特許第6786703号(P6786703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786703
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】映像表示装置、映像表示装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/66 20060101AFI20201109BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20201109BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20201109BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20201109BHJP
   G09F 9/40 20060101ALI20201109BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H04N5/66 Z
   G09G5/00 550C
   G09G5/36 520F
   G09G5/36 520G
   G09G5/00 510V
   G09G5/00 550X
   G09F9/30 308A
   G09F9/40
   G09F9/00 366G
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-504219(P2019-504219)
(86)(22)【出願日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2017009441
(87)【国際公開番号】WO2018163348
(87)【国際公開日】20180913
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】NECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
【審査官】 佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−191182(JP,A)
【文献】 特開2015−075516(JP,A)
【文献】 特開2015−228014(JP,A)
【文献】 特開2015−004727(JP,A)
【文献】 特開2001−184040(JP,A)
【文献】 特開2010−054643(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/059071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/66
G09F 9/00−9/46
G09G 3/00−5/42
G06T 3/00−3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示面が視聴者からみて凹形状の円柱面である曲面と、当該曲面の湾曲方向における端部から前記円柱面の接線方向に連なる平面とを含む形状を有する表示部と、
前記表示部に表示させる表示映像に対して、前記表示面の形状に基づく補正である映像補正を行うスケーラと、
前記表示部の視認者が前記表示部の最適視認位置より遠方にいると、前記スケーラに映像補正を行わせるコントローラと、を有し、
前記スケーラは、前記映像補正を行う際、前記表示部の視認者が前記表示部を前記最適視認位置より遠方から視認したときに発生する表示映像の歪みを前記表示面の形状に基づき補正するものであり、
前記スケーラは、前記形状のうち、直線部分に関しては前記表示映像の幅を伸長し、円弧部分に関しては前記表示映像の幅を圧縮し、補正後の表示映像を生成する
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記表示部が複数の表示部により構成された場合、複数のうちの1台の表示部が、前記視認者が前記最適視認位置より遠方にいることを検出すると、他の表示部に前記映像補正を行うように通知することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記複数の表示部から前記視認者までの距離を検出する人感センサーと、
前記最適視認位置を記憶するメモリと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記人感センサーが検出した前記距離と前記メモリから読み出した前記最適視認位置を比較して、前記視認者が前記最適視認位置より遠方にいると判断することを特徴とする請求項1または2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記表示部が複数台設置されたことを感知する感知センサーを備え、
