行された「Surgical Stapling Instrument Having Multistroke Firing with Opening Lockout」と題する米国特許第7,434,715号、2010年5月25日に発行された「Disposable Cartridge with Adhesive for Use with a Stapling Device」と題する米国特許第7,721,930号、2013年4月2日に発行された「Surgical Stapling Instrument with An Articulatable End Effector」と題する米国特許第8,408,439号、及び2013年6月4日に発行された「Motor−Driven Surgical Cutting Instrument with Electric Actuator Directional Control Assembly」と題する米国特許第8,453,914号である。上に引用した米国特許のそれぞれの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
上述した外科用ステープラは、内視鏡手術において使用されるものとして記載されているが、このような外科用ステープラは、開口処置及び/又は他の非内視鏡手術でも使用することができることを理解されたい。ほんの一例として、トロカールをステープラの導管として使用しない胸部外科手術では、外科用ステープラを開胸術によって患者の肋骨の間に挿入し、1つ又は2つ以上の臓器に到達させることもできる。かかる手術では、肺につながる血管を切断及び閉鎖するためにステープラが使用される場合もある。例えば、臓器につながる血管を、胸腔から臓器を切除するのに先立ってステープラによって切断して閉鎖することができる。外科用ステープラを他の様々な状況及び手術で使用できることは言うまでもない。
【0004】
開胸術に特に好適であり得る又は使用され得る外科用ステープラの例は、2014年8月28日に公開された「Surgical Instrument End Effector Articulation Drive with Pinion and Opposing Racks」と題する米国特許出願公開第2014/0243801号、2014年8月28日に公開された「Lockout Feature for Movable Cutting Member of Surgical Instrument」と題する米国特許出願公開第2014/0239041号、2014年8月28日に公開された「Integrated Tissue Positioning and Jaw Alignment Features for Surgical Stapler」と題する米国特許出願公開第2014/0239042号、2014年8月28日に公開された「Jaw Closure Feature for End Effector of Surgical Instrument」と題する米国特許出願公開第2014/0239036号、2014年8月28日に公開された「Surgical Instrument with Articulation Lock having a Detenting Binary Spring」と題する米国特許出願公開第2014/0239040号、2014年8月28日に公開された「Distal Tip Features for End Effector of Surgical Instrument」と題する米国特許出願公開第2014/0239043号、2014年8月28日に公開された「Staple Forming Features for Surgical Stapling Instrument」と題する米国特許出願公開第2014/0239037号、2014年8月28日に公開された「Surgical Instrument with Multi−Diameter Shaft」と題する米国特許公開第2014/0239038号、及び2014年8月28日に公開された「Installation Features for Surgical Instrument End Effector Cartridge」と題する米国特許出願公開第2014/0239044号に開示されている。上に引用した米国特許出願のそれぞれの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
様々な種類の外科用ステープル留め器具及び関連構成要素が作製され使用されてきたが、本発明者(ら)以前には、添付の請求項に記載されている発明を誰も作製又は使用したことがないものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に組み込まれると共にその一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態を示すものであり、上記の本発明の一般的説明、及び以下の実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明する役割を果たすものである。
図1】例示的な関節動作外科用ステープル留め器具の斜視図を示す。
図2図1の器具の側面図を示す。
図3】エンドエフェクタが閉鎖構成にある、図1の器具のエンドエフェクタの斜視図を示す。
図4】エンドエフェクタが開放構成にある、図3のエンドエフェクタの斜視図を示す。
図5図3のエンドエフェクタの分解斜視図を示す。
図6図4の線6−6に沿って取られた、図3のエンドエフェクタの端面断面図を示す。
図7A】発射ビームが近位位置にある、図4の線7−7に沿って取られた、図3のエンドエフェクタの側面断面図を示す。
図7B】発射ビームが遠位位置にある、図4の線7−7に沿って取られた、図3のエンドエフェクタの側面断面図を示す。
図8】組織に位置付けられ、組織内で1回作動された後の、図3のエンドエフェクタの斜視図を示す。
図9A図3のエンドエフェクタで使用されるステープルカートリッジに組み込んでもよい例示的な別のステープルドライバの斜視図である。
図9B図9Aのステープルドライバの側面図である。
図10図3のエンドエフェクタで使用されるステープルカートリッジに組み込んでもよい例示的な別のステープルドライバの側面図である。
図11図3のエンドエフェクタで使用されるステープルカートリッジに組み込んでもよい例示的な別のステープルドライバの側面図である。
図12図3のエンドエフェクタで使用されるステープルカートリッジに組み込んでもよい例示的な別のステープルドライバの側面図である。
図13A】発射ビームは近位位置にあり、ステープルは非発射位置にある、図9Aのステープルドライバを複数形態で組み込んだ例示的な別のエンドエフェクタの端部断面図である。
図13B】発射ビームは中間位置にあり、ステープルは中間位置にある、図13Aのエンドエフェクタの端部断面図である。
図13C】発射ビームは遠位位置にあり、ステープルは発射位置にある、図13Aのエンドエフェクタの端部断面図である。
図14A】非発射位置にあるステープルを示す、図13Aの線14A−14Aに沿って取られた、図13Aのエンドエフェクタの部分側断面図である。
図14B】第1の中間位置にあるステープルを示す、図13Bの線14B−14Bに沿って取られた、図13Bのエンドエフェクタの部分側断面図である。
図14C】第2の中間位置にあるステープルを示す、図13Cの線14C−14Cに沿って取られた、図13Cのエンドエフェクタの部分側断面図である。
【0007】
図面は、いかなる方式でも限定することを意図しておらず、本発明の種々の実施形態は、図面に必ずしも描写されていないものを含め、他の様々な方式で実施し得ることが考えられる。本明細書に組み込まれ、その一部をなす添付図面は、本発明のいくつかの態様を図示したものであり、本説明文と共に本発明の原理を説明する役割を果たすものである。しかしながら、本発明が示される正確な配置に限定されない点が理解される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の特定の例の以下の説明文は、本発明の範囲を限定する目的で用いられるべきではない。本発明の他の例、特徴、態様、実施形態、及び利点は、本発明を実施するために想到される最良の形態の1つを実例として示す以下の説明文より当業者には明らかとなろう。理解されるように、本発明には、いずれも本発明から逸脱することなく、他の異なる、かつ明白な態様が可能である。したがって、図面及び説明は、限定的な性質のものではなく、例示的な性質のものとみなされるべきである。
【0009】
I.例示的な外科用ステープラ
図1は、例示的な外科用ステープル留め及び切断器具(10)を表し、この器具は、ハンドル組立体(20)と、シャフト組立体(30)と、エンドエフェクタ(40)と、を含む。エンドエフェクタ(40)及びシャフト組立体(30)の遠位部分は、外科的処置を行うために、図1に描写されるような非関節動作状態で、トロカールカニューレを通って患者内の手術部位まで挿入するように寸法決めされている。単なる例示として、患者の腹部内に、患者の2本の肋骨の間に、又はその他の部位に、かかるトロカールを挿入してもよい。一部の状況では、器具(10)は、トロカールなしで使用される。例えば、エンドエフェクタ(40)及びシャフト組立体の遠位部分(30)を、開胸術又は他の種類の切開によって直接挿入することができる。本明細書では、「近位」及び「遠位」といった用語は、器具(10)のハンドル組立体(20)を握っている臨床医を基準として使用されていることを理解されたい。したがって、エンドエフェクタ(40)は、より近位にあるハンドル組立体(20)に対して遠位にある。便宜上、また説明を明確にするため、本明細書では「垂直」及び「水平」といった空間的な用語が、図面に対して使用されている点も更に認識されるであろう。しかしながら、外科器具は、多くの配向及び位置で使用されるものであり、これらの用語は、限定的かつ絶対的なものであることを意図するものではない。
【0010】
A.例示的なハンドル組立体及びシャフト組立体
図1〜2に示すように、本例のハンドル組立体(20)は、ピストルグリップ(22)、閉鎖トリガー(24)、及び発射トリガー(26)を含む。各トリガー(24、26)は、以下により詳細に記載されるように、ピストル把持部(22)に向かって、かつそれから離れるように選択的に枢動可能である。ハンドル組立体(20)は、アンビル解放ボタン(25)と、発射ビーム反転スイッチ(27)と、取り外し可能な電池パック(28)と、を更に備えている。これらの構成要素についても、以下でより詳細に説明する。勿論、ハンドル組立体(20)は、上記したもののいずれかに加えて又はその代わりに様々な他の構成要素、特徴、及び動作性を有することができる。ハンドル組立体(20)の他の好適な構成は、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかであろう。
【0011】
図1図3に示すように、本例のシャフト組立体(30)は、外側閉鎖管(32)、関節運動部(34)、及び閉鎖用リング(36)を備え、それは、更にエンドエフェクタ(40)に連結する。閉鎖チューブ(32)はシャフト組立体(30)の長さに沿って延在する。閉鎖リング(36)は、関節運動部(34)の遠位に位置付けられている。閉鎖管(32)及び閉鎖用リング(36)は、ハンドル組立体(20)に対して長手方向に並進するように構成されている。閉鎖チューブ(32)の長手方向並進運動は、関節運動部(34)を介して閉鎖リング(36)に伝達される。閉鎖管(32)及び閉鎖用リング(36)を長手方向に並進するのに使用できる例示の機構は、以下により詳細に記載される。
