特許第6786747号(P6786747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6786747
(24)【登録日】2020年10月30日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】健康器具
(51)【国際特許分類】
   A61H 39/04 20060101AFI20201109BHJP
   A61H 7/00 20060101ALN20201109BHJP
【FI】
   A61H39/04 S
   !A61H7/00 320A
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-544862(P2020-544862)
(86)(22)【出願日】2019年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2019038617
【審査請求日】2020年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2018-238618(P2018-238618)
(32)【優先日】2018年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511184752
【氏名又は名称】株式会社ジュート
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(72)【発明者】
【氏名】森平 茂生
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3183276(JP,U)
【文献】 特開平9−276363(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0051778(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 39/04
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の把持部と、長さ方向に沿って延設された施術部と、を有する、棒状の健康器具であって、
前記把持部の少なくとも1つに、スプーン状の凹部と、縁とを有するとともに、
前記施術部が巾方向への湾曲部を有し、当該施術部を長さ方向に沿った中間地点にて切断した場合に、左右の切断物が非対称であって、かつ、得られる断面形状において、4つ以上の突起を、表面に有するとともに、当該突起の先端部を曲面化させることを特徴とし、
前記4つ以上の突起が少なくとも第1の突起、第2の突起、第3の突起を含み、前記4つ以上の突起のうちの最も長い突起を第1の突起とし、左右に隣接する突起を、第2の突起及び第3の突起としたときに、第1の突起と第2の突起との間、及び第1の突起と第3の突起との間の両方、あるいはいずれか一方が、平滑曲面であることを特徴とする健康器具。
【請求項2】
前記4つ以上の突起が、さらに第4の突起、第5の突起、第6の突起を含み、前記第2の突起に隣接する突起を第4の突起、前記第3の突起に隣接する突起を第5の突起、第4の突起と第5の突起との間にある突起を第6の突起としたときに、第4の突起と第6の突起との間、及び第5の突起と第6の突起との間の両方、あるいはいずれか一方が、断面形状の内部に向かって凹んだ曲面を有するとともに、当該曲面が粗面であることを特徴とする請求項1に記載の健康器具。
【請求項3】
前記少なくとも1つ以上の把持部と、施術部との間に、内側に向かって湾曲した押圧部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の健康器具。
【請求項4】
前記スプーン状の凹部と、前記施術部との間に、連通部が設けてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の健康器具。
【請求項5】
金属材料、セラミック材料、木質材料又は樹脂材料の少なくとも一つから構成してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の健康器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多種多様の施術に適用可能な構造を備えることにより、施術対象が自分自身であっても、所定施術が可能であって、人の筋膜や筋肉などの軟部組織の個人差による違いに適切に対応し、これらを正常な状態に回復させるための健康器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筋肉の疲労状態や筋肉に生じた炎症などの症状を緩和して、正常な状態への回復を促す機械装置として、各種電動マッサージ器が提案されている。
しかしながら、各種電動マッサージ器は、多数の電動モーターやその制御システム等が必要であって、全体構造が複雑となりやすいばかりか、大型化、重量化して、収容性や運搬性に乏しい等の問題が見られた。
【0003】
そこで、マッサージ効果に優れているとともに、収納性や操作性に優れた健康器具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図8に示されるように、軸棒209と、軸棒209に設けられた略円環状のローラ211複数個と、軸棒209の両端に配設された略円筒状の把持部213と、を含み、ローラ複数個が軸棒209の軸方向に対して略垂直な方向において回転自在に設けられ、軸棒209がローラ211複数個の両側において更に外側に延びている。
そして、把持部213が軸棒209の軸方向において外側に伸びるようにスライド可能な小径ポール203と、長尺方向に貫通する第一中心孔を備える略円筒状の中径ポールと、長尺方向に貫通する第二中心孔を備える略円筒状の大径ポールと、で構成され、中径ポールの第一中心孔に小径ポール203が着脱自在に挿入され、大径ポールの第二中心孔に中径ポールが着脱自在に挿入される構造の多層棒状健康器具である。
【0004】
また、簡易かつ安価な器具として、人の筋膜や筋肉などの軟部組織を正常な状態に回復させるための施術に用いる人用軟部組織回復補助具が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図9に示されるように、手で握ることができる太さで棒状又は板状に延びる本体部101と、本体部101が有する2つ面である第1面112及び第2面113が鋭角を構成しながら円弧状の押圧部114を介して互いに繋がった角部からなる施術部110を有し、施術部110は、凸状に張り出し又は凹状に凹みながら曲線状に延びて形成されていることを特徴とする人用軟部組織回復補助具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6211224号公報(特許請求の範囲、図1等)
