(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0010]本議論は代表的な態様のみの説明であり、本発明のより広い形態を限定することは意図していないことが当業者に理解される。
【0010】
[0011]本発明は、概して半結晶質ポリアリーレンスルフィドを形成する方法に関する。より具体的には、開示される方法は、ポリアリーレンスルフィドを形成し、次にポリアリーレンスルフィドを予め加熱した結晶化溶液で希釈してポリマー混合物を形成することを含む。次に、ポリマー混合物をゆっくりと冷却してポリマーを結晶化させることができる。結晶化溶液を予め加熱することによって、ポリマーの結晶化をより確実にすることができ、生成物ポリマーは複数の物理特性に関してより大きな安定性を示すことができる。
【0011】
[0012]結晶化溶液は、本方法及び生成物に対して更なる利益を与えるように特定の成分を用いて設計することができる。例えば一態様においては、結晶化溶液を酸性にして、結晶化プロセスに対して悪影響を与える可能性があるポリマー混合物の成分を中和することができる。結晶化溶液には、ポリマーの性質及び/又はポリマー混合物中の他の成分、並びに生成物の所望の特性に応じて、更なる成分又は代わりの成分を所定の割合で含ませることができる。例えば、結晶化溶液は酸性又は塩基性にすることができ、水性又は有機にすることができ、或いは水性成分及び有機成分の両方を含ませることができる。
【0012】
[0013]
図1は、結晶化装置106を含む形成プロセスの一態様を示す。示されているように、結晶化溶液を、反応器104から結晶化装置106に移送することができるポリマーと共に結晶化装置106に供給することができる。ポリマーは、ポリアリーレンスルフィド及び溶媒を、未反応のモノマー、オリゴマー、触媒、副生成物(例えば塩)等のような他の形成成分に加えて含んでいてよいポリマー組成物の一成分であってよい。一態様においては、ポリマー組成物はほぼ無水の組成物であってよく、水を少ししか含まないか又は全く含まなくてよい。例えば、反応器104から排出されるポリマー組成物は、水が約2重量%未満又は約1重量%未満、例えば水が0〜約2重量%の間であってよい。
【0013】
[0014]一態様においては、結晶化溶液に水を含ませることができ、ポリマーに加える結晶化溶液の量は、形成されるポリマー混合物が混合物の重量基準で水が約3重量%〜約10重量%、約4重量%〜約7重量%、又は約5重量%になるようなものであってよい。
【0014】
[0015]結晶化溶液に有機溶媒を含ませることができる。例えば、結晶化溶液に、ポリマーの形成において用いる有機アミド溶媒を含ませることができる。ポリアリーレンスルフィドの形成において用いることができる代表的な有機アミド溶媒としては、限定なしにN−メチル−2−ピロリドン;N−エチル−2−ピロリドン;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;N−メチルカプロラクタム;テトラメチル尿素;ジメチルイミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミド、及びこれらの混合物を挙げることができる。結晶化装置に加えることができる有機アミド溶媒の量は、約3〜約5、又は約4のポリマーのモノマー単位に対する溶媒のモル数の比が得られるようなものであってよい。例えば、ポリマー組成物及び結晶化溶液を含んで形成される混合物は、有機アミド溶媒が約60重量%〜約90重量%、又は約70重量%〜約80重量%であってよい。
【0015】
[0016]一態様によれば、結晶化溶液に酢酸のような酸を含ませることができる。ここで更に議論するポリマーの形成の過程においては、有機アミド溶媒が加水分解して有機アミンを形成する可能性があり、これはポリマー組成物中において界面活性剤として機能し、且つ結晶化プロセスを妨げると考えられている。結晶化溶液中の酸は、有機アミンを中和してそれを転化させて有機アミドに戻し、これによって例えば、そうでなければ形成されるであろうものよりも高い結晶化温度:T
c2を有する生成物ポリマーを形成することによってポリマーの結晶化を向上させることができる。
【0016】
[0017]結晶化溶液中に含ませることができる酸のモル量は、ポリマーの形成中に形成される硫化水素のモル量と同等であってよい。ポリマーの形成中に形成される硫化水素副生成物の量は公知なように変動する可能性があるが、一般にプロセスに加えるイオウの全量の約20モル%未満、例えばプロセスに加える全イオウの約1モル%〜約15モル%、約2モル%〜約10モル%、又は約3モル%〜約4モル%であってよい。
【0017】
[0018]ポリマーと混合する前に、結晶化溶液を予め加熱して、結晶化溶液とポリマー組成物を混合することによって形成される混合物が約230℃以上の初期温度を有するようにすることができる。例えば、結晶化溶液は、ポリマー組成物と混合する前に約50℃〜約200℃、又は約80℃〜約150℃の温度に予め加熱することができる。
【0018】
[0019]一般に、結晶化装置に供給するポリアリーレンスルフィドは、式(I):
【0020】
(式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、及びAr
4は、同一か又は異なり、6〜18個の炭素原子のアリーレン単位であり;W、X、Y、及びZは、同一か又は異なり、−SO
2−、−S−、−SO−、−CO−、−O−、−COO−、又は1〜6個の炭素原子のアルキレン若しくはアルキリデン基から選択される二価の連結基であり、連結基の少なくとも1つは−S−であり;そして、n、m、i、j、k、l、o、及びpは、独立して、0、又は1、2、3、若しくは4であり、但しこれらの合計は2以上である)
の繰り返し単位を含むポリアリーレンチオエーテルであってよい。アリーレン単位のAr
1、Ar
2、Ar
3、及びAr