【0012】
関節運動部(34)は、シャフト組立体(30)の長手方向軸線(LA)から所望の角度(α)で横方向へ離れるように、閉鎖リング(36)とエンドエフェクタ(40)を横方向に偏向させるよう動作可能である。エンドエフェクタ(40)は、そのようにして、所望の角度から又は他の理由のために、臓器の背後に到達するか又は組織に近付くことができる。一部の形態においては、関節運動部(34)は、単一の平面に沿ってエンドエフェクタ(40)を偏向させることができる。その他の一部の形態では、関節運動部(34)により、2つ以上の平面に沿ってエンドエフェクタをたわませることができる。本例では、関節運動は、シャフト組立体(30)の近位端に位置する関節運動制御ノブ(35)によって制御される。ノブ(35)は、シャフト組立体(30)の長手方向軸線(LA)に対して垂直な軸線を中心として回転可能である。閉鎖用リング(36)及びエンドエフェクタ(40)は、ノブ(35)の回転に反応してシャフト組立体(30)の長手方向軸線(LA)に垂直な軸線の周りを枢動する。ほんの一例として、ノブ(35)が時計回りに回転すると、関節運動部(34)において閉鎖用リング(36)及びエンドエフェクタ(40)が対応して時計回りに枢動する。関節運動部(34)は、関節運動部(34)が真っ直ぐな構成であるか、又は関節運動構成であるかにかかわらず、閉鎖管(32)が閉鎖用リング(36)まで長手方向に並進するのを伝達するように構成されている。
【0013】
一部の形態では、関節運動部(34)及び/又は関節運動制御ノブ(35)は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年8月28日公開の「Surgical Instrument End Effector Articulation Drive with Pinion and Opposing Racks」という名称の米国特許出願公開第2014/0243801号の教示のうちの少なくともいくつかに従って構成され、作動可能である。関節動作部(34)は、また、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年6月25日出願の「Articulation Drive Features for Surgical Stapler」という名称の米国特許出願第14/314,125号、及び/又は以下の種々の教示に従って構成され、作動可能であってもよい。関節運動部(34)及び関節動作ノブ(35)が取り得る他の好適な形態は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかになるであろう。
【0014】
図1〜2に示すように、本例のシャフト組立体(30)は更に、回転ノブ(31)を含む。回転ノブ(31)は、シャフト組立体(30)の長手方向軸線(LA)の周りを、ハンドル組立体(20)に対して、全シャフト組立体(30)及びエンドエフェクタ(40)を回転するように動作可能である。一部の形態では、回転ノブ(31)は、シャフト組立体(30)の長手方向軸線(LA)の周りを、ハンドル組立体(20)に対して、シャフト組立体(30)及びエンドエフェクタ(40)の角度位置を選択的に係止するように動作可能である。例えば、回転ノブ(31)は、シャフト組立体(30)及びエンドエフェクタ(40)がシャフト組立体(30)の長手方向軸線(LA)の周りをハンドル組立体(20)に対して回転可能である第1の長手方向位置と、シャフト組立体(30)及びエンドエフェクタ(40)がシャフト組立体(30)の長手方向軸線(LA)の周りを、ハンドル組立体(20)に対して回転できない第2の長手方向位置との間で並進可能である。当然のことながら、シャフト組立体(30)は、上記したもののいずれかに加えて又はその代わりに様々な他の構成要素、特徴、及び動作性を有することができる。単に例として、シャフト組立体(30)の少なくとも一部は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年8月28日公開の「Surgical Instrument with Multi−Diameter Shaft」という名称の米国特許出願公開第2014/0239038号の教示のうちの少なくともいくつかに従って構成されてもよい。シャフト組立体(30)の他の好適な構成は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかになるであろう。
【0015】
B.例示的なエンドエフェクタ
図1〜3にも示されているように、本例のエンドエフェクタ(40)は、下側ジョー(50)及び枢動可能なアンビル(60)を含む。アンビル(60)は、下側ジョー(50)の対応する湾曲スロット(54)に位置付けられている一対の一体的な、外側に延在するピン(66)を含む。ピン(66)及びスロット(54)を図5に示す。アンビル(60)は、開放位置(図2及び4に示す)と閉鎖位置(図1、3、及び7A〜7Bに示す)との間で、下側ジョー(50)に向かって、及びそれから離れるように、枢動可能である。「枢動可能」という用語(及び「枢動」を基体とした類義語)の使用は、必ずしも固定軸線を中心とした枢動運動を必要とすると理解されるべきではない。例えば、本例において、アンビル(60)は、ピン(66)により画定される軸線を中心に枢動し、このピンは、アンビル(60)が下側ジョー(50)に向かって動くと、下側ジョー(50)の湾曲スロット(54)に沿って摺動する。かかる形態では、枢動軸線がスロット(54)によって画定された経路に沿って並進する一方で、アンビル(60)はその軸線を中心として同時に枢動する。追加的にあるいは代替的に、まず枢動軸線がスロット(54)に沿って摺動し、次いで枢動軸線がスロット(54)に沿ってある一定の距離を摺動した後に、アンビル(60)が枢動軸線を中心として枢動してもよい。そのような摺動/並進枢動運動は、「枢動」、「枢動する」「枢動の」、「枢動可能な」、「枢動している」などの用語内に包含されることを理解されたい。当然のことながら、一部の形態は、固定されたままである、かつスロット又はチャネルなどの内側を並進しない、軸線を中心としたアンビル(60)の枢動運動を提供してもよい。
【0016】
図5に最もわかりやすく示されるように、本例の下側ジョー(50)は、ステープルカートリッジ(70)を受容するように構成されているチャネル(52)を画定する。ステープルカートリッジ(70)はチャネル(52)に挿入することができ、エンドエフェクタ(40)を作動し、その後、ステープルカートリッジ(70)を取り外し、別のステープルカートリッジ(70)と交換することができる。したがって、下側ジョー(50)は、エンドエフェクタ(40)を作動するためのアンビル(60)と位置合わせされてステープルカートリッジ(70)を解放可能に保持する。一部の形態では、下側ジョー(50)は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年8月28日公開の「Installation Features for Surgical Instrument End Effector Cartridge」という名称の米国特許出願公開第2014/0239044号の教示のうちの少なくともいくつかに従って構成されている。下側ジョー(50)が取り得る他の好適な形態は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0017】
図4図6に最もよく示されるように、本例のステープルカートリッジ(70)はカートリッジ本体(71)と、カートリッジ本体(71)の下面に固着されたトレー(76)を備えている。カートリッジ本体(71)の上面は、アンビル(60)が閉鎖位置にあるとき、組織を圧縮できるデッキ(73)を提示する。カートリッジ本体(71)は、長手方向に延在するチャネル(72)及び複数のステープルポケット(74)を更に画定する。ステープル(77)は、各ステープルポケット(74)内に位置付けられている。ステープルドライバ(75)はまた、各ステープルポケット(74)内で、対応するステープル(77)の下に、かつトレー(76)の上に位置付けられている。以下でより詳細に説明されるように、ステープルドライバ(75)はステープルポケット(74)内で上向きに並進運動するよう動作可能であり、これによりステープル(77)をステープルポケット(74)を通って上向きに駆動させ、アンビル(60)と係合させる。ステープルドライバ(75)は、楔形スレッド(78)により上向きに駆動され、この楔形スレッドはカートリッジ本体(71)とトレー(76)との間に捕捉されており、これがカートリッジ本体(71)を通って長手方向に並進運動する。楔形スレッド(78)は、一対の傾斜した角度のカム表面(79)を含み、それらは、ステープルドライバ(75)と係合し、それによって、楔形スレッド(78)がカートリッジ(70)を通って長手方向に並進するにつれてステープルドライバ(75)を上向きに駆動するように構成されている。例えば、楔形スレッド(78)が図7Aに示すように近位位置にあるとき、ステープルドライバ(75)は下方位置にあり、ステープル(77)はステープルポケット(74)内に位置する。図7Bに示すように、ナイフ部材(80)の並進運動によって楔状そり(78)が遠位位置に駆動されると、楔状そり(78)がステープルドライバ(75)を上向きに駆動し、これによりステープルを(77)ステープルポケット(74)から排出させ、ステープル形成ポケット(64)内へと駆動する。よって、楔形スレッド(78)が水平寸法に沿って並進すると、ステープルドライバ(75)は垂直寸法に沿って並進する。
【0018】
ステープルカートリッジ(70)を多様な方法で変更できることを理解されたい。例えば、本例のステープルカートリッジ(70)は、チャネル(72)の一方の側に、長手方向に延在する2列のステープルポケット(74)を含み、チャネル(72)の他方の側に別の組の長手方向に延在する2列のステープルポケット(74)を含む。しかし、他の一部の形態では、ステープルカートリッジ(70)は、チャネル(72)の両側において3つ、1つ、又は他の数のステープルポケット(74)を含む。一部の形態では、ステープルカートリッジ(70)は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年8月28日公開の「Integrated Tissue Positioning and Jaw Alignment Features for Surgical Stapler」という名称の米国特許出願公開第2014/0239042号の教示のうちの少なくともいくつかに従って構成され、作動可能である。加えて又はあるいは、ステープルカートリッジ(70)は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年8月28日公開の「Installation Features for Surgical Instrument End Effector Cartridge」という名称の米国特許出願公開第2014/0239044号の教示のうちの少なくともいくつかに従って構成され、作動可能であってもよい。ステープルカートリッジ(70)が取り得る他の好適な形態は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0019】
