特許第6786594号(P6786594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許67865944−ヒドロキシフラバノンが添加された柑橘類製品含有食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786594
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】4−ヒドロキシフラバノンが添加された柑橘類製品含有食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20201109BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20201109BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20201109BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20201109BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20201109BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20201109BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20201109BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20201109BHJP
   A23G 9/00 20060101ALI20201109BHJP
   A23G 9/42 20060101ALI20201109BHJP
   A23L 9/10 20160101ALI20201109BHJP
   A23C 9/133 20060101ALI20201109BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20201109BHJP
   A23C 9/12 20060101ALI20201109BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20201109BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20201109BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20201109BHJP
   A23L 27/12 20160101ALI20201109BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20201109BHJP
【FI】
   A23L27/00 Z
   A23L5/00 H
   A23L2/00 B
   A23L2/02 B
   A23L2/52 101
   A23L2/56
   A23L2/00 T
   A23C9/152
   A23F3/16
   A23G9/00 101
   A23G9/42
   A23L9/10
   A23C9/133
   A23C9/13
   A23C9/12
   C12G3/04
   A23L29/20
   A23L27/00 C
   A23L27/20 H
   A23L27/12
   A23L19/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-511410(P2018-511410)
(86)(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公表番号】特表2018-529330(P2018-529330A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】EP2015069971
(87)【国際公開番号】WO2017036518
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年8月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】キーフル ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】パエツ ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】ライ ヤーコプ
(72)【発明者】
【氏名】クラマー ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】リース トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ランガー カトリーン