4は、選択的に置換又は非置換であってよい。有利なアリーレン系は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセン、及びフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは、通常は約30モル%より多く、約50モル%より多く、又は約70モル%より多いアリーレンスルフィド(−AR−S−)単位を含んでいてよい。一態様においては、ポリアリーレンスルフィドは、少なくとも約85モル%の、2つの芳香環に直接結合しているスルフィド連結基を含む。一態様においては、本方法によって形成されるポリアリーレンスルフィドは、本発明においてその成分としてフェニレンスルフィド構造:−(C
6H
4−S)
n−(式中、nは1以上の整数である)を含むものとして定義されるポリフェニレンスルフィドであってよい。
【0021】
[0020]ポリマー及び結晶化溶液を含むポリマー混合物は、結晶化装置106においてゆっくりと冷却して半結晶質ポリアリーレンスルフィドを形成することができる。例えば、ポリマー混合物は、約1℃/分未満、例えば約0.2℃/分〜約0.8℃/分、約0.3℃/分〜約0.7℃/分、又は約0.4℃/分〜約0.6℃/分の速度で冷却することができる。一態様においては、ポリマー混合物は約0.5℃/分の速度で冷却することができる。
【0022】
[0021]ポリマー混合物は一般に約190℃以下の温度に冷却することができ、ポリアリーレンスルフィドを冷却プロセス中に結晶化させることができる。例えば、ポリマー混合物を約170℃〜約190℃の間の温度に冷却することができ、ポリアリーレンスルフィドを結晶化させて半結晶質ポリマーを形成することができる。
【0023】
[0022]ポリアリーレンスルフィドを形成するのに用いる方法は限定されないが、一態様においては、ポリアリーレンスルフィドは
図1に示すような多段階プロセスで形成することができる。例えば、本多段階プロセスには、3つの異なる反応器100、102、104内で行うことができる少なくとも3つの別々の形成段階を含ませることができる。形成プロセスの第1段階には、アルカリ金属硫化物を有機アミド溶媒と反応させて、溶媒の加水分解生成物、及び硫化水素アルカリ金属を含む複合体を形成することを含ませることができる。形成プロセスの第2段階には、第1段階において形成される複合体をジハロ芳香族モノマーと反応させてプレポリマーを形成することを含ませることができ、第3段階にはプレポリマーを更に重合して最終生成物を形成することを含ませることができる。
【0024】
[0023]他の態様においては、形成プロセスの3つの段階を単一の反応器内又は2つの反応器内で行うことができる。例えば、プロセスの第1及び第2段階を単一の反応器内で行うことができ、その後、プレポリマーを更なる重合のために第2の反応器に移す。或いは、まず第1の反応器内で複合体を形成することができ、次にプレポリマー及びポリマーを第2の反応器内で逐次形成することができる。
【0025】
[0024]
図1の3つの反応器のシステムを再び参照すると、第1の反応器100は、その間に有機アミド溶媒とアルカリ金属硫化物を反応させて、有機アミド溶媒の加水分解生成物及び硫化水素アルカリ金属を含む複合体を形成することができるプロセスの第1段階のために用いることができる。
【0026】
[0025]ポリアリーレンスルフィドの形成において用いることができる代表的な有機アミド溶媒としては、限定なしに、N−メチル−2−ピロリドン;N−エチル−2−ピロリドン;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;N−メチルカプロラクタム;テトラメチル尿素;ジメチルイミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミド、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0027】
[0026]アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、又はこれらの混合物であってよい。アルカリ金属硫化物はまた、in situで生成させることもできる。例えば、硫化ナトリウム水和物は、第1
の反応器100内において、この反応器に供給することができる硫化水素ナトリウム及び水酸化ナトリウムから生成させることができる。硫化水素アルカリ金属とアルカリ金属水酸化物の組み合わせを反応器100に供給してアルカリ金属硫化物を形成する場合には、硫化水素アルカリ金属に対するアルカリ金属水酸化物のモル比は約1.005〜約1.020の間であってよい。更に、少量のアルカリ金属水酸化物を第1の反応器100中に含ませて、アルカリ金属硫化物と共に非常に少量で存在する可能性があるアルカリ金属ポリスルフィド又はアルカリ金属チオスルフェートのような不純物を除去するか又は(例えばかかる不純物を無害の材料に変化させるために)反応させることができる。
【0028】
[0027]
図1に示す態様においては、第1の反応器100への供給流には、硫化ナトリウム(Na
2S)(水和形態であってよい)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、及び水を含ませることができる。水、硫化ナトリウム、及びNMPの間の反応によって、下記の反応スキームにしたがって、ナトリウムメチルアミノブチレート(SMAB:NMPの加水分解生成物)、及び硫化水素ナトリウム(NaSH)を含む複合体(SMAB−NaSH)を形成することができる。
【0030】
[0028]一態様によれば、第1段階反応器内において化学量論的に過剰のアルカリ金属硫化物を用いることができるが、これは形成段階の必須要件ではない。例えば、供給流中における有機アミド溶媒に対するイオウのモル比は、約0.2〜約5、約0.5〜約2、約0.6〜約1、又は約0.7〜約0.8であってよい。
【0031】