【特許文献2】実用新案登録第3183276号公報(実用新案登録請求の範囲、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された多層棒状健康器具や、特許文献2に開示された人用軟部組織回復補助具は、施術を受ける人の身長や体重の違い、あるいは、健康状態や体質の違いに起因した、筋膜や筋肉などの軟部組織の各自による違いに、適切に対応することが困難であるという問題が見られた。
さらに特許文献2に開示された人用軟部組織回復補助具は、施術を受ける部位によってはある程度の施術効果を得られるものの、自身を対象とした施術を行うことが考慮されておらず、施術の対象者とは別に施術者を用意する必要があった。
【0007】
そこで、本発明の発明者は鋭意検討した結果、少なくとも1つ以上の把持部と、長さ方向に沿って延設された、所定形状の施術部と、を有する、健康器具とすることにより、施術対象として自他の区別なく施術が可能であって、かつ、人の筋膜や筋肉などの軟部組織の各自による違いに適切に対応し、これらを正常な状態に回復させやすいことを見出し、本発明を完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、多種多様の施術に適用可能な構造を備えることにより、施術対象が自分自身であっても、自ら所定施術が可能であって、かつ、人の筋膜や筋肉などの軟部組織の個人差に対して、適切に対応した施術を行い、これらを正常な状態に回復させることのできる健康器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、少なくとも1つ以上の把持部と、長さ方向に沿って延設された施術部と、を有する、棒状の健康器具であって、施術部が巾方向への湾曲部を有し、施術部を長さ方向に沿った中間地点にて切断した場合に得られる断面形状において、4つ以上の突起を、表面に有するとともに、当該突起の先端部を曲面化した健康器具が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の健康器具であれば、少なくとも1つ以上の把持部と、施術部とを有する棒状であって、かつ、多数の突起や湾曲部を有するため、簡易構造でありながら、把持しやすく、施術対象として自他の区別なく施術が可能であるとともに、多種多様な施術を行うことができる。
従って、突起の先端部が曲面化されるため適切に人体に当接でき、安定した施術が可能となり、ひいては、人の筋膜や筋肉などの軟部組織の回復効果をより効率的に得ることができる。
【0010】
また、本発明の健康器具を構成するにあたり、4つ以上の突起が少なくとも第1の突起、第2の突起、第3の突起を含み、4つ以上の突起のうちの最も長い突起を第1の突起とし、左右に隣接する突起を、第2の突起及び第3の突起としたときに、第1の突起と第2の突起との間、及び第1の突起と第3の突起との間の両方、あるいはいずれか一方が、平滑曲面であることが好ましい。
このように複数の突起のみならず、平滑曲面を利用することにより、人の筋膜や筋肉などの軟部組織に対して、擦りつけることも可能となる。
従って、多種多様な施術を行うにあたり、大きな押圧力を与えて、施術するのに適さない部位に対しても、適切に施術を行うことができる。
【0011】
なお、図1に例示する健康器具の場合、例えば、第1〜第6の突起を有しているが、番号12で表される部位が第1の突起、番号13で表される部位が第2の突起、番号14で表される部位が第3の突起に該当する。
【0012】
また、本発明の健康器具を構成するにあたり、4つ以上の突起が、さらに第4の突起、第5の突起、第6の突起を含み、第2の突起に隣接する突起を第4の突起、第3の突起に隣接する突起を第5の突起、第4の突起と第5の突起との間にある突起を第6の突起としたときに、第4の突起と第6の突起との間、及び第5の突起と第6の突起との間の両方、あるいはいずれか一方が、断面形状の内部に向かって凹んだ曲面を有するとともに、当該曲面が粗面であることが好ましい。
このように構成することにより、マッサージオイルを併用した場合に、施術部の長さ方向に沿った粗面を利用して、均一に行き渡らせることができるとともに、マッサージオイルの保持力も高めることができる。
【0013】
なお、図1に例示する健康器具の場合、例えば、第1〜第6の突起を有しているが、番号27で表される部位が第4の突起、番号26で表される部位が第5の突起、番号29で表される部位が第6の突起に該当する。
【0014】
また、本発明の健康器具を構成するにあたり、施術部を長さ方向に沿った中間地点において切断した場合に、左右の切断物が非対称であることが好ましい。
このように構成することにより、施術に使用可能な箇所としての、形状が異なる突起や曲面等の数が増加し、より多様な人体部位に対応した施術を行うことができる。
【0015】
また、本発明の健康器具を構成するにあたり、少なくとも1つ以上の把持部と、施術部との間に、内側に向かって湾曲した押圧部を有することが好ましい。
このように構成することで、棒状の健康器具の内側、すなわち、外表面から内部に向かって湾曲した押圧部に、指等を押し当てて、より強固な押圧力でもって、効率よく施術することができる。
【0016】
また、本発明の健康器具を構成するにあたり、把持部の少なくとも1つに、スプーン状の凹部と、縁とを有することが好ましい。
このように構成することによって、縁や先端部を利用して、手先などの細やかな人体部位を押圧したり、あるいは、効果的に擦りつけたりすることができ、より好適に施術を行うことが可能となる。
その上、把持部として、スプーン状の凹部と、縁とを握ることができ、さらには、その把持部に、布や糸等を強固に巻き付けることも可能となり、健康器具の使勝手性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の健康器具を構成するにあたり、スプーン状の凹部と、施術部との間に、連通部が設けてあることが好ましい。
このように構成することで、スプーン状の凹部に、例えばマッサージオイルやマッサージワックスを保持するだけで、施術部に向けて、適量のマッサージオイル等を適用することが可能となる。
【0018】
また、本発明の健康器具を構成するにあたり、金属材料、セラミック材料、木質材料又は樹脂材料(ゴム材料を含む)の少なくとも1つから構成してあることが好ましい。
