特許第6787038号(P6787038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787038
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】黒色感光性組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20201109BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20201109BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   G03F7/004 505
   G03F7/027
   G02B5/20 101
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-208401(P2016-208401)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-72413(P2018-72413A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】権藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊輔
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−164623(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/046178(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/115268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G02B 5/20
G03F 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料とエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物とを含んでなる黒色感光性組成物であって、顔料が、ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット23、および下記一般式Aで表される顔料を含むことを特徴とする黒色感光性組成物。
一般式A
【化A】

(一般式A中、R1は、アルキル基を表す。R2〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルキル基を表す。)
【請求項2】
ピグメントブルー60と、ピグメントバイオレット23と、一般式Aで表される顔料との合計中、ピグメントブルー60の含有率が40〜50質量%、ピグメントバイオレット23の含有率が10〜20質量%、一般式Aで表される顔料の含有率が40〜50質量%である請求項1記載の黒色感光性組成物。(ただし、一般式Aで表される顔料の含有率とはケト型およびエノール型を併せた含有率を意味する)


【請求項3】
請求項1または2記載の黒色感光性組成物より形成された厚さ1μmの塗膜中の顔料含有率が50質量%である際に、前記塗膜の光学濃度(OD)が、1.0以上である請求項1または2記載の黒色感光性組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載の黒色感光性組成物より形成された厚さ1μmの塗膜中の顔料含有率が50質量%である際に、前記塗膜のL*が15以下、a*が−1以上1以下、b*が−4以上0以下である請求項1〜3いずれか記載の黒色感光性組成物。
(ただし、L*、a*およびb*は、日本工業規格JIS Z8781−4:2013で規定されたL***色空間における明度および色度を表す。)
【請求項5】
一般式Aで表される顔料が、ピグメントオレンジ62、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ60およびピグメントオレンジ72よりなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1〜4いずれか記載の黒色感光性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の黒色感光性組成物より形成された塗膜。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか記載の黒色感光性組成物より形成されたパターンを有するブラックマトリクス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色感光性組成物およびそれを用いた塗膜とブラックマトリクスに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子等に用いられるカラーフィルターは、赤、緑、青色等の各色からなる画素とその画素間に光の漏れ防止を目的としてブラックマトリクスから形成される。光の漏れ防止がコントラストの向上に繋がることから、様々なブラックマトリクスが報告されている。
【0003】
近年、パネル方式の変更に伴って、ブラックマトリクスには、高い遮光性に加え、絶縁性も求められるようになってきている。この課題を解決する為に、遮光性の高いカーボンブラックを絶縁材で被覆し、絶縁性を向上させる方法が提案されているが、市場の要求を満たす絶縁性を得ることは困難であった。(例えば、特許文献1、2)
【0004】
そこで、他の黒色着色物として、黒色有機顔料、もしくは、有機顔料の混色による疑似黒を用いることにより、高い絶縁性を有するブラックマトリクスが提案されている。(例えば、特許文献3、4)しかし、これらの方法では、高い絶縁性を得ることはできるが、高い隠ぺい性を得ることが困難であることに加えて、可視域において、幅広く、フラットな吸収スペクトルを得ることも困難であり、結果、漆黒性が低下する課題という問題があった。また、顔料同士の凝集経時安定性に劣るという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許公報WO03/076527号
【特許文献2】国際特許公報WO04/000950号
【特許文献3】国際特許公報WO2013/115268号
【特許文献4】特開2012−123075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ブラックマトリクスに用いられる絶縁性と高い隠ぺい性、漆黒性を両立した黒色感光性組成物、及び前記黒色感光性組成物によって形成された塗膜、ブラックマトリクスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、顔料とエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物とを含んでなる黒色感光性組成物であって、顔料が、ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット23、および下記一般式Aで表される顔料を含むことを特徴とする黒色感光性組成物に関する。
