(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーまたはエチレン酢酸ビニル共重合体系熱可塑性エラストマーからなる連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめた厚みが5mm以上100mm以下の三次元ランダムループ網状構造体を、前記エラストマー樹脂の融点の−40℃〜+50℃の範囲に加熱された金型で軟化および圧縮加工する際に、熱プレスにより、網状構造体成型品の本体部(厚みを残した部分)の形を所望の形に成型するだけでなく、網状構造体を軟化させることにより本体部の外縁に耳部(本体部よりも厚みが薄い部分)を形成し、前記耳部は厚みが加工前の厚みより薄い0.5mm以上10mm以下で引張強度が0.6MPa以上であることを特徴とする網状構造体成型品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の網状構造体成型品を構成する連続線状体に使用するポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、比重が0.94以下の低密度ポリエチレンエラストマーであることが好ましく、特にエチレンと炭素数3以上のαオレフィンからなるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーからなることが好ましい。本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、特開平6−293813号公報に記載されている共重合であることが好ましく、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンを共重合してなるものである。ここで、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、エイコセン−1などが挙げられ、好ましくはブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、エイコセン−1である。また、これら2種類以上を用いることもでき、これらα−オレフィンは通常1〜40重量%共重合される。この共重合体は、特定のメタロセン化合物と有機金属化合物を基本構成とする触媒系を用いてエチレンとα−オレフィンを共重合することによって得ることができる。
【0011】
必要に応じて、上記方法によって重合された二種類以上のポリマーや、水素添加ポリブタジエンや水素添加ポリイソプレンなどのポリマーをブレンドすることができる。改質剤として、酸化防止剤、耐侯剤、難燃剤などを必要に応じて添加することができる。
【0012】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、比重が0.94を越えると、網状構造体成型品が硬くなりやすく好ましくない。より好ましくは0.935以下であり、さらには0.93以下が好ましい。下限は特に限定するものではないが、強度保持の観点から0.8以上が好ましく、0.85以上がより好ましい。
【0013】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる成分は、示差走査型熱量計にて測定した融解曲線において、融点以下に吸熱ピークを有することが好ましい。融点以下に吸熱ピークを有するものは、耐熱耐へたり性が吸熱ピークを有しないものより著しく向上する。例えば、本発明の好ましいポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、メタロセン化合物を触媒として、ヘキサン、ヘキセン、エチレンを公知の方法で重合し、得られたエチレン・α−オレフィン共重合体の場合、主鎖の分岐数を少なくするとハードセグメントの結晶性が向上し、塑性変形しにくく、かつ、耐熱耐へたり性が向上するが、溶融熱接着後さらに融点より少なくとも10℃以上低い温度でアニーリング処理するとより耐熱耐へたり性が向上する。アニーリング処理は、融点より少なくとも10℃以上低い温度でサンプルを熱処理することができれば良いが、圧縮歪みを付与することでさらに耐熱耐へたり性が向上する。このような処理をしたクッション層を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度で吸熱ピークをより明確に発現する。なおアニーリングしない場合は融解曲線に室温以上融点以下に吸熱ピークを明確に発現しない。このことから類推すると、アニーリングによってハードセグメントが再配列された準安定中間相を形成し、耐熱耐へたり性が向上しているのではないかと考えられる。本発明における耐へたり性向上効果の活用方法としては、クッションや敷きマット等、比較的繰り返し圧縮される使用用途において、耐久性を向上させるために有用である。