前記コントローラは、前記感知センサーが、前記表示部が複数台設置されたことを感知した場合、前記視認者が前記最適視認位置より遠方にいると判断することを特徴とする請求項2または3に記載の映像表示装置。
【請求項5】
映像を表示する表示面が視聴者からみて凹形状の円柱面である曲面と、当該曲面の湾曲方向における端部から前記円柱面の接線方向に連なる平面とを含む形状を有する表示部を備える映像表示装置の制御方法であって、
前記表示部に表示させる表示映像に対して、前記表示面の形状に基づく補正である映像補正を行う映像補正工程と、
前記表示部の視認者が前記表示部の最適視認位置より遠方にいると、前記映像補正を行わせる映像補正指示工程と、を備え、
前記映像補正工程では、
前記映像補正を行う際、前記表示部の視認者が前記表示部を前記最適視認位置より遠方から視認したときに発生する表示映像の歪みを前記表示面の形状に基づき補正し、
前記形状のうち、直線部分に関しては前記表示映像の幅を伸長し、円弧部分に関しては前記表示映像の幅を圧縮し、補正後の表示映像を生成する
映像表示装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置、映像表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像表示装置では、主にデザイン的な要請により、表示画面が曲面となっているモニタ(カーブモニタ)の需要が高まっている(例えば、特許文献1参照)。
映像表示装置では、カーブモニタを複数台設置して大画面を構成した場合、視認者の位置がモニタ個別の最適位置より遠方となって、表示画面の歪みなどを認識してしまうという技術的課題がある。この技術的課題について、図11図12を参照して説明する。
【0003】
図11は、カーブモニタの最適な視認位置Pirを説明するための図である。
図11(a)は、カーブモニタ20の最適な視認位置Pirを示しており、図11(b)は、視認位置Pirから視認した場合の画像(イメージ)を示している。図11(a)に示すように、表示画面が曲面となっているカーブモニタ20はその曲率に応じた最適な視認位置Pir(カーブモニタにおける曲率半径の中心を示す位置)が存在する。図11(b)に示すように、カーブモニタ20を曲率半径の中心(図の視認位置Pir)から視認した場合の画像は歪まない。
【0004】
図12は、複数台のカーブモニタの視認者の位置Pfrを説明するための図である。図12(a)は、複数台(3台)のカーブモニタ20各々の最適な視認位置Pirを示しており、図12(b)は、視認者が遠方より視認した際のカーブモニタ20における画像を示している。図12(b)に示すように、カーブモニタ20を複数台設置して大画面を構成し、遠方から見ると画像が歪んで視認される。
すなわち、カーブモニタ20を複数台設置して大画面を構成した場合、図12(a)に示すように、視認者の位置Pfrはモニタ個別の最適位置Pirより遠方となって、図12(b)に示すように、視認者は表示画像の歪みなどを認識してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−26417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、映像表示装置では、カーブモニタ(表示画面が曲面となっているモニタ)はその局率に応じた最適な視認位置が存在するが、これを複数台設置して大画面を構成した場合、視認者の位置はモニタ個別の最適位置より遠方となって、表示画像の歪みなどを認識してしまう。
【0007】
上述の課題を鑑み、本発明は、カーブモニタが複数台となっても、視認者が表示画像の歪みを認識しない映像表示装置、映像表示装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る映像表示装置は、映像を表示する表示面が視聴者からみて凹形状の円柱面である曲面と、当該曲面の湾曲方向における端部から前記円柱面の接線方向に連なる平面とを含む形状を有する表示部と、前記表示部に表示させる表示映像に対して、前記表示面の形状に基づく補正である映像補正を行うスケーラと、前記表示部の視認者が前記表示部の最適視認位置より遠方にいると、前記スケーラに映像補正を行わせるコントローラと、を有し、前記スケーラは、前記映像補正を行う際、前記表示部の視認者が前記表示部を前記最適視認位置より遠方から視認したときに発生する表示映像の歪みを前記表示面の形状に基づき補正するものであり、前記スケーラは、前記形状のうち、直線部分に関しては前記表示映像の幅を伸長し、円弧部分に関しては前記表示映像の幅を圧縮し、補正後の表示映像を生成することを特徴とする。
【0009】
