特許第6786875号(P6786875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786875
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20201109BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20201109BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20201109BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20201109BHJP
   B29K 79/00 20060101ALN20201109BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20201109BHJP
【FI】
   C08L79/08 B
   C08G73/10
   C08J5/24CFG
   B29C43/34
   B29K79:00
   B29K105:08
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-101391(P2016-101391)
(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-216720(P2016-216720A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2019年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-103959(P2015-103959)
(32)【優先日】2015年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小沢 秀生
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−218632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
C08J
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリイミドと、イミドオリゴマーの末端をモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物で封止した末端変性イミドオリゴマーとを含むポリイミド樹脂組成物の製造方法であって、
熱可塑性ポリイミドを与えるテトラカルボン酸成分及びジアミン成分を含む原料混合物、並びに末端変性イミドオリゴマーを溶融状態で混練することにより、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて熱可塑性ポリイミドを生成させるとともに、末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドとを均一に混合する工程を含むポリイミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
末端変性イミドオリゴマーの280℃における溶融粘度が0.1〜100Pa・sであり、かつ、280℃で1時間保持した後の溶融粘度の値が初期の値の10倍以内である、請求項に記載のポリイミド樹脂組成物の製造方法
【請求項3】
末端変性イミドオリゴマーが、付加反応性基を有するモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物でイミドオリゴマーの末端を封止した末端変性イミドオリゴマーである、請求項又はに記載のポリイミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
末端変性イミドオリゴマーが、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸無水物でアミン末端イミドオリゴマーの末端を封止したものである、請求項に記載のポリイミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法で得られたポリイミド樹脂組成物を溶融して繊維織物に含浸させる工程を含むプリプレグの製造方法。
【請求項6】
請求項に記載のプリプレグを加熱することにより硬化させる工程を含む繊維強化プラスチックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドとを含むポリイミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミドは非常に優れた耐熱性を有するとともに、機械的特性や電気的特性にも優れることから、特に耐熱性を要求される用途に広く用いられている。しかし、一般に芳香族ポリイミドは有機溶媒に溶解せず軟化温度も極めて高いため、加工性に乏しく、成形品の製造や繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として用いることが困難であった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、成形品の製造や繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として使用することができる、反応性官能基を有する末端変性イミドオリゴマーが提案されている。また、特許文献2には、反応性官能基を有する末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドとを含むポリイミド樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−219741号公報
