(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体の撮像領域に流入する流体を標識化するためのRF波を印加して、待ち時間が経過した後にデータ収集を行うパターンを、前記待ち時間を異ならせて複数回実行する場合に、前記待ち時間の長さに応じて、複数のタイミングを少なくとも2つの時間的な範囲に分割する分割部と、
前記撮像領域の全体について、第1の読み出しシーケンス、及び、シーケンスの種類及び撮像条件の少なくとも一方が前記第1の読み出しシーケンスと異なる第2の読み出しシーケンスそれぞれを用いてデータ収集を行う収集部と、
前記第1の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像と、前記第2の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像とを合成する合成部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下では添付図面を参照して、MRI装置の実施形態を詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、シーケンサ10、ECG(Electrocardiogram)センサ21、ECGユニット22、及び計算機システム30を備える。
【0009】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0010】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0011】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0012】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、後述する寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、制御部36による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0013】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7からRF(Radio Frequency)パルスの供給を受けて、被検体PにRF波を印加する。送信部7は、ラーモア周波数に対応するRF波を送信RFコイル6に送信する。
【0014】
受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、RF波の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。この受信RFコイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、その磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0015】
受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号に基づいてMR(Magnetic Resonance:磁気共鳴)データを生成する。具体的には、この受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによってMRデータを生成する。このMRデータは、前述したスライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grによって、PE(Phase Encode)方向、RO(Read Out)方向、SE(Slice Encode)方向の空間周波数の情報が対応付けられることで、k空間に対応するデータとして生成される。そして、MRデータを生成すると、受信部9は、そのMRデータをシーケンサ10へ送信する。なお、受信部9は、静磁場磁石1や傾斜磁場コイル2などを備える架台装置側に備えられていてもよい。
【0016】
シーケンサ10は、計算機システム30から送信されるシーケンス実行情報にしたがって傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することによって、被検体Pの画像を生成するためのデータ収集を行う。ここで、シーケンス実行情報とは、被検体PからMRデータを収集するためのパルスシーケンスを定義する情報である。具体的には、シーケンス実行情報は、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、データ収集を行うための手順を定義した情報である。
【0017】
なお、シーケンサ10は、傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動して被検体Pをスキャンした結果、受信部9からMRデータが送信されると、そのMRデータを計算機システム30へ転送する。
【0018】
ECGセンサ21は、被検体Pの体表に付着され、被検体Pの心拍、脈波、呼吸などを示すECG信号を電気信号として検出する。ECGユニット22は、ECGセンサ21により検出されたECG信号にA/D変換処理やディレー処理を含む各種処理を施してゲート信号を生成し、生成したゲート信号をシーケンサ10に送信する。
【0019】
計算機システム30は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、計算機システム30は、上述した各部を駆動することで、データ収集や画像再構成などを行う。この計算機システム30は、インタフェース部31、画像再構成部32、記憶部33、入力部34、表示部35、及び制御部36を有する。
【0020】
インタフェース部31は、計算機システム30とシーケンサ10との間でやり取りされる各種信号の送受信を制御する。例えば、このインタフェース部31は、シーケンサ10に対してシーケンス実行情報を送信し、シーケンサ10からMRデータを受信する。MRデータを受信すると、インタフェース部31は、各MRデータを被検体Pごとに記憶部33に格納する。
【0021】
画像再構成部32は、記憶部33によって記憶されたMRデータに対して後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、被検体Pの体内が描出された画像データを生成する。
【0022】
記憶部33は、インタフェース部31により受信されたMRデータや、画像再構成部32により生成された画像データなどを被検体Pごとに記憶する。
【0023】
入力部34は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。この入力部34としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0024】
表示部35は、制御部36による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部35としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0025】
制御部36は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、この制御部36は、入力部34を介して操作者から受け付けられた各種指示に基づいてシーケンス実行情報を生成し、生成したシーケンス実行情報をシーケンサ10に送信することによってスキャンを制御したり、スキャンの結果としてシーケンサ10から送られるMRデータに基づいて行われる画像の再構成を制御したりする。
【0026】
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。このような構成のもと、MRI装置100は、各種の読み出しシーケンスを用いて、様々な撮像法で被検体を撮像することが可能である。なお、ここでは、励起用のRFパルスを印加してから磁気共鳴信号を取得するまでのシーケンスを「読み出しシーケンス」と呼び、読み出しシーケンスの前に印加される標識化用のRFパルスなどの各種プリパルスと読み出しシーケンスとを含んだ全体的なシーケンスを「パルスシーケンス」と呼ぶ。
【0027】
ここで、従来、MRI装置で用いられるパルスシーケンスに含まれる読み出しシーケンスの種類には、大きく分類すると、SE系とFE(GRE)系とがあり、さらに、FE系には、FLASH系とSSFP系とがある。一般的に、これらの読み出しシーケンスは、前者ほど、単位収集時間あたりのSN比は低いが磁場不均一性(歪みや信号抜け)に強く、後者ほど、単位収集時間あたりのSN比は高いが磁場均一性に弱いことが知られている。このため、磁気共鳴イメージング装置の操作者は、各読み出しシーケンスの特性を把握したうえで、撮像対象の部位や撮像の目的に応じて、読み出しシーケンスの種類や撮像条件を適宜に使い分けている。
【0028】
例えば、MRI装置による撮像法の一つに、ASL(Arterial Spin Labeling)法がある。ASL法は、撮像領域に流入する流体を標識化するためのRF波を印加してから所定の待ち時間が経過した後にデータ収集を行うことによって、非造影で血流を画像化する撮像法である。
【0029】
図2〜4は、従来のASL法を説明するための図である。一般的に、ASL法では、背景信号を抑制するために、タグ画像と呼ばれる画像と、コントロール画像と呼ばれる画像とがそれぞれ生成され、両画像の差分画像が生成される。
【0030】
例えば、
図2に示すように、ASL法では、撮像領域(imaging slab)の上流に設定されたタグ領域(tag slab)に、撮像領域に流入する血液(arterial blood flow)を標識化するためのRF波が印加される。そして、
図3に示すように、RF波(tag)が印加されてから所定の待ち時間TIが経過した後にデータ収集(imaging)が行われ、収集されたデータからタグ画像が生成される。さらに、ASL法では、
図2に示すように、撮像領域を挟んでタグ領域の反対側に設定されたコントロール領域(control slab)にもRF波が印加される。そして、
図3に示すように、RF波(control)が印加されてから、タグ画像用のデータ収集が行われたときと同じ待ち時間TIが経過した後にデータ収集(imaging)が行われ、収集されたデータからコントロール画像が生成される。その後、
図4に示すように、生成されたタグ画像(tag image)とコントロール画像(control image)との差分画像を生成することで、背景信号を抑制したASL画像(ASL image)が得られる。
【0031】
また、ASL法は、その用途から、大きく、ASL−MRA(MR Angio)とASL−MRP(MR Perfusion)とに分けられる。ASL−MRAは、血管画像を得るための方法であり、ASL−MRPは、灌流画像を得るための方法である。さらに、近年では、ASL−MRA又はASL−MRPの時間的な変化(hemodynamics)を観察するために、標識化用のRF波を印加してからデータ収集までの待ち時間を動的に変えて、複数回撮像を行うことも行われている。
【0032】
ここで、ASL−MRAとASL−MRPとは、どちらも撮像法の種類はASL法であるが、技術的なポイントが異なる。例えば、ASL−MRAでは、血管のSN比が大きいため加算回数は少なくてよいが、時間分解能及び空間分解能が要求される。また、ASL−MRPでは、ASL−MRAに比べて血流信号のSN比が背景の静止組織よりもはるかに低い(1/1000以下)画像が得られるため、タグ画像とコントロール画像との差分を行う場合に、それぞれの画像でMTC(Magnetization Transfer Contrast)効果を同じにしたり、低マトリクスでの複数回の加算平均が行われたりする。さらに、ASL−MRPの中でも、血流量は腎や肺などは高く、脳や前立腺、筋などは低いため、撮像対象の臓器によって読み出しシーケンスの撮像条件が異なる。
【0033】
一方、一般的に最も広く利用されている3DTOF(3 Dimensional Time-Of-Flight)−MRAでは、血管流のタイムオブフライト(time-of-flight)効果を用いるため、1回の撮像当たりの撮像領域(imaging slab)の厚さは薄いほどSN比が高くなる。そのため、3DTOF−MRAでは、撮像領域を複数の分割領域に分割して当該複数の分割領域ごとにデータ収集を行うマルチスラブ(multi-slab)法が用いられる。
