特許第6786601号(P6786601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786601
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】介助装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20201109BHJP
   A61G 7/14 20060101ALI20201109BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   A61G5/14
   A61G7/14
   G05B9/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-527331(P2018-527331)
(86)(22)【出願日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2016070794
(87)【国際公開番号】WO2018011938
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡志
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−211709(JP,A)
【文献】 特開2001−213190(JP,A)
【文献】 特開2009−217848(JP,A)
【文献】 特開2010−208760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00− 7/16
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続されたときに動作して、所定の介助動作を駆動するモータと、
前記電源に接続されたときに、安全条件が満たされていると前記モータを前記電源に接続し、前記安全条件が満たされていないと前記モータを前記電源から遮断する安全回路と、
前記電源と前記安全回路との間に接続された電源スイッチと、を備えた介助装置であって、
前記安全条件として前記電源スイッチの導通状態を含み、
前記安全回路は、
前記安全条件を電気信号の形態で入力する入力回路と、
前記入力回路の状態に応じて、前記電源と前記モータとの間を導通状態および遮断状態に切り替え制御する出力回路と、
を有し、
前記入力回路は、前記安全条件が満たされていると導通状態になり、前記安全条件が満たされていないと遮断状態になり、
前記出力回路は、前記電源と前記モータとの間を導通状態および遮断状態に切り替え操作する出力部、ならびに、前記入力回路の前記導通状態で前記出力部を前記導通状態に切り替え、前記入力回路の前記遮断状態で前記出力部を前記遮断状態に切り替える入力部を有したリレーで構成される、
助装置。
【請求項2】
電源に接続されたときに動作して、所定の介助動作を駆動するモータと、
前記電源に接続されたときに、安全条件が満たされていると前記モータを前記電源に接続し、前記安全条件が満たされていないと前記モータを前記電源から遮断する安全回路と、
前記電源と前記安全回路との間に接続された電源スイッチと、を備えた介助装置であって、
前記安全条件として前記電源スイッチの導通状態を含み、
前記電源スイッチは、第1接点および第2接点を同時に開閉操作する2極スイッチであり、前記第1接点が前記電源と前記安全回路との間に接続され、前記第2接点が前記安全条件に用いられる
助装置。
【請求項3】
電源に接続されたときに動作して、所定の介助動作を駆動するモータと、
前記電源に接続されたときに、安全条件が満たされていると前記モータを前記電源に接続し、前記安全条件が満たされていないと前記モータを前記電源から遮断する安全回路と、
前記電源と前記安全回路との間に接続された電源スイッチと、を備えた介助装置であって、
前記安全条件として前記電源スイッチの導通状態を含み、
前記電源スイッチからみて前記安全回路に並列接続されるとともに、前記電源と前記モータとの間に接続されて、前記モータの動作を調節するモータドライバ、および、
前記電源スイッチからみて前記安全回路に並列接続され、前記モータドライバを制御するモータ制御部をさらに備えた
助装置。
【請求項4】
