特許第6786743号(P6786743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤沢 和則の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6786743
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ピッキング支援システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20201109BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20201109BHJP
   B65G 1/10 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   B65G1/137 A
   B65G1/00 501C
   B65G1/10 Z
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-109819(P2020-109819)
(22)【出願日】2020年6月25日
【審査請求日】2020年7月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500183607
【氏名又は名称】藤沢 和則
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100136744
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 佳正
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 和則
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/187539(WO,A1)
【文献】 特開2019−77549(JP,A)
【文献】 特許第6736788(JP,B1)
【文献】 米国特許第9067317(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
B65G 1/00
B65G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管エリアに保管されている複数の保管棚から必要な物品を保管する保管棚を他の場所へ移動させることにより、必要な物品を保管する1以上の保管棚からのピッキングを支援するピッキング支援システムであって、
前記保管エリアには、前記複数の保管棚が縦及び横方向に配置されており、
前記システムは、前記保管棚を移動させるための制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記保管棚の移動により前記縦または横方向に1以上の空き列が形成されるよう制御し、さらに、前記空き列のうちの1つに隣接する列から必要な保管棚を前記他の場所へ移動させる際、
前記隣接する列における不要な保管棚を前記空き列へ移動させることによって、前記隣接する列に今回必要な保管棚を残し、
前記隣接する列に残された今回必要な保管棚の全数を一編成として前記他の場所へ移動させるよう制御する
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
保管エリアに保管されている複数の保管棚から必要な物品を保管する保管棚を他の場所へ移動させることにより、必要な物品を保管する1以上の保管棚からのピッキングを支援するピッキング支援システムであって、
前記保管エリアには、前記複数の保管棚が縦及び横方向に配置されており、
前記システムは、前記保管棚を移動させるための制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記保管棚の移動により前記縦または横方向に1以上の空き列が形成されるよう制御し、さらに、前記空き列のうちの1つに隣接する列から必要な保管棚を前記他の場所へ移動させる際、
前記隣接する列における必要な保管棚を前記空き列へ移動させることによって、前記隣接する列に今回不要な保管棚を残し、
前記空き列に移動された今回必要な保管棚の全数を一編成として前記他の場所へ移動させるよう制御する
ことを特徴とするシステム。
【請求項3】
前記空き列のうちの1つに隣接する列から必要な保管棚を前記他の場所へ移動させる際に、前記隣接する列において前記空き列へ移動させる保管棚は、前記隣接する列中の必要な保管棚と不要な保管棚のうち少ないほうである請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記保管エリアから前記一編成として前記他の場所へ前記必要な保管棚が移動させられたあとに、前記隣接する列または前記空き列に残った保管棚は、さらに隣接する列または近隣の列における空スペースへ移動させるよう制御することを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
前記他の場所は、作業エリアである請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
保管エリアに保管されている複数の保管棚から必要な物品を保管する保管棚を他の場所へ移動させることにより、必要な物品を保管する1以上の保管棚からのピッキングを支援するピッキング支援システムであって、前記保管エリアには、前記複数の保管棚が縦及び横方向に配置されており、前記システムは、前記保管棚を移動させるための制御装置を備えるシステム上で動作するプログラムであって、
前記制御装置に、
前記保管棚の移動により前記縦または横方向に1以上の空き列が形成されるよう制御させ、さらに、前記空き列のうちの1つに隣接する列から必要な保管棚を前記他の場所へ移動させる際、
前記隣接する列における不要な保管棚を前記空き列へ移動させることによって、前記隣接する列に今回必要な保管棚を残させ、
前記隣接する列に残された今回必要な保管棚の全数を一編成として前記他の場所へ移動するよう制御させる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
保管エリアに保管されている複数の保管棚から必要な物品を保管する保管棚を他の場所へ移動させることにより、必要な物品を保管する1以上の保管棚からのピッキングを支援するピッキング支援システムであって、前記保管エリアには、前記複数の保管棚が縦及び横方向に配置されており、前記システムは、前記保管棚を移動させるための制御装置を備えるシステム上で動作するプログラムであって、
