【実施例】
【0042】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。実施例において部及び%とあるのは、特に指定のない限り、すべて質量基準であるものとする。
【0043】
<金属ナノ粒子(A)の製造法>
金属ナノ粒子(A)について説明する。金属ナノ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により、100個のナノ粒子を観察し、平均値を出したものである。
【0044】
製造例1 銀ナノ粒子1の製造
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部およびヘキサン酸銀22.3部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、20%のコハク酸ジヒドラジド(以下、SUDHと略す)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返した後、乾燥させて銀ナノ粒子1を得た。銀ナノ粒子1の平均粒子径は13nmであった。
【0045】
製造例2 銀ナノ粒子2の製造
ジエチルアミノエタノール2.3部の代わりに分散剤としてトリエチルアミン2.62部(金属1molに対し0.2mol倍)を用いた以外は製造例2と同様にして、銀ナノ粒子2を得た。銀ナノ粒子2の平均粒子径は5nmであった。
【0046】
製造例3 銀ナノ粒子3の製造
フラスコに銀ナノ粒子水分散液(品名:730785、粒子径:10nm、ALDRICH社製)を100ml入れ、1−デカンチオールの20%エタノール溶液:270部を20分かけて加え、3時間撹拌した。その後、水600部を20分かけて加え、一晩静置した。析出した固体を水、エタノールにて、洗浄濾過を行い、得られた固体を真空乾燥し、0.99部の銀ナノ粒子3を得た。銀ナノ粒子3の平均粒子径は10nmであった。
【0047】
製造例4 銀ナノ粒子4の製造
銀ナノ粒子水分散液として銀ナノ粒子水分散液(品名:730793、粒子径:20nm、ALDRICH社製)を用いた以外は製造例3と同様にして、1.03部の銀ナノ粒子4を得た。銀ナノ粒子4の平均粒子径は20nmであった。
【0048】
製造例5 銀ナノ粒子5の製造
銀ナノ粒子水分散液として銀ナノ粒子水分散液(品名:730807、粒子径:40nm、ALDRICH社製)を用いた以外は製造例3と同様にして、1.01部の銀ナノ粒子5を得た。銀ナノ粒子5の平均粒子径は20nmであった。
【0049】
製造例6 銀ナノ粒子6の製造
銀ナノ粒子水分散液として銀ナノ粒子水分散液(品名:730815、粒子径:60nm、ALDRICH社製)を用いた以外は製造例3と同様にして、0.88部の銀ナノ粒子6を得た。銀ナノ粒子6の平均粒子径は60nmであった。
【0050】
製造例7 銀ナノ粒子7の製造
銀ナノ粒子水分散液として銀ナノ粒子水分散液(品名:730777、粒子径:100nm、ALDRICH社製)を用いた以外は製造例3と同様にして、0.92部の銀ナノ粒子7を得た。銀ナノ粒子7の平均粒子径は100nmであった。
【0051】
製造例8 金ナノ粒子1の製造
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素ガスを導入しながらトルエン91.1部、および顔料分散剤としてソルスパース32000(日本ルーブリゾール株式会社製、重量平均分子量約50000)5.9部を仕込み、溶解させた後、20%コハク酸ジヒドラジド水溶液73.1部( 金属1molに対してヒドラジド基2molの比率)を50℃で攪拌しながら滴下し、均一な液滴を生成させた。ビーカーに1M塩化金酸水溶液100部秤取り、攪拌しながら25% アンモニア水27.3部( 金属1molに対してアンモニア4molの比率)滴下した後上記トルエン溶液中に滴下し、30℃ で反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返した後、乾燥させて金ナノ粒子1を得た。得られた金ナノ粒子1の平均粒子径は5nmであった。
【0052】
製造例9 銅ナノ粒子1の製造
製造例8のペンタン酸金をペンタン酸銅26.6部、還元剤を20%SUDH水溶液292.3部(金属1molに対しヒドラジド基4mol倍)に変更した以外は製造例8と同様にして赤色の銅ナノ粒子1を得た。得られた銅ナノ粒子1の平均粒子径は7nmであった。
【0053】
その他実施例に使用した金属ナノ粒子(A)を下記に示す。