図4で最もよくわかるように、本例のアンビル(60)は、長手方向に延在するチャネル(62)と、複数のステープル成形ポケット(64)とを備えている。チャネル(62)は、アンビル(60)が閉鎖位置にあるとき、ステープルカートリッジ(70)のチャネル(72)と整列するように構成されている。ステープル成形ポケット(64)はそれぞれ、アンビル(60)が閉鎖位置にあるとき、ステープルカートリッジ(70)の対応するステープルポケット(74)の上に置かれるように位置付けられている。ステープル成形ポケット(64)は、ステープル(77)が組織を通してアンビル(60)の中に駆動されるとき、ステープル(77)の脚部を変形させるように構成されている。特に、ステープル成形ポケット(64)は、成形されたステープル(77)を組織内で固定するためにステープル(77)の脚部を曲げるように構成されている。アンビル(60)は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年8月28日公開の「Integrated Tissue Positioning and Jaw Alignment Features for Surgical Stapler」という名称の米国特許出願公開第2014/0239042号の教示のうちの少なくともいくつか、2014年8月28日公開の「Jaw Closure Feature for End Effector of Surgical Instrument」という名称の米国特許出願公開第2014/0239036号の教示のうちの少なくともいくつか、及び/又は2014年8月28日公開の「Staple Forming Features for Surgical Stapling Instrument」という名称の米国特許出願公開第2014/0239037号の教示のうちの少なくともいくつかに従って構成されていてもよい。アンビル(60)が取り得る他の好適な形態は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0020】
本例では、ナイフ部材(80)は、エンドエフェクタ(40)を通って並進するように構成されている。図5及び7A〜7Bで最もよくわかるように、ナイフ部材(80)は発射ビーム(82)の遠位端に固定されており、この発射ビームは、シャフト組立体(30)の一部を通って延在する。図4及び図6で最もよくわかるように、ナイフ部材(80)は、アンビル(60)及びステープルカートリッジ(70)のチャネル(62、72)内に位置付けられている。ナイフ部材(80)は、ナイフ部材(80)がエンドエフェクタ(40)を通して遠位方向に並進するにつれて、アンビル(60)とステープルカートリッジ(70)のデッキ(73)との間で圧縮されている組織を切断するように構成されている、遠位側に示された切断縁部(84)を含む。上記し、かつ図7A図7Bに示すように、ナイフ部材(80)はまた、ナイフ部材(80)がエンドエフェクタ(40)を通して遠位に並進するにつれて楔形スレッド(78)を遠位に駆動し、それによってステープル(77)が組織を通してアンビル(60)に対して打ち込まれ、形成される。ナイフ部材(80)をエンドエフェクタ(40)を通して遠位に駆動するのに使用できる様々な機構については、以下に詳細に記載する。
【0021】
一部の形態では、エンドエフェクタ(40)は、ステープルカートリッジ(70)が下側ジョー(50)に挿入されていないとき、ナイフ部材(80)がエンドエフェクタ(40)を通して遠位側に前進するのを防止するように構成されているロックアウト機構を含む。追加的にあるいは代替的に、エンドエフェクタ(40)は、1回作動された後のステープルカートリッジ(70)(例えば、全てのステープル(77)がそこから配備された)が下側ジョー(50)に挿入されているとき、ナイフ部材(80)がエンドエフェクタ(40)を通して遠位側に前進するのを防止するように構成されているロックアウト機構を含む。単に例として、このようなロックアウト機構は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年8月28日公開の「Lockout Feature for Movable Cutting Member of Surgical Instrument」という名称の米国特許出願公開第2014/0239041号の教示の少なくともいくつか、及び/又はその開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年6月25日出願の「Method of Using Lockout Features for Surgical Stapler Cartridge」という名称の米国特許出願公開第14/314,108号の教示の少なくともいくつかに従って構成されてもよい。ロックアウト機構が取り得る他の好適な形態は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。あるいは、エンドエフェクタ(40)は単に、そのようなロックアウト機構を省略してもよい。
【0022】
C.例示的なアンビル作動
本例において、アンビル(60)は、閉鎖用リング(36)をエンドエフェクタ(40)に対して遠位側に前進させることによって、下側ジョー(50)に向かって駆動される。閉鎖用リング(36)は、カム作用を介してアンビル(60)と協働し、エンドエフェクタ(40)に対する閉鎖用リング(36)の遠位への並進に反応してアンビル(60)を下側ジョー(50)に向かって駆動する。同様に、閉鎖用リング(36)は、アンビル(60)と協働し、エンドエフェクタ(40)に対する閉鎖用リング(36)の近位側への並進に反応してアンビル(60)を下側ジョー(50)から離れて開放することができる。単なる例として、閉鎖用リング(36)とアンビル(60)は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年8月28日公開の「Jaw Closure Feature for End Effector of Surgical Instrument」という名称の米国特許出願公開第2014/0239036号の教示のうちの少なくともいくつかに従って、及び/又はその開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年6月25日出願の「Jaw Opening Feature for Surgical Stapler」という名称の米国特許出願第14/314,108号の教示のうちの少なくともいくつかに従って相互作用してもよい。エンドエフェクタ(40)に対して閉鎖用リング(36)を長手方向に並進するのに使用できる例示の機構は、以下により詳細に記載される。
【0023】
上記したように、ハンドル組立体(20)は、ピストル把持部(22)と、閉鎖トリガー(22)とを含む。また、上記したように、アンビル(60)は、閉鎖用リング(36)の遠位前進に反応して下側ジョー(50)に向かって閉鎖される。本例において、閉鎖トリガー(24)は、閉鎖管(32)及び閉鎖用リング(36)を遠位側に駆動させるように、ピストル把持部(22)に向かって枢動可能である。本明細書の教示を考慮することで、ピストル把持部(22)に向かう閉鎖トリガー(24)の枢軸運動を、ハンドル組立体(20)に対する閉鎖管(32)及び閉鎖用リング(36)の遠位への並進に変換するのに使用され得る様々な好適な構成要素が、当業者には明らかであろう。閉鎖トリガー(24)は、アンビル(60)が、下側ジョー(50)に対して完全な閉鎖位置になるような完全な枢動状態に達するとき、ハンドル組立体(20)のロック機構は、トリガー(24)及び閉鎖管(32)の位置を係止し、それによってアンビル(60)を下側ジョー(50)に対して完全な閉鎖位置に係止する。これらの係止機構は、アンビル解放ボタン(25)の作動によって解放される。アンビル解放ボタン(25)は、ピストル把持部(22)をつかむ操作者の手の親指で作動されるように構成され、位置付けられている。言い換えると、操作者は、ピストル把持部(22)を片手でつかみ、閉鎖トリガー(24)を同じ手の1本又は2本以上の指で作動し、その後、同じ手によるピストル把持部(22)のつかみを解放する必要なく、アンビル解放ボタン(25)を同じ手の親指で作動することができる。本明細書の教示を考慮することで、アンビル(60)の作動に使用できる他の好適な機構が当業者に明らかとなるであろう。
【0024】
D.発射ビームの例示的作動
本発明の例では、器具(10)は、発射ビーム(82)の電動制御を提供する。特に、器具(10)は、発射トリガー(26)のピストル把持部(22)に向かう枢動に応答して発射ビーム(82)を遠位に駆動するように構成された、電動構成要素を備えている。一部の形態では、モーター(図示せず)がピストル把持部(22)内に含まれ、電池パック(28)から電力を受信する。このモーターは、モーターの駆動シャフトの回転運動を、発射ビーム(82)の線形移動に変換する伝送組立体(図示せず)に連結される。一部のこのような形態では、アンビル(60)が下側ジョー(50)に対して完全閉鎖位置にあるとき、発射ビーム(82)は遠位に前進しかできない。図7A〜7Bを参照して上述されるように、発射ビーム(82)が遠位に前進して組織を切断し、ステープル(77)を駆動した後、発射ビーム(82)用の駆動組立体は、自動的に反転し、発射ビーム(82)を近位に奥まっている位置に戻すように駆動できる(例えば、図7Bに示される位置から図7Aに示される位置まで戻す)。あるいは、操作者は、発射ビーム(82)用の駆動組立体を反転して発射ビーム(82)を近位位置に奥まるようにできる、発射ビーム反転スイッチ(27)を作動してよい。本例のハンドル組立体(20)は、機械的脱出をもたらすように操作可能であり、操作者が手動で発射ビーム(82)を近位に奥まらせることを可能にする(例えば、発射ビーム(82)が遠位位置にある間に電力損失した場合など)、脱出機構(21)を更に備えている。
【0025】
あくまで一例として、発射ビーム(82)の電動化作動をもたらすように操作可能な機構は、2012年7月3日に発行された「Motor−Driven Surgical Instrument」と題する米国特許第8,210,411号(この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)の教示のうち少なくとも一部に従って、構成され、操作することができる。別の単なる例示例として、発射ビーム(82)の電動化作動をもたらすように操作可能な機構は、2013年6月4日に発行された「Motor−Driven Surgical Cutting Instrument with Electric Actuator Directional Control Assembly」と題する米国特許第8,453,914号(この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)の教示のうち少なくとも一部に従って、構成され、操作することができる。更に別の単なる例示例として、発射ビーム(82)の電動化作動をもたらすように操作可能な機構は、2014年3月26日に出願された「Surgical Instrument Comprising a Sensor System」と題する米国特許出願第14/226,142号(この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)の教示のうち少なくとも一部に従って、構成され、操作することができる。
