特許第6786924号(P6786924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786924
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】携帯端末
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/14 20060101AFI20201109BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H05K7/14 C
   H04M1/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-141671(P2016-141671)
(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-14365(P2018-14365A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 克典
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−028611(JP,A)
【文献】 特開平11−220276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/14
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末であって、
回路基板と、
弾性を有する緩衝部材であって、前記回路基板の表面の全範囲及び前記回路基板の裏面の全範囲を覆うとともに、前記回路基板を前記表面側と前記裏面側の両側から挟み込む前記緩衝部材と、
前記回路基板と前記緩衝部材とを収納する本体と、
を備え、
前記緩衝部材の前記回路基板との接触面は波状に形成されている、携帯端末。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記回路基板の外周端面をさらに覆っている、請求項に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記携帯端末は、さらに、
周辺部材と、
可撓性を有する接続部材であって、前記回路基板と前記周辺部材とを電気的に接続する前記接続部材と、を備える、請求項1又は2に記載の携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、回路基板を備える携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケース本体内に回路モジュールを備える携帯端末が開示されている。回路モジュールの一面には弾性接着材が設けられており、弾性接着材を介して回路モジュールとケース本体とが固定されている。また、回路モジュールの他の面には緩衝部材が設けられている。特許文献1の技術では、回路モジュールの一部を固定することなく回路モジュールをケース本体内に配置することにより、回路モジュールが自重で変形したり、携帯端末の外部から加わる衝撃によって回路モジュールが変形したりすることの抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−048097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、回路モジュールの各角部(即ち、各面の外周端部)は、弾性接着材若しくは緩衝部材によって覆われておらず、ケース本体内で露出している。そのため、回路モジュールのうち、ケース本体内に露出した部分には、弾性接着材若しくは緩衝部材によって覆われている部分に比べて衝撃が伝わり易い。そのため、携帯端末に外部からの衝撃が加わると、回路モジュールの一部に強い応力が加わる場合があり、回路モジュールが破損する可能性がある。本明細書では、外部からの衝撃が加わる際において、回路基板が破損することを抑制することができる携帯端末を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する携帯端末は、回路基板と、弾性を有する緩衝部材であって、回路基板の表面の全範囲及び回路基板の裏面の全範囲を覆うとともに、回路基板を表面側と裏面側の両側から挟み込む緩衝部材と、回路基板と緩衝部材とを収納する本体と、を備える。
【0006】