発明の一態様に係る映像表示装置の制御方法は、映像を表示する表示面が視聴者からみて凹形状の円柱面である曲面と、当該曲面の湾曲方向における端部から前記円柱面の接線方向に連なる平面とを含む形状を有する表示部を備える映像表示装置の制御方法であって、前記表示部に表示させる表示映像に対して、前記表示面の形状に基づく補正である映像補正を行う映像補正工程と、前記表示部の視認者が前記表示部の最適視認位置より遠方にいると、前記映像補正を行わせる映像補正指示工程と、を備え、前記映像補正工程では、前記映像補正を行う際、前記表示部の視認者が前記表示部を前記最適視認位置より遠方から視認したときに発生する表示映像の歪みを前記表示面の形状に基づき補正し、前記形状のうち、直線部分に関しては前記表示映像の幅を伸長し、円弧部分に関しては前記表示映像の幅を圧縮し、補正後の表示映像を生成する
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲面を含む形状のモニタ(表示部)が複数台となっても、視認者が表示画像の歪みを認識しない映像表示装置、映像表示装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る映像表示装置の構成を示すブロック図である。
図2】スケーラが画像補正を実行しない場合のカーブモニタ20に表示される画像を説明するための図である。
図3図2におけるカーブモニタの第1の直線部分の補正を説明するための図である。
図4図2におけるカーブモニタの第2の直線部分の補正を説明するための図である。
図5図2におけるカーブモニタの円弧部分の補正を説明するための図である。
図6】スケーラ13が実行する信号補正について説明するための図である。
図7】スケーラ13が実行する複数台のカーブモニタの信号補正について説明するための図である。
図8】カーブモニタ20を複数台設置する例について説明するための図である。
図9】カーブモニタが有する形状の構成を説明するための図である。
図10】本発明による映像表示装置の基本構成を示す概略ブロック図である。
図11】カーブモニタの最適な視認位置Pirを説明するための図である。
図12】複数台のカーブモニタの視認者の位置Pfrを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る映像表示装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る映像表示装置1は、信号処理制御部10と、カーブモニタ20(表示部)と、を含んで構成される。
信号処理制御部10は、コントローラ11と、スケーラ13と、メモリ14と、を含んで構成される。コントローラ11は、ファームウエア12を含んでいる。
以下本実施形態の一例では、映像表示装置1において、カーブモニタ20は複数台あり、人感センサー30を備えているものとする。ただし、カーブモニタ20(表示部)は、複数台でなく1台で構成されていてもよいが、本実施形態では複数台により構成されているものとして説明を行う。
人感センサー30は、光学センサーや超音波センサーなどで構成され、個別のカーブモニタ20(モニタ)から視認者までの距離を検出する。
コントローラ11は、個別のカーブモニタ20の最適視認位置の情報をメモリ14より読み出し、ファームウエア12によって、個別のカーブモニタ20の最適視認位置よりも遠方に視認者がいるか否かを判断する。すなわち、メモリ14は、予め個別のカーブモニタ20の最適視認位置を記憶している。また、ファームウエア12は、人感センサー30が検出した個別のカーブモニタ20(モニタ)から視認者までの距離が、メモリ14が記憶する個別のカーブモニタ20の最適視認位置よりも大きい場合、遠方に視認者がいると判断する。なお、操作者が外部より強制的に個別のカーブモニタ20の最適視認位置よりも遠方に視認者がいることを示す信号を、コントローラ11に送信する構成としてもよい。
【0013】
コントローラ11は、個別のカーブモニタ20の持つ曲面や平面の情報(形状情報)を格納したメモリ14から読み出してスケーラ13に送る。すなわち、コントローラ11は、遠方に視認者がいると判断した場合、個別のカーブモニタ20の持つ形状情報をスケーラ13に送る。
スケーラ13は、個別のカーブモニタ20の持つ形状情報に応じて、次に述べる解決策に示す(画像補正に示す)方法で、入力する映像信号(表示映像)に対して画像処理(補正処理)を行う。スケーラ13は、画像処理された映像信号(補正後の表示映像)を出力映像信号としてカーブモニタ20に出力する。
カーブモニタ20では、スケーラが出力する出力映像信号により表示映像(補正後の画像)が表示される。なお、カーブモニタ20(表示部)に表示される表示映像は、外部から入力される入力映像信号に限定されることはなく、映像表示装置1(表示装置)内部に保存されている画像(映像)などであってもよい。
また、コントローラ11は、カーブモニタ20(表示部)が複数の表示部により構成された場合、複数のうちの1台のカーブモニタ20が、視認者が最適視認位置より遠方にいることを検出すると、他のカーブモニタ20に映像補正を行うように通知する構成であってよい。すなわち、映像表示装置1は、複数のカーブモニタ20から視認者までの距離を検出する人感センサー30と、最適視認位置を記憶するメモリ14と、をさらに備えている。そのため、コントローラ11は、他のカーブモニタ20に映像補正を行うように通知するのみではなく、人感センサー30が検出した距離とメモリ14から読み出した最適視認位置を比較して、視認者が最適視認位置より遠方にいると判断した判断結果を通知してもよい。
