特許第6787041号(P6787041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6787041
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/26 20060101AFI20201109BHJP
   H01Q 9/04 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H01Q21/26
   H01Q9/04
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-211176(P2016-211176)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2018-74345(P2018-74345A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】河合 晃平
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05786793(US,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1456071(KR,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0234909(US,A1)
【文献】 特開2008−193655(JP,A)
【文献】 特開平03−166803(JP,A)
【文献】 特開2005−217633(JP,A)
【文献】 特開2002−118409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/04
H01Q 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエレメントを備え、
前記エレメントは、給電点側に位置する給電点側導電部と、開放端側に位置する開放端側導電部と、前記給電点側導電部及び前記開放端側導電部をメアンダ状に接続するメアンダ導電部とが、同一平面状に配置されるように構成され、
前記複数のエレメントは、前記給電点側導電部同士が離隔するように環状に配置され、
前記給電点側導電部は、前記開放端側導電部よりも前記複数のエレメントにより囲われる領域の中心側に配置されることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
複数のエレメントを備え、
前記エレメントは、給電点側に位置する給電点側導電部と、開放端側に位置する開放端側導電部と、前記給電点側導電部及び前記開放端側導電部をメアンダ状に接続するメアンダ導電部とが、同一平面状に配置されるように構成され、
前記複数のエレメントは、前記給電点側導電部同士が離隔するように環状に配置され、
前記給電点側導電部は、前記メアンダ導電部に向かう方向の長さが、前記開放端側導電部の前記メアンダ導電部に向かう方向の長さよりも長くなるように形成されることを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
前記給電点側導電部は、前記開放端側導電部よりも前記複数のエレメントにより囲われる領域の中心側に配置されることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記給電点側導電部は、給電点側の端部と、隣接する他の前記エレメントの前記開放端側導電部のうち前記給電点側の端部に最も近づく部位との距離が、前記給電点側導電部の幅よりも長くなるように形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記メアンダ導電部は、前記給電点側導電部に対して直交する第1導電部と前記第1導電部の端部に対して直交するように接続する第2導電部とが交互に複数連結して形成され、前記第2導電部を介して対向する前記第1導電部間の距離が当該第1導電部の幅よりも長くなるように形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非接触通信端末などの端末装置では、様々なアンテナが提供されており、その一例としては、例えば特許文献1のようなものがある。この特許文献1に開示されるアンテナは、誘電体基板の上下の面に設けられる配線をそれぞれメアンダ形状に配置してその配線長を長くすることで、アンテナ用電極の小型化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−065104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、携帯端末等では、特に小型化が求められており、アンテナを搭載する携帯端末などでは、端末全体の中でアンテナの占めるスペースが大きくなりやすいため、アンテナ部分のさらなる小型化が強く求められている。その一方で、アンテナとしては、様々な周波数帯域での使用も求められており、例えば、エレメント基板に環状に設けられる各配線を複数のアンテナ用エレメントとして用いるアンテナでは、その配線部分の配線長さを調整することで、対応可能な周波数を変更して汎用性を高めている。
