(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数設けた環状凹部の凹部形状が、外側環状凹部の幅方向の凹部先端にRを設け、かつ、最も内側環状凹部の幅方向の凹部先端にRのない、あるいはRの小さな角部を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の注出口栓。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙を基材として、熱可塑性樹脂によるシーラント層を設けたシート材、あるいは、基材とシーラント層との間にアルミ箔、アルミ蒸着フィルム、あるいは無機酸化物蒸着フィルムなどのバリア層を積層したシート材を箱型に折り曲げ、端部を重ね合わしてシールすることにより形成される包装容器が知られている。(特許文献1、
図9)
このような包装容器には、さまざまな形態があるが、そのひとつとして、ゲーベルトップ型の傾斜した上面板に、ポリエチレン樹脂などで成形された注出口栓を設けて、内容物を注出する注出口栓付き包装容器が知られている。
このような包装容器の場合、分別収集のために、廃棄に際して、注出口栓などのプラスチック類と、紙を基材とした容器本体などのシート類を分離することが好ましい。
これらのプラスチック類とシート類とに分離する方法として、トップシール部を開口し、ハサミ等で注出口栓の周囲のシート材を切断する方法がある。
しかしながら、このような包装容器は、通常、トップシール部の融着が強固である為、容器の解体は容易ではなく、挟みやカッターなどで切断するには危険が多く、かつ、手間がかかるので、注出口栓を包装容器から分離しないで、そのまま廃棄されるケースが多い問題があった。
【0003】
特許文献2には、環状体(フランジ部)の内周側上面に環状の薄肉部を形成した注出口栓を折り曲げ誘導ラインを形成した紙容器に取り付けた紙製包装体が提案されている。
この紙製包装体によれば、折り曲げ誘導ラインに沿って紙製包装体を折り曲げることにより、環状の薄肉部が破断し、注出口栓の筒状体を紙容器から分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の注出口栓の実施の形態例について、図を用いて詳細に説明する。
本発明の注出口栓2は、容器1に融着した
図1−1の断面図で示すように、円筒状の側壁22と、側壁の下端近傍から外側に延伸するように設けられた円盤状のフランジ部21とからなっている。
【0013】
側壁22の外側には、キャップと螺合する雄ネジ221が設けられ、内側にはプルトップ23の閉鎖板231があって、側壁内側とは脆弱線230を介して繋がり、閉鎖板231の注出側には柱2312によって閉鎖板231に繋がったプルリング2311が設けられている。
側壁の下端には台座24を備え、台座24の下端から水平にフランジ部21が外側に広がって、紙容器1の開口部11内側に融着している。
【0014】
フランジ部21の側壁反対側であるフランジ底面には、環状凹部211が、同心円状に複数設けられている。
外側の外環状凹部2111の天面には幅方向の凹部先端には大きなRが設けられている。これは、超音波融着時の振動による、外環状凹部2111の破断を起こりにくくさせる。さらに、外環状凹部で融着時の超音波振動を吸収して、内環状凹部に超音波振動を伝導しないようにすることによって、内環状凹部の破損を防ぐと共に、容器との融着時に溶けるフランジの余肉を吸収する役目を負っている。
【0015】
また、内側の内環状凹部2112の天面には幅方向の凹部先端にRのない、あるいはRの小さな角部を設けている。また、その内環状凹部2112の内側の壁は台座24の立ち壁241近傍に設けられている。すなわち、内環状凹部2112の内側の壁は立ち壁241の真下近傍あるいは、立ち壁241よりも内側の位置に設けると良い。
この結果、注出口栓2を容器1に融着する時、超音波融着のホーンが内環状凹部2112の真上から確実にずれ、ホーンの超音波振動で環状凹部が破損しないように設定する。
このようにして、注出口栓2を分離破壊する時に、確実に内環状凹部2112の凹部先端の角部から破損が始まるようにする。
基本的に、注出口栓2と容器1とを融着させる超音波振動するホーンは、外環状凹部2111や内環状凹部2112から外れた外側に当たるように設定する。
【0016】
図1−2は、注出口栓2の底面側から見た底面図である。
プルトップの閉鎖板231が中央にあり、側壁と脆弱線230で繋がっている。
側壁やその台座の下端近傍には台座の肉盗み242が設けられている。この肉盗みは凹部になって、リブで仕切られているが、リブはなくても良いし、単なる段差であってもかまわない。
台座の肉盗み242の外側に、内環状凹部2112と外環状凹部2111が同心円状に設けられている。分かり易く、一部を拡大図で示した。