【0014】
続いて、スケーラ13が実行する画像補正の方法について、図2図4を参照して説明する。
図2は、スケーラが画像補正を実行しない場合のカーブモニタ20に表示される画像を説明するための図である。
図2(a)は、カーブモニタ20の最適な視認位置Pir、視認者の位置Pfrを示しており、図2(b)は、視認者の位置Pfrから視認した場合の画像(イメージ)を示している。なお、図2においては、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸のうち、カーブモニタ20は、図2(a)が示すように、図面に対して垂直な方向(Y軸方向)に高さを持って設置され、Y軸に対して垂直なXZ平面において曲面を有している。また、カーブモニタ20が表示する画像は、図2(b)が示すように、XY平面において表示されるものとする。以下、本実施形態における図面の説明においては、X軸、Y軸、Z軸を、以上の定義を用いて説明をする。
図2(a)に示すように、表示画面が曲面となっているカーブモニタ20はその曲率に応じた最適な視認位置Pir(カーブモニタにおける曲率半径の中心を示す位置)が存在する。図2(b)に示すように、カーブモニタ20を曲率半径の中心(図の視認位置Pir)より遠方(図の視認者の位置Pfr)から視認した場合の画像は歪んでしまう。
このように、一般的なカーブモニタ20は、図2(a)に示すように、円弧部分と直線部分(第1の直線部分と第2の直線部分)の組み合わせの表示面を持っているので、図3図4図5に示す方法を用いて画像補正を実行する。
【0015】
図3は、図2におけるカーブモニタの第1の直線部分の補正を説明するための図である。図3において、第1の直線部分、円弧部分は、それぞれ図2に示した第1の直線部分、円弧部分である。
図3に示す長さ(a)の第1の直線部分は、遠方より見ると、カーブモニタ20の前面端部を結んだ直線(XY平面)において、カーブモニタの第1の直線部分の端部Bから垂直に引いた直線との交点Dから、カーブモニタ端部Aまでの長さ(b)に圧縮されて視認される。なお、カーブモニタ20の前面端部を結んだ直線(XY平面)とは、カーブモニタ20が表示する画像のXY平面と平行な平面である。また、カーブモニタ20の前面端部を結んだ直線とは、当該XY平面において、X軸に平行な直線である。
スケーラ13は、長さ(a)の第1の直線部分がカーブモニタ端部Aまでの長さ(b)に圧縮されて視認されるため、カーブモニタ20の前面端部を結んだ直線(XY平面)上で長さ(a)となるように、映像信号を伸張して補正する。
具体的には、スケーラ13は、補正前の直線部分の映像信号幅を(W1)、補正後にカーブモニタ20に印加する映像信号幅を(W2)とすると、たとえば直線的な補間と考えて、W2=W1×(a/b)の計算を実施して信号補正を実行する。なお、映像信号幅は、上記XY平面におけるX方向の幅である。
【0016】
図4は、図2におけるカーブモニタの第2の直線部分の補正を説明するための図である。図4において、第2の直線部分、円弧部分は、それぞれ図2に示した第2の直線部分、円弧部分である。
図4に示す長さ(c)の第2の直線部分は、遠方より見ると、カーブモニタ20の前面端部を結んだ直線(XY平面)において、カーブモニタ20の直線部分の端部Bから垂直に引いた直線との交点Dから、カーブモニタ端部Aまでの長さ(d)に圧縮されて視認される。
スケーラ13は、長さ(c)の第2の直線部分がカーブモニタ端部Aまでの長さ(d)に圧縮されて視認されるため、カーブモニタ20の前面端部を結んだ直線(XY平面)上で長さ(c)となるように、映像信号を伸張して補正する。
具体的には、スケーラ13は、補正前の直線部分の映像信号幅を(W3)、補正後にカーブモニタ20に印加する映像信号幅を(W4)とすると、たとえば直線的な補間と考えて、W4=W3×(c/d)の計算を実施して信号補正を実行する。
【0017】
図5は、図2におけるカーブモニタの円弧部分の補正を説明するための図である。図5において、第1の直線部分、第2の直線部分、円弧部分は、それぞれ図2に示した第1の直線部分、第2の直線部分、円弧部分である。なお、カーブモニタ20の円弧部分を結んだ線(XY平面)とは、カーブモニタ20が表示する画像とのXY平面と平行な平面である。また、補正前の信号表示領域をW5で、補正後の信号表示領域をW6(破線部分)で示している。
図4に示す長さ(e)の円弧部分は、遠方より見ると画像が広がった状態に視認される。
スケーラ13は、長さ(e)の円弧部分が広がった状態に視認されるため、カーブモニタ20の円弧部分の長さ(e)を、カーブモニタの円弧部分の端部を結んだ直線(XY平面)の長さ(f)となるように、映像信号を圧縮して補正する。
