特許第6786927号(P6786927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6786927
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20201109BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   B60C11/01 A
   B60C11/01 B
   B60C13/00 D
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-148352(P2016-148352)
(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-16202(P2018-16202A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 まどか
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−179964(JP,A)
【文献】 特開2010−047251(JP,A)
【文献】 米国意匠特許発明第00504388(US,S)
【文献】 特開2017−213925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、前記トレッド部の両端部からそれぞれタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部と、前記各サイドウォール部のタイヤ半径方向内方に形成されたビード部とを有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部の少なくとも一方の端部には、複数のショルダーブロックが第1ピッチでタイヤ周方向に形成されており、
前記ショルダーブロック側の前記サイドウォール部には、タイヤ軸方向外側に隆起した複数のサイドプロテクタと、タイヤ周方向で隣接するサイドプロテクタの間で凹む凹部とが設けられており、
前記各サイドプロテクタは、前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチでタイヤ周方向に配列されており、
前記各サイドプロテクタには、前記トレッド部側からタイヤ半径方向内側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第1凹条と、前記ビード部側からタイヤ半径方向外側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第2凹条とが設けられており、
前記第1凹条のタイヤ半径方向の内端は、前記第2凹条のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置している空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッド部と、前記トレッド部の両端部からそれぞれタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部と、前記各サイドウォール部のタイヤ半径方向内方に形成されたビード部とを有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部の少なくとも一方の端部には、複数のショルダーブロックが第1ピッチでタイヤ周方向に形成されており、
前記ショルダーブロック側の前記サイドウォール部には、タイヤ軸方向外側に隆起した複数のサイドプロテクタと、タイヤ周方向で隣接するサイドプロテクタの間で凹む凹部とが設けられており、
前記各サイドプロテクタは、前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチでタイヤ周方向に配列されており、
前記各サイドプロテクタには、前記トレッド部側からタイヤ半径方向内側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第1凹条と、前記ビード部側からタイヤ半径方向外側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第2凹条とが設けられており、
隣接する前記サイドプロテクタが、タイヤ半径方向で互い重複するように、前記凹部が、タイヤ放射方向に対して傾斜してのびている空気入りタイヤ。
【請求項3】
トレッド部と、前記トレッド部の両端部からそれぞれタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部と、前記各サイドウォール部のタイヤ半径方向内方に形成されたビード部とを有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部の少なくとも一方の端部には、複数のショルダーブロックが第1ピッチでタイヤ周方向に形成されており、