【0005】
しかしながら、小型化を図りつつ調整可能な配線長さを有するエレメントを設けるために、特許文献1に開示されるようにアンテナ用エレメントとして機能する配線を単にメアンダ状に形成するだけでは、その配線を流れる電流に応じて発生した磁界の干渉等によって利得が低下する場合がある。このように利得が低下してしまうと、アンテナとして必要な性能を確保できなくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、小型化を図りつつ必要なアンテナ性能を確保し得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載のアンテナ(10)は、
複数のエレメント(11a〜11d)を備え、
前記エレメントは、給電点側に位置する給電点側導電部(31a〜31d)と、開放端側に位置する開放端側導電部(32a〜32d)と、前記給電点側導電部及び前記開放端側導電部をメアンダ状に接続するメアンダ導電部(33a〜33d)とが、同一平面状に配置されるように構成され、
前記複数のエレメントは、前記給電点側導電部同士が離隔するように環状に配置され、
前記給電点側導電部は、前記開放端側導電部よりも前記複数のエレメントにより囲われる領域の中心側に配置されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載のアンテナ(10)は、
複数のエレメント(11a〜11d)を備え、
前記エレメントは、給電点側に位置する給電点側導電部(31a〜31d)と、開放端側に位置する開放端側導電部(32a〜32d)と、前記給電点側導電部及び前記開放端側導電部をメアンダ状に接続するメアンダ導電部(33a〜33d)とが、同一平面状に配置されるように構成され、
前記複数のエレメントは、前記給電点側導電部同士が離隔するように環状に配置され、
前記給電点側導電部は、前記メアンダ導電部に向かう方向の長さ(L1)が、前記開放端側導電部の前記メアンダ導電部に向かう方向の長さ(L2)よりも長くなるように形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、各エレメントは、給電点側に位置する給電点側導電部と、開放端側に位置する開放端側導電部と、給電点側導電部及び開放端側導電部をメアンダ状に接続するメアンダ導電部とが、同一平面状に配置されるように構成され、給電点側導電部同士が離隔するように環状に配置される。そして、給電点側導電部は、開放端側導電部よりも複数のエレメントにより囲われる領域の中心側に配置される。
【0010】
これにより、例えば、開放端側導電部のメアンダ導電部に向かう方向の長さを調整することで、対応可能な周波数を容易に変更することができる。特に、グランドが設けられる基板端から所定距離離すように各エレメントを環状に配置してアンテナを構成する場合でも、各エレメントの給電点に近い部位(給電点側導電部)が上記基板の中心側に配置されることとなる。このため、小型化を図るためにメアンダ導電部を設ける場合でも、より給電点側に位置する給電点側導電部が上記基板の外縁よりも中心側に配置されることとなり、給電点側導電部が上記基板の外縁近傍に位置する場合と比較して、背面への放射が抑制されることから、利得の低下を抑制することができる。したがって、小型化を図りつつ必要なアンテナ性能を確保することができる。
【0011】
請求項2の発明では、各エレメントは、給電点側に位置する給電点側導電部と、開放端側に位置する開放端側導電部と、給電点側導電部及び開放端側導電部をメアンダ状に接続するメアンダ導電部とが、同一平面状に配置されるように構成され、給電点側導電部同士が離隔するように環状に配置される。そして、給電点側導電部は、メアンダ導電部に向かう方向の長さが、開放端側導電部のメアンダ導電部に向かう方向の長さよりも長くなるように形成される。
【0012】
これにより、例えば、開放端側導電部のメアンダ導電部に向かう方向の長さを調整することで、対応可能な周波数を容易に変更することができる。特に、給電点側導電部は、開放端側導電部よりも給電点に近いことからより大きな電流が流れやすく利得に影響しやすいため、給電点側導電部のメアンダ導電部に向かう方向の長さが開放端側導電部のメアンダ導電部に向かう方向の長さよりも長くなることで、開放端側導電部の方が長くなる場合と比較して、エレメントとして同じ全長でも、利得の低下を抑制することができる。したがって、小型化を図りつつ必要なアンテナ性能を確保することができる。
【0013】
請求項3の発明では、給電点側導電部は、開放端側導電部よりも複数のエレメントにより囲われる領域の中心側に配置される。これにより、グランドが設けられる基板端から所定距離離すように各エレメントを環状に配置してアンテナを構成する場合でも、各エレメントの給電点に近い部位(給電点側導電部)が上記基板の中心側に配置されることとなる。このため、小型化を図るためにメアンダ導電部を設ける場合でも、より給電点側に位置する給電点側導電部が上記基板の外縁よりも中心側に配置されることとなり、給電点側導電部が上記基板の外縁近傍に位置する場合と比較して、背面への放射が抑制されることから、利得の低下を抑制することができる。