具体的には、スケーラ13は、補正前の円弧部分の映像信号幅を(W5)、補正後にカーブモニタ20に印加する映像信号幅(W6)とすると、たとえば計算簡略化のため、W6=W5×(f/e)の計算を実施して信号補正を実行する。
【0018】
図3〜5で説明した画像補正を組み合わせ、円弧部分の表示画像を圧縮し、直線部分については伸張した表示状態とすることで、カーブモニタを曲率半径の中心より遠方から見た場合も表示画像が歪まずに視認される。
図6は、スケーラ13が実行する信号補正について説明するための図である。
図6(a)では、映像補正前のカーブモニタ20と映像補正後のカーブモニタ20、視認者の位置Pfrを示しており、図6(b)は、視認者の位置Pfrから視認した場合の画像(イメージ)を示している。
図6(a)に示すように、映像補正前のカーブモニタ20は、円弧部分と直線部分(第1の直線部分と第2の直線部分)の組み合わせの表示面を持っているので、映像補正後のカーブモニタ20では、図3図4図5に示す方法を用いて円弧部分の表示画像を破線の幅に圧縮し、直線部分については伸張した表示状態となるように画像補正を実行する。
このように、図3〜5の画像補正を組み合わせることで、カーブモニタ20を曲率半径の中心より遠方(図の視認者の位置Pfr)から見た場合、図6(b)に示すように表示画像が歪まずに視認される。
【0019】
また、図3〜5の画像補正を組み合わせた結果、カーブモニタ20を複数台設置して大画面を構成し、視認者の位置がモニタ個別の最適位置Pirより遠方(視認者の位置Pfr)となった場合でも、歪みのない表示画像が視認される。
図7は、スケーラ13が実行する複数台のカーブモニタの信号補正について説明するための図である。
図7(a)は、複数台(3台)のカーブモニタ20各々の最適な視認位置Pirを示しており、図7(b)は、視認者が遠方より視認した際のカーブモニタ20における画像を示している。スケーラ13が個別のカーブモニタ20の画像を補正することで、遠方(視認者の位置Pfr)から見ても、図7(b)に示すように違和感なく視認される。
このように、図3〜5の画像補正を組み合わせた結果、カーブモニタ20を複数台設置して大画面を構成し、視認者の位置がモニタ個別の最適位置Pirより遠方(視認者の位置Pfr)となった場合でも、歪みのない表示画像が視認される。
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る映像表示装置1での映像補正処理の他の例として、図1に示す感知センサー40を用いた例について説明する。
感知センサー40は、個別のカーブモニタ20の端部の接触を電気的や光学的に検出するセンサーなどで構成される。そのため、感知センサー40は、複数台設置されており、カーブモニタ20が、図8に示すような複数台設置されたことを感知する。図8は、カーブモニタ20を複数台設置する例について説明するための図である。図8(a)は、カーブモニタ20を水平方向(X方向)に複数台(3台)設置し、垂直方向(Z方向)に複数台(3台)設置し、大画面を構成する場合である。また、図8(b)は、カーブモニタ20を水平および垂直方向に複数台(3×3=9台)設置し、大画面を構成する場合である。
コントローラ11およびファームウエア12は、カーブモニタ20の複数台設置を検知した場合は,大画面構成のため視認者が個別のカーブモニタ20の最適視認位置Pirよりも遠方に視認者がいるか否かを判断する。なお、操作者が外部より強制的にカーブモニタ20が複数台設置状態にあることを示す信号を、コントローラ11に送信する構成としてもよい。
コントローラ11は、個別のカーブモニタ20の持つ曲面や平面の情報(形状情報)を、格納したメモリ14から読み出してスケーラ13に送る。すなわち、コントローラ11は、遠方に視認者がいると判断した場合、個別のカーブモニタ20の持つ形状情報をスケーラ13に送る。
スケーラ13は、個別のカーブモニタ20の持つ形状情報に応じて、先の解決策に示したような方法で、入力映像信号(表示映像)に対して画像処理を実行する。スケーラ13は、画像処理された出力映像信号(補正後の表示映像)をカーブモニタ20に出力する。
個別のカーブモニタ20は、画像処理された出力映像信号により表示映像(補正後の画像)を表示する。なお、カーブモニタ20(表示部)に表示される表示映像は、外部から入力される入力映像信号に限定されることはなく、映像表示装置1(表示装置)内部に保存されている画像(映像)などであってもよい。
また、コントローラ11は、カーブモニタ20(表示部)が複数の表示部により構成された場合、複数のうちの1台のカーブモニタ20が、視認者が最適視認位置より遠方にいることを検出すると、他のカーブモニタ20に映像補正を行うように通知する構成であってよい。すなわち、映像表示装置1は、カーブモニタ20(表示部)が複数台設置されたことを感知する感知センサー40を備えている。そのため、コントローラ11は、他のカーブモニタ20に映像補正を行うように通知するのみではなく、感知センサー40が、カーブモニタ20が複数台設置されたことを感知した場合、視認者が最適視認位置より遠方にいると判断した判断結果を通知してもよい。