[0029]複合体の形成中においては、第1の反応器100内の圧力は大気圧又はその付近に保持することができる。低圧反応条件を維持するために、反応器から蒸気を取り出すことができる。蒸気の主成分としては、水及び硫化水素副生成物を挙げることができる。
図1に示すように、蒸気の硫化水素は例えば凝縮器106において分離することができる。一態様においては、反応器供給流に化学量論的に過剰のアルカリ金属硫化物を含ませることができる。この態様においては、SMAB−NaSH複合体を含む生成物溶液は高アルカリ性の溶液になる。高アルカリ性のSMAB−NaSH溶液は第1の反応器100内において硫化水素に対する吸収剤として作用させることができ、反応器100からの蒸気流中への硫化水素の損失を低下させることができるので、これは一態様においては有益である可能性がある。
【0032】
[0030]凝縮器106において分離される水の一部は、反応条件を維持するために反応器100に戻すことができる。水の他の部分は、プロセスから取り出して、第1段階において形成されるSMAB−NaSH溶液を脱水することができる。例えば、第1の反応器100の生成物溶液中のNaSHに対する水のモル比は、約1.5未満にすることができ、或いは約0.1〜約1の間にすることができ、これにより第2段階反応器102に供給されるSMAB−NaSH複合体溶液がほぼ無水になるようにすることができる。
【0033】
[0031]第1段階において用いる反応器はステンレススチールであってよいが、ニッケルベースの合金又はチタンのような他の材料を用いることによって改良された耐腐食性を得ることができる。第1の反応器100における材料は、複合体形成反応中において、例えば約140℃〜約220℃、例えば約150℃〜約210℃、又は約165℃〜約200℃の間の温度に加熱される可能性がある。複合体形成反応は発熱反応であり、必要に応じて好適な温度制御メカニズムを用いて所望の反応条件を維持することができる。反応はバッチ式又は連続的に行うことができる。
【0034】
[0032]SMAB−NaSH複合体は、プロセスの第2段階においてポリアリーレンスルフィドプレポリマーが形成されるように、ジハロ芳香族モノマー及び好適な溶媒と共に第2の反応器102に供給することができる。ジハロ芳香族モノマーは、限定なしに、ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、又はジハロジフェニルケトンであってよい。ジハロ芳香族モノマーは、単独か又はその任意の組合せのいずれかで用いることができる。具体的な代表的ジハロ芳香族モノマーとしては、限定なしに、p−ジクロロベンゼン;m−ジクロロ
ベンゼン;o−ジクロロベンゼン;2,5−ジクロロトルエン;1,4−ジブロモベンゼン;1,4−ジクロロナフタレン;1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン;4,4’−ジクロロビフェニル;3,5−ジクロロ安息香酸;4,4’−ジクロロジフェニルエーテル;4,4’−ジクロロジフェニルスルホン;4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド;及び4,4’−ジクロロジフェニルケトン;を挙げることができる。
【0035】
[0033]ジハロ芳香族モノマーのハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であってよく、同じジハロ芳香族モノマー中の2つのハロゲン原子は、同一か又は互いと異なっていてよい。一態様においては、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、又はこれらの2以上のモノマーの混合物を、ジハロ芳香族モノマーとして用いる。
【0036】
[0034]ポリアリーレンスルフィドはホモポリマーであってよく、或いはコポリマーであってよい。複数のジハロ芳香族モノマーの好適な選択的組み合わせによって、2つ以上の異なる単位を含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。例えば、p−ジクロロベンゼンをm−ジクロロベンゼン又は4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて用いる場合には、式(II):
【0038】
の構造を有するセグメント、及び式(III):
【0040】
の構造を有するセグメント、又は式(IV):
【0042】
の構造を有するセグメントを含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
【0043】
[0035]他の態様においては、コポリマーを形成することができ、式(V):
【0045】
(式中、基R
1及びR
2は、互いに独立して、水素、フッ素、塩素、又は臭素原子、或いは1〜6個の炭素原子を有する分岐若しくは非分岐のアルキル又はアルコキシ基である)を有するモノマーをシステムに充填することができる。一態様においては、式(V)のモノマーはp−ヒドロキシ安息香酸又はその誘導体の1つであってよい。
【0046】
[0036]システムに充填することができる他のモノマーは、式(VI):
【0048】
の構造を有していてよい。式(VI)のモノマーの1つの例は、2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸である。式V及びVIのモノマーを両方ともシステムに充填して、ポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
【0049】
[0037]ポリアリーレンスルフィドコポリマーは、式(VII):
【0051】
(式中、Arは芳香族基、或いは1つより多い縮合芳香族基であり、qは2〜100、特に5〜20の数である)
のポリアリーレンスルフィド構造から誘導されるセグメントを含んでいてよい。式(VII)における基Arは、フェニレン又はナフチレン基であってよい。一態様においては、第2のセグメントは、ポリ(m−チオフェニレン)、ポリ(o−チオフェニレン)、又はポリ(p−チオフェニレン)から誘導することができる。