【0034】
図5及び6は、従来の3DTOF−MRAを説明するための図である。
図5は、シングルスラブ(single-slab)法による撮像の一例を示しており、
図6は、マルチスラブ(multi-slab)法による撮像の一例を示している。
【0035】
例えば、
図5に示すように、シングルスラブ法では、撮像領域(imaging slab)に照射するRF波に傾斜をつける(流入部から距離的に遠いほどRF波のフリップ角(Flip Angle)を浅くする)TONE(Tilted Optimized Non-saturation Excitation)法(ISCE(Inclined Slab for Contrast Enhancement)法)が併用される場合が多い。また、
図6に示すように、マルチスラブ法でTONE法が併用される場合もある。このような3D−MRAで頭部を撮像する場合は、ウィリス動脈輪(Willis ring)部の近傍にある主幹動脈部の抜け(void)が少ない画像が得られるFE(GRE)系の読み出しシーケンスが用いられるのが一般的である。
【0036】
また、MRI装置による他の撮像法の一つに、拡散イメージング(diffusion imaging)がある。この拡散イメージングでは、シングルショットのSE−EPI(Echo Planar Imaging)系の読み出しシーケンスが主に用いられるが、歪みの大きな部位についてはFSE(Fast Spin Echo)系の読み出しシーケンスも用いられている。また、EPIの中でも、TE(Echo Time)、収集マトリクス(matrix)、SENSE(Sensitivity Encoding)−Factor、ショット数が使い分けられている。さらには、k空間の軌跡(trajectory)の違いであるPROPELLER(Periodically Rotated Overlapping Parallel Lines with Enhanced Reconstruction)、radial系などのサンプリング(sampling)法も使い分けられている。
【0037】
さらに、最近の傾向として、T1やT2、プロトン(proton)密度、ADC(Apparent Diffusion Coefficient)、血流量、ケミカルシフト、磁化率、温度などのMRIに関する各種パラメータを強調画像ではなく定量値画像(パラメータ画像)に変換する手法が盛んに用いられている。これらの各種パラメータの定量値画像を得るための撮像法では、様々な読み出しシーケンスが利用可能になっており、SN比や歪み、時間などの特性によって、使用する読み出しシーケンスの種類や撮像条件が決められるようになっている。
【0038】
このように、MRI装置では、各種の撮像法で被検体を撮像することが可能であり、各撮像法において、撮像対象の部位や撮像の目的に応じて読み出しシーケンスの種類や撮像が使い分けられている。
【0039】
例えば、前述したASL法では、エコー信号を収集するための読み出しシーケンス(imaging sequence)として、FE(GRE)、SSFP、FE−EPIなどのFE(GRE)系の読み出しシーケンスが用いられ、さらには、FSE、SE−EPIなどのSE系の読み出しシーケンスも用いられる。また、k空間を充填する方法も、Cartesian、non−Cartesian(spiral、radial)などの様々な方法が用いられる。これらの中には、対象部位(対象臓器)や使用目的の全ての場合に最適な方法、すなわちオールマイティな方法はなく、MRAかMRPかに応じて、又は、撮像対象の臓器に応じて、適宜使い分けられている。
【0040】
ここで、前述したように、FE(GRE)系はSE系と比べてSN比は高いが磁場不均一性に弱く、さらにFE系の中でも、SSFP(Fast Imaging with Steady-state Precession:FISPとも呼ばれる)系はFLASH系と比べてSN比は高いが、さらに磁場不均一性に弱い。そのため、ASL−MRAで脳の主幹部を撮像する場合は、副鼻腔や側頭骨などがあるためFE系が主に用いられ、腹部の臓器を撮像する場合は、SSFP系が用いられることが多い。また、脳の中でも、頭頂部の末梢動脈を撮像する場合は磁場不均一性がさほど問題にならないため、SN比が高いSSFP系が優れていることが知られている。
【0041】
また、Time−Resolve MRA(trMRA)では、標識化された血液は、TIが短いときは主幹動脈にあり、TIが長くなると末梢動脈に移行していく。そのため、TIが短いときはFE(GRE)系が、TIが長いときはSSFP系が適していることになる。また、3DTOF−MRAでは、ウィリス動脈輪(Willis ring)部の近傍はFE系で、頭頂部はSSFP系が適していることになる。
【0042】
このように、MRI装置による撮像法では、被検体を時系列に撮像する際の時間的な位置や撮像領域の空間的な位置に応じて、それぞれの位置に適した読み出しシーケンスの種類や撮像条件を使い分けるのが望ましい。しかしながら、一般的に、操作者が時間的な位置や空間的な位置に応じて読み出しシーケンスの種類や撮像条件を切り替えることは難しく、装置側で制御する仕組みが求められていた。
【0043】
上述した従来技術の課題に対し、第1の実施形態に係るMRI装置100は、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割し、第1の範囲については第1の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、第2の範囲についてはシーケンスの種類又は撮像条件が第1の読み出しシーケンスと異なる第2の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。そして、MRI装置100は、第1の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像と第2の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像とを合成する。
【0044】
このような構成によれば、第1の読み出しシーケンスの種類又は撮像条件を第1の範囲を撮像するために適したものとし、第2の読み出しシーケンスの種類又は撮像条件を第2の範囲を撮像するために適したものとすることで、被検体を撮像する際の時間的な位置又は空間的な位置に応じて、適切な読み出しシーケンスを用いて撮像が行われることになる。すなわち、第1の実施形態に係るMRI装置100によれば、被検体を撮像する際の時間的な位置又は空間的な位置に応じて、各位置に適した読み出しシーケンスの種類又は撮像条件を用いて撮像を行うことで、より高画質な画像を容易に得ることができる。
【0045】
以下では、第1の実施形態に係るMRI装置100の詳細な構成、及び、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる処理の流れについて説明する。なお、本実施形態では、被検体の撮像領域に流入する流体を標識化するための1回のRF波を印加してから複数の待ち時間が経過するごとに連続的にデータ収集を行うST−MI(Single-Tag Multiple-TI)−ASLで被検体の頭部血管を撮像する場合の例を説明する。また、本実施形態では、第1の読み出しシーケンスとして、一般的なFE系(以下、単にFE系と呼ぶ)の読み出しシーケンスを用い、第2の読み出しシーケンスとして、SSFP系の読み出しシーケンスを用いる場合の例を説明する。
【0046】
図7は、第1の実施形態に係るFE系の読み出しシーケンスの一例を示す図である。また、
図8は、第1の実施形態に係るSSFP系の読み出しシーケンスの一例を示す図である。なお、
図7及び8に例示する各読み出しシーケンスは、いずれも3D撮像用の読み出しシーケンスである。具体的には、
図7に例示するFE系の読み出しシーケンスは、リードアウト用傾斜磁場Grを反転させることでエコー信号を発生させるものであり、さらに、位相エンコード用傾斜磁場Geについて、印加した傾斜磁場をデータ収集後にキャンセルするためのリワインド用傾斜磁場を印加するものである。また、
図8に例示するSSFP系の読み出しシーケンスは、
図7に示す読み出しシーケンスにおいて、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grの全てについて、繰り返し時間TRの中で傾斜磁場の積分値がゼロになるようにリワインド用傾斜磁場を印加するものである。
【0047】
ここで、
図8に例示するSSFP系の読み出しシーケンスは、
図7に例示するFE系の読み出しシーケンスと比べると、単位収集時間あたりのSN比は高いが、3軸方向にリワインド用傾斜磁場を印加して傾斜磁場の積分値を調整するため、磁場不均一性に弱い。一方、
図7に例示するFE系の読み出しシーケンスは、
図8に例示するSSFP系の読み出しシーケンスと比べると、磁場不均一性に強く、かつ、空間分解能が高いが、単位収集時間あたりのSN比は低い。
【0048】
そこで、本実施形態では、MRI装置100は、ST−MI−ASLで被検体頭部血管を撮像する場合に、標識化用のRF波を印加してからデータ収集を行うまでの待ち時間に基づいて、撮像時の時間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。そして、MRI装置100は、分割した2つの範囲のうち、待ち時間が短い方の範囲については、磁場不均一性に強いFE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、待ち時間が長い方の範囲については、SN比が高いSSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。
【0049】
図9は、第1の実施形態に係るMRI装置100の詳細な構成例を示す図である。
図9は、
図1に示したシーケンサ10及び計算機システム30を示している。また、
図9は、計算機システム30が有する機能部のうち、インタフェース部31、画像再構成部32、記憶部33、入力部34、表示部35、及び制御部36を示している。
【0050】
図9に示すように、記憶部33は、撮像条件記憶部33aと、分割情報記憶部33bと、MRデータ記憶部33cと、画像データ記憶部33dとを有する。
【0051】
撮像条件記憶部33aは、被検体の撮像に用いられる読み出しシーケンスの種類ごとに撮像条件を記憶する。なお、ここでいう撮像条件とは、読み出しシーケンスの生成に必要な各種撮像パラメータのパラメータ値であり、例えば、収集マトリクス、NAQ、スラブ厚、1スラブ内のスライス枚数、ショット数、SENSE−Factorなどである。また、撮像条件には、PROPELLER、radial系などのサンプリング法の種類も含まれる。本実施形態では、撮像条件記憶部33aは、少なくとも、FE系の読み出しシーケンスに関する撮像条件と、SSFP系の読み出しシーケンスに関する撮像条件とを記憶する。
【0052】
分割情報記憶部33bは、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲を分割するための基準となる情報を記憶する。例えば、分割情報記憶部33bは、撮像対象の部位に関する解剖学的な情報を記憶する。本実施形態では、分割情報記憶部33bは、ST−MI−ASLで被検体の頭部血管を撮像する場合に、標識化された血液が主幹動脈を流れる範囲と末梢動脈を流れる範囲とに時間的な範囲を分割するための情報として、MCA(Middle-Cerebral Artery)の左右に分かれる分岐を第1分枝とした場合の第2分枝に至る辺りに標識化された血液が到達するときの待ち時間を記憶する。
【0053】
なお、分割情報記憶部33bが記憶する情報は、解剖学的な情報に限られない。例えば、過去に行われた撮像において基準として用いられた待ち時間のうち、操作者が最も適していると判断した待ち時間を記憶しておいてもよい。すなわち、待ち時間に関する操作者の経験値を記憶しておいてもよい。
【0054】
MRデータ記憶部33cは、インタフェース部31を介してシーケンサ10から受信されたMRデータを記憶する。画像データ記憶部33dは、画像再構成部32によってMRデータから再構成された画像を記憶する。
【0055】
また、制御部36は、撮像条件設定部36aと、分割部36bと、収集部36cと、血流画像生成部36dと、合成部36eとを有する。