(72)【発明者】
【氏名】キンデル ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】フェアヴォールト モリーネ
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−360188(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0151055(US,A1)
【文献】 特表2015−504077(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/008875(WO,A1)
【文献】 Journal of Food Science, 2010, Vol.75, p.C199-C207
【文献】 Journal of Sensory Studies, 2013, Vol.28, p.311-323
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
A23F
A23G
C12G
CAplus/FSTA/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 少なくとも1種の熟成が早すぎたおよび/またはHLB感染したオレンジのジュース、肉、または他の構成要素と、
(b) 少なくとも1種の式(I)
【化1】
(式中、R1は、水素またはヒドロキシ基もしくはメトキシ基を表し、*がつけられた部位(C2)の炭素原子は、(2S)型もしくは(2R)型立体配置で存在し、または両方の立体配置の任意の混合物で存在する)
の4−ヒドロキシフラバノンと
を含み、
(c) さらなる香味剤またはフレーバー調製品を含んでもよい
食品であって、ただし、構成要素(b)が、オレンジのジュース、果肉、皮または他の構成要素に対して10〜50ppmの量で存在する、食品。
【請求項2】
飲料またはデザートであることを特徴とする、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
搾りたての生のジュース、ジュース濃縮物から還元したジュース、ネクター、ザフトショーレ、ジュース含有清涼飲料、ジュース含有牛乳製品、ジュース含有炭酸飲料およびジュース含有アイスティーからなる群から選択される、オレンジ含有飲料であることを特徴とする、請求項2に記載の食品。
【請求項4】
ヨーグルト、氷菓製品、シャーベット、アイスクリーム、クリーム、プディング、チョコレート製品またはクッキー製品用のフィリング、ジャムおよび脱水ジュースまたは果物調製品からなる群から選択されるオレンジ含有デザートであることを特徴とする、請求項2に記載の食品。
【請求項5】
オレンジのジュース、肉、皮または他の構成要素が、少なくとも0.1ppmのリモニンを含有することを特徴とする、請求項1から4の少なくとも1項に記載の食品。
【請求項6】
オレンジのジュース、肉、皮または他の構成要素が、少なくとも5ppmのポリメトキシ化フラバノンを含有することを特徴とする、請求項1から5の少なくとも1項に記載の食品。
【請求項7】
オレンジのジュース、肉、皮または他の構成要素が、少なくとも200ppmのヘスペリジンを含有することを特徴とする、請求項1から6の少なくとも1項に記載の食品。
【請求項8】
オレンジのジュース、肉、皮または他の構成要素が、それぞれ最大2.5ppmのナリンゲニン、エリオジクチオールまたはホモエリオジクチオールを含有することを特徴とする、請求項1から7の少なくとも1項に記載の食品。
【請求項9】
それらの各立体異性体を含むナリンゲニン、ホモエリオジクチオールおよびエリオジクチオールからなる群から選択される少なくとも1種の式(I)の4−ヒドロキシフラバノンを、構成要素(b)として含有することを特徴とする、請求項1から8の少なくとも1項に記載の食品。
【請求項10】
前記式(I)の4−ヒドロキシフラバノンを含有し、(2S)−および(2R)−エナンチオマーが、99:1〜1:99までの質量比で存在することを特徴とする、請求項1から9の1項に記載の食品。
【請求項11】
(a) 少なくとも1種の式(I)の4−ヒドロキシフラバノンと、
(b) 少なくとも1種のさらなる香味剤と
を含む、熟成が早すぎたおよび/またはHLB感染したオレンジのジュース、果肉、皮または他の構成要素を含有する製品のための香味付け用調製品であって、式(I)の4−ヒドロキシフラバノンがオレンジのジュース、果肉、皮または他の構成要素に対して10〜50ppmの量となるように使用される、前記香味付け用調製品
【請求項12】
熟成が早すぎたおよび/またはHLB感染したオレンジの製品の酸味および味を低減するための方法であって、
(i) 酸味および味を改善すべき熟成が早すぎたおよび/またはHLB感染したオレンジのジュース、果肉、皮または他の構成要素を含む製品を用意する工程と、