【0052】
[0038]ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状、分岐、又は架橋型であってよい。線状ポリアリーレンスルフィドは、主構成単位として−(Ar−S)−の繰り返し単位を含む。一般に、線状ポリアリーレンスルフィドは、約80モル%以上のこの繰り返し単位を含んでいてよい。線状ポリアリーレンスルフィドは少量の分岐単位又は架橋単位を含んでいてよいが、分岐又は架橋単位の量は、ポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1モル%未満であってよい。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上述の繰り返し単位を含むランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってよい。
【0053】
[0039]半線状ポリアリーレンスルフィドを形成することができ、これは、3つ以上の反応性官能基を有する少量の1種類以上のモノマーをポリマー中に導入することによって与えられる架橋構造又は分岐構造を有していてよい。例えば、ポリマーの約1モル%〜約10モル%の間を、3つ以上の反応性官能基を有するモノマーから形成することができる。
【0054】
[0040]例として、半線状ポリアリーレンスルフィドの形成において用いるモノマー成分に、分岐ポリマーの製造において用いることができる分子あたり2以上のハロゲン置換基を有する所定量のポリハロ芳香族モノマーを含ませることができる。かかるモノマーは、式:R’X
n(式中、それぞれのXは、塩素、臭素、及びヨウ素から選択され、nは3〜6の整数であり、R’は、約4個以下のメチル置換基を有していてよい価数nの多価芳香族基であり、R’中の炭素原子の総数は6〜約16の範囲内である)によって表すことができる。半線状出発ポリアリーレンスルフィドの形成において用いることができる分子あたり2個より多いハロゲンで置換されている幾つかのポリハロ芳香族モノマーの例としては、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、1,2,3,5−テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロ−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’−テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’−テトラヨードビフェニル、2,2’,6,6’−テトラブロモ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,2,3,4−テトラクロロナフタレン、1,2,4−トリブロモ−6−メチルナフタレン等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
[0041]示されている態様においては、ジハロ芳香族モノマーとして、示されているようにp−ジクロロベンゼン(pDCB)を挙げることができる。一般に、充填するアルカリ金属硫化物の有効量1モルあたりの1種類又は複数のジハロ芳香族モノマーの量は、概して1.0〜2.0モル、1.05〜2.0モル、又は1.1〜1.7モルであってよい。而して、ポリアリーレンスルフィドはアルキルハロゲン化物(一般にアルキル塩化物)末端基を含んでいてよい。
【0056】
[0042]ジハロ芳香族モノマーは、複合体の硫化水素アルカリ金属に対するジハロ芳香族モノマーの比較的低いモル比で第2の反応器中に充填することができる。例えば、この比は、約1〜約1.035、又は一態様においては約1であってよい。複合体の硫化水素アルカリ金属に対するジハロ芳香族モノマーの比較的低い比は、縮合重合反応によって最終的な高分子量のポリマーを形成するために好都合である可能性がある。
【0057】
[0043]第2段階におけるイオウに対する溶媒の比も、比較的低くてよい。例えば、第2段階における有機アミド溶媒(第2の反応器に加えられる溶媒、及び第1の反応器からの
複合体溶液中に残存している溶媒を含む)に対する複合体の硫化水素アルカリ金属の比は、約2〜約2.5であってよい。この比較的低い比によって第2の反応器内の反応物質の濃度を増加させることができ、これによって相対重合速度及び体積あたりのポリマー生産速度を増加させることができる。
【0058】
[0044]第2段階の反応は、窒素のような不活性雰囲気下、及び上昇した圧力において行うことができる。例えば、第2段階中の第2の反応器102内の圧力は、約120kPa〜約1500kPa、約150kPa〜約1000kPa、約200kPa〜約800kPa、又は約400kPa〜約600kPaであってよい。
【0059】
[0045]第2の反応器102には、所望の圧力レベルを維持するために第2段階中において蒸気を取り出すための蒸気出口を含ませることができる。例えば、第2の反応器には当該技術において公知の圧力逃しバルブを含ませることができる。第2段階から取り出される蒸気は分離器108において凝縮および分離して、例えば反応器102に戻すために未
反応のモノマーを回収することができる。蒸気の水の一部を取り出して第2段階のほぼ無水の条件を維持することができ、水の一部は第2の反応器に戻すことができる。第2の反応器内の少量の水によって反応器102の頂部において還流を形成することができ、これによって反応器内の水相と有機溶媒相との間の分離を向上させることができる。これによって、反応器102から取り出される蒸気相中への有機溶媒の損失を最小にし、並びに上記で議論したように高アルカリ性の有機溶媒によって硫化水素を吸収することにより、蒸気流中への硫化水素の損失を最小にすることができる。
【0060】