【0014】
請求項4の発明では、給電点側の端部と、隣接する他のエレメントの開放端側導電部のうち当該給電点側の端部に最も近づく部位との距離が、給電点側導電部の幅よりも長くなるように形成される。これにより、給電点側の端部を流れる電流に応じて発生した磁界が他のエレメントを流れる電流に応じて発生した磁界に干渉等し難くなるので、利得の低下を確実に抑制することができる。
【0015】
請求項5の発明では、メアンダ導電部は、給電点側導電部に対して直交する第1導電部とこの第1導電部の端部に対して直交するように接続する第2導電部とが交互に複数連結して形成され、第2導電部を介して対向する第1導電部間の距離が当該第1導電部の幅よりも長くなるように形成される。このため、第2導電部を介して対向する一方の第1導電部を流れる電流に応じて発生した磁界と他方の第1導電部を逆方向に流れる電流に応じて発生した磁界とが干渉し難くなるので、メアンダ構造を採用する場合でも利得の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るアンテナを搭載した携帯端末を示す側面図である。
図2図2(A)は、図1の携帯端末の平面図であり、図2(B)は、図1の携帯端末の裏面図である。
図3図3(A)は、図1の携帯端末の電気的構成を例示するブロック図であり、図3(B)は、その携帯端末の情報コード読取部を概略的に例示するブロックであり、図3(C)は、その携帯端末の非接触通信部を概略的に例示するブロック図である。
図4】第1実施形態に係るアンテナの斜視図である。
図5図4のアンテナの正面図である。
図6図4のアンテナの背面図である。
図7図4のアンテナの平面図である。
図8図4のアンテナの底面図である。
図9図4のアンテナの右側面図である。
図10図4のアンテナの左側面図である。
図11図5におけるエレメント11a近傍を拡大して示す拡大図である。
図12図4のアンテナの各エレメントに電力を分配する電力分配回路等を概略的に例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明に係るアンテナが搭載される携帯端末を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(携帯端末の全体構成)
まず、本発明に係るアンテナが搭載される携帯端末について概説する。
図1及び図2に示す携帯端末1は、ユーザによって携帯されて様々な場所で所定の情報を読み取る情報読取装置として構成されており、アンテナ部を介して送受信される電波を媒介として無線タグ(RFIDタグ)に記憶されている情報を読み書きする無線タグリーダライタとしての機能に加えて、バーコードや二次元コードなどの情報コードを光学的に読み取る情報コードリーダとしての機能を兼ね備え、読み取りを二方式で行いうる構成となっている。
【0018】
図1及び図2に示すように、携帯端末1は、ABS樹脂等の合成樹脂材料により形成される筐体によってその外郭が形成されており、本体部2とこの本体部2に組み付けられる把持部3及び無線通信部4を備えるように構成されている。本体部2の表面2aには、所定の情報を入力する際に操作されるファンクションキー及びテンキー等のキー操作部105の一部や、所定の情報を表示するための表示部104等が配置されている。また、把持部3の外面には、本体部2の裏面2b近傍であって無線通信部4に対向する部位に、無線タグ等に対する読取処理を開始する際に操作されるトリガースイッチ105aが配置されている。また、本体部2の読取側(図1の左側)の端部には、情報コードからの反射光を取り込むための読取口2cが設けられている。
【0019】
無線通信部4は、送信電波の高出力化を図るためのものであって、読取口2cの下方に位置するように、本体部2の裏面2bの読取側に組み付けられている。この無線通信部4は、その内部に後述するアンテナ10や非接触通信部120の機能の一部が収容されるように構成されている。
【0020】
次に、携帯端末1の電気的構成について、図3(A)〜(C)を参照して説明する。
本体部2は、携帯端末1全体を制御する制御部101を備えている。この制御部101は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、メモリ102とともに情報処理装置を構成している。また、制御部101には、図3(A)に示すように、発光部103、表示部104、キー操作部105、バイブレータ106、スピーカ107、外部インタフェース108などが接続されている。
【0021】