【0056】
撮像条件設定部36aは、被検体の撮像に用いられる読み出しシーケンスの種類ごとに撮像条件を設定する。具体的には、撮像条件設定部36aは、入力部34を介して、操作者から各種撮像パラメータのパラメータ値の入力を受け付け、受け付けたパラメータ値を撮像条件として撮像条件記憶部33aに登録する。本実施形態では、撮像条件設定部36aは、少なくとも、FE系の読み出しシーケンスに関する撮像条件と、SSFP系の読み出しシーケンスに関する撮像条件とを設定する。
【0057】
分割部36bは、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。具体的には、分割部36bは、分割情報記憶部33bによって記憶された情報に基づいて、時間的な範囲又は空間的な範囲を分割する。本実施形態では、分割部36bは、ST−MI−ASLで被検体の頭部血管を撮像する場合に、標識化用のRF波を印加してからデータ収集を行うまでの待ち時間に基づいて、撮像時の時間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。
【0058】
例えば、分割部36bは、複数の待ち時間のうち少なくとも1つの待ち時間を閾値として設定することで、撮像時の時間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。具体的には、分割部36bは、ST−MI−ASLで用いられる複数の待ち時間のうち、分割情報記憶部33bによって記憶されている待ち時間と一致する待ち時間を閾値として設定する。本実施形態では、分割部36bは、MCAの左右に分かれる分岐を第1分枝とした場合の第2分枝に至る辺りに標識化された血液が到達するときの待ち時間を閾値として設定することで、標識化された血液が主幹動脈を流れる範囲と末梢動脈を流れる範囲とに時間的な範囲を分割する。
【0059】
収集部36cは、分割部36bによって分割された少なくとも2つの範囲のうち、第1の範囲については第1の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、第2の範囲については読み出しシーケンスの種類又は撮像条件が第1の読み出しシーケンスと異なる第2の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。
【0060】
本実施形態では、収集部36cは、ST−MI−ASLで被検体の頭部血管を撮像する場合に、分割された2つの範囲のうち、待ち時間が短い方の範囲についてはFE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、待ち時間が長い方の範囲についてはSSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。具体的には、収集部36cは、撮像条件記憶部33aによって記憶されている撮像条件に基づいて、FE系のシーケンス情報及びSSFP系のシーケンス情報をそれぞれ生成する。そして、収集部36cは、生成した各シーケンス情報をシーケンサ10に送信し、それらの各シーケンス情報を用いてST−MI−ASLを実行するようにシーケンサ10を制御する。
【0061】
図10は、従来のST−MI−ASLによるデータ収集を示す図である。また、
図11は、第1の実施形態に係る収集部36cによって行われるST−MI−ASLを示す図である。
図10に示すように、従来のST−MI−ASLでは、複数の待ち時間TI1〜TI6ごとに、同じ種類の読み出しシーケンス(例えば、FE系の読み出しシーケンス)を用いてデータ収集が行われていた(S1〜S6)。
【0062】
これに対し、本実施形態では、収集部36cは、分割部36bによって設定された待ち時間の閾値に基づいて、データ収集に用いる読み出しシーケンスを切り替える。例えば、待ち時間の閾値がTI3であった場合には、収集部36cは、
図11に示すように、待ち時間がTI3以下であるときは、FE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、待ち時間がTI3を超えているときは、SSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行うように、シーケンサ10を制御する。
【0063】
ここで、本実施形態では、分割部36bによって、MCA(Middle-Cerebral Artery)の左右に分かれる分岐を第1分枝とした場合の第2分枝に至る辺りに標識化された血液が到達するときの待ち時間が閾値として設定される。これにより、本実施形態では、標識化された血液が主幹動脈を流れる範囲については、FE系の読み出しシーケンスでデータ収集が行われ、標識化された血液が末梢動脈を流れる範囲については、SSFP系の読み出しシーケンスでデータ収集を行われることになる。
【0064】
なお、収集部36cは、FE系の読み出しシーケンス及びSSFP系の読み出しシーケンスのどちらを用いてデータ収集を行う場合も、各待ち時間において、タグ画像用のデータ収集とコントロール画像用のデータ収集とをそれぞれ行うようにシーケンサ10を制御する。そして、収集部36cは、インタフェース部31を介してシーケンサ10からMRデータを受信すると、受信したMRデータをMRデータ記憶部33cに格納する。この結果、画像再構成部32によって、ST−MI−ASLで用いられる複数の待ち時間ごとに、シーケンサ10によって収集されたMRデータからタグ画像及びコントロール画像がそれぞれ生成されることになる。
【0065】
図9に戻って、血流画像生成部36dは、第1の読み出しシーケンスによって収集されたデータ及び第2の読み出しシーケンスによって収集されたデータそれぞれから血流画像を生成する。本実施形態では、血流画像生成部36dは、ST−MI−ASLで用いられる複数の待ち時間ごとに、画像再構成部32によって生成されたタグ画像及びコントロール画像の差分画像を血流画像として生成する。すなわち、血流画像生成部36dは、FE系の読み出しシーケンスによって収集されたデータ及びSSFP系の読み出しシーケンスによって収集されたデータそれぞれについて、待ち時間ごとに血流画像を生成する。
【0066】
合成部36eは、第1の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像と第2の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像とを合成する。本実施形態では、合成部36eは、ST−MI−ASLが実行される場合に、血流画像生成部36dによって待ち時間ごとに生成された各血流画像を合成する。すなわち、合成部36eは、FE系の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された血流画像と、SSFP系の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された血流画像とを合成する。そして、合成部36eは、合成した血流画像を表示部35に表示させる。
【0067】
ここで、合成部36eは、第1の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された血流画像と第2の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された血流画像の少なくとも一方について、ゲイン補正、T1緩和補正及び画像補間のうち少なくとも1つの補正処理を行った後に、各画像を合成してもよい。本実施形態では、FE系の読み出しシーケンスを用いて得られた血流画像及びSSFP系の読み出しシーケンスを用いて得られた血流画像の少なくとも一方について補正処理を行う。
【0068】
図12は、第1の実施形態に係る合成部36eによって行われる画像補正を説明するための図である。
図12の上段、中段及び下段に示す図において、横軸はST−MI−ASLで用いられる待ち時間TIを示しており、縦軸は血流画像における血流部分の信号強度S.I.(Signal Intensity)を示している。
【0069】
例えば、
図12の上段に示すように、0<TI<TI
thの範囲ではFE系の読み出しシーケンスで、TI=TI
thではFE系及びSSFP系の両方の読み出しシーケンスで、TI
th<TI<TI
maxの範囲ではSSPF系の読み出しシーケンスでデータ収集を行うとする。この場合には、FE系及びSSFP系それぞれの読み出しシーケンスでデータ収集を行う際の受信ゲイン及びノイズSD(Noise S.D.)値を同じにしたとすると、血流部分の信号強度は、磁場不均一性が問題とならない範囲(TIが長い範囲)では、FE系の読み出しシーケンスで得られた血流画像よりも、SSFP系の読み出しシーケンスで得られた血流画像のほうが大きい。なお、ここでいうノイズSD値は、画像に含まれる画素ごとの信号強度の標準偏差(Standard Deviation)であり、ノイズの特性を示す指標値である。
【0070】
そこで、合成部36eは、FE系の読み出しシーケンスを用いて得られた血流画像及びSSFP系の読み出しシーケンスを用いて得られた血流画像の少なくとも一方について、ゲイン補正を行う。例えば、
図12の中段に示すように、TI=TI
thとしたときにFE系及びSSFP系それぞれの読み出しシーケンスで収集されるデータの信号強度が一致するように、少なくとも一方の読み出しシーケンスでデータ収集を行う際の受信ゲインを調整する。
【0071】
なお、
図12の中段に示す例では、FE系の読み出しシーケンスでデータ収集を行う際の受信ゲインに、SSFP系の読み出しシーケンスでデータ収集を行う際の受信ゲインを合わせた場合を示している。しかし、逆に、SSFP系の読み出しシーケンスでデータ収集を行う際の受信ゲインに、FE系の読み出しシーケンスでデータ収集を行う際の受信ゲインを合わせてもよい。また、FE系の読み出しシーケンスでデータ収集を行う際の受信ゲイン、及び、SSFP系の読み出しシーケンスでデータ収集を行う際の受信ゲインの両方を調整してもよい。
【0072】
また、
図12に示す例では、TI=TI
thとしてFE系及びSSFP系の両方の読み出しシーケンスでデータ収集を行うこととしたが、必ずしも、このように異なる同じTIで重複してデータ収集を行わなくてもよい。その場合には、例えば、合成部36eは、FE系の読み出しシーケンスで収集される最後のTIのデータと、SSFP系の読み出しシーケンスで収集される最初のTIのデータとで信号強度が一致するように、少なくとも一方の読み出しシーケンスでデータ収集を行う際の受信ゲインを調整する。
【0073】
また、合成部36eは、上述したゲイン補正を行った後に、さらにT1緩和補正を行ってもよい。その場合には、例えば、
図12の下段に示すように、合成部36eは、TI=0としてFE系の読み出しシーケンスで得られた血流画像における血流部分の信号強度に合うように、他のTIで得られた血流画像における血流部分の信号強度を補正する。例えば、合成部36eは、血液のT1値をT1bとした場合に、各TIで得られた血流画像それぞれの信号値に{1/exp(−TI/T1b)}を乗じることによって、各血流画像における信号強度を補正する。例えば、このT1緩和補正は、ASL−MRPで血液の流量を定量化する際に行われることが望ましい。
【0074】
また、合成部36eは、上述したゲイン補正を行った後に、さらに画像補間を行ってもよい。例えば、合成部36eは、待ち時間TIごとに生成された血流画像について、連続するTIの2つの血流画像を用いて、重み付き補間により画像を生成し、生成した画像を当該2つの血流画像の間に補間する。
【0075】
このように、FE系の読み出しシーケンスを用いて得られた血流画像及びSSFP系の読み出しシーケンスを用いて得られた血流画像の少なくとも一方についてゲイン補正を行うことによって、一方の読み出しシーケンスで得られた血流画像の信号強度を他方の読み出しシーケンスで得られた血流画像の信号強度に合わせることができ、合成画像における血管の連続性を向上させることができる。また、ゲイン補正に加えてT1緩和補正及び画像補間を行うことによって、合成画像における血管の連続性をさらに向上させることができる。なお、上述したゲイン補正、T1緩和補正及び画像補間は必ずしも全ての補正処理を行わなくてもよく、いずれか1つ又は2つの補正処理だけを行ってもよい。
【0076】