(ii) 式(I)の4−ヒドロキシフラバノンがオレンジのジュース、果肉、皮または他の構成要素に対して10〜50ppmの量となるように、少なくとも1種の式(I)の4−ヒドロキシフラバノンまたは式(I)の4−ヒドロキシフラバノンを含有するフレーバー調製品を添加するまたは特に生成する工程と
を含む、方法。
【請求項13】
熟成が早すぎたおよび/またはHLB感染したオレンジのジュース、果肉、皮または他の構成要素を含む製品の酸味および味を改善するための、式(I)の4−ヒドロキシフラバノンまたは式(I)の4−ヒドロキシフラバノンを含有するフレーバー調製品の使用であって、式(I)の4−ヒドロキシフラバノンがオレンジのジュース、果肉、皮または他の構成要素に対して10〜50ppmの量となるように使用する、上記使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の分野に関するものであり、これらの食品の不快な味、特に酸味および苦味の低減を目的として4−ヒドロキシフラバノンが添加された、柑橘類製品、特にオレンジ製品を含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
主に様々な柑橘類種の果物から製造された食品、特に飲料は、国際的な食品市場において、際立った役割を果たしている。ここでは特に、生のジュースまたは濃縮物から還元したジュースの形態のオレンジジュース(シトラス・シネンシスL.(Citrus x sinensis L.)またはシトラス・アウランティウム(Citrus x aurantium))およびネクターまたはフルーツジュース飲料等のオレンジジュースを主体とした食品に言及する。一般的な柑橘類/オレンジ芳香に加えて、特に、酸味の印象およびある程度の苦さと相まってバランスのとれた甘さが、このような飲料の官能品質において重要である。
【0003】
この数年間で、キジラミ上科(Psylloidea)によって広まる黄竜病細菌(例えば、リベロバクターssp.(Liberobacter ssp.)、いわゆる「グリーニング病」)へのプランテーションの果樹の感染が増えており、これにより、発育が不十分で熟成不良の果物が生じている。発育が不十分で熟成不良の果物から得られたジュースは通常、健常な果物の材料から得られたジュースより甘さが減じており、大幅に酸っぱくなっている。さらに、許容または必要とされる要素をはるかに上回る、大幅に強まった苦さが認識される。特定の比率までならば、感染しているがそれ自体は食べられる果物は、ジュースまたはジュース製品として許容され得るが、比率が高くなりすぎた場合、特に酸味および苦さを消費者がはっきりと認識可能であり、不満をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個別的な限界濃度を超過している柑橘類の果物からできたいくつかの原材料が苦味および酸味の原因であることが、EP2494874B1(TROPICANA PRODUCS)から公知であるが、どのようにしてこれらの物質を低減して、適切な味が付いた製品を得ることができるのかについては、厳密な教示が与えられていない。このような低減の実施を可能とする方法が技術水準から公知である限り、さらなる原材料の損失または芳香プロファイルの変化が起こるであろうが、この変遷は、許容されない。最も簡単な方法は、ショ糖またはフルクトースの添加であるが、これらの添加は、数多くの用途において、規制上の理由のため、許可されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、低濃度においてすでに、酸っぱくて苦い味がする食品、したがって、一般に柑橘類製品、特にオレンジ製品の不快な味、特に酸味および苦味を低減または打ち消すことができる、香味剤または香味剤の混合物を発見することが本発明の目的であり、好ましくは、甘味を向上することも本発明の目的であった。さらに、添加剤は、天然のものにすべきであり、好ましくは、ミカン属の原材料によって得ることができるようにすべきである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の第1の態様は、
(a) 少なくとも1種の柑橘類の果物のジュース、中果皮(marrow)、果肉もしくは皮または他の構成要素と、
(b) 少なくとも1種の式(I)
【化1】
(式中、R1は、水素またはヒドロキシ基もしくはメトキシ基を表し、*がつけられた部位(C2)の炭素原子は、(2S)型もしくは(2R)型立体配置で存在し、または両方の立体配置の任意の混合物で存在する)
の4−ヒドロキシフラバノンと
を含有し、
(c) さらなる香味剤またはフレーバー調製品を含有してもよい
食品であって、ただし、構成要素(b)が、構成要素(a)の酸味および/または苦味を改善するのに十分な量で存在する、食品に関する。
【0007】
