(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、直前に前記校正を実行した際の前記読取部の温度と現在の温度から算出した温度変化量と、前記温度特性に基づいて、前記直前の校正からの色差の変動量が所定の許容閾値に達するタイミングを算出し、該算出したタイミングを次に校正を実行するタイミングとして決定する、請求項1に記載の画像形成システム。
前記制御部は、前記連続印刷ジョブの設定に基づいて、前記決定した校正の実行タイミングが、複数枚の用紙のうちいずれかの用紙の搬送中であるか否かを判定し、該用紙の搬送中であると判定した場合には、該用紙の直前の用紙間に前記実行タイミングを変更する、および/または該用紙の搬送タイミングを遅延させる、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の画像形成システム。
画像形成部よりも搬送方向の下流側に設けられ、前記画像形成部により形成された用紙上の画像を読み取る読取部と、前記読取部を校正する校正部と、を備える画像形成システムの制御プログラムであって、
連続して搬送した複数枚の用紙に画像を形成する連続印刷ジョブの実行を開始するステ
ップと、
前記読取部の温度変化量に対する前記読取部の色差の変動量を示す温度特性を記憶部から読み出すステップと、
読み出した前記温度特性と、前記読取部のCCD基板の温度を測定する温度センサーの検出温度から算出した前記読取部の温度変化量から、前記校正部による前記読取部の校正を実行するタイミングを決定するステップと、
決定した前記タイミングに応じて、前記連続印刷ジョブの実行中に前記校正を実行するステップと、を前記画像形成システムに実行させるための制御プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示された技術は、温度変化による読取信号の変動を防止するという課題の解決を図るものであり、特許文献2では、基準シェーディングデータ等を生成するタイミングについては考慮していない。
【0010】
特に、特許文献1のような画像形成した用紙上の画像を読み取る読取装置では、連続して複数の用紙に画像を形成しながら、読取、および画像形成条件へのフィードバックをするような場合がある。このような場合に、温度が上昇したにもかかわらず、上昇前に生成した基準シェーディンデータを適用した場合には、精度よく色や濃度の読取を正確に行うことができないおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、読取部の温度変化の影響を見積もって、適切なタイミングで校正を行える画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0013】
(1)用紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部よりも搬送方向の下流側に設けられ、前記画像形成部により形成された用紙上の画像を読み取る読取部と、
前記読取部の
CCD基板の温度を検出する温度センサーと、
前記読取部を校正する校正部と、
前記読取部の温度変化量に対する前記読取部の色差の変動量を示す温度特性を記憶する記憶部と、
連続して搬送した複数枚の用紙に画像を形成する連続印刷ジョブの実行中に、前記温度特性と前記読取部の温度変化量とに基づいて、前記校正部による前記読取部の校正を実行するタイミングを決定する制御部と、
を備える画像形成システム。
【0014】
(2)前記制御部は、直前に前記校正を実行した際の前記読取部の温度と現在の温度から算出した温度変化量と、前記温度特性に基づいて、前記直前の校正からの色差の変動量が所定の許容閾値に達するタイミングを算出し、該算出したタイミングを次に校正を実行するタイミングとして決定する、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0015】
(3)ユーザーによる前記
許容閾値の設定を受け付ける設定受付部を備える、上記(2)に記載の画像形成システム。
【0016】
(4)前記設定受付部は、前記読取部を用いる連続印刷ジョブの実行を保留する保留設定を受け付け可能であり、
前記制御部は、前記保留設定が受け付けられた場合、前記読取部の単位時間当たりの温度
変化量が所定値以下になるまで、前記連続印刷ジョブの実行を保留させる、上記(3)に記載の画像形成システム。
【0017】
(5)前記制御部は、前記連続印刷ジョブの設定に基づいて、前記決定した校正の実行タイミングが、複数枚の用紙のうちいずれかの用紙の搬送中であるか否かを判定し、該用紙の搬送中であると判定した場合には、該用紙の直前の用紙間に前記実行タイミングを変更する、および/または該用紙の搬送タイミングを遅延させる、上記(1)から上記(4)のいずれか1つに記載の画像形成システム。