【0014】
本発明の網状構造体成型品を構成する連続線状体に使用するエチレン酢酸ビニル共重合体系熱可塑性エラストマーとしては、比重が0.91〜0.965が好ましい。比重は、酢酸ビニル含有率によって変化し、酢酸ビニルの含有率は1〜35%が好ましい。酢酸ビニル含有率が小さいとゴム弾性に乏しくなる恐れがあり、そういった観点から酢酸ビニル含有率は1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がさらに好ましい。酢酸ビニル含有率が大きくなるとゴム弾性には優れるが、融点が低下し耐熱性に乏しくなる恐れがあるため、酢酸ビニル含有率は35%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、26%以下がさらに好ましい。
【0015】
エチレン酢酸ビニル共重合体系熱可塑性エラストマーは、炭素数3以上のα−オレフィンを共重合することもできる。ここで、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、エイコセン−1などが挙げられ、好ましくはブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、エイコセン−1である。また、これら2種類以上を用いることもできる。
【0016】
必要に応じて、上記方法によって重合された二種類以上のポリマーや、水素添加ポリブタジエンや水素添加ポリイソプレンなどのポリマー改質剤をブレンドすることができる。改質剤として、滑剤、酸化防止剤、耐侯剤、難燃剤などを必要に応じて添加することができる。
【0017】
本発明の成型前の網状構造体は、例えば次のようにして得られる。網状構造体は特開平7−68061号公報等に記載された公知の方法に準じて得られる。例えば、複数のオリフィスを持つ多列ノズルよりポリエチレン系熱可塑性エラストマー、あるいはポリ酢酸ビニル系熱可塑性エラストマーをノズルオリフィスに分配し、該熱可塑性エラストマーの融点より20℃以上120℃未満高い紡糸温度で、該ノズルより下方に向け吐出させ、溶融状態で互いに連続線状体を接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取りコンベアネットで挟み込み、冷却槽中の冷却水で冷却せしめた後、引出し、水切り後または乾燥して、両面または片面が平滑化した網状構造体を得る。片面のみを平滑化させる場合は、傾斜を持つ引取ネット上に吐出させて、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ引取ネット面のみ形態を緩和させつつ冷却すると良い。得られた網状構造体をアニーリング処理することもできる。なお、網状構造体の乾燥処理をアニーリング処理としても良い。
【0018】
本発明の成型前の網状構造体を得るためには、原料として用いるエラストマーに酸化防止剤や滑剤を含有させても良い。溶融紡糸時に熱劣化を最小にできる酸化防止剤や滑剤の選定し、適切な量を添加することが好ましい。
【0019】
酸化防止剤としては、公知のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、N−H型ヒンダードアミン系光安定剤、N−CH
3型ヒンダードアミン系光安定剤の少なくとも1種類以上を添加することが望ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、1,3,5−トリス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、Sumilizer AG 80、2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)メシチレンなどが挙げられる。
ホスファイト系酸化防止剤としては、3,9−ビス(オクタデシルオキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−6−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、亜りん酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(4−ノニルフェニル)、4,4’−Isopropylidenediphenol C12−15 alcohol phosphite、亜りん酸ジフェニル(2−エチルヘキシル)、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリイソデシル ホスファイト、亜りん酸トリフェニルなどが挙げられる。