一般式A
【0008】
【化A】
【0009】
(一般式A中、R1は、アルキル基を表す。R2〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルキル基を表す。)
【0010】
また、本発明は、ピグメントブルー60と、ピグメントバイオレット23と、一般式Aで表される顔料との合計中、ピグメントブルー60の含有率が40〜50質量%、ピグメントバイオレット23の含有率が10〜20質量%、一般式Aで表される顔料の含有率が40〜50質量%である上記黒色感光性組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、上記黒色感光性組成物より形成された厚さ1μmの塗膜中の顔料含有率が50質量%である際に、前記塗膜の光学濃度(OD)が、1.0以上である上記黒色感光性組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、上記黒色感光性組成物より形成された厚さ1μmの塗膜中の顔料含有率が50質量%である際に、前記塗膜のL*が15以下、a*が−1以上1以下、b*が−4以上0以下である上記黒色感光性組成物に関する。
(ただし、L*、a*およびb*は、日本工業規格JIS Z8781−4:2013で規定されたL***色空間における明度および色度を表す。)
【0013】
また、本発明は、一般式Aで表される顔料が、ピグメントオレンジ62、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ60およびピグメントオレンジ72よりなる群より選ばれる少なくとも一種である上記黒色感光性組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、上記黒色感光性組成物より形成された塗膜に関する。
【0015】
また、本発明は、上記黒色感光性組成物より形成されたパターンを有するブラックマトリクスに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、ブラックマトリクスに用いられる絶縁性と高い隠ぺい性、漆黒性を両立した黒色感光性組成物、及び前記黒色感光性組成物によって形成された塗膜、ブラックマトリクスを提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
<黒色感光性組成物>
本発明の黒色感光性組成物は、顔料とエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物とを含んでなる黒色感光性組成物であって、顔料が、ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット23、および下記一般式Aで表される顔料を含むことを特徴とする。以下、本発明の黒色感光性組成物で使用する材料について説明をする。
【0018】
<顔料>
黒色感光性組成物に用いる顔料は、ピグメントブルー60、ピグメントバイオレット23、および一般式Aで表される顔料の少なくとも三種の顔料から構成される。上記の顔料の組合せにて混合することにより高い隠ぺい性と漆黒性を両立することができる。
【0019】
一般式A:
【0020】
【化A】
【0021】
一般式A中、R1はアルキル基であり、R2〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子が挙げられる。
上記の内、アルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましく、ハロゲン原子は、塩素原子であることが好ましく、パーフルオロアルキル基は、トリフルオロメチル基であることが好ましい。また、好ましい置換基の組合せとしては、R1が、メチル基であり、R2が水素原子であり、R3が水素原子、または、トリフルオロメチル基であり、R4が水素原子、ニトロ基、または、塩素原子であり、R5が水素原子であり、R6が水素原子、ニトロ基、または、塩素原子である。さらにはより高い隠ぺい性、漆黒性を得ることができることから、一般式Aで表される顔料は、ピグメントオレンジ62、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ60およびピグメントオレンジ72よりなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0022】
ピグメントブルー60と、ピグメントバイオレット23と、一般式Aで表される顔料との合計中、ピグメントブルー60の含有率が40〜50質量%、ピグメントバイオレット23の含有率が10〜20質量%、一般式Aで表される顔料の含有率が40〜50質量%であることが好ましい。上記範囲の顔料の含有率の範囲にて混合することによって、より高い隠ぺい性を達成することができる。
【0023】
<エチレン性不飽和を有する重合性化合物>
感光性黒色組成物に含有されるエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物とは、エチレン性不飽和二重結合を1個以上有する化合物であり、モノマー、オリゴマー、およびポリマーなどが該当する。モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ) アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等に、公知の方法でエチレン性不飽和二重結合を導入したものが挙げられる。エチレン性不飽和化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を混合しても良い。
【0024】
<アルカリ可溶性樹脂>
感光性黒色組成物には、アルカリ現像性を得る為に、アルカリ可溶性樹脂を含有させることができる。アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液への可溶性や塗膜の耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性などの向上を目的として、1種を単独で、あるいは2種以上の樹脂を組み合わせて用いられる。
【0025】
<増感剤>
感光性黒色組成物には、光感度の向上を目的として増感剤を含有させることができる。増感剤としては、例えば、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。上記増感剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いられる。
【0026】
<分散剤>