【0018】
(6)前記校正部は、校正用の基準板を備え、
前記校正は前記基準板を用いたシェーディング補正であり、該シェーディング補正には異なる種類のシェーディング補正が含まれる、上記(1)から上記(5)のいずれか1つに記載の画像形成システム。
【0019】
(7)前記制御部は、前記連続印刷ジョブの印刷設定に、前記読取部の読取を行う設定がされている場合において、前記読取部の
単位時間当たりの温度変化量が所定値を超える場合には前記連続印刷ジョブの実行を保留し、前記所定値以下になった場合に、前記保留した前記連続印刷ジョブの実行を開始させる、上記(1)から上記(3)、上記(5)、および上記(6)のいずれか1つに記載の画像形成システム。
【0020】
(8)画像形成部よりも搬送方向の下流側に設けられ、前記画像形成部により形成された用紙上の画像を読み取る読取部と、前記読取部を校正する校正部と、を備える画像形成システムの制御プログラムであって、
連続して搬送した複数枚の用紙に画像を形成する連続印刷ジョブの実行を開始するステ
ップと、
前記読取部の温度変化量に対する前記読取部の色差の変動量を示す温度特性を記憶部から読み出すステップと、
読み出した前記温度特性と、
前記読取部のCCD基板の温度を測定する温度センサーの検出温度から算出した前記読取部の温度変化量から、前記校正部による前記読取部の校正を実行するタイミングを決定するステップと、
決定した前記タイミングに応じて、前記連続印刷ジョブの実行中に前記校正を実行するステップと、を前記画像形成システムに実行させるための制御プログラム。
【0021】
(9)前記決定するステップでは、
直前に前記校正を実行した際の前記読取部の温度と現在の温度から算出した前記温度変化量と、前記温度特性に基づいて、前記直前の校正からの色差の変動量が所定の許容閾値に達するタイミングを算出し、該算出したタイミングを次に校正を実行するタイミングとして決定する、上記(8)に記載の制御プログラム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、連続して搬送した複数枚の用紙に画像を形成する連続印刷ジョブの実行中に、読取部の温度特性と温度変化量とに基づいて、校正部による読取部の校正を実行するタイミングを決定する。これにより、生産性を不必要に低下させることなく、読取部による色監視を適切に実行できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
図2は、画像形成システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3は、読取部と読取校正部の構成を示す図である。
【0026】
図1から
図3に示すように、画像形成システム100は、画像形成装置A1、読取部60を備えた第1後処理装置A2、ステープル処理を行う後処理部80を備えた第2後処理装置A3から構成される。
【0027】
図2に示すように、画像形成システム100は、制御部10、記憶部20、画像形成部30、給紙搬送部40、操作パネル50、読取部60、測色計70、後処理部80、および通信インターフェース(I/F)90を備え、これらは信号をやり取りするためのバスを介して相互に接続されている。
【0028】
制御部10は、CPUであり、プログラムにしたがって装置各部の制御や各種の演算処理を行う。また、制御部10は、読取部60の読取により得られた画像データに基づいて、画像の色や画像形成位置を調整する調整部として機能する。画像の色調整としては、例えばカラーチャートの画像を読み取った画像データ(画像信号)から色変換のLUTを調整したり、画像形成部30の画像形成条件を調整したりする。画像位置調整としては、例えば検知した用紙のエッジや、トンボ画像(マーク画像)の位置から画像形成位置を調整する。
【0029】
記憶部20は、予め各種プログラムや各種データを格納しておくROM、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM、各種プログラムや各種データを格納するハードディスク等からなる。記憶部20には、色調整用のカラーチャート用の画像データ、読取部60の温度特性データ等が記憶されている。
【0030】
画像形成部30は、中間転写ベルト31、感光体ドラム32、現像部33、書込部34、2次転写部35、および定着部36を備える。感光体ドラム32、現像部33、および書込部34は、イエロー(Y)、マゼンター(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応した構成をそれぞれ備えるが、
図1では、これらについては、Y以外の符号の表記を省略している。
【0031】