このように構成することで、健康器具の重量や耐久性、平滑性等を適宜変更することができ、ひいては、健康器具を用いた適切な施術を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1(a)〜(d)は、本発明にかかる健康器具を説明するために供する図(正面図(a)、施術部の中間地点における断面図(b、B・Cいずれの方向から見ても同一)、B方向からの側面図(c)、C方向からの側面図(d))である。
図2は、本発明にかかる健康器具を説明するために供する斜視図である。
図3(a)〜(b)は、本発明にかかる健康器具を説明するために供する図(上面図(a)、下面図(b))である。
図4(a)〜(b)は、本発明にかかる健康器具の使用方法を説明するために供する図であり、施術部を患部に当接して使用する際の断面図である。
図5(a)〜(c)は、本発明にかかる健康器具を説明するために供する別の図(正面図(a)、上面図(b)、下面図(c))である。
図6(a)〜(c)は、本発明にかかる健康器具を説明するために供するさらに別の図(正面図(a)、上面図(b)、下面図(c))である。
図7(a)〜(b)は、従来の多層棒状健康器具を説明するために供する図である。
図8(a)〜(b)は、従来の人用軟部組織回復補助具を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1に例示するように、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bと、長さ方向に沿って延設された施術部10と、を有する、棒状の健康器具1である。
また、施術部10が巾方向への湾曲部20を有し、施術部10の長さ方向に沿った中間地点のうちの2点をA、A´とした場合に、施術部10をA、A´を結ぶ線に沿って切断した場合に得られる断面形状において、少なくとも4つ以上の突起12、13、14、26、27、29を、表面に有するとともに、当該突起の先端部を曲面化させることを特徴とする健康器具1である。
以下、第1の実施形態の健康器具1を、適宜、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
1.基本構成
図1(a)に示すように、第1の実施形態の健康器具1は、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bと、長さ方向に沿って延設された施術部10と、を有する棒状の健康器具1であって、施術部10が巾方向への湾曲部20を有しており、施術部10を長さ方向に沿った中間地点A、A´を結ぶ線にて切断した場合に得られる断面形状において、4つ以上の突起を、表面に有することを特徴とする。
このような構成とすることにより、簡易構造でありながら、施術対象として自他の区別なく施術が可能であるとともに、多種多様な施術に対応することができる。
すなわち、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bと、施術部10と、を有する所定の基本構成から、好適に把持することができ、多数の突起や湾曲部20を利用することにより、多種多様な施術に対応することができるとともに、施術対象が自分自身であっても、自ら所定施術が可能となる。
【0022】
(1)構成材料
図1等に示される健康器具1の構成材料の種類は特に制限されるものでないが、例えば、金属材料、セラミック材料、木質材料又は樹脂材料の金属材料、セラミック材料、木質材料又は樹脂材料(ゴム材料を含む)の少なくとも1つから構成されることが好ましい。
この理由は、このような構成材料を用いることによって、健康器具1の軽量性(重量)や耐久性、平滑性等を適宜変更することができ、ひいては、健康器具1を用いて、長時間にわたり、より適切な施術を行うことができるためである。
すなわち、このような構成材料を用いてなる健康器具1によれば、複数回使用した場合でも、健康器具1が歪曲等を起こすことのない強度を保つことができる。
また、このような構成材料を用いてなる健康器具1によれば、対象となる患部に裂傷を与える可能性のある、健康器具1表面の損傷等を防ぐことができるとともに、取り回しや持ち運びが容易な軽量性(所定重量)を保つことができる。
【0023】
なお、振動の減衰能力が低い素材を、構成材料として用いた場合、施術時に患部の発する微細な振動を、健康器具1を通じて感じ取ることができる。
従って、患部の健康状態等を読み取れる場合があることから、金属材料を構成材料とすることがより好ましい。
そして、金属材料の種類としては、良好な軽量性(例えば、室温で比重:2.5〜2.8)を有し、比較的安価であるとともに、複雑な形状への成形加工が容易なことから、アルミニウムやアルミニウム合金(JIS材質規格に準じてなる2011、2014、2017、2024、2117、2219、3003、3004、5005、5086、6063、7075等)を用いることがより好ましい。
その上、アルミニウムやアルミニウム合金であれば、熱伝導率が高く(例えば、室温で230〜240W/(m・℃))、かつ比熱(例えば、室温で230〜240W/(m・℃))が小さいことから、施術時に人肌に適した温度(例えば、20〜25・℃)になりやすいという特徴がある。
従って、アルミニウムやアルミニウム合金を構成材料としてなる健康器具1であれば、施術の対象者に対して、良好な心地よさを与えるとともに、負担を掛けにくいという利点も得ることができる。
【0024】
また、人体に対するアレルギー性が極めて低く、高硬度(HV硬度が110〜300)で、比較的良好な軽量性(例えば、室温で比重:4.1〜4.5)を有し、高い耐久性を有しており、人体への施術に用いやすいことから、金属材料のうち、チタンやチタン合金を用いることも好ましい。
このようなチタンやチタン合金として、例えば、JIS材質規格に準じてなるJIS1種、JIS2種、高力合金系のJIS60種やJIS61種、耐食系合金としては、JIS11種、JIS12種等が挙げられる。
その上、チタンやチタン合金であれば、高い耐食性を有するため、表面汚れなどの付着物を除去しやすく、長期保管性も良好であるという利点も得ることができる。
【0025】
一方、金属材料と比べて、非常に軽量であって、複雑形状への加工性や経済性(安価)等が優れることから、樹脂材料を用いることも好ましい。
樹脂材料中を用いる場合、所定フィラーや強化繊維を配合することにより、金属材料と同等の機械的強度を有しながら、良好な軽量性や加工性を維持することができる。
従って、着色効果等を発揮して、装飾性を向上させることができる。
ここで、樹脂材料の主成分としては、ABS樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、炭化水素系樹脂等の少なくとも1つが挙げられる。