【0026】
発射ビーム(82)の電動化をもたらすために使用できるその他好適な構成要素、特徴部、及び構成は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかになるであろう。また、他の形態において、発射ビーム(82)のマニュアル駆動が提供され、モーターが省かれてもよいことも理解されたい。あくまで一例として、発射ビーム(82)は、本明細書で引用されるその他の参照文献の教示のうち少なくとも一部に従って手動で作動することができる。
【0027】
図8は、組織(90)を通じた1回のストロークを通して作動されたエンドエフェクタ(40)を示している。示されるように、切断縁部(84)(図8では不明瞭)は、組織(90)を切断したが、ステープルドライバ(75)は、切断縁部(84)が作り出した切断線の各側で、組織(90)を通してステープル(77)の2本の交互の列を駆動した。この例では、全てのステープル(77)が切断線とほぼ平行に向いているが、ステープル(77)は、任意の好適な向きで位置付けされ得る点を理解されたい。本例では、第1のストロークが完了した後にエンドエフェクタ(40)をトロカールから引き抜き、使用済みのステープルカートリッジ(70)を新しいステープルカートリッジ(70)と交換し、その後、エンドエフェクタ(40)を再びトロカールを通じて挿入して、ステープル留めする部位に到達させて更なる切断及びステープル留めを行う。所望の量の切断及びステープル(77)が与えられるまで、このプロセスを繰り返すことができる。トロカールを通じた挿入及び抜脱を助けるためにはアンビル(60)を閉鎖する必要があり、ステープルカートリッジ(70)の交換を助けるためにはアンビル(60)を開放する必要がある。
【0028】
各作動ストロークの間に、ステープル(77)が組織に貫通して打ち込まれるのとほぼ同時に、切断縁部(84)が組織を切断することができる点を理解されたい。本例において、切断縁部(84)は、ステープル(77)の駆動動作よりもごくわずかに遅れて進むので、ステープル(47)は、切断縁部(84)が組織の同じ領域を通過する直前に組織を通して駆動されるが、この順序を逆にすることができる点、又は、切断縁部(84)が、隣り合うステープルと直接的に一緒に動いてもよい点を理解されたい。図8は、2層(92、94)の組織(90)で作動しているエンドエフェクタ(40)を示しているが、エンドエフェクタ(40)は、1層の組織(90)、又は2層(92、94)を超える組織を通じて作動され得る点を理解されたい。また、切断縁部(84)が形成する切断線に隣接するステープル(77)の成形及び位置付けにより、切断線において組織を実質的にシールすることができ、これにより、切断線での出血及び/又は他の体液の漏出を低減又は防止することができる点も理解されたい。更にまた、図8は、2つの概ね平坦で並置した組織の平面層(92、94)において作動されているエンドエフェクタ(40)を示すが、エンドエフェクタ(40)は、環状構造、例えば血管、消化管のセクションなどにわたって作動され得ることを理解されたい。図8は、したがって、エンドエフェクタ(40)についての意図された使用におけるなんらかの制限を示すものとして見られるべきではない。器具(10)を使用することができる様々な適当な状況及び手術は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0029】
器具(10)の任意の他の構成要素又は機構は、本明細書に引用される様々な参照文献のうちいずれかに従って構成され、動作可能であることも理解されたい。器具(10)に行うことができる更なる例示的な改変例について以下により詳細に記載する。以下の教示を器具(10)に組み込むことができる様々な適当な方法が当業者には明らかであろう。同様に、以下の教示を本明細書で引用された参考文献の様々な教示と組み合わせることができる様々な好適な方法が当業者には明らかであろう。また、以下の教示は、本明細書に引用される参考文献に教示される器具(10)又は装置に限定されない点も理解されたい。以下の教示は、外科用ステープラとして分類されない器具を含む他の様々な種類の器具に容易に応用することができる。以下の教示を適用することができる他の様々な適当な装置及び状況は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0030】
II.例示的な別のステープルドライバ
エンドエフェクタ(40)は、アンビル(60)が閉鎖位置にあるときに、カートリッジデッキ(73)の表面とアンビル(60)の対応する表面とを隔てる既定の間隙を設けるように構成されていてもよい。場合によっては、標的組織の厚みがこの既定の間隙距離と異なる場合、組織の切断及びステープル留めが困難なことがある。例えば、標的組織が間隙よりも大幅に厚い場合、操作者は、器具を発射して組織を効果的に切断し、ステープル留めすることが困難になる可能性がある。その一方で、標的組織がカートリッジデッキとアンビルとの間の間隙よりも薄い場合、アンビル(60)とデッキ(73)との間において標的組織の位置を維持することが困難になる可能性がある。特に、発射時、ナイフ部材(80)が組織に対して前進するにつれて、組織が器具のジョー内で位置を移動する場合があり、それにより標的組織の効果的な切断が困難になる。場合によっては、ステープル(77)は組織の領域に、この組織の領域にナイフ部材(80)が到達する前に打ち込まれ、ステープル(77)の脚は組織内に、組織のその領域が切断される前に位置付けられる。アンビル(60)とデッキ(73)との間における圧縮により組織が非常に薄く、組織が所定の位置に保持されていない場合においては、ナイフ部材(80)は組織を完全に切断する(これはチーズワイヤ効果によりステープル(77)が組織を断裂することになるおそれがある)のではなくむしろ組織を鋤いてもよい。
【0031】
上記に鑑み、ナイフ部材(80)を作動させる際、比較的薄い組織を圧縮することにより組織を固定する1つ以上の機能をエンドエフェクタ(40)に設けることが望ましい場合がある。こうした組織の圧縮により、閉じたアンビル(60)とデッキ(73)との間に組織が位置付けられているときに起こる可能性のある、組織の望ましくない動きを防ぐことができる。組織圧縮機能のいくつかの単なる例が以下でより詳細に述べられるが、他の例は、本明細書における教示を鑑みれば当業者には明らかであろう。
【0032】
図9A図12は、例示的な別のステープルドライバ(175、275、375、475)を示し、そのそれぞれは、ステープルドライバ(75)の代わりに、ステープルカートリッジ(70)に容易に組み込まれてもよい。ステープルドライバ(175、275、375、475)は、ステープルドライバ(75)と実質的に同様に動作するように構成されている。つまり、ステープルドライバ(175、275、375、475)は、外科用器具(10)のステープルカートリッジ(70)など、外科用器具のステープルカートリッジに組み込まれるように構成されている。例えば、ステープルドライバ(175、275、375、475)は、ステープル(77)と共に、下側ジョー(50)のステープルカートリッジ(70)の複数のステープルポケット(74)内に受け入れられるように構成されており、発射ビーム(82)の長手方向の前進に応じて、楔形スレッド(78)により上向きに駆動されるように構成されている。したがって、ステープルドライバ(175、275、375、475)は、ステープルドライバ(75)に関して上で記載したのと同様に、ステープル(77)をステープルポケット(74)内に上向きに打ち込み、アンビル(60)と係合させるように構成されている。しかしながら、本例のステープルドライバ(175、275、375、475)は、組織のステープル留め及び切断の最中、組織の一部分を所定の位置に保持するように構成された圧縮可能機構を更に含む。
【0033】
図9A図9B及び図13A図14Cは、ステープルドライバ(175)を示す。一部の例では、ステープルカートリッジ(70)は、例えば、ステープル(77)及びステープルポケット(74)の数に応じて、複数のステープルドライバ(175)を含んでもよいことは当業者には理解されよう。しかしながら、他の一部の例では、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかな通り、ステープルカートリッジ(70)は、任意の組み合わせ若しくは数のステープルドライバ(75、175、275、375、475)又は他の適切なステープルドライバを含んでもよい。図13A図14Cは、例示的な別のエンドエフェクタ(140)に組み込まれた複数のステープルドライバ(175)を示す。以下で更に詳述するように、エンドエフェクタ(140)は、外科用器具(10)などの外科用器具に組み込まれるように構成されており、エンドエフェクタ(40)と実質的に同様に動作するように構成されている。
【0034】
示されるように、ステープルドライバ(175)は、本体(176)と、ステープル(77)のクラウン部(77a)(図14A図14C)を支持するように構成された支持部(178)と、を含む。以下で更に詳述するように、ステープルドライバ(175)は、組織のステープル留め及び切断の最中、組織の一部分を所定の位置に保持するように構成された圧縮可能機構(180)を更に備えている。示される例では、圧縮可能機構(180)は、本体(176)の対向する側に一対の弓形部材(182a、182b)を備えている。示されるように、各弓形部材は実質的にステープルドライバ(175)の一端からステープルドライバ(175)の他端まで延在している。ステープルドライバ(175)は、弓形部材(182a、182b)の間に一組の開口部(184)を含み、以下で更に詳述するように、一組の開口部(184)は、弓形部材(182a、182b)が本体(176)に向かって下向きにたわむことを可能にする。弓形部材(182a、182b)は、ステープル(77)がステープルドライバ(175)上に着座すると、クラウン部(77a)が弓形部材(182a、182b)の間を自由に通過し、支持部(178)に到達して載置され得るように構成及び位置付けられている。
【0035】