【特許文献2】特開2014−218632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、溶融成形が可能であり、加熱硬化することにより高いガラス転移温度を有する硬化物を与えるポリイミド樹脂組成物を提供すること、また、前記のポリイミド樹脂組成物を、溶媒を使用することなく製造する方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、このポリイミド樹脂組成物を用いて、溶媒を使用することなく繊維強化プラスチックを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のようなものである。
1. 熱可塑性ポリイミドと、付加反応性基を有するモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物でイミドオリゴマーの末端を封止した末端変性イミドオリゴマーとを含むポリイミド樹脂組成物であって、末端変性イミドオリゴマーの280℃における溶融粘度が0.1〜100Pa・sであり、かつ、280℃で1時間保持した後の溶融粘度の値が初期の値の10倍以内であるポリイミド樹脂組成物。
2. 末端変性イミドオリゴマーが、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸無水物でアミン末端イミドオリゴマーの末端を封止したものである、前記項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
3. 前記項1又は2に記載のポリイミド樹脂組成物を成形し、加熱により硬化したポリイミド成形体。
4. 前記項1又は2に記載のポリイミド樹脂組成物と繊維織物とからなるプリプレグ。
5. 前記項4に記載のプリプレグを加熱により硬化した繊維強化プラスチック。
【0007】
6. 熱可塑性ポリイミドと、イミドオリゴマーの末端をモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物で封止した末端変性イミドオリゴマーとを含むポリイミド樹脂組成物の製造方法であって、
熱可塑性ポリイミドを与えるテトラカルボン酸成分及びジアミン成分を含む原料混合物、並びに末端変性イミドオリゴマーを溶融状態で混練することにより、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて熱可塑性ポリイミドを生成させるとともに、末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドとを均一に混合する工程を含むポリイミド樹脂組成物の製造方法。
7. 末端変性イミドオリゴマーの280℃における溶融粘度が0.1〜100Pa・sであり、かつ、280℃で1時間保持した後の溶融粘度の値が初期の値の10倍以内である、前記項6に記載のポリイミド樹脂組成物の製造方法。
8. 末端変性イミドオリゴマーが、付加反応性基を有するモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物でイミドオリゴマーの末端を封止した末端変性イミドオリゴマーである、前記項6又は7に記載のポリイミド樹脂組成物の製造方法。
9. 末端変性イミドオリゴマーが、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸無水物でアミン末端イミドオリゴマーの末端を封止したものである、前記項8に記載のポリイミド樹脂組成物の製造方法。
【0008】
10. 請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂組成物を溶融して繊維織物に含浸させる工程を含むプリプレグの製造方法。
11. 前記項10に記載のプリプレグを加熱することにより硬化させる工程を含む繊維強化プラスチックの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、溶融成形が可能であり、得られた成形体を加熱硬化することにより、高いガラス転移温度を有する硬化物とすることができる。これにより、ポリイミドの優れた特性を有するポリイミド成形体を、溶融成形により容易に製造することが可能となる。さらに、本発明のポリイミド樹脂組成物は溶融粘度が低いため、溶融状態で繊維織物等に含浸させることが可能である。そのため、本発明のポリイミド樹脂組成物と繊維織物とから、溶媒を使用することなく繊維強化プラスチックを製造することができる。また、本発明のポリイミド樹脂の製造方法によれば、溶媒を用いることなく、末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドとを含むポリイミド樹脂組成物を簡便な方法により製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、溶融粘度が非常に低く熱安定性が高い末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドとを含む。本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とイミドオリゴマーの末端を封止するモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物からなり、特に、付加反応性基を末端に有するものであることが好ましい。また、熱可塑性ポリイミドは、一般に、ガラス転移点を有するポリイミドを指し、本発明においては、ガラス転移温度(Tg)が200〜380℃の範囲であることが好ましい。
【0011】
本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーを構成するテトラカルボン酸成分としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数の化合物を組み合わせて使用することもできる。
【0012】