【0026】
また、所定フィラーとしては、例えば、平均粒径が0.01〜100μmのシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水素化マグネシウム、金属マグネシウム、金属チタン、カーボンフィラー等が挙げられる。
また、所定強化繊維としては、例えば、平均長が0.1〜3mmのカーボンファイバー、ガラス繊維、オレフィン繊維等が挙げられる。
そして、その所定フィラーや所定強化繊維の配合量は、これらの種類、樹脂材料の主成分の種類、健康器具の耐久性や用途等にもよるが、通常、樹脂材料の主成分100重量部に対して、0.1〜80重量部の範囲内の値にすることが好ましい。
この理由は、所定フィラーや所定強化繊維の配合量を上記の範囲内の値とすることで、健康器具において、良好な機械的強度を付与するとともに、取り回しや持ち運びが容易な軽量性(所定重量)を保つことができるためである。
従って、所定フィラーや所定強化繊維の配合量を樹脂材料の主成分100重量部に対して、1〜60重量部の範囲内の値にすることがより好ましく、10〜50重量部の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
【0027】
その上、構成材料の一部として、ネオジウム、サマリウム、コバルト、ジルコニウム、フェライト等の磁性材料を配合することにより、健康器具1を所定形状に成形したのち、さらに磁化することにより、磁性健康器具とすることもできる。
このように磁性健康器具とした場合、人体の皮膚に当接した際、磁気により血行の促進される場合があり、さらなる良好かつ迅速な施術効果を得ることができる。
そして、磁性材料の配合量としては、磁性材料の種類、樹脂材料の主成分の種類、健康器具の耐久性や用途等にもよるが、通常、樹脂材料の主成分100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内の値にすることが好ましい。
この理由は、磁性材料の配合量を上記の範囲内の値とすることで、健康器具1に過度に人体に影響を及ぼさない程度の磁気を付与できるとともに、取り回しや持ち運びが容易な軽量性(所定重量)を保つことができるためである。
従って、磁性材料の配合量を樹脂材料の主成分100重量部に対して、0.5〜8重量部の範囲内の値にすることがより好ましく、1〜5重量部の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
【0028】
なお、図1等に示す健康器具1における1つ以上の把持部11a、11bと、施術部10とは、同一材料からなる構成であってもよく、別材料からなる構成であってもよいが、これらの把持部11a、11bと、施術部10との間に、接合部を有する場合、当該接合部をすきまやバリなどのない、平滑な表面とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することで、接合部に起因した施術時の患部の裂傷等を効果的に防ぎ、よりスムーズかつ安全性の高い施術が可能となるためである。
【0029】
(2)全体長さ
図1等に示す健康器具1の全体長さ(L1)としては、特に限定されるものではないが、一般的な施術対象者の体型等を考慮した上で、好適に施術に用いることのできる長さであり、かつ、取り回しや持ち運びの容易さを保てる長さであることが好ましい。
より具体的には、全体長さ(L1)を30〜55cmの範囲内の値とすることが好ましく、33〜50cmの範囲内の値とすることがより好ましく、35〜45cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
2.施術部
(1)形状
また、施術部10の形状としては、図1等に例示するように、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bから、長さ方向に沿って延設され、巾方向の湾曲部20を形成することを特徴とする。
この理由は、このような構成とすることにより、施術部10を用いて施術を行う際に、より効率よく施術効果を得ることができるためである。
これは、人体部位が、表面形状として、丸みを帯びた部位が多くを占めることから、上述した巾方向の湾曲部20の凹部を、広く好適に当接できるためである。
また、大きな押圧力が求められる場合などは、巾方向の湾曲部20の凸部を用いることで、健康器具1と患部との接触面を狭くすることができ、より大きな押圧力をかけることができるためである。
【0031】
また、施術部10を長さ方向に沿った中間地点を通るA−A´線に沿って切断した場合に作られる、左右の切断物の形状が非対称であることが好ましい。
このように構成することにより、施術に使用可能な箇所としての、形状が異なる突起や曲面等の数が増加し、より多様な人体部位に対応した施術を行うことができる。
すなわち、上述した中間地点を通るA−A´線における左右で形状が異なるため、施術に使用可能な箇所として、形状の異なる箇所を10箇所以上有することができる。
従って、それらを使い分けることで、施術対象者の体格や体質の違いに起因する、筋膜や筋肉などの軟部組織の状態、及び形状の差異に対応した、多種多様な施術を行うことができる。
【0032】
(2)断面形状
第1の実施形態における健康器具1は、施術部10を、長さ方向に沿った中間地点を通るA−A´線に沿って切断した場合に得られる断面形状において、図1(b)に示すように、4つ以上の突起を、表面に有するとともに、当該突起の先端部を曲面化させてなる形状であることを特徴とする。
この理由は、このような構成とすることにより、施術部10の有する突起を、施術において好適に使用することができ、効率よく施術効果を得ることが可能となるためである。
これは、施術部10の有する突起の先端が曲面化してあるためであり、患部に対し、適度な押圧力を与えつつ、施術を行うことができるためである。
【0033】
なお、本実施形態における、突起の先端部の曲面化とは、突起の先端部が平坦であるか、内側に凹んだ形状であるか、又は、丸みを帯びて凸状に突き出す形状であることを意味するものである。
従って、より具体的には、突起の先端部における曲率半径として、通常0.01〜1000μm範囲内の値を有することが好ましく、0.05〜900μm範囲内の値を有することがより好ましく、0.1〜800μm範囲内の値を有することがさらに好ましい。
【0034】
また、上述した4つ以上の突起が少なくとも第1の突起12、第2の突起13、第3の突起14を含み、4つ以上の突起のうち最も長い突起を第1の突起12とし、左右に隣接する突起を、第2の突起13及び第3の突起14としたときに、第1の突起12と第2の突起13との間、及び第1の突起12と第3の突起14との間の両方、あるいはいずれか一方が、平滑曲面であることも好ましい。