チオエーテル系酸化防止剤としては、ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2−ビス[[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロピルオキシ]メチル]−1,3−プロパンジイル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジトリデシルなどが挙げられる。
熱劣化を防ぐためには、フェノール系酸化防止剤とホスファイト系酸化防止剤を混合して使用することが望ましい。熱劣化と溶出の関係から、酸化防止剤の分子量は300以上が好ましく、添加量は0.1重量%以上1.0重量%以下が好ましい。
【0020】
滑剤は、炭化水素系ワックス、高級アルコール系ワックス、アミド系ワックス、エステル系ワックス、金属石鹸系等が選択される。滑剤は添加しなくても良く、添加する場合は0.5重量%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の網状構造体成型品を構成する連続線状体は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂と組み合わせた複合線状体としても良い。複合形態としては、線状体自身を複合化した場合として、シース・コア型、サイドバイサイド型、偏芯シース・コア型等の複合線状体が挙げられる。
【0022】
本発明の網状構造体成型品は、本発明の目的を損なわない範囲で、多層構造化しても良い。多層構造としては、表層と裏層を異なった繊度の線状体で構成することや、表層と裏層で異なった見掛け密度を持つ構造体で構成する等の構造体が挙げられる。多層化方法としては、網状構造体成型品同士を積み重ねて側地等で固定する方法、加熱により溶融固着する方法、接着剤で接着させる方法、縫製やバンド等で拘束する方法等が挙げられる。
【0023】
本発明の網状構造体成型品を構成する連続線状体の断面形状は特に限定されないが、中空断面や異型断面とすることで好ましい抗圧縮性やタッチを付与することができる。
【0024】
本発明の網状構造体成型品は、性能を低下させない範囲で樹脂製造過程から成型品に加工し、製品化する任意の段階で防臭抗菌、消臭、防黴、着色、芳香、難燃、吸放湿等の機能付与を薬剤添加等の処理加工ができる。
【0025】
網状構造体は、そのまま使用されることもあるが、網状構造体成型品として使用されるケースもある。網状構造体成型品を得る方法として、網状構造体製造時の押し出し時や押し出し後に規制板等を用いて成型する方法や、カット、熱プレスなどの公知な二次加工方法が知られているが、本発明においては熱プレス法を用いることが好ましい。熱プレスにより、網状構造体成型品の本体部(厚みを残した部分)の形を所望の形に成型するだけでなく、網状構造体を軟化させることにより本体部の外縁に形成される耳部(本体部よりも厚みが薄い部分)を形成することが出来る。
なお、本発明における「本体部の外縁に形成される耳部」は、例えば網状構造体成型品がドーナツ形状の場合の内側に形成される中空部に形成される本体部よりも厚みが薄い部分も含まれるものである。
【0026】
本発明による網状構造体成型品は、上記の通り網状構造体成型品の本体部の成型加工だけでなく同時に耳部を形成することを特徴とする。この耳部は、次工程での利用を想定したものである。次工程での利用の例としては、例えば椅子の外枠に網状構造体成型品を把持する際の把持部で利用すること等が挙げられる。耳部に次工程での利用に必要な強度を持たせることにより、次工程の作業を効率よく行うことが可能となる。
【0027】
本発明の網状構造体成型品の本体部の厚みは、5mm以上100mm以下であり、好ましくは10mm以上90mm以下、より好ましくは15mm以上80mm以下である。厚みが5mm未満ではクッション材に使用すると薄すぎてしまい底付き感が出てしまう場合がある。厚みが100mmを超えると本体部と耳部の境界がきれいに形成されにくくなり、本体部の形状付与が難しくなる場合がある。
【0028】
本発明の網状構造体成型品の耳部の厚みは、本体部の厚みより薄く0.5mm以上10mm以下であり、好ましくは1mm以上9mm以下、より好ましくは1.5mm以上8mm以下である。厚みが1mm未満では耳部の引張強度が低くなってしまう場合がある。厚みが10mmを超えると耳部の柔軟性が減少し、組み付け時の作業性が低下してしまう場合がある。
【0029】