前記ショルダーブロック側の前記サイドウォール部には、タイヤ軸方向外側に隆起した複数のサイドプロテクタと、タイヤ周方向で隣接するサイドプロテクタの間で凹む凹部とが設けられており、
前記各サイドプロテクタは、前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチでタイヤ周方向に配列されており、
前記各サイドプロテクタには、前記トレッド部側からタイヤ半径方向内側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第1凹条と、前記ビード部側からタイヤ半径方向外側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第2凹条とが設けられており、
前記凹部は、タイヤ半径方向内側に向かって幅が漸減している空気入りタイヤ。
【請求項4】
トレッド部と、前記トレッド部の両端部からそれぞれタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部と、前記各サイドウォール部のタイヤ半径方向内方に形成されたビード部とを有する空気入りタイヤであって、
前記トレッド部の少なくとも一方の端部には、複数のショルダーブロックが第1ピッチでタイヤ周方向に形成されており、
前記ショルダーブロック側の前記サイドウォール部には、タイヤ軸方向外側に隆起した複数のサイドプロテクタと、タイヤ周方向で隣接するサイドプロテクタの間で凹む凹部とが設けられており、
前記各サイドプロテクタは、前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチでタイヤ周方向に配列されており、
前記各サイドプロテクタには、前記トレッド部側からタイヤ半径方向内側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第1凹条と、前記ビード部側からタイヤ半径方向外側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第2凹条とが設けられており、
前記第2ピッチは、前記第1ピッチの2倍である空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1凹条及び前記第2凹条は、それぞれ、タイヤ放射方向に対して同じ向きに傾斜している請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第2凹条は、前記第1凹条のタイヤ周方向の両側に設けられた一対からなる請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記サイドウォール部の正面視において、前記第1凹条及び前記第2凹条の途切れる端部は、円弧状に丸められている請求項1乃至6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記凹部は、少なくとも1箇所で屈曲している請求項1乃至7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記各サイドプロテクタは、隣接する2つのショルダーブロックを跨ぐように設けられている請求項1乃至8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記ショルダーブロックは、ショルダー横溝で区分されており、
前記凹部は、前記ショルダー横溝のいずれかと連通する位置に設けられている請求項1乃至9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部にサイドプロテクタが設けられた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、サイドウォール部に、タイヤ軸方向外側に隆起したサイドプロテクタが設けられた空気入りタイヤが提案されている。サイドプロテクタは、例えば、鋭利な石等によるサイドウォール部の損傷を抑制するのに役立つ。
【0003】