前記安全条件は前記モータ制御部の動作状況を含む、請求項3に記載の介助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを電源から遮断する安全回路を備えた介助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進展に伴い、各種の介助装置のニーズが増大している。例えば、被介助者の移乗介助、移動介助、排泄介助などを行う介助装置は、介助の一環としての起立補助や着座補助の機能を具備する。介助装置の導入により、介助者の身体的な負担が軽減されて腰痛などの予防につながるとともに、介護士の人手不足も緩和される。この種の介助装置では、一般的に、可動部の駆動源としてモータが用いられる。さらに、介助装置を確実に停止させる目的で、非常停止ボタンや安全回路などが付設される場合がある。この種の介助装置の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の起立動作支援ロボットは、被介護者を支持する支持部を有したロボット本体と、支持部の動作を制御するコントローラと、を備えている。実施形態の説明によれば、コントローラに相当する手動パルス発生器は、非常停止ボタンを備えている。これにより、非常停止ボタンが押されると、サーボモータへの通電が強制的に遮断されるとともにブレーキが作用して、ロボット本体は現状を保持したままで停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−158386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非常停止ボタンや安全回路を用いてモータを停止するという概念は、もともと産業用機器を対象として考えられたものである。そのため、この概念を民生用機器である介助装置に適用しても、ユーザとしては受け入れ難い面がある。つまり、非常停止ボタンの存在は、介助装置が必ずしも安全でないことを連想させるため、介助装置のイメージを低下させる一因となっている。
【0006】
非常停止ボタンや安全回路を備えない一般的な民生用機器では、異常や緊急事態が発生した場合に主電源を切るという手段が講じられる。その理由は、停止させる手段が他に無いこと、および、主電源を切れば確実に停止するという考えがユーザに広く浸透していることによる。しかしながら、安全回路を備えた介助装置では、電源スイッチを遮断操作しても、確実な停止を担保できない。
【0007】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、非常停止ボタンを備えずとも、電源スイッチおよび安全回路によって確実な停止を担保できる介助装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の介助装置は、電源に接続されたときに動作して、所定の介助動作を駆動するモータと、前記電源に接続されたときに、安全条件が満たされていると前記モータを前記電源に接続し、前記安全条件が満たされていないと前記モータを前記電源から遮断する安全回路と、前記電源と前記安全回路との間に接続された電源スイッチと、を備えた介助装置であって、前記安全条件として前記電源スイッチの導通状態を含み、前記安全回路は、前記安全条件を電気信号の形態で入力する入力回路と、前記入力回路の状態に応じて、前記電源と前記モータとの間を導通状態および遮断状態に切り替え制御する出力回路と、を有し、前記入力回路は、前記安全条件が満たされていると導通状態になり、前記安全条件が満たされていないと遮断状態になり、前記出力回路は、前記電源と前記モータとの間を導通状態および遮断状態に切り替え操作する出力部、ならびに、前記入力回路の前記導通状態で前記出力部を前記導通状態に切り替え、前記入力回路の前記遮断状態で前記出力部を前記遮断状態に切り替える入力部を有したリレーで構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の介助装置では、安全回路の安全条件として電源スイッチの導通状態を含む。これによれば、電源スイッチが遮断操作された瞬間に安全条件が満たされなくなるので、仮に安全回路が継続して動作しても時間遅れなくモータを電源から遮断できる。さらに、モータは、安全回路や他の電気負荷からも切り離される。したがって、モータは、電気エネルギが供給されず、確実に停止する。換言すると、非常停止ボタンを備えずとも、電源スイッチおよび安全回路によって介助装置の確実な停止を担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の介助装置を斜め後方から見た斜視図である。
図2】介助装置の構成および座位姿勢にある被介助者を示す側面図である。