図13は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図13に示すように、MRI装置100では、撮像条件設定部36aが、被検体の撮像に用いられる読み出しシーケンスの種類ごとに撮像条件を設定する。本実施形態では、撮像条件設定部36aは、少なくとも、FE系の読み出しシーケンスに関する撮像条件と、SSFP系の読み出しシーケンスに関する撮像条件とを設定する(ステップS101)。
【0077】
そして、操作者から撮像開始の指示を受け付けると(ステップS102,Yes)、分割部36bが、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。本実施形態では、分割部36bは、ST−MI−ASLで被検体の頭部血管を撮像する場合に、標識化用のRF波を印加してからデータ収集を行うまでの待ち時間に基づいて、撮像時の時間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する(ステップS103)。
【0078】
続いて、収集部36cが、分割部36bによって分割された少なくとも2つの範囲のうち、第1の範囲については第1の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、第2の範囲については第1の読み出しシーケンスと種類又は撮像条件が異なる第2の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。本実施形態では、収集部36cは、分割部36bによって分割された2つの範囲のうち、待ち時間が短い方の範囲についてはFE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、待ち時間が長い方の範囲についてはSSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う(ステップS104)。
【0079】
血流画像生成部36dは、第1の読み出しシーケンスによって収集されたデータ及び第2の読み出しシーケンスによって収集されたデータそれぞれから血流画像を生成する。本実施形態では、血流画像生成部36dは、ST−MI−ASLで用いられる複数の待ち時間ごとに、画像再構成部32によって生成されたタグ画像及びコントロール画像の差分画像を血流画像として生成する(ステップS105)。
【0080】
合成部36eは、第1の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像と第2の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像とを合成する。本実施形態では、FE系の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された血流画像と、SSFP系の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された血流画像とを合成する(ステップS106)。そして、合成部36eは、合成した血流画像を表示部35に表示させる(ステップS107)。
【0081】
上述したように、第1の実施形態に係るMRI装置100は、ST−MI−ASLで被検体の頭部血管を撮像する場合に、撮像時の時間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割し、待ち時間が短い方の範囲については、磁場均一性に強く、かつ、空間分解能が高いFE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、待ち時間が長い方の範囲については、SN比が高いSSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行うので、主幹動脈及び末梢動脈の両方を高精度に描出した画像を得ることができる。したがって、第1の実施形態に係るMRI装置100によれば、撮像対象の部位や撮像の目的に応じて、より高画質な画像を得ることができる。
【0082】
なお、第1の実施形態では、ST−MI−ASLで被検体を撮像する場合について説明したが、撮像法がこれに限られない。例えば、本実施形態は、ST−SI(Single-Tag Single-TI)−ASLを用いる場合にも同様に実施が可能である。ST−SI−ASLは、被検体の撮像領域に流入する流体を標識化するためのRF波を1回印加してから所定の待ち時間が経過した後にデータ収集を行うパターンを、待ち時間を変えて複数回実行する撮像法である。
【0083】
このようなST−SI−ASLで被検体を撮像する場合に、例えば、分割部36bは、ST−MI−ASLを用いる場合と同様に、標識化用のRF波を印加してからデータ収集を行うまでの待ち時間に基づいて、撮像時の時間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。そして、収集部36cは、分割部36bによって分割された少なくとも2つの範囲のうち、第1の範囲については第1の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、第2の範囲については第1の読み出しシーケンスと種類又は撮像条件が異なる第2の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。例えば、収集部36cは、ST−MI−ASLを用いる場合と同様に、分割された2つの範囲のうち、待ち時間が短い方の範囲についてはFE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、待ち時間が長い方の範囲についてはSSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。
【0084】
さらに、1回のRF波の印加でk空間全体のデータをサンプリングすることが難しい場合には、k空間を複数の領域に分割し、分割した領域ごとに、標識化用のRF波を印加してデータ収集を行ってもよい。その場合には、分割した領域全てについてデータを収集するまでは、同じ待ち時間でデータ収集を繰り返し、分割した領域全てについてデータを収集した後に、待ち時間を変更して、次のk空間のデータを収集する。このような場合も、同様に、分割部36bが、待ち時間に基づいて、撮像時の時間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。また、収集部36cが、第1の範囲については第1の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、第2の範囲については第1の読み出しシーケンスと種類又は撮像条件が異なる第2の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。
【0085】
また、第1の実施形態では、収集部36cが、分割部36bによって設定された待ち時間の閾値に基づいて、データ収集に用いる読み出しシーケンスを変更する場合について説明したが、読み出しシーケンスの制御はこれに限られない。例えば、収集部36cは、撮像領域における所定の位置に標識化された流体が到達したことを検出した場合に、データ収集用の読み出しシーケンスを第1の読み出しシーケンスから第2の読み出しシーケンスに変更してもよい。
【0086】
例えば、収集部36cは、ST−MI−ASLで被検体の頭部血管を撮像する場合に、血流画像生成部36dによって血流画像が生成されるごとに、生成された血流画像における標識化された血液の位置を検出する。そして、収集部36cは、検出した血液がMCAの第2分枝に至る辺りに到達したことを検出した場合に、データ収集に用いる読み出しシーケンスをFE系の読み出しシーケンスからSSFP系の読み出しシーケンスに変更する。
【0087】
また、第1の実施形態では、収集部36cが、ST−MI−ASLで被検体の頭部血管を撮像する場合に、データ収集用に用いる読み出しシーケンスの種類をFE系からSSFP系に変更する場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、収集部36cは、読み出しシーケンスの種類を変更するのではなく、読み出しシーケンスの撮像条件を変更してもよい。
【0088】
例えば、収集部36cは、ST−MI−ASLで被検体の頭部血管を撮像する場合に、同じ種類の読み出しシーケンスを用いて、分割部36bによって分割された2つの範囲のうち、待ち時間が短い方の範囲については空間分解重視の撮像条件でデータ収集を行い、待ち時間が長い方の範囲についてはSN比重視の撮像条件でデータ収集を行う。この場合には、撮像条件記憶部33aが、同一種類の読み出しシーケンスについて、空間分解重視の撮像条件とSN比重視の撮像条件とをそれぞれ記憶する。なお、空間分解重視の撮像条件とSN比重視の撮像条件とは、それぞれ、収集マトリクス、NAQ、スラブ厚、1スラブ内のスライス枚数、ショット数などを適宜に調整することによって設定される。
【0089】
このように読み出しシーケンスの撮像条件を変更することによって、被検体を時系列に撮像する際の時間的な位置や撮像領域の空間的な位置に応じて、撮像法をASL−MRAからASL−MRPへの切り替えることも可能になる。ASL−MRAで空間分解能重視のまま待ち時間TIを延長していくと、灌流はSN比の限界のためノイズレベル以下になって描出されないが、途中でSN比重視モードに変更することによって、標識化された血液が待ち時間TIの延長とともに毛細血管床に移行する様子をシームレスに画像化することができる。
【0090】
なお、収集部36cは、データ収集に用いるパルシーケンスの種類及び撮像条件のいずれか一方を変更するだけではなく、パルシーケンスの種類及び撮像条件の両方を変更してもよい。これにより、被検体を時系列に撮像する際の時間的な位置や撮像領域の空間的な位置に応じて、より適切な方法でデータを収集することができるようになり、さらに高画質な画像を得ることができる。
【0091】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲の全体について、種類が異なる2つの読み出しシーケンスそれぞれを用いてデータ収集を行う場合の例を説明する。なお、第2の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には、
図1及び9に示したものと同じである。
【0092】
本実施形態では、マルチスラブ法を用いたASL−MRAで被検体の頭部血管を撮像する場合の例と、ST−MI−ASLを用いたASL−MRAで被検体の頭部血管を撮像する場合の例とを説明する。ここで、マルチスラブ法は、被検体の撮像領域を複数の分割領域に分割して当該複数の分割領域ごとにデータ収集を行う撮像法である。
【0093】
第2の実施形態では、収集部36cは、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲の全体については第1の読み出しシーケンス及び第2の読み出しシーケンスそれぞれを用いてデータ収集を行う。また、合成部36eは、第1の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像のうち第1の範囲における画像と、第2の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像のうち第2の範囲における画像とを合成する。
【0094】
図14は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われるマルチスラブ法を用いたASL−MRAを説明するための図である。
図14では、マルチスラブ法を用いたASL−MRAで被検体の頭部血管を撮像する場合に、主幹動脈側の分割領域141及び末梢動脈側の分割領域142の2つの領域に撮像領域を分割してデータ収集を行う場合の例を示している。
【0095】
例えば、
図14の左側に示すように、収集部36cは、待ち時間TIごとに、FE系の読み出しシーケンス及びSSFP系の読み出しシーケンスそれぞれでデータ収集を行う。そして、
図14の右側に示すように、合成部36eは、FE系の読み出しシーケンスを用いて得られた血流画像のうち主幹動脈側の分割領域141の画像と、SSFP系の読み出しシーケンスを用いて得られた血流画像のうち末梢動脈側の分割領域142の画像とを合成する。これにより、主幹動脈から末梢動脈までが良好に描出された血流画像が得られる。