このように複数の突起のみならず、平滑曲面を有することにより、人の筋膜や筋肉などの軟部組織に対して、擦りつけることも可能となって、さらに、多種多様な施術を行うにあたり、大きな押圧力を与えて、施術するのに適さない部位に対しても、適切に施術を行うことができる。
なお、突起の長さは、例えば、断面形状において、計測対象である突起の、左右に隣接する2つの突起を結ぶ線を含む直線を含め所定平面を想定し、それから、計測対象である突起の頂点に対し、法線方向に直線をひいた場合に得られる最長長さを意味する。
【0035】
さらに、上述した4つ以上の突起が、さらに第4の突起27、第5の突起26、第6の突起29を含み、第2の突起13に隣接する突起を第4の突起27、第3の突起14に隣接する突起を第5の突起26、第4の突起27と第5の突起26との間にある突起を第6の突起29としたときに、第4の突起27と第6の突起29との間、及び第5の突起26と第6の突起29との間の両方、あるいはいずれか一方が、断面形状の内部に向かって凹んだ曲面を有するとともに、その表面を粗面15とすることも好ましい。
この理由は、人体に対する施術において、例えばマッサージオイル(精油等)やマッサージワックス(クリーム等を含む、)を使用した場合に、施術部10の長さ方向に沿った粗面15を利用して、マッサージオイルやワックスを均一に行き渡らせることができるとともに、マッサージオイルやワックスの保持力についても高めることができるためである。
より具体的には、通常、按摩等の施術において、マッサージオイルやワックスを使用する場合、施術者が自身の手のひらなどに、マッサージオイルやワックスを塗布し、患部に接触することで、対象に付着させることができる。
あるいは、患部付近に適量のマッサージオイルやワックスを付着させた後、施術者が自身の手でふれることにより、患部周辺に広げる、といった手法が用いられている。
しかしながら、上述した構成を有する場合、断面形状の内部に向かって凹んだ曲面の、施術部10の長さ方向に沿って、マッサージオイルやワックスを伝播させることで、粗面15全体にマッサージオイルやワックスを行き渡らせることができる。
よって、その状態で施術部10を患部に当接して施術することで、広範囲に渡って均一に、マッサージオイルやワックスを広げることができる。
【0036】
(3)長さ
施術部10を施術に用いる場合、図1に示す施術部10の長さ(L3)を、通常、15〜45cmの範囲内の値とすることが好ましい。
これは、背中や大腿部など、比較的大きな身体部位を対象とした際に、好適に当接しやすい長さであるとともに、施術において、使用されない余分な箇所が発生する可能性が低く、過度に重量等が大きくなることを防止できる長さであるためである。
従って、より具体的には、施術部10の長さ(L3)を18〜40cmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜35cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0037】
(4)幅
図1に示す施術部10の幅(W1)としては、通常、1.5〜5cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、上記の範囲内の値とすることで、上述した、断面形状における4つ以上の突起を有する構成を形成しやすくなるとともに、過度に重量が大きくなることを防止し、多種多様な施術への対応力や、取り回しや持ち運びの容易さを保つことができるためである。
従って、より具体的には、施術部10の幅(W1)を1.8〜4.5cmの範囲内の値とすることがより好ましく、2〜4cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
(5)高さ
図1に示す施術部10の高さ(t1)としては、通常、2〜5.5cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、上記の範囲内の値とすることで、上述した、断面形状における4つ以上の突起を有する構成を形成しやすくなるとともに、当該突起の一部が、過度に鋭く形成されるのを防止し、多種多様な施術へ対応することが可能となるためである。
従って、より具体的には、施術部10の高さ(t1)を2.3〜5cmの範囲内の値とすることがより好ましく、2.5〜4.5cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
3.把持部
(1)形状
少なくとも1つ以上の把持部11a、11bの形状としては、図3(b)に示すとおり、少なくとも一方に、スプーン状の凹部17、17´と、縁23、23´とを有することが好ましい。
この理由は、スプーン状の凹部17、17´や、縁23、23´あるいは先端部などを使用することで、手先や首筋などの細やかな人体部位に当接したり、あるいは、効果的に擦り付けたりすることができるためである。
また、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bを、把持した状態で施術する際において、上述したスプーン状の凹部17、17´と、縁23、23´と、を握る形で把持することができる。
その上、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bに、布や糸等を強固に巻き付けることも可能となり、健康器具1の使勝手性を向上させることもできる。
【0040】
また、健康器具1が2つの把持部11a、11bを有するとともに、2つの把持部の形状として、両方にスプーン状の凹部17、17´と、縁23、23´とを有する場合、2つの把持部11a、11bの、スプーン状の凹部17、17´と、縁23、23´との大きさ、及び形状、もしくはいずれか一方が異なることが好ましい。
この理由は、2つの把持部11a、11bを人体に当接して施術を行う場合、2つの把持部11a、11bの、スプーン状の凹部17、17´と、縁23、23´と、の大きさ、及び形状、もしくはいずれか一方が異なることで、好適に当接できる形状に差異が生じ、患部の違いや、施術対象者の体格の違い等に起因する、筋膜や筋肉などの軟部組織の個体差に対応し、2つの把持部11a、11bを使い分けることができるためである。
【0041】
(2)連通部
少なくとも1つ以上の把持部11a、11bがスプーン状の凹部17、17´と、縁23、23´と、を有する場合、スプーン状の凹部17、17´と、施術部10の断面形状における、第2の突起13、及び第3の突起14との間の、断面形状の内部に向かって凹んだ曲面との間に、連通部19、19´が設けてあることが好ましい。