図3】実施形態の介助装置の電気回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.実施形態の介助装置1の構成)
本発明の実施形態の介助装置1について、図1図3を参考にして説明する。図1は、実施形態の介助装置1を斜め後方から見た斜視図である。また、図2は、介助装置1の構成および座位姿勢にある被介助者Mを示す側面図である。図2に示される被介助者Mを基準にして、図1に示されるように前後方向、左右方向、および上下方向を定める。なお、図2において、固定カバー23、昇降カバー33、電源61、およびモータ制御部62は図示省略されている。
【0012】
介助装置1は、床面F上の椅子Cに座った被介助者Mの座位姿勢から立位姿勢への起立動作、および立位姿勢から座位姿勢への着座動作の少なくとも一方を介助する。さらに、介助装置1は、立位姿勢の被介助者Mを乗せた状態で、介助者の操作により移動可能となっている。これにより、介助装置1は、被介助者Mの移乗介助および移動介助が可能となっている。介助装置1は、基台2、昇降部3、揺動部4、支持部5、電源61、およびモータ制御部62などで構成されている。
【0013】
基台2は、フレーム21、支柱22、固定カバー23、足載置台24、下腿当て部25、および6個の車輪26〜28などで構成されている。フレーム21は、床面Fの近くにほぼ水平に設けられる。支柱22は、フレーム21の前寄りの左右方向の中央から上方に向かって立設されている。支柱22の略矩形断面の内部空間に、後述する昇降駆動部32が配置される。固定カバー23は、支柱22および後述する昇降部材31の下部の周りを覆って保護する。
【0014】
足載置台24は、フレーム21の上面後方に固定されて、ほぼ水平に設けられる。足載置台24の上面に描かれた足形の接地マーク241は、被介助者Mが足を乗せる位置を案内する。下腿当て部25は、左右一対の支持アーム251によって、足載置台24の上方に配設される。フレーム21の下側の前寄りに、左右一対の前車輪26が設けられている。足載置台24の下側に、左右一対の中車輪27および左右一対の後車輪28が設けられている。6個の車輪26〜28の転舵機能により、介助装置1は、前後方向の移動および方向転換だけでなく、横移動(真横への移動)や超信地旋回(その場旋回)が可能となっている。
【0015】
昇降部3は、昇降部材31、昇降駆動部32、および昇降カバー33などで構成されている。昇降部材31は、上下方向に長い長尺部材であり、支柱22の後面に上下動可能に支持されている。昇降部材31の上部は後方に突出しており、突出した後端寄りに揺動支持部34が設けられている。昇降部材31の上部の内部空間には、後述する揺動駆動部42が配置される。支柱22の内部空間に配置された昇降駆動部32は、駆動源として昇降用モータ35(図3に示す)を有する。昇降用モータ35は、電源61に接続されると正転動作または逆転動作し、所定の介助動作として昇降部材31の上下動を駆動する。昇降カバー33は、昇降部材31とともに上下動し、昇降部材31および支柱22の周りを覆って保護する。
【0016】
揺動部4は、揺動アーム部材41および揺動駆動部42などで構成され、第1ハンドル43が付設される。揺動アーム部材41は、昇降部材31の揺動支持部34に揺動可能に支持されている。昇降部材31の上部の内部空間に配置された揺動駆動部42は、駆動源として揺動用モータ45(図3に示す)を有する。揺動用モータ45は、電源61に接続されると正転動作または逆転動作し、所定の介助動作として揺動アーム部材41を前後方向に揺動駆動する。揺動アーム部材41には、四角形の枠形状の第1ハンドル43、および支持部5が取り付けられている。第1ハンドル43は、被介助者Mおよび介助者によって把持される。
【0017】
支持部5は、胴体受部52および左右一対の脇受部53などで構成され、第2ハンドル54が付設される。胴体受部52は、クッション材を用いて被介助者Mの胴体形状に近い面状に形成されており、柔軟に変形して被介助者Mの胴体を下方から支持する。左右一対の脇受部53は、胴体受部52の左右に設けられている。脇受部53は、被介助者Mの両脇を下方から支持する。これにより、胴体受部52および脇受部53は、被介助者Mの上半身を安定して支持できる。第2ハンドル54は、胴体受部52の前下側に一体的に付設される。第2ハンドル54は、主に介助者によって把持される。
【0018】