アルミナノ粒子1:ビックケミー社製 NANOBYK−3610(平均粒子径
20nm)
【0054】
実施例に使用した反射材(B)を下記に列挙する。
反射材1:福田金属箔粉工業(株)製 XF301(銀フレーク、平均粒子径4〜7μm)
反射材2:東洋アルミニウム(株)製 1260M-S(平均粒子径9μmのアルミフレークをミネラルスピリットに分散した、濃度64%の分散体)。
反射材3:東洋アルミニウム(株)製 1700ML(平均粒子径19μmのアルミフレークをミネラルスピリットに分散した、濃度65%の分散体)。
反射材4:東洋アルミニウム(株)製 5620NS(平均粒子径19μmのアルミフレークをミネラルスピリットに分散した、濃度71%の分散体)。
反射材5:東洋アルミニウム(株)製 5660NS(平均粒子径9μmのアルミフレークをミネラルスピリットに分散した、濃度70%の分散体)。
反射材6:東洋アルミニウム(株)製 WXM5660(平均粒子径9μmのアルミフレークをミネラルスピリットに分散した、濃度63%の分散体)。
反射材7:東洋アルミ社製 54−497(平均粒子径62μmのアルミフレークをミネラルスピリットに分散した、濃度65%の分散体)。
反射材8:トピー工業社製 PDM-20L (合成マイカ、平均粒子径20μm)
【0055】
[実施例1]
銀ナノ粒子1をトルエンに分散し、1.81%濃度の金属ナノ粒子の分散液1を得た。
セルロース系樹脂(C)である「エトセル300(日新化成(株)製)」を溶剤(D)であるトルエンに溶解し、7.5%濃度の樹脂溶液1を得た。
前記金属ナノ粒子の分散液1:9.6部(金属ナノ粒子を0.174部を含む)、反射材1:6部、前記樹脂溶液1:3.84部(セルロース系樹脂を0.288部含む)に溶剤(D)としてトルエン:10.56部を加え、ディスパーにおいて1分撹拌し、光輝性呈色樹脂組成物(固形分濃度20%)を得た。
得られた光輝性呈色樹脂組成物を2g、PETフィルム(100μm 東洋紡工業社製)に滴下し、No.15のアプリケータで塗布し、室温(24℃)で塗膜を十分に乾燥させ光輝性呈色塗膜を得た。後述する方法に従い、色調、発色強さ、色相均一感、光沢感を評価した。
【0056】
[実施例2〜6]
実施例1で用いた反射材1の代わりに、各分散体に含まれるアルミニウムフレークの量が約6部となるように反射材2、3、5、6、7を用いた以外は、実施例1と同様にして、光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
[実施例7]
実施例1で用いた反射材1の代わりに、反射材8を用いた以外は、実施例1と同様にして、光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0057】
[実施例8]
0.043部の銀ナノ粒子1を含む金属ナノ粒子のトルエンの分散液、6部のアルミニウムフレークを含む反射材4、「エトセル300」を0.288部含むトルエン溶液、および希釈用のトルエンを用い、実施例1と同様にして固形分約20%の光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0058】
[実施例9〜14]
表1に示すように銀ナノ粒子1の量を代えた以外は、実施例8と同様にして光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0059】
[実施例15]
0.022部の銀ナノ粒子1を含む金属ナノ粒子のトルエンの分散液、0.75部のアルミニウムフレークを含む反射材4、「エトセル300」を0.008部含むトルエン溶液を用い、トルエンで希釈し、実施例1と同様にして固形分濃度19%の光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0060】
[実施例16〜20]
表2に示すように「エトセル300」の量を代えた以外は、実施例15と同様にして光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0061】
[実施例21]
0.005部の銀ナノ粒子1を含む金属ナノ粒子のトルエンの分散液、0.75部のアルミニウムフレークを含む反射材4、「エトセル300」を0.135部含むトルエン溶液を用い、実施例1と同様にして固形分濃度28%の光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
[実施例22〜24]
表2に示すように銀ナノ粒子1の量を代えた以外は、実施例21と同様にして光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0062】