本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーを構成するジアミン成分としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、m−トリジン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−メチレンジアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、複数の化合物を組み合わせて使用することもできる。
【0013】
イミドオリゴマーの末端を封止するモノアミン化合物としては、例えば、アニリン、ベンジルアミンなどの付加反応性基を有しないモノアミン化合物、アリルアミン、プロパルギルアミン、4−アミノスチレン、4−ビニルベンジルアミン、3−エチニルアニリン、4−エチニルアニリンなどの付加反応性の炭素−炭素不飽和結合、すなわち、付加反応性基を有するモノアミン化合物が挙げられる。
【0014】
イミドオリゴマーの末端を封止するジカルボン酸化合物としては、例えば、無水フタル酸などの付加反応性基を有しないジカルボン酸化合物、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸無水物などの付加反応性の炭素−炭素不飽和結合、すなわち、付加反応性基を有するジカルボン酸化合物が挙げられる。
【0015】
本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーは、付加反応性の炭素−炭素不飽和結合を有するジカルボン酸化合物でアミン末端イミドオリゴマーの末端を封止したものであることが好ましい。特に、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸無水物を用いてアミン末端イミドオリゴマーの末端を封止したものであることが、得られる末端変性イミドオリゴマー熱安定性の点から好ましい。
【0016】
本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とイミドオリゴマーの末端を封止するモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物とを、酸無水物基の当量の合計とアミノ基の当量の合計が略等量となるように用いて反応させることにより製造することができる。なお、酸無水物基の等量は、隣接する2つのカルボキシル基を1つの酸無水物基とみなして計算する。
【0017】
末端変性イミドオリゴマーは、原料となる化合物を、溶媒中で100℃以下、特に80℃以下の温度で、好ましくは0.1〜50時間重合してアミド酸結合を有するオリゴマーを調製し、次いで、イミド化剤によって化学イミド化する方法、又は140〜270℃程度の高温で加熱して熱イミド化することによって製造することができる。また、アミド酸オリゴマーの生成を特に意識することなく、140〜270℃の高温で、好ましくは0.1〜50時間反応させて、一段階で末端変性イミドオリゴマーを製造することもできる。イミド化完了後、反応溶液を水等の貧溶媒に注ぐことにより生成した末端変性イミドオリゴマーを析出させ、分離することによって、粉末状の末端変性イミドオリゴマーが得られる。
【0018】
反応に用いる溶媒は、原料となる化合物および生成する末端変性イミドオリゴマーを溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミドなどのN,N−ジ低級アルキルカルボキシルアミド類、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、ジグライム、m−クレゾール、ヘキサメチルホスホルアミド、N−アセチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、p−クロロフェノール、シクロヘキサノンなどを好適に例示できる。なお、溶媒は2種以上の混合物であってもよい。
【0019】
また、末端変性イミドオリゴマーは、その原料となる化合物を溶融状態で混練して反応させることによっても得られる。例えば、バッチ式又は連続式の混練機や、二軸押出機を用いて原料となる化合物を溶融状態で混練することにより、溶媒を用いることなく末端変性イミドオリゴマーを製造することができる。
【0020】
本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーの280℃における溶融粘度は、0.1〜100Pa・sであることが好ましく、0.5〜、50Pa・sであることがより好ましく、特に1〜30Pa・sであることが好ましい。また、本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーは高温における安定性が高いことが好ましく、具体的には280℃で1時間保持した後の溶融粘度の値が初期の値の10倍以内、さらには7倍以内、特に3倍以内であることが好ましい。
【0021】
本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは100〜200℃である。ガラス転移温度が高いと、280℃における溶融粘度が前記の好ましい範囲より大きくなり、熱可塑性ポリイミドと均一に混合するのが難しくなる場合がある。
【0022】
末端変性イミドオリゴマーのガラス転移温度及び溶融粘度は、イミドオリゴマーの繰返し単位の数(すなわち、分子量)に大きく関係し、繰返し単位の数が大きくなるとガラス転移温度が高くなり、また、溶融粘度が大きくなる傾向がある。本発明においては、イミドオリゴマーの繰返し単位の数は、平均値として、好ましくは0.5〜20、より好ましくは0.5〜15、さらに好ましくは0.5〜10、特に好ましくは0.5〜5である。なお、繰返し単位の数が0とは、テトラカルボン酸成分又はジアミン成分が、2当量のモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物とそれぞれ反応した場合である。