電源61は、フレーム21の上側の支柱22の左右に設けられている。電源61は、昇降用モータ35、揺動用モータ45、およびモータ制御部62に共用とされている。電源61として、充放電を繰り返して行えるバッテリを例示でき、これに限定されない。
【0019】
モータ制御部62は、右側の電源61の上に配設されている。モータ制御部62は、例えば、ソフトウェアで動作するコンピュータを実装したプリント基板を用いて構成される。モータ制御部62は、電源スイッチ63、表示部64、および接続部65を有している。電源スイッチ63は、電源61と後述する安全回路71との間に接続されている。表示部64は、昇降部材31の高さや揺動アーム部材41の揺動角度、電源61の電圧値などをグラフィック表示する。接続部65は、指令を入力するリモコン装置66(図3に示す)が接続される。
【0020】
モータ制御部62は、被介助者Mまたは介助者がリモコン装置66に入力した指令に基づいて、昇降用モータ35および揺動用モータ45を制御する。これにより、昇降部材31の上下動と、揺動アーム部材41の前後方向の揺動とが組み合わされて、被介助者Mの起立動作および着座動作の少なくとも一方の介助が行われる。
【0021】
(2.実施形態の介助装置1の電気回路の構成)
図3は、実施形態の介助装置1の電気回路の構成を示す回路図である。図3において、動力電源Vmを供給する動力電源ラインが太い実線の矢印で示され、制御電源Vcを供給する制御電源ラインが細い実線の矢印で示され、制御信号の流れが破線の矢印で示されている。介助装置1の電気回路は、前述した電源61、モータ制御部62、および電源スイッチ63の他に、安全回路71、モータドライバ73、第1リレー74、および第2リレー75などを含んで構成されている。
【0022】
図3に示されるように、電源61の正側端子61Pは、同一電圧値の制御電源Vcおよび動力電源Vmを供給する。電源61の負側端子61Nは、共通接地されている。正側端子61Pに接続された電源スイッチ63は、第1接点631および第2接点632を同時に開閉操作する2極スイッチとされている。電源スイッチ63として、2極2負荷用の単極遮断形スイッチを例示でき、これに限定されない。制御電源ラインおよび動力電源ラインは、電源スイッチ63の第1接点631の負荷側で分岐されている。介助装置1を起動するときに、ユーザは電源スイッチ63を投入操作し、介助装置1を停止するときに、ユーザは電源スイッチ63を遮断操作する。また、動作中の介助装置1に異常や緊急事態が発生した場合に、ユーザは電源スイッチ63を遮断操作する。
【0023】
制御電源Vcは、正側端子61Pから電源スイッチ63の第1接点631を経由して、モータ制御部62、安全回路71、およびモータドライバ73に並列に供給される。動力電源Vmは、主電源とも呼ばれる。動力電源Vmは、正側端子61Pから電源スイッチ63の第1接点631、および第1リレー74の主出力部742を経由してモータドライバ73に供給される。さらに、動力電源Vmは、モータドライバ73から昇降用モータ35および揺動用モータ45に個別に供給される。
【0024】
モータ制御部62は、制御電源Vcで動作する。モータ制御部62は、リモコン装置66に入力された指令に基づき、所定の演算を行って昇降用モータ35および揺動用モータ45の各制御方法を決定する。モータ制御部62は、さらに、各制御方法を表す制御信号S1、S2をモータドライバ73に指令する。
【0025】
また、モータ制御部62は、自身の動作状況を自己監視する機能、例えば、公知のウォッチドッグタイマ監視機能を備える。自己監視の結果を出力する手段として、第2リレー75が設けられている。第2リレー75は、第2入力部751および第2出力部752を有する。第2リレー75として、第2入力部751が励磁コイルで、第2出力部752がa接点の電磁リレーを例示できる。電磁リレーは、汎用品であり、低コストであるという利点をもつ。モータ制御部62の動作状況が正常であるときに、第2入力部751が励磁されて、第2出力部752は導通する。モータ制御部62の動作状況に異常が発生すると、第2入力部751の励磁が解消されて、第2出力部752は遮断される。
【0026】
モータドライバ73は、制御電源Vcで動作する。モータドライバ73は、受け取った制御信号S1、S2にしたがって動力電源Vmを変成し、昇降用モータ35および揺動用モータ45に供給する電流を個別に独立して調整する。これにより、昇降用モータ35および揺動用モータ45の回転速度および回転方向が個別に調整される。
【0027】