[0046]第2段階重合反応は、一般に約120℃〜約280℃、又は約200℃〜約260℃の温度で行うことができる。第2段階の継続時間は、例えば約0.5〜約15時間、又は約1〜約5時間であってよい。
【0061】
[0047]第2段階重合反応の終了は、一般に、第2の反応器102内におけるジハロ芳香族モノマーの転化率が、理論的転化率の約50モル%以上、約70モル%以上、又は約90モル%以上に達する時点である。ジハロ芳香族モノマーの理論的転化率は、次の式の1つから計算することができる。
【0062】
(a)ジハロ芳香族モノマーをアルカリ金属硫化物より過剰(モル比による)で加えた場合においては、
【0066】
ここで、Xは充填したジハロ芳香族モノマーの量であり;Yはジハロ芳香族モノマーの残存量であり;Zはジハロ芳香族モノマーの過剰量(モル)である。
【0067】
(c)(a)又は(b)以外の場合においては、
転化率=A/B×100
ここで、Aは、残留ポリマー及び塩副生成物以外の他の種を除去した後に回収される塩の合計重量であり;Bは塩の理論重量(重合中に存在する有効硫化物のモル量の2倍)である。
【0068】
[0048]第2段階重合反応の後は、重量平均分子量:M
wによって表されるプレポリマーの平均モル質量は、約500g/モル〜約30,000g/モル、約1000g/モル〜約20,000g/モル、又は約2000g/モル〜約15,000g/モルであってよい。
【0069】
[0049]第2段階において用いるための重合反応装置は特に限定されないが、通常は、上昇した圧力において高粘度流体を形成する際に通常的に用いられる装置を用いることが望ましい。かかる反応装置の例としては、アンカータイプ、多段式タイプ、螺旋リボンタイプ、スクリューシャフトタイプ等、或いはこれらの変形形状のような種々の形状の撹拌ブ
レードを有する撹拌装置を有する撹拌タンクタイプの重合反応装置を挙げることができる。第2の反応器102はステンレススチールであってよいが、ニッケルベースの合金又はチタンのような他の材料を用いることによって改良された耐腐食性を得ることができる。
【0070】
[0050]第2段階重合反応の後は、第2段階反応器102から排出される生成物溶液には、プレポリマー、溶媒、及び重合反応の副生成物として形成される1種類以上の塩が含まれる可能性がある。例えば、反応に対する、第2段階反応器102から排出されるプレポリマー溶液の、副生成物として形成される塩の割合(体積基準)は、約0.05〜約0.25、又は約0.1〜約0.2であってよい。
【0071】
[0051]反応混合物中に含まれる塩には、反応中に副生成物として形成されるもの、及び反応混合物に例えば反応促進剤として加えられる他の塩が含まれる可能性がある。塩は有機又は無機であってよく、即ち有機又は無機カチオンと有機又は無機アニオンの任意の組み合わせから構成されていてよい。これらは、反応媒体中において少なくとも部分的に不溶であってよく、液体反応混合物のものと異なる密度を有していてよい。
【0072】
[0052]一態様によれば、第3段階反応器104における第3段階重合の前に、第2段階反応器102から排出されるプレポリマー混合物中の塩の少なくとも一部を、分離ユニット105において混合物から除去することができる。最終重合の前に塩を除去することにより、最終ポリマー分離プロセスを単純にし、且つより低いイオウ/溶媒比を第3段階において用いることができるので、第3段階重合の反応速度を増加させて、ポリマー濃度及び形成速度を有効に増加させることができる。更に、第3段階重合反応の前に塩分離プロセスを行うことによって、反応物質に関する第3の反応器の容量を増加させることができる。
【0073】
[0053]プレポリマー溶液から塩を除去するために分離ユニット105において用いる分離方法は、特に限定されない。例えば、塩は、伝統的な分離プロセスにおいて用いられているスクリーン又は篩を用いることによって除去することができる。或いは又は更には、プレポリマー溶液からの塩の分離において、塩/液体抽出プロセスを用いることができる。一態様においては熱濾過プロセスを用いることができ、これにおいては、プレポリマーが溶液中であり、塩が固相中である温度において溶液を濾過することができる。
【0074】
[0054]一態様によれば、塩分離プロセスによって、第2の反応器102から排出されるプレポリマー溶液中に含まれる塩の約95%以上を除去することができる。例えば、塩の約99%より多くをプレポリマー溶液から除去することができる。
【0075】
[0055]本プロセスの第2段階におけるプレポリマー重合反応及び濾過プロセスに続いて形成の第3段階を行うことができ、この間に第3の反応器104内でプレポリマーの分子量を増加させる。第3の反応器104への投入物には、溶媒、1種類以上のジハロ芳香族モノマー、及びイオウ含有モノマーに加えて、第2の反応器102からのプレポリマー溶液を含めることができる。示されている態様においては、イオウ含有モノマーは硫化ナトリウムであるが、これは第3段階の必須要件ではなく、硫化水素アルカリ金属モノマーのような他のイオウ含有モノマーを代わりに用いることができる。
【0076】
[0056]第3段階に加えるジハロ芳香族モノマーは、第2段階において加えるジハロ芳香族モノマーと同一又は異なっていてよい。例えば、ポリアリーレンスルフィドの末端基を形成するため、或いは重合反応及び/又はポリアリーレンスルフィドの分子量を調節するために、第2又は第3段階の一方又は両方においてモノハロモノマー(必ずしも芳香族化合物ではない)を含ませることができる。
【0077】
[0057]一態様においては、第3の反応の条件はほぼ無水であってよく、イオウ含有モノマーに対する水の比は、約0.2未満、例えば0〜約0.2の間である。本プロセスの第3段階中における低い含水量によって、重合速度及びポリマー収量を増加させ、並びに、これらの条件は求核芳香族置換に好都合であるので、望ましくない副反応の副生成物の形成を減少させることができる。更に、第3段階における圧力の増加は一般に水の揮発によるものであるので、この段階中における低い含水量によって、第3の反応を一定の比較的低い圧力、例えば約1500kPa未満で行うことを可能にすることができる。したがって、第3の反応器104は高圧反応器である必要はない。