画像形成部30の書込部34は、画像データに基づいて、帯電された感光体ドラム32の表面を露光し、静電潜像を形成する。現像部33では、形成された静電潜像を現像部33のトナーにより現像して、各感光体ドラム32の表面に各色のトナー画像を形成する。これを各色の1次転写部(図示せず)で中間転写ベルト31上に順次重ねてゆき、フルカラーのトナー画像を形成する。このトナー画像は、2次転写部35で用紙S上に転写され、その後、定着部36で加熱、加圧処理することで用紙S上にフルカラーの画像を形成する。
【0032】
(給紙搬送部40)
給紙搬送部40は、給紙トレイ41、搬送路42(42a〜42d)、複数の搬送ローラー43(43a〜43c)、これを駆動する駆動モーター(図示せず)、および排紙トレイ46を備える。
【0033】
給紙搬送部40は、駆動モーターの駆動によってそれぞれの搬送ローラー43を回転させ、給紙トレイ41から用紙Sを給紙し、搬送路42内を搬送させる。
【0034】
搬送路42は、画像形成装置A1内の搬送路42a、42b、第1後処理装置A2内の搬送路42c、第2後処理装置A3内の搬送路42dから構成される。
【0035】
給紙トレイ41から給紙された用紙Sは、搬送路42aを搬送される。搬送路42aには、クラッチにより回転、停止することで用紙の搬送タイミングを調整するレジストローラー43aが配置されている。
【0036】
搬送路42aを搬送され画像形成部30により画像形成された用紙Sは、下流側の搬送路42c、42dを経由して、印刷ジョブの印刷設定に応じた各処理を施されたのち機外に排出され排紙トレイ46上に載置される。
【0037】
また印刷ジョブの印刷設定が、両面印刷の設定であれば、片面に画像形成された用紙Sを画像形成装置A1の下部にあるADU搬送路42bに搬送する。このADU搬送路42bに搬送された用紙Sは、スイッチバック経路で表裏を反転された後、搬送路42aに合流し、再び画像形成部30で画像形成される。
【0038】
(操作パネル50)
操作パネル50はタッチパネル、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備えており、印刷条件、色差変動量の許容閾値(後述)、等の各種設定の入力や、装置の状態の表示および各種指示の入力に使用される。操作パネル50は、制御部10と協働することで、各種の設定を受け付ける「設定受付部」として機能する。
【0039】
(測色計70)
読取部60の説明をする前に測色計70について説明する。読取部60については後述する。測色計70は、搬送路42b内の読取部60よりも搬送方向下流側に設けられている。測色計70は、画像形成部30により用紙S上に形成された評価画像の各カラーパッチの色を分光的に測定し、測色データを取得する。測色データは、XYZ等の表色系で出力される。この評価画像の各カラーパッチは、読取部60でも同様に読み取られ、同じXYZ等の表色系のデータに変換される。そして、両方のデータを比較することで、読取部60の校正を行う。
【0040】
(後処理部80)
後処理部80は、搬送路42cに設けられている。後処理部80は、用紙をスタックするスタック部とステープル部を有し、複数枚の用紙Sをこのスタック部で重ねた後、ステープル部でステープルを用いた平綴じ処理を行う。平綴じされた用紙Sの束は、排紙トレイ46上に排出される。また平綴じしない用紙Sは、そのまま搬送路42cを経由して排出される。
【0041】
(通信インターフェース90)
通信インターフェース90には、SATA、PCI ExpreS、USB、イーサネット(登録商標)、IEEE1394などの規格によるネットワークインターフェース、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11などの無線通信インターフェース、などの各種ローカル接続インターフェースが用いられる。通信インターフェース90を通じてPC等の外部の端末からの印刷データおよび印刷設定で構成される印刷ジョブが受信される。
【0042】
(読取部60の構成)
次に読取部60について説明する。最初に読取部60の構成について説明し、その後、読取部60の温度特性について説明する。
【0043】
図1および
図3に示すように、読取部60は、搬送路42bに配置され、上流側の搬送路42aから搬送された用紙Sの表面に形成された画像の読取を行う。制御部10は、読取部60で得られた画像データから、色調整や画像位置調整を行う。読取部60は、センサーアレイ61、光学系62、LED(Light Emitting Diode)光源63、原稿ガラス64、温度センサー65、およびこれらを収納する筐体66を備える。
【0044】