キー操作部105は、トリガースイッチ105aやテンキー等を備えてその操作に応じた操作信号を制御部101に対して与える構成をなしており、制御部101は、この操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行う。発光部103は、例えばLEDであって、制御部101による制御に応じて点灯・点滅するように構成されている。表示部104は、公知の液晶ディスプレイ(LCD)によって構成されており、制御部101による制御に応じて表示内容が制御されるようになっている。バイブレータ106は、携帯機器に搭載される公知のバイブレータによって構成されており、制御部101による制御に応じて振動を発生させるように構成されている。スピーカ107は、公知のスピーカによって構成されており、制御部101による制御に応じて予め設定された音声やアラーム音等の所定の音を放音(発音)するように構成されている。外部インタフェース108は、外部機器等との間でのデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御部101と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、本体部2の筐体内には、電源部109が設けられており、この電源部109やバッテリ109aによって制御部101や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0022】
また、制御部101には、非接触通信部120及び情報コード読取部130がそれぞれ接続されている。このうち情報コード読取部130は、図3(B)に示すように、CCDエリアセンサからなる受光センサ133、結像レンズ137、複数個のLEDやレンズ等から構成される照明部131などを備えた構成をなしており、制御部101と協働して読取対象Rに付された情報コードC(バーコードや二次元コード)を読み取るように機能する。
【0023】
非接触通信部120は、アンテナ10及び制御部101と協働して無線タグ等の非接触通信媒体との間で電磁波による通信を行ない、無線タグ等に記憶されるデータの読み取り、或いは無線タグ等に対するデータの書込みを行うように機能するものである。この非接触通信部120は、例えば公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、発振器や変調器などに加えて、図3(C)にて概略的に示すように、制御部101で生成されたデータ信号を公知の方法で高周波信号(交流信号)に変換する信号生成部122と、この信号生成部122で生成された信号を分配する分配部123とを備えており、これらによって送信回路が構成されている。また、アンテナ10で受信された電波を入力させて復調する受信回路124も設けられている。
【0024】
(アンテナの構成)
次に、本発明に係るアンテナ10について詳述する。アンテナ10は、携帯端末1の無線通信部4内に収容されており、携帯端末1を把持するユーザから見て前方向(図1の左方向)に向けて電磁波を放射するように、後述するエレメント基板30の表面30eが携帯端末1の本体部2の長手方向(図1の左右方向)と略直交する構成で配されるようになっている。なお、アンテナ10は、例えば、エレメント基板30の表面30eが本体部2の長手方向に対して所定の角度で傾斜するように無線通信部4内に収容されてもよいし、無線通信部4を廃止して本体部2内にてエレメント基板30の表面30eが本体部2の長手方向に略平行となるように収容されてもよい。
【0025】
図4図10に示すように、アンテナ10は、平行に配置されるGND基板20及びエレメント基板30と給電側連結部41及び接地側連結部42とを備え、エレメント基板30に形成される配線パターン等を利用して4つのアンテナ用のエレメント11a〜11dを有するように構成されている。
【0026】
GND基板20は、例えば樹脂製或いはセラミック製の基板として構成されており、このGND基板20の基板面や内部には、導電層によって構成されるパターンが形成されている。なお、図4等では図示を省略しているが、例えばGND基板20の基板面に電子部品が実装されていてもよい。また、GND基板20は、図6に示すように正面視したときの外形が正方形或いは長方形などの矩形状に構成されており、GND基板20の外縁を構成する4つの縁部は、いずれも全体或いは大部分が直線状に構成されている。
【0027】
また、GND基板20においてエレメント基板30に対向する表面21側とは反対の裏面22側には、その裏面22の少なくとも一部(裏面の過半領域又は略全領域)を覆う構成で導電材からなるグランド層25が所定の厚さで設けられている。このグランド層25は、電位が所定のグランドレベルに設定される導電層であり、各エレメント11a〜11dを裏面22に正投影した各領域のほぼ全体を網羅するように、且つ裏面22の中央部付近も網羅するように配されている。
【0028】
エレメント基板30は、例えば樹脂製或いはセラミック製の基板であって、図5に示すように正面視したときの外形が正方形或いは長方形などの矩形状に構成されており、エレメント基板30の外縁を構成する4つの縁部30a〜30dは、いずれも全体或いは大部分が直線状に構成されている。エレメント基板30のGND基板20に対向する裏面側とは反対の表面30e側には、各エレメント11a〜11dを構成するための導電部が配線パターンとして形成されている。