【0023】
繰返し単位の数は、テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及びイミドオリゴマーの末端を封止するモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物の割合を変えることによって容易に調節できる。すなわち、イミドオリゴマーの末端を封止するモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物の割合を高くすると、繰返し単位の数は小さくなり、分子量は小さくなる。一方、イミドオリゴマーの末端を封止するモノアミン化合物又はジカルボン酸化合物の割合を低くすると、繰返し単位の数は大きくなり、分子量は大きくなる。
【0024】
本発明で用いる熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とからなり、これらは前記の末端変性イミドオリゴマーを構成する成分として挙げた化合物と同様の化合物を使用することができる。使用するテトラカルボン酸成分及びジアミン成分としては、得られるポリイミドが熱可塑性となる組合せであれば特に制限はないが、一般に、エーテル結合などの回転自由度の高い結合や非対称構造を主鎖に導入できる化合物用いたり、側鎖に嵩高い置換基を有する化合物を用いたりすることにより、熱可塑性となる傾向がある。
【0025】
また、本発明で用いる熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを略等量用いるか、テトラカルボン酸成分がやや過剰となるように用いて製造されたものであることが熱安定性の点から好ましい。すなわち、ジアミン成分のモル数に対するテトラカルボン酸成分のモル数を1〜1.2当量とすることが好ましい。
【0026】
熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることにより製造することができる。具体的には、原料となる化合物を、溶媒中で100℃以下、特に80℃以下の温度で反応させることによりポリアミド酸を調製し、次いで、イミド化剤によって化学イミド化する方法、又は140〜270℃程度の高温で加熱して熱イミド化することによって製造することができる。また、ポリアミド酸の生成を特に意識することなく、140〜270℃の高温で、好ましくは0.1〜50時間反応させて、一段階で製造することもできる。イミド化完了後、反応溶液を水等の貧溶媒に注ぐことにより生成した熱可塑性ポリイミドを析出させ、分離することによって、粉末状の熱可塑性ポリイミドが得られる。
【0027】
反応に用いる溶媒は、原料となる化合物および生成する熱可塑性ポリイミドを溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、前記の末端変性イミドオリゴマーの製造に用いることができる溶媒を使用できる。
【0028】
また、熱可塑性ポリイミドは、その原料となる化合物を溶融状態で混練して反応させることによっても得られる。例えば、バッチ式又は連続式の混練機や、二軸押出機を用いて原料となる化合物を溶融状態で混練することにより、溶媒を用いることなく熱可塑性ポリイミドを製造することができる。
【0029】
本発明で用いる熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は250℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度がこの温度より低いと、最終的に得られるポリイミド成形体の耐熱性が十分ではない場合がある。ガラス転移温度の上限について特に制限はないが、例えば、380℃を超える場合には成形が難しくなる場合がある。
【0030】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、前記末端変性イミドオリゴマーと前記熱可塑性ポリイミドとを均一に混合することによって得られる。混合の方法は特に制限されず、例えば、これらを溶媒に溶解して均一に混合し、この溶液を水等の貧溶媒に注ぐことにより生成したポリイミド樹脂組成物を析出させ、分離する方法が挙げられる。また、末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドとを、バッチ式又は連続式の混練機や、二軸押出機を用いて溶融状態で均一になるよう混練してもよい。
【0031】
さらに、末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドを与えるテトラカルボン酸成分及びジアミン成分を含む原料混合物を溶融状態で混練することにより、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて熱可塑性ポリイミドを生成させるとともに、末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドとを均一に混合することもできる。本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーは溶融粘度が非常に低いため、生成する熱可塑性ポリイミドの溶融粘度が比較的高い場合であっても、ポリイミド樹脂組成物としての溶融粘度は熱可塑性ポリイミドの溶融粘度より低くなる。混練の温度は、好ましくは260〜320℃で、混練の時間は、好ましくは10〜120分間である。この方法は工程数が少なく簡便で、溶媒を用いないため環境負荷も小さく、本発明のポリイミド樹脂組成物の製造方法として好ましい。
【0032】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドの混合比率に特に制限はなく、得られる組成物が所望の特性となるように調整すればよい。一般的には、末端変性イミドオリゴマーの割合が大きくなると、組成物の溶融粘度は低下し、ガラス転移温度も低下する傾向がある。なお、末端変性イミドオリゴマーと熱可塑性ポリイミドは、均一な状態になるまで十分に混合されており、組成物としてこれらのガラス転移温度の間に単一のガラス転移点を示すことが好ましい。