センサーアレイ61は、複数の光学素子(例えばCCD(Charge Coupled Device))を主走査方向に沿ってライン状に配置したものであり、用紙Sの幅方向における全幅の範囲を読み取り可能なカラーラインセンサーである。光学系62は、複数のミラーとレンズから構成される。LED光源63からの光は、原稿ガラスを透過し、読取位置P1を通過する用紙Sの表面を照射する。読取位置P1の像は、光学系62により導かれ、センサーアレイ61上に結像する。原稿ガラス64は搬送路42bに面し、筐体66の内部の汚れを防止する。温度センサー65は、筐体66の内部に配置され、センサーアレイ61を配置したCCD基板近傍の温度を検出する。
【0045】
読取部60は、光源63の不均一や、光学素子の感度ばらつき等のために生ずる光学素子間の濃度むらを補償するために、真っ白な白基準板を読み取って得られた光学素子からの画像信号から、画素間の感度ムラを補償する補正値を生成するシェーディング補正を行う。
【0046】
(読取校正部69)
また、搬送路42bの下方には、校正板を備えた読取校正部69が、読取部60の原稿ガラス64に対向して設けられている。この読取校正部69は、制御部10と協働することで「校正部」として機能する。
【0047】
読取校正部69は、回転体691、回転軸692、清掃ブラシ693を備える。回転体691の外周面には、読取面c1、白色面c2、および黒色面c3、ならびに清掃ブラシ693が形成されている。回転体691は、回転軸692を回転中心として、駆動モータ(図示せず)により回動可能であり所定角度回転することにより、読取位置P1に、各面を移動させる。
【0048】
用紙Sの搬送、および用紙Sの表面の像の読み取りを行う通常時には、
図3に示す位置にあり、このとき白色の読取面c1は搬送路42bの読取位置P1にある。
【0049】
白色面c2は、画像の読取時に用いるシェーディング補正の補正値を決定するための白基準板(校正板)として機能する。黒色面c3は、搬送される用紙Sのエッジを検出する際に用いられ、用紙の色(通常は白色)と識別しやすいように、黒色で着色されている。
【0050】
清掃ブラシ693は、原稿ガラス64に接触し、その表面に付着した汚れを清掃する。原稿ガラス64の清掃時には、回転体691を、例えば5〜10回転させる。
【0051】
(読取部60の温度特性)
次に、
図4および
図5を参照し、読取部60の温度特性について説明する。
図4は、温度センサー65の検出温度と色差ΔE00の関係を示すグラフであり、
図5は、読取部60の温度推移を示すグラフである。以下においては、色差の評価、判定にCIE2000色差式のΔE00を用いて説明するが、これに限られず一般的なΔEを用いて色差の評価、判定を行ってもよい。ここでCIE2000色差式とは、測定結果と視感評価との差異を補正する色差式である。
図4の色差ΔE00は、白色基準板を読み取ってシェーディング補正を行ったときの温度を基準とし、その基準温度からの温度差(ΔT(℃))と、同じ白色基準板の読取データ(読取信号)の変化をΔE00換算したものである。
【0052】
図4に示すように、読取部60の温度変化量の増加に応じて、色差も増加する。また
図5に示すように、画像形成システム100の電源をONしてからは、しばらくは温度変化が大きい状態が続き、電源ONしてから安定するまでは10分以上かかることが分かる。
【0053】
温度特性のデータは、予め記憶部20に記憶されている。温度特性データは温度変化量と色差(ΔE00)との関係(
図4参照)を対応づけたテーブルであるが、これに限られず温度変化量と色差(ΔE00)との関係を示す一次関数または2次以上のn次関数で表現されていてもよい。
【0054】
(色監査)
ここで、色監査について説明する。商業印刷においては、会社のロゴ等で用いられるコーポレートカラーのように正確な色再現性が要求される色(以下、特色(スポットカラー)と称す)が存在する。このような特色については、印刷ジョブの印刷データに特色であることを示す情報(タグ)が付されている。特色が含まれる印刷データの画像形成を行う場合には、その出力は「色監査」の対象となり、その色味は、特色以外の通常の色に比べて厳しく管理される。色監査の対象となる場合には、その特色の色信号で画像形成された用紙上の画像領域を、読取部60で読み取る。そして、その読取データから算出し変換した色データ(L
*a
*b
*)を、特色のオリジナル色情報(L
*a
*b
*)と比較し、ΔE00を算出し、これが許容範囲内に収まっているか否かを判定する。
【0055】
図6は、従来例における色監査を行う印刷ジョブを実施した際の読取部60の読取データから算出したΔE00の推移を示す模式図である。同図においては、時間0〜5(sec)の間に白色基準板(白色面c2)を用いてシェーディング補正を実行している。その後、15〜20(sec)、および25〜30(sec)の間に特色(ここでは「RED」)の画像を全面に形成した2枚の用紙Sを連続して搬送し、読取位置P1で読取部60により読み取ったものである。
図6の矩形の枠の縦方向の長さは特色の色監査の許容範囲を示し、横方向の長さは、監査タイミング(特色画像の位置)を示している(以降の図でも同様)。同図に示す例では、2枚目の一部の領域で、許容範囲を外れたことを示している。このようにして色監視を行う。