【0078】
[0058]しかしながら、この段階中におけるほぼ無水の条件は必須要件ではなく、一態様においては第3段階においてより高い含水量を用いることができる。例えば、第3の反応器104中におけるイオウ含有モノマーに対する水の比は、約0.2より高く、約1より高く、又は約2より高くてよい。例えば、第3の反応器中におけるイオウ含有モノマーに対する水の比は、約2〜約4、又は一態様においては約2.5〜約3であってよい。
【0079】
[0059]第3の反応器104内における反応条件にはまた、イオウ含有モノマーに対する溶媒に関する比較的低いモル比を含ませることができる。例えば、イオウ含有モノマーに対する溶媒の比は、約1〜約5、約1.5〜約4、又は約2〜約3、例えば約2.5であってよい。
【0080】
[0060]第3の反応器104には、反応器内における低い圧力を維持するために、第3段階中に蒸気を取り出すための蒸気出口を含ませることができる。例えば、第3の反応器に、当該技術において公知の圧力逃しバルブを含ませることができる。第3段階から取り出される蒸気は、例えば蒸気の水から硫化水素を分離することができる分離器110において凝縮及び分離することができる。水を取り出すことによって、第3の反応器104内において所望のほぼ無水の条件を維持することを助けることもできる。
【0081】
[0061]第3段階の反応混合物は、約120℃〜約280℃、又は約200℃〜約260℃の温度に加熱することができ、かくして形成されるポリマーの溶融粘度が所望の最終レベルに上昇するまで重合を継続することができる。第2の重合の工程の経過時間は、例えば約0.5〜約20時間、又は約1〜約10時間であってよい。形成されるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は公知なように変動する可能性があるが、一態様においては約1000g/モル〜約500,000g/モル、約2,000g/モル〜約300,000g/モル、又は約3,000g/モル〜約100,000g/モルにすることができる。
【0082】
[0062]第3段階において用いるための重合反応装置は特に限定されず、第2段階において用いる反応装置と同じか又は異なっていてよく、例えば上昇した圧力における高粘度流体の形成において通常的に用いられる反応装置であってよい。かかる反応装置の例としては、アンカータイプ、多段式タイプ、螺旋リボンタイプ、スクリューシャフトタイプ等、或いはこれらの変形形状のような種々の形状の撹拌ブレードを有する撹拌装置を有する撹拌タンクタイプの重合反応装置を挙げることができる。第3の反応器104はステンレススチールであってよいが、ニッケルベースの合金又はチタンのような他の材料を用いることによって改良された耐腐食性を得ることができる。
【0083】
[0063]第3段階の後に、議論した結晶化プロセス、並びに任意の所望の更なる形成後処理を行うことができる。通常は、ポリアリーレンスルフィドは、任意の所望の後処理の後に有孔ダイを通して排出してストランドを形成することができ、これを水浴内で巻き取り、ペレット化し、乾燥する。ポリアリーレンスルフィドはまた、ストランド、顆粒、又は粉末の形態であってもよい。
【0084】
[0064]
図2は、多段階ポリアリーレンスルフィド形成プロセスの他の態様を示す。示されるように、このプロセスは
図1の多段階プロセスと類似しており、第1の反応器200、第2の反応器202、及び第3の反応器204を含む。しかしながらこのシステムにおいては、結晶化プロセスは別の結晶化装置内で行わず、第2の反応器204内での重合プロセスが完了した後に第2の反応器204内で行う。したがってこの態様においては、第2の重合工程を所定の経過時間行ってポリアリーレンスルフィドの所望の分子量を達成した後に、予め加熱した結晶化溶液を反応器204に供給して、形成されるポリマー混合物が約230℃以上の温度になるようにすることができ、次に、混合物を上記したようにゆっくりと冷却して結晶化ポリアリーレンスルフィドを形成することができる。
【0085】
[0065]第1の反応器200への供給流には、アルカリ金属硫化物(例えばNa
2S)のようなイオウ含有モノマー、有機アミド溶媒(例えばNMP)、及び水を含ませることができる。反応器200には、
図1のものと同様の凝縮器206を含む蒸気処理流を含ませることができる。第1の反応器200内で形成されるモノマー複合体は、ジハロ芳香族モノマー(pDCB)及び溶媒(NMP)と共に第2の反応器に供給してプレポリマーを形成することができる。示されているように、第2の反応器には、
図1のものと同様の凝縮器208を含む蒸気処理流を含ませることができる。第2の反応器202から排出されるプレポリマー溶液は、上記で議論したように、第3の反応器204に導入する前に分離ユニット205において塩分離にかけることができる。
【0086】
[0066]
図2に示すように、この態様によれば、第3の反応器204に供給するイオウ含有モノマーには、第1の反応器200におけるプロセスの第1段階において形成された溶媒の加水分解生成物及び硫化水素モノマー含む複合体を含めることができる。プロセスの第1段階において形成される複合体をプロセスの第2及び第3重合段階の両方において用いることによって、プロセスの全体的な効率を向上させ、プロセスのコストを減少させることができる。第1段階において形成される複合体は、ジハロ芳香族モノマー及び更なる溶媒と共に第3の反応器204に供給することができ、第2段階において形成されるプレポリマーの分子量を所望のように増加させることができる。示されるように、第3の反応器204には凝縮器210を含む蒸気処理流を含ませることができ、第3段階中において所望のほぼ無水の条件及び低い圧力を維持するために、第3の反応器から水を取り出すことができる。
【0087】