回路基板は、一般的に板状である。板状の回路基板は、表裏方向に衝撃を受ける場合に、破損しやすい。しかし、上記の携帯端末では、緩衝部材が、回路基板の表面の全範囲及び回路基板の裏面の全範囲を覆うとともに、回路基板を表面側と裏面側の両側から挟み込んでいる。そのため、携帯端末に外部からの衝撃が加わる場合であっても、回路基板の一部のみに表裏方向の強い応力が加わることが抑制される。従って、上記の携帯端末によると、外部からの衝撃が加わる際において、回路基板が破損することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】携帯端末の斜視図を示す。
図2】第1実施例の携帯端末の内部構造を示す。
図3】第2実施例の回路基板と緩衝部材との斜視図を示す。
図4】第2実施例の回路基板と緩衝部材との上面図を示す。
図5】第3実施例の回路基板と緩衝部材とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に示す技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。
【0009】
(特徴1) 緩衝部材は、回路基板の表面の全面に密着するとともに、裏面の全面に密着していてもよい。
【0010】
特徴1の構成によると、回路基板の表面の全面及び裏面の全面と緩衝部材とが密着しているため、回路基板の表面及び裏面と緩衝部材との間に空間(即ち隙間)が存在する場合に比べて、携帯端末に衝撃が加わった際に、回路基板の一部に表裏方向の強い応力が加わることを抑制することができる。従って、特徴1の構成によると、外部からの衝撃が加わる際において、回路基板が破損することをより効果的に抑制することができる。
【0011】
(特徴2) 緩衝部材は、回路基板の外周端面をさらに覆っていてもよい。
【0012】
特徴2の構成によると、緩衝部材によって、回路基板に加わる沿面方向の衝撃も緩和することができる。これにより、回路基板の破損をより効果的に抑制することができる。
【0013】
(特徴3) 携帯端末は、さらに、周辺部材と、可撓性を有する接続部材であって、回路基板と周辺部材とを電気的に接続する接続部材と、を備えていてもよい。
【0014】
特徴3の構成によると、接続部材は可撓性を有するため、携帯端末に外部からの衝撃が加わる場合であっても、回路基板と周辺部材との接続が切断されることを抑制することができる。
【0015】
(第1実施例)
図1に示すように、携帯端末1は、情報コード(例えば、バーコードや2次元コード)を読み取るための光学情報読取装置である。携帯端末1は、本体2と、表示画面4と、操作部5と、読み取り部7と、2個のキーボタン9と、を備える。なお、2個のキーボタン9のうちの一方は、図1では見えない位置に設けられている。以下では、本体2の各面のうち、図中の座標系のXY平面に平行であって、Z軸の正方向に向いている面を「上面」と呼ぶ。本体2の各面のうち、図中の座標系のXY平面に平行であり、Z軸の負方向に向いた面を「下面」と呼ぶ。本体2の各面のうち、図中の座標系のYZ平面に平行である2つの面をそれぞれ「側面」と呼ぶ。
【0016】
表示画面4は、本体2の上面に設けられている液晶画面である。表示画面4は、読み取られた情報コードに記録された情報、操作部5に入力された情報等を表示することができる。操作部5は、本体2の上面に設けられている。操作部5は、表示画面4から見て、Y軸の正方向に位置する。操作部5は、複数のボタンによって構成される。利用者は、操作部5を操作することによって、様々な指示を携帯端末1に入力することができる。
【0017】
本体2の2個の側面のそれぞれには、キーボタン9が設けられている。各キーボタン9は、本体2の側面の表面から突出して設けられている。利用者が2個のキーボタン9のうちの一方又は両方を側面の表面に向かう方向(X軸方向)に押下すると、キーボタン9は、本体2に内蔵されたスイッチ(図示省略)を作動させる。これにより、読み取り指示が携帯端末1に入力される。読み取り指示は、携帯端末1が読み取り部7を利用して情報コードを読み取るための指示である。
【0018】