特許文献1のサイドプロテクタには、凹部が設けられている。例えば、サイドウォール部の一部まで浸かるような深い泥濘地を走行するとき、凹部は、泥をせん断してトラクションを高め得る。しかしながら、特許文献1の凹部は、泥が詰まり易い傾向があり、マッド性能の向上については、さらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−6449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題に鑑み案出されたもので、サイドプロテクタを改善することを基本として、サイドウォール部の耐久性を高めつつ優れたマッド性能を発揮し得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部と、前記トレッド部の両端部からそれぞれタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部と、前記各サイドウォール部のタイヤ半径方向内方に形成されたビード部とを有する空気入りタイヤであって、前記トレッド部の少なくとも一方の端部には、複数のショルダーブロックが第1ピッチでタイヤ周方向に形成されており、前記ショルダーブロック側の前記サイドウォール部には、タイヤ軸方向外側に隆起した複数のサイドプロテクタと、タイヤ周方向で隣接するサイドプロテクタの間で凹む凹部とが設けられており、前記各サイドプロテクタは、前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチでタイヤ周方向に配列されており、前記各サイドプロテクタには、前記トレッド部側からタイヤ半径方向内側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第1凹条と、前記ビード部側からタイヤ半径方向外側にのびかつ前記サイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第2凹条とが設けられている。
【0007】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1凹条及び前記第2凹条は、それぞれ、タイヤ放射方向に対して同じ向きに傾斜しているのが望ましい。
【0008】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2凹条は、前記第1凹条のタイヤ周方向の両側に設けられた一対からなるのが望ましい。
【0009】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1凹条のタイヤ半径方向の内端は、前記第2凹条のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置しているのが望ましい。
【0010】
本発明の空気入りタイヤにおいて、隣接する前記サイドプロテクタが、タイヤ半径方向で互い重複するように、前記凹部が、タイヤ放射方向に対して傾斜してのびているのが望ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォール部の正面視において、前記第1凹条及び前記第2凹条の途切れる端部は、円弧状に丸められているのが望ましい。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記凹部は、タイヤ半径方向内側に向かって幅が漸減しているのが望ましい。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記凹部は、少なくとも1箇所で屈曲しているのが望ましい。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2ピッチは、前記第1ピッチの2倍であるのが望ましい。
【0015】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記各サイドプロテクタは、隣接する2つのショルダーブロックを跨ぐように設けられているのが望ましい。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ショルダーブロックは、ショルダー横溝で区分されており、前記凹部は、前記ショルダー横溝のいずれかと連通する位置に設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空気入りタイヤのトレッド部の少なくとも一方の端部には、複数のショルダーブロックが第1ピッチでタイヤ周方向に形成されている。ショルダーブロック側のサイドウォール部には、タイヤ軸方向外側に隆起した複数のサイドプロテクタと、タイヤ周方向で隣接するサイドプロテクタの間で凹む凹部とが設けられている。サイドプロテクタは、例えば、鋭利な石等がサイドウォール部に衝突してカット傷が生じるのを抑制することができる。また、例えば、サイドウォール部の一部まで浸かる様な深い泥濘地を走行するとき、凹部は、泥をせん断して高いトラクションを提供し、ひいてはマッド性能を高めることができる。
【0018】
本発明の各サイドプロテクタは、前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチでタイヤ周方向に配列されている。これにより、各サイドプロテクタのタイヤ周方向の長さが十分に確保され、ひいてはサイドウォール部の損傷を確実に防止することができる。
【0019】