【0056】
図7および
図8は、
図6と同じ色監査を行う印刷ジョブを実施した際の読取部60の読取データから算出したΔE00の推移を示す模式図である。
図7は比較例であり、
図8は本実施形態の実施例である。
図7では
図6と異なり、電源ON直後等の読取部60の温度変化が大きい期間に、印刷ジョブを実施している。そのため、0〜5secでシェーディング補正を行ってはいるが、その後の温度変化の影響による読取データの色差の変動が生じる。そのため色監視を行う1枚目、2枚目の用紙Sの読取を行う時点では、画像形成された特色の画像自体は正常だとしても、読取部60の読取データからは異常と判定してしまう。
【0057】
一方で
図8に示す実施例では、タイミングをなるべく遅くし、読取を実行する直前に最初のシェーディング補正を実行し、その後に用紙の紙間にもシェーディング補正を追加で実行している。このようにすることで、温度変化が生じたとしても、直前に実行した各シェーディング補正により、色監査を行う1枚目、2枚目の用紙Sの読取を行う時点では、適切に読取データを取得することができる。
【0058】
ただし、用紙を搬送する毎にその直前にシェーディング補正を行えば高精度の読取を行うことができるが、搬送する紙間の長さ(時間)によってはシェーディング補正をこの紙間に行うことができない場合があり、その場合には、用紙の紙間を広げたり、搬送を中断したりする処理が必要となり生産性が悪化する。そこで、以下に説明する本実施形態の制御においては、実行タイミングを適切に決定することで、不必要に生産性を低下させることなく、適切に読取部による色監視ができるようになる。
【0059】
(実行タイミングを決定する制御)
図9は、第1の実施形態に係る画像形成システム100の制御部10により実行される印刷制御、特に連続印刷ジョブの実行中にシェーディング補正を実行する印刷制御を示すフローチャートである。
図10は
図9の処理のサブルーチンを示す図である。
【0060】
(S101)
最初に、制御部10は通信インターフェース90等を介して受け付けた印刷ジョブが、読取部60による読取を実行する印刷ジョブ、すなわち色監査の対象となる特色の情報が含まれている印刷ジョブであるか否かを判断する。画像の読取を実行する印刷ジョブであれば(S101:YES)、処理をステップS102に進める。一方で、画像の読取を実行する印刷ジョブでなければ(S101:NO)、処理をステップS110に進める。
【0061】
(S110)
印刷ジョブに基づいて全ての画像形成を順次搬送する用紙に対して実行して、印刷制御を終了する(エンド)。
【0062】
(S102)
この処理では、制御部10はシェーディング補正を実行させる。具体的には、読取校正部69の回転体691を所定量回転させて、白色面c2を読取位置P1に移動し、読取部60による読取を実行し、読取データからシェーディング補正の補正値を決定する。シェーディング補正が終了した後は、回転体691を再度回転させて、読取面c1を読取位置P1に移動させる。
【0063】
なお、このシェーディング補正は、予め設定されたタイミング(1回目)または後述するステップS103で決定されたタイミング(2回目以降)で実行される。印刷ジョブを受け付けてから最初(1回目)に行うシェーディング補正は、印刷ジョブを受け付けたときに実行してもよいが、なるべく遅いタイミングで実行した方がよい。好ましくは、読取部60に読取対象となる用紙Sが搬送される直前のタイミングである(
図8参照)。そしてこのシェーディング補正を実行したときの時刻と、温度センサー65の検出温度を記憶部20に記憶する。
【0064】
(S103)
次の処理では、直前に行ったシェーディング補正を基準として、次に実行するシェーディング補正の実行タイミングを計算する。
【0065】
(シェーディング補正の実行タイミングの計算(S103)のサブルーチン)
図10は、ステップS103のサブルーチンを示す図である。
図10に示すサブルーチンでは、前段の処理(S301〜S305)ではシェーディング補正の実行タイミング(時刻Ta)を仮決定する。そして後段の処理(S311〜S325)では、前段で仮決定した実行タイミング(時刻Ta)の割当てを行う。すなわち、時刻Taに実際に実行可能か否かを、用紙の搬送タイミングを考慮して判断し、必要に応じて仮決定した実行タイミングを変更したり、用紙の搬送タイミングを変更したりする。
【0066】
ここで、実行タイミングの時刻は、直前にシェーディング補正した時刻(補正が終了した時刻のこと、以下同じ)を基準として相対的な時刻を用いてもよく、または絶対的な時刻を採用してもよい。以下の説明では、前者の相対的な時刻を採用したものとして説明する。
【0067】
(前段の処理)
図11は、時刻Taの算出手順を説明するための模式図である。以下、