【0096】
このとき、例えば、合成部36eは、FE系の読み出しシーケンスで得られた血流画像については、主幹動脈側の分割領域141における信号値の重みを末梢動脈側の分割領域142における信号値の重みより大きくし、SSFP系の読み出しシーケンスで得られた血流画像については、末梢動脈側の分割領域142における信号値の重みを主幹動脈側の分割領域141における信号値の重みより大きくしたうえで、それぞれの血流画像を合成する。
【0097】
具体的な例として、例えば、合成部36eは、FE系の読み出しシーケンスで得られた血流画像については、分割領域141における信号値の重み:分割領域142における信号値の重み=1:0とし、SSFP系の読み出しシーケンスで得られた血流画像については、分割領域141における信号値の重み:分割領域142における信号値の重み=0:1としたうえで、それぞれの血流画像を合成する。このとき、例えば、合成部36eは、重み付き加算又は最大値投影(Maximum Intensity Projection:MIP)により、血流画像を合成する。
【0098】
図15は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われるST−MI−ASLを用いたASL−MRAを説明するための図である。
図15では、ST−MI−ASLを用いたASL−MRAで、被検体の頭部血管を撮像する場合の例を示している。
図15において、左上の図は、FE系の読み出しシーケンスでTI=600msとしたときに得られる画像を示しており、右上の図は、FE系の読み出しシーケンスでTI=1400msとしたときに得られる画像を示している。また、
図15において、左下の図は、SSFP系の読み出しシーケンスでTI=600msとしたときに得られる画像を示しており、右下の図は、SSFP系の読み出しシーケンスでTI=1400msとしたときに得られる画像を示している。なお、
図15に示す例では、標識化された血液が、TI=600msとしたときに主幹動脈に達し、TI=1400msとしたときに末梢動脈に達することとしている。
【0099】
例えば、
図15に示すように、収集部36cは、複数の待ち時間TIごとに、FE系の読み出しシーケンス及びSSFP系の読み出しシーケンスそれぞれでデータ収集を行う。そして、合成部36eは、TI=600msについてはFE系の読み出しシーケンスで得られた血流画像(
図15の左上)を用い、TI=1400msについてはSSFP系の読み出しシーケンスで得られた血流画像(
図15の右下)を用いて、複数のTIに渡るダイナミック画像を生成する。これにより、主幹動脈から末梢動脈までが良好に描出されたダイナミック画像が得られる。
【0100】
このとき、例えば、合成部36eは、TI=600msについては、FE系の読み出しシーケンスで得られた血流画像における信号値の重みをSSFP系の読み出しシーケンスで得られた血流画像における信号値の重みより大きくし、TI=1400msについては、SSFP系の読み出しシーケンスで得られた血流画像における信号値の重みをFE系の読み出しシーケンスで得られた血流画像における信号値の重みより大きくしたうえで、TIごとに、それぞれの血流画像を合成する。
【0101】
具体的な例として、例えば、合成部36eは、TI=600msについては、FE系の読み出しシーケンスで得られた血流画像における信号値の重み:SSFP系の読み出しシーケンスで得られた血流画像における信号値の重み=1:0とし、TI=1400msについては、FE系の読み出しシーケンスで得られた血流画像における信号値の重み:SSFP系の読み出しシーケンスで得られた血流画像における信号値の重み=0:1としたうえで、TIごとに、それぞれの血流画像を合成する。このとき、例えば、合成部36eは、重み付き加算又は最大値投影(Maximum Intensity Projection:MIP)により、血流画像を合成する。
【0102】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、標識化用のRF波としてパルス波を用いるPASL(Pulsed ASL)法で被検体の頭部血管を撮像する場合の例を説明する。なお、第3の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には、
図1及び9に示したものと同じである。
【0103】
例えば、PASL法で被検体を撮像する場合に、標識化用のRF波を印加する領域の大きさを血管の走行方向に長く設定すると、待ち時間TIを長くしたときに、標識化された血液は、末梢動脈に流入した状態となるとともに、主幹動脈にも流入した状態となる。そのため、待ち時間TIが長いときにSSFP系の読み出しシーケンスを用いると、主幹動脈の部分でフローボイド(flow-void)が出現したり、血管以外の部分にゴーストなどのアーチファクトが出現したりする場合がある。このことから、血管画像を合成する場合に、待ち時間TIを長くしたときの血管画像には、主幹動脈に流入した血液を残さないようにするのが望ましい。
【0104】
そこで、本実施形態に係るMRI装置は、PASL法で被検体を撮像する際に、標識化用のRF波をタグ領域に印加してから所定の時間が経過した後にタグ領域にサチュレーションパルスを印加することで、RF波によって標識化された血液の後端における血液信号を低減させる。ここで用いられるサチュレーションパルスは、TEC(Tag-End-Cut)パルスと呼ばれる。このように、標識化された血液の後端部分の血液信号を低減させることで、待ち時間TIを長くしたときの血管画像において、主幹動脈に流入した血液を除去することができる。
【0105】
図16〜18は、第3の実施形態に係るMRI装置によって行われるPASL法を説明するための図である。
図16は、第3の実施形態に係るPASL法の読み出しシーケンスを示している。また、
図17は、第3の実施形態に係るPASL法によって得られる血流画像を示している。また、
図18は、第3の実施形態に係るPASL法によって得られる合成画像を示している。
【0106】
本実施形態に係るPASL法の読み出しシーケンスでは、標識化用のRF波を印加してから一定の時間T
tecが経過した後に、標識化用のRF波を印加する時間幅と等価なTECパルスを印加する。そして、標識化用のRF波を印加してからデータ収集を行うまでの待ち時間TIを、T
tecの整数倍となるように段階的に延長する。例えば、待ち時間TIを、短い方から、TI(1)=T
tec、TI(2)=2*T
tec、・・・、TI(n−1)=(n−1)*T
tec、TI(n)=n*T
tecと変える(n:自然数)。ここで、例えば、
図16に示すように、TIを変える幅を少し短めにして、(T
tec−a)としてもよい(a:定数、a<T
tec)。
【0107】
これにより、例えば、
図17に示すように、所定の幅を有するボーラス(bolus)状の血流が待ち時間TIごとに段階的に進んでいく血流画像が得られる。そして、これらの血流画像を合成することで、例えば、
図18に示すように、主幹動脈及び末梢動脈を含んだ頭部全体の血流画像が得られる。なお、
図16に示すようにTIを変える幅を(T
tec−a)とした場合には、血流画像を合成する際に、標識化された血液の境界をオーバーラップさせることができる。これにより、TIが異なる血流画像の境界で血管の端部に無信号の部分が生じるのを防ぐことができ、合成画像における血管の連続性を向上させることができる。
【0108】
そして、本実施形態では、このようなPASL法で被検体を撮像する場合に、収集部36cが、所定の待ち時間TIを境に、データ収集用の読み出しシーケンスを、FE系の読み出しシーケンスからSSFP系の読み出しシーケンスに変更する。例えば、
図16に示すように、収集部36cは、待ち時間の閾値がTI3であった場合には、収集部36cは、
図11に示すように、待ち時間がTI3以下であるときは、FE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集(S1〜S3)を行い、待ち時間がTI3を超えているときは、SSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集(S4〜S6)を行うように、シーケンサ10を制御する。
【0109】
なお、ここでは、PASL法を用いる場合について説明したが、本実施形態は、例えば、CASL(Continuous ASL)法やPCASL(Pulsed Continuous ASL)法を用いる場合も同様に実施が可能である。CASL法は、標識化用のRF波として連続波を用いる方法であり、PCASL法は、CASL法の実用化を目的としたもので、標識化用のRF波として、短いパルス波を複数用いる方法である。
【0110】
CASL法又はPCASL法では、T
tecは、標識化用のRF波の印加時間T
tagに相当し、TECパルスを印加してからデータ収集を行うまでの待ち時間は、標識化用のRF波を印加してからデータ収集を行うまでの待ち時間T
pld(post labeling delay)に相当する。そのため、例えば、CASL法又はPCASL法を用いる場合は、T
pldをT
tagの整数倍となるように段階的に延長する。そして、収集部36cは、PASL法を用いる場合と同様に、所定の待ち時間TIを境に、データ収集用の読み出しシーケンスを、FE系の読み出しシーケンスからSSFP系の読み出しシーケンスに変更する。
【0111】
さらに、本実施形態は、上述したPASL法とマルチスラブ法とを組み合わせて用いる場合も同様に実施が可能である。この場合には、MRI装置は、被検体の撮像領域を複数の分割領域に分割し、撮像領域に流入する流体を標識化するためのRF波を印加してから複数の分割領域にそれぞれに対応する複数の待ち時間が経過するごとにデータ収集を行う撮像法で被検体を撮像する撮像法を行う。そして、分割部36bは、標識化用のRF波を印加してからデータ収集を行うまでの待ち時間に基づいて、空間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。また、収集部36cは、分割された2つの範囲のうち、待ち時間が短い方の範囲については第1の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、待ち時間が長い方の範囲については第2の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。そして、合成部36eは、第1の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像と第2の読み出しシーケンスによって収集されたデータから生成された画像とを合成することで撮像領域の画像を生成する。つまり、合成部36eは、複数の分割領域の画像を合成することで、分割前の撮像領域の画像を生成する。
【0112】
図19は、第3の実施形態に係るMRI装置によって行われるマルチスラブ法を用いたPASL法を説明するための図である。
図19では、マルチスラブ法を用いたPASL法で被検体の頭部血管を撮像する場合に、主幹動脈側の分割領域191と末梢動脈側の分割領域192とに撮像領域を分割してデータ収集を行う場合の例を示している。この場合に、例えば、分割部36bは、被検体の頭部に設定された撮像領域を、待ち時間TIに基づいて、待ち時間T1(1)及びTI(2)に対応する主幹動脈側の分割領域191と、待ち時間T1(3)及びTI(4)に対応する末梢動脈側の分割領域192とに分割する。
【0113】
そして、この場合に、例えば、収集部36cは、待ち時間T1(1)及びTI(2)についてはFE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、待ち時間T1(3)及びTI(4)についてはSSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行うように、シーケンサ10を制御する。この場合も、例えば、
図17に示したように、所定の幅を有するボーラス状の血流が待ち時間TIごとに段階的に進んでいく血流画像が得られる。そして、これらの血流画像を合成することで、例えば、
図18に示したように、主幹動脈及び末梢動脈を含んだ頭部全体の血流画像が得られる。
【0114】