本発明の各サイドプロテクタには、トレッド部側からタイヤ半径方向内側にのびかつサイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第1凹条と、ビード部側からタイヤ半径方向外側にのびかつサイドプロテクタ内で途切れる少なくとも1本の第2凹条とが設けられている。第1凹条及び第2凹条は、前記泥濘地でより多くの泥をせん断するのに役立ち、ひいてはマッド性能がさらに高められる。しかも、このような第1凹条及び第2凹条が設けられたサイドプロテクタは、路面の踏み込み時や蹴り出し時に変形し易いため、第1凹条及び第2凹条並びに凹部内の泥を効果的に排出することができる。従って、マッド走行中、上記効果を継続して得ることができる。
【0020】
以上のように、本発明の空気入りタイヤは、サイドウォール部の耐久性を高めつつ、優れたマッド性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す横断面図である。
図2図1のショルダー陸部及びサイドウォール部の拡大斜視図である。
図3図2のサイドプロテクタ及び凹部の拡大正面図である。
図4図3の凹部の輪郭を示す拡大正面図である。
図5図3のサイドプロテクタの拡大正面図である。
図6】比較例の空気入りタイヤのショルダー陸部及びサイドウォール部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある。)1の横断面図が示されている。本実施形態のタイヤ1は、例えば、舗装路だけでなく泥濘地も走行し得るSUV等の四輪駆動車に好適に用いられる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2の両端部からそれぞれタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3のタイヤ半径方向内方に形成されたビード部4とを有する。
【0024】
本実施形態のタイヤ1の内部には、例えば、カーカス6及びベルト層7が配されている。
【0025】
カーカス6は、例えば、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る。カーカス6は、例えば、少なくとも1枚のカーカスプライ6Aで構成されている。カーカスプライ6Aは、例えば、タイヤ周方向に対して75〜90°の角度で傾けて配列されたカーカスコードで構成されている。
【0026】
カーカスプライ6Aは、例えば、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビードコア5に至る。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なりかつビードコア5の回りで折り返されている。
【0027】
本体部6aと折返し部6bとの間には、例えば、ビードコア5から先細状にのびる硬質のビードエーペックスゴム8が配されている。これにより、ビード部4が補強される。
【0028】
ベルト層7は、例えば、トレッド部2の内部かつカーカス6のタイヤ半径方向外側に配されている。ベルト層7は、例えば、スチールからなるベルトコードを傾斜配列した少なくとも1枚、本実施形態では2枚のベルトプライ7A、7Bで構成されている。ベルトコードは、例えば、プライ間で互いに交差する向きに配列されるのが望ましい。本実施形態のベルトコードは、例えば、タイヤ周方向に対して10〜45°の角度で配列されている。
【0029】
トレッド部2には、例えば、タイヤ周方向に連続してのびる主溝10が設けられている。主溝10は、例えば、最もタイヤ軸方向外側に配されたショルダー主溝11と、ショルダー主溝11とタイヤ赤道Cとの間に配されたクラウン主溝12とを含んでいる。
【0030】
トレッド部2には、ショルダー主溝11のタイヤ軸方向外側のショルダー陸部13と、ショルダー主溝11とクラウン主溝12との間のミドル陸部14と、クラウン主溝12のタイヤ赤道C側のクラウン陸部15とが区分されている。
【0031】
図2には、ショルダー陸部13及びサイドウォール部3を示す拡大斜視図が示されている。図2に示されるように、ショルダー陸部13には、ショルダー横溝16で区分されたショルダーブロック17が第1ピッチでタイヤ周方向に形成されている。換言すれば、トレッド部2の少なくとも一方の端部には、複数のショルダーブロック17が第1ピッチでタイヤ周方向に形成されている。望ましい態様として、本実施形態では、トレッド部2の両側に上記複数のショルダーブロック17が形成されている(図示省略)。
【0032】
ショルダーブロック17の側面18は、例えば、最もタイヤ軸方向外側に形成された第1面18aと、第1面18aよりもタイヤ軸方向内側に凹んだ第2面18bとを含んでいる。但し、ショルダーブロック17は、このような態様に限定されるものではない。
【0033】