安全回路71は、電源61に接続されて制御電源Vcが供給され、かつモータ制御部62から起動信号Ssを受け取ると動作する。安全回路71は、制御電源Vcが供給されていても、停止信号Seを受け取ると停止する。安全回路71として、入力回路711、出力回路712、および出力監視回路713を一体的に有する安全リレーユニットを例示できる。安全リレーユニットは、産業用のモータ装置などに用いられる汎用品であり、配線作業の容易性や低コストなどの利点をもつ。これに限定されず、安全回路71の回路構成は、適宜変更可能である。
【0028】
入力回路711は、安全条件を電気信号の形態で入力する回路である。本実施形態において、入力回路711は、電源スイッチ63の第2接点632と、第2リレー75の第2出力部752との直列接続によって構成される。つまり、電源スイッチ63が投入操作された導通状態で、かつモータ制御部62の動作状況が正常であるときに、入力回路711は、「安全状態」を意味する導通状態となる。
【0029】
出力回路712は、入力回路711の導通状態および遮断状態に応じて、電源61と昇降用モータ35および揺動用モータ45との間の導通状態および遮断状態を切り替え制御する回路である。本実施形態において、出力回路712は、第1リレー74によって構成されている。第1リレー74は、第1入力部741、主出力部742、および補助出力部743を有する。第1リレー74として、安価な汎用品の電磁リレーを用いることができる。
【0030】
電磁リレーからなる第1リレー74において、第1入力部741は、励磁コイルとされる。また、主出力部742は、第1入力部741の非励磁状態で遮断され、励磁状態で導通するa接点とされる。主出力部742は、電源スイッチ63の第1接点631とモータドライバ73との間に接続されている。補助出力部743は、第1入力部741の非励磁状態で導通し、励磁状態で遮断されるb接点とされる。補助出力部743は、出力監視回路713を構成している。
【0031】
入力回路711が導通状態であると、第1入力部741は励磁状態とされて主出力部742が導通し、動力電源Vmはモータドライバ73まで供給される。入力回路711が遮断状態であると、主出力部742が遮断され、動力電源Vmはモータドライバ73まで供給されない。この場合に当然ながら、モータドライバ73は、動力電源Vmを昇降用モータ35および揺動用モータ45に供給できない。また、安全回路71が電源61に接続されていないときに、第1入力部741は励磁され得ず、動力電源Vmはモータドライバ73まで供給されない。
【0032】
入力回路711が遮断状態から導通状態に変化したときに、第1入力部741の励磁が開始される。このとき、主出力部742は遮断状態から導通状態に変化し、同時に、補助出力部743は、導通状態から遮断状態に変化する。ここで、第1入力部741に断線などの異常が生じていると、主出力部742および補助出力部743の状態が変化しない。同様に、入力回路711が導通状態から遮断状態に変化したとき、第1入力部741に異常が生じていると、主出力部742および補助出力部743の状態が変化しない。
【0033】
したがって、出力監視回路713は、補助出力部743の状態が変化しない異常を検出でき、間接的に主出力部742の状態が変化しない異常を検出できる。異常を検出したとき、安全回路71は、異常検出信号Sfをモータ制御部62に送信する。これにより、モータ制御部62は、停止信号Seを安全回路71に指令するとともに、異常の検出をユーザに報知する。異常の報知方法として、例えば、表示部64での異常表示や、音声による報知などがある。
【0034】
(3.実施形態の介助装置1の動作および作用)
次に、実施形態の介助装置1の動作および作用について説明する。介助装置1が完全に停止した初期状態において、ユーザにより電源スイッチ63が遮断状態から投入操作される。すると、第1接点631および第2接点632は、ともに遮断状態から導通状態に変化する。第1接点631の導通により、制御電源Vcがモータ制御部62、安全回路71、およびモータドライバ73に供給される。モータ制御部62は、スタートアップ処理を行って起動すると、リモコン装置66からの指令を受け付けて制御信号S1、S2を指令する動作状態に移行する。また、正常な起動によって第2入力部751が励磁され、第2出力部752は導通する。
【0035】