図11を参照しながら、ステップS301〜S305の前段の処理について説明する。
【0068】
(S301)
最初に制御部10は、温度センサー65の検出温度から現在の温度を取得する。なお記憶部20には、温度センサー65の検出温度と時刻とを関連づけて記憶されている。この処理は、例えば、所定周期(例えば10sec)で、装置本体の電源がONされてから継続して実行される。
【0069】
(S302)
次の処理では、記憶部20から所定時間前の温度を取得する。この所定時間は例えば1分である。
【0070】
(S303)
次に、記憶部20に記憶されている読取部60温度特性データを読み出す。そして、ステップS302で取得した所定時間前の検出温度と現在の温度との温度差(温度変化量)と、このステップS303で読み出した温度特性データから色差変動量を算出する。
【0071】
例えば
図4の網掛けで示すような温度特性データを用いた場合、1分前からの温度変化量が1.2℃であれば色差変動量は0.18となる。
【0072】
(S304)
そして、この色差変動量から単位時間当たりの色差変動量(ΔE00/sec)(以下、単に「傾き量」という)を算出する。前述の例では、傾き量(ΔE00/sec)=0.003(=0.18/60)となる。
【0073】
(色差変動許容量)
ここで色差変動許容量(以下、単に「許容閾値」ともいう)について説明する。この許容閾値は、予め定められた閾値であり記憶部20に記憶されている。この許容閾値は、特色毎に設定してもよく、特色全部に同じ許容量を設定してもよい。また、設定画面を通じてユーザーがこの許容量を変更できるようにしてもよい。この設定画面の例については後述する。
【0074】
(S305)
次の処理では、制御部10は、算出した単位時間当たりの色差変動量から、許容閾値を超える時刻Taを算出する。ここでは、以降の時間も同じ傾き量(同じ単位時間当たりの色差変動量)で推移すると推定している。
【0075】
ここで、
図11を参照して説明する。
図11の横軸は直前にシェーディング補正した時刻を基準時刻(時刻0)とし示している。縦軸は、装置本体の電源をON(コールドスタート)して、最初にシェーディング補正したときの値を基準(ΔE00=0)として示している。
【0076】
例えば許容閾値が「0.2」であれば、ステップS304で算出した、過去(1分前)と直前にシェーディング補正した時の温度から求めた温度差と、温度特性データから求めた、傾き量(0.003)から、時刻Taは67sec(=0.2/0.003)となる。
【0077】
以上までが、前段のシェーディング補正の実行タイミングの仮決定に関する処理である。次に、実際に決定した実行タイミングにシェーディング補正を割り当てる後段の処理について説明する。
【0078】
(後段の処理)
(S311)
最初に制御部10は、印刷ジョブの用紙種別、後処理モード等の印刷設定から各時刻での用紙の位置、より具体的には読取部60の読取位置P1を通過する各用紙の搬送タイミング(予定)を算出する。
【0079】
(S312)
そして、算出した用紙の搬送タイミングから、時刻Taにいずれかの用紙を搬送する予定であるか否かを判断する。時刻Taに用紙を搬送しなければ(S312:NO)、処理をステップS313に進め、搬送するのであれば(S312:YES)、処理をステップS321に進める。
【0080】
(S313)
ここでは、用紙の紙間(時間)に、シェーディング補正を実行可能か否か判断する。実行可能であれば(S313:YES)処理をステップS315に進め、可能でなければ(S313:NO)処理をステップS314に進める。
【0081】
(S314)
この場合、印刷設定に基づいて設定された紙間ではシェーディング補正を実行することができないので、時刻Ta直後の用紙の画像形成タイミング(給紙、搬送タイミング)を遅延させる。
【0082】
具体的には、シェーディング補正実行時間t1(以下、単に「実行時間t1」という)を確保する。ここで実行時間t1とは、シェーディング補正を開始してから完了し、その後、読取位置P1に読取面c1を移動させて、用紙Sの読取が可能となるまでの時間である。
図12は、ステップS314の処理を模式的に示す図である。同図では、連続して複数枚の用紙(S1〜Sn)を連続して搬送したときの状態を示している。
【0083】
図12(a)に示すように、時刻Taは、n−1枚目の用紙Sn−1とn枚目の用紙Snの紙間であり、用紙は搬送しない。しかしながら、紙間に実行時間t1を確保することができないため、
図12(b)に示すようにn枚目の用紙Snの画像形成タイミングを遅延させて確保する。
【0084】
(S315)
この処理では、シェーディング補正の実行タイミングをステップS305で算出した時刻Taに確定し、
図9のフローに戻る。
【0085】
(S321)