このように構成することで、スプーン状の凹部17、17´にマッサージオイルやマッサージワックスを保持するだけで、施術部10に向けて、適量なマッサージオイルを適用することが可能となる。
すなわち、スプーン状の凹部17、17´を受け皿とすることで、連通部19、19´を通し、施術部10に向けて適量のマッサージオイルやマッサージワックス(ワックス状馬油等)を伝播させることが可能となり、マッサージオイルやマッサージワックスを使用する施術をより効率よく行うことができるためである。
【0042】
なお、上述したように、スプーン状の凹部17、17´を受け皿として、連通部19、19´を通し、施術部10に向けてマッサージオイルやマッサージワックスを伝播させという観点から、スプーン状の凹部17、17´と、連通部19、19´と、施術部10の断面形状の内部に向かって凹んだ曲面とは、健康器具1の同じ面に備えられるとともに、段差なく連結されることが好ましい。
このように構成することで、よりスムーズに健康器具1にマッサージオイルやマッサージワックス等を伝播させることができる。
【0043】
(3)押圧部
さらに、図3(a)に示すように、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bと、施術部10との間に、内側に向かって湾曲した押圧部21、21´を有することが好ましい。
この理由は、このように構成することで、棒状の健康器具1の内側、すなわち、外表面から内部に向かって湾曲した押圧部21、21´に、指等を押し当てて、より強固な押圧力でもって、長時間にわたって効率よく施術することができるためである。
より具体的には、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bを把持する際、指等を押圧部21、21´に当接することで、患部に対し施術部10を当接しやすくなるとともに、押し込み方向への荷重をかけやすくなるためである。
【0044】
ここで、押圧部21、21´を備える面としては、特に限定されるものではないが、連通部19、19´を有する側に押圧部21、21´を備えた場合、スムーズにマッサージオイルを伝播できない場合がある。
そのため、押圧部21、21´は、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bと、施術部10との間であって、連通部19、19´を有さない側に備えることが好ましい。
【0045】
(4)長さ
少なくとも1つ以上の把持部11a、11bの長さ(L2、L4)としては、通常、5〜10cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような範囲内の値とすることで、好適に健康器具1を把持できるとともに、使用されない余分な箇所が発生すことによる、健康器具1全体としての、重量や全体長さ等の増加を防ぎ、取り扱い性や持ち運び性を、良好な範囲に保つことができるためである。
従って、より具体的には、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bの長さ(L2、L4)を5.5〜9.5cmの範囲内の値とすることがより好ましく、6〜9cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
(5)幅
図1に示す少なくとも1つ以上の把持部11a、11bの幅(W2、W3)を、通常、2〜6cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような範囲内の値とすることで、スプーン状の凹部17、17´と、縁23、23´と、を形成しやすくなるとともに、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bを好適に把持しやすくなり、細やかな人体部位への施術が容易となるためである。
従って、より具体的には、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bの幅(W2、W3)を2.3〜5.5cmの範囲内の値とすることがより好ましく、2.5〜5cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
(6)高さ
図1に例示する二つの把持部11a、11bの高さ(t2、t3)を、通常、2.5〜6cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような範囲内の値とすることにより、所定の強度を保ちやすくなるとともに、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bを好適に把持しやすくなり、細やかな人体部位への施術が容易となるためである。
従って、より具体的には、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bの高さ(t2、t3)を2.8〜5.5cmの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜5cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0048】
4.製造方法
また、健康器具の製造方法としては特に制限されるものではないが、以下に示す準備工程、成形工程、仕上げ工程の3つの工程を少なくとも含むことが好ましい。
【0049】
(1)準備工程
準備工程は、金属材料、セラミック材料、木質材料、又は樹脂材料の少なくとも1つからなる、健康器具の構成材料を準備する工程である。
なお、一部上述したように、図1に例示される健康器具1は、施術部10と、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bとが、同一材料であってもよく、別材料であってもよく、それに対応して、構成材料を準備すればよい。
【0050】
(2)成形工程
成形工程は、準備工程にて準備された材料を、図1に示すように、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bと、その間に施術部10と、を有する、棒状の健康器具1に成形する工程である。
そして、より具体的には、施術部10が巾方向への湾曲部20を有し、施術部10の長さ方向に沿った中間地点Aの断面形状が、4つ以上の突起を、断面周囲に有するとともに、当該突起の先端部が曲面化した棒状の健康器具1に成形する工程である。
ここで、成形工程で採用する成形方法は、特に限定されるものではないが、例えば、構成材料に応じた方法であることが好ましい。