【0029】
具体的には、エレメント11aは、給電点側に位置する給電点側導電部31aと、開放端側に位置する開放端側導電部32aと、給電点側導電部31a及び開放端側導電部32aをメアンダ状に接続するメアンダ導電部33aとが、同一平面状に配置されるように構成されている。給電点側導電部31a及び開放端側導電部32aは、縁部30aに沿って延伸するように形成されている。
【0030】
そして、図11に示すように、給電点側導電部31aは、縁部30aからの距離X1が開放端側導電部32aに対する縁部30aからの距離X2よりも長くなるように配置されている。また、給電点側導電部31aは、メアンダ導電部33aに向かう方向の長さL1が、開放端側導電部32aのメアンダ導電部33aに向かう方向の長さL2よりも長くなるように形成されている。
【0031】
メアンダ導電部33aは、給電点側導電部31a及び開放端側導電部32aに対して直交する第1導電部34と第1導電部34の端部に対して直交するように接続する第2導電部35とが交互に複数連結して形成されている。特に、本実施形態では、メアンダ導電部33aは、第2導電部35を介して対向する第1導電部34間の距離S1が当該第1導電部34の幅W1よりもわずかに長くなるように、例えば、距離S1が幅W1の1.5倍以下となるように、形成されている。
【0032】
エレメント11b〜11dは、エレメント11aと同様に、それぞれ給電点側導電部31b〜31dと開放端側導電部32b〜32dとメアンダ導電部33b〜33dとが、同一平面状に配置されるように構成されている。そして、給電点側導電部31b〜31dは、給電点側導電部31aと同様に、隣接する縁部30b〜30dからの距離X1が開放端側導電部32b〜32dに対する縁部30b〜30dからの距離X2よりも長くなり、給電点側導電部31b〜31dの長さL1はそれぞれ開放端側導電部32b〜32dの長さL2よりも長くなるように配置されている。また、メアンダ導電部33b〜33dは、メアンダ導電部33aと同様に、第2導電部35を介して対向する第1導電部34間の距離S1が当該第1導電部34の幅W1よりもわずかに長くなるように形成されている。
【0033】
そして、各エレメント11a〜11dは、対応する縁部30a〜30dに対して沿い、給電点側導電部同士が離隔するように環状に配置されている。具体的には、エレメント11aは、給電点側導電部31aの給電点側の端部36aにてエレメント11dの開放端側導電部32dに対して距離S2(図11参照)だけ離れるように対向し、開放端側導電部32aの開放端37aが縁部30aと縁部30bとによって構成される隅部に向かうように配置されている。また、エレメント11bは、給電点側導電部31bの給電点側の端部36bにてエレメント11aの開放端側導電部32aに対して距離S2だけ離れるように対向し、開放端側導電部32bの開放端37bが縁部30bと縁部30cとによって構成される隅部に向かうように配置されている。また、エレメント11cは、給電点側導電部31cの給電点側の端部36cにてエレメント11bの開放端側導電部32bに対して距離S2だけ離れるように対向し、開放端側導電部32cの開放端37cが縁部30cと縁部30dとによって構成される隅部に向かうように配置されている。また、エレメント11dは、給電点側導電部31dの給電点側の端部36dにてエレメント11cの開放端側導電部32cに対して距離S2だけ離れるように対向し、開放端側導電部32dの開放端37dが縁部30dと縁部30aとによって構成される隅部に向かうように配置されている。
【0034】
このため、給電点側導電部31aは、縁部30aからの距離X1が開放端側導電部32aに対する縁部30aからの距離X2よりも長くなることから、開放端側導電部32aよりも各エレメント11a〜11dにより囲われる領域の中心側に配置されることとなる。また、各給電点側導電部31b〜31dも同様に、縁部30b〜30dからの距離X1が開放端側導電部32b〜32dに対する縁部30b〜30dからの距離X2よりも長くなることから、開放端側導電部32b〜32dよりも各エレメント11a〜11dにより囲われる領域の中心側にそれぞれ配置されることとなる。
【0035】
そして、上記距離S2は、給電点側導電部31a〜31dの給電点側の端部36a〜36dと、隣接する他のエレメントの開放端側導電部32d,32a〜32cのうち給電点側の端部36a〜36dに最も近づく部位との距離となる。この距離S2は、給電点側導電部31a〜31dの幅W2よりもわずかに長くなるように、例えば、距離S2が幅W2の1.5倍以下となるように、形成されている。
【0036】