ここでは、用紙の紙間に、シェーディング補正を実行可能か否か判断する。すなわち時刻Taから時刻Ta+t1の間に用紙Sが搬送されないか否かを判断する。実行可能であれば(S321:YES)処理をステップS322に進め、可能でなければ(S321:NO)処理をステップS324に進める。
【0086】
(S322)
図13は、ステップS322の処理を模式的に示す図である。この処理では、時刻Taにn枚目の用紙Snが搬送されるので、時刻Ta直前の用紙Sn−1の搬送終了時刻、すなわち用紙Sn−1の後端が、読取位置P1を通過する時刻Tbを算出する。
【0087】
(S323)
この処理では、シェーディング補正の実行タイミングをステップS322で算出した時刻Tbに確定し、
図9のフローに戻る。
【0088】
(S324)
図14は、ステップS324の処理を模式的に示す図である。この処理では時刻Taの用紙Snの画像形成タイミングを遅延させ、シェーディング補正の実行時間t1を確保する。
【0089】
(S325)
この処理では、シェーディング補正の実行タイミングをステップS305で算出した時刻Taに確定し、
図9のフローに戻る。
【0090】
(S104)
この処理では、制御部10は画像形成部30を制御し、印刷ジョブの印刷設定に応じて、搬送した用紙Sに対して画像形成する。このときの用紙Sの搬送は、印刷ジョブの印刷設定に基づいた搬送タイミング、またはステップS103で遅延処理が決定された場合には遅延後の搬送タイミングで行う。
【0091】
(S105)
読取部60では、画像が形成され搬送された用紙Sに対して読取を行う。
【0092】
(S106)
印刷ジョブが終了していなければ(S106:NO)、ステップS107に処理を進める。一方で、印刷ジョブが終了、すなわち全ての画像形成が終了したならば(S106:YES)、印刷制御を終了する(エンド)。
【0093】
(S107)
ステップS103で決定したシェーディング補正を実行するタイミングになるか否かを判断し、実行タイミングであれば(S107:YES)、処理をステップS102に進め、シェーディング補正を実行する。一方、実行タイミングでなければ(S107:NO)、処理をステップS104に進め、以降の処理を行う。
【0094】
このように、本実施形態では、連続印刷ジョブの実行中に、読取部の温度特性と温度変化量から、読取部のシェーディング補正を実行するタイミングを決定し、決定したタイミングに応じて連続印刷ジョブの実行中にシェーディング補正を実行する。このようにすることで、不必要なシェーディング補正の実施を抑制し、生産性が不必要に低下させることはない。また、色差の変動が所定の許容量を超えることを防止でき、色監査を適切に実行できる。
【0095】
(変形例1)
図9および
図10で説明した第1の実施形態では、印刷ジョブの設定が読取部60による読取を行う場合、すなわち、色監視を行う特色の情報が含まれている場合に、シェーディング補正の実行タイミングを決定する処理を行っていた。以下に説明する変形例1では、色差の変動が大きいと推定される場合には、印刷ジョブの実行そのものを保留させるものである。
【0096】
図15は、変形例における操作パネル50の設定画面を示す図である。
図16は、変形例に係る印刷制御を示すフローチャートである。
【0097】
ユーザーは、色監査を行う印刷ジョブの設定について
図15に示す操作パネル50の設定画面を通じて行う。ユーザーは設定画面のチェックボタンb1、b2のいずれかを選択することが可能である。同図においては、チェックボタンb2の「読取精度が安定する前の印刷を許容する」(第1のモード)が選択された状態を示している。この状態では、前述の第1の実施形態が実行される。またチェックボタンb2が選択された場合は、さらに入力欄b3に色差変動許容量(許容閾値)を設定することができる。
図15の例では、ΔE00として「0.2」が設定されている。許容閾値の設定を小さくすることで、色監査の精度を優先させることができ、許容閾値の設定を大きくすることで生産性を優先させることができる。
【0098】
以下に説明する変形例1の処理は、このチェックボタンb1の「読取精度が安定するまで印刷は許容しない」(第2のモード(保留設定))が選択され、第2のモードを実行する場合に適用される。なお、チェックボタンb1が選択されて、変形例1の処理が適用された場合においては、印刷ジョブの実行の保留が解除された場合には、その後、継続して実施形態1の処理が行われる。その際の色差変動許容量としては、入力欄b3の値が適用される。なお、入力欄b3の設定下限値は、例えばΔE00=0.1である。
【0099】
(S601)
最初に、制御部10は、ステップS101と同様に、通信インターフェース90等を介して受け付けた印刷ジョブが、読取部60による読取を実行する印刷ジョブ、すなわち色監査の対象となる特色の情報が含まれている印刷ジョブであるか否かを判断する。画像の読取を実行する印刷ジョブであれば(S601:YES)、処理をステップS602に進める。一方で、画像の読取を実行する印刷ジョブでなければ(S601:NO)、処理をステップS110に進める(