示される例では、弓形部材(182a、182b)はそれぞれ、エラストマー、ポリマー、及び/又は他の好適な材料を含む。示される例では、弓形部材(182a、182b)は、弓形部材(182a、182b)がステープルドライバ(175)の本体(176)と一体であるように、ステープルドライバ(175)と共成形されている。一部の例では、弓形部材(182a、182b)はステープルドライバ(175)の本体(176)上に重ね成形されてもよい。あるいは、弓形部材(182a、182b)は、本明細書の教示を考慮することで当業者に明らかとなるであろう他の適切な方法によりステープルドライバ(175)の本体(176)に固定されてもよい。以下で更に詳細に説明するように、弓形部材(182a、182b)は、ステープルドライバ(175)と関連付けられたステープル(77)が一部発射されるとアンビル(60)に向かって及びアンビル(60)に対して組織を付勢するほど十分に硬質ではあるが、関連するステープル(77)が完全に発射されることを妨げないように十分に圧縮可能であるように構成されている。本明細書の教示を考慮することで、圧縮可能機構(180)の他の好適な構成が、当業者に明らかとなるであろう。
【0036】
図10は、例示的な別のステープルドライバ(275)を示す。一部の例では、ステープルカートリッジ(70)は、例えば、ステープル(77)及びステープルポケット(74)の数に応じて、複数のステープルドライバ(275)を含んでもよいことは当業者には理解されよう。しかしながら、他の一部の例では、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかな通り、ステープルカートリッジ(70)は、ステープルドライバ(75、175、275、375、475)又は適切な他の適切なステープルドライバの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0037】
図10がステープルドライバ(275)の側面図(図9Bに示されるステープルドライバ(175)の側面図に類似する)を示すことは理解されよう。示されるように、ステープルドライバ(275)は本体(276)を含み、ステープルドライバ(275)が異なる形状の圧縮可能機構(280)を含むこと以外は、ステープルドライバ(175)に実質的に類似している。特に、この例の圧縮可能機構(280)は対向するブリッジ部材(282a)を備えている。ブリッジ部材(282a)を1つのみ示しているが、ステープルドライバ(275)はブリッジ部材(282a)に対向する実質的に同一の第2のブリッジ部材を含み、2つのブリッジ部材(282a)は、ステープル(77)がステープルドライバ(275)上に着座すると、クラウン部(77a)がブリッジ部材(282a)の間を自由に通過し、支持部(278)に到達して載置され得るように構成及び位置付けられていることは理解されよう。本例に示されるように、ブリッジ部材(282a)は、一対の対向する垂直部材(284)と、一対の対向する垂直部材(284)の間に延在している水平部材(286)と、を含む。ステープルドライバ(275)は、ステープル(77)のクラウン部(77a)(図14A図14C)を支持するように構成された支持部(278)(隠線で示される)を更に含む。
【0038】
示される例では、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかな通り、ブリッジ部材(282a)はそれぞれ、エラストマー、ポリマー、及び/又は他の好適な材料を含む。示される例では、ブリッジ部材(参照符号282a、図示せず)がステープルドライバ(275)の本体(276)と一体であるように、ブリッジ部材(参照符号282a、図示せず)はステープルドライバ(275)と共成形されている。一部の例では、ブリッジ部材(282a)はステープルドライバ(275)の本体(276)上に重ね成形されてもよい。あるいは、ブリッジ部材(282a)は、本明細書の教示を考慮することで当業者に明らかとなるであろう他の適切な方法によりステープルドライバ(275)の本体(276)に固定されてもよい。以下で更に詳細に説明するように、ブリッジ部材(282a)は、ステープルドライバ(275)と関連付けられたステープル(77)が一部発射されるとアンビル(60)に向かって組織を付勢するほど十分に硬質ではあるが、関連するステープル(77)が完全に発射されることを妨げないように十分に圧縮可能であるように構成されている。本明細書の教示を考慮することで、圧縮可能機構(280)の他の好適な構成が、当業者に明らかとなるであろう。
【0039】
図11は、例示的な別のステープルドライバ(375)を示す。一部の例では、ステープルカートリッジ(70)は、例えば、ステープル(77)及びステープルポケット(74)の数に応じて、複数のステープルドライバ(275)を含んでもよいことは当業者には理解されよう。しかしながら、他の一部の例では、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかな通り、ステープルカートリッジ(70)は、ステープルドライバ(75、175、275、375、475)又は適切な他の適切なステープルドライバの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0040】
図11は、ステープルドライバ(375)の側面図(図9B及び図10に示されるステープルドライバ(175、275)の側面図に類似する)を示すことは理解されよう。示されるように、ステープルドライバ(375)は本体(376)を含み、ステープルドライバ(375)が異なる形状の圧縮可能機構(380)を含むこと以外は、ステープルドライバ(175)に実質的に類似している。特に、この例の圧縮可能機構(380)は、対向する弓形部材(382a)を備えている。弓形部材(382a)を1つのみ示しているが、ステープルドライバ(375)が弓形部材(382a)に対向する実質的に同一の弓形部材を含み、2つの弓形部材(382a)は、ステープル(77)がステープルドライバ(375)上に着座すると、クラウン部(77a)が弓形部材(382a)の間を自由に通過し、支持部(378)に到達して載置され得るように構成及び位置付けられていることは理解されよう。示されるように、弓形部材(382a)が開口部(184)などの開口部を含まないように中実であること以外は、圧縮可能機構(380)は圧縮可能機構(180)に類似した形状である。ステープルドライバ(375)は、ステープル(77)のクラウン部(77a)(図14A図14C)を支持するように構成された支持部(378)(隠線で示される)を更に含む。
【0041】
示される例では、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかな通り、弓形部材(382a)はそれぞれ、エラストマー、ポリマー、及び/又は他の好適な材料を含む。示される例では、弓形部材(382a)は、弓形部材(382a)がステープルドライバ(375)の本体(376)と一体であるように、ステープルドライバ(375)と共成形されている。一部の例では、弓形部材(382a)はステープルドライバ(375)の本体(376)上に重ね成形されてもよい。あるいは、弓形部材(382a)は、本明細書の教示を考慮することで当業者に明らかとなるであろう他の適切な方法によりステープルドライバ(375)の本体(376)に固定されてもよい。以下で更に詳細に説明するように、弓形部材(382a)は、ステープルドライバ(375)と関連付けられたステープル(77)が一部発射されるとアンビル(60)に向かって組織を付勢するほど十分に硬質ではあるが、関連するステープル(77)が完全に発射されることを妨げないように十分に圧縮可能であるように構成されている。本明細書の教示を考慮することで、圧縮可能機構(380)の他の好適な構成が、当業者に明らかとなるであろう。
【0042】
図12は、例示的な別のステープルドライバ(475)を示す。一部の例では、ステープルカートリッジ(70)が、例えば、ステープル(77)及びステープルポケット(74)の数に応じて、複数のステープルドライバ(475)を含んでもよいことは当業者には理解されよう。しかしながら、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかな通り、他の一部の例では、ステープルカートリッジ(70)は、ステープルドライバ(75、175、275、375、475)又は適切な他のステープルドライバの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0043】
図12は、ステープルドライバ(475)の側面図(図9B図10及び図11に示されるステープルドライバ(175、275、375)の側面図に類似する)を示すことは理解されよう。示されるように、ステープルドライバ(475)は本体(476)を含み、ステープルドライバ(475)が異なる形状の圧縮可能機構(480)を含むこと以外は、ステープルドライバ(175)に実質的に類似している。特に、この例の圧縮可能機構(480)は、対向する圧縮可能指部(482)の組を備えている。4つの圧縮可能指部(482a)の一組のみを示しているが、ステープルドライバ(475)は圧縮可能指部(482a)に対向する実質的に同一の圧縮可能指部(図示せず)の組を含み、対向する圧縮可能指部(482a)の組は両方とも、ステープル(77)がステープルドライバ(475)上に着座すると、クラウン部(77a)が対向する指部(482a)の組の間を自由に通過し、支持部(478)に到達して載置され得るように構成及び位置付けられていることは理解されよう。ステープルドライバ(475)は、ステープル(77)のクラウン部(77a)(図14A図14C)を支持するように構成された支持部(478)(隠線で示される)を更に含む。
【0044】
示される例では、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかなように、圧縮可能指部(482a)はそれぞれ、エラストマー、ポリマー、又は他の適切な材料を含む。示される例では、圧縮可能指部(参照符号482a、図示せず)がステープルドライバ(475)の本体(476)と一体であるように、圧縮可能指部(参照符号482a、図示せず)はステープルドライバ(475)と共成形されている。一部の例では、圧縮可能指部(482a)は、ステープルドライバ(475)の本体(476)上に重ね成形されてもよい。あるいは、圧縮可能指部(482a)は、本明細書の教示を考慮することで当業者に明らかとなるであろう他の適切な方法によりステープルドライバ(475)の本体(476)に固定されてもよい。以下で更に詳細に説明するように、圧縮可能指部(482a、図示せず)は、ステープルドライバ(475)と関連付けられたステープル(77)が一部発射されるとアンビル(60)に向かって組織を付勢するほど十分に硬質ではあるが、圧縮可能指部(482a、図示せず)は圧縮し、関連するステープル(77)が発射されることを妨げないように圧縮可能であるように構成されている。本明細書の教示を考慮することで、圧縮可能機構(480)の他の好適な構成が、当業者に明らかとなるであろう。
【0045】
上記のように、図13A図14Cは、複数のステープルドライバ(175)を組み込んだステープルカートリッジ(70)の形態を含む例示的な別のエンドエフェクタ(140)を示す。同じく上で記載したように、エンドエフェクタ(140)は、エンドエフェクタ(40)の代わりに、外科用器具(10)に容易に組み込まれてもよい。示されるように、組織(90)の2つの層(92、94)は、アンビル(60)と下側ジョー(50)との間に位置付けられている。単なる例として、2つの層(92、94)は、大血管、胃腸管の一部、肺若しくは他の臓器の一部などの1つの解剖学的構造、及び/又は任意の他の適切な解剖学的構造の対向する壁によって与えられ得る。