前記制御装置に、
前記保管棚の移動により前記縦または横方向に1以上の空き列が形成されるよう制御させ、さらに、前記空き列のうちの1つに隣接する列から必要な保管棚を前記他の場所へ移動させる際、
前記隣接する列における必要な保管棚を前記空き列へ移動させることによって、前記隣接する列に今回不要な保管棚を残させ、
前記空き列に移動された今回必要な保管棚の全数を一編成として前記他の場所へ移動するよう制御させる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
前記空き列のうちの1つに隣接する列から必要な保管棚を前記他の場所へ移動させる際に、前記隣接する列において前記空き列へ移動させる保管棚は、前記隣接する列中の必要な保管棚と不要な保管棚のうち少ないほうである請求項6または7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記保管エリアから前記一編成として前記他の場所へ前記必要な保管棚が移動させられたあとに、前記隣接する列または前記空き列に残った保管棚は、さらに隣接する列または近隣の列における空スペースへ移動させるよう制御することを特徴とする請求項6または7に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く倉庫等の物流拠点や、工場等の製造拠点におけるピッキング支援システム等に関し、より詳細には、拠点内で保管されている物品や部品の中から制御装置等により指示されたものをピッキングする作業を支援するシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、拠点内で物品や部品を保管する棚を無人搬送車により作業者(この作業者には、人のみならずロボットアームも含まれる)のもとへ自動搬送し、作業者により棚から物品や部品を取り出させる仕組みをもったピッキング支援システムが運用されており、さらに様々な工夫が提案されている。
【0003】
例えば、在庫要求を遂行する方法であって、在庫物品を要求する在庫要求を受信する段階、及び要求された在庫物品を在庫ホルダから選択する段階を有し、更に、要求された在庫物品を在庫要求に関連付けられるオーダーホルダにおいて格納する段階、及び該オーダーホルダを格納スペースまで動かす段階を有する方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
具体的には、特許文献1には、在庫要求を遂行する方法であって、在庫物品を要求する在庫要求を受信する段階と、該要求された在庫物品を在庫ホルダから選択する段階と、前記要求された在庫物品を前記在庫要求に関連付けられるオーダーホルダにおいて格納する段階と、前記オーダーホルダを格納スペースまで動かす段階と、トリガイベントを検出する段階と、該トリガイベントを検出する段階に応じて、前記格納スペースから前記オーダーホルダを取り出す段階と、を有する方法が開示されている。
【0005】
また、作業効率を向上できるようにしたピッキング支援システムも提案されている(特許文献2)。
【0006】
すなわち、特許文献2には、ピッキング作業を支援するピッキング支援システムにおいて、移動可能であって、かつ少なくとも一つの物品を収容可能な複数の棚と、前記各棚の移動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記各棚の中から選択された仕分け棚を複数の作業場所の中から選択された作業場所へ移動させて、前記選択された作業場所に配置された保管棚から前記仕分け棚へ物品をピッキング作業により移動させる、所定の一連の処理を、前記仕分け棚が所定の物品を収容するまで作業場所を変えながら繰り返して実行させる、ピッキング支援システムが開示されている。
【0007】
また、物品の保管棚を配置可能な敷地面積を大面積化し物品保管効率を向上させる技術も提案されている(特許文献3)。
【0008】
すなわち、特許文献3には、運行管理システムであって、各保管棚の位置、各保管棚の向き、及び、搬送車の位置の情報を含むレイアウト情報を保持し、レイアウト情報に基づいて、移動対象の保管棚の現在地における向きと、目的地において予定される向きとが一致しない場合、移動対象の保管棚の向きを現在地における向きから目的地において予定される向きに変更するための回転方向及び回転角度を決定し、保管棚を回転させることを阻害する障害物が周囲に存在しない回転可能な格子を少なくとも一つ含むように、現在地から目的地までの移動経路を探索し、探索した経路を経由して移動対象の保管棚を現在地から目的地まで搬送し、回転可能な格子において、決定した回転方向への決定した回転角度の回転を行うように搬送車を制御するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2010−514646号公報
【特許文献2】特開2020−001868号公報
【特許文献3】特開2018−199562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の技術を踏まえたとしても、なお作業エリアにおける通路の削減等によるコスト低減や、関連する物品を効率良く移動させることのできるシステム等についての更なる改善が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムは、保管エリアに保管されている複数の保管棚から必要な物品を保管する保管棚を他の場所へ移動させることにより、必要な物品を保管する1以上の保管棚からのピッキングを支援するピッキング支援システムであって、前記保管エリアには、前記複数の保管棚が縦及び横方向に配置されており、前記システムは、前記保管棚を移動させるための制御装置を備え、前記制御装置は、前記保管棚の移動により前記縦または横方向に1以上の空き列が形成されるよう制御し、さらに、前記空き列のうちの1つに隣接する列から必要な保管棚を前記他の場所へ移動させる際、前記隣接する列における不要な保管棚を前記空き列へ移動させることによって、前記隣接する列に今回必要な保管棚を残し、前記隣接する列に残された今回必要な保管棚の全数を一編成として前記他の場所へ移動させるよう制御することを特徴とする。
【0012】