このように、短い待ち時間TIに対応する主幹動脈側の分割領域については、磁場均一性に強く、かつ、空間分解能が高いFE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、長い待ち時間TIに対応する末梢動脈側の分割領域については、SN比が高いSSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行うことによって、主幹動脈及び末梢動脈の両方を高精度に描出した画像を得ることができる。
【0115】
なお、ここでは、収集部36cが、FE系の読み出しシーケンスからSSFP系の読み出しシーケンスに読み出しシーケンスの種類を変更する場合の例を説明したが、例えば、読み出しシーケンスの条件を変更してもよい。その場合には、例えば、収集部36cは、同じ種類の読み出しシーケンスを用いて、短い待ち時間TIに対応する主幹動脈側の分割領域については、空間分解重視の撮像条件でデータ収集を行い、長い待ち時間TIに対応する末梢動脈側の分割領域については、SN比重視の撮像条件でデータ収集を行う。
【0116】
さらに、例えば、収集部36cは、単一の読み出しシーケンスで、血管信号が多い分割領域からデータを収集し、血管信号が少ない分割領域からはデータを収集しないように、シーケンサ10を制御してもよい。なお、この場合には、各分割領域は、データを収集する領域としない領域とを細かく区分けできるように、それぞれ血管の走行方向における幅を狭く設定するのが望ましい。
【0117】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、被検体の撮像領域に流入する流体を標識化するためのRF波を印加してから所定の待ち時間が経過した後にデータ収集を行うパターンを待ち時間を変えて複数回実行する撮像法で被検体を撮像する場合の例を説明する。なお、第4の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には、
図1及び9に示したものと同じである。
【0118】
例えば、このような撮像法の一例として、Hadamard Encoding(HE)法を用いたMulti−Tag(MT)−PASLであるHE−MT−PASLがある。HE法については、例えば、CASL法と組み合わせた方法が、Wells JA et al. In vivo hadamard encoded continuous arterial spin labeling (H-CASL). MRM 63:1111-1118 (2010)により提案されている。HE−MT−PASLでは、タグ画像用のRF波とコントロール画像用のRF波とを所定の時間間隔ごとに効率よく配置してデータを収集し、収集した画像を加減算することで、待ち時間TIが異なる複数のASL画像が得られる。この方法によれば、ST−SI−ASLやST−MI−ASLと比べて、SN比をより向上させることができる。
【0119】
図20は、第4の実施形態に係るMRI装置によって行われるHE−MT−PASLを説明するための図である。HE−MT−PASLでは、例えば、異なる待ち時間TIの組み合わせ数Nが、3、7、15・・・など、すなわち、N=2
n−1(n:自然数)に設定される。
図20では、異なる待ち時間TIの組み合わせ数をN=7(n=3)とした場合の例を示している。
【0120】
なお、
図20に示す複数のRF波(tag/control RF)のうち、左下がりの斜線が付されたものはタグ画像用のRF波であり、右下がりの斜線が付されたものはコントロール画像用のRF波である。
図20に示すように、例えば、N=7とした場合には、2種類の画像用のRF波の順序が異なる8種類((N+1)種類)の読み出しシーケンスの組み合わせが用いられる。また、各読み出しシーケンスにおける待ち時間TI(i)は、k=1〜8の各パターンで同じであれば、任意の時間間隔でよい。
【0121】
ここで、k=1〜8の各パターンで収集されるデータの複素信号をSkとし、各TI(i)における4倍の差分信号S{TI(i)}、i=1〜7は、以下の式で求められる。
【0122】
S{TI(i)}=4[S{TI(i)}−Scont{TI(i)}]
【0123】
すなわち、i=1〜7とした場合には、S{TI(1)}〜S{TI(7)}は、以下の式により求められる。
【0124】
S{TI(1)}=S1−S2+S3−S4+S5−S6+S7−S8
S{TI(2)}=S1+S2−S3−S4+S5+S6−S7−S8
S{TI(3)}=S1−S2−S3+S4+S5−S6−S7+S8
S{TI(4)}=S1+S2+S3+S4−S5−S6−S7−S8
S{TI(5)}=S1−S2+S3−S4+S5−S6+S7−S8
S{TI(6)}=S1+S2−S3−S4−S5−S6+S7+S8
S{TI(7)}=S1−S2−S3+S4−S5+S6+S7−S8
【0125】
そして、この場合のSN比は、1回あたりの差分のNAQ=4回加算に相当するsqrt(4)=2倍となる。
【0126】
また、1回の繰り返し時間をT
repeatとすると、撮像時間は、N組のTIに対して、(N+1)*T
repeatとなる。一方、標識用のRF波を1回印加するごとにデータ収集を行う場合には、撮像時間は、N組のTIに対して、2*(N+1)/2*N*T
repeat=N(N+1)*T
repeatとなる。したがって、HE−MT−SI法では、標識用のRF波を1回印加するごとにデータ収集を行う場合に比べて、撮像時間比はN+1/N(N+1)=1/Nとなる。つまり、N=7とした場合には、標識用のRF波を1回印加するごとにデータ収集を行う場合と同等のSN比のTIの異なる差分画像が、1/7の時間で得られることになる。
【0127】
なお、ASL−MRPにおいて一般的なST−PASLでは、十分なSN比を確保するためには数回程度の加算平均が行われる。これに対し、上述したHE−MT−PASLによれば、同一のデータが1回の収集のみで得られ、かつ、数段階のTIの加算平均と等価な画像が得られるので、収集時間を有効に短縮することができる。なお、コントロール画像用のRF波は、MRP用でMTCが問題となる場合のみ印加されればよい。したがって、血管のMRA用などでMTCが問題とならない場合には、コントロール画像用のRF波は省略されてもよい。
【0128】
また、上述したHE−MT−PASLでは、血液の流速に応じたパルス間隔の制御など、タグ条件に制約がある。さらに、HE法では、血液の流速が時間的に変動する場合、例えば拍動流下で用いられる場合には、同一時刻でのRF波のタイミングで血液の流速が同じでないと、画像を加減算する際、特に減算の際に、不要なタイミングで標識化された流体信号が意図した通りに消えない場合もある。これは、PASL法と組み合わせた場合でも、CASL法と組み合わせた場合でも同様である。そこで、例えば、収集部36cは、同一時刻のRF波が同一の心位相で行われるように、ECGセンサ21及びECGユニット22によって検出される心拍のゲート信号におけるR波をトリガ信号として、最初のRF波を印加するようにしてもよい。
【0129】
そして、本実施形態では、収集部36cは、上述したHE−MT−PASLを用いて被検体を撮像する場合に、k=1〜8の8種類のパターンのうち、いずれか4種類のパターンについてはFE系の読み出しシーケンスでデータ収集を行い、残りの4種類のパターンについてはSSFP系の読み出しシーケンスでデータ収集を行う。この場合には、平均効果によって、SSFP系の読み出しシーケンスで得られる画像とFE系の読み出しシーケンスで得られる画像とが混じった画像が得られる。
【0130】
例えば、
図20に示すように、収集部36cは、8種類のパターンを順に実行する際に、FE系の読み出しシーケンスとSSFP系の読み出しシーケンスとを交互に用いるように、シーケンサ10を制御する。すなわち、収集部36cは、k=1、3、5、7のパターンについてはSSFP系の読み出しシーケンスでデータ収集を行い、k=2、4、6、8のパターンについてはFE系の読み出しシーケンスでデータ収集を行うように制御する。
【0131】
または、例えば、収集部36cは、TIが短い側にタグ画像用のRF波を多く配置したパターンについてはFE系の読み出しシーケンスを用い、TIが長い側にタグ画像用のRF波を多く配置したパターンについてはFE系の読み出しシーケンスを用いるようにしてもよい。
【0132】
さらに、被検体の撮像領域に流入する流体を標識化するためのRF波を印加してから所定の待ち時間が経過した後にデータ収集を行うパターンを待ち時間を変えて複数回実行する撮像法の他の例として、ST−MI−ASLを複数回実行する撮像法がある。この撮像法では、標識化用のRF波を印加してから最初のデータ収集を行うまでの待ち時間を変えながら、ST−MI−ASLのパターンを複数回実行し、収集された複数のデータを、RF波が印加されてからデータ収集を行うまでの待ち時間が同じものごとに加算する例について説明する。
【0133】
図21及び22は、第4の実施形態に係るMRI装置によって行われるST−MR−ASLを説明するための図である。
図21に示すように、例えば、収集部36cは、ST−MI−ASLによるデータ収集をM回実行する。この場合に、例えば、収集部36cは、標識用のRF波を印加してから最初のデータ収集までの待ち時間を所定の時間幅T
intの整数倍となるように変えながら、ST−MI−ASLによるデータ収集をN回実行する。また、例えば、収集部36cは、ST−MI−ASLによるデータ収集を実行するごとに、標識化用のRF波を印加してから所定の時間幅T
intの整数倍の時刻ごとに、N個のMRデータを収集する。なお、本実施形態では、標識用のRF波が印加されてから最初のデータ収集を行うまでの待ち時間と、2回目のデータ収集において標識用のRF波が印加されてからデータ収集を行うまでの経過時間とを、それぞれTIと呼ぶ。
【0134】
ここで、例えば、収集部36cは、各TIをTImnと表した場合に、以下に示すTI11、TI21、TI31、TI41のように、標識用のRF波が印加されてから最初のデータ収集を行うまでの待ち時間を変化させながら、ST−MI−PASLによるデータ収集を実行する。そして、収集部36cは、1回目については、待ち時間TI11が経過した後にデータ収集を行い、その後、TI12、TI13、TI14が経過するごとにデータ収集を実行する。また、収集部36cは、2回目については、待ち時間TI21が経過した後にデータ収集を行い、その後、TI22、TI23、TI24が経過するごとにデータ収集を実行する。また、収集部36cは、3回目については、待ち時間TI31が経過した後にデータ収集を行い、その後、TI32、TI33、TI34が経過するごとにデータ収集を実行する。また、収集部36cは、4回目については、待ち時間TI41が経過した後にデータ収集を行い、その後、TI42、TI43、TI44が経過するごとにデータ収集を実行する。
【0135】
TI14=7T
int
TI13=TI24=6T
int
TI12=TI23=TI34=5T
int
TI11=TI22=TI33=TI44=4T
int
TI21=TI32=TI43=3T
int
TI31=TI42=2T
int
TI41=1T
int
【0136】
そして、収集部36cは、収集された複数のMRデータを補正したうえで、標識用のRF波が印加されてからデータ収集を行うまでの経過時間が同じものごとに加算する。例えば、収集部36cは、加算されるMRデータをS(TI)とし、TIに依存したT1減衰を補正するための補正係数をa(TI)とし、データを収集する順番nに依存したT1減衰を補正するための補正係数をbnとした場合に、以下の式によりS(TI)を求める。
【0137】
S(7T
int)=a(7T
int)*b4*S14
S(6T
int)=a(6T
int)*{b3*S13+b4*S24}/2
S(5T
int)=a(5T
int)*{b2*S12+b3*S23+b4*S34}/3
S(4T
int)=a(4T
int)*{b1*S11+b2*S22+b3*S33+b4*S44}/4
S(3T
int)=a(5T
int)*{b1*S21+b2*S32+b3*S43}/3
S(2T
int)=a(2T
int)*{b1*S31+b2*S42}/2
S(1T
int)=a(1T
int)*b1*S41
【0138】
この方法によれば、
図21に示すように、M+N−1個の異なるTIのMRデータが得られ、かつ、中間のTIほどSN比が向上する。なお、TIが中間より短い場合にはもともとSN比が大きいので問題ないが、TIが中間より長い場合にはSN比は低下し、最も長いTIのSN比は収集されるデータが1個なので、1組のMT−SI−PASLと同じになる。そのため、T