[0067]第3段階重合反応及び結晶化の後、当該技術において一般的に知られている後処理を行って、プロセスによって形成されるポリアリーレンスルフィドを精製するか、又はさもなければその特性を向上させることができる。例えば、第2の濾過プロセスを行うことができ、これにより生成物混合物から任意の更なる塩、例えば第3段階重合中にプレポリマーの分子量が増加するにつれて形成される任意の塩を除去することができる。
【0088】
[0068]形成の後、結晶化ポリアリーレンスルフィドは液体媒体で洗浄することができる。例えば、ポリアリーレンスルフィドを、水、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、塩溶液、及び/又は酢酸若しくは塩酸のような酸性媒体で洗浄することができる。ポリアリーレンスルフィドは、当業者に一般に知られている逐次的方法で洗浄することができる。ポリアリーレンスルフィドは熱水洗浄プロセスにかけることができる。熱水洗浄の温度は、約100℃以上、例えば約120℃より高く、約150℃より高く、又は約170℃より高くてよい。一般に、蒸留水又は脱イオン水を熱水洗浄のために用いることができる。一態様においては、熱水洗浄は、所定量のポリアリーレンスルフィドを所定量の水に加え、圧力容器内において撹拌下で混合物を加熱することによって行うことができる。例として、水1リットルあたり約200g以下のポリアリーレンスルフィドの浴比を用いることができる。熱水洗浄の後、ポリアリーレンスルフィドを、約10℃〜約100℃の温度
に維持した温水で数回洗浄することができる。洗浄は、ポリマーの劣化を回避するために不活性雰囲気中で行うことができる。
【0089】
[0069]一態様においては、有機溶媒洗浄を熱水洗浄及び/又は温水洗浄と組み合わせることができる。N−メチルピロリドンのような高沸点有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒洗浄の後に水又は温水で洗浄することによって残留有機溶媒を除去することができ、蒸留水又は脱イオン水をこの洗浄のために用いることができる。
【0090】
[0070]本多段階プロセスにしたがって形成されるポリアリーレンスルフィドは、有益な特性を示すことができる。例えば、ISO試験11443にしたがって310℃及び1,200/秒において求められるニートのポリマー(即ち添加剤なし)の溶融粘度は、約200ポイズ〜約700ポイズ、又は一態様においては約220ポイズ〜約650ポイズにすることができる。ポリマーの嵩密度は、一般に、ISO試験1183(ASTM−D792と技術的に同等)にしたがって求めて約0.2g/cm
3〜約1.5g/cm
3の間、例えば約0.3g/cm
3〜約1g/cm
3の間にすることができる。ポリマーの揮発分含量は、真空乾燥後の重量損失に基づいて約0.5重量%以下、例えば約0.2重量%以下にすることができる。
【0091】
[0071]結晶化温度:T
c2は、例えばISO標準規格10350に記載されているようにして示差走査熱量測定によって求めて、約190℃〜約300℃の間、例えば約200℃〜約265℃の間にすることができる。形成されるポリマーのpHは、一般に約3〜約12の間であってよい。ポリアリーレンスルフィドはまた、良好な外観を有することができる。例えば、ポリアリーレンスルフィドは、ASTM−e313にしたがって求めて約18.5未満の黄変指数を有することができる。
【0092】
[0072]本方法によって良好な粒径分布を有するポリアリーレンスルフィドを形成することができる。例えば、d
10値は約15マイクロメートル〜約30マイクロメートルにすることができ、d
50値は約70マイクロメートル〜約100マイクロメートルにすることができ、d
90値は約100マイクロメートル〜約150マイクロメートルにすることができる。粒子の中位径は約100マイクロメートル〜約1000マイクロメートルにすることができる。一態様においては、粒子の約95%以上を約50マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間の粒径にすることができる。例えば、粒子の約0.5重量%以下が約2800マイクロメートルより大きい直径を有するようにすることができ、ポリマーの約10重量%以下が約110マイクロメートル未満の直径を有するようにすることができる。
【0093】
[0073]ポリアリーレンスルフィドは、当該技術において一般的に知られているような製品を形成するのに用いることができる。例えば、ポリアリーレンスルフィドを、充填材(例えば繊維状及び/又は粒子状充填材)、カップリング剤、耐衝撃性改良剤、抗菌剤、顔料、潤滑剤、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、流動促進剤、固体溶媒、並びに特性及び加工性を向上させるために加える他の材料の1以上のような添加剤と混合することができる。かかる随意的な材料は、混合物中において通常の量で用いることができる。
【0094】
[0074]溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物を形成するために溶融加工する混合物には、混合物の重量基準で約40重量%〜約90重量%、例えば混合物の重量基準で約45重量%〜約80重量%の量の結晶化ポリアリーレンスルフィド(又は、その中の少なくとも1つがここに記載したようにして形成される結晶化ポリアリーレンスルフィドである複数のポリアリーレンスルフィドのブレンド)を含ませることができる。
【0095】
[0075]結晶化ポリアリーレンスルフィドは、当該技術において公知の技術にしたがって溶融加工することができる。例えば、ポリアリーレンスルフィドを、単軸又は多軸押出機内において、約250℃〜約320℃の温度で1種類以上の添加剤と共に溶融混練することができる。一態様においては、ポリアリーレンスルフィドは、複数の温度区域を含む押出機内で溶融加工することができる。例えば、ポリアリーレンスルフィドは、約250℃〜約320℃の間の温度に維持されている温度区域を含む押出機内で溶融加工することができる。