【0021】
なお、上記実施形態の説明においては、円の一部に直線を組み合わせた形状の構成を有するカーブモニタ20を一例として示した。カーブモニタが有する形状の構成は、次に説明するように、表示画面が曲面を含む形状を有する構成であればよい。
図9は、カーブモニタが有する形状の構成を説明するための図である。図9(a)に示すカーブモニタ20は、実施形態の説明において上述したように、一般的なカーブモニタの曲面構成であり、円Cの一部(円弧部分)に直線(第1の直線部分と第2の直線部分)を組み合わせた構成を有する。
スケーラ13は、円Cの一部においては水平方向(図3〜6に示すX方向)に表示画像を圧縮し、直線部分(第1の直線部分と第2の直線部分)においては水平方向に表示画像を拡大するなどの補正を行い、最終的に全てのカーブモニタを水平に見る位置から視認した際に違和感が生じないように、カーブモニタが表示する画像が調整される。
【0022】
図9(b)に示すカーブモニタ20aは、円Cや楕円の一部のみの円弧で構成される形状を有する。
スケーラ13は、円弧の中央部においては水平方向(図3〜6に示すX方向)に表示画像を圧縮し、円弧の端部においても水平方向に表示画像を圧縮するなどの補正を行い、最終的に全てのモニタを水平に見る位置から視認した際に違和感が生じないように、カーブモニタが表示する画像が調整される。
【0023】
図9(c)に示すカーブモニタ20bは、複数の円または楕円(任意の曲線)および直線の組み合わせによって構成される形状を有する。
スケーラ13は、各曲線および直線部分に応じた表示画像の拡大縮小などの補正を行い、最終的に全てのモニタを水平に見る位置から視認した際に違和感が生じないように、カーブモニタが表示する画像が調整される。
【0024】
図10は、本発明による映像表示装置の基本構成を示す概略ブロック図である。本発明による映像表示装置1の基本構成は、図10に示すとおりである。すなわち、本発明による映像表示装置1は、カーブモニタ20(表示部)と、スケーラ13と、コントローラ11と、を備える。
カーブモニタ20は、映像を表示する表示面が曲面を含む形状を有する。
スケーラ13は、カーブモニタ20に表示させる表示映像に対して、表示面の形状に基づく補正である映像補正を行う。
コントローラ11は、カーブモニタ20の視認者がカーブモニタ20の最適視認位置より遠方にいると、スケーラ13に映像補正を行わせる。
【0025】
スケーラ13は、映像補正を行う際、カーブモニタ20の視認者がカーブモニタ20を最適視認位置より遠方から視認したときに発生する表示映像の歪みを表示面の形状に基づき補正する。
すなわち、スケーラ13は、形状のうち、直線部分に関しては表示映像の幅を伸長し、円弧部分に関しては表示映像の幅を圧縮し、補正後の表示映像を生成する。
【0026】
なお、映像表示装置1は次の構成(図1に示す構成)であってもよい。
コントローラ11は、カーブモニタ20が複数のカーブモニタ20により構成された場合、複数のうちの1台のカーブモニタ20が、視認者が最適視認位置より遠方にいることを検出すると、他のカーブモニタ20に映像補正を行うように通知する構成であって良い。
例えば、映像表示装置1は、複数のカーブモニタ20から視認者までの距離を検出する人感センサー30と、最適視認位置Pirを記憶するメモリ14と、をさらに備える。
コントローラ11は、人感センサー30が検出した距離とメモリ14から読み出した最適視認位置Pirを比較して、視認者が最適視認位置Pirより遠方(視認者の位置Pfr)にいると判断する。
或いは、映像表示装置1は、複数のカーブモニタ20が複数台設置されたことを感知する感知センサー40を備える。
コントローラ11は、感知センサー40が、カーブモニタ20が複数台設置されたことを感知した場合、視認者が最適視認位置Pirより遠方(視認者の位置Pfr)にいると判断する。
【0027】
これにより、カーブモニタ20が複数台となっても、スケーラ13は、入力映像信号(表示映像)をカーブモニタの形状情報に応じて補正し、補正後の映像出力信号(補正後の表示映像)を複数のカーブモニタ20に出力し、複数のカーブモニタ20に映像出力信号(補正後の表示映像)を表示させるので、視認者が表示画像の歪みを認識しない映像表示装置1、映像表示装置1の制御方法を提供することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 映像表示装置
10 信号処理制御部
11 コントローラ
12 ファームウエア
13 スケーラ
14 メモリ
20,20a,20b カーブモニタ
30 人感センサー
40 感知センサー
図1
図2
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図12