従って、金属材料やセラミック材料であれば鋳造、樹脂材料であれば射出成形法などを好適に用いることができる。
【0051】
(3)仕上げ工程
仕上げ工程は、成形工程にて成形された棒状部材に対し、最終的な形状に不要な部分の除去や、研磨処理などを行い、製品として使用可能な状態とする工程である。
仕上げ工程に用いられる方法は、特に限定されるものではないが、金属素材においては、旋盤加工や、研削加工などを用いることで表面を滑らかなものとすることができる。
粗面15の形成に関してはケミカルエッチング処理などを用いるのが好ましい。
【0052】
5.使用方法
図1等に示す健康器具1の使用方法は特に制限されるものではないが、例えば、準備工程及び施術工程の少なくとも2つの工程を含むことが好ましい。
【0053】
(1)準備工程
準備工程は、図1等に示す施術に使用する健康器具1を準備する工程である。
施術においては、施術対象者が自身で施術を行うことが基本であるが、背中など、手の届きにくい部位を対象とする場合、より効率よく施術効果を得るために、施術対象者とは別の施術者から施術を受けるのも好ましい。
【0054】
(2)施術工程
施術工程は、図1等に示す健康器具1の多数の突起等を、施術対象者の患部に当接させ、押圧しつつ、擦ることで、筋膜や筋肉などを正常な状態へ回復させる工程である。
より具体的には、健康器具1の第1の突起12等を施術対象者の患部に当接し、患部周辺の凹部28が視認できる程度に押圧しつつ、擦ることで、筋膜や筋肉などの軟部組織の不調を改善し、正常な状態へ回復させる工程である。
なお、図4に示すように、図1等に示す健康器具1であれば、例えば、健康器具1の断面形状における中心点Eを軸として、矢印D方向に、回転移動すなわち、健康器具1を容易に回転させながら、皮膚表面に沿って移動させることができる。
従って、無回転で、皮膚の表面付近を表面移動させる場合と比較して、皮膚表面の、深部に存する筋膜や筋肉などの軟部組織を、より効果的に施術することができる。
その上、図1等に示す健康器具1であれば、施術に使用可能な箇所を多く有することから、施術対象者の患部に対して、スポット的に押圧することもできる。
従って、指の間や、頃部分り等の小面積の患部に対しても、集中的に施術することができる。
【0055】
かかる施術工程において使用する箇所は、患部の大きさや形状、あるいは施術対象者の体格や体調に応じて、適宜変更するのが好ましく、使用可能な箇所として、図1に示す健康器具1を参照した場合、施術部10の断面形状における第1の突起12、第2の突起13、第3の突起14、及び突起26、27等が挙げられる。
さらに、少なくとも1つ以上の把持部11a、11bの、縁23、23´や突起18、18´24、24´、25、25´等も施術に使用可能であって、仮に施術部10の断面形状における突起が4つであったとしても、施術に使用可能な箇所は、少なくとも10箇所以上の多様なものとなる。
これは、対象となる患部ごとに、図1等に示す健康器具1において、好適な形状を有する箇所を使用することで、健康器具1を的確に当接でき、より効率よく施術効果を得ることができるためである。
【0056】
なお、施術における押圧力は、施術対象者の体質や体調等に応じて、適宜調節されることが好ましい。
すなわち、筋肉への突起のめり込み量と、押圧力との相関関係を、あらかじめ光学顕微鏡やノギス、さらには圧力計等を用いて測定しておき、それを目安として、施術することも好ましい。
【0057】
そして、施術工程においては、施術対象者が着衣した状態で、衣類の上から施術を行ってもよいが、患部を露出した状態で施術を行うのがより好ましい。
この理由は、直接患部に接触しつつ、施術を行うことで、身体内部の状態を知覚できる場合があり、状態に応じた的確な施術を行える可能性が高くなるためである。
【0058】
さらに、患部を露出した状態で施術を行う場合、摩擦による皮膚への負荷を低減したり、皮膚への浸透効果を発揮させたりするため、マッサージオイルやマッサージワックスを併用して施術を行うのも好ましい。
すなわち、健康器具の所定場所に、マッサージオイルとしての、アーモンドオイルやグレープシードオイル、又は、マッサージワックスとしての、馬油、ホホバオイルなどを適用することができる。そして、それぞれ、スプーン状の凹部17、17´から、連通部19、19´を通して、粗面15に伝播させることで、施術を行いつつ、肌にマッサージオイルやワックスを浸透させることができ、健康器具1と患部との滑り性等を向上させたり、施術効果を高めたりすることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を用いて、更に本発明を詳細に説明する。
但し、本発明は、特に理由なく、下記の実施例の記載に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
1.健康器具の準備
(1)基礎成形
砂型鋳造法により、所定型の内部に、構成材料として、アルミニウム(純アルミニウム)を注入し、図1に準じた2つの把持部11a、11bと、その間に巾方向への湾曲部20を有する施術部10と、巾方向の中間地点の断面形状として、六つの突起12、13、14、26、27、29及び粗面15を有する棒状部材を形成した。
形成された棒状部材の2つの把持部11a、11bは、いずれもスプーン状の凹部17、17´と、縁23、23´とを有し、その上、長さ方向に沿った中間地点にて切断した場合、左右の切断物が非対称であった。
【0061】
(2)仕上げ
成形された棒状部材に対し、旋盤加工、及び、研磨加工を施し、把持部と施術部との間であって、施術部の巾方向への湾曲部の、凸方向側に押圧部を設けるとともに、表面をバリ等のない滑らかなものとした。
さらにエッチング処理を施し、把持部のスプーン状の凹部と、連通部と、施術部の第2の突起及び第3の突起の間の曲面とに、粗面を形成した。
エッチング液としては、混酸アルミエッチング液(関東化学株式会社製)を使用し、処理後に洗浄を行い、重量が300gの健康器具を作成した。
【0062】
2.健康器具の評価
(1)持ち運び性
施術対象者が、施術の前後における、得られた健康器具の持ち運び性を、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、健康器具の重量が、1kg以下であった場合、好適に把持することができ、運搬も容易であった。
◎:重量が500g以下である。
〇:重量が1kg以下である。
△:重量が2kg以下である。
×:重量が2kgを超えている。
【0063】
(2)使用感
施術対象者が、自身の背中、大腿部、下腿部、腕部、肩、首、手先、足先の8箇所の部位に対し、30分にわたって、自ら施術を行った。