例えば、4−ヒドロキシフラバノン、ナリンゲニンおよびエリオジクチオールは通常、柑橘類の果物中で結合したグリコシドとしてののみ存在し、したがって、例えば、オレンジジュース中に1〜50ppmまでの範囲のナリルチン(ナリンゲンルチノシド)として存在し(Gil-lzquierdo, A.; Gil, M. I.; Ferre res, F.; Tomas-Barberan, F. A., "In Vitro Availability of Flavonoids and Other Phenolics in Orange Juice" J. Agric. Food Chem. 2001, 49, (2), 1035-1041)、またはレモン(シトラス・レモン(Citrus lemon))もしくはグレープフルーツ(シトラス・マキシマ(Citrus maxima))中にナリンギン(ナリンゲニンネオヘスペリジオシド)として存在する。オレンジにおいては、レモンおよびライムとは対照的に、エリオジクチオールは、わずかにのみ記述されていた。ホモエリオジクチオールは、柑橘類の果物、特にオレンジにおいて、まだ記述されていなかった。
【0008】
遊離形態のナリンゲニン、ヘスペレチンおよびエリオジクチオールは、本発明による効果のために十分な濃度(5ppm超)でオレンジジュース中に存在しない。したがって、Yanez, J. A.; Remsberg, C. M.; Miranda, N. D.; Vega-Villa, K. R.; Andrews, P. K.; Davies, N. M., "Pharmacokinetics of selected chiral flavonoids: hesperetin, naringenin and eriodictyol in rats and their content in fruit juices" Biopharmaceutics & Drug Disposition 2008, 29, (2), 63-82において、ナリンゲニンは、オレンジジュース中に最大0.5ppmの状態で記述されていた。エリオジクチオールは、微量のみ存在し、ホモエリオジクチオールは、記述されていなかった。しかしながら、グレープフルーツジュースにおいて、最大約2.06ppmの量のナリンゲニンが認められているが、これは、大抵の場合、マスキング効果を帯びるためには低すぎる濃度であり、特に同じジュースに、250倍の濃度の非常に苦いナリンギンが認められたためであるが、この非常に苦いナリンギンは、オレンジ中に存在せず、したがって、その苦さの原因ではない。レモンジュースまたはライムジュース含有飲料においては、オレンジ飲料とは対照的に、最大28ppmのエリオジクチオールが認められており、この場合、当然ながら、極めて強い酸味をまとっている。
【0009】
したがって、少なくとも5ppmという有効量の4−ヒドロキシフラバノン(柑橘類構成要素に関する)を、酸っぱくて苦い柑橘類製品、特にオレンジジュース含有食品に添加することにより、酸っぱい知覚がはっきりと低減され、同時に、顕著に苦さも顕著に低下し、並行して、甘さがはっきりと強まることは、驚くべきことだった。特に、pH値が未変化であるにもかかわらず、大きく低減された酸っぱい知覚が知覚されることは、驚くべきことである。これにより、酸味を弱めることもまた、甘さの知覚を強めないでも達成される。
【0010】
食品
【0011】
本発明の食品は、好ましくは、飲料またはデザートである。
【0012】
柑橘類含有飲料の例は、搾りたての生のジュース、ジュース濃縮物から還元したジュース、ネクター、ザフトショーレ(saftschorle)、ジュース含有清涼飲料、ジュース含有牛乳製品、ジュース含有炭酸飲料およびジュース含有アイスティーからなる群を構成する。
【0013】
柑橘類含有デザートの例は、ヨーグルト、氷菓製品、シャーベット、アイスクリーム、クリーム、プディング、チョコレート製品またはクッキー製品用のフィリング、ジャムおよび脱水ジュースまたは果物調製品からなる群において見出される。
【0014】
柑橘類製品
【0015】
本発明の意味において、柑橘類製品という用語は、柑橘類の果物のジュース、中果皮、果肉、皮およびすべてのさらなる構成要素だと理解すべきであり、下記においては、群(a)の同義語として使用されている。オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、マンダリンおよびこれらの混合物は、苦味および/または酸味を改善すべき柑橘類の果物に属する。
【0016】
特に、群(a)は、ミカン属に由来したオレンジの品種(シトラス・シネンシスL.またはシトラス・アウランティウム、Var.ハムリン(Var.Hamlin)、バレンシア(Valencia))、特に、アルベド部分を含有するまたは含有しない、パルプを含有するまたは含有しない、ジュース、ジュース濃縮物、ジュース画分等、HLB感染樹からできたある比率の熟成が早すぎたまたは熟成不良のオレンジに由来した製品といった、酸っぱくて苦いオレンジ製品を含む。
【0017】
柑橘類製品には、好ましくは、最低濃度の特定の苦い物質および最大濃度の天然4−ヒドロキシフラバノン、特に
− 少なくとも0.1ppm、特に約3〜5ppmまでのリモニン、