また、前記空き列のうちの1つに隣接する列から必要な保管棚を前記他の場所へ移動させる際に、前記隣接する列において前記空き列へ移動させる保管棚は、前記隣接する列中の必要な保管棚と不要な保管棚のうち少ないほうであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システム等によれば、作業エリアにおける通路の削減等によるコスト低減が実現され、関連する物品を効率良く移動させることができる等の有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムが導入された物流施設(あるいは、工場施設)の様子を説明する説明図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムの全体構成例を説明する説明図である。
図3A】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける管理サーバの機能ブロック構成を説明する説明図である。
図3B】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおけるタブレット端末の機能ブロック構成を説明する説明図である。
図4】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける無人搬送ロボット及び保管棚の外観構成例を説明する説明図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる無人搬送ロボットを構成するハードウェアの機能ブロック構成を説明する説明図である。
図6A】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける制御部や処理部、装置等の構成例を示す説明図である。
図6B】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける処理フローを説明するフローチャートである。
図6C】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける詳細な処理フローを説明するフローチャートである。
図7A】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける保管棚移動制御例を説明する説明図である。
図7B】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける保管棚移動制御例を説明する説明図である。
図7C】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける保管棚移動制御例を説明する説明図である。
図8A】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける保管棚移動制御例を説明する説明図である。
図8B】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける保管棚移動制御例を説明する説明図である。
図9A】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける保管棚移動制御例を説明する説明図である。
図9B】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける保管棚移動制御例を説明する説明図である。
図10】本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける保管棚移動制御例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態にかかるピッキングシステム等について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムが導入された物流施設あるいは工場施設の様子を模式的に示す。典型的には、商品等を出荷するための物流施設や製品の組み立てを行うための工場施設が挙げられる。以下は、説明の便宜上、主として物流施設を例にとって説明する。
【0017】
本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムが導入された施設の特徴は、内部に多数の保管棚が整然と保管されており、必要な保管棚は、個別に作業エリアへ運搬されて作業員等(必ずしも人間でなければならないというわけではなく、ロボットのよる作業が行われる場合もある。以下、作業員等という。)によって、仕分けや梱包が行われるように構成されていることである。
【0018】
図1において、施設10内には、大別して、複数の保管棚100を整列配置しておく保管エリア101と、作業員104等が仕分け箱や梱包箱等に必要な商品や部品を仕分けあるいは梱包するための作業エリア102とがある。一実施形態において、保管棚100はほぼ隙間なく配置され、一例として、100Bのようなブロックが形成される(図中、他のブロックも確認できる)。これらのブロック間には保管棚が通るための通路が形成されるが、この通路をできる限り少なくしたほうが、エリア101内に保管可能な保管棚の個数を増やすことができ、管理コストを低減されることができる。
【0019】
一実施形態において、作業エリア102では、作業員等104が作業員端末105を携えて、作業エリア102に運搬されてきた保管棚から必要な商品や部品の仕分けあるいは梱包を行う。保管棚は、保管エリア101から無人搬送ロボット103によって運搬される。ここで、作業員等の作業のためにどの保管棚が必要かは、図示しない管理サーバ等によって管理されており、管理サーバ等は、無人搬送ロボット103に対して必要な運搬指示を行う。また、管理サーバ等は、作業員端末105を介して、作業エリアに運ばれてきた保管棚のどの商品や部品を仕分けあるいは梱包すればよいかの指示を作業員等に与える。
他の実施形態において、作業員等がロボット(図1において不図示)である場合には、作業員端末105は割愛され、管理サーバ等は、ロボットに対して直接指示を与えることができる。
【0020】
[販売管理]
また、本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおいては、必ずしもこれらが必須のものとされるわけではないが、必要に応じて商品等の販売管理も行わせることができる。本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムは、図示しない通信販売(電子商取引)システムや店舗POSレジとも連動させることができ、通販による販売実績や店舗における販売実績も顧客ごとに管理させることができる。そのためのデータベースとして、一実施形態において次のようなデータベース(D1)〜(D4)を管理サーバ内に有しており、必要に応じて各種端末からの参照や更新要求が可能となっている。
【0021】