施術後、下記基準に沿って、図1に示す健康器具の使用性を評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:自ら施術を行うにあたり、8箇所の全ての部位において、健康器具を当接させて、適式に押圧回転移動や、細部にわたってピンポイントに押圧して施術することができる。
〇:自ら施術を行うにあたり、6箇所以上の部位において、健康器具を当接させて、適式に押圧回転移動や、細部にわたってピンポイントに押圧して施術することができる。
△:自ら施術を行うにあたり、4箇所以上の部位において、健康器具を当接させて、押圧回転移動や、細部にわたってピンポイントに押圧して施術することができる。
×:自ら施術を行うにあたり、4箇所未満の部位において、健康器具を当接させて、押圧回転移動や、細部にわたってピンポイントに押圧して施術することができる。
【0064】
[実施例2]
実施例2においては、構成材料としてアルミニウム合金(JIS材質規格におけるA3003)を用い、かつ、表面に、ワックス状の馬油(約1g)を所定量塗布したほかは、実施例1と同様に健康器具を作成し、使用性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0065】
[実施例3]
実施例3においては、構成材料としてステンレス(SUS304、比重:7.9、HV硬度:180、熱伝導率:16〜25W/(m・℃))を用いたほかは、実施例1と同様に健康器具を作成し、使用性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0066】
[実施例4]
実施例4においては、健康器具を、図6に示すように押圧部を設けずに形成したほかは、実施例1と同様に健康器具を作成し、使用性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0067】
[実施例5]
実施例5においては、図7に示すように、把持部を1つとしたほかは、実施例1と同様に健康器具を作成し、使用性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0068】
[実施例6]
実施例6においては、構成材料としてチタンを用いたほかは、実施例1と同様に健康器具を作成し、使用性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、得られた健康器具のアレルギー性を別途1月かけて別途評価したところ、被験者10人中、アレルギー性を示した人は皆無であった。
【0069】
[実施例7]
実施例7においては、構成材料として、ポリブチレンレテフタレート樹脂100重量部と、フィラーとしての平均粒径が0.1μmの微粒子シリカ30重量部、酸化チタン20重量部を配合し、所定金型を用いた加熱処理によって形成したほかは、実施例1と同様の健康器具を作成した。
より具体的には、構成材料を所定金型の内部に充填し、金型温度を200℃に保持したまま、30分間加熱処理して、ポリブチレンレテフタレート樹脂等を溶融硬化させ、実施例1と同様の外形及び、寸法の健康器具を作成し、使用性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、得られた樹脂製の健康器具の重量を測定したところ、約70gであった。
【0070】
[実施例8]
実施例8においては、構成材料としてABS樹脂(アクリルニトリルブタジエンスチレン共重合体)と、フィラーとしての平均粒径が1μmのシリカ20重量部、希土類磁性材料としてのネオジウム10重量部を配合し、実施例1と同様に健康器具を作成したのち、さらに磁石の強さが0.2テスラとなるように磁化させた。
すなわち、磁性健康器具としたほかは、実施例1と同様に、使用性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、実施例8の磁性健康器具によれば、重量が約100gであり、その上、磁石による人体における肩こり低下性の効果が顕著であることも、別途官能試験において確認された(被験者10人中、8人が、1日30分の施術で、1週間後における肩こりが低下した)。
【0071】
[比較例1]
比較例1においては、図7に示すEDE(発泡ポリエチレン)樹脂を主成分とする、従来の多層棒状健康器具を使用し、実施例1と同様の基準に沿って使用性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0072】
[比較例2]
比較例2においては、図8に示す従来の人用軟部組織回復補助具を使用するとともに、マッサージオイルとして、アーモンドオイルを使用して施術し、実施例1と同様の基準に沿って使用性等を評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、比較例2の場合、安定した施術効果を得るために、施術対象者とは別に施術者を用意しなければならないという問題が見られた。
【0073】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上の説明の通り、本発明の健康器具によれば、当該健康器具を自ら当接させて、適式に押圧回転移動や、細部にわたってピンポイントに押圧すること等によって、人の筋膜や筋肉などの軟部組織の、体格や体質の違いによる個人差に適切に対応し、これらを正常な状態に回復させることが容易な健康器具が提供されるようになった。
従って、専門の施術者による施術はもちろんのこと、自分自身に対する施術であったとしても、各々の身体状況に適切に対応し、広い使用汎用性が期待される。
その上、本発明の健康器具によれば、所定の突起部を有しているとしても、基本的に棒状であって、所定袋に挿入して持ち運んだり、保管したりすることが容易である。
さらに言えば、健康器具の構成材料として、アルミニウムや樹脂材料等を用いることにより、さらに軽量性に優れ、良好の運搬性を得ることもできる。
【要約】
施術対象が自分自身であっても、所定施術が可能であって、人の筋膜や筋肉などの軟部組織の、体格や体質等の違いによる差異に適切に対応し、これらを正常な状態に効率よく回復させるための健康器具を提供する。
少なくとも1つ以上の把持部と、長さ方向に沿って延設された施術部と、を有する、棒状の健康器具であって、施術部が巾方向への湾曲部を有し、施術部を長さ方向に沿った中間地点にて切断した場合に得られる断面形状において、4つ以上の突起を、断面周囲に有するとともに、当該突起の先端部を曲面化させることを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8