モータ制御部62は、起動後に所定時間が経過すると、起動信号Ssを安全回路71に指令する。これにより、安全回路71が起動する。この時点で、入力回路711は既に導通状態となっており、出力回路712の第1入力部741が励磁される。すると、主出力部742が導通して、動力電源Vmがモータドライバ73に供給される。これにより、モータドライバ73は、制御電源Vcおよび動力電源Vmの両方が供給され、昇降用モータ35および揺動用モータ45への個別の給電を開始する。
【0036】
ここで、介助装置1の動作中に異常や緊急事態が発生して、電源スイッチ63が遮断操作される場合を考える。この場合、安全回路71が直ちに停止して、時間遅れなく昇降用モータ35および揺動用モータ45が停止するとは限らない。詳述すると、電源61から見て並列接続されたモータ制御部62、安全回路71、モータドライバ73、昇降用モータ35、および揺動用モータ45は、内部に電気エネルギを蓄積しており、かつ、相互にエネルギを融通し得る。加えて、これら62、71、73、35、45は、電源61の定格電圧より低い最低動作電圧まで動作し得る。このため、電源スイッチ63が遮断操作された後に、モータ制御部62、安全回路71、およびモータドライバ73が継続して動作し、昇降用モータ35および揺動用モータ45が動作するおそれがある。
【0037】
このおそれは、安全回路71の入力回路711に電源スイッチ63の第2接点632が入力されたことで解消される。つまり、電源スイッチ63が遮断操作された瞬間に安全条件が満たされなくなるので、仮に安全回路71が継続して動作しても、時間遅れなく第1入力部741の励磁状態が解消される。結果として、主出力部742は、電源スイッチ63の遮断操作から時間遅れ無く遮断され、昇降用モータ35および揺動用モータ45は時間遅れ無く電源61から遮断される。さらに、モータ35、45は、モータ制御部62、安全回路71、およびモータドライバ73からも切り離される。したがって、モータ35、45は、電気エネルギが供給されず、確実に停止する。これにより、介助装置1の確実な停止が担保される。
【0038】
一方、従来技術では、電源スイッチ63は、第1接点631のみを有して、入力回路711に用いられる第2接点632を有さない。このため、電源スイッチ63が遮断操作されても、主出力部742が時間遅れ無く遮断されるとは限らない。したがって、昇降用モータ35および揺動用モータ45は、モータ制御部62、安全回路71、およびモータドライバ73から電気エネルギが融通されて、動作するおそれがある。つまり、従来技術では、介助装置の確実な停止が担保されない。
【0039】
また、モータ制御部62の動作状況に異常が発生したときには、第2入力部751の励磁状態が解消される。これにより、第2出力部752が遮断されて、入力回路711が遮断状態となり、安全条件が満たされなくなる。したがって、出力回路712の第1入力部741の励磁状態が解消され、主出力部742が遮断される。つまり、モータ制御部62の動作状況に異常が発生したときにも、介助装置1の確実な停止が担保される。
【0040】
(4.実施形態の介助装置1の態様および効果)
実施形態の介助装置1は、電源61に接続されたときに動作して、所定の介助動作を駆動する昇降用モータ35および揺動用モータ45と、電源61に接続されたときに、安全条件が満たされているとモータ35、45を電源61に接続し、安全条件が満たされていないとモータ35、45を電源61から遮断する安全回路71と、電源61と安全回路71との間に接続された電源スイッチ63と、を備えた介助装置1であって、安全条件として電源スイッチ63の導通状態を含む。
【0041】
実施形態の介助装置1では、安全回路71の安全条件として、入力回路711に電源スイッチ63の第2接点632が入力されている。これによれば、電源スイッチ63が遮断操作された瞬間に安全条件が満たされなくなるので、仮に安全回路71が継続して動作しても、時間遅れなく第1入力部741の励磁状態が解消される。結果として、主出力部742は、電源スイッチ63の遮断操作から時間遅れ無く遮断され、モータ35、45は時間遅れ無く電源61から遮断される。さらに、モータ35、45は、モータ制御部62、安全回路71、およびモータドライバ73からも切り離される。したがって、モータ35、45は、電気エネルギが供給されず、確実に停止する。換言すると、電源スイッチ63の遮断操作および安全回路71の動作によって介助装置1の確実な停止を担保できる。
【0042】
また、実施形態の介助装置1は、非常停止ボタンを備えず、電源スイッチ63の遮断操作で停止する。このため、「非常停止ボタンが存在するので安全でない」というイメージの低下が発生しない。加えて、介助装置1の動作中に異常や緊急事態が発生した場合に、一般的な民生用機器と同様の考え方で対応できる。したがって、実施形態の介助装置1は、ユーザに容易に受け入れられる。