図2を参照して、携帯端末1の内部構造を説明する。本体2は、上面側の上側ケース10aと、下面側の下側ケース10bと、によって構成されている。上側ケース10aと下側ケース10bとは、例えば、ねじ止めで互いに固定されることによって一体化される。本体2には、回路基板6と、2枚の緩衝部材8a,8bと、が収納されている。回路基板6は、様々な演算を実行するための電子回路が搭載された板状の基板である。回路基板6は、接続部材12を介して表示画面4に電気的に接続される。回路基板6は、接続部材12を介して、画像データを示す信号を表示画面4に出力し、画像データによって表わされる画像を表示画面4に表示させることができる。接続部材12は、可撓性を有するワイヤ、FPC(Flexible printed circuitsの略)等である。なお、回路基板6は、図示省略の接続部材を介して、図示省略の出力部材(例えばスピーカー等)にも接続されている。これにより、回路基板6は、接続部材を介して、出力部材による出力を実現する。
【0019】
緩衝部材8a,8bは、弾性を有する素材(例えばゴム、樹脂、発泡体等)で形成されている。緩衝部材8aは、回路基板6の表面(図2のZ軸の正方向側(上側)の面)の全範囲を覆っている。緩衝部材8bは、回路基板6の裏面(図2のZ軸の負方向側(下側)の面)の全範囲を覆っている。緩衝部材8a,8bは、回路基板6を表面側と裏面側の両側から挟み込んでいる。回路基板6及び緩衝部材8a,8bの各接触面は平面であるため、緩衝部材8aは、回路基板6の表面の全面に密着し、緩衝部材8bは、回路基板6の裏面の全面に密着している。緩衝部材8a,8bのZ軸方向の長さ(即ち厚さ)は、任意の長さを採用し得る。緩衝部材8a,8bのZ軸方向の長さが比較的長い(即ち厚い)場合、回路基板6への衝撃を緩和する効果が大きくなり、緩衝部材8a,8bのZ軸方向の長さが比較的短い(即ち薄い)場合、携帯端末1のサイズを小さくすることができる。なお、緩衝部材8a,8bのZ軸方向の長さと、回路基板6への衝撃を緩和する効果と、の関係は、回路基板6の形状及び重量、回路基板6上の素子の強度、緩衝部材8a,8bの素材等のパラメータを利用したシミュレーションにより評価することができる。
【0020】
回路基板6及び緩衝部材8a,8bの積層体のZ軸方向の長さ(即ち厚さ)は、本体2内の空間のZ軸方向の長さよりもやや短い。そのため、積層体を本体2内に収納すると、積層体と本体2の内面との間には僅かに空間が設けられる。その結果、本体2に衝撃等が加わる状況においても、積層体は本体2からZ軸方向の圧力を受けにくく、回路基板6が破損しにくくなっている。積層体は、本体2の内部に突出する複数本の係止部材11に係止されることよってXY平面方向への変位が抑制されている。係止部材11は、上側ケース10aの内側に設けられている。変形例では、積層体の厚さは、本体2内の空間のZ軸方向の長さと同じか、やや長くてもよい。
【0021】
(第1実施例の効果)
本実施例の携帯端末1の作用効果を十分に説明するために、回路基板6が本体2内に固定されている比較例の携帯端末(即ち従来の携帯端末)を想定する。比較例の携帯端末では、本体内には、本実施例の緩衝部材8a,8bが設けられていない。比較例の携帯端末では、回路基板6は、剛性素材(即ち弾性を有さない素材)で形成された固定部材に固定される。固定部材は、回路基板6の外周形状に合わせた形状の枠体である。具体的には、例えば、回路基板6は、その外周縁の数か所を固定部材に設けられているねじ孔にねじ止めすることによって固定部材に固定されている。即ち、比較例の携帯端末では、本体内には、本実施例の緩衝部材8a,8bと回路基板6との積層体に代えて、回路基板6と固定部材との組合せ部材が収納される。比較例の携帯端末では、外部から衝撃を受けた際に、回路基板6のうち、固定部材に固定されている部分は変位しにくく、固定部材に固定されていない部分は変位しやすい(即ち撓みやすい)。また、携帯端末が衝撃を受けない場合であっても、回路基板6のうち、固定部材に固定されていない部分は、固定されている部分にくらべて、回路基板6の自重によっても変位しやすい。そのため、例えば携帯端末が衝撃を受けた際に、固定されている部分と固定されていない部分との間の変位量差が大きくなることによって、回路基板6の一部に表裏方向の強い応力が加わり、回路基板6が破損するおそれがある。特に回路基板6は、板状であるため、表裏方向に衝撃を受ける場合に、破損しやすい。
【0022】
一方、本実施例の携帯端末1では、緩衝部材8a,8bが、回路基板6の表面の全範囲及び回路基板6の裏面の全範囲を覆うとともに、回路基板6を表面側と裏面側の両側から挟み込んでいる。本実施例の携帯端末1では、上記の比較例のように、回路基板6の一部が固定されていない。そのため、携帯端末1に外部からの衝撃が加わる場合であっても、回路基板6の一部のみに表裏方向の強い応力が加わることが抑制される。従って、本実施例の携帯端末1によると、外部からの衝撃が加わる際において、回路基板6が破損することを抑制することができる。