【0017】
外環状凹部2111と内環状凹部2112には、複数のリブが設けられ、しかも、内外に隣接する外環状凹部2111の外環リブ21110と内環状凹部2112の内環リブ21120は、互いにずらして、互い違いに設ける。
この為、環状凹部のリブの数は、外環リブ21110と、内環リブ21120とが同じ数に形成することが好ましい。
さらに、複数設けた環状凹部のリブ形状において、外環状凹部の外環リブ厚みAは、内環状凹部の内環リブ厚みBよりも厚くする。
これは、外環状凹部におけるフランジの強度を高くして、超音波振動で破損し難くする為である。
【0018】
また、外環状凹部におけるフランジ部の厚みCAと内環状凹部におけるフランジ部の厚みCBは、内環状凹部の内環リブ厚みBよりも薄く、かつ、環状凹部のリング幅Dよりも薄くする。
そして、環状凹部におけるフランジ部の厚みCA、CBを、0.2mm以上0.3mm以下とする。これは、0.2mm未満の場合、容器本体と融着させる超音波融着時に、クラックが入る恐れがあると共に、0.3mm以上厚いと、切断し難くなるからである。
好ましくは、0.23〜0.3mmが好ましい。
【0019】
さらに、外環状凹部の幅DA、内環状凹部の幅DBは、0.3mm以上、好ましくは、0.5mm以上とする。
0.3mm未満の場合、射出成形金型の強度が低く、耐久性が低下してしまう恐れがある為である。
【0020】
図2は、本発明の注出口栓2を融着した容器1である。
図2−1は注出口栓を融着した上傾斜面111と繋がる表側面122側から見た斜視図で、
図2−2はその背側面124
側から見た斜視図である。
注出口栓を融着した上傾斜面111と、上背傾斜面114とには、注出口栓2を融着した開口部11の中心を通る折り曲げ線100が水平に設けられている。
【0021】
図3に、
図2で示す容器1を製造するためのブランクを展開図で示した。開口部16の中心を通る折り曲げ線100が、上部110を構成する上面すべてに通っている。
【0022】
図4は、
図3、
図2で示した本発明の注出口栓2を融着した紙容器の内容物を注出後、注出口栓2を外す工程を示した。
図4−1は、紙容器1の左右の側面を折り曲げて内側に折り込み平らに紙容器を押し潰した押し潰し工程である。
次の折り曲げ工程では、折り潰した紙容器を、
図4−1の矢印で示すように、罫線による折り曲げ線100で折れるように力を入れる。すると、
図4−2のように、折り曲げ線100で折り曲がり、注出口栓2の側壁22や台座24は折り曲がらず、フランジの内環状凹部2112で破断する。
破断したフランジは、折り曲げ線100で仕切られた半分が破断するが、他方の内環状凹部2112も薄肉になっていて、破断したフランジの半分がきっかけになって、容易に注出口栓の台座と残りのフランジとの間で破断させて、外すことができる。
【0023】
図5も、本発明の注出口栓2を融着した紙容器の内容物を注出後、注出口栓2を外す工程で、折り曲げ線100が容器の上下方向に走っている紙容器の例である。
図5−1は、紙容器1の左右の側面を折り曲げて内側に折り込み、平らに紙容器を押し潰した押し潰し工程である。
次の折り曲げ工程では、折り潰した紙容器を、
図5−1の矢印で示すように、罫線による縦の折り曲げ線100で折れるように力を入れる。すると、
図5−2のように、折り曲げ線100で縦に折り曲がり、注出口栓2の側壁22や台座24は折り曲がらず、フランジの内環状凹部2112で破断する。
この方向の折り曲げ線100は、左右の側面が折れ曲げられ、ちょうど、左右の側面の板が無く、曲げられ易くなっているので、小さな力で曲げることができる位置であることがメリットである。
破断したフランジは、折り曲げ線100で仕切られた半分が破断するが、他方の内環状凹部2112も薄肉になっていて、破断したフランジの半分がきっかけになって、容易に注出口栓の台座と残り半分のフランジとの間で破断させて、外すことができる。
【0024】
図6は、ゲーベルトップではなく、フラットトップの紙容器に応用した例で、フラットトップはトップ面の半分が折り曲げられて融着されており、天板を折り曲げて注出口栓2をトップ部から剥離する必要があるが、対応する注出口栓を使用できる。この場合、トップ部を剥離しなくても、天板の強度が高いので、単に注出口栓の側壁22を押して倒すだけで、破断させることが出来る。
【0025】
図7は、複数のリブを有する環状凹部がフランジ部の側壁側である上面の融着領域に複数同心円状に設けた注出口栓の例である。この注出口栓は、軟質のフランジを有する口栓であっても融着できる口栓で、融着する融着面に環状凹部25を有し、その環状凹部には、複数のリブによって仕切られている。
そして、その複数有する環状凹部のリブ253は、内外に隣接する内側環状凹部252のリブ位置と、外側環状凹部251のリブ位置とが、互いにずれて形成しておく。