ショルダーブロック17側のサイドウォール部3には、タイヤ軸方向外側に隆起した複数のサイドプロテクタ20が設けられている。本実施形態では、ショルダーブロック17とサイドプロテクタ20との間でタイヤ周方向にのびるサイド細溝21により、これらが隔てられている。サイド細溝21には、例えば、ショルダー横溝16が連通している。これにより、各ショルダーブロック17は、タイヤ周方向で隣り合うブロックと、サイドウォール部3の正面視においてもショルダー横溝16によって隔てられている。
【0034】
前記サイドウォール部3には、さらに、タイヤ周方向で隣接するサイドプロテクタ20の間で凹む凹部22が設けられている。凹部22は、例えば、サイド細溝21に連なっている。
【0035】
サイドプロテクタ20は、例えば、鋭利な石等がサイドウォール部3に衝突してカット傷が生じるのを抑制することができる。また、サイドウォール部3の一部まで浸かる様な深い泥濘地を走行するとき、凹部22は、泥をせん断して高いトラクションを提供し、ひいてはマッド性能を高めることができる。
【0036】
図3には、サイドプロテクタ20及び凹部22の拡大正面図が示されている。図3に示されるように、凹部22は、例えば、サイド細溝21を介してショルダー横溝16のいずれかと連通する位置に設けられているのが望ましい。このような凹部22は、マッド走行時、ショルダー横溝16内の泥をタイヤ外方に排出するのに役立つ。
【0037】
凹部22は、例えば、サイドウォール部3の正面視において、タイヤ放射方向に対して傾斜してのびているのが望ましい。これにより、隣接するサイドプロテクタ20が、タイヤ半径方向で互い重複している。これにより、サイドウォール部3のタイヤ周方向の剛性分布を滑らかにすることができ、ひいてはサイドウォール部3の耐久性を高めることができる。
【0038】
図4には、凹部22の輪郭の拡大正面図が示されている。図4に示されるように、本実施形態の凹部22は、例えば、最もタイヤ半径方向外側に設けられた第1部分23と、第1部分23のタイヤ半径方向内側に連なる第2部分24と、第2部分24のタイヤ半径方向内側に連なる第3部分25とを含んでいる。
【0039】
第1部分23は、例えば、その中心線23cがタイヤ半径方向に対して25〜45°の角度θ1で傾斜している。第1部分23の一対の縁23eは、例えば、直線状にのびている。
【0040】
第2部分24は、例えば、第1部分23の縁23eに対して屈曲して連なり直線状にのびる縁24eを一対有している。第2部分24は、例えば、その中心線24cがタイヤ半径方向に対して50〜70°の角度θ2で傾斜している。
【0041】
第3部分25は、少なくとも一方の縁25eが第2部分24の縁24eに対して屈曲して連なっている。前記一方の縁25eは、例えば、タイヤ半径方向に対して第2部分24の縁24eよりも小さい角度でこれに連なっている。これにより、第3部分25は、例えば、その中心線25cがタイヤ半径方向に対して45〜65°の角度θ3で傾斜している。
【0042】
本実施形態の凹部22は、上述した第1部分23、第2部分24、及び、第3部分25を含むことにより、少なくとも1箇所で屈曲しているのが望ましい。このような凹部22は、泥をせん断するとき、大きな反力を生成することができる。
【0043】
凹部22は、例えば、少なくとも第1部分23及び第2部分24において、タイヤ半径方向内側に向かって幅が漸減しているのが望ましい。このような凹部22は、マッド走行時、泥をショルダー横溝側からタイヤ半径方向内側に案内しつつ、これを押し固めることができる。押し固められた泥は、せん断されるときに大きな反力を生成し、ひいては高いトラクションを得ることができる。
【0044】
図3に示されるように、凹部22のサイド細溝21での開口幅W1は、例えば、ショルダー横溝16のサイド細溝21での開口幅W2よりも大きいのが望ましい。具体的には、凹部22の前記開口幅W1は、ショルダー横溝16の前記開口幅W2の2.0〜3.0倍であるのが望ましい。また、凹部22の前記開口幅W1は、ショルダーブロック17の踏面のタイヤ周方向の幅W3よりも小さいのが望ましい。これにより、サイドウォール部3の耐久性とマッド性能とがバランス良く高められる。
【0045】
各サイドプロテクタ20は、上記第1ピッチP1よりも大きい第2ピッチP2でタイヤ周方向に配列されている。これにより、各サイドプロテクタ20のタイヤ周方向の長さが十分に確保され、ひいてはサイドウォール部3の損傷を確実に防止することができる。
【0046】
第2ピッチP2は、例えば、第1ピッチP1の好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.8倍以上であり、好ましくは2.5倍以下、より好ましくは2.2倍以下である。このような第2ピッチP2により、本実施形態の各サイドプロテクタ20は、隣接する2つのショルダーブロック17を跨ぐように設けられている。これにより、サイドプロテクタ20の長さ及びタイヤ1周当たりの凹部22の個数が適正となり、サイドウォール部3の耐久性とマッド性能とがバランス良く高められる。