図9)。
【0100】
(S602)
この処理では、読取部60の温度推移データを記憶部20から取得する。
【0101】
(S603)
制御部10は、ステップS602で取得した温度推移データから読取部60の温度が安定しているか否かを判断する。具体的には、現在の温度と、1分前の温度から時間当たり温度変化量を算出し、これが所定値、例えば2(℃/min)を超えているか否かを判断する。所定値を超えており、安定していなければ(S603:NO)、処理をステップS604に進める。一方で、2(℃/min)以下であり、安定していれば(S603:YES)、処理をステップS102(
図9)に進め、印刷を実行する。
【0102】
なお、この所定値は、単位時間当たりの色差変動量が基準値以下となるように予め定められたものである。またこの所定値についても操作パネル50を通じてユーザーにより設定可能にしてもよい。
【0103】
(S604)
この処理では、ステップS601で受け付けた印刷ジョブの実行を保留する。この保留は、ステップS603で温度が安定したと判断されるまで(S603:YES)継続する。
【0104】
このように変形例1においては、
図15に示す設定画面等により第1、第2のモードを選択可能であり、第2のモードが選択された場合には、読取部60の温度変化が安定するまで印刷ジョブの実行を保留する。このようにすることで、印刷ジョブを開始したにも関わらず、高頻度でシェーディング補正が実行されることを防止することができる。
【0105】
(変形例2)
第1の実施形態においては、
図12、
図14に示すように、ステップS315、S325では、時刻Taに次のシェーディング補正の実行を開始するように制御したが、これに限られず、時刻Taを少し前の時刻にシフトしてもよい。例えば、次のシェーディング補正の実行を開始する時刻を、直前に搬送された用紙Sn−1の搬送終了時刻に前にシフトするとともに、用紙Snの搬送時刻も同じだけ前にシフトさせる。これにより、全体として処理時間が短くなり生産性が向上する。
【0106】
(変形例3)
また、第1の実施形態においては、読取部の温度変化に応じてタイミングを決定する対象の「校正」として、シェーディング補正を例として説明したが、これに限られず他の校正についてタイミングを決定するようにしてもよい。例えば、測色計70を用いた読取部の校正を、タイミングを決定する対象としてもよい。
【0107】
(変形例4)
シェーディング補正として複数種類のシェーディング補正を適用するようにしてもよい。例えば、印刷ジョブを実行開始して最初に行うシェーディング補正を、2回目以降に行うシェーディング補正とは異なるようにする。
【0108】
図17は、変形例4の処理を模式的に示す図である。同図においては、時間8〜15(sec)の間にシェーディング補正Aを実行し、時間21〜24(sec)の間にこれとは異なる種類のシェーディング補正Bを実行している。
【0109】
ここで、シェーディング補正Bは、回転体691の白色面c2を用いた第1の実施形態で説明したシェーディング補正のことである。シェーディング補正Aは、このシェーディング補正Bに加え、原稿ガラスの清掃を行うものである。具体的には、最初に回転体691の清掃ブラシ693による原稿ガラス64の清掃を数秒間行い、それに続いてシェーディング補正を行うものである。変形例4では、シェーディング補正Aは、印刷ジョブを開始してから最初(1回目)にのみ実行し、シェーディング補正Bは、2回目以降に実行する。実行時間が長いシェーディング補正Aを、比較的時間を確保可能な最初の用紙Sが読取位置P1に到達するまでの時間に行い、実行時間が短いシェーディング補正Bを時間が確保しづらい紙間に行う。このようにすることで、色差の変動が所定の許容量を超えることを防止できるとともに、生産性も維持できる。
【0110】
以上に説明した画像形成システムの構成は、上記の実施形態および変形例の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記の構成に限られない。また、一般的な画像形成システムが備える構成を排除するものではない。
【0111】
また、画像形成システムを動作させるプログラムは、USBメモリー、フレキシブルディスク、CD−ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、メモリーやストレージ等に転送され記憶される。また、このプログラムは、たとえば、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、画像形成システムの一機能としてその各装置のソフトウェアに組み込んでもよい。