この環状凹部のリブ253は、超音波を発振するホーン4が窪みに落ち込むことを防止する役目を有している。また、リブや凹みが、通常微妙な高さ調整を必要とする紙容器1と注出口栓2のフランジとの融着を、ほとんど調節しなくても、超音波振動が均一に融着面に伝わり、均一な融着が可能になった。
また、この方法で融着した場合、溶着条件である加圧力、振幅、仕事量を下げても融着性が著しく低下しないで、安定した融着を行うことができる。
さらに、この注出口栓は、融着部が凸のエネルギーダイレクターで出来ていないので、搬送時に、注出口栓同士が引っ掛かる問題もなく、また、台座端部にストッパーを付けても、エネルギーダイレクターに紙容器の開口部が押し上げられて止まらなくなる問題も発生しないなどの利点がある。
【0026】
図8は、本発明の一実施形態と第二の実施形態とを合わせた注出口栓で、
図8−1がその断面図、
図8−2が底面側(容器内側)から見た平面図で、
図8−3が外側から見た平面図である。
軟質のフランジにおいて、内外に複数の環状凹部を設けた例で、融着性と分解性を共に向上した容器になる。
【0027】
本発明は、以上のような注出口栓を開口部に超音波融着した紙容器である。
注出口栓1の材質は、容器本体に使用されているシーラント層との融着性が良好で、耐ストレスクラッキング性も高く、内容物からの影響を受けにくい材料で、かつ、剛性が適度にあり、キャッピングしやすい事が必要である。
そこで、注出口栓1に使用可能な材料は、密度が0.900〜0.950のポリエチレン、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが良いが、中密度ポリエチレン、低密度と高密度ポリエチレンの混合樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体を上記に添加、混合した樹脂なども使用できる。
特にその中でも、直鎖状の低密度ポリエチレンが好ましい。実際に使用する場合は、各種樹脂を用いて成形した後、紙容器本体に融着し、充填予定の内容物を使用して、環境ストレスクラッキング試験を実施し、判断する。
【0028】
本発明に使用する紙容器は、基材に紙を主体とした容器で、基材の紙は、坪量を200g/m
2から800g/m
2の板紙で、表面に印刷する場合には、片面が白いコートマニラ、コートボール、アイボリーなどを用いることができる。さらに、容器の開口部周縁とヒートシールする必要があるので、裏面のシーラント層に15μm〜100μmの薄いポリエチレンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、あるいはポリプロピレンフィルムなどのシール適性に優れた熱可塑性フィルムを貼り合せた積層シートが使用される。
以上の中でも、特に、シーラント層として、密度が0.925g/cm3以下で、メルトインデックスが4g/10min以上で、厚み30〜100マイクロメーターの直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
紙容器のエッジをプロテクトする為に、表側にも、上記シーラント層を設けることが望ましい。
また、基材の紙とシーラント層との間に、バリア性の高いアルミ箔、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート、酸化金属蒸着ポリエチレンテレフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、耐破断性の高いポリアミド系樹脂などを積層したフィルムを貼り合せても良い。
たとえば、外側から、ポリエチレン/紙/ポリエチレン、
ポリエチレン/紙/ポリエチレン/無機酸化物蒸着ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、
ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、
ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミ箔/ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、
ポリエチレン/紙/ポリエチレン/エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物/ポリエチレン、ポリエチレン/紙/ポリエチレン/接着樹脂/ポリアミド/接着樹脂/ポリエチレン
などの構成が考えられる。
これらは、ドライラミネーション機やエクストルーダーラミネーション機を用いて、容易に製造することが出来る。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の具体的実施例について説明する。