【0047】
図5には、サイドプロテクタ20の拡大正面図が示されている。各サイドプロテクタ20には、少なくとも1本の第1凹条31と、少なくとも1本の第2凹条32とが設けられている。第1凹条31は、トレッド部2側からタイヤ半径方向内側にのびかつサイドプロテクタ20内で途切れている。第2凹条32は、ビード部4側からタイヤ半径方向外側にのびかつサイドプロテクタ20内で途切れている。
【0048】
第1凹条31及び第2凹条32は、前記泥濘地でより多くの泥をせん断するのに役立ち、ひいてはマッド性能がさらに高められる。しかも、このような第1凹条31及び第2凹条32が設けられたサイドプロテクタ20は、路面の踏込時に第1凹条31及び第2凹条32の幅が縮小する方向に変形し易く、かつ、踏面の蹴り出し時に第1凹条31及び第2凹条32の幅が拡大する方向に変形し易い。これにより、第1凹条31及び第2凹条32並びに凹部22内の泥が効果的に排出される。従って、マッド走行中、上記効果を継続して得ることができる。
【0049】
第1凹条31及び第2凹条32は、それぞれ、タイヤ放射方向に対して同じ向きに傾斜しているのが望ましい。本実施形態の第1凹条31及び第2凹条32は、それぞれ、タイヤ放射方向に対して凹部22と同じ向きに傾斜している。このような第1凹条31及び第2凹条32の配置は、サイドプロテクタ20を変形し易くし、上述の効果をさらに高めるのに役立つ。
【0050】
第1凹条31のタイヤ半径方向に対する角度θ4は、少なくとも凹部22の第2部分24の角度θ2(図4に示す)よりも小さいのが望ましい。さらに、第1凹条31の前記角度θ4は、凹部22の第1部分23の角度θ1(図4に示す)よりも小さいのが望ましい。具体的には、第1凹条31の前記角度θ4は、例えば、5〜15°であるのが望ましい。
【0051】
図3に示されるように、第1凹条31は、例えば、ショルダー横溝16とタイヤ周方向に位置ずれしてサイド細溝21に連なっているのが望ましい。換言すれば、第1凹条31は、例えば、ショルダーブロック17のタイヤ半径方向内側に配されている。これにより、サイドプロテクタ20の過度な変形を抑制することができ、サイドウォール部3の耐久性を高めることができる。より望ましい態様として、第1凹条31は、ショルダーブロック17の第2面18bが形成された領域のタイヤ半径方向内側に配されている。これにより、ショルダーブロック17の第1面18aとサイドプロテクタ20の外面とがサイド細溝21を介して連続するため、第1面18aの偏摩耗を抑制することができる。
【0052】
図5に示されるように、第1凹条31は、例えば、タイヤ半径方向内側に向かって幅が漸減しているのが望ましい。第1凹条31の最大の幅W4は、例えば、凹部22の前記開口幅W1(図3に示す)よりも小さいのが望ましい。具体的には、第1凹条31の前記幅W4は、凹部22の前記開口幅W1の0.30〜0.45倍であるのが望ましい。このような第1凹条31は、サイドプロテクタ20の剛性の過度な低下を抑制しつつ、内部に多くの泥を取り込むことができる。なお、本明細書において、凹条の最大の幅とは、凹条の中心線と直交する方向の幅における最大のものを意味する。
【0053】
同様の観点から、第1凹条31のタイヤ半径方向の長さL1は、サイドプロテクタ20のタイヤ半径方向の最大幅W5の0.45〜0.55倍であるのが望ましい。
【0054】
第2凹条32は、例えば、第1凹条31のタイヤ周方向の両側に設けられた一対からなるのが望ましい。これにより、さらに多くの泥をせん断でき、ひいてはマッド性能が高められる。
【0055】
本実施形態では、例えば、第1凹条31の一方側(図5では右側)に配された第2凹条32aは、例えば、凹部22の第3部分25(図3に示す)に連なっているのが望ましい。これにより、凹部22の第3部分25と第2凹条32aとが一体となって多くの泥をせん断することができる。
【0056】
第2凹条32aと凹部22の第3部分25とが連なっている場合、サイドプロテクタ20のタイヤ周方向の端部の剛性が低下するおそれがある。このため、本実施形態では、前記一方側の第2凹条32aは、第1凹条31の他方側(図5では左側)に設けられた第2凹条32bよりも、第1凹条31と離れた位置に設けられている。これにより、前記一方側の第2凹条32a付近のサイドプロテクタ20の損傷が抑制される。
【0057】
各第2凹条32のタイヤ半径方向に対する角度θ5は、少なくとも凹部22の第2部分24の角度θ2よりも小さいのが望ましい。さらに、本実施形態の第2凹条32の前記角度θ5は、凹部22の第1部分23の角度θ1よりも小さいのが望ましい。具体的には、第2凹条32の前記角度θ5は、例えば、10〜20°であるのが望ましい。
【0058】