本発明の網状構造体成型品の耳部の引張強度は0.6MPa以上であり、好ましくは0.8MPa以上、より好ましくは0.9MPa以上である。引張強度が0.6MPa未満であると、次工程の取り扱い時に網状構造体成型品の形態を維持出来ない場合がある。さらに、耳部に取り付け穴等を設置して位置決めを行う際にも、穴をきっかけとした網状構造体成型品のほつれが生じる場合がある。耳部の引張強度は高い方が好ましいが、実質的には、10MPa以下であり、好ましくは5MPa以下である。
【0030】
耳部を上記強度とするためには、軟化・圧縮工程時の加工条件が網状構造体を構成する樹脂の融点−40℃〜+50℃の範囲に加熱した金型で1分〜10分間の時間、60kg/cm
2〜200kg/m
2の圧力で圧縮することが好ましい。
温度が所定の温度より低い場合は、軟化が不十分となり熱変形と網状構造体同士の融着が不十分となり、耳部を形成することが難しくなる。温度が所定の温度より高い場合は、耳部自体が溶けてしまい、耳部が形成されない。より好ましい温度範囲は、融点−35℃〜+40℃、さらに好ましくは融点−30℃〜+30℃である。
【0031】
金型で圧縮する時間は1分〜10分の間が好ましい。この時間は温度と圧力の関係で決定すれば良いが、1分未満では熱が十分に行き渡らずに所望する耳部を形成することが出来ず、10分を超えると作業性に影響を与える。より好ましくは1.5分〜5分、さらに好ましくは2分〜4分である。
【0032】
金型で圧縮する圧力は、60kg/cm
2〜200kg/m
2であることが好ましい。この圧力は、温度と時間の関係で決定すれば良いが、60kg/cm
2未満では、十分に圧縮できず、200kg/cm
2を超えると耳部とクッション性を有する網状構造体の境界部で坐屈を生じ、網状構造体成型品の本体部から耳部だけが外れやすくなるので好ましくない。より好ましい圧力は70kg/cm
2〜180kg/cm
2、さらに好ましくは80kg/cm
2〜160kg/cm
2である。
【0033】
本発明の網状構造体成型品の耳部として必要な面積は、次工程で用いられる際に必要な長さ、幅を考慮して決める必要があるが、網状構造体成型品の本体部の外縁に形成される幅は3mm以上有することが好ましい。幅が3mm未満であると、耳部の強度が十分高くても耳部と網状構造体の本体部の境界面での破壊が生じやすく、次工程での作業性が低下するため好ましくない。耳部の幅はより好ましくは5mm以上、さらに好ましくは8mm以上である。耳部の幅は大きい方が網状構造体成型品の形態が安定するため好ましいが、大きすぎると次工程でのロスが生じるため、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下である。
網状構造体成型品の本体部の外縁に形成される耳部の幅は、加工前の網状構造体の大きさ、熱プレスされる金型の形状、熱プレス条件等により決定される。熱プレスされて形成された耳部のままの状態を耳部としても構わないが、熱プレス幅を広く作成した後に、トムソン刃等でカットして必要な耳部とすることも可能である。
【0034】
本発明の網状構造体成型品の本体部を構成する連続線状体の繊度は、繊度が小さいと成型品をクッション材として使用する際に必要な硬度が保てなくなり、逆に繊度が大きすぎると硬くなり過ぎてしまうため、適正な範囲に設定する必要がある。繊度は好ましくは300dtex以上であり、より好ましくは500dtex以上である。繊度が300dtex未満だと細すぎてしまい、緻密性やソフトな触感は良好となるが網状構造体成型品として必要な硬度を確保することが困難となる場合がある。また、繊度は好ましくは100000dtex以下であり、より好ましくは80000dtex以下である。繊度が100000dtexを超えると網状構造体成型品の硬度は十分に確保できるが、網状構造が粗くなり、クッション性能が劣る場合がある。
【0035】
本発明の網状構造体成型品の本体部の見かけ密度は、好ましくは0.005g/cm
3〜0.20g/cm
3であり、より好ましくは0.01g/cm
3〜0.18g/cm
3、さらに好ましくは0.02g/cm
3〜0.15g/cm
3、最も好ましくは0.03g/cm
3〜0.12g/cm
3の範囲である。見かけ密度が0.005g/cm
3より小さいと成型品をクッション材として使用する際に必要な硬度が保てなくなり、逆に0.20g/cm
3を越えると硬くなり過ぎてしまいクッション材に不適なものとなる場合がある。また、見掛け密度が小さすぎると、耳部の強度が0.6MPa以上とすることが出来なくなることがあり、好ましくない。
【0036】
本発明の網状構造体成型品の加工前の網状構造体の厚みは、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは20mm以上である。厚みが10mm未満ではクッション材に使用すると薄すぎてしまい底付き感が出てしまう場合がある。厚みの上限は製造装置の関係から、好ましくは300mm以下であり、より好ましくは200mm以下、さらに好ましくは120mm以下である。