− 少なくとも5ppm、特に8〜15ppmまでのポリメトキシ化フラバノン、
− 少なくとも200ppm、特に300〜600ppmまでのヘスペリジン、
− 最大2.5ppm、特に最大1ppmの各ナリンゲニン、エリオジクチオールまたはホモエリオジクチオール
が当てはまり、上記仕様はそれぞれ、化合物(a)に関する。
【0018】
さらに、群(a)を形成する柑橘類製品は、3〜6までの範囲のpH値を有するべきである。
【0019】
4−ヒドロキシフラバノ
【0020】
4−ヒドロキシフラバノは、有機化学において一般的な方法によって得ることができる、公知の天然化合物である。好ましくは、構成要素(b)として、
【化2】

が含まれる。
【0021】
本発明の教示は、4−ヒドロキシフラバノが、4−ヒドロキシフラバノの各立体異性体の任意選択による形態で存在することを含む。本発明の好ましい一実施形態において、食品は、式(I)の4−ヒドロキシフラバノンを含有し、(2S)−および(2R)−エナンチオマーが、99:1〜1:99まで、特に約90:10〜約45:55までの質量比で存在する。
【0022】
化合物(a)に対して約5〜約1000ppmまで、特に約30〜約250ppmまで、特に好ましくは約50〜約100ppmまでの量で添加されたまたは特に生成された式(I)の4−ヒドロキシフラバノが存在する場合、酸味および/または苦味の相殺は、十分である。
【0023】
香味剤
【0024】
食品は、構成要素(c)としてさらなる香味剤またはフレーバー調製品を含有してもよい。これらは、不快な味の印象の改変もしくはマスキングおよび/または快い味の印象の向上のための物質から選択することができる。矯味剤は好ましくは、次の群から選択される:EP2,368,442B1またはEP1,909,599−B1に記載のヘスペレチン、例えば2,4−ジヒドロキシ安息香酸バニリルアミド(特に、WO2006/024587に記載のもの等)のようなヒドロキシ安息香酸アミド、4−ヒドロキシジヒドロカルコン(好ましくは、US2008/0227867A1およびWO2007/107596に記載のもの)、ここでは特にフロレチンおよびダビジゲニン、WO2007/014879に開示のヘスペレチンまたは米国仮特許出願第61/333,435号(Symrise)および米国仮特許出願第61/333,435号に基づく特許出願に記載のルブス・スアウィッシムス(Rubus suavissimus)からの抽出物、EP2,253,226に記載の3,7’−ジヒドロキシ−4’−メトキシフラバン異性体、EP2,298,084B1に記載のフィロズルチン異性体またはフィロズルチンを含有する抽出物、EP2,353,403B1に記載の1−(2,4−ジヒドロキシ−フェニル)−3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−プロパン−1−オン、EP2,570,036B1に記載のネオイソフラボノイド、EP2,008,530A1に記載のペリトリンおよびペリトリン由来のフレーバー調製品、特にEP2,517,574に記載のバニリルリグナン、EP2,570,035−B1に記載のネオイソフラボノイド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(dhydrochalkone)、ヘスペレチンジヒドロカルコン、ヘスペリジンジヒドロカルコン、ナリンギンジヒドロカルコン、フロリジン、トリロバチン、ステビオシドおよび/またはレバウジオシド、特にWO2015,062,998に記載の異なるレバウジオシドの様々な混合物、EP2,386,211に記載のルブソシド、WO2012,164,062に記載のルブソシド異性体およびホモログ、モグロシド、アブルソシドならびに/またはバランシン(balansine)の混合物。
さらなる香味剤またはフレーバー調製品は、揮発性香味剤のリスト、例えば、それらの物質の任意選択による立体異性体、エナンチオマー、位置異性体、ジアステレオマー、シス/トランス異性体またはエピマーの形態である、アセトアルデヒド、アセトフェノン、α−カジノール、α−コパエン、α−クベベン、α−フムレン、α−ピネン、α−テルピネン、α−テルピネオール、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、β−コパエン、β−クベベン、β−シクロシトラール、β−エレメン、β−ロノン、β−ミルセン、β−オシメン、β−ピネン、ブタノール、ブチルアセテート、カンフェン、カリオフィレン、cis−4−デセナール、cis−4−ヘプテナール、cis−3−ヘキセナール、cis−3−ヘキセノール、cis−8−テトラデセナール、シトラール、シトロネロール、シトロネラール、シトロネリルアセテート、クベノール、デカナール、デカノール、デシルアセテート、(e,e)−2,4−デカジエナール、δ−3−カレン、δ−カジノール、δ−カレン(carenee)、ジヒドロノートカトン、ジメチルアントラニレート、ドデカナール、ドデカノール、ドデセナール、エレモール、エトキシエチルアセテート、エチル−2−ヘキサノール、エチル−2−メチルブチレート、エチル−3−ヒドロキシヘキサノエート、エチル−3−ヒドロキシオクタノエート、エチルアセテート、エチルブチレート、エチルカプリネート、エチルカプロネート、エチルカプリレート、エチルクロトネート、エチルプロピオネート、ユーカリプトール、オイゲノール、フェンコール、γ(gama)−オイデスモール、γ−ブチロラクトン、γ−テルピネン、ゲラニアール、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、ヘプタナール、ヘプタノール、ヘプチルアセテート、ヘキサナール、ヘキサノール、ヘキシルアセテート、イソアミルアルコール、イソブタノール、イソカスカリラ酸(isocascarilla acid)、イソピペリテノール、イソプレゴール、リモネン、リナロール、12−メチルトリデカナール、メンタジエノール、メンタジエン、メチル−3−ヘキサノエート、メチル−3−ヒドロキシオクタノエート、メチレート(methtyrat)、メチルカプロネート、メチルカプリレート、メチルジヒドロジャスモネート、メチルサリチレート、(e,e)−2,4−ノナジエナール、ネラール、ネロール、ネリルアセテート、ノナナール、ノナノール、ノートカテン、ノートカトール、ノートカトン、オクタナール、オクタノール、オクチルアセテート、ペンタノール、ペリルアルデヒド、フェニルエタノール、ピペリテノン、ロツンドン、シネンサール、テルピノレン(terpinoiene)、trans−2−エチルヘキセノエート、trans−2−ヘプテナール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ノネナール、trans−2−オクテナール、trans−2−ペンテナール、2−ウンデセナール、ウンデカナール、バレンセン、1(l)−ペンテン−3−オンから選択することができる。
【0025】
香味付け用調製品
【0026】
本発明のさらなる一実施形態は、
(a) 少なくとも1種の式(I)の4−ヒドロキシフラバノンと、
(b) 少なくとも1種のさらなる香味剤と
を含有する、フレーバー調製品に関する。
【0027】
上記調製品中の一般に4−ヒドロキシフラバノン、特にナリンゲニン、ホモエリオジクチオールおよび/またはエリオジクチオールの比率は、0.1〜99.9質量%まで、好ましくは約0.5〜約25質量%まで、特に約1〜約10質量%までであってよい。さらなる香味剤として、上記に列記された物質も対象となる。香味剤は、カプセル化および/もしくは吸着および/もしくは乳化されていてもよいし、またはこのような形態で調製品に添加されていてもよい。
【0028】
カプセル
【0029】
群(b)を形成する4−ヒドロキシフラバノおよびこれらの物質を含有してもよいフレーバー調製品は、カプセル化された形態で存在し得、カプセルとして食品に添加することができる。カプセルは、少なくとも1つの連続膜によってコーティングされた少なくとも1個の固体状または液体状の核を含有する球体状の凝集物だと理解されるように意図されている。フレグランスは、コーティング材料によってカプセル化することができ、したがって、約0.1〜約5mmまでの直径を有するマクロカプセルまたは約0.0001〜約0.1mmまでの直径を有するマイクロカプセルとして存在し得る。
【0030】
コーティング材料
【0031】
適切なコーティング材料は例えば、デンプンの代謝産物および化学的または物理的に生成された誘導体(特に、デキストリンおよびマルトデキストリン)を含むデンプン、ゼラチン、アラビアゴム、寒天、ガティガム、ジェランガム、改質セルロースおよび無改質セルロース、プルラン、カードラン、カラギーナン、アルギン酸、アルギネート、ペクチン、イヌリン、キサンタンガムならびにこれらの物質のうちの2種以上の混合物である。
【0032】
固体コーティング材料は好ましくは、20以上、好ましくは24以上の硫黄係数を有することが好ましい、ゼラチン(特に、ブタ、ウシ、家禽および/または魚のゼラチン)である。これらの物質の中でもとりわけ、ゼラチンは、十分に入手可能であり、異なる膨潤係数を伴うように得ることができるため、特に好ましい。
【0033】
10〜20までの範囲の値を有することが好ましいマルトデキストリン(特に、穀物、特にトウモロコシ、コムギ、タピオカまたはジャガイモを主体とするもの)は、同様に好ましい。さらに好ましいのは、セルロース(例えば、セルロースエーテル)、アルギネート(例えば、アルギン酸ナトリウム)、カラギーナン(例えば、β−、ι−、λ−、および/またはκ−カラギーナン、アラビアゴム、カードラン(cirdlan)および/または寒天である。
【0034】
アルギネートカプセルは、例えば次の文献EP0389700A1、US4,251,195、US6,214,376、WO2003055587またはWO2004050069A1において克明に記述されているため、さらに好ましい。
【0035】