(D1)顧客管理データベース
顧客に関する項目が登録されたデータベースであり、顧客氏名、住所、電話番号等の個人情報と、保有ポイントや最寄り拠点等の付帯情報とが登録されている。
【0022】
(D2)商品管理データベース
商品に関する項目が登録されたデータベースであり、商品名、JANコードに対応付けられる商品コード等が登録管理されている。
【0023】
(D3)在庫管理データベース
物流拠点ごとの商品在庫を管理するためのデータベースであり、適宜商品管理データベースと連携し、必要なテーブルが派生抽出される。
【0024】
(D4)販売管理データベース
物流拠点や店舗ごとに販売された商品に関する実績管理データベースである。
【0025】
図2に、本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムの全体構成例を示す。
図2に示されるように、ピッキング支援システム20は、その一実施形態における大別的な構成として、管理サーバ21と、保管棚を運搬する無人搬送ロボット22〜23と、作業員等が使用する各種情報処理装置(図において、例示的に、PC24と、携帯情報端末、タブレット端末あるいはPOS端末25〜26が示されている。以下、総称して「作業員端末」ないし単に「端末」とも言うこともある)と、保管棚26〜28とで構成されている。一実施形態において、管理サーバ21、各種端末間は、図1に示されるように専用回線やインターネット等の公衆回線(有線の回線として、37〜38)で相互に通信可能に接続されている。
【0026】
また、回線は有線であっても無線であってもよく、無線の場合、各種端末24〜25や保管棚26〜28は、無線で図示しない基地局やアクセスポイント等を介してインターネット39に乗り入れ、更に回線38を介して管理サーバ21と相互に通信可能に接続される。
【0027】
ここで、アクセスポイントとは、PCやスマートフォンなどの無線端末を相互に接続したり、他のネットワークに接続させたりするための無線機である。典型的には、OSI参照モデルにおける第1層(物理層)及び第2層(データリンク層)の通信プロトコルで作動するデバイスである。
【0028】
なお、無人搬送ロボット22〜23や保管棚26〜28は、必ずしもインターネット39を介して管理サーバ21と通信する必要はなく、施設内の無線通信等によって接続されてもよい。
【0029】
また、本願の出願時点での携帯情報端末やタブレットは、パーソナルコンピュータ(PC)と同等かそれ以上の処理能力(通信処理速度や画像処理能力等)を備えているものも多く、小型の高性能コンピュータとも言うべきものである。
【0030】
さらに、本発明の実施に必要なプログラムないしソフトウェアは、通常、PCや携帯情報端末の記憶部におけるHDD、SSD等にインストールないし記憶され、プログラムないしソフトウェアの実行時には、必要に応じて記憶部内のメモリにその全部又は一部のソフトウェアモジュールとして読み出され、CPUにおいて演算実行される。
【0031】
あるいは、ブラウザベースのコンピュータないし携帯情報端末を採用することもできる。この場合は、必要に応じて他のサーバやコンピュータから端末にプログラムが配信され、端末上のブラウザではこれを実行するという構成になる。
【0032】
また、管理サーバ21のハードウェア構成も、基本的にはPCを採用することができる(念のため、図3Aを参照して後述する)。なお、本発明はこれに限定されるものではないが、管理サーバ21は、必要に応じてそのハードウェアスペックを上げるにあたり、複数のPC(一例として、数十台〜数万台)を並列的に作動させることによって大規模データの処理に適した構成をとることもできる。
【0033】
なお、図2において、保管棚26〜28は管理サーバ21と相互に通信可能に接続される構成として開示されており、この場合、保管棚26〜28は、自身の位置や向き、保管物の有無や種別等の情報を選択的に管理サーバ21へ送信するように構成されうる。しかし、本発明はこれに必須の構成とするものではなく、保管棚26〜28に通信機能を持たせない構成とすることもできる。
【0034】
図3Aに、本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける管理サーバの機能ブロック図を示す。例示的に、管理サーバの動作は、以下に説明するハードウェアの個々の動作、及びソフトウェアとこれらハードウェアとの連携動作によって実現されている。
【0035】
図3Aにおいて、ハードウェアブロック全体としての管理サーバ300は、大別すると、各種比較・演算処理を行うためのCPU301と、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の記憶部302と、キーボードやポインティングデバイス等の入力部303と、ディスプレイやスピーカ等の出力部304と、各種信号制御のための制御部305と、通信(インタフェース)部306(無線、有線を問わない)と、時刻等を計時するための計時部307と、電源部312とからなる。
【0036】
これらのモジュールは必要に応じて適宜通信バスや給電線(図3Aにおいては、便宜上各線が適宜区分された結線349としてひとまとめに表す)によって接続されている。
【0037】
また、本発明の実施に必要な管理サーバ300上で実行されるプログラムないしソフトウェアは、通常、記憶部302を構成するハードディスクディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等にインストールないし記憶され、プログラムないしソフトウェアの実行時には、必要に応じて記憶部302内のメモリにその全部又は一部のソフトウェアモジュールとして読み出され、CPU301において演算実行される。
【0038】
なお、演算実行は必ずしもCPU301等の中央処理部で行われる必要はなく、図示しないディジタルシグナルプロセッサ(DSP)等の補助演算装置を用いることもできる。
【0039】
図3Bに、本発明の一実施形態にかかる作業員端末としてのタブレット端末25を構成するハードウェアの機能ブロック図を例示する。タブレット端末25の動作は、以下に説明するハードウェアの個々の動作、及びソフトウェアとこれらハードウェアとの連携動作によって実現されている。
【0040】
図3Bにおいて、ハードウェアブロック全体としてのタブレット端末350は、大別すると、ハードウェアボタン、ディスプレイに設けられたマルチタッチ入力パネル、マイク等で構成される入力部351と、プログラムやデータ等を記憶するためのハードディスク、RAM及び/又はROM等で構成される記憶部352と、プログラムによって様々な数値計算や論理演算を行うCPUによって構成される中央処理部353と、ディスプレイ等で構成される表示部354と、チップや電気系統等の制御を行うための制御部355と、インターネットにアクセスするためのスロットや光通信を行うためのポート、及び通信インタフェースから構成される通信インタフェース部356と、スピーカやバイブレーション、赤外線プロジェクター等の出力部357と、時刻等を計時するための計時部358と、CMOS等のイメージセンサや赤外線センサ、慣性センサ等からなるセンサ部359と、装置内の各モジュールに電源を供給するための電源部360とからなり、これらのモジュールは必要に応じて適宜通信バスや給電線(図3Bにおいては、便宜上各線が適宜区分された結線399としてひとまとめに表す)によって接続されている。
なお、センサ部359には、タブレット端末350(25)の位置を特定するためのGPSセンサモジュールを含めることとしても良い。また、センサ部359を構成するCMOS等のイメージセンサや赤外線センサ等によって検知された信号は、入力部351において入力情報として処理することができる。
【0041】
また、本発明の実施に必要なタブレット端末350上で実行されるプログラムないしソフトウェアは、通常、記憶部352を構成するハードディスクディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等にインストールないし記憶され、プログラムないしソフトウェアの実行時には、必要に応じて記憶部352内のメモリにその全部又は一部のソフトウェアモジュールとして読み出され、CPU353において演算実行される。
【0042】
なお、演算実行は必ずしもCPU等の中央処理部353で行われる必要はなく、図示しないディジタルシグナルプロセッサ(DSP)等の補助演算装置を用いることもできる。
【0043】
図4に本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける無人搬送ロボット(A)及び保管棚(B)の外観構成を示す。図4(A)において、無人搬送ロボット400は、本体410の底部に図示されない一対の車輪を備え、モータ駆動により施設内の床面上を移動する。一実施形態において、各車輪は、別個に正逆回転可能であり、例えば、各車輪を同方向に回転すると無人搬送ロボットは直進又は後退し、各車輪を互いに逆方向に回転させると無人搬送ロボットはその向きを変えることができる。無人搬送ロボットは、コンピュータ制御により自走する。また、無人搬送ロボットの走行等を安定させるために、一対の車輪に加え図示しないキャスターが設けられてもよい。
【0044】
一実施形態において、無人搬送ロボット400の高さは、15〜30cm程度であり、その上部には、昇降可能な棚支持部420を備える。無人搬送ロボット400は、図4(B)に示されるような保管棚の脚部によって形成される下部空間に進入することができる。無人搬送ロボット400は、保管棚の下部空間にて棚支持部420を上昇させることによって、その上部に位置する保管棚を持ち上げることができ、さらに、保管棚を持ち上げたまま移動することができる。これによって、保管棚は、施設内を自由に移動可能となる。無人搬送ロボットによって持ち上げられた保管棚は、目的の場所まで移動すると棚支持部が降下し、その場所に置かれる。無人搬送ロボットは、さらに他の保管棚を運ぶために他の場所へ移動することができる。
【0045】
図4(B)には、例示的な保管棚が示されている。保管棚450は、無人搬送ロボットの高さよりも僅かに高い4本の脚部451a〜451d(451dは図に表れていない)を備え、その上部に3つの棚部452a〜452cを備えている。各棚部には、商品や部品等が格納されており、この棚の識別番号(IDなど)や、現在この棚が格納している商品や部品の識別番号(商品であればJANコードなど)は、管理サーバにおいて随時更新管理されている。一実施形態において、無人搬送ロボットは、管理サーバの指示により4本の脚部451a〜451dによって形成される空間部へ進入し、棚450を他所へ移動させる。
保管棚460は、保管棚450と同様に、無人搬送ロボットの高さよりも僅かに高い4本の脚部461a〜461d(461dは図に表れていない)を備え、同図(B)に示されるように、その上部に商品や部品を載置可能な載置台を備える。この場合、載置台に載置可能な商品や部品の形状等は、保管棚450に格納可能なものと比べて自由度が高いことが理解できるであろう。一実施形態において、無人搬送ロボットは、管理サーバの指示により4本の脚部461a〜461dによって形成される空間部へ進入し、棚460を他所へ移動させる。
【0046】
図5に、本発明の一実施形態にかかる無人搬送ロボットを構成するハードウェアの機能ブロック構成を示す。図5において、ハードウェアブロック全体としての無人搬送ロボット500は、大別すると、車輪を駆動するためのモータ等の駆動部501と、プログラムやデータ等を記憶するためのハードディスク、RAM及び/又はROM等で構成される記憶部502と、プログラムによって様々な数値計算や論理演算を行うCPUによって構成される中央処理部503と、棚を持ち上げたり下したりするための昇降機構部504と、チップや電気系統等の制御を行うための制御部505と、ネットワークにアクセスするためのスロットや近距離無線通知を行うためのポート、及び通信インタフェースから構成される通信インタフェース部506と、スピーカ等の出力部507と、CMOS等のイメージセンサや赤外線センサ、慣性センサ等からなるセンサ部508と、装置内の各モジュールに電源を供給するための電源部509とからなり、これらのモジュールは必要に応じて適宜通信バスや給電線(図5においては、便宜上各線が適宜区分された結線599としてひとまとめに表す)によって接続されている。
なお、一実施形態において、センサ部509には、無人搬送ロボット500(22〜23)の位置を特定するためのGPSセンサモジュールを含めることとしても良い。また、センサ部509を構成するCMOS等のイメージセンサや赤外線センサ等によって検知された信号は、図示しない入力部において入力情報として処理することができる。
【0047】
また、本発明の実施に必要なタブレット端末500上で実行されるプログラムないしソフトウェアは、通常、記憶部502を構成するハードディスクディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等にインストールないし記憶され、プログラムないしソフトウェアの実行時には、必要に応じて記憶部502内のメモリにその全部又は一部のソフトウェアモジュールとして読み出され、CPU503において演算実行される。