【0043】
さらに、安全回路71は、安全条件を電気信号の形態で入力する入力回路711と、入力回路711の状態に応じて、電源61とモータ35、45との間を導通状態および遮断状態に切り替え制御する出力回路712と、を有する。これによれば、汎用品の安全リレーユニットを用いて安全回路71を構成できるので、配線作業の容易性や低コストなどの効果が生じる。
【0044】
さらに、入力回路711は、安全条件が満たされていると導通状態になり、安全条件が満たされていないと遮断状態になり、出力回路712は、電源61とモータ35、45との間を導通状態および遮断状態に切り替え操作する主出力部742、ならびに、入力回路711の導通状態で主出力部742を導通状態に切り替え、入力回路711の遮断状態で主出力部742を遮断状態に切り替える第1入力部741を有した第1リレー74で構成される。これによれば、安価な安全リレーユニットからなる安全回路71と、安価な電磁リレーからなる第1リレー74とを組み合わせて回路構成できるので、コストを低廉化する効果が顕著になる。
【0045】
さらに、電源スイッチ63は、第1接点631および第2接点632を同時に開閉操作する2極スイッチであり、第1接点631が電源61と安全回路71との間に接続され、第2接点632が安全条件に用いられる。これによれば、電源スイッチ63に2極スイッチを採用することにより、従来技術の介助装置の回路構成を大規模に変更せずとも、本発明を実施できる。
【0046】
また、実施形態の介助装置1は、電源スイッチ63からみて安全回路71に並列接続されるとともに、電源61とモータ35、45との間に接続されて、モータ35、45の動作を調節するモータドライバ73、および、電源スイッチ63からみて安全回路71に並列接続され、モータドライバ73を制御するモータ制御部62をさらに備えた。これによれば、電源スイッチ63の遮断操作後に、モータ制御部62、安全回路71、およびモータドライバ73が内部に蓄積した電気エネルギをモータ35、45に融通するおそれが有っても、介助装置1の確実な停止を担保できる。
【0047】
さらに、安全条件はモータ制御部62の動作状況を含む。具体的には、モータ制御部62の動作状況の監視結果を出力する第2出力部752が安全回路71の入力回路711に用いられている。これによれば、モータ制御部62の動作状況に異常が発生したときにも、介助装置1の確実な停止を担保できる。
【0048】
(5.実施形態の変形および応用)
なお、動力電源ラインを正側端子61Pから直接的に主出力部742に接続し、電源スイッチ63を経由しない回路構成にすることができる。この場合、制御電流のみを遮断する電源スイッチ63を小容量化でき、反面、主出力部742が短絡故障したときに故障電流を遮断できなくなる。また、安全回路71の入力回路711、出力回路712、および出力監視回路713は、実施形態で説明した回路構成に限定されず、様々な応用回路が考えられる。例えば、第1リレー74や第2リレー75は、電磁リレーに限定されず、半導体式リレーとしてもよい。さらに、モータ制御部62が行う制御の方法も、適宜変更できる。例えば、モータ制御部62が起動信号Ssおよび停止信号Seを安全回路71に指令する機能を省略し、安全回路71が独立して機能するように構成してもよい。本発明は、その他にも様々な変形や応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の介助装置は、実施形態で説明した被介助者Mの起立動作および着座動作の少なくとも一方を介助する介助装置1以外にも利用可能である。例えば、本発明の介助装置は、被介助者Mを移送するリフト装置や、被介助者Mの横臥姿勢および座位姿勢を可変に調整する可動ベッド装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1:介助装置、 2:基台、 3:昇降部、 35:昇降用モータ、 4:揺動部、 45:揺動用モータ、 5:支持部、 61:電源、 62:モータ制御部、 63:電源スイッチ(2極スイッチ)、 631:第1接点、 632:第2接点、 71:安全回路、 711:入力回路、 712:出力回路、 713:出力監視回路、 73:モータドライバ、 74:第1リレー、 741:第1入力部、 742:主出力部、 743:補助出力部、 75:第2リレー、 751:第2入力部、 752:第2出力部
図1
図2
図3