【0030】
<実施例1>
構成として、外側からポリエチレン(厚み20マイクロメーター)/紙(坪量400g/m
2)/ポリエチレン(厚み20マイクロメーター)/酸化珪素蒸着(蒸着厚み60ミリマイクロメーター)/ポリエチレンテレフタレート(厚み12マイクロメーター)/ポリエチレン(厚み20マイクロメーター)/直鎖状低密度ポリエチレン(厚み40マイクロメーター)の積層シートを作成した。
この積層シートは、
図3で示す展開図によって外形、及び折り罫を施して、縦横70ミリメートルの底面で、容量1リットルの液体用紙容器を得た。
注出口栓2は、
図1に示した形状の注出口栓で、低密度ポリエチレン樹脂を射出成形して製造した。
注出口栓と紙容器の融着は、20KHzの振動数を有する超音波融着機を使用し、表1の実施例1に記載した条件で融着した。
【0031】
<実施例2>
構成として、実施例1と同じ積層シートを作成し、実施例1と同じように積層シートを、
図3で示す展開図によって外形、及び折り罫を施して、縦横70ミリメートルの底面で、容量1リットルの液体用紙容器を得た。
注出口栓2も実施例1と同じものを使用した。
注出口栓と紙容器の融着は、20KHzの振動数を有する超音波融着機を使用し、表1の実施例2に記載した条件で融着した。
【0032】
<比較例1>
構成として、実施例1と同じ積層シートを作成し、実施例1と同じように積層シートを、
図3で示す展開図によって外形、及び折り罫を施して、縦横70ミリメートルの底面で、容量1リットルの液体用紙容器を得た。
注出口栓2は、
図10のように、ひとつしか環状凹部がない口栓を使用し、実施例1と同じ低密度ポリエチレン樹脂を射出成形して製造した。
注出口栓と紙容器の融着は、20KHzの振動数を有する超音波融着機を使用し、表1の比較例1に記載した条件で融着した。
【0033】
<評価試験内容>
実施例と比較例について、下記の方法で試験し、比較評価した。
<注出口栓の変形>
注出口栓が超音波融着の振動で、注出口栓全体が変形しないか、又は、環状凹部のフランジが変形しないか、確認した。
注出口栓全体も、環状凹部のフランジも、変形しないものを○、
注出口栓全体も、環状凹部のフランジも、変形したものを×、
注出口栓全体、あるいは、環状凹部のフランジのいずれかのみ変形したものを△とした。<注出口栓の液漏れ>
注出口栓が超音波融着の振動で、環状凹部のフランジが破損して裂け目ができたり、穴が開いたりしていないか、5個ずつ作成し、内容物として水を入れて逆さにして3日間放置し、漏れの有無を確認した。5個共漏れが無かったのを○、1個でも漏れたものを×とした。
<注出口栓の解体時の破断性(易分解性)>
注出口栓の中央を通る紙容器の易折り曲げ線で折り曲げ、注出口栓の環状凹部のフランジが破断して容易に取り外しできるか、一般主婦3人に3個ずつ、計9個を渡し、15秒間以内に出来た紙容器が8個以上を○、5個以上7個までを△、4個以下を×とした。
<注出口栓の紙容器との密着>
5個ずつ容器に水を1リットル充填し、逆さにして、7日間放置して、液漏れするか、確認した。5個共7日間漏れなかったものは◎、4個7日間漏れず1個が5日間以上もれなかったものは○、3個7日間漏れず2個が3日間以上もれなかったものは△、それ以下を×とした。
【0034】
<評価結果>
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1では、注出口栓の変形、液漏れ、密着に問題は無く、易分解性も9個確実に注出口栓を取り外すことができた。
【0037】
実施例2では、注出口栓の変形、液漏れに問題は無く、密着も1個のみ7日目で液漏れがわずかに生じただけであった。また、易分解性も9個確実に注出口栓を取り外すことができた。
【0038】
比較例1では、注出口栓の変形が発生して取り付けた紙容器の上面板に歪みが発生した。また、液漏れは無かったが、密着の試験ではバラツキが生じ、密着性に問題が発生した。さらに、易分解性の試験では全く分解性がなく、注出口栓を外すには鋏やナイフなどの刃物が必要であった。
【0039】
総合的に評価すると、本発明の注出口栓を融着した紙容器は、液漏れが発生し難いと共に、紙容器を注出口栓の融着部中心を通る折り曲げ線で折り曲げるだけで、容易に破断させ、分解しやすい。
【0040】
本発明は以上のようなもので、超音波融着性が良好なので、短時間で融着でき、生産性が高いと共に、廃棄する為に注出口栓を外すのに、ナイフなどの刃物を使用しないで分解できるので、安全で、かつ、廃棄する人の負担が少ない。特に分解し易いので、そのまま注出口栓を付けたまま廃棄してしまう人が少なくなると予想できる。
また、本発明は、注出口栓の金型に単に環状凹部を付加しているだけなので、生産設備の変更もなく、量産性も高いなど、本発明のメリットは大きい。