各第2凹条32は、例えば、タイヤ半径方向外側に向かって幅が漸減しているのが望ましい。このような各第2凹条32は、内部に取り込んだ泥を強く押し固めることができ、しかも、サイドプロテクタ20が変形したとき円滑に泥を排出することができる。
【0059】
前記一方側の第2凹条32aの最大の幅W7及び前記他方側の第2凹条32bの最大の幅W8は、例えば、第1凹条31の最大の幅W4よりも小さいのが望ましい。より望ましい態様として、本実施形態では、前記他方側の第2凹条32bの前記幅W8は、前記一方側の第2凹条32aの前記幅W7よりも大きい。これにより、サイドプロテクタ20の剛性分布を均一にでき、その損傷を抑制することができる。
【0060】
各第2凹条32のタイヤ半径方向の長さL2は、例えば、サイドプロテクタ20のタイヤ半径方向の最大幅W5の0.60〜0.70倍であるのが望ましい。さらに望ましい態様として、第1凹条31のタイヤ半径方向の内端31iは、第2凹条32のタイヤ半径方向の外端32oよりもタイヤ半径方向内側に位置しているのが望ましい。このような凹条の配置は、さらにサイドプロテクタ20の変形を促すのに役立つ。
【0061】
サイドウォール部3の耐久性とマッド性能とをバランス良く高めるために、第1凹条31の内端31iから第2凹条32の外端32oまでのタイヤ半径方向の重なり量L3は、例えば、サイドプロテクタ20のタイヤ半径方向の最大幅W5の好ましくは0.09倍以上、より好ましくは0.20倍以上であり、好ましくは0.43倍以下、より好ましくは0.30倍以下である。
【0062】
サイドウォール部3の正面視において、第1凹条31及び第2凹条32の途切れる端部は、円弧状に丸められているのが望ましい。端部の曲率半径は、例えば、1.0〜3.0mmであるのが望ましい。本実施形態では、第1凹条31の前記端部の曲率半径は、各第2凹条32a、32bの前記端部の曲率半径よりも大きい。また、他方側の第2凹条32bの前記曲率半径は、一方側の第2凹条32aの前記曲率半径よりも大きい。これにより、各凹条の端部を起点としたサイドプロテクタの割れ等の損傷が抑制される。
【0063】
サイドプロテクタ20は、例えば、タイヤ半径方向外側でタイヤ周方向にのびる第1端縁33と、タイヤ半径方向内側でタイヤ周方向にのびる第2端縁34とを含んでいる。本実施形態では、第1端縁33はタイヤ周方向に沿ってのび、第2端縁34は、一方側の第2凹条32aと他方側の第2凹条32bとの間で一部がタイヤ半径方向外側に凹んでいる。このような第2端縁34は、マッド走行時、各第2凹条32を適度に変形させるのに役立つ。
【0064】
以上、本発明の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0065】
図1の基本構造を有し、かつ、図3に示されるサイドプロテクタを有するサイズ265/70R17のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図1の基本構造を有し、かつ、図6に示されるサイドプロテクタを有するタイヤが試作された。比較例のタイヤのサイドプロテクタは、ショルダーブロックのピッチと同じピッチで設けられており、かつ、第1凹条及び第2凹条を含んでいない。実施例のタイヤと比較例のタイヤとは、サイドプロテクタ及び凹部の構成を除き、実質的に同じ構成を有している。各テストタイヤについて、マッド性能及び耐久性がテストされた。テスト方法は、以下の通りである。
【0066】
<マッド性能>
下記の条件で各テストタイヤを装着した下記テスト車両を用いて、深さ約200mmの泥濘地を走行したときのトラクション性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、マッド性能に優れていることを示す。
リム:17×7.5
内圧::220kPa
テスト車両:排気量4000cc、4輪駆動車
テストタイヤ装着位置:全輪
【0067】
<耐久性>
上記リムに装着され上記内圧が充填された各テストタイヤを、ドラム試験機上で下記条件で走行させ、サイドプロテクタにクラック等の損傷が発生するまでの走行距離が測定された。結果は、比較例の前記走行距離を100とする指数であり、数値が大きい程、耐久性に優れていることを示す。
速度:80km/h
縦荷重:5.88kN
テストの結果が表1に示される。
【0068】
【表1】
【0069】
テストの結果、実施例のタイヤは、サイドウォール部の耐久性を高めつつ、優れたマッド性能を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0070】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
17 ショルダーブロック
20 サイドプロテクタ
22 凹部
31 第1凹条
32 第2凹条
P1 第1ピッチ
P2 第2ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6