【0096】
[0076]ポリアリーレンスルフィドを含む物品を形成するための通常の成形プロセスを用いることができる。例えば、押出、射出成形、ブロー成形、熱成形、発泡、圧縮成形、熱間鍛造、繊維紡糸などを用いることができる。
【0097】
[0077]形成することができるポリアリーレンスルフィドを含む成形物品としては、例えば電気器具、電気材料、電子製品、繊維ウエブ、及び自動車工学熱可塑性材料アセンブリのための構造及び非構造成形部品を挙げることができる。代表的な自動車成形プラスチック部品は、ボンネット内部用途、例えば幾つか例を挙げると、ファンカバー、支持部材、配線及びケーブル外被材、カバー、ハウジング、バッテリー皿、バッテリーケース、ダクト、電気ハウジング、ヒューズバスハウジング、ブロー成形容器、不織又は織成ジオテキスタイル、バグハウスフィルター、膜、及びポンドライナーのために好適である。成形品、押出品、及び繊維に加えて、他の有用な物品としては、壁パネル、頭上収納ロッカー、配膳用トレイ、シートバック、客室パーティション、窓カバー、及び集積回路トレイのような電子実装ハンドリングシステムが挙げられる。
【0098】
[0078]結晶化ポリアリーレンスルフィドを含む組成物は種々の電気及び電子用途において用いることができ、例えばコネクター及びオーバーモールド(インサートモールド)部品などが包含される。
【0099】
[0079]本発明を示す目的のために幾つかの代表的な態様及び詳細を示したが、本発明の
範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正を行うことができることは当業者に明らか
であろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
半結晶質ポリアリーレンスルフィドを形成する方法であって、
第1のイオウ含有モノマー及び第1のジハロ芳香族モノマーを、有機アミド溶媒中で重
合してポリアリーレンスルフィドプレポリマーを形成し;
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、第2のジハロ芳香族モノマー及び第2のイ
オウ含有モノマーと共に重合してポリアリーレンスルフィドを形成し;
ポリアリーレンスルフィドを結晶化溶液と混合してポリマー混合物を形成し、当該混合
物は当該混合物の約5重量%以上の量の結晶化溶液を含み、結晶化溶液はポリアリーレン
スルフィドと混合する前に予め加熱し、ポリマー混合物は形成時に約230℃以上の温度
であり;
ポリマー混合物を、約0.5℃/分以下の速度で、ポリマー混合物が約190℃以下の
温度に達するまで冷却し、冷却中にポリアリーレンスルフィドを結晶化させて半結晶質ポ
リアリーレンスルフィドを形成する;
ことを含む、前記方法。
[請求項2]
結晶化溶液を約50℃〜約200℃の温度に予め加熱する、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
結晶化溶液が水を含み、場合によっては、混合物は混合物の重量基準で約3重量%〜約
10重量%の量の結晶化溶液を含む、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
請求項1に記載の方法であって、結晶化溶液が酸を含み、場合によっては、当該方法は
硫化水素副生成物の形成を含み、結晶化溶液中における酸のモル量は硫化水素副生成物の
モル量と同等である、前記方法。
[請求項5]
結晶化溶液が有機アミド溶媒を含み、例えばポリマー混合物は当該混合物の約60重量
%〜約90重量%の量の有機アミド溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
[請求項6]
有機アミド溶媒を、硫化水素アルカリ金属の存在下でアルカリ金属硫化物と反応させて
、アルカリ金属有機アミン及び第1のイオウ含有モノマーを含む複合体を形成することを
更に含み、場合によっては所定量の複合体によって、ポリアリーレンスルフィドと第2の
イオウ含有モノマー及び第2のジハロ芳香族モノマーの重合における第2のイオウ含有モ
ノマーが与えられる、請求項1に記載の方法。
[請求項7]
有機アミド溶媒がN−メチル−2-ピロリドンであり、及び/又は第1のイオウ含有モ
ノマーが硫化水素ナトリウム又は硫化ナトリウムであり、及び/又はジハロ芳香族モノマ
ーがジクロロベンゼンを含み、異なる複数のジハロ芳香族モノマーの混合物を含んでいて
よい、請求項1に記載の方法。
[請求項8]
プレポリマーが約500g/モル〜約30,000g/モルの重量平均分子量を有する
、請求項1に記載の方法。
[請求項9]
請求項1に記載の方法であって、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを形成する重
合によって塩も形成され、当該方法は当該塩を当該プレポリマーから分離することを更に
含む、前記方法。
[請求項10]
第2のジハロ芳香族モノマーが第1のジハロ芳香族モノマーと同一か又は異なり、第2
のイオウ含有モノマーが第1のイオウ含有モノマーと同一か又は異なる、請求項1に記載
の方法。
[請求項11]
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、ほぼ無水条件において第2のジハロ芳香族
モノマー及び第2のイオウ含有モノマーと共に重合する、請求項1に記載の方法。
[請求項12]
半結晶質ポリアリーレンスルフィドを精製し、及び/又は半結晶質ポリアリーレンスル
フィドを1種類以上の添加剤と混合することを更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項13]
請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドを含む成形製品。