intごとに標識用のRF波とデータ収集とを配置するのが望ましい。さらに、N回のデータ収集の組と最初のデータ収集までの待ち時間TIをT
intずつシフトさせたm組の独立したtagのM組として、m=nとするのがより望ましい。なお、m、nは異なってもよい。
【0139】
また、TIが最も短くなる最後(m=M)のRF波と1回目(n=1)のデータ収集までの時間はT
intである必要はない。また、TIは、T
intの整数倍であればよく、ここでいう整数は必ずしも連続していなくてもよい。抜けたTIについては、合成計算時にゼロとしてないものとすればよい。
【0140】
なお、ASLでは、TIが長いほどSN比は低下するので加算回数を増やしたいが、ST−MI−PASLでは時間的に後のデータほどSN比は低下するため、あまり多くのdataは収集できない。したがって、nは数個にしておき、独立したRF波で収集したm組のデータから合成して中間以降の長いTIでSN比の小さなデータを捨てたとしても、処理効率を向上できる。
【0141】
そして、本実施形態では、収集部36cは、上述した撮像法を用いて被検体を撮像する場合に、標識用のRF波が印加されてから最初のデータ収集を行うまでの待ち時間が短いパターンについてはFE系の読み出しシーケンスでデータ収集を行い、標識用のRF波が印加されてから最初のデータ収集を行うまでの待ち時間が長いパターンについてはSSFP系の読み出しシーケンスでデータ収集を行う。
【0142】
例えば、
図21に示すように、収集部36cは、標識用のRF波が印加されてから最初のデータ収集を行うまでの待ち時間をT
intずつ短くしながらST−MT−ASLのパターンを4回実行する場合に、1回目及び2回目のパターンについてはSSFP系の読み出しシーケンスでデータ収集を行い、3回目及び4回目のパターンについてはSSFP系の読み出しシーケンスでデータ収集を行うように、シーケンサ10を制御する。
【0143】
または、収集部36cは、各パターンにおけるデータ収集ごとに、標識用のRF波が印加されてからデータ収集を行うまでの待ち時間が短いものについてはFE系の読み出しシーケンスを用い、標識用のRF波が印加されてからデータ収集を行うまでの待ち時間が長いものについてはSSFP系の読み出しシーケンスを用いるようにしてもよい。
【0144】
例えば、
図22に示すように、収集部36cは、4回のパターンについて、標識用のRF波が印加されてからデータ収集を行うまでの待ち時間が4T
int以下であるデータ収集S11、S21、S22、S31〜S33、S41〜S44についてはFE系の読み出しシーケンスを用い、標識用のRF波が印加されてからデータ収集を行うまでの待ち時間が4T
intより長いデータ収集S12〜S14、S23〜S24、S34についてはSSFP系の読み出しシーケンスを用いるように、シーケンサ10を制御する。
【0145】
上述した第1〜4の実施形態に係るMRI装置によれば、単一の読み出しシーケンスを用いる場合と比べて、全ての待ち時間TIにおいて、磁化率効果の影響が少ない、かつ、SN比に優れた、臓器全体のMRA画像又はMRP画像を得ることができる。また、第1〜4の実施形態に係るMRI装置によれば、例えば脳の動脈血管を撮像する場合に、主幹動脈だけでなく、末梢動脈における血流の描出能を向上させることができる。また、第1〜4の実施形態に係るMRI装置によれば、標識化用のRF波を印加してから標識化された血液が到達するまでの遅延時間が長い組織の部分について、SN比が高い灌流画像が得られる。
【0146】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、被検体の撮像領域を複数の分割領域に分割して当該複数の分割領域ごとにデータ収集を行う撮像法で被検体の頭部血管を撮像する場合の例を説明する。なお、第5の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には、
図1及び9に示したものと同じである。
【0147】
例えば、このような撮像法の一例として、マルチスラブ法を適用した3DTOF−MRAであるマルチスラブ3DTOF−MRAがある。マルチスラブ3DTOF−MRAでは、標識化用のRF波を印加する代わりに、縦磁化が十分に回復した血液のインフロー(in-flow)効果と、静止部における縦磁化の抑制効果とによるコントラスト差を利用するため、撮像領域(imaging slab)のみが設定される。
【0148】
このようなマルチスラブ3DTOF−MRAで被検体を撮像する場合に、分割部36bは、分割領域に基づいて、被検体を撮像する際の空間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。また、収集部36cは、分割部36bによって分割された2つの範囲のうち、主幹動脈を含む範囲については第1の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、末梢動脈を含む範囲については第2の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。
【0149】
図23は、第5の実施形態に係るMRI装置によって行われるマルチスラブ3DTOF−MRAを説明するための図である。
図23に示すように、例えば、マルチスラブ3DTOF−MRAでは、被検体の撮像領域を4つの分割領域に分割して、それぞれの分割領域についてデータ収集が行われる。
【0150】
この場合に、例えば、分割部36bは、標識化された血液が主幹動脈を流れる範囲と、末梢動脈を流れる範囲とに空間的な範囲を分割する。また、例えば、収集部36cは、ウィリス動脈輪部の近傍にある主幹動脈部については、磁場不均一性に強いFE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、頭頂などの末梢動脈部については、SN比に優れたSSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行うように、シーケンサ10を制御する。
【0151】
なお、上述したマルチスラブ3DTOF−MRAでは、撮像領域に照射するRF波のフリップ角に傾斜をつけることで末梢動脈の描出能の向上を図るTONE法が併用されてもよい。また、2Dマルチスライス法でも適用が可能である。その場合、読み出しシーケンスの撮像条件を変えてもよい。TOF法は基本的にはGREであるが、その中の撮像条件うち、TONE法での傾斜は対象スラブ内の血流速に応じて変化させてもよい。すなわち、流速が遅いほど傾斜を急にする。またTEとGMN(Gradient Moment Nulling)の組み合わせを、短いTE+0次GMNと、長いTE+1次GMNとで使い分ける。脳の主幹動脈部など磁化率が大きく流速が速ければ前者、抹消で逆なら後者にすることで、位相分散による信号低下を抑制する。さらに、BW(BandWidth)を変えたものを組み合わせても良い。抹消は狭いBWでSN比を向上させ、主幹部は広めのBWで位相分散による信号低下を抑制する。
【0152】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、マルチスラブ法による撮像をTOF−MRA及びASL−MRA/MRPと組み合わせたマルチスラブASLで被検体の頭部血管を撮像する場合の例を説明する。なお、第2の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には、
図1及び9に示したものと同じである。
【0153】
マルチスラブASLでは、被検体の撮像領域を複数の分割領域に分割し、各分割領域について、当該分割領域から一定の距離だけ流体の上流側に離れた標識化領域に当該分割領域に流入する流体を標識化するためのRF波を印加してから一定の待ち時間が経過した後にデータ収集を行う撮像法で被検体を撮像する。
【0154】
図24は、第6の実施形態に係るMRI装置によって行われるマルチスラブASLを説明するための図である。
図24に示すように、例えば、マルチスラブASLでは、撮像領域(imaging slab)を4つの分割領域121〜124に分割する。そして、4つの分割領域それぞれのデータを収集する際に、各分割領域から一定の距離だけ血流の上流側に離れたタグ領域(tag slab)に標識化用のRF波を印加する。すなわち、マルチスラブASLでは、データ収集を行う分割領域を移動しながら、分割領域の移動にともなって、タグ領域を分割領域から一定の距離を保った状態で追随させて移動する。なお、
図24では図示を省略しているが、コントロール領域についても、それぞれの分割領域に対して相対的な位置を同じにして追随させる。
【0155】
このようなマルチスラブASLによれば、複数の分割領域についてタグ領域の位置を撮像領域全体の上流側に固定する場合と比べて、下流側の分割領域になるほど、標識化された血液が到達するまでの時間が短くなり、SN比を向上させることができる。そのため、標識化用のRF波を印加してからデータ収集を行うまでの待ち時間TIを延長しなくても、タグ領域から遠い分割領域内にある血管(MRA)や灌流(MRP)も良好に描出することができる。
【0156】
このようなマルチスラブASLで被検体の頭部血管を撮像する場合に、例えば、分割部36bは、分割領域に基づいて、撮像領域を少なくとも2つの範囲に分割する。また、収集部36cは、分割部36bによって分割された範囲のうち、主幹動脈を含む範囲については第1の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、末梢動脈を含む範囲については第2の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。
【0157】
例えば、
図24に示すように、収集部36cは、4つの分割領域のうち、主幹動脈を含む上流側の分割領域121及び122については、FE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。また、収集部36cは、末梢動脈を含む下流側の分割領域123及び124については、SSFP系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。これにより、被検体の頭部血管が全体にわたって良好に描出することができる。
【0158】
上述した第5及び6の実施形態に係るMRI装置によれば、単一の読み出しシーケンスを用いる場合と比べて、撮像時間を延長することなく、磁化率効果の影響の少ない、かつ、SN比が優れた画像を得ることができる。また、第5及び6の実施形態に係るMRI装置によれば、例えば脳の動脈血管を撮像する場合に、主幹動脈だけでなく、末梢動脈における血流の描出能を向上させることができる。
【0159】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態では、拡散イメージングで被検体を撮像する場合の例を説明する。なお、第7の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には、
図1及び9に示したものと同じである。
【0160】
近年、拡散イメージングは、脳神経領域だけでなく、腫瘍検出用に全身臓器でも使用されてきている。また、拡散イメージングでは、一般的に、SE系のシングルショットSE−EPI(S−EPI)の読み出しシーケンスが用いられる。
【0161】
ここで、脳神経領域では、小脳、前髄など脳底部や頸部、胸部の脊髄などの部分、腹部領域では、肺や肺に近い肝臓部や直腸や大腸に近い部分は、磁場不均一性が大きくなることが知られている。しかし、S−EPIの読み出しシーケンスは磁場不均一性に弱く、歪みが大きくなったり、別のボクセルに描出されるべき信号が1つのボクセル内で重なって描出されてしまったりする場合もある。
【0162】
また、拡散イメージングで用いられる他の読み出しシーケンスには、FSE系(例えば、HASTE:Half-Fourier Single shot Turbo spin Echo)や、ナビゲータエコー(navigator echo)を同時に収集して動きによるショットごとの位相差を補正するマルチショットEPI(M−EPI)がある。さらに、k空間の軌跡(trajectory)の違いによって、non−Cartesian系のPROPELLER(JET)、radial系などがある。しかし、これらの読み出しシーケンスは、S−EPIの読み出しシーケンスと比べて、単位時間当たりのSN比が低いなどの理由で、1種類の読み出しシーケンスや撮像条件で全身などの広い領域を撮像するのは難しかった。