給電側連結部41及び接地側連結部42は、金属板金等からなる略平板状の導電部材であって、GND基板20とエレメント基板30との間にて所定の隙間を介すように立設して設けられており、GND基板20とエレメント基板30とが所定距離離れて平行となるように配置されている。そして、給電点側導電部31aの給電点側の端部36aに接続される給電側連結部41と接地側連結部42とは、GND基板20の表面21に設けられる所定の給電路とGND基板20のグランド層25とにそれぞれ接続されている。また、給電点側導電部31b〜31dの給電点側の端部36b〜36dに接続される給電側連結部41及び接地側連結部42も同様に、GND基板20の表面21に設けられる所定の給電路とGND基板20のグランド層25とにそれぞれ接続されている。
【0037】
このように配置されることで、各エレメント11a〜11dは、対応する給電側連結部41を介してそれぞれ給電されるように構成される。なお、例えば、各給電側連結部41と対応するGND基板20の所定の給電路とは、はんだを介して電気的に接続されている。また、本実施形態に係るアンテナ10では、各エレメント11a〜11dは、同一形状となっているが、いずれか又はそれぞれの形状が他のエレメントと若干異なっていてもよい。
【0038】
次に、各エレメント11a〜11dに電力を分配する回路について説明する。
上述のように構成される各エレメント11a〜11dに対して図3(C)、図12に示す分配部123によって信号生成部122からの高周波信号(交流信号)が分配されることで、各エレメント11a〜11dから所定の電磁波が放射される。分配部123は、信号生成部122で生成された高周波信号が分配回路141に入力されるようになっており、この分配回路141からは、入力信号と同位相の高周波信号(第1中間信号)と、入力信号から90°位相がずれた高周波信号(第2中間信号)とが出力されるようになっている。また、分配回路141から出力される同位相(0°)の第1中間信号は、分配回路142に入力されるようになっており、分配回路142からは、入力信号(第1中間信号)と同位相の高周波信号(第1出力信号)と、入力信号(第1中間信号)から90°位相がずれた高周波信号(第2出力信号)とが出力されるようになっている。また、分配回路141から出力される90°位相がずれた第2中間信号は90°位相器149に入力されるようになっており、この90°位相器149からは入力信号(第2中間信号)の位相を90°ずらした高周波信号(第3中間信号)が出力されるようになっている。更に、90°位相器149から出力される第3中間信号は、分配回路143に入力されるようになっており、分配回路143からは、入力信号(第3中間信号)と同位相の高周波信号(第3出力信号)と、入力信号(第3中間信号)から90°位相がずれた高周波信号(第4出力信号)とが出力されるようになっている。なお、各分配回路141、142、143は、例えば公知のウィルキンソン型の分配回路として構成されており、50Ωの抵抗145、146、147が接続されている。
【0039】
このように分配部(分配回路)123では、信号生成部122から出力された高周波信号(入力信号)から、当該入力信号と同位相(0°)の信号、当該入力信号から位相が90°ずれた信号、当該入力信号から位相が180°ずれた信号、当該入力信号から位相が270°ずれた信号をそれぞれ生成し、各給電側連結部41を介して各エレメント11a〜11dに出力するようになっている。例えば、信号生成部122から出力される入力信号と同位相(0°)の信号(第1出力信号)については、給電路151を介してエレメント11aに出力し、信号生成部122から出力される入力信号から位相が90°ずれた信号(第2出力信号)については、給電路153を介してエレメント11bに出力し、信号生成部122から出力される入力信号から位相が180°ずれた信号(第3出力信号)については、給電路152を介してエレメント11cに出力し、信号生成部122から出力される入力信号から位相が270°ずれた信号(第4出力信号)については、給電路154を介してエレメント11dに出力している。
【0040】
なお、ここでは、信号生成部122によって生成された高周波信号(交流信号)を、位相を90°ずつずらして各エレメント11a〜11dに供給する一例を示したが、信号生成部122によって生成された交流信号を各エレメント11a〜11dに供給し得る構成であればこのような構成に限られず、他の分配方法を用いてもよい。或いは、信号生成部122によって生成された交流信号を各エレメント11a〜11dに順番に供給するような切替回路を設けるようにしてもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係るアンテナ10では、各エレメント11a〜11dは、給電点側に位置する給電点側導電部31a〜31dと、開放端側に位置する開放端側導電部32a〜32dと、給電点側導電部及び開放端側導電部をメアンダ状に接続するメアンダ導電部33a〜33dとが、同一平面状に配置されるように構成され、給電点側導電部同士が離隔するように環状に配置される。そして、給電点側導電部31a〜31dは、開放端側導電部32a〜32dよりも複数のエレメント11a〜11dにより囲われる領域の中心側に配置される。そして、給電点側導電部31a〜31dは、メアンダ導電部33a〜33dに向かう方向の長さL1が、開放端側導電部32a〜32dのメアンダ導電部33a〜33dに向かう方向の長さL2よりも長くなるように形成される。