【0046】
示される例では、カートリッジデッキ(73)とアンビル(60)との間の領域における組織(90)の層(92、94)の総厚は、アンビル(60)が閉鎖位置にある状態のアンビル(60)とカートリッジデッキ(73)との間の既定の間隙距離より小さい。図13A及び図14Aは、発射される前のステープル(77)を示し、図13B及び図14Bは、第1の一部発射された状態にあるステープル(77)を示し、図13C及び図14Cは、第2の一部発射された状態にあるステープル(77)を示す。図13A及び図14Aでは、発射ビーム(82)は、楔形スレッド(78)がステープルドライバ(175)と接触する位置まで未だ前進していない。したがって、ステープルドライバ(175)はステープルポケット(74)内で奥まっている位置にある。示されるように、ステープルドライバが奥まっている位置にあるとき、圧縮可能部材(180)はカートリッジデッキ(73)の下にあり、したがって組織(90)に未だ接触していない。この段階では、カートリッジデッキ(73)とアンビル(60)との間の領域における組織(90)の層(92、94)の総厚は、アンビル(60)が閉鎖位置にある状態のアンビル(60)とカートリッジデッキ(73)との間の既定の間隙距離より小さいため、アンビル(60)が閉鎖位置にある場合でも、組織(90)はアンビル(60)とカートリッジデッキ(73)との間で尚動くことができる。
【0047】
発射ビーム(82)が長手方向に前進するにつれて、並びに図13B及び図14Bに示すように、楔形スレッド(78)は前進してステープルドライバ(175)に接触し、ステープルドライバ(175)及びステープル(77)をアンビル(60)に向かって上向きに駆動する。結果的に、楔形スレッド(78)がステープルドライバ(175)を更に上向きに駆動すると、圧縮可能部材(182a、182b)が組織(90)に接触し、組織(90)をアンビル(60)に対して圧縮するように、圧縮可能機構(180)はカートリッジデッキ(73)より上に延在する。上記のように、圧縮可能機構(180)は、組織(90)をアンビル(60)に向かって付勢し、組織(90)をアンビル(60)に対して圧縮するほど十分に硬質であるように構成されている。圧縮可能機構(180)が組織(90)をアンビル(60)に対して圧縮しているカートリッジ(70)の長手方向領域において、ナイフ部材(80)は対応する組織(90)の領域を未だ切断してはいないことを理解すべきである。換言すると、圧縮可能機構(180)は組織(90)を、ナイフ部材(80)が組織(90)のその特定領域に到達する前にアンビル(60)に対して圧縮する。
【0048】
楔形スレッド(78)が長手方向に移動し続けると、ステープルドライバ(175)は、最終的に、ステープル(77)が完全に発射される位置に到達する。換言すると、ステープル(77)はステープル形成ポケット(64)へと完全に進められ、当該技術分野で理解されるようにB字形に変形し、弓形部材(182a、182b)は組織(90)をアンビル(60)に対して付勢し続ける。上記及び図13C及び図14Cに示されるように、弓形部材(182a、182b)は関連するステープル(77)の完全な発射を妨げないように十分量圧縮可能である。示されるように、エンドエフェクタ(40)に関して上で詳述したように、発射ビーム(82)が更に長手方向に前進すると、ナイフ部材(80)はステープル(77)の発射完了とほぼ同時に組織を切断する。所望の量の切断及びステープル(77)が与えられるまで、このプロセスを繰り返すことができる。一部の形態では、図14Cに示される状態は完全に発射された状態をなす。他の一部の形態では、図14Cに示される状態は第2の一部発射された状態をなす。このような形態では、弓形部材(182a、182b)が組織(90)をアンビル(60)に対して付勢し続けるにつれて、示されるステープル(77)は更に変形され、「B」字形を形成し続けてもよい。
【0049】
前述から、圧縮可能機構(180)は、ナイフ部材(80)が組織内に進められる際、組織(90)がデッキ(73)とアンビル(60)との間で摺動するのを妨げることは理解すべきである。したがって、組織(90)の厚みが、デッキ(73)と閉鎖されたアンビル(60)との間に形成される既定の間隙より小さい場合でも、圧縮可能機構(180)はアンビル(60)と協働して、ナイフ部材(80)による切断のために組織(90)をしっかりと保持する。圧縮可能機構(180)は組織(90)の、ステープル(77)が組織(90)に打ち込まれる組織(90)の領域に対し、非常に局所化された状態で圧力を与えることも理解すべきである。この圧縮の局所的印加により、ステープル(77)が組織(90)に打ち込まれる際、組織(90)がステープル(77)に対して摺動しないようにしてもよく、これにより更に、ステープル(77)が組織(90)に打ち込まれている際、ステープル(77)が組織(90)に側方から当たることによりチーズワイヤ効果において組織(90)を不必要に断裂することを妨げてもよい。
【0050】
本例では、並びに図13A及び図14Aに示されるように、圧縮可能機構(180)は、ステープルドライバ(175)が非作動状態にあるとき、圧縮可能機構(180)がデッキ(73)の表面より下に奥まっているような大きさにされ、構成されている。他の一部の形態では、圧縮可能機構(180)は、ステープルドライバ(175)が非作動状態にあるとき、圧縮可能機構(180)の少なくとも一部分がデッキ(73)の表面より上に突出するような大きさにされ、構成されている。このような形態では、エンドエフェクタ(140)は、薄い組織構造においても、ナイフ部材(80)を必ずしも発射することなく、アンビル(60)を選択的に開閉することにより組織把持具として使用してもよい。ステープルドライバ(175)を変更し、使用してもよい他の好適な手法は、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかであろう。
【0051】
III.典型的な組み合わせ
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の出願におけるどの時点でも提示され得るいずれの請求項の適用範囲をも限定することを目的としたものではない点は理解されるべきである。一切の放棄を意図するものではない。以下の実施例は単なる例示の目的で与えられるものにすぎない。本明細書の様々な教示は、他の多くの方法で構成及び適用が可能であると企図される。また、いくつかの変形形態では、以下の実施例において言及される特定の特徴を省略してもよいことも企図される。したがって、本発明者によって、又は本発明者の利益となる継承者によって、後日、そうである旨が明示的に示されない限り、以下に言及される態様又は特徴のいずれも重要なものとしてみなされるべきではない。以下に言及される特徴以外の更なる特徴を含む請求項が本出願において、又は本出願に関連する後の出願において示される場合、これらの更なる特徴は、特許性に関連するいずれの理由によって追加されたものとしても仮定されるべきではない。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
(a)本体と、(b)本体から遠位に延在しているシャフト組立体と、(c)エンドエフェクタであって、(i)アンビルと、(ii)下側ジョーであって、アンビルは、組織をクランプするために下側ジョーに向かって枢動可能である、下側ジョーと、を備えるエンドエフェクタと、(d)下側ジョーと結合されたステープルカートリッジであって、(i)アンビルに面しているデッキと、(ii)デッキ内に形成された複数のステープル用開口部内に位置付けられた複数のステープルと、(iii)ステープルをステープル用開口部から送り出すように構成された複数のステープルドライバであって、複数のステープルドライバの各ステープルドライバはステープルドライバ本体を備え、ステープルドライバの少なくとも一部分は、ステープルドライバ本体からアンビルに向かって延在している圧縮可能機構を更に備える、ステープルドライバと、を備える、ステープルカートリッジと、を備えている、装置。
【0053】
(実施例2)
各圧縮可能機構は弓形部材を備えている、実施例1に記載の装置。
【0054】
(実施例3)
各ステープルドライバ本体は第1端部及び第2端部を有し、対応する弓形部材は第1端部から第2端部まで延在している、実施例1〜2のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0055】
(実施例4)
各ステープルドライバは対応する弓形部材の下に間隙を更に画定し、間隙は弓形部材の変形に適応するように構成されている、実施例3に記載の装置。
【0056】
(実施例5)
各ステープルドライバはステープル支持部を更に備え、各圧縮可能機構は、対応するステープル支持機構の各側に位置付けられた対向する圧縮可能部材を備えている、実施例1〜4のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0057】
(実施例6)
圧縮可能機構はそれぞれエラストマー材料を含む、実施例1〜5のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0058】
(実施例7)
圧縮可能機構は、アンビルに対する圧縮可能機構による組織の圧縮に応じて変形するように構成されている、実施例1〜6のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0059】
(実施例8)
各圧縮可能機構は非発射位置から発射位置に移行するように構成されており、各圧縮可能機構は、発射位置において、アンビルを越えて突出するように構成されており、発射位置は、関連するステープルをアンビルに対して進める対応するステープルドライバ本体と関連付けられている、実施例1〜7のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0060】
(実施例9)
各圧縮可能機構は、非発射位置において、デッキに対し奥まっているように構成されており、発射位置は、同様にデッキに対し奥まっている関連するステープルと関連付けられている、実施例8に記載の装置。
【0061】
(実施例10)
エンドエフェクタ内を移動するように構成された発射バーを更に備え、発射バーはステープルドライバをアンビルに向かって駆動し、ステープルを発射位置へと移動するように構成されている、実施例1〜9のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0062】
(実施例11)
発射バーは更に、発射バーがステープルドライバをアンビルに向かって駆動すると、組織を切断するように構成されている、実施例10に記載の装置。
【0063】
(実施例12)
圧縮可能機構は、発射バーが組織を切断する際に、アンビルに対して組織を圧縮するように構成されている、実施例11に記載の装置。
【0064】
(実施例13)