【0163】
このような拡散イメージングで被検体を撮像する場合に、分割部36bは、静磁場強度(B0)の分布に基づいて、被検体を撮像する際の空間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。例えば、分割部36bは、deltaB0の標準偏差に関する所定の閾値に基づいて、被検体を撮像する際の撮像領域を2つに分割する。
【0164】
また、収集部36cは、分割部36bによって分割された2つの範囲のうち、静磁場不均一性が大きい方の範囲については第1の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、静磁場不均一性が小さい方の範囲については第2の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。例えば、収集部36cは、2つの範囲のうち、deltaB0の標準偏差が大きい方を静磁場不均一性が大きい範囲とし、deltaB0の標準偏差が小さい方を静磁場不均一性が小さい範囲とする。なお、撮像対象が頭部であれば、静磁場不均一性が大きい方の範囲は頸部や脳底部などに相当し、静磁場不均一性が小さい方の範囲は頭頂部などに相当する。また、撮像対象が腹部であれば、静磁場不均一性が大きい方の範囲は肺や肝臓の肺に近い部分などに相当し、静磁場不均一性が小さい方の範囲は腔腹膜臓器などに相当する。
【0165】
例えば、収集部36cは、静磁場不均一性が大きい方の範囲については、歪みに強いFSE系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。また、収集部36cは、静磁場不均一性が小さい方の範囲については、FSE系と比べて歪みには強くないが、SN比が高いS−EPI系の読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行う。
【0166】
また、例えば、収集部36cは、静磁場不均一性が大きい方の範囲については、FSE系の読み出しシーケンスでPROPELLER(JET)を用いてデータ収集を行い、静磁場不均一性が小さい方の範囲については、S−EPIの読み出しシーケンスでデータ収集を行ってもよい。
【0167】
なお、例えば、収集部36cは、静磁場不均一性が大きい方の範囲については、同じ読み出しシーケンス又は異なる読み出しシーケンスを用いて、歪みに強い撮像条件でデータ収集を行い、静磁場不均一性が小さい方の範囲については、SN比が高い撮像条件でデータ収集を行ってもよい。このとき、例えば、収集部36cは、歪みに強い撮像条件として、SENSE−Factorを高くしたものを用い、SN比が高い撮像条件として、SENSE−Factorを低くしたものを用いる。
【0168】
また、例えば、収集部36cは、同じEPIの読み出しシーケンスを用いて、静磁場不均一性が大きい方の範囲については、ショット数を多くした撮像条件でデータ収集を行い、静磁場不均一性が小さい方の範囲については、ショット数を少なくした撮像条件でデータ収集を行ってもよい。例えば、収集部36cは、静磁場不均一性が大きい方の範囲については、M−EPIの読み出しシーケンスを用いてデータ収集を行い、静磁場不均一性が小さい方の範囲については、S−EPIの読み出しシーケンスでデータ収集を行う。
【0169】
また、拡散イメージングでは、MPG強度やb−valueが大きくなると、渦電流による歪みも大きくなることが知られている。そこで、例えば、収集部36cは、静磁場不均一性が大きい方の範囲については、MPG強度やb−valueを小さくした撮像条件でデータ収集を行い、静磁場不均一性が小さい方の範囲については、MPG強度やb−valueを大きくした撮像条件でデータ収集を行ってもよい。
【0170】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。第8の実施形態では、定量値画像(パラメータ画像)を撮像する場合の例を説明する。なお、第8の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には、
図1及び9に示したものと同じである。
【0171】
近年、検査間での比較が容易なことから、T1やT2、プロトン密度、ADC、血流量、ケミカルシフト、磁化率、温度などのMRIに関する各種パラメータを画像化することが行われている。
【0172】
このように、所定の定量値を空間マッピングするための撮像法で被検体を撮像する場合に、分割部36bは、対象部位の特性に応じて、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲を分割する。そして、収集部36cは、分割部36bによって分割された複数の範囲ごとに、各範囲に含まれる対象部位の特性に応じて、データ収集用の読み出しシーケンスの種類又は撮像条件を変更する。
【0173】
以上、第1〜8の実施形態に係るMRI装置について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、上述した実施形態では、分割部36bが、撮像対象の部位に関する解剖学的な情報に基づいて、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲を分割する場合について説明したが、分割の方法はこれに限られない。
【0174】
例えば、分割部36bは、シミング用に測定された静磁場強度の分布に基づいて、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲を分割してもよい。例えば、分割部36bは、deltaB0に関する標準偏差や平均値などの統計値に基づいて、時間的な範囲又は空間的な範囲を少なくとも2つの範囲に分割する。この場合には、分割部36bは、deltaB0に関する統計値について所定の閾値を設定し、その閾値を境に、時間的な範囲又は空間的な範囲を分割する。
【0175】
また、例えば、分割部36bは、撮像領域の位置決めに用いられる画像に基づいて、被検体を撮像する際の時間的な範囲又は空間的な範囲を分割してもよい。例えば、分割部36bは、位置決め画像として撮像されたアキシャル像、コロナル像又はサジタル像に対して操作者が指定した位置を境に、時間的な範囲又は空間的な範囲を分割する。この場合、例えば、分割部36bは、3DTOFの画像を取得済みであれば、3DTOFの画像を位置決め用の画像として用い、未取得であれば、2DPC(Phase Contrast)法で取得した画像を位置決め用の画像として用いてもよい。
【0176】
また、上述した実施形態では、FE系の読み出しシーケンスとSSFP系の読み出しシーケンスとを用いた場合の例を中心に説明したが、読み出しシーケンスの種類はこれに限られない。すなわち、収集部36cは、分割部36bによって分割された少なくとも2つの範囲について、撮像対象の部位や撮像の目的に応じて、読み出しシーケンスの種類を適宜に使い分ける。例えば、収集部36cは、2つの範囲のうち、一方の範囲でSN比が求められる場合は、その範囲については、他方の範囲で用いる読み出しシーケンスよりも単位収集時間あたりのSN比が高い読み出しシーケンスを用いる。また、例えば、収集部36cは、2つの範囲のうち、一方の範囲で空間分解能が求められる場合は、その範囲については、他方の範囲で用いる読み出しシーケンスよりも空間分解能が高い読み出しシーケンスを用いる。また、例えば、収集部36cは、2つの範囲のうち、一方の範囲が静磁場不均一性の影響を受けやすい場合は、その範囲については、他方の範囲で用いる読み出しシーケンスよりも静磁場不均一性に強い読み出しシーケンスを用いる。
【0177】
また、収集部36cは、分割部36bによって分割された少なくとも2つの範囲について、撮像対象の部位や撮像の目的に応じて、読み出しシーケンスの撮像条件を適宜に使い分けてもよい。例えば、収集部36cは、2つの範囲のうち、一方の範囲でSN比が求められる場合は、その範囲については、他方の範囲で用いる撮像条件よりも単位収集時間あたりのSN比が高い撮像条件を用いる。また、例えば、収集部36cは、2つの範囲のうち、一方の範囲で空間分解能が求められる場合は、その範囲については、他方の範囲で用いる撮像条件よりも空間分解能が高い撮像条件を用いる。また、例えば、収集部36cは、2つの範囲のうち、一方の範囲が静磁場不均一性の影響を受けやすい場合は、その範囲については、他方の範囲で用いる撮像条件よりも静磁場不均一性に強い撮像条件を用いる。
【0178】
また、上述した実施形態では、被検体の頭部血管を撮像する場合の例を中心に説明したが、撮像対象となる部位は頭部に限られない。例えば、撮像対象の部位は、腹部などの他の部位であってもよい。また、上述した実施形態では、血流画像を生成する場合の例を中心に説明したが、撮像対象となる流体は血液に限らない。例えば、撮像対象の流体は、CSF(cerebrospinal fluid)などの他の流体であってもよい。
【0179】
前述したように、読み出しシーケンスの撮像条件は、所定の撮像領域を撮像する際に用いられる撮像パラメータのパラメータ値である。つまり、撮像条件が異なるということは、あるスライス位置のデータを収集する際の撮像パラメータのパラメータ値が異なることを意味する。例えば、撮像領域を時間的な範囲に分割する場合には、同じスライス位置について、分割された時間的な範囲ごとに、読み出しシーケンスの撮像パラメータのパラメータ値を変えてデータ収集が行われる。また、例えば、撮像領域を空間的な範囲に分割する場合には、異なるスライス位置について、分割された空間的な範囲ごとに、読み出しシーケンスの撮像パラメータのパラメータ値を変えてデータ収集が行われる。
【0180】
上述した第1〜8の実施形態に係るMRI装置によれば、時間的な範囲又は空間的な範囲の異なる全ての部分について、単一の読み出しシーケンス種又は単一の撮像条件で撮像する場合と比べて、ほぼ同一の撮像時間で、よりアーチファクトの少ない、空間分解能やSN比に優れたMRI画像を得ることができる。
【0181】
また、上述した第1〜8の実施形態では、撮像領域を時間的又空間的な範囲に分割し、分割された範囲ごとに、読み出しシーケンスの種類及び撮像条件の少なくとも一方を変える場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、分割された範囲ごとに、読み出しシーケンスの前に印加されるプリパルスの条件を変えてもよい。
【0182】
例えば、分割された範囲ごとに、ASL法で用いられる標識化用のRFパルスのタグ条件を変えてもよい。例えば、第6の実施形態で説明したように、収集部が、マルチスラブASLで被検体を撮像する場合に、時間的又空間的に分割された範囲ごとに、データ収集を行う分割領域の移動に追随させて、標識化用のRFパルスを印加する領域すなわちタグ領域の位置を移動させる。このとき、例えば、収集部は、タグ領域と分割領域との相対位置が変わらないように、タグ領域の絶対位置を変える。
【0183】
また、例えば、アディアバティックパルスを用いた撮像が行われる場合に、分割された範囲ごとに、アディアバティックパルスである反転パルスのRFパワー(フリップ角)を変えてもよい。アディアバティックパルスは、理論的には、縦磁化が180度倒れる以上のRFパワー(フリップ角)に対しても縦磁化は180度以上回転することはない。しかし、RFパワーが大きくなれば、送信RFコイルに送信されるRF波を増幅するRFアンプの負荷が大きくなるので、短時間に複数のアディアバティックパルスを印加する場合は、デューティサイクルを考慮した最適な大きさにRFパワーを配分する必要がある。例えば、送信RFコイルの感度が不均一であることを考慮して、収集部が、分割された範囲のうち、送信RFパワーが低めになるRFコイルの中心から遠い範囲については、反転パルスのフリップ角を300度とし、送信RFパワーが十分なRFコイルの中心に近い範囲については、反転パルスのフリップ角を180度とするように制御する。
【0184】
上述した少なくとも1つの実施形態に係るMRI装置によれば、撮像対象の部位や撮像の目的に応じて、より高画質な画像を得ることができる。
【0185】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。