さらなる好ましい一実施形態において、カプセルの膜は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、または、カチオン性モノマーもしくはバイオポリマー(例えば、Chitosamのようなもの)および(メタ)アクリレートもしくはアルギネート等のアニオン性モノマーのコアセルベーション生成物からなる。
【0036】
カプセル化のための方法
【0037】
カプセルは一般に、成膜ポリマーによってコーティングされた微細分散した液相または固相であり、カプセルの製造においては、乳化およびコアセルベーションまたは表面重合後に、成膜ポリマーが、コーティングすべき材料上に沈殿する。別の方法によれば、溶融ワックスは、マトリックス(「マイクロスポンジ」)中に取り込まれており、マトリックスは、ミクロ粒子として、成膜ポリマーによってさらにコーティングすることができる。第3の方法によれば、粒子は、異なる電荷の高分子電解質によって交互にコーティングされている(「交互積層」方法)。微視的に小さなカプセルは、粉末として乾燥させることができる。単核マイクロカプセルに加えて、ミクロスフィアとも呼ばれる多核凝集物も同様に公知であり、ミクロスフィアは、連続膜材料中に分配された2個以上の核を内包する。単核または多核マイクロカプセルは、さらなる第2の膜、第3の膜等によってさらにコーティングすることができる。この膜は、天然材料、半合成材料または合成材料からなり得る。天然膜材料は、例えば、アラビアゴム、寒天、アガロース、マルトデキストリン、アルギン酸およびアルギン酸塩、例えば、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウム、脂肪および脂肪酸、セチルアルコール、コラーゲン、キトサン、レシチン、ゼラチン、アルブミン、シェラック、デンプンまたはデキストラン等の多糖、ポリペプチド、タンパク質加水分解物、スクロースならびにワックスである。半合成膜材料は、他のものの中でもとりわけ、化学修飾セルロース、特にセルロースエステルおよびエーテル、例えば、セルロースアセテート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースならびにデンプン誘導体、特にデンプンエーテルおよびエステルである。合成膜材料は、例えば、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンのようなポリマーである。
【0038】
技術水準のマイクロカプセルの例は、次の商用製品(それぞれの膜材料は、丸かっこの中に与えられている):Hallcrest Microcapsule(ゼラチン、アラビアゴム)、Coletica Thalasphere(海洋性コラーゲン)、Lipotec Millicapsule(アルギン酸、寒天)、Induchem Unisphere(ラクトース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Unicerin C30(ラクトース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Kobo Glycosphere(変性デンプン、脂肪酸エステル、リン脂質)、Softsphere(改質寒天)およびKuhs Probiol Nanosphere(リン脂質)ならびにPrimasphereおよびPrimasponge(キトサン、アルギネート)ならびにPrimasys(リン脂質)である。
【0039】
キトサンマイクロカプセルおよび当該カプセルの製造のための方法は、技術水準[WO01/01926、WO01/01927、WO01/01928、WO01/01929]において周知である。膜および活性物質を含有するマトリックスからなる、0.0001〜5mmまでの範囲、好ましくは0.001〜0.5mmまでの範囲、特に0.005〜0.1mmまでの範囲の平均直径を有するマイクロカプセルは、
(a) ゲル化剤、カチオン性ポリマーおよび活性物質からマトリックスを調製する工程と、
(b) 場合により、油相中にマトリックスを分散させてもよい工程と、
(c) 場合により、分散されたマトリックスをアニオン性ポリマーの水溶液によって処理し、これにより油相を除去する工程と
によって得ることができる。
【0040】
工程(a)および工程(c)は、工程(a)のカチオン性ポリマーをアニオン性ポリマーによって置きかえることによって、またはこの逆にすることによって、可変的にされているものである。
【0041】
カプセルは、荷電が異なる高分子電解質の層によって交互に活性物質をコーティングすることによって、製造することもできる(交互積層技術)。この点について、欧州特許第EP1064088B1号(Max−Planck Gesellschaft)を参照する。
工業用途
【0042】
本発明のさらなる一態様は、柑橘類の果物の製品の酸味および/または苦味を低減する方法であって、
(i) 酸味および/または苦味を改善すべき柑橘類の果物の製品を用意する工程と、