感光性黒色組成物には、顔料の分散度、分散安定性、ならびに、アルカリ現像液への可溶性を向上させる為に分散剤を含有させることができる。分散剤として、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤、ならびに高分子の界面活性剤である高分子分散剤を用いることができる。高分子分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、および3級アミン変性ポリウレタン類などが挙げられる。また、本発明においては、市販の分散剤を用いることもでき、例えば、ソルスパース5 0 0 0 、13940 、17000、20000 、24000 、26000 、32000、36000 等の各種ソルスパース分散剤( ルブリゾール株式会社製) 、ならびにDisperbyk111( ビックケミー・ジャパン株式会社製)が好ましい。
【0027】
<溶媒>
感光性黒色組成物は、溶剤を含んでも良い。溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル− n アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられる。上記溶剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
<光重合開始剤>
黒色感光性組成物は、感光性を持たせる為に、光重合開始剤を含有することができる。光重合開始剤としては、例えば、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1 オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が挙げられる。上記光重合開始剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いことができる。
【0029】
<その他添加剤>
黒色感光性組成物は、塗工性、感度、ならびに、密着性等の性能を向上させるために、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、連鎖移動剤、界面活性剤、シランカップリング剤、乾燥防止剤、キレート剤、レオロジーコントロール剤等が挙げられる
【0030】
<分散方法>
黒色感光性組成物を作製するに当たり、顔料を溶媒に分散し、用いることが好ましい。分散方法として、一般的に用いられる分散機を用いることができ、例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー、エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製の「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械製作所社製「マイクロス」、ロールミル等の分散機が挙げられる。分散機は、一種類のみ単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0031】
<アルカリ現像液>
アルカリ現像液としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、必要に応じて消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
【0032】
<活性エネルギー線>
黒色感光性組成物の硬化には、活性エネルギー線を用いることができる。活性エネルギー線としては電子線、紫外線、可視光を使用することができ、光源として、熱電子放射銃、電界放射銃等、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等を使用することができる。一般的には、点光源であること、輝度が安定していることから、超高圧水銀ランプ、キセノン水銀ランプが用いられることが多い。組成物塗布面側から照射する活性エネルギー線量は、特に制限はないが、5〜1000mJ/cm2の範囲が好ましく、工程上管理しやすい20〜300mJ/cm2の範囲であることが好ましい。
【0033】
<塗膜の製造方法>
塗膜は、前記黒色感光性組成物を、ガラス板等の透明基板上にスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布した後、乾燥させることで作製することができる。必要に応じて、熱硬化処理、ならびにアルカリ現像操作等を実施してもよい。
【0034】
<ブラックマトリクスの製造方法>
ブラックマトリックスは、ガラス板等の透明基板上に、スピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により感光性黒色組成物を塗布したのち、フォトマスクを介して活性エネルギー線を照射し、アルカリ現像液に漬浸もしくは噴霧して未照射部、すなわち未硬化部を除去して現像を行い、所望の形状のブラックマトリックスを形成することにより作成される。感光性黒色組成物の塗布膜厚は、塗工性と遮光性の観点から0.5〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0035】
<塗膜ならびにブラックマトリクスの物性値>
塗膜ならびにブラックマトリクスの塗膜中の顔料濃度は、40〜60質量%であることが好ましい。また、塗膜ならびにブラックマトリクスとして、塗膜中の顔料濃度が50質量%の際に膜厚1μmにて光学濃度(OD)は、1.0以上であることが遮光性の観点から好ましく、さらに、1.3以上であることがより好ましい。また、漆黒性の観点からL*が15以下、a*が−1以上1以下、b*が−4以上0以下であることが好ましい。上記の範囲内の色相値であれば、可視光領域内にて極端に吸収の少ない個所が少なく、光漏れを効率的に防ぐことができる。
【0036】
<黒色感光性組成物の分散安定性>
複数種の顔料を混合する黒色感光性組成物は、顔料の表面性状の違いによって、分散状態が安定し難い。結果、黒色塗膜ならびにブラックマトリクスとしての光学濃度、漆黒性などの物性値が経時前後において大きく変化することが一般的である。実用上、このような変化は少ない程よく、例えば、50℃にて1週間静置した際の経時前後の色相差の絶対値は、△L*が0.5以下、△a*が0.3以下、△b*が0.3以下となることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の黒色感光性組成物を用いることで、高い絶縁性と高い隠ぺい性ならびに漆黒性を両立させた黒色塗膜、ならびにブラックマトリクスを得ることが出来る為、主として液晶デバイス、有機ELディスプレイ等のディスプレイ用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、特に断りのない限り、「部」、「%」とは、それぞれ質量部、質量%を意味する。
【0039】
<アクリル樹脂溶液>
[アクリル樹脂1溶液の調整]
ガス導入管、温度計、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器にシクロヘキサノン800部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱した。次いで、同温度で下記モノマーおよび重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10部からなる混合物を反応容器内に1時間かけて滴下して重合反応を開始した。