【0048】
図6Aに、本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける制御部や処理部、装置等の構成例を示す。図6Aにおいて、システム600は、相互に通信接続可能な倉庫管理システム(WMS)610、オーダー管理部620、及び運行管理部630と、ネットワーク629によってオーダー管理部620と接続されている1以上の作業者端末621〜623と、ネットワーク639によって運行管理部630と接続されている複数の無人搬送ロボット631〜633とで構成されている。
倉庫管理システム(WMS)610、オーダー管理部620、及び運行管理部630は、図2の管理サーバ21が一実施形態において機能分化したものである。また、ネットワーク629及び639は、有線であっても無線であってもよい。作業者端末621〜623、並びに、無人搬送ロボット631〜633の数に制限はない。
【0049】
一実施形態において、倉庫管理システム610は、オーダー管理部620を制御する。例えば、倉庫管理システム210は、オーダー管理装置620に対して、オーダー情報、保管棚データ等を送信する。ここで、オーダーとは、仕分けあるいは梱包すべき物品等の物品名(及び/または、識別情報)、個数、および配送先を含む情報である。また、保管棚データとは、物品が保管されている保管棚に関するデータである。一実施形態において、オーダー管理部620は、運行管理部630に保管棚移動に関する指示を出す。具体的には、オーダー管理部620は、仕分けあるいは梱包すべき物品等を含む保管棚のリストを運行管理部630へ提供したり、あるいは、さらに進んで具体的にどの保管棚を作業エリアへ移動させるべきかの指示を与えたりする。また、オーダー管理部620は、運行管理部630から保管棚の移動完了や作業エリアでの梱包等の作業完了の通知を受けると、運行管理部630に対して、作業エリアに移動されていた保管棚を他の場所へ移動させるよう指示する。
【0050】
図6Bに、本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける処理フローを示す。同図Bでは、倉庫管理システム(WMS)610、オーダー管理部620、及び運行管理部630での連携動作のフロー、ならびに、運行管理部630が無人搬送ロボットを制御する概要フロー等が例示されている。
【0051】
ステップS601において、処理が開始されると、ステップS602へ進み、WMS610からオーダー管理部へ指示が出される。一実施形態において、この指示には、オーダー情報、保管棚データ等が含まれる。
【0052】
ステップS603では、オーダー管理部において、オーダー情報等から仕分けまたは梱包のためのスケジューリングが生成される。一実施形態において、このスケジューリングは、オーダー情報及び/または保管棚データに基づき生成される。具体的には、オーダー情報から仕分けあるいは梱包すべき物品等を抽出し、抽出された物品等がどの保管棚に保管されているか、保管棚データを検索して対象となる保管棚をリストアップする。
【0053】
ここで、リストアップされた保管棚が複数ある場合には、近い保管棚同士が選択されたり、移動のためのコストが小さくなるような組み合わせが選択されたりしてもよい。あるいは、これらの選択処理の一部または全部をステップS604で行っても良い。
【0054】
ステップS604では、オーダー管理部から運行管理部に対し、無人搬送ロボットの運行指示が出される。運行される無人搬送ロボットは、一実施形態において、数台から数十台あるいはそれ以上の台数が想定される。また、無人搬送ロボットの運行には、前ステップでピックアップあるいは選択された保管棚の作業エリアへの搬送が含まれる。
【0055】
ステップS605では、運行管理部による無人搬送ロボットの運行制御が行われる。運行管理部は、施設内にある無人搬送ロボットの位置の現在位置を把握しており、あるオーダー処理に関して必要な保管棚を効率的に作業エリアへ移動させるために、どの無人搬送ロボットをどのような手順で保管棚の下部へ潜り込ませ、どのような手順で作業エリアへ搬送するのが良いかを逐次制御する。そのための保管棚の搬送は、1つの保管棚の1回の搬送で済む場合もあれば、多数の保管端を複数回にわたって搬送する必要がある場合もある。あるオーダー処理に関して必要な準備が整ったかどうかの判断は次ステップにて行われる。
【0056】
ステップS606にて、あるオーダー処理に関して必要な保管棚の移動など準備が整い、作業エリアでの仕分けあるいは梱包を開始できるようになったと判断された場合(同ステップにおいて、Yes)には、ステップS607へ進むが、そうでない場合(No)には、ステップS605へ復帰して必要な保管棚の移動(つまり、無人搬送ロボットの運行制御)が継続される。
【0057】
ステップS607では、オーダー管理部(または運行管理部)から作業員端末へ仕分けあるいは梱包のための指示が送信される。一実施形態において、作業員は、作業員端末に送信されてきた指示に基づいて、必要な商品あるいは部品の仕分けあるいは梱包を行うことができる。
【0058】
なお、上記ステップでは、ステップS606において、あるオーダー処理に関して必要な保管棚の移動など準備が整い、作業エリアでの仕分けあるいは梱包を開始できるようになったと判断された場合に作業員に作業を開始させることとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、あるオーダー処理に関して必要な保管棚の全てが作業エリアに移動完了するのを待たずに、先行して作業エリアでの仕分けあるいは梱包を開始させるように指示制御することもできる。
【0059】
図6Cに、本発明の一実施形態にかかるピッキング支援システムにおける詳細な処理フローを示す。同図Bに示された処理フローは、同図Aに示された処理フローのうちのステップS604及び/またはステップS605の詳細なフローに相当する。
【0060】
ステップS631において本フローとしての処理を開始すると、ステップS632に進み、ブロックの特定、及びこのブロックを形成する保管棚における特定の列を決定する。この列は、ブロックが形成された保管棚の縦の列でも横の列でもよい。また、典型的には、この列はブロックにおける端の列であることが多いが、必ずしもブロックにおける端の列に限定されない。
【0061】
次に、ステップS633へ進み、対象列に隣接する1列以上の空き列があるかどうかを確認し、なければ、当該空き列が確保される(その列に残っている保管棚は他所へ移動される)。もし、本ステップにおいて、対象列に隣接する1列以上の空き列がすでに存在する場合には、空き列を確保するための保管棚の移動は発生しないこともある。