(ii) 柑橘類構成要素に対して好ましくは約5〜約1000ppmまで、特に約30〜約250ppmまでである、味を改善する量の少なくとも1種の式(I)の4−ヒドロキシフラバノンを添加するまたは特に生成する工程と
を含む、方法に関する。
【0043】
当然ながら、4−ヒドロキシフラバノの代わりに、4−ヒドロキシフラバノを含む香味付け用混合物を使用することもできる。
【0044】
柑橘類の果物の製品の酸味および/または苦味の改善のための、式(I)の4−ヒドロキシフラバノンまたは式(I)の4−ヒドロキシフラバノンを含むフレーバー調製品の使用であって、添加される量または特に生成される量がやはり、柑橘類構成要素に対して好ましくは約5〜約1000ppmまで、特に約30〜約250ppmまでである、使用が、さらに特許請求されている。
【0045】
構成要素および添加剤の好ましい選択ならびに量の表示が上記でなされている限り、この選択および表示は、それらの反復を必要とすることなく、本発明による方法および使用にも当てはまる。
【実施例】
【0046】
(例1〜例5)
少なくとも5ppmのリモニンを有する熟成が早すぎた果物および/またはHLB感染果物から得られた、オレンジジュースの酸っぱい知覚および苦さのマスキング
【0047】
分析によれば7.8ppmのリモニンを含有する商用オレンジジュースを実験のために使用したが、パネリストからは大抵の場合、苦すぎると評価された。これにより、パネリスト(n=6)は、体系化されていない0(味なし)〜10(強い味)までの尺度により、「甘い」、「苦い」および「酸っぱい」という3種の属性を評価している。1つの試料において、パネリストは、オレンジジュースのみを受け取り、さらなる試料において、パネリストは、表の1つに列記されたある量の4−ヒドロキシフラバノンを追加されたオレンジジュースを受け取った。これにより、順番は、任意選択によるものとなり、パネリストには、事前に分かっていなかった。下記表1において、6人のパネリストによる評価の結果がまとめられている。
【0048】
【表1】
【0049】
例が示しているように、それ自体は20ppmという低濃度のナリンゲニンは、苦味をはっきりと低減し、酸っぱい印象を弱め、同時に、甘い印象を強め、検査されたオレンジジュースの総合的な味のプロファイルを改善している。下記表2において、エリオジクチオールの添加の結果が提供されている。
【0050】
【表2】
【0051】
例が示しているように、10ppmという低濃度のエリオジクチオールもまた、苦味を大きく低減し、酸っぱい知覚を弱め、甘い印象を強め、この結果、検査されたオレンジジュースの総合的な味のプロファイルを改善している。下記表3および表4において、ホモエリオジクチオールナトリウム塩の添加の結果が提供されている。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
例が示しているように、30ppmの量のホモエリオジクチオールナトリウム塩はすでに、苦味をはっきりと低減し、酸っぱい印象を弱め、ここで、甘味に影響を及ぼさない。50ppmにおいて、特に酸っぱい知覚がより強く影響され、したがって、ホモエリオジクチオールナトリウム塩は、検査されたオレンジジュースの総合的な味のプロファイルを改善している。下記表5において、エリオジクチオールおよびナリンゲニンの結果が提供されている。
【0055】
【表5】
【0056】
組合せ実験CおよびDは、ホモエリオジクチオールとエリオジクチオールとの混合物(1E−C)およびナリンゲニンとエリオジクチオールとの混合物(1E−D)の効果は、大幅に改善された効果をさらにもたらしており、特に苦くて酸っぱい知覚を低減しており、同時に、飲料の甘い知覚が、はっきりと高められたことを示している。
【0057】
オレンジジュース要素を有する飲料の分野からの応用例
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
配合物Bの製造のために、乾燥した物質を水中に溶解させ、77〜78°までのブリックス値になるまで、ペクチンおよびクエン酸ナトリウムと一緒に106℃で約3〜5分沸騰させる。続いて、オレンジジュース濃縮物とフレーバーとを混合する。わずかな冷却後、塊を型に素早く充填し、冷却する。
【0061】
【表8】
【0062】
製造のために、乳化剤および安定剤を糖と混合し、水中に溶解させ、グリコースシロップを添加し、溶解させる。続いて、混合物を低温殺菌し、冷却する。混合物中に、芳香構成要素およびフルーツジュース濃縮物を添加し、pH値を50%クエン酸溶液によって3.8〜4.2に調節し、組成物を、40〜80%オーバーランしている製氷機内でフライする。
【0063】
【表9】
【0064】
製造
糖を水によって溶解させる。さらなる原材料を添加し、溶解させる。低温殺菌し、冷却する。
【0065】
【表10】
【0066】
製造
ビール用主材料を糖および水によって溶解させる。さらなる原材料を添加し、溶解させる。低温殺菌し、冷却する。