【0033】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、炭素繊維、アラミドパルプ(デュポン社製ケブラー等)等のアラミド繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウムやロックウール等のセラミック繊維、鉄、銅、真鍮等からなる金属繊維などの強化繊維を含んでいてもよく、さらに、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、アルミ粉、銅粉、黒鉛、二硫化モリブデン、カシューダスト、ゴムダスト、結晶性ポリイミド粒子、マイカ、バーミキュライト、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化珪素、アルミナ、結晶シリカ、マグネシア、中空ガラスビーズ等の充填材を含んでいてもよい。
【0034】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、加熱により付加反応性基を反応させて硬化することができる。好適な硬化条件は用いる末端変性イミドオリゴマーの付加反応性基の種類によるが、例えば、4−(2−フェニルエチニル)フタル酸無水物を用いてアミン末端イミドオリゴマーの末端を封止したものを用いる場合、350℃以上、好ましくは370℃以上、450℃以下の温度範囲で、10〜120分間加熱することにより硬化させることができる。
【0035】
本発明のポリイミド樹脂組成物を成形し、前記のようにして硬化することにより、高いガラス転移温度を有するポリイミド成形体が得られる。通常、このポリイミド成形体のガラス転移温度は、用いた熱可塑性ポリイミドより高く、耐熱性を求められる部材として好適に用いることができる。一般的には、ポリイミド樹脂組成物に含まれる末端変性イミドオリゴマーの割合が大きくなると、得られるポリイミド成形体のガラス転移温度が高くなる傾向がある。
【0036】
また、本発明のポリイミド樹脂組成物を繊維織物に含浸させることにより、繊維強化プラスチックの製造に用いる未硬化の材料であるプリプレグを作成することができる。前述のように、本発明で用いる末端変性イミドオリゴマーは溶融粘度が非常に低いため、用いる熱可塑性ポリイミドの溶融粘度が比較的高い場合であっても、ポリイミド樹脂組成物としての溶融粘度は熱可塑性ポリイミドの溶融粘度より低くなる。そのため、本発明のポリイミド樹脂組成物は、溶媒を用いることなく溶融状態で繊維織物に含浸させることが可能である。例えば、繊維織物とシート状に成形したポリイミド樹脂組成物を重ね、加圧下で250〜350℃で加熱して、繊維織物に溶融させたポリイミド樹脂組成物を含浸させることによりプリプレグを製造することができる。
【0037】
プリプレグを製造するために用いる、繊維織物は、公知の繊維からなるものを好適に用いることができる。例えば、カーボン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、およびチラノ繊維(二酸化チタン繊維)などのセラミック繊維を挙げることができる。
【0038】
プリプレグから繊維強化プラスチック(硬化物)を製造する方法は公知の方法を適用すればよい。例えば、製造したプリプレグを所望のサイズに切断し、複数枚(数枚から100枚以上まで)積層した後、加熱プレス、または、オートクレーブを用いて1〜1000kg/cm2の圧力で加熱することにより硬化することができる。硬化反応に必要な加熱温度は、末端変性イミドオリゴマーの付加反応性基の種類によるが、フェニルエチニル基の場合、350℃以上、好ましくは370℃以上、450℃以下の温度範囲で、10〜120分間加熱することにより硬化させることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
以下の記載において、各略号は次の化合物を意味する。
a−BPDA:2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
6FDA:2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
PEPA:4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸
TPE−R:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
MPD:m−フェニレンジアミン
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0040】
以下の例における、各特性の評価方法は次のとおりである。
(溶融粘度)
ティー・エイ・インスツルメント社製 粘弾性測定装置 ARES−G2を用い、窒素雰囲気中、昇温速度3℃/minで250〜420℃まで昇温しながら測定し、280℃における溶融粘度を測定した。また、別途、温度280℃で60分間保持した場合の溶融粘度の変化を測定した。
(ガラス転移温度)
セイコーインスツルメンツ社製 SSC5200 DSC 320Cを用いて、窒素雰囲気中で20℃/分で昇温しながらDSC測定を行った。DSC曲線のベースラインと変曲点の接線の交点をガラス転移温度とした。
(機械的特性)
島津製作所製 EZ Test/CEを用いて、引張速度2mm/minで引張試験を行い、引張強度及び破断点伸びを測定した。
【0041】
(参考例1)