【0037】
本発明の網状構造体成型品は、あらゆる形状に成型したものを含む。例えば、板状、三角柱、多角体、円柱、球状やこれらを多数含む構造体も含まれる。
【0038】
本発明の網状構造体成型品は、自動車用、鉄道用の座席、あるいは椅子、ベッド、ソファー、布団等のクッション、あるいは枕等に用いることが出来る。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を例示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例中における特性値の測定及び評価は下記のように行った。なお、試料の大きさは以下に記載の大きさを標準とするが、試料が不足する場合は可能な大きさの試料サイズを用いて測定を行った。
【0040】
(1)繊度
網状構造体および網状構造体成型品の本体部から試料を5cm×5cmの大きさに切断し、その試料からランダムに5箇所の線状体を約10mm採集した。採集した線状体の比重を密度勾配管を用いて25±2℃にて測定した。さらに、先の試料からランダムに10箇所の線状体を採集し、その線状体を輪切り方向で切断し、線状断面を光学顕微鏡で30倍に拡大した写真を元に断面積を求めた。測定した比重、求めた線状の断面積から線状体10000mあたりの重さを算出した。
【0041】
(2)試料厚みおよび見掛け密度
試料を30cm×30cmの大きさに切断し、無荷重で24時間放置した後、高分子計器製FD−80N型測厚器にて4か所の高さを測定して平均値を試料厚みとする。なお、圧縮された耳部等、FD−80Nでは測定板の大きさが合わないことにより測定が困難となる場合は、マイクロメーター等、測定部位に応じた適切な測定器を使用して測定する。網状構造体成型品試料重さは、上記試料を電子天秤に載せて計測する。また見かけ密度は、試料厚みから体積を求め、試料の重さを体積で除した値で示す(それぞれn=4の平均値)。
【0042】
(3)融点(Tm)
TAインスツルメント社製 示差走査熱量計Q200を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から吸熱ピーク(融解ピーク)温度を求めた。
【0043】
(4)押し型による圧縮加工条件
押し型に用いる網状構造体のサンプルとして40cm角のサンプルを用いた。押し型としては、次の2種類形状のものを金型とした。
<金型1>
外形30cm×30cm、厚さ4cmの金属の中央部に20cm四方の穴を有する、金属製金型を用いた。
<金型2>
外形30cm×30cm、厚さ2cmの金属の中央部に20cm四方の穴を有し、その上部から、厚さ5mmの金属板で蓋をするがごとく全体を覆い、溶接により一体化させた、金属製金型を用いた。
【0044】
(5)引張強度
サンプルの中から熱により厚さが5mm以下に圧縮された部分、いわゆる耳部から、幅3mm、長さ80mmにサンプリングした。試料長を40mm、引張速度40mm/minで引張試験を行い、破断時の引張強度を測定した。試料長が十分取れない場合は、試料長に対して、引張速度100%/minで測定した。なおサンプリングの方向は網状構造体の機械方法とするが、不明な場合は、所定の大きさでサンプリング可能な部分で採取した。なお、本願においては、網状構造体成型品の本体部よりも薄い部分を耳部として測定を行った。
【0045】
[実施例1]
ポリエチレンを92%、1−ブテンを8%含む、ポリエチレン系熱可塑性エラストマーを原料として用い、網状構造体を作成した。なお、この樹脂の融点は、122℃であった。得られた網状構造体は網状構造体を構成する連続線状体の繊度が4600dtex、厚さが32.4mm、見かけ密度が0.072g/cm
3であった。
この網状構造体を、金型1を用い、軟化・圧縮加工を行った。金型1を95℃に暖めた後、100kg/cm
2の圧力で4分間処理を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、耳部の引張強度は1.7MPaであり、次工程での取り扱い性に優れた網状構造体成型品が得られた。
【0046】
[実施例2]
金型1の温度を90℃とした以外は、実施例1と同様に処理を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、耳部の引張強度は0.73MPaであり、次工程での取り扱い性に優れた網状構造体成型品が得られた。
【0047】
[実施例3]
金型2を用いた以外は、実施例1と同様に処理を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、網状構造体成型品の耳部以外の部分も20.4mmと変形されると同時に、耳部の引張強度は1.9MPaとなり、次工程での取り扱い性に優れた網状構造体成型が得られた。
【0048】
[実施例4]
ポリエチレンを94%、1−ヘキセンを6%含む、ポリエチレン系熱可塑性エラストマーを原料として用い、網状構造体を作成した。なおこの樹脂の融点は95℃であった。得られた網状構造体は網状構造体を構成する連続線状体の繊度が5200dtex、厚さが38.4mm、見かけ密度が0.074g/cm
3であった。
この網状構造体を、金型1を用い、軟化・圧縮加工を行った。金型1を100℃に暖めた後、120kg/cm
2の圧力で3分間処理を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、耳部の引張強度は0.84MPaであり、次工程での取り扱い性に優れた網状構造体成型品が得られた。
【0049】
[実施例5]
実施例4と同じ原料を用い、網状構造体を構成する連続線状体の繊度が4400dtex、厚さが42.0mm、見かけ密度が0.11g/cm
3の網状構造体を作成した。
この網状構造体に、金型2を用い、軟化・圧縮加工を行った。金型2を105℃に暖めた後、120kg/cm
2の圧力で3分間処理を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、網状構造体成型品の耳部以外の部分も19.4mmと変形されると同時に、耳部の引張強度は0.93MPaとなり、取り扱い性に優れた網状構造体成型品が得られた。
【0050】
[実施例6]
実施例4と同じ原料を用い、網状構造体を構成する連続線状体の繊度が5600dtex、厚さが33.0mm、見かけ密度が0.079g/cm
3の網状構造体を作成した。
この網状構造体に、金型1を用い、軟化・圧縮加工を行った。金型1を96℃に暖めた後、120kg/cm
2の圧力で4分間処理を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、耳部の引張強度は3.8MPaとなり、取り扱い性に優れた網状構造体成型品が得られた。
【0051】
[実施例7]
実施例1と同じ原料を用い、網状構造体を構成する連続線状体の繊度が3200dtex、厚さが28.0mm、見かけ密度が0.033g/cm
3の網状構造体を作成した。
この網状構造体に、実施例1と同様の軟化・圧縮加工を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果をを表1に示す。
この結果から、耳部の引張強度は0.61MPaとなり、少し強度が弱い結果とはなったが、取り扱い性に優れた網状構造体成型品が得られた。
【0052】
[比較例1]
金型1の温度を80℃とした以外は、実施例1と同様に処理を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、耳部の厚みは10.5mmと十分に圧縮することが出来ず、また引張強度が0.48MPaと弱かった。金型温度が低いため、軟化・圧縮加工による耳部の形成がされず、取り扱い性に劣る網状構造体成型品が得られた。
【0053】
[比較例2]
金型1の温度を90℃、押し型での処理時間を1分間とした以外は、実施例1と同様に処理を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、耳部の厚みは5.9mmと十分に圧縮することが出来ず、また引張強度が0.54MPaと弱かった。金型での圧縮時間が短く、熱に接した部分のみが軟化・圧縮されたが全体までは行き渡らず、取り扱い性に劣る網状構造体成型品が得られた。
【0054】
[比較例3]
金型1の温度を145℃、押し型での処理時間を5分間とした以外は、実施例1と同様に処理を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、耳部となるはずの部分の樹脂が溶融してしまい、耳部が形成されない網状構造体成型品が得られた。
【0055】
[比較例4]
実施例1と同じ原料を用い、網状構造体を構成する連続線状体の繊度が3200dtex、厚さが28.0mm、見かけ密度が0.026g/cm
3の網状構造体を作成した。この網状構造体に、実施例1と同様の加工を行った。金型から網状構造体成型品を取り出し、常温まで冷却した後、網状構造体成型品の耳部の物性を測定した。その結果を表1に示す。
この結果から、耳部の引張強度は0.26MPaとなった。網状構造体の目付自体が少なすぎたため、耳部も十分な厚みが得られず、引張強度が弱くなり、取り扱い性に劣る網状構造体成型品が得られた。
【0056】
【表1】