【0023】
回路基板6の表面の全面及び裏面の全面と緩衝部材8a,8bとが密着しているため、回路基板6の表面及び裏面と緩衝部材8a,8bとの間に空間(即ち隙間)が存在する場合に比べて、携帯端末1に衝撃が加わった際に、回路基板6の一部に表裏方向の強い応力が加わることを抑制することができる。従って、外部からの衝撃が加わる際において、回路基板6が破損することをより効果的に抑制することができる。
【0024】
接続部材12は可撓性を有するため、携帯端末1に外部からの衝撃が加わる場合であっても、回路基板6と表示画面4との接続が切断されることを抑制することができる。
【0025】
(第2実施例)
第2実施例では、緩衝部材の形状が第1実施例とは異なる。図3及び図4に示されるように、本実施例の緩衝部材8cには、回路基板6を挿入するための孔13が形成されている。孔13の開口部13aは、緩衝部材8cの側面に露出している。孔13の形状は、回路基板6の形状と同様である。ただし、孔13のサイズ(即ちX、Y、Zの各軸方向の長さ)は、回路基板6のサイズ(即ちX、Y、Zの各軸方向の長さ)よりもやや小さい。本実施例では、回路基板6は、開口部13aから、Y軸の正方向に向かって緩衝部材8cの孔13内に挿入される。図4には、挿入後の回路基板6及び緩衝部材8cの上面図が示されている。このように、緩衝部材8cは、回路基板6の表面及び裏面のみならず、回路基板6の外周端面も覆っている。上記の通り、孔13のサイズは回路基板6のサイズよりもやや小さいため、回路基板6は、緩衝部材8cから復元力を受け、緩衝部材8cに安定して保持される。この際、緩衝部材8cと、孔13に挿入された回路基板6の表面の全面及び裏面の全面とは密着する。
【0026】
本実施例の携帯端末1でも、緩衝部材8cは、回路基板6の表面の全範囲を覆うとともに、回路基板6の裏面の全範囲を覆う。また、緩衝部材8cは、孔13に挿入された回路基板6を表面側と裏面側の両側から挟み込んで保持する。そして、緩衝部材8cは、孔13に挿入された回路基板6の表面の全面と、裏面の全面と、に密着している。そのため、本実施例の携帯端末1でも、第1実施例と同様に、外部からの衝撃が加わる際において、回路基板6が破損することを抑制することができる。また、本実施例では、緩衝部材8cは、回路基板6の外周端面も覆っているので、回路基板6に加わる沿面方向の衝撃も緩和することができる。これにより、回路基板6の破損をより効果的に抑制することができる。
【0027】
(第3実施例)
第2実施例では、緩衝部材の形状が第1及び第2実施例とは異なる。本実施例の携帯端末1の本体2には、図5に示されるように、回路基板6と緩衝部材8d,8eとが収納されている。緩衝部材8d,8eでは、回路基板6との接触面が平面ではなく、波状の面となっている。緩衝部材8d,8eは、第1実施例の緩衝部材8a,8bと同様に、回路基板6の表面の全範囲及び回路基板6の裏面の全範囲を覆うとともに、回路基板6を表面側と裏面側の両側から挟み込んでいる。本実施例の携帯端末1でも、外部からの衝撃が加わる際において、回路基板6が破損することを抑制することができる。また、回路基板6と緩衝部材8d,8eとの間には隙間が存在するため、回路基板6上に配置される部材(例えば接続部材)が圧迫されることを抑制することができる。
【0028】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を含んでもよい。
【0029】
(変形例1)「携帯端末」は、情報コードを読み取るための携帯端末1に限られず、スマートフォン、PDA(Personal Data Assistantの略)、携帯型音楽プレーヤ等、あらゆる携帯端末を含む。
(変形例2)接続部材12は、可撓性を有さない硬いワイヤ等であってもよい。即ち、「接続部材」は可撓性を有さなくてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:携帯端末、2:本体、4:表示画面、5:操作部、6:回路基板、7:読み取り部、8a〜8e:緩衝部材、9:キーボタン、10a:上側ケース、10b:下側ケース、11:係止部材、12:接続部材、13:孔、13a:開口部
図1
図2
図3
図4
図5