【0042】
これにより、例えば、開放端側導電部32a〜32dのメアンダ導電部33a〜33dに向かう方向の長さを調整することで、対応可能な周波数を容易に変更することができる。なお、給電点側導電部31a〜31dのメアンダ導電部33a〜33dに向かう方向の長さを調整しても対応可能な周波数を調整することができ、メアンダ導電部33a〜33dの第1導電部34や第2導電部35の形状に応じて電気長を調整しても対応可能な周波数を調整することができる。
【0043】
特に、グランド層25が設けられるGND基板20の外縁から所定距離離すように各エレメント11a〜11dを環状に配置してアンテナ10を構成する場合でも、各給電点側導電部31a〜31dは、縁部30a〜30dからの距離X1が開放端側導電部32a〜32dに対する縁部30a〜30dからの距離X2よりも長くなることから、各エレメント11a〜11dにおける給電点側導電部31a〜31dの給電点側の端部36a〜36dがGND基板20の中心側に配置されることとなる。このため、小型化を図るためにメアンダ導電部33a〜33dを設ける場合でも、より給電点側に位置する給電点側導電部31a〜31dがGND基板20の外縁よりも中心側に配置されることとなり、給電点側導電部31a〜31dがGND基板20の外縁近傍に位置する場合と比較して、背面への放射が抑制されることから、利得の低下を抑制することができる。
【0044】
そして、給電点側導電部31a〜31dは、開放端側導電部32a〜32dよりも給電点に近いことからより大きな電流が流れやすく利得に影響しやすいため、給電点側導電部31a〜31dのメアンダ導電部33a〜33dに向かう方向の長さL1が開放端側導電部32a〜32dのメアンダ導電部33a〜33dに向かう方向の長さL2よりも長くなることで、開放端側導電部32a〜32dの方が長くなる場合と比較して、エレメントとして同じ全長でも、利得の低下を抑制することができる。したがって、小型化を図りつつ必要なアンテナ性能を確保することができる。
【0045】
特に、給電点側導電部31a〜31dにおける給電点側の端部36a〜36dと、隣接する他のエレメントの開放端側導電部32d,32a〜32cのうち当該給電点側の端部36a〜36dに最も近づく部位との距離S2が、給電点側導電部31a〜31dの幅W2よりもわずかに長くなるように形成される。これにより、給電点側の端部36a〜36dを流れる電流に応じて発生した磁界が他のエレメントを流れる電流に応じて発生した磁界に干渉等し難くなるので、利得の低下を確実に抑制することができる。
【0046】
さらに、メアンダ導電部33a〜33dは、給電点側導電部31a〜31dに対して直交する第1導電部34とこの第1導電部34の端部に対して直交するように接続する第2導電部35とが交互に複数連結して形成され、第2導電部35を介して対向する第1導電部34間の距離S1が当該第1導電部34の幅W1よりもわずかに長くなるように形成される。このため、第2導電部35を介して対向する一方の第1導電部34を流れる電流に応じて発生した磁界と他方の第1導電部34を逆方向に流れる電流に応じて発生した磁界とが干渉し難くなるので、メアンダ構造を採用する場合でも利得の低下を抑制することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)上記実施形態では、アンテナ10を構成するエレメントの数が4つである例を示したが、これに限らず、多角形状のエレメント基板の外縁(各縁部)に沿い、給電点側導電部同士が離隔するように各エレメントが環状に配置される構成であれば、エレメントの数はこれ以上であっても、これ以下であってもよい。
【0048】
(2)各エレメント11a〜11dは、エレメント基板に設けられる配線パターンを利用して形成されることに限らず、例えば、GND基板20に保持される金属板やGND基板20に対して対向する筐体内面等に蒸着された導電体を利用して形成されてもよい。この場合でも、各エレメントが、給電点側導電部及び開放端側導電部とこれらをメアンダ状に接続するメアンダ導電部とを備えて上述のように形成されることで、上記効果を奏する。
【0049】
(3)開放端側導電部32aは、対応すべき周波数に応じて、開放端37aが縁部30aと縁部30bとによって構成される隅部まで延出するように配置されてもよいし、さらにその隅部から縁部30bに沿ってL字状に延出するように配置されてもよい。他の開放端側導電部32b〜32dの開放端37b〜37dについても同様である。
【符号の説明】
【0050】
1…携帯端末
10…アンテナ
11a〜11d…エレメント
20…GND基板
30…エレメント基板
31a〜31d…給電点側導電部
32a〜32d…開放端側導電部
33a〜33d…メアンダ導電部
34…第1導電部
35…第2導電部
36a〜36d…給電点側の端部
37a〜37d…開放端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12