[実施例25〜28]
0.022部の銀ナノ粒子1を含む金属ナノ粒子のトルエンの分散液、0.75部のアルミニウムフレークを含む反射材4、「エトセル300」を0.135部含むトルエン溶液を用い、希釈用のトルエンの量を変えた以外は実施例24と同様にして固形分濃度3%(実施例25)、6%(実施例26)、10%(実施例27)、16%(実施例28)の光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0063】
[実施例29〜37]
表3に示すように金属ナノ粒子の種類と量を代えた以外は実施例10と同様にして、光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0064】
[実施例38〜43]
表3に示すようにセロース樹脂(C)の種類と量、銀ナノ粒子1の量、反射材4の量を代えた以外は、実施例10と同様にして光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。使用したセルロース系樹脂(C)を下記に列挙する。
エトセル100:日新化成(株)製
エトセル10:日新化成(株)製
MCE−1500:信越化学工業(株)製
PMC−50U:巴工業(株)製
【0065】
[比較例1〜2]
比較例1は反射材を用いなかった以外は、比較例2はセルロース系樹脂を用いなかった以外は、それぞれ実施例1と同様にして光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0066】
[比較例3〜20]
表4に示すように、セロース樹脂(C)「エトセル300(日新化成(株)製)」に代えて、
比較例3〜6ではポリエステル樹脂「バイロン200(東洋紡(株)製)」を用い、
比較例7〜10ではフェノール樹脂「JER1256(三菱化学(株)製)」を用い、
比較例11〜14ではアクリル樹脂「フォレットGS−1000(綜研化学(株)製)」を用い、
比較例15〜18ではエポキシ樹脂「パウダックスE100(日本ペイント(株)製)」を用い、
比較例19ではアクリル樹脂「VS−1057(星光PMC(株)製)」を用い、
比較例20ではスチレン−アクリル樹脂「US−1071(星光PMC(株)製)」を用い、
各樹脂の量および銀ナノ粒子1の量を代えた以外は、実施例1と同様にして光輝性呈色樹脂組成物、光輝性呈色塗膜を得、同様にして評価した。
【0067】
色調:目視による色判断およびと吸収スペクトルのピーク位置により判断した。
機種:日立製作所社製U−4100 spectrophotometer
スキャン速度:300nm/min
測定範囲:250〜800nm
【0068】
発色強さ:光輝性呈色塗膜の外観を目視で評価した。
○:明らかに呈色している。
△:わずかに呈色している。
×:ほぼ呈色していない。(反射材である金属自体の色)
【0069】
色相均一感:光輝性呈色塗膜の外観を目視で評価した。
○:色相ムラが観察されなかった。
△:わずかに色相ムラが観察された。
×:色相ムラが観察された。
【0070】
光沢感:光輝性呈色塗膜の反射光沢感を目視で評価した。
○:光沢感を強く感じた。
△:光沢感を感じた。
×:光沢感を感じなかった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
表1〜3の実施例1〜43に示すように、すべての実施例において、発色、色相の均一感、光沢感ともに良好な結果を得た。
実施例8〜14に示すように、金属ナノ粒子の含有量の違いにより色調が変化することを確認した。
実施例15〜24に示すように、セルロース系樹脂の含有量の違いにより色調が変化することを確認した。
実施例29、30、31に示すように、金属種の違いにより色調が変化することを確認した。
実施例13、32〜37、に示されるように、金属ナノ粒子の粒子径の違いにより色調が変化することを確認した
【0076】
一方、表4の比較例1〜20に示すように、反射材を含まない組成、セルロース系樹脂を含まない組成、セルロース系樹脂の代わりに他の樹脂を含む組成においては、発色が見られなかった。
【0077】
以上のことより、本発明の光輝性呈色樹脂組成物とそれを塗布、乾燥工程といった簡易的な方法で得られる光輝性呈色塗膜は、発色強度、色相均一感、光沢感といった点で優れた高意匠性を提供でき、更に、金属ナノ粒子の濃度、樹脂濃度、金属種、金属ナノ粒子の粒子径といったパラメータを制御することで多数の色に対応することを提供することができる。