そして、対象列における保管棚の検査を開始する。一実施形態において、この検査は、保管棚に今回必要な商品または部品が保管されているかどうかを確認するための検査である。また、他の実施形態において、この検査は、保管棚に今回必要な商品または部品が保管されており、かつ、後述する編成移動を行うべき棚かどうかを確認するための検査である。
【0062】
次に、ステップS634へ進み、対象列中の対象保管棚は、今回のオーダー処理において不要かどうかが判断され、Yesの場合はステップS635へ進むが、Noの場合はステップS636へ進む。
【0063】
ステップS635では、今回のオーダー処理においては不要と判断された保管棚に対する処理であり、一実施形態においては、この保管棚は、空き列へ移動される。あるいは、他の実施形態においては、この時点で移動されずに、のちほど移動されるように制御管理上のフラグが立てられることもある。
【0064】
ステップS636では、対象列中に検査対象の保管棚がまだ残っているかどうかが判断され、まだ残っている場合には、ステップS634へ復帰するが、残っていない場合にはステップS637へ進む。
【0065】
ステップS637では、対象列中に残った今回のオーダー処理において必要と判断された保管棚を一斉に移動あるいは一編成として移動させる。本発明の一実施形態におけるこの一斉移動あるいは一編成としての移動の様子は、保管棚が一列に並んで順次あるいは順序よく移動される様から、編成移動とも呼ばれる。
つまり、ここでいう「一編成としての移動」や「編成移動」には、保管棚の一斉移動のみならず、一列に並んで順次移動させたり、個別に順序よく移動させたりすることが含まれ、個々の移動開始時刻にある程度の時間差(たとえば、互いに1秒〜数秒程度の時間差)があっても差し支えない。
【0066】
次に、ステップS638へ進み、対象列に隣接する空き列へ移動された不要の保管棚が必要に応じて再整理のために移動され、ステップS639へ進み、本フローとしては終了する。
【0067】
図7A図10は、図6B図6Cに示した処理フローを好適に実施した場合の保管棚の保管及び移動の様子を時系列に示したものである。
【0068】
図7Aは、施設における保管棚の保管の様子を示す。同図Aにおいて、保管棚71〜76は、縦3列横2列に整然と配置されている。同図Aにおいて、保管棚71〜76が配置されている領域をグリッドと呼ぶ(同図中の一点破線で囲まれている矩形エリアである)。また、保管棚71〜76の種別(例えば、識別番号や棚の種類)、及び/または各保管棚に保管されている商品あるいは部品の種類や数、保管位置(何番目の棚かなど)は、管理サーバ21において管理されている(一実施形態においては、倉庫管理システム610やオーダー管理部620などで管理されることができる)。
図Aにおいては、縦3列横2列に配置された保管棚71〜76がひとつのブロックを構成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、縦横任意の列数でブロックを構成可能である。
【0069】
また、図7Aにおいて、保管棚71及び72には内部に丸印が描かれているが、これは、無人搬送ロボットが棚の下部に潜り込んでいる様子を示している。保管棚71及び72は、それらの下部にロボットが潜り込んで持ち上げられることにより、移動が可能となる。以下、保管棚の内部に描かれた丸印は無人搬送ロボットが潜り込んでおり箱を移動可能な状態であることを示す。
【0070】
本発明の一実施形態において、施設内床面上の各グリッドの中心部(図7A中の破線と破線との交点部分)には二次元コードあるいはICタグが貼付されており、無人搬送ロボットが棚の下部に進入した際、床面上に貼付された情報を読み取ることにより、ロボットが目的の位置に到達できたかどうか、搬送中の保管棚を正しい位置へ届けることができているかを判断させることもできる。
【0071】
図7Bは、ステップS632〜ステップS636(においてNo)までのフローが実行された様子を示している。つまり、図7Bにおいて、特定ブロック700中の対象列をなす保管棚711a〜718aにおいて、今回不要な保管棚711a、713a及び717aと、今回必要な保管棚712a、714a〜716a、及び718aが区別されている。なお、一点破線709aは、施設内の実際の壁であってもよいし、あるいは空間上の不可視な境界線であってもよい。一点破線709aにより、対象列をなす保管棚711a〜718aに隣接する空列(保管棚が配置されていないグリッドの列)を確認することができる。なお、ここで、対象列をなす保管棚711a〜718aに隣接する空列が確保できていない場合(1以上の保管棚が存在している場合)には、空列が確保されるように事前に保管棚が移動される。
【0072】
図7Bにおいて特徴的な点は、対象列をなす保管棚711a〜718aの全ての箱の下部に別個の無人搬送ロボットが進入していることである。他の実施形態においては、1台の無人搬送ロボットが今回不要な保管棚711a、713a及び717aの搬送を全て担うことも可能であるし、8台未満の無人搬送ロボットのうちの3台が保管棚711a、713a及び717aの下部にそれぞれ進入して空列へ退避させることも可能である。これら他の実施形態も本発明の基本概念に含まれるが、時間的効率を踏まえると、より多くの無人搬送ロボットを運用することが好適である。
【0073】
図7Cには、図7Bの次に起こる制御動作例が示されている。図7Cのブロック710において、今回不要な保管棚711b、713b及び717bは、空列に退避されており、今回必要な保管棚712b、714b、715b、716b、及び718bは、一斉に、あるいは順次他の場所へ移動する(編成移動)。本発明の一実施形態において他の場所は、作業エリアであるが本発明はこれに限定されない。広く、次工程のためのエリアへ移動するものと解することができる。
【0074】
なお、保管棚711a〜718a、721a〜728a、731a〜738a、741a〜748a、及び751a〜758aは、保管棚711b〜718b、721b〜728b、731b〜738b、741b〜748b、及び751b〜758bにそれぞれ対応する。以下、時系列的に、添え字がa〜fへと変化するものとする。
【0075】
図8Aには、図7Cの次に起こる制御動作例が示されている。図8Aのブロック800において、対象列は、721c〜728cに移っており、その中で、今回不要な保管棚722c、723c、及び728cと、今回必要な保管棚721c、724c〜727cが区別されている。一実施形態において、今回不要な保管棚722c、723c、及び728cは、空列へ退避される。