圧縮可能機構のそれぞれは、ステープルドライバ本体から上向きに延在している一対の部材を備えている、実施例1〜12のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0065】
(実施例14)
一対の部材は、複数のステープルのうち対応するステープルの一部分を一対の部材の部材の間に受け入れるように構成及び位置付けられている、実施例13に記載の装置。
【0066】
(実施例15)
各圧縮可能部材は、一対の脚と、一対の脚の間に延在するブリッジと、を備えている、実施例1〜14のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0067】
(実施例16)
各圧縮可能部材は一組の指部を備えている、実施例1〜15のいずれか1つ以上に記載の装置。
【0068】
(実施例17)
外科用ステープラのエンドエフェクタと共に使用するためのステープルカートリッジであって、(a)カートリッジ本体であって、カートリッジデッキを含み、カートリッジデッキを貫通している複数のステープル用開口部を更に画定する、カートリッジ本体と、(b)複数のステープル用開口部と関連付けられた複数のステープルと、(c)複数のステープル用開口部及び複数のステープルと関連付けられた複数のステープルドライバであって、カートリッジデッキに向かって移動し、ステープルをステープル用開口部から送り出すように構成されている、複数のステープルドライバと、(d)複数のステープルドライバの少なくともいくつかと関連付けられた複数の圧縮可能機構であって、関連するステープルドライバと共に動くことができる、複数の圧縮可能機構と、を備えている、ステープルカートリッジ。
【0069】
(実施例18)
圧縮可能機構はステープルが組織及びアンビルに打ち込まれる際、ステープル用開口部内に駆動され、組織をアンビルに対して圧縮するように構成されている、実施例17に記載のステープルカートリッジ。
【0070】
(実施例19)
外科用器具を使用する方法であって、外科用器具は、(a)エンドエフェクタであって、(i)アンビルと、(ii)下側ジョーであって、アンビルは、下側ジョーに向かって、及び下側ジョーから離れる方に動くように構成されている、下側ジョーと、(iii)下側ジョーに位置付けられたステープルカートリッジであって、(A)複数のステープルと、(B)複数のステープルドライバであって、各ステープルドライバは複数のステープルのうち対応するステープルと関連付けられており、各ステープルドライバは一体型の圧縮可能機構を含む、複数のステープルドライバと、を備える、ステープルカートリッジと、を備える、エンドエフェクタと、(b)エンドエフェクタ内を前進し、ステープルドライバをアンビルに向かって駆動するように構成された発射部材と、を備え、当該方法は、(a)アンビルと下側ジョーとの間に組織を位置付けることと、(b)アンビルをジョーに向かって動かし、アンビルを閉鎖位置にすることと、(c)発射部材をエンドエフェクタ内において前進させることであって、発射部材の前進によりステープルがアンビルに向かって動き、発射部材の前進により各ステープルドライバの圧縮可能機構を更に駆動し、組織の一部分と接触させ、圧縮可能機構が組織の対応する部分をアンビルに対して圧縮する、ことと、を含む、方法。
【0071】
(実施例20)
圧縮可能機構が組織の対応する部分をアンビルに対して圧縮する際、各ステープルドライバの圧縮可能機構は変形する、実施例19に記載の方法。
【0072】
IV.その他
本明細書に記載の教示、表現要素、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ以上を、本明細書に記載の他の教示、表現要素、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ以上と組み合わせることができる点が理解されるべきである。したがって、上記の教示、表現要素、実施形態、実施例などは、互いに対して独立して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な適当な方法が、当業者には直ちに明らかとなろう。かかる改変例及び変形例は、「特許請求の範囲」内に含まれるものとする。
【0073】
参照により本明細書に援用されると言及されたいかなる特許、刊行物、又は他の開示内容も、全体的に又は部分的に、援用された内容が現行の定義、見解、又は本開示に記載された他の開示内容とあくまで矛盾しない範囲でのみ本明細書に援用されることを認識されたい。それ自体、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載される開示内容は、参照により本明細書に援用されるあらゆる矛盾する記載に優先するものとする。参照により本明細書に援用されるものとするが、既存の定義、記載、又は本明細書に記載される他の開示文献と矛盾する任意の文献、又はそれらの部分は、援用文献と既存の開示内容との間に矛盾が生じない範囲においてのみ援用されるものとする。
【0074】
上述の装置の変形形態は、医療専門家によって行われる従来の治療及び処置での用途だけでなく、ロボット支援された治療及び処置での用途も有することができる。あくまでも一例として、本明細書の様々な教示は、ロボット外科システム、例えばIntuitive Surgical,Inc.(Sunnyvale,California)によるDAVINCI(商標)システムに容易に組み込まれ得る。同様に、当業者であれば、本明細書における様々な教示が、以下の特許文献などのうちの任意のものの様々な教示と容易に組み合わされ得ることを認めるであろう。その特許文献などとは、その開示が参照により本明細書に組み込まれている1998年8月11日に発行された「Articulated Surgical Instrument For Performing Minimally Invasive Surgery With Enhanced Dexterity and Sensitivity」と題する米国特許第5,792,135号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、1998年10月6日に発行された「Remote Center Positioning Device with Flexible Drive」と題する米国特許第5,817,084号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、1999年3月2日に発行された「Automated Endoscope System for Optimal Positioning」と題する米国特許第5,878,193号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2001年5月15日に発行された「Robotic Arm DLUS for Performing Surgical Tasks」と題する米国特許第6,231,565号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2004年8月31日に発行された「Robotic Surgical Tool with Ultrasound Cauterizing and Cutting Instrument」と題する米国特許第6,783,524号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2002年4月2日に発行された「Alignment of Master and Slave in a Minimally Invasive Surgical Apparatus」と題する米国特許第6,364,888号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2009年4月28日に発行された「Mechanical Actuator Interface System for Robotic Surgical Tools」と題する米国特許第7,524,320号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2010年4月6日に発行された「Platform Link Wrist Mechanism」と題する米国特許第7,691,098号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2010年10月5日に発行された「Repositioning and Reorientation of Master/Slave Relationship in Minimally Invasive Telesurgery」と題する米国特許第7,806,891号、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2013年1月10日に公開された「Automated End Effector Component Reloading System for Use with a Robotic System」と題する米国特許出願公開第2013/0012957号、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2012年8月9日に公開された「Robotically−Controlled Surgical Instrument with Force−Feedback Capabilities」とする米国特許出願公開第2012/0199630号、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2012年5月31日に公開された「Shiftable Drive Interface for Robotically−Controlled Surgical Tool」と題する米国特許出願公開第2012/0132450号、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2012年8月9日に公開された「Surgical Stapling Instruments with Cam−Driven Staple Deployment Arrangements」と題する米国特許出願公開第2012/0199633号、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2012年8月9日に公開された「Robotically−Controlled Motorized Surgical End Effector System with Rotary Actuated Closure Systems Having Variable Actuation Speeds」と題する米国特許出願公開第2012/0199631号、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2012年8月9日に公開された「Robotically−Controlled Surgical Instrument with Selectively Articulatable End Effector」と題する米国特許出願公開第2012/0199632号、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2012年8月9日に公開された「Robotically−Controlled Surgical End Effector System」と題する米国特許出願公開第2012/0203247号、2012年8月23日に公開された「Drive Interface for Operably Coupling a Manipulatable Surgical Tool to a Robot」と題する米国特許出願公開第2012/0211546号、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれている2012年6月7日に公開の名称を「Robotically−Controlled Cable−Based Surgical End Effectors」とする米国特許出願公開第2012/0138660号、及び/又は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている2012年8月16日に公開の名称を「Robotically−Controlled Surgical End Effector System with Rotary Actuated Closure Systems」とする米国特許出願公開第2012/0205421号である。