<モノマー>
スチレン 60部
メタクリル酸 60部
メチルメタクリレート 65部
ブチルメタクリレート 65部
【0040】
滴下終了後、さらに100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル2部をシクロヘキサノン50部で溶解させた溶液を滴下し、さらに100℃で1時間反応を続けて、アルカリ可溶性樹脂であるアクリル樹脂1を含む溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gを採取して180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、樹脂溶液の不揮発分が20%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂1溶液とした。得られたアクリル樹脂1の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定(標準ポリスチレン換算値)した結果、40000であった。
【0041】
<顔料>
使用した顔料とその略号を以下に列挙する。
P.O.62(C.I.ピグメントオレンジ62)
P.O.36(C.I.ピグメントオレンジ26)
P.O.60(C.I.ピグメントオレンジ60)
P.O.72(C.I.ピグメントオレンジ72)
P.O.64(C.I.ピグメントオレンジ64)
P.O.71(C.I.ピグメントオレンジ71)
P.V.23(C.I.ピグメントバイオレット23)
P.B.60(C.I.ピグメントブルー60)
CB(C.I.ピグメントブラック7、酸性処理品)
【0042】
<分散剤>
ソルスパース24000(ルブリゾール社製)
【0043】
<エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物>
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
【0044】
<光重合開始剤>
イルガキュア369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、BASF社製、商品名「イルガキュア369」)
【0045】
<溶剤>
シクロヘキサノン
【0046】
<黒色感光性組成物>
[黒色顔料分散体の調製]
表1に示す配合組成に従い、均一に撹拌なるように混合した後、さらに直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルで5時間分散した後、1μmのフィルタで濾過して黒色顔料分散体をそれぞれ得た。尚、表1中、単位表記のない数字は部を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0047】
実施例1〜9、比較例1〜3
[黒色感光性組成物の調製]
表2に示す配合組成に従い、均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、黒色感光性組成物をそれぞれ得た。
【0048】
[評価]
得られた黒色感光性組成物の感度および遮光性、塗膜色相、経時安定性を、下記の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0049】
(感度)
10cm×10cmのガラス基板に、ポストベーク後の膜厚が1μmになる量の黒色感光性組成物をスピンコートした後、オーブン中、70℃で15分間プリベークして塗膜を形成した。次いで、この塗膜が形成された基板を、超高圧水銀ランプを用い、紫外光を透過するパターンが描画されたフォトマスクを介して紫外線を露光した。露光後、この基板を23℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像した後、水で洗浄し、乾燥した。その後、オーブン中、230℃で30分間ポストベークを行い、ブラックマトリクスを形成した。
【0050】
形成されたブラックマトリクスの現像・水洗前後の露光部分の膜厚を測定し、現像前の塗膜の膜厚に対して95%以上の膜厚が得られる最小露光量(mJ/cm2)を感度とした。最小露光量の小さいものほど高感度といえ、良好であるが、下記の基準に従って評価した。
◎:100mJ/cm2未満(感度が著しく高い)
○:100mJ/cm2以上300mJ/cm2未満(感度が高い)
×:300mJ/cm2以上(感度が低い)
【0051】
(遮光性)
10cm×10cmのガラス基板に、乾燥後の膜厚が1μmになる量の黒色感光性組成物をスピンコートした後、オーブン中、70℃で15分間乾燥して塗膜を形成した。この塗膜中での顔料(全顔料の合計)の含有率は50%である。上記塗膜の光学濃度(OD)をマクベス濃度計(X−Rite 361T、サカタインクスエンジニアリング株式会社)で測定した。なお、ODとは、遮光性を示す数値であり、数値が大きい程、遮光性が高く良好である。遮光性に関しては、下記の基準に従って評価した。
◎:1.3以上(遮光性が著しく高い)
○:OD1.0以上1.3未満(遮光性が高い)
×:OD1.0未満(遮光性が低い)
【0052】
(色相評価1)
遮光性の評価で使用したものと同じ塗膜を用いて、塗膜のL*、a*、b*を日本工業規格JIS Z8781−4:2013に従って測定した。L*は、数値が小さい程、黒味が強く良好である。また、a*が−1以上1以下、b*が−4以上0以下の範囲であれば、漆黒性が高く、良好である。
【0053】
(色相評価2)
得られた黒色感光性組成物を50℃で1週間保存した後、上記の方法と同様に塗膜を形成し、日本工業規格JIS Z8781−4に従ってL*、a*、b*を測定した。保存前に作製した塗膜の色相(L*、a*、b*)と比較して、変化(色相差であり、各々△L*、△a*、△b*で表す)が少ない
もの程良好である。
【0054】
(絶縁性)
10cm×10cmのガラス基板に、乾燥後の膜厚が1μmになる量の黒色感光性組成物をスピンコートした後、オーブン中、70℃で15分間乾燥して塗膜を形成した。この塗膜中での顔料(全顔料の合計)の含有率は50%である。上記塗膜の表面抵抗値は、高抵抗 抵抗率計(ハイレスターUX MCP−HT800、三菱化学アナリテック株式会社)にて測定した。表面抵抗値は1015Ω/□以上であれば、絶縁性は良好である。
【0055】
表3に示すように、実施例1〜9は、高感度であり、高遮光性の塗膜を得ることが出来ており、その中でも実施例1〜6は黒味の高い塗膜を得ることが出来ている。特に実施例1、5、6は、遮光性、色相において格段に優れている。比較例1、2は実施例1〜9と比較して感度、遮光性のいずれかにおいて劣っている。比較例3は、遮光性は高いが、感度、ならびに絶縁性において劣っている。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】