【0076】
図8Bには、図8Aの次における制御動作例が示されている(ステップS638に対応する制御動作例である)。図8Bのブロック810において、今回不要な保管棚722d、723d、及び728dは、既に空列に退避しており、今回必要な保管棚721c、724c〜727cは、一斉に、あるいは順次他の場所へ移動する(編成移動)。
【0077】
図9Aには、図8Bの次における制御動作例が示されている。図9Aのブロック900において、今回不要な保管棚722e、723e、及び728eは、現在位置している空列のさらに隣接する列の空きグリッドへ移動され、整理される。
【0078】
図9Bには、図9Aの次における制御動作例が示されている。図9Bのブロック910において、今回不要な保管棚722e、723e、及び728eは、同図B中の左端列の空きグリッドに移動整理され、同左端列には、保管棚711f、722f、713f、723f、717f、及び728fが配置されている。また、同図Bに示されるように、この時点で生じた空列は2列分となっているが、このまま空列を増やすように、これまでの制御動作を繰り返してもよいし、適宜のタイミングで、保管棚731f〜738f、741f〜748f、及び751f〜758fの全部または一部を現在の空列を埋めるようにスライド移動させてもよい。
【0079】
図10に、上述の制御動作を繰り返した後の保管棚の配置状態例を示す。同図のブロック1000は、全体として施設内の境界線709g(実際の壁であってもよいし、あるいは空間上の不可視な境界線であってもよい)に寄せられ、同ブロックにおける右端には、1つの列をなさない余りとして、保管棚1011、1012、及び1013が配置されている。
【0080】
本発明の一実施形態においては、今度は、ブロック1000の右側の境界線1009(実際の壁であってもよいし、あるいは空間上の不可視な境界線であってもよい)に対して図7B以降で示したものと対称的な制御動作を繰り返すことにより、効率的な保管棚の編成移動を継続させることができる。
【0081】
[本発明のバリエーション]
本発明の一実施形態においては、例えば、ステップS634〜ステップS636において、対象列中の不要な保管棚を空き列へ移動させ、対象列中に残った今回必要な保管棚を一編成として他の場所を移動させるように制御動作させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、対象列中の必要な保管棚を空き列へ移動させ、空き列へ移動させた今回必要な保管棚を一編成として他の場所を移動させるように制御動作させてもよい。
【0082】
この場合、図7B図10における制御動作についても、対象列中の不要な保管棚を空き列へ移動させ、対象列中に残った今回必要な保管棚を一編成として他の場所を移動させるように制御動作させる態様に代替される。
【0083】
以上、具体例に基づき、ピッキング支援システム等の実施形態を説明したが、本発明の実施形態としては、システム又は装置を実施するための方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体(一例として、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、ハードディスク、メモリカード)等としての実施態様をとることも可能である。
【0084】
また、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード等のアプリケーションプログラムに限定されることはなく、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュール等の形態であっても良い。
【0085】
さらに、プログラムは、必ずしも制御基板上のCPUにおいてのみ、全ての処理が実施される必要はなく、必要に応じて基板に付加された拡張ボードや拡張ユニットに実装された別の処理ユニット(DSP等)によってその一部又は全部が実施される構成とすることもできる。
【0086】
本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された構成要件の全て及び/又は開示された全ての方法又は処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。
【0087】
また、本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一又は均等となる特徴の一例にすぎない。
【0088】
さらに、本発明は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本発明は、本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された全ての新規な特徴又はそれらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法又は処理のステップ、又はそれらの組合せに拡張することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 物流施設(工場施設)
20 ピッキング支援システム
21 管理サーバ
22〜23 無人搬送ロボット
24 PC(作業員端末の一形態)
25 タブレット端末(作業員端末の一形態)
26〜28 保管棚
37、38 通信回線
39 公衆回線(専用線、インターネット等)
【要約】
【課題】 通路の削減等によるコスト低減が実現され、関連する物品を効率良く移動させることができるピッキング支援システム等を提供する。
【解決手段】 保管エリアに保管されている複数の保管棚から必要な物品を保管する保管棚を他の場所へ移動させることにより、必要な物品を保管する1以上の保管棚からのピッキングを支援するピッキング支援システムであって、保管エリアには、複数の保管棚が縦及び横方向に配置されており、システムは、保管棚を移動させるための制御装置を備え、制御装置は、保管棚の移動により縦または横方向に1以上の空き列が形成されるよう制御し、さらに、空き列のうちの1つに隣接する列から必要な保管棚を他の場所へ移動させる際、隣接する列における不要な保管棚を空き列へ移動させることによって、隣接する列に今回必要な保管棚を残し、隣接する列に残された今回必要な保管棚の全数を一編成として他の場所へ移動させるよう制御する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10