【0075】
上述の装置の変形例は、1回の使用後に処分するように設計されることができ、又はそれらは、複数回使用するように設計することができる。いずれか又は両方の場合において、変形形態は、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整され得る。再調整は、デバイスの分解工程、それに続く特定の部品の洗浄又は交換工程、及びその後の再組立工程の任意の組み合わせを含み得る。特に、装置のいくつかの変形形態は分解することができ、また、装置の任意の数の特定の部材又は部品を、任意の組み合わせで選択的に交換するか又は取り外してもよい。特定の部品の洗浄及び/又は交換に際して、装置の特定の変形形態を、再調整用の施設において、又は手術の直前に使用者により再組み立てして、その後の使用に供することができる。当業者であれば、デバイスの再調整において、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を使用できる点を認識するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整されたデバイスは、全て本発明の範囲内にある。
【0076】
あくまで一例として、本明細書に記載される変形形態は、手術の前及び/又は後に滅菌されてもよい。1つの滅菌法では、装置をプラスチック製又はTYVEK製のバックなどの閉鎖及び密封された容器に入れる。次いで、容器及び装置を、γ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を透過し得る放射線場に置くことができる。放射線は、装置の表面及び容器内の細菌を死滅させることができる。この後、滅菌された装置を、後の使用のために、滅菌容器中で保管することができる。デバイスはまた、β線若しくはγ線、エチレンオキシド、又は水蒸気が挙げられるがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の任意の別の技術を用いて滅菌され得る。
【0077】
以上、本発明の様々な実施形態を図示及び説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者による適切な改変により、本明細書に記載される方法及びシステムの更なる適合化を実現することができる。そのような可能な改変のうちのいくつかについて述べたが、他の改変も当業者には明らかであろう。例えば、上記で論じた実施例、実施形態、形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであって、必須のものではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面において図示され、説明された構造及び動作の細部に限定されないものとして理解されたい。
【0078】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
(a)本体と、
(b)前記本体から遠位に延びているシャフト組立体と、
(c)エンドエフェクタであって、
(i)アンビルと、
(ii)下側ジョーであって、前記アンビルは、組織をクランプするために前記下側ジョーに向かって枢動可能である、下側ジョーと、を備えるエンドエフェクタと、
(d)前記下側ジョーと結合されたステープルカートリッジであって、
(i)前記アンビルに面しているデッキと、
(ii)前記デッキ内に形成された複数のステープル用開口部内に配置された複数のステープルと、
(iii)前記ステープルを前記ステープル用開口部から送り出すように構成された複数のステープルドライバであって、前記複数のステープルドライバの各ステープルドライバはステープルドライバ本体を備え、前記ステープルドライバの少なくとも一部分は、前記ステープルドライバ本体から前記アンビルに向かって延びている圧縮可能機構を更に備える、ステープルドライバと、
を備える、ステープルカートリッジと、
を備える、装置。
(2) 各圧縮可能機構は弓形部材を備える、実施態様1に記載の装置。
(3) 各ステープルドライバ本体は第1端部及び第2端部を有し、前記対応する弓形部材は前記第1端部から前記第2端部まで延びている、実施態様1に記載の装置。
(4) 各ステープルドライバは前記対応する弓形部材の下に間隙を更に画定し、前記間隙は前記弓形部材の変形に適応するように構成されている、実施態様3に記載の装置。
(5) 各ステープルドライバはステープル支持部を更に備え、各圧縮可能機構は、前記対応するステープル支持機構の各側に配置された対向する圧縮可能部材を備える、実施態様1に記載の装置。
【0079】
(6) 前記圧縮可能機構はそれぞれエラストマー材料を含む、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記圧縮可能機構は、前記圧縮可能機構による前記アンビルに対する組織の圧縮に応じて変形するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(8) 各圧縮可能機構は非発射位置から発射位置に移行するように構成されており、各圧縮可能機構は、前記発射位置において、前記アンビルを越えて突出するように構成されており、前記発射位置は、関連するステープルを前記アンビルに対して進める前記対応するステープルドライバ本体と関連付けられている、実施態様1に記載の装置。
(9) 各圧縮可能機構は、前記非発射位置において、前記デッキに対し奥まっているように構成されており、前記発射位置は、同様に前記デッキに対し奥まっている前記関連するステープルと関連付けられている、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記エンドエフェクタ内を移動するように構成された発射バーを更に備え、前記発射バーは前記ステープルドライバを前記アンビルに向かって駆動し、前記ステープルを発射位置へと移動するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
【0080】
(11) 発射バーは更に、前記発射バーが前記ステープルドライバを前記アンビルに向かって駆動すると、組織を切断するように構成されている、実施態様10に記載の装置。
(12) 前記圧縮可能機構は、前記発射バーが前記組織を切断する際に、前記アンビルに対して前記組織を圧縮するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記圧縮可能機構のそれぞれは、前記ステープルドライバ本体から上方に延びている一対の部材を備える、実施態様1に記載の装置。
(14) 前記一対の部材は、前記複数のステープルのうち対応するステープルの一部分を前記一対の部材の前記部材の間に受け入れるように構成及び配置されている、実施態様13に記載の装置。
(15) 各圧縮可能部材は、一対の脚と、前記一対の脚の間に延びるブリッジと、を備える、実施態様1に記載の装置。
【0081】
(16) 各圧縮可能部材は一組の指部を備える、実施態様1に記載の装置。
(17) 外科用ステープラのエンドエフェクタと共に使用するためのステープルカートリッジであって、
(a)カートリッジ本体であって、カートリッジデッキを含み、前記カートリッジデッキを貫通している複数のステープル用開口部を更に画定する、カートリッジ本体と、
(b)前記複数のステープル用開口部と関連付けられた複数のステープルと、
(c)前記複数のステープル用開口部及び前記複数のステープルと関連付けられた複数のステープルドライバであって、前記カートリッジデッキに向かって移動し、前記ステープルを前記ステープル用開口部から送り出すように構成されている、複数のステープルドライバと、
(d)前記複数のステープルドライバの少なくともいくつかと関連付けられた複数の圧縮可能機構であって、前記関連するステープルドライバと共に動くことができる、複数の圧縮可能機構と、
を備える、ステープルカートリッジ。
(18) 前記圧縮可能機構は、前記ステープルが組織及びアンビルに打ち込まれる際、前記ステープル用開口部内に駆動され、前記組織を前記アンビルに対して圧縮するように構成されている、実施態様17に記載のステープルカートリッジ。
(19) 外科用器具を使用する方法であって、前記外科用器具は、
(a)エンドエフェクタであって、
(i)アンビルと、
(ii)下側ジョーであって、前記アンビルは、前記下側ジョーに向かって、及び前記下側ジョーから離れる方に動くように構成されている、下側ジョーと、
(iii)前記下側ジョーに配置されたステープルカートリッジであって、
(A)複数のステープルと、
(B)複数のステープルドライバであって、各ステープルドライバは前記複数のステープルのうち対応するステープルと関連付けられており、各ステープルドライバは一体型の圧縮可能機構を含む、複数のステープルドライバと、
を備える、ステープルカートリッジと、
を備える、エンドエフェクタと、
(b)前記エンドエフェクタ内を前進し、前記ステープルドライバを前記アンビルに向かって駆動するように構成された発射部材と、
を備え、
前記方法は、
(a)前記アンビルと前記下側ジョーとの間に組織を配置することと、
(b)前記アンビルを前記ジョーに向かって動かし、前記アンビルを閉鎖位置にすることと、
(c)前記発射部材を前記エンドエフェクタ内において前進させることであって、前記発射部材の前進により前記ステープルが前記アンビルに向かって動き、前記発射部材の前進により各ステープルドライバの前記圧縮可能機構を更に駆動し、前記組織の一部分と接触させ、前記圧縮可能機構が前記組織の前記対応する部分を前記アンビルに対して圧縮する、ことと、
を含む、方法。
(20) 前記圧縮可能機構が組織の前記対応する部分を前記アンビルに対して圧縮する際、各ステープルドライバの前記圧縮可能機構は変形する、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C