セパラブルフラスコにNMP200gとa−BPDA26.6g(90.4mmol)、PEPA39.5g(159mmol)を投入して、40℃で均一に溶解させた。次いで、TPE−R24.8g(84.8mmol)、MPD9.1g(84.2mmol)を投入し、175℃で12時間攪拌し末端変性イミドオリゴマー溶液を得た。この溶液を3kgの常温の蒸留水に投入し、末端変性イミドオリゴマーを析出させた。この末端変性イミドオリゴマー分離し、蒸留水で3回洗浄した後、120℃で24時間乾燥し、粉末状の末端変性イミドオリゴマーを得た。この末端変性イミドオリゴマーのTgは150℃、280℃における溶融粘度は1.2Pa・sであった。また、280℃で60分間保持した後の溶融粘度の値は初期の値の1.2倍であった。
この末端変性イミドオリゴマーをプレス機で370℃、1時間プレスして得られた硬化物のTgは330℃であった。
【0042】
(参考例2)
6FDA18.1g(40.7mmol)、TFMB24.4g(76.2mmol)、PEPA17.6g(70.9mmol)をドライブレンドしてバッチ式溶融混練機(内容量:60cm3)に投入し、250℃で30分間溶融混練を行なって、末端変性イミドオリゴマーを得た。この末端変性イミドオリゴマーのTgは170℃、280℃における溶融粘度は38Pa・sであった。また、280℃で60分間保持した後の溶融粘度の値は初期の値の5.5倍であった。
この末端変性イミドオリゴマーをプレス機で370℃、1時間プレスして得られた硬化物のTgは370℃であった。
【0043】
(参考例3)
6FDA18.1g(40.7mmol)、TFMB24.4g(76.2mmol)、無水フタル酸10.5g(70.9mmol)をドライブレンドしてバッチ式溶融混練機(内容量:60cm3)に投入し、250℃で30分間溶融混練を行なって、イミドオリゴマーを得た。このイミドオリゴマーのTgは179℃であった。
【0044】
(実施例1)
参考例1で得られた末端変性イミドオリゴマー30gとa−BPDA15.6g(53.0mmol)、TPE−R15.4g(52.7mmol)をドライブレンドしてバッチ式溶融混練機(内容量:60cm3)に投入し、280℃で30分間溶融混練を行なって、ポリイミド樹脂組成物を得た。得られたポリイミド樹脂組成物のTgは189℃、280℃における溶融粘度は550Pa・sであった。
このポリイミド樹脂組成物をプレス機で370℃、1時間プレスして得られたポリイミド成形体を得た。このポリイミド成形体のTgは293℃、引張強度は119MPa、破断点伸びは12%であった。
なお、別途調製したa−BPDAとTPE−RとからなるポリイミドのTgは253℃であった。
【0045】
(実施例2)
末端変性イミドオリゴマー18g、a−BPDA21.7g(73.8mmol)、TPE−R21.3g(72.9mmol)を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリイミド樹脂組成物を得た。得られたポリイミド樹脂組成物のTgは215℃、280℃における溶融粘度は5200Pa・sであった。
このポリイミド樹脂組成物をプレス機で370℃、1時間プレスして得られたポリイミド成形体を得た。このポリイミド成形体のTgは271℃であった。
【0046】
(実施例3)
参考例2で得られた末端変性イミドオリゴマー36gと6FDA13.9g(31.3mmol)、TFMB10.0g(31.2mmol)をドライブレンドしてバッチ式溶融混練機(内容量:60cm3)に投入し、280℃で30分間溶融混練を行なって、ポリイミド樹脂組成物を得た。得られたポリイミド樹脂組成物のTgは189℃であった。
このポリイミド樹脂組成物をプレス機で370℃、1時間プレスして得られたポリイミド成形体を得た。このポリイミド成形体のTgは370℃であった。
なお、別途調製した6FDAとTFMBとからなるポリイミドのTgは330℃であった。
【0047】
(実施例4)
参考例1で得られた末端変性イミドオリゴマー30gとa−BPDA15.6g(53.0mmol)、TPE−R15.4g(52.7mmol)をドライブレンドしてバッチ式溶融混練機(内容量:60cm3)に投入し、280℃で30分間溶融混練を行なって、ポリイミド樹脂組成物を得た。得られたポリイミド樹脂組成物のTgは193℃、280℃における溶融粘度は700Pa・sであった。
このポリイミド樹脂組成物を炭素繊維織物(東レ製CO6364、FAW:198g/m2)に単位面積当たり100g/m2付着させ、温度280℃、圧力3MPaで5分間プレスして、プリプレグを得た。
得られたプリプレグを10枚積層し、真空プレス装置を用いて真空下で温度280℃、圧力1.5MPaでプレスして、そのまま370℃まで昇温して1時間保持した。その後、250℃まで冷却し大気圧に放圧して繊維強化プラスチックを得た。この繊維強化プラスチックの曲げ強さは677MPaであった。
【0048】
(実施例5)
参考例1で得られた末端変性イミドオリゴマー30gとa−BPDA17.8g(59.4mmol)、MPD6.4g(59.3mmol)をドライブレンドしてバッチ式溶融混練機(内容量:60cm3)に投入し、280℃で30分間溶融混練を行なって、ポリイミド樹脂組成物を得た。得られたポリイミド樹脂組成物のTgは213℃、280℃における溶融粘度は560Pa・sであった。
このポリイミド樹脂組成物を炭素繊維織物(東レ製CO6364、FAW:198g/m2)に単位面積当たり100g/m2付着させ、温度280℃、圧力3MPaで5分間プレスして、プリプレグを得た。
得られたプリプレグを10枚積層し、真空プレス装置を用いて真空下で温度280℃、圧力1.5MPaでプレスして、そのまま370℃まで昇温して1時間保持した。その後、250℃まで冷却し大気圧に放圧して繊維強化プラスチックを得た。この繊維強化プラスチックの曲げ強さは750MPaであった。
【0049】
(製造例1)
参考例3で得られたイミドオリゴマー36gと6FDA13.9g(31.3mmol)、TFMB10.0g(31.2mmol)をドライブレンドしてバッチ式溶融混練機(内容量:60cm3)に投入し、280℃で30分間溶融混練を行なって、ポリイミド樹脂組成物を得た。得られたポリイミド樹脂組成物のTgは210℃であった。